(´<_` )むしゃむしゃのようです

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/06(金) 09:31:30.05 ID:tj8GT2fEP


   おまえが死ねばよかったんだ 。




3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/06(金) 09:34:42.42 ID:tj8GT2fEP

おまえなんかのせいで、ははさまもちちさまも殺された。

あねやいもうとは、くつじょくと、りょうじょくのかぎりをつくされ

むしけらのように殺された。



おまえなんかのせいで。

おまえなんかのせいで。

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/06(金) 09:37:29.68 ID:tj8GT2fEP


だのに、おまえは生きている。

おまえが死ねばよかったのに。



にくんでやる。

おまえのそのうんめいを、

おまえというにんげんの、

あたまのてっぺんからつまさきまで、

かみのけのいっぽんにいたるまで、にくんでやる。

ゆるさない、ぜったいにゆるさない。



おまえが死ねばよかったのに。

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/06(金) 09:50:18.43 ID:tj8GT2fEP
『これは、ひどいもんだなあ……。おい、坊主たち、このとんでもない不幸、お前のかなしみ、察するに余りある。
 さいわい、僕の家は余裕がある、子どもを育てる時間と、資金という面において。
 僕はあそこの村にしばらく居るから、気持ちの整理がついたらおいで。』

『殺して。』

『うん?』

『こいつのせいで、殺された。すべてがすべて、こいつがわるい。こいつが死ねばよかったのに、
 かんじんのこいつはいきている。こんなことがゆるされてたまるか、こいつをころしてやろうとおもうのに、
 おれのちからではこいつをころせない。おにいさん、どうかこいつをころしてしまって。』

『おい、おまえたち、みたところ兄弟だろう。そんな物騒なことを云うもんじゃあないよ。
 残ったたった二人の家族だろう。』

『こいつだって、死にたがってる。あたりまえだけど。
 あんなことがあって、まだいきたいなんてねがうのは、まちがってるもの。』

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/06(金) 10:06:01.02 ID:tj8GT2fEP
『生きたいのが間違ってるなんてことは、ないだろう。人間の本能なんだから。
 死にたがってるって云うけど、お前がそんなことばかりを云うから、仕方なくそうなったんだろうに。」

『じぶんのせいでかぞくが死んだのに?
 なあ、おまえ、まだいきたいのかよ、おい。』

『……なんも、しゃべりやしない。だんまりだ、そうやってればいいとおもってんだ。
 にげてんだ、せきにんから。あんまりおもいもんだから。
 ふざけやがって、こいつが、こいつがひとり、しねばよかったのに…』

『おい、いい加減にしないか。』

『ほんとうのことだ、おれは、もう、はらがたちすぎて、あたまがおかしくなりそうだ。
 みんな死んじまったのに、なみだもでやしない。』

『きみ、あるけるか?おいで、此処は冷えるだろう。
 おまえも、来いよ。どんなに怒っていたって、腹は減るもんだ。』

『そいつがいくなら、ごくらくにだって、いくもんか』

『はあ、まったく…』

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/06(金) 10:12:46.01 ID:tj8GT2fEP

『おれは、そいつがにくい。ああ、このからだがにくい。
 このみにながれるちがにくい!』

『おまえさんをそこまで云わせる理由はしらんが、おまえさんとこいつのあいだには、確かに絆が在るんだぞ。』

『そんなもん、すててやる!いぬにくわせて、そのいぬをころして、むちゃくちゃにして、もやしてやる!』

『捨てるたってねえ…。まあ、この様子じゃあ、そのほうが、こいつのためにも、おまえさんのためにもなるかもしれんなあ。
 おい、坊主、生きてるか?』

『死んでいれば、ばんばんざいだ。』

『こんなの、死んでるようなもんじゃねえか……。いいだろう、いい村がある、紹介してやるよ。
 そこでお前さんとこいつとの絆を、捨てるといいよ。そうして、新しく命を始めるんだ。』

『そんなむらが、あるのか。』

『あるさ。ちょうど、僕が先に云っていた村のこと。』

『つれていってくれ、おにいさん。』

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/06(金) 10:15:15.94 ID:tj8GT2fEP

( ´_ゝ`)兄者。

にこにこぷんで云うところの、じゃじゃまるのおへそ。

(´<_` )弟者。

むしゃむしゃ森の、弟者くん。


24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/06(金) 10:24:50.16 ID:tj8GT2fEP

(´<_` )「おお、ようやく村があったぞ。今日は、野宿をせずに済みそうだ。」

(´<_` )「って兄者やい、何処へ行く」

( ´_ゝ`)「何回言わせるんだ、名を呼ぶな、何処で誰が聞いてるやもしれんのだから。
      残念だが、己れにはお前の云う村がまったく見えん。
      おそらくは、お前が空腹のあまり幻覚を見ているのだと思う。
      幻覚とか幻想だとかは、たしかに魅力的なものだが、
      しかし、己れたちが生きているのは現実だ。
      立ち向かわなくちゃ、現実と。」

(´<_` )「そうだな兄者。じゃあ行くか」

( ´_ゝ`)「いぃぃやぁぁぁだぁあぁああ」

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/06(金) 10:33:20.66 ID:tj8GT2fEP

(´<_` )「お、宿屋……なんだなんだ、誰も居ないじゃあないか。
      さてはあれだな、ひとなし村だな、此処は。」

( ´_ゝ`)「ちゃんと看板見てこい、看板……。
      おおい、しょぼんやい。遂に死んじまったのかい。」

(´・ω・`)「はいはい、しょぼんですがな。
      おや、兄者じゃないか。まだ、喰われてなかったのかい。」

( ´_ゝ`)「喰われてるっちゃ、毎日喰われているが、致命的には喰われてねえや。」

(´<_` )「なんだ、知り合いか。」

(´・ω・`)「あれま、弟は死んだと聞いていたが」

( ´_ゝ`)「ああ、いや、正式には弟じゃあないんだ。限りなくそれには近いんだけど。」

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/06(金) 10:40:48.70 ID:tj8GT2fEP

(´・ω・`)「それじゃあ、物の怪?」

(´<_` )「まさか。世界でいちばん、人間らしい人間ってのは、俺のことだ。
      物の怪は、あんただろう。匂いでわかるぞ。」

(´・ω・`)「人間にしちゃあ、鼻がいい。僕は随分と人間らしくしているつもりなんだけど。
      ところで兄者、何をしに来たんだい。
      その様子じゃ別にこの方とさよならをしに来たわけじゃあないだろう。」

( ´_ゝ`)「当たり前だ、こいつを野に放したら、世界が喰われちまうってんだ。」

(´<_` )「おい兄者、俺は食には五月蝿いぞ、不味いのは喰わん。
      まあ女子どもはだいたい喰っちまうから、結局世界は滅びちまうか。
      それで、さよならとはなんだ。」

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/06(金) 10:51:15.15 ID:tj8GT2fEP

( ´_ゝ`)「看板みりゃあわかるが、此処は、さよなら村だ。
      さよならってのは、そのままの意味。なにかと別れを告げるための村さ。
      別れれるものは、なァんでもいい。恋人、家族、自分自身とだって。
      此処で別れを誓ったもの同士は、永遠に別れられるんだって。」

(´<_` )「そりゃあ、なんとなく、縁起の悪い村だなあ。」

( ´_ゝ`)「まったくだ。だから、来たくなかったんだ。
      そういやあ、兄の嫁さんを寝取ったもんで、此処で兄と絶縁させれた馬鹿もいたっけな。」

(´・ω・`)「ま、もう三百年以上前の話だけども。実に若かった。まったくもって、若さとは罪だよなあ。」

( ´_ゝ`)「で、結局、音沙汰なしかい。兄さんとは。」

(´・ω・`)「ああ、まったく。やっぱり、さよなら村の、さよなら神さまは、偉大だって。
      生きてるのか、死んでるのかもわかりゃしない。」

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/06(金) 11:03:15.26 ID:tj8GT2fEP

( ´_ゝ`)「ふうん。そうそう、己れらが来た目的だけど、旅をしてる途中で、うっかり来ちまっただけだから。
      己れは、記憶力はいいけど方向感覚がねえんだよな。この村があるって知ってたら、来なかったっての。
      そんなわけで、一日だけ、泊めてくれやい。」

(´・ω・`)「僕は、それなりに嬉しいけどね。なんせ、此処には陰気臭い人ばかりが来るから。」

( ´_ゝ`)「そうだろうよ。なんせ、永遠に別れたいだなんて、そうとう陰気くせぇ願望だし。」

(´<_` )「ふうん、そういうわけで、人の気配がしねえのか。
      でも、家はあったみたいだが?」

(´・ω・`)「景色や、気候はとてもいいし、たまに、移住しようとするひとは居るんだよ。
      神さまを信じないひとも居るからね。
      もっとも、僕自身も、さよならの神さま以外は信じていないけど。
      でも、どうも人間は、此処に居ると死にたくなるらしくって、みんな死んじまうんだ。」

(´<_` )「へえ、さよならの神さまは、大した奴だなあ。」

( ´_ゝ`)「ああ、己れも唯一、さよならの神さまは居るんじゃねえかって気になるぜ…。」

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/06(金) 11:12:03.89 ID:tj8GT2fEP
(´・ω・`)「部屋は、どっかひとつ、女の子が泊まっているはずだから、それ以外になら、どれでも使っていいよ。」

( ´_ゝ`)「じゃあ早速、その部屋に突撃しようじゃないか。」

(´<_` )「破廉恥行為、流石だな兄者」

(´・ω・`)「ちょうどいい、もう三日くらい姿を見ていないから、死んでないか確かめてきておくれよ。」

( ´_ゝ`)「やはりそのような破廉恥な行為は己には似合わんな…」

(´<_` )「変わり身の速さ、流石だな兄者」

(´・ω・`)「いやいや、頼むよ。僕は聖堂の方の掃除に行かなくちゃいけないから。」

( ´_ゝ`)「畜生……云っておくけど、首吊りとかしてたら、己れは泣くぞ。」

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/06(金) 11:34:02.67 ID:tj8GT2fEP
从'ー'从「あら、なんですか、あなたたち。」

( ´_ゝ`)「よかった、生きてた。
      しかし、男が二人、急に押し入ってきたのに、随分と落ち着いたもんだね、あんた。」

从'ー'从「わたくし、自分とさよならしに来たのですもの。
      いまさら、この身体が犯されようと、嬲られようと構いやしませんわ。」

(´<_` )「なかなかでかい口を叩く女だな。
      しかし、三日ほどさよならし損ねているそうじゃないか。」

从'ー'从「遺書をね、書いていたのです。何回も書いて、何回も破って、何枚も紙を無駄にしました。
      でも、今度の遺書は、とてもよく出来たと思います。ですからもうすぐ、さよならが出来ますわ。
      どうぞ、お読みになって。感想を聞かせて頂戴。」

( ´_ゝ`)「遺書に感想もへったくれもあるかい。……どれ。」

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/06(金) 11:42:33.08 ID:tj8GT2fEP





   どうか、

   わたくしが不幸であったことは全てお忘れになって。

   どうか、

   わたくしが幸いであったことだけを覚えておいて。

   わたくしは、月が綺麗な夜に死にます。

   ですから、月の綺麗な夜にだけ、わたくしのことを思い出して下さい。
  
 


46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/06(金) 12:00:51.53 ID:tj8GT2fEP

( ´_ゝ`)「これは…」

从'ー'从「なかなか素敵な遺書でしょう。」

( ´_ゝ`)「遺書というより、詩か、恋文のようだな。誰かに宛てて、書いたように見えるが」

从'ー'从「わたくしの、愛するひとへ。その方はわたくしを愛してはくださらなかったけれど。
      いえ、だからこそ、女らしく、慎ましく、愛のことばを紡いだ積もりです。」
      
(´<_` )「何処が慎ましくだ、押し付けがましいばかりじゃないか。」

( ´_ゝ`)「こら、弟者…。しかし、たしかに、これじゃあ愛のことばというよりか、呪いの言葉じゃないか。
      向こうもあんたを愛しているなら、その呪いごと愛と呼んだってかまわんが、
      あんただけが愛しているんじゃ、こんな言葉は、ただの呪詛だぞ。」

从'ー'从「可哀想な方たちだこと。きっと、人を愛したことがないのでしょう…」

(´<_` )「人を愛するってのが、あんたみたいな一人芝居をすることなら、頼まれたって謹んで辞退させてもらうだろうよ。
      しかし、この手紙を送られる奴には、同情するね。
      折角の月が綺麗な晩に、いい気分で居ることを許されないとは。」

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/06(金) 12:15:11.61 ID:tj8GT2fEP

从'ー'从「ええ、ええ、男の方は、女の愛を邪険になさるのがご趣味なの、十分過ぎるくらいわかっているわ。
      ……きっと、今夜は、満月でしょうから、今夜、死にます。
      さ、お行きになって。わたくしは、ひとりで最後の晩餐を楽しみます。」

( ´_ゝ`)「べつに、いつ死んだって、その男にはわからねえよ。
      その男にとっては、あんたが昼間に死んだって、その手紙のとおり、月が綺麗な夜に死んだってことになる。」

从'ー'从「……それでも。」

( ´_ゝ`)「それどころかよ、ほんとうは、あんたが死んでも死ななくても、その男にはわかんねえんだよ。
      もし、あんたが自分とさよならするのが、その男の愛をいただけなかったからってだけなら、
      やめておいたほうがいいぜ。どんなに呪いの言葉を送っても、そんなもの、時間でどうにか出来るんだから、馬鹿らしいぜ。」

(´<_` )「おせっかいはよせやい。行こう、俺は腹が減った。」

(;´_ゝ`)「まったく、お前は…」

89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/06(金) 21:48:13.86 ID:tj8GT2fEP

(´<_` )むしゃむしゃ

(´<_` )むしゃむ……

(´<_` )「兄者、大丈夫か?」

(; _ゝ )「お前が、心配するなんて、今の己れ、よっぽど、酷い顔をしているんだろうな…」

(´<_` )「顔の方は、血まみれでよく見えないが。心のほうが少し酷いな。
      内容まではわからんが、相当ぐちゃぐちゃしているようだ。」

(´<_` )「……この腕だけ貰って、違うところで食べようか。」

(; _ゝ )「お前と出逢って何十年、初めて己れに対する優しさを見せたな」

(´<_` )「あっ、やっぱり腸も欲しい。あと脚も。あと…」

(; _ゝ )「お前が持っているなけなしの優しさをありったけ己れに寄越しやがれ!今すぐにだ!」

90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/06(金) 21:52:07.14 ID:tj8GT2fEP

(´<_` )「優しさか…。」

(´<_` )ぶちっぶちっぶちっ

(´<_` )ぶちっぶちっぐちゃっ

(´<_` )「妥協はしたぞ。よし、じゃあ隣の部屋へ行ってくる。」

(; _ゝ )「おう、あんまり汚すんじゃねえぞ。しょぼんが一人でやってる宿なんだから。」

(; _ゝ )

(; _ゝ )「何処が妥協してるんだよ……いつもより大目にとっていってんじゃねえか…
      心臓を置いていったところが、妥協なのかねえ…」

(  _ゝ )びきっ

(  _ゝ )びき、びしっ、みしみしっ

91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/06(金) 21:56:12.96 ID:tj8GT2fEP









おま       ば       だ。






93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/06(金) 22:00:00.93 ID:tj8GT2fEP


(´<_` )むしゃむしゃ

(´<_` )むしゃむしゃ

(´<_` )ちゅるんっむしゃむしゃむしゃ

(´<_` )むしゃむしゃはむっ

(´<_` )むしゃむしゃ

(´<_` )むしゃむしゃ

(´<_` )むしゃむしゃ

(´<_` )「はー、ご馳走様でした。」

95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/06(金) 22:06:07.84 ID:tj8GT2fEP

( ´_ゝ`)みしっ

( ´_ゝ`)「あぁ、やっと治った……」

(´<_` )「ただいま兄者。なんだかさっきより美味しそうだな、今しがた作ったばかりか。」

( ´_ゝ`)「作ったとか云うんじゃない…。血、片付けとけよ」

(´<_` )「勿論だ。喰ったあとは後片付けと相場が決まっている」

( ´_ゝ`)「お前ったら、変なところで常識的なんだから、気味がわるいよなあ……」

(´<_` )ごしごし

( ´_ゝ`)「………う」

(´<_` )「う?」

( ´_ゝ`)「………」

(;´_ゝ`)「吐く…」

(´<_` )「履く?」

96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/06(金) 22:12:35.45 ID:tj8GT2fEP

(;´_ゝ`)「うぐっ、うえ…」

(´<_` )「うわ、どうした兄者。ご懐妊か。さっき腹を開けたときには何も居なかったのに。」

(;´_ゝ`)「ごかっ、あるっ、うぐえぇ…」

(´<_` )「赤ん坊が産まれた暁には、是非食わせてくれ」

(;´_ゝ`)「お……っと、だま……ぐ、ぁぁ……はっ…」

(´<_` )

(;´_ゝ`)「……はー、はー、はー…」

(´<_` )

(;´_ゝ`)「あぁ、吐いたのなんて、何十年、いや、何百年ぶりのことだか…」

(´<_` )

(;´_ゝ`)「な、なんかいたわりの言葉とかかけろよ……」

(´<_` )「さっき、兄者が黙れって云ったんじゃないか。」

(;´_ゝ`)「こういうときばっかり、素直になるんじゃねえよ…」

100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/06(金) 22:20:22.49 ID:tj8GT2fEP

(´<_` )「まあ、俺は優しいから、ついでに片付けておいてやるけどよ、二度手間はごめんだぜ。
      吐くなら、いま全部吐けよ。」

( ´_ゝ`)「ああ、まあ、多分、大丈夫だ。すまんな。うう、胃液の味が気持ちが悪い。」

(´<_` )「口をゆすげばいいんじゃねえの。」

( ´_ゝ`)「成る程、なるほど……お前、実は頭がいいな」

(´<_` )「本当に大丈夫か、兄者…」

102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/06(金) 22:22:05.20 ID:tj8GT2fEP







      て、     き  い      !




し       え!





103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/06(金) 22:24:57.27 ID:tj8GT2fEP


( ´_ゝ`)がらがら

( ´_ゝ`)ぺっ

( ´_ゝ`)がらがら

( ´_ゝ`)ぺっ

( ´_ゝ`)「これで、超大丈夫だ。ははは。己れさま、無敵だぞう。」

(´<_` )「正気とさよならをしてしまったのか、兄者…。いくらさよなら村だとて、それは…」

( ´_ゝ`)「ふん、なんとでもいえ。この笑いがわからんとは、お前、笑いのせんすが無いな。」

(´<_` )「扇子?」

( ´_ゝ`)「せんす。感性だ、感性。……ひでえ匂いだ、窓を開けるか。」

105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/06(金) 22:35:10.32 ID:tj8GT2fEP

(´<_` )ごしごし

(´<_` )「兄者のせいで、雑巾が足りねえ。
      しょぼんのやつは、今居ないんだっけ。」

( ´_ゝ`)「そりゃあ、すまん…。
      しょぼんは、聖堂の方の掃除、行くっていってたな。
      あそこ、だだっぴろいから、当分帰ってこないぜ。」

(´<_` )「聖堂というと、聖なる場所なのか。」

( ´_ゝ`)「そりゃあ、さよならの神さまのおわします場所だから、聖なる場所だろう。
      そうだな、にゅうそくにある、基督教の教会に、とてもよく似ている。
      基督教は、知ってるか。いえす様っていう偉いおじさんを奉ってるところなんだけど。」

(´<_` )「なんだそいつ。美味しいのか?」

( ´_ゝ`)「たしか、一回死んで、生き返った筈だから、美味いんじゃあないの。」

(´<_` )「それは、喰ってみてえなあ。」

113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/06(金) 22:49:46.64 ID:tj8GT2fEP

( ´_ゝ`)「夜風が心地いいな。月さんもまんまるで、いい気分だ。……」

(´<_` )「どうした、兄者。」

( ´_ゝ`)「ん、ああ、いや。いえすさん、諸説あるが、とりあえず、神ってことだから、美味くねえんじゃないかな…。
      お前、人しか喰わねんだろ。」

(´<_` )「当たり前だろう。」

( ´_ゝ`)「当たり前ねえ…」

(´<_` )「で、その聖堂で、さよならをするのか。」

( ´_ゝ`)「まあ、そういうことだな。別れたいやつらが、真っ黒な絨毯を歩いていって、聖堂の真ん中で向かいあう。」

( ´_ゝ`)「んで、偉そうな格好をしたひとがこう云うんだ。」

( ´_ゝ`)「その健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、
      これと別れ、これを無くし、これを忘れ、その命ある限り、さよならすることを誓いますか?」

118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/06(金) 22:57:17.95 ID:tj8GT2fEP

(´<_` )「それにはいと答えたら、さよならか。」

( ´_ゝ`)「ああ、さよならだ。」

(´<_` )「二人居たとして、片方が、いいえと云ったら、どうなるんだ。」

( ´_ゝ`)「……さよならは、二人の同意が無くたって、成立するんだって。」

(´<_` )「つまり、片方が泣いて縋ったって、片方がさよならをしたいって云ったら、さよならか。」

( ´_ゝ`)「ああ、さよならだ。命ある限り。」

(´<_` )「もし、さよならをしたのに、会いに行ったりしたら、どうなるんだ。」

( ´_ゝ`)

( ´_ゝ`)「……詳しくは知らんが、罰が下るだろうよ。神さまを裏切ったんだから。」

(´<_` )「おお、兄者は、さよならの神さまは、本当に信じているんだな」

( ´_ゝ`)「そりゃあ、みるなとは違うって。それに、人間ってのは、悪いことはけろっと信じちまうんだよ」

(´<_` )「普通、逆じゃねえの。」

( ´_ゝ`)「すこうし長く生きると、そうはならない」

(´<_` )「ふうん、損なもんだな。」

121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/06(金) 23:05:28.93 ID:tj8GT2fEP

(´<_` )「ところで、兄者は随分と、さよならに詳しいんだな。」

( ´_ゝ`)「そりゃ、お前よりは詳しいって。長く生きているからな。」

(´<_` )「ほう。俺はてっきり、昔の女に、此処でこっぴどくふられたのかと」

( ´_ゝ`)「違うわ、阿呆。その程度で吐いてたら、五年に一回は吐かなきゃなんねえだろ。」

(´<_` )「ふうん。じゃあ、聖堂へ行こうぜ。」

(;´_ゝ`)「それは絶対、嫌だ。」

(´<_` )「おや」

(;´_ゝ`)「あそこ、本当に辛気臭いんだぞ。変な石像が、見下ろしててさ。
      ああ、思い出しちまったじゃねえか、くそ忌々しい。
      とにかく、」

(´<_` )「俺は、気を利かせてやったのに。兄者がいいんなら、いいけど。」

131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/06(金) 23:26:42.02 ID:tj8GT2fEP

( ´_ゝ`)「なんだ、気を利かせるってのは。」

(´<_` )「お月さんが綺麗ってことは、あの女、死ぬるだろ。
      どうせ、兄者のことだから、それを気にしていたのかと思ったが、忘れていたのか。 
      そんなにも、昔の女に手ひどくふられたのか。」

( ´_ゝ`)「だから、ちげっての……って、ああ、そうだ、さっきそれを思ったのに、とんと忘れちまってた、
      仕方ない、お前の我が儘に付き合ってやる。」

(´<_` )「一息で云う台詞を矛盾させておいて、堂々としていれるなんて、
      まったく、兄者は流石だなあ。」

135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/06(金) 23:39:19.06 ID:tj8GT2fEP
( ´_ゝ`)「褒めたって、指の一本もやんねえから。
      ……はあ、行きたくねえなあ。でも、弟者が我が儘を云うからなあ。」

(´<_` )「そうそう、俺が我が儘だから、仕方ねえや。」

( ´_ゝ`)「……」

( ´_ゝ`)「此処が、聖堂だ。さよならの、神さまがおわすところ。 
      なあ、弟者……先に、云わせて欲しいんだが、
      己れは、お前とさよならしねえからな。」

(´<_` )「当たり前だろう。」

( ´_ゝ`)「……お前、人しか喰わないんだろっていったときと、全くおんなじ返事しやがって…」

(´<_` )「それくらい、当たり前だってことだ。」

( ´_ゝ`)「ありがてえのか、そうでないのか、値踏みしにくい言葉だなあ。
      まあいいや。それ、開けるぞ…。」

( ´_ゝ`)

( ´_ゝ`)「あ、開けるぞ…」

(´<_` )「開けろよ。」

(;´_ゝ`)「開けりゃあいいんだろ、開けりゃあよ!」

142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/06(金) 23:51:43.87 ID:tj8GT2fEP

(´・ω・`)「汝、その健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、 」

( ´_ゝ`) 「うっ…」

(´<_` )「遅かったか。まあいいけど」

(;´_ゝ`) 「そういう本音は包み隠せ!処女の貞操のように!」

(´<_` )「処女喰わせてくれたら処女になるぞ。うめえんだ処女。」

(;´_ゝ`) 「この鬼畜生があ!」

(´・ω・`)「これと別れ、これを無くし、これを忘れ、その命ある限り、さよならすることを誓いますか?」

(;´_ゝ`) 「おいこら、やめとけ!」

从'ー'从「誓います…」

(´・ω・`)「では、誓いの言葉を。」

146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/07(土) 00:03:34.64 ID:7IfkctqNP
    


(´<_` )『さいてい、さいあくの、わがあにへ。
从'ー'从「わたくしの、愛するひとへ。
      おまえのせいで、かぞくはみな死んだ。おまえが殺したもどうぜんだ。
      わたくしはあなたさまを愛しておりました。
      それなのに、おまえはなぜだか生きている。殺そうとおもっても、
      貴方さまもそうであると信じておりました。
      おまえはなかなか死にやしない。
      だのに、わたくしのこの身に新たな命を芽吹かせておいて、
      おれは、すべてをにくむ。おまえというにんげんを、いのちを、
      貴方さまは依然として、一所に止まっていては死んでしまう病に。
      そのじんせいを、そしておれの、おまえとおなじくらい永いであろうこのじんせいを。
      ああ、それでも、それでも。
      このみにながれるあかいちを、おまえとほとんどおなじこのかおを、
      どうか、 わたくしが不幸であったことは全てお忘れになって。
      にくにくしくも、おまえなどとははさまのはらにやどり、ともにうまれてしまったこのきずなを。
      どうか、 わたくしが幸いであったことだけを覚えておいて。
      おまえのいのちをうばうこと、おれのじんせいをすてること、ちや、かおをすてることはかなうまい。
      わたくしは、月が綺麗な夜に死にます。
      だから、このきずなをすてる。あったことすら、わすれてやる。
      ですから、月の綺麗な夜にだけ、わたくしのことを思い出して下さい。 」
      さよなら、さよなら。なるべくはやく死ぬといい。』


152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/07(土) 00:13:17.66 ID:7IfkctqNP
从'ー'从「どんな時も今のこの気持ちを忘れない事をここに誓います』(´<_` )

(´・ω・`)「よろしい。今のことば、さよならの神も、しかと聞き遂げた。」

从'ー'从「ええ、それでは。……さよなら。」

(´・ω・`)「さよなら。」

(´<_` )「おい、女、いっちまうぞ。」

(; _ゝ )「………」

(´<_` )「兄者?」

(; _ゝ )「…………」

(´<_` )「なんだよ、まさか、あいつの妊娠が伝染ったか?」

(; _ゝ )「ちがわい、……行くぞ、追いかける。」

(´・ω・`)「追いかけて、どうする。」

(; _ゝ )「知るか、そんなの……知るか…。」

158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/07(土) 00:23:20.39 ID:7IfkctqNP

从'ー'从「……月が、きれいねえ〜…」

( ´_ゝ`) 「……生きてりゃ、明日はもっと綺麗な月だ。」

从'ー'从「あのひとが、他の女と懇ろしているの、家でただ待っておく明日が、そんなに美しいものかしら?」

( ´_ゝ`) 「腹ん中に、愛した男との、こどもが住んでるんだろう。
       家が、勝手に壊れたり、逃げたりしたら、お前さんだって困るだろう。
       だいたい、こどもは家を選べねえんだ、可哀想だとおもわんのかい。
       十月と十日くらい、建っていてやれよ。」

从'ー'从「男のひとは、勝手。こどもを宿すってこと、どれだけの重大さか、まるでわかっていない。
      そりゃあ、そうよね。あんたがたは、ただ、木材や、煉瓦を、女に押し付けるだけでいいんだから。」

( ´_ゝ`) 「重大さをわかってねえのは、あんたのほうだっての。
      こともを宿すことの重大さ、わかってんなら、殺すようなことしなさんな。
      親がこどもを殺すなんて、こどもが親を殺すくらい、いけないことだぞ…。」

160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/07(土) 00:31:20.05 ID:7IfkctqNP

从'ー'从「……そんなこと、わかっています…」

(´<_` )「どうだかね。お前、止めて欲しかっただけだろう。
     さっき、一番早い鳩にって頼み込んで、手紙を送っていたのを見たぞ。
     部屋も、食料を買い込んであったみたいだし、
     男が迎えに来るの、此処で待つつもりだったんだろう。」

从'ー'从「……」

( ´_ゝ`) 「お前の能力って、便利だよな。
      ただ読んだだけなのに、凄く頭が良さそうに見えるぞ。」

(´<_` )「失礼な、これは、読んだわけじゃねえぞ。
      いつだって、捕食者は、獲物の生態に詳しいんだよ。」

( ´_ゝ`) 「お前…」

从'ー'从「わからなかったの…」
   
( ´_ゝ`)「うん?」

162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/07(土) 00:41:18.31 ID:7IfkctqNP

从'ー'从「身重の身体だからって、仕事もさせて貰えなくって、家であのひとを待つまいにち。
      それで、あのひとは毎日、女の香りを土産に持って帰ってくる。ひどい日には、女そのものまで。
      あのひとと、女の、獣の咆哮を聞きながら、見知らぬ女に罵倒されながら、
      食べては貰えぬお米をたきながら、捨てられてしまう晩飯を作りながら、
      私はゆっくりと死んでいくような心持がいたしました。
      もう、生きていても、死んでいても、違わないような。
      そう考えると、そもそも、生きていることがどういうことか、わからなくなったのです。 
      心臓が動いていれば、息をしてさえいれば、生きていることになるのでしょうか?
      どうしたら、どうしたらと考えているうちに、それなら、死んでみたらいいのではないかと思い当たりました。
      これは、賭けでした。あの人が迎えに来てくれて、死ぬなと一言いってくださったなら、 
      きっとわたくしは、生きているって実感できるから。こどもを産み、育てることができるから…。」

(´<_` )「生きてる実感が欲しくて、こんなことをしたってのか。
      なぁんだ、馬鹿らしい。んなもん、簡単だろうが。」

(´<_` )「美味い飯を食えば、そんなもの、嫌でも湧くじゃねえか」

(;´_ゝ`)「バッ……」


166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/07(土) 00:53:01.29 ID:7IfkctqNP
从'ー'从

+(´<_` )

(;´_ゝ`)

(;´_ゝ`)「こっ、この、ばっかや……」

从*'ー'从「あははははは!」

(;´_ゝ`)「うおぅ?!」

从*'ー'从「は、はは、おっかしいな、君は……。」

(´<_` )「何がおかしい。」

( ´_ゝ`)「お前の主食かな…。」

从^ー^从「だって、わたくし、こどもをやどらせて以来、ろくな食事、とってなかったんですもの。」

(´<_` )「そら、見たことか。」

168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/07(土) 00:57:00.00 ID:7IfkctqNP
从^ー^从「此処にきてからも、味気のない乾物ばかり。それでも、何も感じませんでしたわ。
       おなかが減るって感覚すら、失われつつありました。
       ただ、死ぬこと、生きること、こどものこと、あのひとのことだけを考えていました。
       嗚呼、でも、今、なんだかとっても、おなかが減ってしまったわ…。
       ははさまのつくった、あまぁいじゃがいもの、肉じゃがが食べたい。
       旬で、脂がのった、ぷりぷりの秋刀魚さんを食べたい。」

(;´_ゝ`)「やめろ、己れまで腹が減ってくるって……。」

(´<_` )「俺は、まったく。……おい、今腹を鳴らしたのは誰だ。」

(;´_ゝ`)「己れじゃないぞ!」

从。^ー^从「ふふ、はしたないわね。ごめんなさい。
       ああ、でも、やだわ、わたし、今、生きてるって気がしてきてしまったじゃない。
       もう、この世と、さよならしたのに……」

( ´_ゝ`)「さよならしたって、お前さん、まだ生きてるじゃないか。元気に腹も鳴ったし、
      腹んなかにゃ子どもも居るし、生きてる限り、この世とさよならはできねえよ。
      さっさと、こんな村降りちまえ。馬鹿な男は、しゃもじで張り倒して、
      文句を言う女には、米びつをぶつけて、中の米だけはお前さんが頂いてしまえ!」

172 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/07(土) 01:05:42.39 ID:7IfkctqNP
从。^ー^从「生きていいのかしら、わたくし……そんなふうに、強く生きられるかしら…。」

( ´_ゝ`)「そんなのは、お前さんの、心がけひとつ、ふたつ。
      どうしてもっていうんなら、己れがその男ぶったたいてやるわ。」

从;ー;从「ああ、ああ、生きたい。生きて、
      それで、この、おなかの中に住んでいる命の、顔を見たい。触れたい。声を聞きたい…」

(´<_` )「生きろ、生きろ。喰うのだってそもそも、生きるため。
      人間の本能に従って、何が悪いってんだ。泣くこたないだろう。」

(´・ω・`)「そうそう、だから、この世との、さよならの誓いなんて、安易にするもんじゃあないよ。」

( ´_ゝ`)「吃驚した…。そうそう、人間の本能とさよならなんてしたら、だれかさんみたいに、
      鬼畜生だとか、呼ばれちまうぞ。」

(´<_` )「俺ほど本能に従ってる男も居ないがな。」

174 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/07(土) 01:09:22.77 ID:7IfkctqNP

(´・ω・`)「誓いなんて、安易にするもんじゃあ、ないよ。」

( ´_ゝ`)「しょぼん?」

(´<_` )「……んん?」

(´・ω・`)「よりにもよって、さよならの神さまに。」

( ´_ゝ`)「何云ってんだ?」

(´<_` )「罰を下すとかなんとか云ってるけど」

( ´_ゝ`)「ば…」

(;´_ゝ`)「おっ、」

(;´_ゝ`)「弟者ぁあぁあ!」

176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/07(土) 01:12:36.63 ID:7IfkctqNP
(´<_` )「へ?」

从;ー;从「 ぁ” 、」

じゃきん、

(´<_` )「……」

ごとっ。

(;´_ゝ`)「―――ッ、」

ごろり。

(´・ω・`)「あぁめん。」

179 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/07(土) 01:20:48.78 ID:7IfkctqNP
(´<_` )「しょぼん、お前、何しやが…」

(; _ゝ )「ア”ア”あぁああああ”ああああ”あああああああ”あああ”!!!!!」

(´・ω・`)「おやおや」

(; _ゝ )「うア”あああああ”あああああああ”あああああああ!!!!!!」

(´・ω・`)「忘れられないってのも、難儀なもんだね。もう、何千年と、経ってるんじゃないのかい。
      まだ、鮮明に、覚えているの。母が、父が、姉が、妹が、惨殺されているところ。」

(; _ゝ )「ああぁああああ””あああアアあ”ああァあああぐっ、あ、あ、あ、あ、ああー、ああー!」

(´・ω・`)「こりゃ、駄目だ。弟もどき、兄者を宿屋へ運んでやりな。」

(´・ω・`)「……そうそう、さっきの質問に、答えていなかったね。
      これは、罰だよ。罰を下したの。さよならの神さまの代わりに。
      僕の優しさだよ、これは。さよならの神さまがじきじきに下す罰は、実に重い。
      兄者が一番よく知ってると思うけど。」

(´<_` )「どういうことだ。」

181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/07(土) 01:26:46.11 ID:7IfkctqNP

(´・ω・`)「僕も、聞いた話だけど。なんせ、僕の未だ産まれていなかったころの話だし。
      君は知っていると思っていたけど。
      兄者はね、この村で、弟と、本当の弟と、さよならをしたんだ。
      正式には、させられたというべきだろうね。弟が、勝手にそうしたんだから。
      んで、そのずぅっと後に、どういうつもりだったかは知らないけど、
      兄者ったら、弟に会いに行ったんだ。そうしたら、弟のやつ、
      兄者ほどじゃないにしろ、中々死なない身体だったのに、あっさりと殺されちまった。
      相当、むごく。死体は喰われちまったらしいし…」

(´<_` )「それが、罰か。」

(´・ω・`)「そう。家族ごと、皆殺しだったみたい。兄者の例だけじゃないよ。
      さよならの神さまは、本当にこわい。だから、僕が一番早くに、罰を与えてあげているんだ。」

(´<_` )「……」

(´・ω・`)「僕は、お墓を作るから、兄者をよろしくね。」

185 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/07(土) 01:31:17.71 ID:7IfkctqNP

(´<_` )「おい、兄者」

(; _ゝ )「う、うー、うー…」

(´<_` )「弟って、俺が喰った、あれのことか」

(; _ゝ )「う、うう、あ、あああ………ご、ごめん…なさい…」

(´<_` )「うん?」

189 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/07(土) 01:37:22.35 ID:7IfkctqNP
(; _ゝ )「おれが死ねばよかったんだ、
      おれなんかのせいで、ははさまもちちさまも殺された。
      あねやいもうとは、くつじょくと、りょうじょくのかぎりをつくされ むしけらのように殺された。
      おれなんかのせいで。おれなんかのせいで。
      だのに、おれは生きている。 おれが死ねばよかったのに。

      にくまれて、とうぜんだ。おれのそのうんめいを、 おれというにんげんの、
      あたまのてっぺんからつまさきまで、 かみのけのいっぽんにいたるまで、にくまれてとうぜんなのだ。
      ゆるされない、ぜったいにゆるされない。 」

(´<_` )「……あにじゃー?」

(; _ゝ )「………ああ、ちがう、ちがう、ちがうんだ。
      殺すつもりなんてなかった、ははさまもちちさまもあねさまもいもうとも、おまえも。
      ただひとめみたかっただけなんだ、ただひとめ、おれの、たったひとりのかぞくが、
      どんなふうに生きているのか、みたかっただけなんだ…。
     
      ああ、ああ、あああああ、なぜ、さよならの神は、おれに罰をくださなかった!」

(´<_` )「……」

196 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/07(土) 01:45:08.43 ID:7IfkctqNP





(; _ゝ )「ゆるされない、ゆるされてはならない、………ああ、でも、ちがう、ほんとうは、でも、
      ゆるされたい、ゆるされたいんだ、……っ、ゆるしてくれ!
      ゆるして、きずなを、さよならするなんてい わないで、たっ、たいせつな、おれの、
      かえして、やめてくれ、あああ、あああああ、おねがい、おねがい、かみさま、ああ、
      ゆるして、ゆるして、ごめんなさい、ははじゃ、ちちじゃ、あねじゃ、いもじゃ……
      ごめん、ごめん、ごめん、あっ、ああ………こんなの、ゆるされるべきじゃないのに、
      で も 、ゆるして、だれか、かみさま、あくまでも、だれでも、ゆるして、ゆるしてと、いう、こと……」

200 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/07(土) 01:49:22.34 ID:7IfkctqNP
(´<_` )「……」

(´<_` )「ええと。」
 
(´<_` )「許してやるぞ、鬼畜生でよければ。」

(; _ゝ )「……る、?」

(´<_` )「うん、許すぞ。っていうか、どれだけ呪われてたって、俺が喰っちまったし、大丈夫だろ。
      あたまのてっぺんからつまさきまでと、 かみのけのいっぽんにいたるまで、だっけ?
      ぜんぶ食べたことあるし、大丈夫だぞ。さすがに、運命までは喰えんが、それはまあ、許したし、大丈夫。」

(; _ゝ )「………う…」

(´<_` )「うん。」

(;´_ゝ`)「……弟者?」

(´<_` )「そうだぞ。」

205 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/07(土) 01:56:03.34 ID:7IfkctqNP

(;´_ゝ`)「あ、ああ。弟者か。」

(´<_` )「遂に呆けだしたか…」

(;´_ゝ`)「し、しっかし、お、己れ、もしかしてめちゃめちゃ恥ずかしいことを云って…」

(´<_` )「おしっこ漏らしちゃーうとか、弟者かっこいー、己れの頭の天辺から爪先まで喰ってー、とか云ってたぞ。
      というわけでいただきます」

(;´_ゝ`)「捏造するんじゃねえ!喰うな、こんな夜中に喰ったら太るぞ!」

(´<_` )「兄者が太らなきゃ俺も太らねえって…」

211 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/07(土) 02:02:22.98 ID:7IfkctqNP
( ´_ゝ`)「……くっそ、なんか泣いてるじゃねえか己れ…」

(´<_` )「泣いてるときは、美味しいぞ。」

( ´_ゝ`)「黙れ、黙れ。あれもこれもそれもぜんぶがぜんぶ、この村のせい。
      行くぞ、こんなとこで寝るくらいなら、野宿のほうがマシだって、
      己れはあれほど云ったのに、お前のせいで、こんな目に!」

(´<_` )「云ったっけ、そんなこと…」

( ´_ゝ`)「云った、云った。さあさあ、荷物を持ちやがれ!」

(´<_` )「元気だなあ、あんなにぴぃぴぃ泣いてたってのに」

( ´_ゝ`)「飯抜き」

(´<_` )「兄者が泣いてたことなんてもらには、もらだけは、絶、対、に、云わないから許してくれよ」

( ´_ゝ`)「お前、脅しを覚えたのか。ますます悪党だな…。」

213 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/07(土) 02:05:35.24 ID:7IfkctqNP

(´<_` )「そういえば。」

( ´_ゝ`)「うん?」

(´<_` )「俺が喰った、あんたの弟、何て名前だったンだ?」

( ´_ゝ`)「……」

( ´_ゝ`)「弟者。」

(´<_` )「なんだよ。」

( ´_ゝ`)「べつに、なんでも。行くぞ、弟者。
      己れは、あまぁいじゃがいもの、肉じゃがと、
      旬で、脂がのった、ぷりぷりの秋刀魚さんを食べたいんだから。」

215 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/07(土) 02:06:56.10 ID:7IfkctqNP




いまでも、どこかにさよなら村はあって、

そこにはしょんぼりがおの物の怪が、

かみさまをきどっているんだそうな。


戻る 次へ

inserted by FC2 system