(´<_` )むしゃむしゃのようです

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/09(日) 23:56:08.49 ID:fFxOfJRz0









一生つきとおした嘘は、きっと、ほんとうになる。


3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/09(日) 23:57:22.78 ID:fFxOfJRz0

( ´_ゝ`) 「うーむ、村、見つからんなあ。今日も野宿なのかねえ」

(´<_` )「毎度毎度、思うんだが、兄者、記憶力がいいってのが唯一のウリなのに、
      なんでこうも道がまったくわからんのだ。」

( ´_ゝ`) 「唯一って何だ唯一って。もっとあるだろう」

(´<_` )「そうか、そうだな。俺としたことが、兄者の最大の長所を忘れていたよ。
      美味しいってことだ。」

( ´_ゝ`)「……」

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/09(日) 23:58:45.84 ID:fFxOfJRz0

( ´_ゝ`)「まあ、お前の失言は聞かなかったことにしておいてやるとして、己れの記憶力についてだったな。
      幾ら己れが天才で超色男でも、限界ってもんがあってだな。
      何処にこの道を通った記憶をしまったかを、覚えてないって云ったらわかるか。
      人間の名前だとか、そういったもんはそうでもないんだが、
      道だとかってのは、覚える意欲のせいかわからんが、思い出すのがしんどいんだよな。
      思い出そうとすれば、まあ思いだせんこともないが、野宿ってのも、別に嫌いじゃないしねえ。
      ま、それはともかく、この辺はたぶん、単純に通ったことがねえんだと思う。」

(´<_` )「それだけ生きてきて、通ったことがないのか。」

( ´_ゝ`)「もらに拾われてから、もらの気まぐれで変な国ばっか行ってたしねえ、
      案外この国は行ったことがないのが多いんだって。」

(´<_` )「というと、にゅうそくだとかか」

( ´_ゝ`)「うん、にゅうそくは結構回ったなあ。なんてったって、もらの故郷だし。
      あ、みるなもな。どうでもいいけど。」

(´<_` )「その頃から、仲が悪かったのか。」

( ´_ゝ`)「そりゃ、己れが犬なら、みるなは猿の糞だろうってなくらいには。」  

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/09(日) 23:59:54.77 ID:fFxOfJRz0

( ´_ゝ`)「ま、そういうわけで、天才でありながら、己れは道に迷ってるってわけ。
      それに、何年も経てば、知ってる道が消えてたり、新しい道が出来てたりで、
      逆に前の記憶が邪魔になることもあるしな。
      んでもって、むしろ道に迷うことを楽しんでるって節もあるわけよ。
      時間だけは、お前も己れも、売るほどあるし。」

(´<_` )「ふうん。びっぷを全部まわったら、にゅうそくにも行くのか。」

( ´_ゝ`)「行きたいなら、次は其処に行こうか。でもお前、言葉を覚えなきゃなんねえぞ」

(´<_` )「心読めば、大体わかるぞ?」

( ´_ゝ`)「心って…」

(´<_` )「話す言葉が違っても、大体はわかる。何故かは知らんけど。 
      まあ、話す方は覚えなきゃいかんな」

( ´_ゝ`)「お前って、何でもありだよな。そういうのって、不平等だと思うぞ」

(´<_` )「そりゃ、俺は人間だからな。
      人間は不平等だって云ったの、兄者じゃないか。」

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 00:00:44.30 ID:fmabPcks0
( ´_ゝ`)「不平等なもんだけど、だからってそれを許せるわけじゃ…」

(゜д゜@「あらやだ。」

(´<_` )「うん?」

(゜д゜@「旅の方とお見受けしますが。
      わたくし、よろずや、あら屋でござんす。
      なにかご入用のものがあれば伺いますで。」

( ´_ゝ`)「いや、特に……食料も、やっと生きていける程度はあるから。つまり、十分な量ってことだが。」

(゜д゜@「あらやだ。」

( ´_ゝ`)「うん?」

(゜д゜@「旅の方、地図をお持ちでないようで。
     安いよ、安いよ。買っておいきなさいよ。」

( ´_ゝ`)「いや、だから…」

(゜д゜@「あらやだ。」

(´<_` )「うん…」

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 00:02:37.98 ID:fmabPcks0

(゜д゜@「方位の、磁石も、お持ちでない?
     安いよ、安いよ、買っておいきなさいよ。
     これさえあれば、古今東西、東西南北、北北東から南南西まで、
     ぜんぶがぜんぶわかっちまうよ、お得だよ。」

( ´_ゝ`)「方位磁石ってそういうものじゃねえか…」

(゜д゜@「あらやだ。」

( ´_ゝ`)「うん……そうだな、地図を貰おう」

(゜д゜@「あらやだ、有難う御座いますよ。」

(´<_` )「それでいいのか、なけなしのお金を」

( ´_ゝ`)「まあ、前に見たのだいぶ前だし、見てみるのも悪くねえだろ」

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 00:03:53.48 ID:fFxOfJRz0

( ´_ゝ`)「ふうん、やっぱり、だいぶ変わってら」

(´<_` )「そんなのみたら、もう道に迷えなくなるんじゃないの。」

( ´_ゝ`)「ばッかお前、地図なんて、現在地と、方向がわかんなかったら何の意味もねえよ、ただの絵だ。」

(´<_` )「また野宿か…」

( ´_ゝ`)「外のが気兼ねなく喰えるし、後片付けもしなくていいんだから、お前は嬉しいんじゃないの。」

(´<_` )「血の匂いで寄って来る野犬とか、物の怪とかを殺すの、結構心が痛むんだぞ。食べられもしないのにって…」

( ´_ゝ`)「お前の罪悪感は、もうちょっと出るべきところをわきまえる必要があると思うぞ。
      つまり、人間を食うときにだな。」

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 00:06:22.67 ID:fmabPcks0

( ´_ゝ`)「とはいえ、己れも久しぶりに布団で寝たいしなあ。
      ふぅむ、此処がさよなら村で、確か西の方に進んできたはずだから、多分いま、この辺だろ。
      となると、そろそろ村が見えてきてもいいはずだけどなあ。」

(´<_` )「なんて村だ?」

( ´_ゝ`)「ふたつの村が、相当ちかくにあるな。うそつき村と、しょうじき村。
      お前、どっちに行きたい?」

(´<_` )「俺にとっては、みんなしょうじきだから、
      別にどちらでも同じだし、あんたが行きたいほうでいいぞ。」

( ´_ゝ`)「うそつきとしょうじき、どっちかっていうなら、
      そりゃ、しょうじきの方がいいな。うん、そうしよう」

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 00:09:38.01 ID:fmabPcks0

( ´_ゝ`)「在った在った、看板確認。うむうむ、しょうじき村、と」

(´<_` )「よかった、今日はゆっくり飯が喰える。」

( ´_ゝ`)「しかし、久しぶりに物騒じゃない名前だな。
     此処のところ、ゆうやけ村以外、大体物騒な村ばっかりだったし、
     己れも、ゆっくりと飯が喰えそうだ。」

(´<_` )「む?あっちにも村が」

( ´_ゝ`)「うそつき村だろ。」

(´<_` )「でも、あっちの看板にも、しょうじき村って書いてあるぞ。」

( ´_ゝ`)「んん?」

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 00:12:56.77 ID:fmabPcks0

( ´_ゝ`)「どれどれ……って、見えるか莫迦。
      なんで見えるンだよ、お前、眼鏡でも喰ったのか。」

(´<_` )「見ようと思えば、だいたいのものは見えるだろ」

( ´_ゝ`)「見えてたまるか……お前って、ほんと、ずるいよなあ…」

(´<_` )「逆に考えてみろよ、見えない自分が悪いんだって。
      たまには謙虚になってみるのも、いいと思うぞ。」

( ´_ゝ`)「あいにくだけど、自分が正しいと思えないことは、しない主義なんでね。」

(´<_` )「詰まり、あんたの中では、押し売りに負けることは正しいことってか。」

( ´_ゝ`)「……是非もなかったのだ」

(´<_` )「まぁた、格好いい風に云ってるけど、実は、格好悪いぞ、そういうの。」

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 00:14:45.07 ID:fmabPcks0
( ´_ゝ`)「どうとでも云え、お前だって、いつか己れが超、格好いいってわかるだろう。
      だって、それが真実なんだからな。」

(´<_` )「そのいつかは、限りなく来る可能性が低い、いつかだな。
      んで、どっちのしょうじき村にはいるんだよ。
      だいたい、何で二個あるんだ、その地図、間違ってるのか」

( ´_ゝ`)「いんや、前に見た地図にも、このふたつの村はあったぞ。」

(´<_` )「じゃあ、どういうことだ。看板が、嘘をついているとでも?」

( ´_ゝ`)「看板が……」

( ´_ゝ`)「あぁ、そうか、成る程。でかしたぞ弟者」

(´<_` )「へ?」

( ´_ゝ`)「片方が、嘘を看板に書いたんだ」

(´<_` )「成る程…」

( ´_ゝ`)「ま、入ってみりゃ、しょうじきかうそつきか位はわかるだろ。」

(´<_` )「そうだな、兄者が格好いいかどうか聞けば、一発でわかるだろうな。」

( ´_ゝ`)「真意は、聞かないことにするが、お前、己れと同じ顔をしているってこと、ゆめゆめ忘れるんじゃないぞ…」

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 00:15:56.20 ID:fmabPcks0

( ´_ゝ`)「なにはともあれ、とりあえず、宿屋だな、宿屋…」

(‘_L’)「あっ、旅人だ!くるな、くるな!」

(=゚ω゚)ノ「金持ってなさそうだぞ!さっさと出てけー!」

( ´_ゝ`)

(´<_` )

( ´_ゝ`)「此処は……うそつき村か?」

(´<_` )「いや、正直なところ、俺ら金持ってそうには見えないし、持ってないぞ。」

( ´_ゝ`)「じゃあなにか、いつも笑顔で出迎えてくれた宿屋のやつらも、みんなこう思ってたわけか?」

(´<_` )「まあ、割と」

( ´_ゝ`)「あ、そうか、お前はわかるんだっけ。それでよく人間不信とかならないよな…」

(´<_` )「腐るほど生きてきてるくせに、まったくあんたは子どもだなあ」

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 00:20:01.09 ID:fmabPcks0

( ´_ゝ`)「おう弟者、そうはいうがな、しょうじき村なら悪いことはないと思うわけだ。
      腐るほど生きてきた人生で、詐欺になら痛い目を多々見てきたが、しょうじきに痛い目を見たことはないからな。」

(´<_` )「ほう、さっきのは”痛い目”に入らないのか。兄者は寛大だな。」

( ´_ゝ`)「嘘でちやほやされるよか、マシだっての。とりあえず、飯喰いに行くぞ。」

(´<_` )「そうか、兄者は本当に、嘘を吐いてるやつとか、わかんないんだなあ。
      頭ではわかっていたけど、俺には当たり前のことが、兄者にはそうでないというのは、いまいち実感がわかないものだ。
      だとすると、この村にあんまり長いこと居ないほうがいいと思うけど…」

( ´_ゝ`)「お前、己れを怖がらせようとしたって、無駄だぞ。
      いかにお前が、神だか閻魔だかに色々不平等を与えられたずるい奴だからって、
      そういう、人間に関することは、長く生きてきた己れに分があるってもんだ。」

(´<_` )「ふうん…」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 00:22:02.31 ID:fmabPcks0
('、`*川 「あら、お客さんだわ。やだやだ、どれだけ働いたって、私は同じだけのお給料しかもらえないのに。
      この私のお給料ときたら、見たら雀も号泣するってもんよ。
      見たところ、旅の人みたい。男二人で、むさくるしい。きっと、女に飢えてるんだろうな。
      行きたくないわ、視線がいやらしいもの。」

(´<_` )「いつだっけ、ただしい村で、あんたが云ってたことと似たようなこと云ってるぜ。気が合うやつで、よかったな」

( ´_ゝ`)「ちっとも、いい事があるか…」

('、`*川 「仕方ない、ちっぽけな給料でも、貰わなきゃ遊べないし。
      さあさあ、さっさとご注文をどうぞ。ややこしい注文はつけないでくださいよ、面倒くさい。
      それで、さっさと食べて、さっさと帰って頂戴。」

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 00:25:21.23 ID:fmabPcks0

  ( ´_ゝ`)「……みたらし」

('、`*川 「みたらしって何よ。みたらし団子っていいなさいよ。団子すら云うのが面倒なら、
      外に食べに来ないでもらいたいところだわ。本数も云わないし、それに、お願いしますくらい云えないのかしら?
      金を払ってるんだから、当たり前とでも?まさか、お客様は神様だとでも思ってるのかしら。
      神は神でも、疫病神だって、わかってないのよ、きっと。」

(;´_ゝ`)「みたらし団子を三本お願いします店員さん!」

('、`*川 「いい年して、みたらしだけなんて。もっと金使えばいいのに。ないのかしら。気の毒に。
      しかも、三本って二人でわけ切れないじゃない。頭が悪いのかしら、教えてあげたほうがいいかしら。」

(;´_ゝ`)「余計なお世話だ、それにこいつは喰わねんだよ」

('、`*川 「なにか、話しかけてきたわ。
      お金がないから、女を買えないのね、だから、町娘でもひっかけて、
      安く済ませようっていう魂胆なのね。」

(;´_ゝ`)「違うっての!被害妄想もいい加減にしろ、せめて妄想らしく、心のうちにとどめておけって!」

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 00:30:23.99 ID:fmabPcks0

('、`*川 「そんなの、信じられるものですか。村の外の人は、嘘も吐けば本当のことも云う、気まぐれな人って聞いてますよ。」

(;´_ゝ`)「気まぐれとはなんだ気まぐれとは!人間の気遣いだとかそんなものを、そんな言葉で片付けるんじゃないよ!」

(´<_` )「ほらみろ、だから、云ったのに…」

(;´_ゝ`)「なにがだ、本当のことを云わないことと、嘘を吐くことは違うだろう!」

(´<_` )「でも、正直とは云えないだろ」

( ´_ゝ`)「そんなことは………」

(;´_ゝ`)「……そうなのか?」

(´<_` )「な、だから、云ったんだ。頭で嘘だとわかってても、口に出されなきゃ、それほど衝撃的ではないだろう?
      この村じゃ、あんたにとっちゃ、衝撃の連続。心が見えるものだったら、あんたの心なんて、ぼっこぼこの、むしゃむしゃだ。」

( ´_ゝ`)「……それは心が見えるものだったらそれも喰えたのに、残念だなあってことが云いたいのか?」

(´<_` )「どんな味がするんだろうな…」

(;´_ゝ`)「ああ、くそ、お前の考えることなら手にとるようにわかるってのに…」

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 00:33:13.77 ID:fmabPcks0

('、`*川 「はいどうぞ、さっき他の人に出したばっかりだったから、
      串を洗ってなくて使いまわしだけど、まあ大丈夫でしょう。
      そういえばこの秘伝のたれに、前に虫が入ってたっけ。
      しかもそのまま沈んでいたような。私なら絶対食べないな。」

(;´_ゝ`)「……」

(´<_` )「喰わないのか。」

(;´_ゝ`)「喰うよ!」

('、`*川 「ああ、眠たい……早く帰らないかなこいつら…」

(;´_ゝ`)むしゃむしゃ

('、`*川 「汚い食べ方。お里が知れるわね」

(;´_ゝ`)……もくもく

('、`*川 「女々しい食べ方……そっちの人なのかしら」

(;´_ゝ`)「どうしろと!?」

(´<_` )「暇なもんで、とりあえず文句いいたいだけなんだから、気にするんじゃないって。」

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 00:37:42.16 ID:fmabPcks0

(;´_ゝ`)「うう、喰った気がしねえ……あの、じゃあこれお勘定お願いします……その、ごちそうさまでした…
     畜生、なんで己れがこんな低姿勢にならなきゃいけないんだ…」

('、`*川 「お金間違えて多く渡さないかなあ……ねこばばするのに…」

(;´_ゝ`)「ビタ一文たりとも間違えないからな!」

('、`*川 「五月蝿い客。あぁ、やっと帰った……片付け面倒くさいなあ」

(;´_ゝ`)「二度と行かねえぞ、あんな店!くそが!」

(´<_` )「口が悪いことで。で、どうする?まだ、この村に居るか?」

(;´_ゝ`)「……」

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 00:42:37.56 ID:fmabPcks0

(´<_` )「な、あんたの弟の云うこと、たまには信用してみるもんだろ。」

( ´_ゝ`)「ううむ…。しかし、あそこまで、極端にしょうじきになるものかねえ。
      やっぱり、長い間をかけて、狭いなかでしか生きてこなかった結果か。
      何世代も、何世代もかけて、ああいう、しょうじき村になったんだろうな…。」

(´<_` )「まあ、あの狭い中で、みんなおなじようにしょうじきになれちまうなら、中々、楽に生きることが出来そうではあるよな。」

( ´_ゝ`)「どうだかなあ。まあ、企みもすぐバレちまうから、すくなくとも治安は良い気がするけど、
      普段からあの調子だとすると、喧嘩とか、見たくねえなあ……。
        でもよ、いくらしょうじき村が嫌だからって、嘘をつかれる方がいいかは、微妙なところだ」

(´<_` )「まあ、もう日も暮れたし、喰われて、寝るだけじゃねえか。」

( ´_ゝ`)「そりゃ、そうだけどよ……」

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 00:45:35.20 ID:fmabPcks0
<ヽ`∀´>「うわっ、客だ!」

( `ハ´)「帰れ、帰れ!」

(;´_ゝ`)「おい弟者、しょうじき村と同じこと云われたぞ?!」

<ヽ`∀´>「此処に名前を書いたら、怒るぞ!」

( `ハ´)「そうだそうだ、書いたりしたら、ただじゃおかねえぞ!」

(;´_ゝ`)「なんかめっちゃ、怖いぞ!激怒の大安売りだ!やっぱりしょうじき村に…」

<ヽ`∀´>「ふん、帰れ帰れ!今日いちばん良い知らせだ!」

( `ハ´)「そうだな、今日は美味い酒が飲めるってもんだ!」

(´<_` )「ときに兄者、ちょいと落ち着け。此処はうそつき村だぞ?」

(;´_ゝ`)「う、うむ…」

(´<_` )「あいつらの云ってることは全部嘘。ということは、今までの台詞を正しくなおしてやると、

(´<_` )「やった!お客さんだ!いらっしゃいませ!ようこそいらっしゃいました!
      どうぞこちらにご記入ください!どうぞどうぞ!
      帰るなんて……そんな…悲しい・・・
      今日は反省会だ、酒ものまねえ…
      となる。」

(;´_ゝ`)「……おお?!」

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 00:47:33.33 ID:fmabPcks0

( `ハ´)「何をやっている!さっさと帰れ!」

(;´_ゝ`)「……名前を書いても?」

<ヽ;∀;>「さっき帰るって言っただろうが!今更書かせるわけないだろ!」

(;´_ゝ`)「いい年した男が、泣くなよ…」

<ヽ;∀;>「よくも名前を書きやがったな!絶対許さないからな!消えちまえ!」

(;´_ゝ`)「…」

(´<_` )「台詞、なおす?」

(;´_ゝ`)「いや、いらん…」

( ;ハ;)「二階の部屋だけは絶対行くなよ!行ったら嫌がらせするからな!」

(;´_ゝ`)「だから泣くなって!」

( ;ハ;)「さっさと帰れえええ!」

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 00:48:22.33 ID:fmabPcks0
(;´_ゝ`)「ううん…」

(´<_` )「なんだ、その、濃厚な犬の交尾を見たときのような顔は。」

(;´_ゝ`)「どんな顔だよそれは…」

(´<_` )「微妙そうな顔を暗に示してみたんだが。
      あんたのことだから、ああいう奴等にはえらく嬉しそうにすると思っていたんだが。」

( ´_ゝ`)「お前、暗喩の才能ないから、これからはしなくていいぞ。
      いやな、確かにあいつらはいい奴だと思うし、この村に最初から来ていればと思っているが、
      どうも、ああいうかんじの知り合いが、思い出されて…」

( ;ω;)「ごっ、ごめんなさいですお、もう云われたもの意外は金輪際食べないから、許してくれお!」

ξ#゚听)ξ「あんた、いい加減にしなさいよ!あんまり莫迦なことばっかりやっていると、
       縛り上げて、漬物石つけて、魔手湖に沈めてやるからね!絶対助けてやらないんだから!」

( ´_ゝ`)「そう、あんな感じの…」

( ´_ゝ`)

(;´_ゝ`)「お、弟者、いいか、よく聞くんだ。今すぐ宿屋から出るぞ…」

(´<_` )「荷物おきたいし、何より腹が減ってんだけど…」

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 00:50:10.20 ID:fmabPcks0

( ;ω;)「ごめんなさいお!ごめんなさいお!つん、つん、つん!
      つんに捨てられたら、ぼく、もうどうしようもないんだお!
      化け物って云われるのは、もう嫌なんだお!捨てないでくれお!」

( ;ω;)「あうっ?」

ξ;゚听)ξ「ちょっ」

( ;ω;)「う、う、痛いお……と、思ったら、痛くない?」

(´<_` )「おう、大丈夫か坊主」

( ;ω;)「ああ、お兄さん、有難うだお!有難うございますだお! 
      おかげさまで、ひざ小僧ひとつ、すりむかずに済みましたお!」

ξ;゚听)ξ「うちの莫迦が、すみませ……」

ξ;゚听)ξ「……兄者?!」

(´<_` )「いや、俺は」

ξ#゚听)ξ


(´<_` )「うん?」

ばしーん。

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 00:54:56.72 ID:fmabPcks0
ξ#゚听)ξ 「こんの、莫迦兄者!何で私から隠れていたの!
      口ばっか達者の餓鬼が、よくも私から逃げようなんて思ったものね!
      もらには会ってたくせに、この、この!せっかくやった火石も、何処にやったのよ!
      最低、最低、このひとでなしの、ろくでなし!
      ああ、世界中の罵倒を全てあんたに注いでも、未だ足りない!
      殴っても大して痛くないんでしょうけれど、もう一回殴らせなさい!」

(´<_` )「いや、普通に、痛いです。人間なので。」

ξ#゚听)ξ 「……兄……」

ξ゚听)ξ 「あれ、目が、緑。確か、私の知っている兄者は、目が海みたいな色をしているの。
      もらも青だけど、それとは全然違う色。深い深い、海の色…。」

(´<_` )「あらま、よく見てらっしゃることで。俺の名前は、弟者。
      お探しの、ろくでなしのひとでなし、口ばっか達者の餓鬼は、俺の後ろで震えてますよ。」

(;´_ゝ`) 「阿呆が、縁を切るぞ、兄を簡単に売るなんて、薄情者!」

(´<_` )「だって、俺、人間さまだから、殴られたら、痛いし…。」

ξ#゚听)ξ めらめら

(;´_ゝ`) 「わかった、己れが悪かったって、認めてやってもいい、だから、
      此処でそんな物騒なもん出すんじゃねえよ、この宿が炭になっちまってもいいってのか!」

ξ#゚听)ξ「ふん、やっぱりあんたのおっかさんは、その間抜けに開けられた口なんでしょうよ。
      いいわ、別にこっちだって、莫迦のひとつ覚えってわけじゃあないの。
      さ、喰っておしまい、”悪食”ホライゾン!」

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 00:58:16.31 ID:fmabPcks0

( ;ω;)「人間なんてぼくは食べないですお!ひどいですお、つん!
      いくら貴方さまといえども、いえ、貴方さままで、ぼくを化け物扱いするんですかお!
      嗚呼、昨日のうちに世界が終わっていれば、こんな悲しい言葉を聞かずに済んだのに!ああ!
        何故神は世界を今日になるまで放っておいた!
      ぼくは、ぼくは、人間であるという誇りにかけて、人間だけは喰わないんですお!
      その最後の砦を打ち崩してしまえば、ぼくは自分自身を化け物だとみとめなくてはいけないですおぉ!」

( ´_ゝ`)「なんだなんだ、お前も遂に、母になったかと思ったら、虐待をするたあ酷いじゃないか。
      人間を喰えだなんて、人の親が云っていい台詞じゃないぞ。」

ξ;゚听)ξ「じょ、冗談に決まっているでしょうが!だいたいね、この子と私の間には、目に見えない絆はともかくとして、
       血のつながりは一滴もありゃしないのよ。ご、ご、誤解しないでよ。
       まったく、男が泣くんじゃないわよ、ホライゾン、あんた、私が本当にそんな非道を貴方に強いるなんて思っているの?」
       
(´<_` )「その小僧が喰わないなら仕方がない、心優しい俺が心を痛めながら兄者を喰うてやろう」

( ´_ゝ`)「燃やされるぞ…。あいつに燃やされると治療しづらいんだから、やめとけよ」

(´<_` )「燃やすとな。四大元素を行使することが出来るのは、四大賢者だけなのだと兄者に聞いた筈。」

( ´_ゝ`)「そうそう、詰まりそういうこと。四大賢者がひとり、つん。
      あの鬼のような紅い目を見りゃわかるだろうが、火を司ってンの。」

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 01:04:30.49 ID:fmabPcks0
ξ#゚听)ξ

( ;ω;)「ああっ、あつ、熱いですお!この世はやはり地獄だったのか!
      そうか、たとえ世界が終わったとて、どうせぼくは地獄逝き、
      寝ても覚めても地獄とは聞いた覚えもあるが、生きても死んでも地獄とは、なんたる仕打ち!
      ぼくはただ、生きたかっただけなのに!」

(;´_ゝ`)「ひぃ…」

ξ#゚听)ξ「此処じゃあみなみなに迷惑がかかるわ、私たちの部屋に来なさい。
        ゆっくりと聞かせてもらうことにするわよ、私と連絡を絶った理由と、……そこの”弟者”とやらのこともね。」
        
(´<_` )「?」

( ´_ゝ`)「うう、このまま逃げちまおうか…」

(´<_` )「また、みるなとおなじく、仲が悪いのか」

( ´_ゝ`)「そんなに仲が悪いわけじゃないと思う。口喧嘩はしょっちゅうだったけどよ、そんなのは、お前とだってするだろ。
      でも、たぶん、己れとお前の仲を悪いって思うやつは早々居ないはずだしな。
      つんは、正義感が強い、いいやつだって思うぜ。よく人を燃やすから、怖いけど」

(´<_` )「よく人を燃やすってのは、悪い人間じゃあないのか。」

( ´_ゝ`)「流石に、あいつだって、普通の人間は燃やさねえよ、
        詰まり、己れとかもらとか、みるなとかは、燃やしても大して問題じゃないから、燃やすんだ。己れは大して痛くねえし、もらとみるなは燃えにくいし…」

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 01:07:39.42 ID:fmabPcks0
(´<_` )「じゃあ、なんでそんなに嫌がったり、隠れたり、逃げようとするんだよ」

( ´_ゝ`)「大人には、色々あるんだって…」

( ´_ゝ`)「くっそ、もらを呼ぶか……呼ぶまいか…」

(´<_` )「大人だって威張ったすぐあとに、子どものようにすぐ親に頼るのはどうかと思うぞ」

( ´_ゝ`)「五月蝿えやい、この世でつんと対等に口喧嘩できるのはもらしか居ねえんだ、仕方ないだろう。
      だいたいあいつは親みたいな友人だっての、間違えるんじゃねえよ」

(´<_` )「喧嘩することが決まっているのか。それにしても、前にも思ったが、どうやってもらを呼びだしてるんだ。
      あんなの、人間が使うことの出来る術の範囲を、ゆうに越えているだろう。」

( ´_ゝ`)「決まってるにも程があるって、たぶん、己れが母さまの腹の中に居るときから決まってたろうさ。
      たしかに、生き物を瞬間的に移動させるなんてのは、人間さま程度ではとても扱うことの出来ない術。
      その疑問を解くには、もらの司る力が鍵になる。」

(´<_` )「水か。」

( ´_ゝ`)「そうそ、ま、種を明かせば、あいつ、水のあるとこなら何処でも出てこれるんだよ。
      頑張れば空気中の水分を頼りにでも出てこれるから、つまり、不平等だな。」

(´<_` )「成る程、もらが凄く不平等なだけであって、あんたは全く凄くないということか」

( ´_ゝ`)「……ああ、その通り、己れなんて、ちょっと不死身で、傷が治療できて、一度見たものを忘れないくらいで、
      ぜーんぜん普通の人間だってことだよ。」

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 01:09:57.40 ID:fmabPcks0

ξ゚听)ξ「ふん、思ったより早かったわね。地獄の業火で焼かれる覚悟はしてきたのかしら?
      まずは、先ほどの失礼を詫びましょう。うちのホライゾンが迷惑をかけたわね。
      私はつん。兄者から聞いたでしょうけど、一応、四大賢者のうちの一人。司さどるは火。
      こっちは”悪食”ホライゾン。私の子どもではないわ、昨日、しょうじき村で拾ってきたの」
     
( ^ω^)「おっ、お!よろしくお願いしますお!」

(´<_` )「悪食ってことは、何でも喰うのかい。」

( ^ω^)「そうですお!僕がこの世で食べられないのは、つんの火と、人間だけですお!」

ξ゚听)ξ「そのせいで、しょうじき村に祭られているしょうじきの神さまの石像まで食べてしまって、
      さんざん云われているところを、私が保護したというわけ。」

( ´_ゝ`)「ほらいぞんってのは、お前が名づけたんだろう。」

ξ゚听)ξ「ええ、そうよ。だから何よ。そうだったら、問題があるっていうの?」

(;´_ゝ`)「誰も、そんなことは云ってねえだろが…」

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 01:11:10.44 ID:fmabPcks0
ξ゚听)ξ「ホライゾン、青い着物のほうが兄者で、緑の方が、……弟者らしいわ、一応。」

( ´_ゝ`)「一応たあなんだ、一応たあ。この外道は、間違いなく弟者だぞ。」

ξ゚听)ξ「あんたがもらに拾われて何百年、常々、莫迦で阿呆だと思ってはいたけれど、まさか、ここまでとは思ってなかったわ。
       連絡を絶ったことで怒っていたけれど、今はもう、あきれ果てて、怒りも燃え尽きてしまったわ。
       つまり、そういうわけね。そういえば、連絡が途切れたのって、ちょうどあんたの本当の弟者が死んでしまって以来だものね。
       私に知られたくなかったのでしょう、同じ、双子のきょうだいを亡くしたものだもの、情けなくて仕方なくて。
       死を受け入れられずに、こんな代わりを用意して、あまつさえ同じ名で呼んでいるだなんて。
       どういう術を使って同じような姿かたちにしているのかは知らないけれど、恥を知りなさいよ」

( ´_ゝ`)「どうだ、見たか弟者。打ち合わせなしで、一息でこの長台詞。これが賢者の本領ってもんだ」

(´<_` )「賢者ってのは口が巧い奴のことだったのか。俺はとんだ思い違いをしていたぞ。」

ξ゚听)ξ「あんたも、むなしくならないの。見たところ、自我はちゃんとあるようじゃない。
      兄者にまるっと利用されていることに、不満はないの。」

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 01:28:40.17 ID:fmabPcks0

(´<_` )「不満だって。不満なら、いつだってたらたらだ。
      どんなに腹が減ったっつっても、気が向かないと喰わせてくれねえし。」

(;´_ゝ`)「ばか、お前、ややこしいことを言うんじゃないよ!」

ξ#゚听)ξ「あんた………ご飯をやってないというの……こんな、利用をしておいて…」

(;´_ゝ`)「違う違う、つん、これにはわけがあるんだって。だから燃えてくれるなよ。
      だけどそのわけを説明するには、どうにも憚られるのだ、特にお前みたいなやつには。
      これがそのままそっくり、お前と連絡を絶ったわけにもなるんだよ!」

ξ#゚听)ξ「その理由を、お聞かせ願おうじゃない。そのために、此処へ来たのでしょう?!」

(;´_ゝ`)「教える気なんかねえよ。此処へ来たのはそのためじゃない。」

ξ#゚听)ξ「じゃあ、なんだっていうの!」

(;´_ゝ`)「だって行かなかったらお前、泣くじゃないか!」


53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 01:39:48.99 ID:fmabPcks0
ξ゚听)ξ

(´<_` )「ほう」

(;´_ゝ`)「泣いたあとのお前は、特に怖いからな……」

ξ#゚听)ξ

(´<_` )「兄者って、頭が気の毒だよなあ…」

(;´_ゝ`)「どういうこったよそりゃあ」

ξ#゚听)ξ「へえ、へえ、それはお気遣い、かたじけのうございますわよ。
        で、ついでだから聞くけど、あんた、私がやった火石何処へやったのよ。」

(´<_` )「ほせきとな」

ξ#゚听)ξ「私の瞳と同じ色をした、小さな石のことよ。
        私の力の結晶だから、それさえあれば、兄者が助けを求めたときに飛んでいける。」

(´<_` ) 「ほう。兄者が前に金に困って売った石と、見た目が似ている気がするが、もちろん気のせいだよな、兄者」

(;´_ゝ`)「頼むからもう喋るな、お前」

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 01:55:44.18 ID:fmabPcks0

ξ#゚听)ξめらめら

(;´_ゝ`)「あついあつい、だから屋内でそういうことはするなって!
      まったくお前、あいもかわらず、怒ると炎の調節ねじが緩みきっちまうんだから。
      さっさと締めろ、ついでに己れを許せ!あの石は高く売れた、感謝しているぞ」
     
(;^ω^)「すごいですお、なんであのお兄さんは、つんの炎に耐えられるんだお。
      つんの炎の熱いことときたら、地獄のようという表現すら、まだ生ぬるく感じるのに。
      地獄に住まう鬼ですら、あんな炎には耐えきれないだろうに、あちち!」

(´<_` ) 「あ、燃え移った」

ξ;゚听)ξ「ど、どうしよう!」

(;´_ゝ`)「いわんこっちゃない!おいつん、慌てるな、慌てるとお前、さらにねじが緩むから!」

ξ;゚听)ξ「馬鹿にしないでよ、自分で出した炎くらいどうにかしてみせるわ、ええと、ええと………炎の龍!」

(´<_` ) 「おお、凄い………燃え盛ってるな」

( ;ω;)「地獄が僕を迎えにきたおお!神よ!」

(;´_ゝ`)「ああもう、落ち着けというに!」

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 02:14:34.58 ID:fmabPcks0

(;´_ゝ`)「緩み切ったねじを締めるには、何が必要か?
      その答えを出すことは、なんの難しいことはない。その名の通り、ねじ締めが答えだ!
      しかし、この問題を解決することでさらなる問題が出てくるのはもう明らかで……」

(´<_` ) 「宿、燃えたら、あの二人の主人はさぞ悲しむだろうなあ。」

(;´_ゝ`)「もらー!」

( ・∀・)「やあやあ久しぶりだねつん、実に百と三年ぶり、ご機嫌麗しゅう、何年経ってもやはり君は美しい!
      特にその瞳、炎を宿し力強い色をしているのに、繊細に透き通って煌めいている、これを美しいといわずして、他に何を美しいと言えるだろう?
      僕を除けば、それほど美しいものはないだろう!」

(;´_ゝ`)「そういうのは後で腐るほど云ってくれていいから、火を消してくれって!」

( ;ω;)「おお、救いを求めたら、神が現れてくださった!僕は救われるお!僕は救われるんだお!
      神は僕を、未だ見捨てていなかった!」

(´<_` ) 「お腹すいた……そうだ兄者、ちょうどいいところにあるそこの炎で好い感じに焼かれてきてくれよ」

(;´_ゝ`)「お、お前、それが目的でわざとあいつを怒らせただろ!」

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 02:29:18.57 ID:fmabPcks0

( ・∀・)「ほら消したよ、もう口説いてもいいかい?」

( ;ω;)「つんの炎が一瞬にして!ああ、神よ!感謝しますお!どうぞ、哀れな僕にお言葉を!」

( ・∀・)「僕に口説いて欲しかったら、性別を変えてから出直しておいでねえ。」

(;´_ゝ`)「神が本当にいるのなら、なんでよりにもよってもらにこれだけ力を持たせたんだろな……。
      やっぱり神なんていねえか、よっぽど馬鹿なんだろうなあ」

ξ#゚听)ξ「兄者lァ!あんた、もらの水石は持ってるのね!?なんでそっちは売ってないのよ!」

( ・∀・)「水石?欲しいならあげようじゃないか。どんな細工を施そう、ネックレス?ピアス?それとも指輪かい?」

(;´_ゝ`)「誤解だって、水石は持ってねえよ!」

ξ#゚听)ξ「じゃあどうやって呼んだのよ!」

( ・∀・)「つん、心が通じ合ってれば、石なんてなくても、強く求めればそれだけで相手には伝わるものさ。
      愛や信頼で紡いだ糸が、心と心を結びつけているからね。
      そう、つまり、君が僕を呼べばいつだって、僕に届くというわけだよ、素晴らしいことだ」

(´<_` )「やっぱり、賢者って口が巧い奴のことなんだなあ。」

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 02:47:42.99 ID:fmabPcks0

ξ# )ξ「……兄者は、私を、信頼していないってことね、そうなのね。……ましてや、愛なんて…」

(;´_ゝ`)「いや、だからそういうわけではなくて」

ξ#゚听)ξ「じゃあ何故、故意に会うのを避けてきたのよ!」

(;´_ゝ`)「それは言えないが…」

ξ#゚听)ξ「あれも言えない、これも言えない!それじゃあ、そこの偽の弟者のことも言えないの?!」

( ´_ゝ`)「偽、という言葉だけはやめてくれ、気分が悪い。
      生きてるものは誰だって、唯一絶対の存在だろう。
      偽物ということばは、いや、本物という言葉だって、生きているものへの侮辱に等しい。」

ξ#゚听)ξ「話を逸らさないで、私に偽物と言わしめたのは、あんたの行いのせいでしょう。
        生きているものへの侮辱ですって、あんたこそがそうでしょうよ。
        弟と同じ顔をしたものに兄者と呼ばせ、弟の名前で呼んで。
        弟へも、その偽物にも、侮辱の極みだわ。この、恥知らず!」

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 02:58:36.59 ID:fmabPcks0

ξ#゚听)ξ「偽物に兄者と呼ばれる度に、弟を思い出しているんでしょう!
        偽物を弟者と呼ぶ度に、弟を想っているんでしょう!
        そうして惨めで寂しい心を慰めて、罪の意識から逃れようとしているのでしょう!
        弟のことに関して、あんたに罪があるとは私は思っていないけど、」

(;´_ゝ`)「ああもう、そんなわけあるか!いいか、よく聞け!
      己れはただの一度も、かつての弟に名前を呼ばれたことがないんだよ!」

( ・∀・)「おやおや」

ξ;゚听)ξ

(;´_ゝ`)「糞ッ、憐れみたきゃ憐れめ、あいつの名前だって、
      一度呼ぼうとしようものなら、十の物を投げつけられるから、ほんと、数えるくらいしか呼んだことねえよ!
      なんなら今から思い出して勘定してやってもいいぞ!」

(´<_` )「哀れな奴……」

(;´_ゝ`)「そういった類の台詞は、ちょっと数え切れないがな!畜生が!」

( ・∀・)「あれ、そういえば、弟者はあいつのことを知っているのだっけ。
      兄者の、血のつながっていただけの弟のこと。」


66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 03:10:32.33 ID:fmabPcks0
(´<_` )「ああ、えっと、兄者のせいで死んだ奴だろ」

( ・∀・)「oh...」

(;´_ゝ`)「己れだって実は傷ついたりするんだぞ!お前は知らないかもしれないが!」

(´<_` )「そンで、俺がそいつの死体を喰ってたとき、兄者と出会ったんだよな。
      俺がその弟とそっくりってことは、双子だったのか」

(;´_ゝ`)「あッ、馬鹿」

ξ゚听)ξ 「……死体を……喰った?」

(;´_ゝ`)「ごっ、ごごごご、ご、誤解だ誤解、そんなわけあるか、なあつん、
      お前の常識と、今の台詞とを照らし合わせてみろ、どう考えたって、ありえないだろう!
      そういうわけだ、それを信じろ、こんな馬鹿の言うことなど間に受けるんじゃあない!」

(´<_` )「そうだ、誤解だ」

(;´_ゝ`)「弟者、いいぞ!」

(´<_` )「死体なんぞ喰うか、生きた人間が一番良い。兄者が一番美味しいが。」

(;´_ゝ`)「大馬鹿野郎ぉぉおおおおおおお!」


68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 03:23:11.35 ID:fmabPcks0

ξ゚听)ξ

( ・∀・)「あー、弟者がいるからつんに会いたくなかったんだね、兄者。
      考えてみれば、弟者はつんの苦手寄せ鍋みたいなやつだもの。
      うんうん、懸命な判断だと思うよ、今、全部無駄になったけど。」

ξ゚听)ξ

(´<_` )「気絶してるぞ?」

(;^ω^)「つーん!」

(;´_ゝ`)「ああもう、己れの何十年の努力が水の泡だ……。
      この阿呆、この償いは飯抜きでも足りないぞ。
      もら、悪いけどつんとこの坊主を、お前の家に持って帰ってやくれないか。」

(´<_` )「まあまあ、此処は俺に任せてみてはいかがかね」

( ´_ゝ`)「寝言は寝ていえ、誰のせいでこうなったと」

( ・∀・)「弟者に任せれば?」

(;´_ゝ`)「もら、お前まで!」

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 03:32:59.45 ID:fmabPcks0

( ・∀・)「少なくとも、お前よりは、弟者の方が上手くやるとおもうがね」

(;´_ゝ`)「おいもら、そいつはどういうことだ」

(´<_` )「つまり、褒美の前借りとして腕の一本を寄越せということだよ」

(;´_ゝ`)「誰がお前の願望の話をしているか!」

( ・∀・)「弟者、僕の妻のでれのことは知っているかい。」

(´<_` )「夕焼けが好きだけど、死んだやつのことか。」

( ・∀・)「ふふ、そうそう。そのでれは、酷いことをされたんだ。末に、殺された。
      詳しいことは子供もいることだしやめておこう。僕も、口にしたくないことだ。
      今でもなお、思い返すだけで、心が焼け付きそうになる。水を司る僕がだよ。」

( ´_ゝ`)「……」

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 03:44:58.69 ID:fmabPcks0
( ・∀・)「殺されるまでも酷かったし、殺され方も酷かったけど、殺してからも酷かった。
      ……でれは、半分以上を食まれていた。腕や、足、腹や乳房、柔らかい肉はあらかた」

(;´_ゝ`)「やめろ!」

( ;ω;)「酷いお!酷いお!」

( ・∀・)「まあ、子供や子供並の奴がいるしここまでにしておくけれど、」

(;´_ゝ`)「ちがわい、いや聞きたくないのは確かだがよりにもよってお前の口から聞きたくないっていうんだ、
      それくらいわかれって、つくづく馬鹿だな!」

( ・∀・)

( ・∀・)「……まあ、それを最初に見つけたがつんだったんだよ。
      だからお前の食生活は、つんにとっては完全に嫌悪の対象だ。
      ましてや食材が兄者となればなおさらのこと。
      あの子は僕やお前と同じくらい、兄者の自己犠牲癖を憂いているからね。」

(´<_` )「なるほど。つまり、もらは馬鹿で、兄者は美味しくて、だから、つんと俺が話せば万事解決というわけだな。」

( ・∀・)「まあ、だいたいそんな感じ。あと僕が美しいということも付け加えておいて」







73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 03:53:59.04 ID:fmabPcks0

( ´_ゝ`)「どういうつもりだよ、もら」

( ・∀・)「いやいや、しかし君、本当に哀れな奴だね。名前も呼んでもらったことがなかったの。」

(;´_ゝ`)「五月蝿いなあ。仕方がないだろ、己れのせいでろくすっぽ外にも出れない生活、
     悪いときには己れと間違えて殺されかけたり、あいつにとっちゃ、いや、家族にとってまさに疫病神だ。
     ……というか、死神だな」

( ・∀・)「死神ねえ。本人は生に溢れてるっていうに。別にそう思うことで君が救われるなら好きにすればいいと思うよ、と
      僕のように大人なら、口ばかりはそういう風に言いながら、見守ってあげることができるけど、つんや、弟者はそうじゃないんだよなあ。
      だからこそ、二人は気が合うと思うんだよ。」

( ´_ゝ`)「なンか、納得できねえなあ…」

( ・∀・)「そこが納得できるようになって、ようやっと大人になれるんだよ。」

 

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 03:59:11.04 ID:fmabPcks0

ξ--)ξ

(´<_` )

ξ--)ξ

ξ゚听)ξ

(´<_` )

ξ#゚听)ξ

(´<_` )

ξ#゚听)ξ 「出ていって!」

(´<_` )「話したあとに、何回でも出ていってやろうじゃないか」



87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 10:07:16.53 ID:fmabPcks0

ξ#゚听)ξ 「あんたに話すことなんて何もないわよ、出て行って頂戴、汚らわしい!
         さもなくば、この怒りの炎で骨まで溶かしてやるわ!
         さあ、溶けるか溶けまいか、はいかいいえか、ひくかひかぬか、選ばせてやろう!
         あんたのようなひとでなし、鬼畜、外道にこのように選択の余地をあたえたもうた、
         私の寛大な心に感謝することね!」

(´<_` )「ま、ま、落ち着けお嬢さん。俺の主食についての話をしに来たわけじゃあ、ないんだ。
      正直のところ、お腹いっぱいなんだよ、その議論についてはね。結局さ、しかたないんだよ。
      いくら責められたところで、別に俺が自分で自分の主食を決めたわけでなし、
      なんの因果か、生まれ落ちた瞬間から定められていた運命にしたがっているに過ぎないわけで。
      ほんとのほんとうに、それ以外喰えないのに、それを喰わなくてどうする。
      それとも何か、餓死せよとおっしゃられるか、寛大な心を持つあなた様。」

ξ#゚听)ξ 「人を喰うなどという非道が、定められていた運命ですって。
         人でありながら人を喰うという輩もいるにはいるが、そこまで極端な話は聞いたことがない。
         そんなものはありえない、万に一つもありえない、人として産まれたのなら。
         お前の言い分が真ならば、それはすなわち、お前は外道という星の元に産まれてきたということに他ならない!」
      
(´<_` )「それはまた、汚そうな星だこと。それでもいわせていただこう、俺は間違いなく人間だってね。」

88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 10:24:38.23 ID:fmabPcks0

ξ#゚听)ξ 「おこがましい奴だこと、人間様をなんだと思っている。
         古今東西、質量さえあれば何だって喰ってみせる悪食とて、
         人間だけは死んでも喰うまいと言っているのを見ていたのではなかったか?
         あれこそが人間の本能、それがないお前が人間を名乗る資格などあるわけもない」

(´<_` )「だからさ、その話し合いは満腹御礼だっていってるのに。
      別に俺が人間だってことをあんたにわかってもらおうなんて思ってないよ、
      あんたにとって俺がそうであるように、俺はあんたなんてどうでもいいんだ。
      あんたに人間だってわかってもらわなくても、自分にとって特別な人にわかってもらえるなら、ただそれだけで俺は人間なんだよ。
      まァ、気分はよくないから、一応否定させていただくがね。
      にしてもそんなことでしか人間の証明が出来ないなんて、人間様が聞いて呆れる。
      人を食わねば人間か?じゃあ、小鳥も人間さまだって?
      ずいぶん安っぽい定義の上であぐらをかいていらっしゃることだ。」

ξ#゚听)ξ 「こ、の……ッ」

(´<_` )「あつい、あつい。言葉を返せなくなったからって、実力行使に出るなんて、あんまりにも短絡的じゃあないの。
      地上におわします人間さま、考え直してみてはいかがかね、あなたさまのために。
      あんまり女性的な怒りに身を任せて、議論から逃げていては、こと、俺から逃げていては、
      また続いてしまうよ、貴方のいとしい兄者に会えない辛い日々が。」

ξ;゚听)ξ「なッ?!」

90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 10:39:50.31 ID:fmabPcks0

ξ;゚听)ξ「何をいう、ああ、……お前が何を言っているか、私には、私には全然わからない…」

(´<_` )「それとも、まさか、恋い焦がれるとは言うけれど、この炎はそういうわけですかい。
      わけもわからないまま焦らされて、焦げた心から溢れでた恋が、燃え上がってるということかい。」

ξ;--)ξ「……外道が、恋を語るな、汚らわしい……恋とは、汚れから一番遠い場所にあるべきもの…… 
        つまり、お前から一番遠い場所にあるべきもの……聞いた話をそのまま言っているだけだとしても、
        口に出すでないわ……」

(´<_` )「そりゃ、たしかに俺自身はしたこたねえがな、どういう仕様のものかくらいはわかっているつもりだぜ。」

ξ;--)ξ「わかるまいよ……よりにもよってあの男を模した化物が、こんな想いをわかってたまるか、
        こんな、こんな………。」

(´<_` )「お聞かせ願おう、その恋心。」

91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 10:59:49.30 ID:fmabPcks0

ξ゚听)ξ「言えるわけないだろう、どんなに荒んだ風景も、あの男が一人いるだけで、輝いてみえるなんて。
       ああ、まるで乙女だ。なあ外道、どうして、こんなことがいえようか?
       まさか、綺麗なものをみると、あの男を連れてきて、どんな反応をするのか見たくなるなんて。
       どうしてお前なんかが理解できようか?
       あの透き通った深いあおを想うたび、天と地の間ほどの振り幅で、こころが乱されるなんて……」

(´<_` )「まるで、恋文だな。」

ξ--)ξ「まるで乙女だ、まるで乙女……忌々しい……」

(´<_` )「それをそのまま言やあいいだろうが、なんなら紙にしたためて、
      ほんとうに恋文にして渡せばいいじゃないか。兄者だって、悪い気はしないだろう」

ξ--)ξ「……あいつの記憶力については、知っているか。」

(´<_` )「ああ、なんだっけ、自我が目覚めて以来、ひとつも抜け落ちていないのだっけ。」

ξ--)ξ「そう、残酷なもの……救われる方法のない辛く苦しい傷を癒すのは、時間だけ。
       時間の経過とともに、人の記憶はゆっくりと、柔い包帯を巻かれていくもののに、
       そうしてすこしずつ人は未来へ歩いていくものなのに、兄者にはそれが許されぬ。
       ……でれのことは?」

(´<_` )「ひどい風に殺された、もらの特別な人だろう。」

ξ-ー-)ξ「ふふ、ひどい風、ね。確かにそうだが、お前がいうか、外道…」

      
      
94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 11:47:11.20 ID:fmabPcks0

ξ--)ξ「もらの大切な人……私の、大切な妹……そうして、同時に、兄者の大切な人でもあったのよ…」

(´<_` )「へえ、そうかい」

ξ--)ξ「お前と兄者ほどでないにしろ、私とでれは似ていた……
       そして、兄者は未だでれの記憶を、はっきりと覚えているだろう…」

(´<_` )「兄者が、でれとあんたを、重ねてみるだろうと?だから、その焦げを兄者に伝えられないと?
      ははあ、だから兄者のせいで死んだ方の弟と、俺を重ねてみていると決めつけたんだな。
      まったく、いい迷惑だぜ。ちょっと考えてみればわかるだろう、
      柔い包帯で巻かれて、輪郭がぼんやりとした記憶のほうが、
      そうでない記憶より、よっぽど誰かと誰かを重ねてみる確率が高い。」

ξ--)ξ「そこが、お前の外道たる所以よな。確かにそうかもしれない、けど、そうじゃないかもしれない。
        じつのところ、本当に重要なのはそこではないのだろうね。
        私がどう想い、そして想った果てに、大切な妹のことをどう感じてしまうだろう。
        そうして、きっと、この恋心は、綺麗じゃないもので満たされてしまう……それだけは嫌なのだ。
        兄者がそんなことをしないということ、頭では私とてわかっているよ。
        でもどうだろう、本当に一瞬もしないものだろうか?
        理性がどれだけそれを拒否しようとも、でれと同じ色の髪が揺らめいたその刹那、
        鮮やかにでれの可愛らしい笑顔が浮かばぬことがないと、絶対に言えようか?
        ああ、そうだ、嘲笑うがいい。私はそれすら嫌なのだ。それですら、きっと嫉妬の炎の薪になるのだ。」
        
     
     
96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 12:06:29.45 ID:fmabPcks0

(´<_` )「じゃあ、どうするのだ。その心に秘めた炎を、ずっと隠し続けるのか。
      焦がれて焦がれて、燃え尽きるまで?」

ξ--)ξ「この心燃え尽きようとも、この恋心は消えまいよ。
       望んじゃないのに、もうすっかり、私という人間の、一番深くに根づいてしまった。
       そうなっては仕方がないから、私の恋心なんてものは、ここに置いて行こうって、そう思うの。」

ξ゚听)ξ「ねえ、そうでしょう?死ぬまでつきとおした嘘は、きっと、ほんとうになるでしょう?」

(´<_` )「さっきも言ったがな、俺は恋なんぞしたことがないし、これからも中々しないだろうけど、
      だけど、なあ。それは、焦がれるよりずっとずっと苦しくて、心が張り裂けそうになるくらいに、辛いこと。
      そうだろ?」

ξ゚听)ξ

(´<_` )「それでいいのかい。」

ξ゚ー゚)ξ「なァんだ、あんがい、人間なのね、あんた」

(´<_` )「む……」

97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 12:25:12.83 ID:fmabPcks0

ξ゚听)ξ「全部を全部認めたわけじゃないけど、そうね。
       血がつながってただけの弟より、あんたのほうがずっと、
       兄者の弟なんだってことくらいは、認めてやりましょう」

(´<_` )「十分すぎる収穫だな。それだけあれば、俺は完全に人間でいられるから。」

ξ゚听)ξ「ふん、そっちに関してはまだ、認めてないからね。」

(´<_` )「未だときた、これは本当に、十分すぎるなあ。
      俺も賢者になれるやもしれん。」

ξ゚听)ξ「……あんまり巫山戯たこといってると、燃やすわよ」

99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 12:47:53.85 ID:fmabPcks0

( ・∀・)「つん、具合はどうだい」

( ;ω;)「つん、つん!」

ξ゚听)ξ「ああ、ごめんねホライゾン、心配させて……」

(;´_ゝ`)「弟者、無事か」

ξ#゚听)ξ 「兄者、どういう意味よそれ」

(´<_` )「どういうわけで、つんは毎度まいど、もらを上手いこと無視するんだ」

( ・∀・)「それだからお前は駄目なんだよ。乙女心をわかっておあげ。
      僕ほどの美しさに直面しては、恥らって言葉すら出すことができないその慎ましさ。
      これだから女の子はいとおしいのさ。……しかし、ホライゾンか。つんがつけたのか。」

( ^ω^)「おっ、そうですお!異国語だから、意味はわからないけど、気に入っているお!」

( ´_ゝ`)「ホライゾンは、地平線、という意味だ」

(´<_` )「ほう。」

( ・∀・)「朝日が出て、夕日が沈んでゆくところ。はじまりとおわり。いい名前じゃあないか」

( ^ω^)「すごく、すごくいい名前だお!つん、有難う!」

ξ゚听)ξ「ふん、当然よ。この私がつけてやったんだから。」

100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 13:05:13.28 ID:fmabPcks0

( ´_ゝ`)「ところで、ほらいぞんをどうするつもりなんだ、つん。
      このままずっと、一緒に旅するつもりか。
      もらの伝手を頼れば、ほらいぞんをよくしてくれるところも見つかると思うが。
      お前の能力じゃあ、誰かを守るのは少し難しいだろう。」

ξ゚听)ξ「否定はしないわ。自分の未熟さはわかっているつもりよ。
      まあ、どうするにせよ、とりあえず、一度もらの家に行こうと思うの。
      ひさびさに、墓を参りたくなったしね。」

( ・∀・)「清々しいくらい僕の許諾なしに話が進むなあ。」

(´<_` )「信頼されているんだな。」

( ・∀・)「ha-ha,弟者、ナイスポジティブシンキングだね。」

(´<_` )「びっぷ語で頼む」

101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 13:06:24.48 ID:fmabPcks0

ξ゚听)ξ「それじゃあ、兄者。何かあったら呼んでくれてもいいわよ。
       ……あんたの声が私に届くかは、あんた次第なんだからね。」

(;´_ゝ`)「いや、大抵のことはもらで事足り過ぎるし、大丈夫だと思うぞ。」

ξ#゚听)ξ

(;´_ゝ`)「というか、その台詞はこっちが言いたいのだが……」

ξ゚听)ξ

ξ゚听)ξ「……あんたって本当に、変わらない、馬鹿ね」

(´<_` )「馬鹿と馬鹿が、ふたりならんで、美味しそうだなあ。」

(;´_ゝ`)「おいこら、馬鹿はお前だ!」

ξ゚听)ξ「……そうかもしれないわね。」

(;´_ゝ`)「えっ、つん、お前美味しいのか?!」

ξ#゚听)ξ

103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 13:13:11.29 ID:fmabPcks0

(´<_` )「いきなり静かになったな。しかし、もらの能力は自分以外にも使えるのか。
      つくづく便利極まりないことだ。」

(;´_ゝ`)「ああ、熱かった。これ、ひでえ火傷だ。しばらく治らねえぞ……」

(´<_` )「よかったな、お焦げ好きっていってたじゃねえか。」

(;´_ゝ`)「そりゃあ、米の場合だけだっての。しっかし、つんも変わらねえな。」

(´<_` )「嬉しいか?」

( ´_ゝ`)「む、まあ、そうだな。嫌だと思っていても、時間がたてば、いろいろ変わっちまうからな……
      安心したといえば、安心した。元気そうでなによりだ。」

(´<_` )「会えてよかったな。」

(;´_ゝ`)「なァに、人間らしいこといいやがって。長いこと空腹のままだったから、毒気が抜けたか?」

104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 13:18:43.52 ID:fmabPcks0

(´<_` )「いやいや、もちろん兄者は食べるが、じゃあひとつ、質問に答えてくれないか。」

( ´_ゝ`)「そう都合よくはいかねえか。なんだよ、改まって」

(´<_` )「一生つき通した嘘は、本当になるのだろうか。」

( ´_ゝ`)「そりゃ、ならねぇだろ。嘘は嘘だ。
     ほんとうのことっていうのは、よかろうがわるかろうが、いつだって嘘より強いンだよ。
     たとえばこの宿屋の主人が一生あの調子でいたとしても、
     あいつらが優しくないなんてことは、絶対にないからな。」

(´<_` )「そうか、そうだな。」

( ´_ゝ`)「なんだよ。」

(´<_` )「いや。
      俺も、そう思うよ。」
    
105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/10(月) 13:22:15.35 ID:fmabPcks0






くるはずのないときをまちのぞむたおやかなおもいが、

やさしいうそつきがいとなむやどやで、

いまもひっそりと、ねむっているんだそうな。


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