( ^ω^)は自らのパラレルワールドに迷いこんだようです

584 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/01(金) 17:32:57 ID:aEObt95w0
 
 
 
 
 
 
 
    何がしあわせかわからないです。
 
    本当にどんなに辛いことでも、
 
    それが正しい道を進む中の出来事なら
 
    峠の上りも下りもみんな
 
    本当の幸せに近づく一足づつですから
 
 
 
 
 
 
                 ―― 宮沢賢治 ――
 
 
 
 
 
 
 
.

585 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/01(金) 17:33:53 ID:aEObt95w0
 
 
○登場人物と能力の説明
 
( ^ω^)
→この世界の『作者』。
 
/ ,' 3 【則を拒む者《ジェネラル・キャンセラー》】
→あらゆる力及び力の法則を『解除』する《特殊能力》。
 
从 ゚∀从 【正義の執行《ヒーローズ・ワールド》】
→『英雄』が負けない『世界』を創りだす《特殊能力》。
 
( <●><●>) 【連鎖する爆撃《チェーン・デストラクション》】
→相手の手負いを『連鎖』させる《特殊能力》。
 
( ・∀・) 【常識破り《フェイク・シェイク》】
→自然のうちに『嘘』を混ぜる《拒絶能力》。
 
(゚、゚トソン 【???】
→時や力を『操作』した『拒絶』の少女。
 
( ´ー`) 【???】
→『拒絶』と関わりの深い男。
  _
( ゚∀゚) 【???】
→『拒絶』に関わりを持つ科学者。
 
( ´_ゝ`) 【771《アンラッキー》】
→『不運』を引き起こすが、『能力者』でも『拒絶』でもない男。
 
 
.

586 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/01(金) 17:36:21 ID:aEObt95w0
 
 
○前回までのアクション
  _
( ゚∀゚)
( <●><●>)
→対峙
 
( ^ω^)
从 ゚∀从
/ ,' 3
(*゚ー゚)
→傍観
 
( ´ー`)
(゚、゚トソン
( ・∀・)
( ´_ゝ`)
→バーボンハウス
 
从'ー'从
→囚われの身
 
ノパ听)
→囚われの身
  
.

587 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/01(金) 17:37:18 ID:aEObt95w0
 
 
 
 
  第二十四話「vs【常識破り】X」
 
 
 
/ ,' 3「自警団……」
 
从 ゚∀从「開…闢……?」
 
 
 体勢を元に戻していた二人は、きょとんとして復唱した。
 自警団、と名乗る以上は少なからず何らかの形で政治に関連してくる存在なのだろう。
 そして、彼らは二人とも政治には一流の批判家よりも精通している。
 
 国家の頂点に君臨し、軍事の指揮と並行して政治も牛耳っていたアラマキと、
 第三勢力として名を挙げている『レジスタンス』のリーダー、ハインリッヒと。
 
 だと言うのに、彼らはその自警団『開闢』と云う名を知らなかった。
 だから、何のことだと思って彼らは復唱したのだ。
 
 しかし、ゼウス、ジョルジュ=パンドラ、そして内藤の三人は、緊張状態にあった。
 だから尚更なにがどうなっているのかわからなかった。
 ハインリッヒが砂をはたきながら立ち上がると、隣にいる内藤に尋ねた。
 この時、アラマキははッとしたような顔をしていた。
 
从 ゚∀从「……おい、デブ。カイビャクって、なんだ――」
 
 
 
/ ,' 3「―――待て。聞いたことがある」
 
从 ゚∀从「へ?」
 
 アラマキも、同様に立ち上がる。
 右手を曲がった腰に当て、髭をちいさく動かした。
 
 
.

588 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/01(金) 17:39:05 ID:aEObt95w0
 
 
/ ,' 3「ちゅーても、本当に名前程度、じゃがの」
 
/ ,' 3「何年前じゃろうか。裏社会の狂いっぷりが最高潮に達していた時じゃ」
 
/ ,' 3「名もなき男女数人で構成された小規模な自警団――が、暴れとる、との。反政府組織のボスが喚いとったわ」
 
 しかし、と挟んで続ける。
 
/ ,' 3「当時は小規模な組織なんぞに囚われちゃおれん事態じゃったからの、スルーしておいたんじゃが、のちにその名を聞くことものうて、忘れておったわ」
 
/ ,' 3「……のう、おぬし。『開闢』たぁ――」
 
 質問を浴びせる前に、ジョルジュは肯いた。
 一歩前に、踏み出す。
 白衣の裾も、風になびきながらついていった。
  _
( ゚∀゚)「お察しの通りだぜ」
 
 
  _
( ゚∀゚)「『開闢』は、嘗てここら一帯の裏≠ナ暴れまわった、いまはなき組織だ」
 
 
 
/ ,' 3「!」
 
(;^ω^)「!」
 
从;゚∀从「え、え、なんだよー! 私にもわかるように説明しろ!」
 
 
 
.

589 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/01(金) 17:40:22 ID:aEObt95w0
 
 
 ハインリッヒが喚くが、この場に彼女に構おうとする者はいなかった。
 それほど、場は緊張感が敷き詰められていたのだ。
 
 また、ハインリッヒは実力こそあれど、まだ若い。
 年輩者、しかも国家の頂点に立つ男でさえ
 微かにしか知り得ない『開闢』を、ぽっと出の新参者が知る由もないだろう。
 だから、犬猿の仲であるゼウスも、彼女を嘲ろうなどとはする筈もなかった。
 
 ジョルジュの言葉は、まだ続くようだ。
 アラマキは目を細め、聴覚に神経を集中させた。
 
  _
( ゚∀゚)「でよ、ゼウスは――」
 
 
 
 ―――瞬間、ゼウスはジョルジュに飛びかかっていた。
 
 ゼウスの十八番、不意打ちだ。
 何の前触れも兆候も脈絡もなく、ジョルジュの喉元に手刀を繰り出していた。
 砂の広がる場所でゼウス特有の加速法を用いたため、砂埃が舞い上がった。
 
 嘗てここで戦っていたショボンやワタナベが自然現象を
 むやみに扱ったせいか、土地のコンディションは平生とは随分と違っていた。
 
 乾いた砂埃が、霧のように舞う。
 
 
 
(;^ω^)「ッ!」
 
/;,' 3「なッ……」
 
从;゚∀从「ぜ、ゼウス!」
 
 
 彼らにも戦慄が走る。
 背中が一気に冷たくなった。
 目を見開いて、砂埃が晴れるのを待つ。
 
 
 そして、霧が晴れた。
 瞬間、彼らは目を疑った。
 
 
 
 
.

590 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/01(金) 17:41:30 ID:aEObt95w0
 
 
 
 
 
  _
( ゚∀゚)「成長してねーなぁ。この俺が、お前の不意打ちを喰らう、とでも?」
 
( <●><●>)
 
 
 
/ 。゚ 3「な……なんじゃ、ありゃ?!」
 
从;゚∀从「手刀が……止められてる=H」
 
 
 ポケットに手を突っ込んだまま、ジョルジュは立っている。
 一方のゼウスは、ジョルジュの目の前で、今にも飛びかかりかねない体勢で、固まっていた。
 
 左肘を少し曲げて引き、右の手刀が繰り出されている。
 あと数十センチ伸ばせばいとも容易く喉元を抉れるのに、
 ゼウスはその手刀をそれより前には伸ばさなかった。
 
 ――否、伸ばせなかった。
 
 
/ ,' 3「止められてるっちゅーよか……」
 
 
 
 
 
( ^ω^)「見えない壁に、押さえつけられている=v
  _
( ゚∀゚)「………ッ!」
 
 
 ジョルジュが、反応した。
 それを見て、内藤はあることを確信した。
 
 
.

591 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/01(金) 17:42:59 ID:aEObt95w0
 
 
( ^ω^)「『開闢』のドクターで見えない壁≠扱う奴なんざ、二人といないお」
  _
( ゚∀゚)「……俺を、知ってるのか?」
 
 ジョルジュが、虚を衝かれたような顔をする。
 内藤は控えめに、ゆっくりと声を発した。
 
 
( ^ω^)「記憶があやふやだから、最初は断定しないでおこうと思ってたけど……それも、杞憂だったお」
 
从 ゚∀从「奴は、『拒絶』か?」
 
 ハインリッヒが訊く。
 内藤はちいさくかぶりを振った。
 
( ^ω^)「いいや。こいつは、ちゃあんと原作に出てくるお」
  _
( ゚∀゚)「(……原作?)」
 
 
/ ,' 3「ちょうど良いわ。景気づけじゃ、きゃつめの能力、当ててやれい」
 
( ^ω^)「もとより、そのつもりだお」
  _
( ゚∀゚)「……ほう、相手を見抜く#\力か。興味深い」
 
 内藤の謎の言動に多少は動揺したが、ジョルジュは冷静にそう言い放った。
 こんな時でも冷静に解析することに努めるのが、職業病のようにすら思えた。
 
 しかし、内藤はそれにもかぶりを振った。
 ジョルジュは「あれ」と思った。
 彼が追究する前に、内藤は続けた。
 
( ^ω^)「ジョルジュ=パンドラ。有する能力は、まんまだお」
 
 
 
 
 
.        パンドラズ・エリア
( ^ω^)「【 絶 対 領 域 】」
 
  _
( ゚∀゚)「ッ!」
 
 
 
.

592 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/01(金) 17:44:33 ID:aEObt95w0
 
 
 
 【絶対領域《パンドラズ・エリア》】と言われ、ジョルジュは太く凛々しい眉をひそめた。
 同時に、それは正解を表しているのと同義だ。
 内藤は少し胸を撫で下ろした。
 
 内藤はこの調子のまま――と願いつつ、続ける。
 
.                エリア
( ^ω^)「絶対不可侵な『領域』を創りだす《特殊能力》……ってとこかお」
 
/ ,' 3「不可侵?」
 
( ^ω^)「『質量を持たない』
      『因果律から関与されていない』
      『可視光線以外の一切の干渉をシャットアウトする』」
 
( ^ω^)「……そんな、概念論、因果律、物理法則の全てと矛盾し、独立させされた『領域』――
      言っちゃあ壁みたいなものを、自由に創りだすんだお」
 
 
 
从 ゚∀从「意味がわかんねえよ」
  _
( ゚∀゚)「ならば、簡単に言ってやろう」
 
从;゚∀从「……え?」
 
 
.

593 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/01(金) 17:46:06 ID:aEObt95w0
 
 
 ハインリッヒは当惑した。
 なぜ、向こうからわざわざ説明してくれるのだ、と思ったのだ。
 ジョルジュはしれっとした顔のまま続けた。
  _
( ゚∀゚)「お前の『英雄の優先』、つえーよな」
 
从 ゚∀从「……どうして、私を知っている?」
  _
( ゚∀゚)「詳しくは知らねえ。でも、これは知ってるぜ」
 
 
  _
( ゚∀゚)「英雄だから何をやっても許される≠ニかいう、ふざけた理論で何もかもから『優先』される――ってな」
 
从 ゚∀从「…………ふざ、けた?」
 
 ハインリッヒの右の眉がひそめられ、目は細められた。
 拳に力が入るのを、なんとか抑える。
 一方のジョルジュはハインリッヒの心中など察することもなく、全く悪びれた様子を見せなかった。
 
  _
( ゚∀゚)「おっと! 俺を殴るのは無理だぜ。『領域』が俺を守るから、な」
                       ワタシ
从 ゚∀从「抜かしやがれ。んなもん、『英雄』を『優先』させりゃーイッパツよ」
  _
( ゚∀゚)「ところが、そうは行かないんだな、これが」
 
从 ゚∀从「! ……弁解のチャンスっつーことで、一応聞いてやる。なんでだ?」
 
 ハインリッヒが睨みを強くさせて、問う。
 怒りが募りすぎて、逆説的に冷静でいられた時だった。
 
 
 しかし、ジョルジュの答えを聞くやいなや、その怒りがどこかに飛んでいってしまうことになった。
 
 
  _
( ゚∀゚)「『優先』されるべき対象が存在しないから≠セ」
 
从 ゚∀从
 
 
.

594 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/01(金) 17:46:56 ID:aEObt95w0
 
 
 
 
从;゚∀从「―――ハァ?」
 
 
 やはりそうなるだろう――と思ったジョルジュは、不敵な笑みを見せながら、言った。
 
  _
( ゚∀゚)「『優先』ってのは、物体Aと物体Bがあるとして、物体A――お前が、
      物体B――対象に、無条件で勝利するっつーことだ」
  _
( ゚∀゚)「ところが、だ。俺のこの『領域』に、対象なんてものは存在しない≠だぜ」
 
从;゚∀从「? ……?」
 
 
 
( ^ω^)「(あーあー、だめだおそんな説明……。ハインリッヒは賢くないんだお)」
 
/ ,' 3「……そうか」
  _
( ゚∀゚)「そっちはわかったみてーだな、元帥さんよ」
 
/ ,' 3「ほう! 儂を知っておるのか。殺しがいがある『能力者』じゃの」
  _
( ゚∀゚)「はっはっはっ。呆けとんじゃねーぞジジイ」
 
 
.

595 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/01(金) 17:48:07 ID:aEObt95w0
 
 
 アラマキは赤子を見下すかのような微笑を浮かべてから、ハインリッヒと向かい合った。
 やはり赤子をあやすように、噛み砕いて説明した。
 
/ ,' 3「つまり……じゃ。ハインリッヒの『優先』は、空虚には使えんわな? 『優先』すべきもんがないんじゃから」
 
从 ゚∀从「そりゃ、そうだ」
 
/ ,' 3「一方で、『領域』とやらは質量を持たず、因果律から在るもんでものうて、しかし壁として機能しておるのじゃ」
 
/ ,' 3「いわば、この壁も空虚≠ネんじゃ」
 
/ ,' 3「これら二つのことを合わせると―――」
 
从 ゚∀从「…………」
 
 
 
从;゚∀从「……待て。それ、いろいろと矛盾してんじゃねーか?」
 
( ^ω^)「それが、【絶対領域】。そうだお?」
 
 ジョルジュがにやりと右の口角を吊り上げて、肯いた。
 ジョルジュの創りだす『領域』が絶対不可侵である理由は、実に簡単だった。
 
 
 存在してはならない存在だから=B
 
 
 ネーヨが拒絶を体現しているのなら、こちらは矛盾と独立を体現しているようなものなのだ。
 見えない壁があるためそれより向こうに干渉することはできない。
 しかしその壁に質量は存在せず、圧さはゼロセンチメートルである。
 存在しない壁≠セから、ハインリッヒがジョルジュを襲う際、
 初めから何もない空間≠ゥら自身を『優先』させることなど、できるわけもない。
 
 
 概念論と因果律、物理法則の全てから矛盾し独立させた存在、それが【絶対領域】。
 それは、文字通り、開けてはならない『パンドラの箱』のような――
 
 
.

596 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/01(金) 17:49:12 ID:aEObt95w0
 
 
( ^ω^)「一応訊くと……以上の説明で、合ってるおね?」
  _
( ゚∀゚)「半分アタリで、半分ハズレだ」
 
( ^ω^)「よかったお」
 
 
 
( ;゚ω゚)「―――え?」
 
 内藤は、自分の心臓が巨人によって握りつぶされそうな心地になった。
 目が自然と見開かれる。
 急に心臓の鼓動が速くなったことにも気がついた。
 
 すると、内藤が詳細を尋ねる前に、ジョルジュがそれを自ら言った。
 隠す必要も隠し抜ける保証もない、とわかったからだろう。
 躊躇いなど感じさせない、実に流暢な口調だった。
 
  _
( ゚∀゚)「【絶対領域】は、もう古い≠だよ」
 
(;^ω^)「どッどういうことだお?」
  _
( ゚∀゚)「今の俺の能力は―――」
 
 
  _
( ゚∀゚)「――いや、こっちの方が早いな」
 
(;^ω^)「?」
 
 まくし立てるように内藤が訊くと、ジョルジュは一度答えようとして、しかしその口を閉ざした。
 少し考えたかと思うと、左手をポケットから抜き、固まったままのゼウスを指差す。
 今すぐにでも飛びかかりかねない体勢のまま、だった。
 そして、彼が身動ぎひとつすらしないことに気がついた。
 
 
.

597 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/01(金) 17:50:24 ID:aEObt95w0
 
 
 
 ――そして、しないのではなくできない≠アとにも、すぐに気がついた。
 
  _
( ゚∀゚)「【絶対領域】じゃ、張れる『領域』は平面だ。
      壁を一枚張っただけで、ゼウスの動きを止めれると思うか?」
 
(;^ω^)「そ、そりゃそうだとは思うけど……」
 
/ ,' 3「六面を覆うように壁を張った、んじゃないのかえ?」
  _
( ゚∀゚)「押しいな、じいさん。しかし、それだといくら俺でも
      とちっちまって数ミリ程の隙間を残しちまうかもしれんだろ?」
 
/ ,' 3「まどろっこしい。さっさと申せ、青二才が」
 
 
 「言われなくとも」と笑って、ジョルジュは凛とした顔つきになった。
 内藤は焦燥に駆られていたため、その風格の変化にすら気づくことはできなかった。
 
 
  _
( ゚∀゚)「俺の今の#\力は―――」
 
 
 
 
 
 

 
.

598 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/01(金) 17:51:37 ID:aEObt95w0
 
 
 
 

 
 
 
(゚、゚トソン「アニジャさん、あとはその壁だけです」
 
( ´_ゝ`)「はーいよ」
 
 
 『作者』内藤の去った後のバーボンハウスでは、『拒絶』の面々とアニジャが、
 営業時間外とは言え店内で見るのに似つかわしくない光景を繰り広げていた。
 
 ネーヨはやはりカウンターの上に肘をついて、何かを考えている。
 彼に関しては――考察の内容を除き――平常通りだ。なにも言及すべきことはない。
 
 異様だったのは、その他だった。
 マスターのトソンは何を考えたのか、店内の掃除をはじめだしたのだ。
 アニジャを道具のように使い、店内から濁りを取り去って輝きを取り戻させようとする。
 
 最初彼はなんのためだ、と思ったが、少し後に彼女が
 ビーグルとじゃれているのを見て、なんとなくではあるが理由がわかった気がした。
 
 問題は、モララーだった。
 鉄砲玉よろしく後日の襲撃を委されたのはいいが、それは明日であって今日ではない。
 だからトソンは彼にも掃除を手伝わせようと考えた。
 すると、だ。
 
 
( ・∀・)「俺、トイレ!」
 
 とだけ言い残して、戦闘中に見られるような素早さでトイレに駆け込んでいったのだ。
 アニジャが、箒で床を掃いていた時だった。
 そのとき、彼はふと思った。
 
( ´_ゝ`)「(あ、サボる気だコイツ)」
 
( ´_ゝ`)「(……『不運』だなあ……)」
 
 しかし、モララーがトイレで時間を潰すものとは言え、
 一度掃除を引き受けた以上は、モララーの不在を理由に投げ出すわけにはいかない。
 だから、渋々彼は掃き掃除から拭き掃除と、トソンの言うとおりに掃除を手伝ってやっていた。
 
 
.

599 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/01(金) 17:52:16 ID:aEObt95w0
 
 
 言われた箇所の拭き掃除も終わった時だ。
 トソンが優しい声で話しかけてきた。
 
 
(゚、゚トソン「結構綺麗になってきましたね」
 
( ´_ゝ`)「……あの、あんたは何やってたんだ?」
 
(゚、゚トソン「毛繕い」
 
( ´_ゝ`)「えっと……犬の?」
 
(゚、゚トソン「わ、私の毛繕いのついでです」
 
( ´_ゝ`)「あんた、自分を毛繕いするのかよ……」
 
(゚、゚トソン「うるさいですね。噛みつきますよ」
 
( ´_ゝ`)「攻撃方法が犬だ……」
 
(゚、゚;トソン「……もう、アニジャさんまで!」
 
( ´_ゝ`)「なぜ怒られるんだ……」
 
 
.

600 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/01(金) 17:53:30 ID:aEObt95w0
 
 
 そうぼやいて、雑巾をバケツに投げ入れる。
 くすんだ色を持つ水が飛沫をあげた。
 
(゚、゚トソン「後片付けはモララーに委せましょう」
 
( ´_ゝ`)「……あんた、結構鬼だな」
 
(゚、゚トソン「なぜでしょう、よく言われている気がします」
 
( ´_ゝ`)「いいよ、俺が後片付けする。トイレに排水流すついでに、モララーもつまみ出すよ」
 
(゚、゚トソン「お願いします」
 
 言われて、アニジャはバケツを持って、トイレに向かった。
 万が一でこそあれ、男の排泄する姿など見たくもないため、一応ノックする。
 音はしないため、眠っているのだろうか、とアニジャは思った。
 仕方なく、鍵は閉まっているものと考えた上でノブを捻ってみた。
 
 ――すると、扉は開いた。
 
 
( ´_ゝ`)「え、モララー?」
 
 逃げ口上とはいえトイレに籠もる以上、鍵はするものではないのだろうか。
 そう思っていると、蓋のされた洋式トイレの上に、人がいることに気づいた。
 アニジャがバケツを置いて近づくと、足を伸ばして座っているモララーが俯いているようだった。
 肩を揺すると、反対側にもたれかかった。
 
 ――熟睡してるなあ。
 そして、アニジャがそう思って寝顔を拝もうと視線を上に遣った時だった。
 
 
 
 
  へ へ
( のもの)
  `ー‐
 
( ´_ゝ`)
 
 
.

601 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/01(金) 17:55:14 ID:aEObt95w0
 
 
( ´_ゝ`)「あいつ……まさか」
 
 少し固まったアニジャは、その顔以外をモララーによく似せた人形を背負って、トソンのもとに戻った。
 実に軽い。中身は、おそらく空洞で、ひどく脆いのだろう。
 それをトソンに見せると、アニジャが瞬きをした次の瞬間、
 アニジャの掲げていたモララー人形は粉になっていた=B
 
 アニジャが「へ?」と、頓狂な声と表情を浮かべると、《拒絶能力》を
 使い時間と力を『操作』したであろうトソンが、アニジャの後ろで拳を突き出していた。
 この拳で、人形を一瞬にして屑にしてみせたのだな。
 そう推測したアニジャが視線を下に向けると、カウンターの上や床にその屑が飛び散っているのが見えた。
 「掃除したのに……」と『不運』を感じ、うなだれるように彼は席に就いた。
 
 
( 、 トソン「…………あの、バカ」
 
( ;´_ゝ`)「怖い、怖いぞ」
 
(゚、゚トソン「………どうしましょうか、ネーヨさん」
 
 モララーが、逃げた。
 なんのために逃げたのか――掃除が終わっても尚帰ってこないのを見ると、それは言うまでもなく明らかだ。
 どうしようかと、ネーヨの指示を仰ごうとした。
 
 すると、やはりぼうっとしていたせいか「え?」と聞き返されてしまった。
 トソンは少し呆れ顔になって、経緯を話した。
 ネーヨは興味なさそうにふんふん、と聞く。
 
( ´ー`)「つまり、逃げたってのか」
 
(゚、゚トソン「どこに――と云う推測は、おそらくここにいる三人が、皆一致しているでしょう。
.      ……さて、どうします?」
 
 
( ´ー`)「どうしますって、そりゃ―――」
 
 
 
 
 
 
 ――止めるっきゃ、ないだろ。
 
 
 
 
 
.

602 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/01(金) 17:58:51 ID:aEObt95w0
 
 
 
 

 
 
 
 
  _
(  ∀ )
 
 
从;゚∀从
 
 
/;。゚ 3
 
 
 
 彼らは、その一瞬の出来事をすぐには把握できなかった。
 いや、文字にすれば存外簡単なのだ。
 
 いきなり、背後から殴られ、ジョルジュが倒れた=B
 
 致命傷ではないようで、彼はまだ生きているし、
 運がよかったのか向こうが手加減したのか、目立った外傷はない。
 しかし、彼らが驚いて絶句しているのは、なにもジョルジュが殴られたから、ではないのだ。
 その本当の理由を、内藤が説明でもするかのように、言った。
 
 
 
( ;゚ω゚)「………ど、どーしてあんたがここにいるんだお……」
 
 
 
 
 
( ;゚ω゚)「…………モララーッ!!」
 
 
( ・∀・)「聞きてえか、平和ボケども」
 
 
 
 
.

603 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/01(金) 18:00:03 ID:aEObt95w0
 
 
 やってくるのは明日の筈のモララーが、今日やってきた=B
 それだけで、「戦闘凶」の彼らに戦慄が走るのは言うまでもないだろう。
 ハインリッヒなんか、仰天のあまり自分を音速の壁に『優先』させ、モララーに襲いかかろうと思った程である。
 ワタナベの策略により『優先』されなくなった『英雄』が取り乱すほど、これは【常識破り】な展開だった。
 
 
从;゚∀从「襲撃は、明日じゃねえのかよ!」
 
( ・∀・)「んん〜?」
 
 嘲るかのように、モララーがわざと大袈裟に聞き返してくるような仕草をとる。
 現時点で、正々堂々から最も遠ざかっている男だろうと思えた時だった。
 ハインリッリは言うまでもないとして、彼の突然の襲撃は、内藤も納得することができなかった。
 だから、普段はでしゃばらない内藤も、この時ばかりは一歩前に出るしかなかった。
 
 
(;^ω^)「『襲撃は明日』ッ!
       これは、あんたの取り付けた約束じゃなくって、そっちのボスが決めたことじゃないのかお!」
 
( ・∀・)「へぇ〜〜?」
 
 彼は耳に、耳殻を作るように当てていた右手を離し、脇腹にそのまま回す。
 腰の角度を少し前に傾け、不敵な笑みは浮かべ続けている。
 
 
(;^ω^)「……聞かせてくれお。『明日に襲撃する』って云うのは、最初から二人の間で決めていた、『嘘』なのかお?」
 
(;^ω^)「不意を衝いて、一瞬でこっちを崩しにかかれるように……っ!」
 
( ・∀・)「……」
 
 
.

604 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/01(金) 18:01:07 ID:aEObt95w0
 
 
 モララーは黙る。
 浮かべていた笑みはふッと消え、続けて不機嫌そうな顔をした。
 
(;^ω^)「………答え――」
 
( ・∀・)「違え」
 
(;^ω^)「…っ」
 
 モララーが、短く言った。
 
( ・∀・)「あの人は、そんなつまらねー『嘘』なんざ吐かねえんだ」
 
( ・∀・)「大方、今頃俺が抜け出したことがバレて、俺を連れ戻しに誰かがこっち向かってるところだろうよ」
 
从 ゚∀从「ハン! 来るだけ無駄だった、っつーわけじゃねーか! とんだ無駄足だったようだな!」
 
 本当は心中では焦燥と恐怖、不安と――拒絶しか感じていないハインリッリだが、どう云うわけか、虚勢を張ることだけはできた。
 声の音波を波動に見立てて、モララーを攻撃するかのように。
 彼女は、食らいついた。
 
 だが、モララーは「へ?」と気の抜けたような声を発した。
 ハインリッリの言っていることがわからなかったようだ。
 
 少しして、彼女の言いたいことを把握したモララーは、高らかに、間隔を空けて笑いあげた。
 そして笑いで肩を震わせながら俯き、フードをかぶった。
 フードを左手で押さえ、フードの下から細めた目をこちらに向ける。
 
 
 その目が、今まで見てきたなかで最も「黒い」目だったため、ハインリッリはぞわり、と不気味なものを感じた。
 同時に、一気に解放でもしたのだろうか、『拒絶』特有の不快感しか与えない
 強烈なオーラが、生温い風のようにゆっくりやってきては彼らを襲った。

 無臭の筈なのに、おぞましいものの臭いがする。
 無色の筈なのに、くすんだどす黒い陽炎が見える。
 実体を伴わない筈なのに、手を伸ばせばそのオーラを掴める錯覚が感じられそうだ。
 
.

605 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/01(金) 18:02:13 ID:aEObt95w0
 
 
 ――これが、モララーか。
 
 ふと、ハインリッリとアラマキは思った。
 今までは所詮手加減、それもお遊びだ――と。
 また同時に、彼らはこうも危惧した。
 
 ――今から、奴は本気を出す。
 
 そう思って筋肉が緊張しつつあるのを実感していると、モララーは口角を鮫のように伸ばし、そして開いた。
 
 
( ・∀・)「やっぱ、おまえ頭悪いわ」
 
从 ゚∀从「……なに?」
 
 フードから左手を離し、体勢を変える。
 左手も脇腹に添え、背中を反るようにふんぞり返っては、上から彼らを見下すように視線も高くした。
 フードから覗けていた目が影で隠れる。
 
 そしてモララーは続けた。
 ――というより、話題転換と言わんばかりに、内藤に向かって言葉を放った。
 
 
( ・∀・)「一応、答えといてやる」
 
(;^ω^)「……お?」
 
 内藤が身構える。
 もう、彼の『拒絶』のオーラは、氾濫しそうな程この場に満ちかえっている。
 一般人の内藤が、それに耐えられる筈もないのだ。
 
 
( ・∀・)「別におまえらを騙そうと思ってあんな『嘘』を吐いたわけでもなきゃあ、
      不意を衝いて一気に潰そう――なんてハラでもない」
 
( ・∀・)「ただ、『来るはずのない敵が、いきなりやってくるわけないだろう』なんて云う―――」
 
 
 
 
 
( ・∀・)「『常識』を『破る』のが、俺の美学なだけだ」
 
 
 
.

606 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/01(金) 18:03:21 ID:aEObt95w0
 
 
/;,' 3「ッ!」
 
 
 モララーの、聞いた人の内臓をかき乱すかのような声が聞こえてきたのと同時に、彼は動いた。
 地を蹴る音と同時に、その場にはちいさな砂煙が舞い、モララーが消えた。
 刹那、アラマキの後ろにモララーは現れた。
 そして、彼は思った。
 
 
 
 ――これは、『俺はアラマキの後ろにいる』と云う『嘘』ではない。
 
 ――正真正銘、『真実』のモララーの実力だ。
 
 
 
 モララーは飛び跳ねて彼の背後に向かったのだろう、宙に浮いていた。
 後ろに引かれた右足が、アラマキに向かって飛んでくる。
 アラマキは、本能的に迎撃に応じる。
 振り向きざまに、右の拳を後ろに振り払った。
 
 二人の攻撃がかち合ったかと思うと、鈍い音が聞こえた。
 恐らく、この度の互いの威力は同等。
 アラマキも能力を適応させる暇がなかったと見受けられる以上、単純な戦闘能力ならば、互角と思われた。
 
 
/;,' 3「っちィ!」
 
( ・∀・)「『英雄』よ、おまえの質問にも答えてやらぁ!!」
 
 モララーはアラマキの拳の威力を相殺した上で、加えてその拳の力を利用し後ろに下がって着地する。
 続けて体躯を低くし、直線上にいるアラマキに向かって突進した。
 『解除』を念じる隙すら与えない連撃だったため、アラマキはこれもあしらわなければならない。
 
 同じく自分も体躯を低くさせる。
 両足を肩幅より一回り広めに広げ、腰を落とす。
 直後左方面から飛んでくるモララーの右フックを、腰を右に動かし
 上半身を左に大きく倒すことで回避し、同時に右の拳でモララーの左肩を狙った。
 
 それをモララーは読んでいたのか、左肘で迎え撃った。
 この時はアラマキが競り勝ったようで、彼の拳には確かな手応えが残った。
 
 
.

607 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/01(金) 18:04:11 ID:aEObt95w0
 
 
 ――だが、情勢を見る限り、優勢に立っていそうなのはモララーの方だった。
 
 単純なパワーならばアラマキの優勢なのだが、スピードはモララーの方が
 何枚も上手であり、加えて立ち回りがとても素人のものとは思えないのだ。
 アラマキはそのスピードについていくだけで言葉を発することさえできなくなったのに対し、
 モララーは涼しい顔をしてハインリッリに声をかけている。
 
 そんな情勢を見て、誰がアラマキの優勢と言えるだろうか。
 そして、同じ見解を内藤も持っていた。
 
 
( ・∀・)「あいつらが俺を連れ戻すより、前に!」
 
/;,' 3「――ッ」
 
 
 
( ・∀・)「俺が先に始末するつもりなんだよ!」
 
( ・∀・)「それも、ステゴロのタイマンでなァ!!」
 
 
 
 
/;,' 3「―――『解除』ォォ!」
 
( ・∀・)「…っ」
 
 
.

608 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/01(金) 18:05:01 ID:aEObt95w0
 
 
 モララーがそう言ったのを好機と見て、アラマキが【則を拒む者】として動いた。
 モララーの踏み込みの反動を『解除』して、駆け出すのを封じた。
 モララーも初めて能力を受けるわけで、一瞬動じてしまった。
 地にできた半径一メートル程度のクレーターを見て、何が起こったのかを理解する。
 
 その頃には、ハインリッヒが動いていた。
 【正義の執行】を開始することで『英雄』としての身体能力の補正を受ける。
 そしてモララーに左から飛びかかり、右足を左後ろへと大きく引いた。
 その脚が描くであろう孤の軌跡のちょうど真ん中に、モララーの首が捉えられていた。
 
 モララーは咄嗟に右後ろに退こうとした。
 だが、その跳躍をもアラマキが能力で封じる。
 一層大きなクレーターができ、モララーが反動で前のめりになった。
 その瞬間を、ハインリッヒとアラマキが同時に捉えた。
 
( ・∀・)「―――ちッ」
 
 アラマキの右の正拳と、ハインリッヒの右の脚。
 二つの軌道から逃れることができないと察したモララーは、両手を咄嗟に前後に繰り出した。
 
 直後、爆音に似た乾いた打撃音が森にこだました。
 森の葉が、爆風に扇がれたかのように揺れる。
 
 モララーの右手はアラマキの拳を、
 モララーの左手はハインリッヒの脚を
 それぞれの同等の力を以て、完璧に迎え撃っていた。
 
 ――モララーは、あの一瞬で繰り出した両手で、アラマキとハインリッヒの一撃を完全に殺したのだ。
 そうとわかって、ハインリッヒもアラマキも、『拒絶』に対する不安以上に、
 強敵に対する胸の昂揚が膨らんでいっていることに気がついた。
 
 ワタナベも、戦闘能力は持ち合わせていた。
 だが、それは《拒絶能力》を利用した上での戦闘能力だ。
 
 しかし、モララーのこれは違った。
 素でハインリッヒとアラマキを相手にできる程の戦闘能力≠ネのだ。
 
 小手先なしでこの強さ。
 一人の『能力者』としてより、一人の「戦闘凶」としての感情が
 先立ってしまう結果となるのも、仕方のないことだっただろう。
 
 
.

609 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/01(金) 18:06:03 ID:aEObt95w0
 
 
/ ,' 3「――ほう」
 
从 ゚∀从「……思ったより、遣えるな」
 
( ・∀・)「ほざけ」
 
 
 モララーは、左手の掌を拳に変え、ハインリッヒの足首を下から殴りあげた。
 すぐさまハインリッヒは反動に脚を委せ上に流すことで、威力を分散した。
 続けて膠着状態だった戦況が再び目まぐるしく動き出した。
 
 ハインリッヒは上に流すその勢いを利用して、空を仰ぐようにして後方に一回転。
 彼女が退くのを察して、アラマキはそのまま攻撃に転じた。
 
 二対一と云う絶対有利の局面である以上、二人が同じ事をしていてはその利点を殺してしまうことになる。
 彼女が体勢を整えるうちに、フリーになっているアラマキは、突き出していた右腕を引き、続けざまに軽く跳ねた。
 このとき、モララーは振り向こうともせず、突き出した右手を引き、
 その反動と勢いを利用して右の膝でアラマキを蹴り上げようとした。
 
 しかし、それよりアラマキの方が速かった。
 
 
/ ,' 3「重力――っ」
 
( ・∀・)「ッ!」
 
 
.

610 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/01(金) 18:07:10 ID:aEObt95w0
 
 
 ハインリッヒに気を取られていたモララーより、アラマキの方が猶予はあったのだ。
 【則を拒む者】が、モララーの重力を『解除』した。
 途端、味わったことのない、文字通りの浮遊感がモララーを襲った。
 味わったことのない『異常』が続けて彼を動かしたので、モララーは一瞬動揺した。
 そこを、アラマキは狙っていたのだ。
 
 もとより、【常識破り】に、重力、もとい宇宙を使った勝利が掴めるとは思っていない。
 それには長い時間的猶予が要るため、むろんそれより先にモララーの【常識破り】が動くからだ。
 しかし、大技を決める程度の隙なら。
 そう思ったがゆえの、『解除』だった。
 
 ハインリッヒ相手には勝利目的で使ったこの技が
 このように隙を見出すためだけに使われるとは、当時のアラマキには想像すらできなかっただろう。
 
 目論見通り、モララーは体勢を崩し、針の穴ほどの隙を見せた。
 跳ねて宙に浮いているアラマキは、その針の穴に両足――ドロップキック――を見舞った。
 これをするのがハインリッヒだったならば生首くらい持っていけるだろう、それほどの大技だった。
 モララーがその動きに気を払えたのは、両足がモララーの肌の手前三センチにまで迫っていた時だ。
 アラマキは「勝った」とまでは思わなかったにしても、ある程度の安堵を得ることくらいはできた。
 
 
 
 しかし。
 その針の穴の向こうから見えたのは
 モララー特有の、不敵な笑みだった。
 
 
/ ,' 3「――?」
 
( ・∀・)「ん〜〜、惜しいッ」
 
从;゚∀从「!」
 
 
.

611 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/01(金) 18:09:02 ID:aEObt95w0
 
 
 アラマキの放ったドロップキックは、空を貫いた。
 その両足の数メートル先にまで迫っていたのは、モララーではなくハインリッヒだ。
 一瞬の不可解な出来事に当惑したアラマキだが、ハインリッヒはより速くその不可解を理解した。
 
 後ろに退き、ロケットよろしく加速してアラマキの方に気が行ったモララーに
 飛びかかろうとしていたハインリッヒ、その後ろにモララーが現れたのだ。
 
 そこで、自惚れていたアラマキも、はッとした。
 体勢を崩しつつ着地し、立ち上がりながらモララーを睨む。
 どこぞのタキシード男のように、やれやれと言いたげな仕草をしていた。
 
( ・∀・)「こちとら意識下での発動なんだ、コンマ一秒あれば圧倒的にこっちが勝つっての」
 
/ ,' 3「…フェイク、シェイク……ッ!」
 
从 ゚∀从「文字通り……常識破りな奴だ」
 
 モララーとは対照的に、二人は、構える。
 すぐに飛び出しても構わないのだが、二人の攻撃を一瞬にして
 同時に防いだ彼のことだ、のれんに腕を押した時のような手応えしか感じられないだろう。
 彼らがすぐに動かなかった理由は、そのためだ。
 
 
 飛びかかってこないのを察しているのか
 モララーはにやにやしながら続けた。
 
 
( ・∀・)「でも、そっちだって手品を使ってチャンスを見出したんじゃねーか。おあいこ、だぜ」
 
 
.

612 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/01(金) 18:09:46 ID:aEObt95w0
 
 
/ ,' 3「まるでプロレスでも楽しんでるようじゃの」
 
( ・∀・)「そーかな。いや、違え。俺はボクシングが好きなんだ」
 
/ ,' 3「ヒョヒョ。空手の劣化が、か」
 
( ・∀・)「あー、空手もいいよな。あれどうすんの、あれ」
 
/ ,' 3「なんじゃいの」
 
( ・∀・)「ほら、貫手だっけ。こんな感じの――」
 
 
 
 
 直後、モララーはアラマキの背後に
 「四本貫手」の構えをしたまま現れた。
 
 
 
( ・∀・)「やつ」
 
 
 音もなく『常識』を介さずして現れたモララーが、
 「四本貫手」を、アラマキの肋骨と肋骨の隙間を通すように突き出した。
 
 
 
从;゚∀从「あっ――アラマキ!!」
 
 
 
.

613 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/01(金) 18:10:53 ID:aEObt95w0
 
 
 あまりに自然に放たれた不意打ちに、アラマキは反応しなかった。
 傍らでその一瞬の一部始終を見たハインリッヒが、アラマキの失態を庇うかのように飛びかかる。
 当然、彼女の加勢がモララーの不意打ちより速いはずもなかった。
 
 しかし、なにも音は聞こえなかった。
 モララーの指先とアラマキの躯とがかち合う音も、肉が抉られる音も、呻き声も。
 聞こえたのは、アラマキの乾いた笑声だけだった。
 
/ ,' 3「なっとらん、なっとらんぞ若僧」
 
(;・∀・)「―――!?」
 
/ ,' 3「『四本貫手』っちゅーんはの、」
 
 
 そう言って、ゆっくり背後に振り返ったかと思うと、瞬きをしていなくても
 気づけなかったであろう一瞬のうちに、モララーの心臓部から血が流れた。
 その速さは、高速戦闘が売りの筈のハインリッヒですら目に留めることができなかったほどであった。
 
/ ,' 3「こうするんじゃ」
 
(  ∀・)
 
 アラマキが見せた「四本貫手」と呼ばれる技の構えは、まるで一つの大きく鋭い剣のようであった。
 それが、モララーの心臓部、肋骨と肋骨の間を見事に突き刺さっている。
 モララーが前方に倒れ込もうとするので、余計にアラマキの手刀――貫手が、彼の胸に食い込んだ。
 ハインリッヒはあまりに一瞬の出来事に、目を見開いてクチをあんぐりとさせるよりほかはなかった。
 
 ハインリッヒが、飛びかかろうとした勢いを食い止め、アラマキに駆け寄ろうとする。
 すると、アラマキに寄りかかったモララーの亡骸は、一瞬にして消えてしまった。
 またも不可解な「手品」がされたため、ハインリッヒはぴたりと固まった。
 一方のアラマキは動じていなかったが。
 
 
.

614 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/01(金) 18:12:27 ID:aEObt95w0
 
 
/ ,' 3「わかったかの?」
 
( ・∀・)「ああ。嘗めちゃいけねえ、ってことがな」
 
/ ,' 3「じゃろ、じゃろ。空手はな、奥が深いんじゃ」
 
从;゚∀从「    ッ!」
 
 アラマキが声をかけると、彼と背中合わせになるようにして、モララーが現れた。
 平然と、会話なんかを交わしている。
 それが、ハインリッヒにとっては異様な光景にしか見えなかった。
 そんな彼女の当惑を置き去りにして、彼らは続ける。
 
 
( ・∀・)「ちげーよ。おまえらを嘗めちゃいけねえ、ってことが、だよ」
 
/ ,' 3「ごリッパな能力持ちよって、よく言うわいの。ホンキだしゃー、二人とも一気に殺れるんじゃろ?」
 
 ぴりぴりと、張りつめた空気が漂う。
 それは、テンションを限界ぎりぎりまでかけた弦楽器の弦のようなものだた。
 いつ切れるかわからない、膠着状態。
 いつ始まるかわからない、緊張状態。
 しかし、そう云ったものを彷彿とさせないように、二人は続ける。
 
 
( ・∀・)「バカヤロー。それじゃー満たされねえっつーの」
 
/ ,' 3「満たされる=c…か。面倒なもんじゃの、『拒絶』は」
 
( ・∀・)「そうか? 満たされる≠ヘ命有るもの万物に言える共通の快楽、生きる目的≠チて言えるぜ」
 
/ ,' 3「生きる目的≠フぅ。若い、若いわ。確かに儂も若い頃は悩んでおったの、『人はどうして生きるのだ』と」
 
( ・∀・)「同じ事で悩んでる奴が、『拒絶』に一人いるわ」
 
/ ,' 3「あっそ」
 
 
.

615 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/01(金) 18:13:17 ID:aEObt95w0
 
 
( ・∀・)「俺は俺で、猿みてーに満たされる≠アとを追い求めてるが――」
 
 ――弦が、切れる。
 そのとき、ハインリッヒは直観的に思った。
 モララーが振り返ろうとしたのだ。
 
 
( ・∀・)「なんでだろーな。そうしてっとそもそも満たされない≠じゃね、って思えてきた」
 
/ ,' 3「――どう云う意味じゃ」
 
( ・∀・)「『英雄』はともかく――ジジィ、てめーだ」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
( ・∀・)「てめーには、ホンキだす」
 
 
 
 
 
 
 
 
.

616 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/01(金) 18:14:39 ID:aEObt95w0
 
 
 
 
 
 
 
 
(゚、゚トソン「そうはさせませんよ」
 
  ,,..。。,,
( ゙*。。 ,,゙
 
 
 
 
/ 。゚ 3「ッ!?」
 
从;゚∀从「ッ!?」
 
 
 ――モララーの躯の向きが完全にアラマキの方になり、モララーの声色が変わった時。
 目の前に、髪を後頭部で縛った少女が現れ、
 同時に、モララーの顔面の左半分が砕け散った。
 
 瞬間移動としかとれない。
 モララーの『嘘』よろしく、なんの前触れもない登場だった。
 加え、二人にとっては面識のない相手だ。
 
 モララーが呆気なく殺された事実。
 モララーと等しく唐突な登場。
 見覚えのない少女の出現。
 あまりに強い驚愕が、二人を襲った。
 
 
.

617 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/01(金) 18:15:23 ID:aEObt95w0
 
 
( ・∀・)「……もう来たのか」
 
(゚、゚トソン「気づくのに遅れただけ」
 
 ――それでもやはり、【常識破り】は還ってくる。
 平然と、何事もなかったかのようにモララーが現れた。
 そしていつものように、話し始めた。
 
( ・∀・)「トソンの真面目さなら、あと十分は延ばせたろうになー」
 
(゚、゚トソン「アニジャさんが、教えてくれたのです」
 
( ・∀・)「……ふん。『不運』だ」
 
(゚、゚トソン「どっちが。おかげで、掃除の仕事量が増えたのよ」
 
 
/ ,' 3「……許嫁、かの?」
 
(゚、゚トソン「誰が」
 
 その、あまりに目まぐるしく変動する戦況にやっと思考が追いついたアラマキが、皮肉るように言った。
 『拒絶』のひとり、トソンは応える。
 
/ ,' 3「ヒョヒョヒョ……なんでもないわい」
 
 
(゚、゚トソン「ったく。ホンキ出したら、満たされず虚無感が残る。拒絶心が強まる。そんな悪循環に陥ると云うのに」
 
( ・∀・)「手加減してたらそれ以上の蟠り、憎悪が募るだけだ」
 
(゚、゚トソン「それを打ち破ってこその生きる目的≠ナしょうに」
 
( ・∀・)「トソンはそーゆー奴だったな。悪かった、悪かった」
 
(゚、゚トソン「……『嘘』、ね」
 
( ・∀・)「ばれたか」
 
 
.

618 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/01(金) 18:16:38 ID:aEObt95w0
 
 
(゚、゚トソン「――とりあえず」
 
 一旦会話を切り上げ、トソンは二人の方を向こうとした。
 モララー共々引き上げる旨を告げようとしたのだろう。
 
 しかし、彼女の網膜に映ったのは、無垢な笑みを浮かべた少女だった。
 
(*゚ー゚)「はーい!」
 
(゚、゚トソン「ッ!」
 
 
 モララーやトソンと同じく音を立てずして現れた少女に、トソンは虚を衝かれた心地になった。
 それはアラマキ、ハインリッヒも一緒だった。
 面食らったような顔をしている。
 
 トソンは反射的に《拒絶能力》を発動しようとした。
 しかし、彼女、シィに対応するには既に遅かった。
 
 
.      ラスト・ガーデン
(*゚ー゚)「【 最期の楽園 】ッ!」
 
(゚、゚;トソン「――ッ!」
 
 
 シィは、アラマキとハインリッヒを連れ、その場から消えてしまった。
 迎撃しようとしたトソンはしかし、《拒絶能力》の発動を遅らせてしまった。
 
 意識下で発動する能力の欠点は、ここにあった。
 使用者に『異常』が発生すると、能力を思うように使えなくなるのだ。
 平生のトソンなら、一瞬にしてシィもろとも相手を粉砕≠キることができるだろう。
 
.

619 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/01(金) 18:17:25 ID:aEObt95w0
 
 
(゚、゚トソン「……なんだったの、今のは……」
 
( ・∀・)「クソッタレ。逃げられたか」
 
(゚、゚トソン「!」
 
 モララーの言葉に、トソンは反応した。
 
(゚、゚トソン「……まさか、あなた」
 
( ・∀・)「当然よ」
 
 
( ・∀・)「『嘘』を吐いて、アラマキだけでも殺すつもりだったんだがなー」
 
(゚、゚トソン「……!」
 
 モララーが平生見せるような笑みを浮かべる。
 全く悪びれていない――むしろ、そうして当然、と言いたげな表情だ。
 『嘘』の方面に関してはどこまでも黒い思考を見せた時だった。
 
 
( ・∀・)「よほど勘のいい奴が、アラマキたちを逃がそうと今のガキを動かしたんだろうよ」
 
 
( ・∀・)「―――白衣のアイツとか、がな」
 
 
 
 
 
 
.

620 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/01(金) 18:18:16 ID:aEObt95w0
 
 
 
 

 
 
 
 
 そこは、「色」として表現しがたい空間だった。
 青空のもとならば「青」、暗闇のなかならば「黒」と表現できる筈の「色」が表現できない=B
 まさに形容しがたい、不可思議な空間だった。
 目を瞑ったときの、黒とも何色とも言えない時のそれに通じるものがあった。
 
 空気の流れも感じられないし、空がどこまで続くか――そもそも空と呼べるものがあるのか――すらわからない。
 根本的に、ここを現世と呼べるのかと云う時点で疑問符を打たなければならないような空間であった。
 
 
 足場があるのか、おぼろげにしかわからない。
 が、重力はありそうだ。
 「そうだ」と云うのは、実際にはあるのかどうか、凡そ見当がつかないからだ。
 
 耳鳴りすら聞こえない静寂。
 そんななか、シィ、ハインリッヒ、アラマキ。
 ほか、ジョルジュ、内藤。
 計五人が、その不可思議な空間に横たわっていた。
 
 が、気を失っていたり、眠っているわけではない。
 案の定、シィの《特殊能力》の弊害、もとい副作用だった。
 
 まだ現状を把握しきれていないハインリッヒが、最初に身体を起こした。
 続けて、アラマキ、ジョルジュが頭をさすりながら起きた。
 シィと内藤が起きあがるのには、少々時間がかかった。
 
 
.

621 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/01(金) 18:19:22 ID:aEObt95w0
 
 
 皆が皆立ち上がった時、やはり、静寂によって彼らは包まれていた。
 布擦れの音、息づかいくらいしか聞こえなかった。
 
 そして、最初にその静寂を破ったのは、ジョルジュだった。
 
  _
( ゚∀゚)「……よりにもよって、ここか」
 
(*゚ー゚)「ご、ごめん……」
 
 頭を下げるシィ。
 続けて、ハインリッヒが
 
从 ゚∀从「ここは、どこなんだ」
 
 ごく自然に浮かぶであろう質問を、放った。
 だが、ジョルジュはそれらしき名称を挙げなかった。
 
  _
( ゚∀゚)「名前なんてねえ場所だよ」
 
/ ,' 3「……もしかして、全員モララーにやられて、ここはあの世、とかの」
 
从;゚∀从「………え、縁起のわりぃこと、言うなよ……」
 
/ ,' 3「のぅ、ブーン君?」
 
 アラマキが、五人の中で最後に起きあがった内藤に声をかける。
 意外にも一般人の彼が一番静かだったため、不思議に思ったのだ。
 
 
.

622 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/01(金) 18:20:05 ID:aEObt95w0
 
 
 しかし。
 内藤は、アラマキの持つ違和感以上のそれを感じていた。
 アラマキに声をかけられても、一度では、反応できなかったのだ。
 
 
( ;゚ω゚)
 
/ ,' 3「……ブーン君?」
 
 再度、呼びかける。
 しかし反応はない。
 
 
 
( ;゚ω゚)
 
/ ,' 3「どうした、頭でも打ったか」
 
 
 
( ;゚ω゚)
 
 
 
( ;゚ω゚)「………」
 
 
/ ,' 3「…?」
 
 
 さすがに違和感を覚えたアラマキ。
 内藤の肩に手をかけようとした。
 
 その時、内藤が漸く反応を見せた。
 
 
.

623 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/01(金) 18:20:52 ID:aEObt95w0
 
 
 
 
( ;゚ω゚)「……頭」
 
/ ,' 3「は?」
 
( ;゚ω゚)「頭が……痛い」
 
/ ,' 3「やっぱり」
 
(;*゚ー゚)「ごめんなさ――」
 
 シィが自責の念に駆られ、頭を下げようとした時。
 「違う」と云う、内藤の声がそれをとどめさせた。
 続けて
 
 
( ;゚ω゚)「―――ぱ、パンドラ!」
  _
( ゚∀゚)「……?」
 
( ;゚ω゚)「こ、ここは、どこなんだお?」
 
( ;゚ω゚)「頭が……割れそうになるんだお…ッ!」
 
 そう言って、内藤は自分の頭を抱えるように両手で押さえて、異様なほどに震えだした。
 声もひどく掠れていて、顔色が一気に悪くなっていく。
 これはただ事ではない。内藤を除く四人が、そう感じた。
 
  _
( ゚∀゚)「……少なくとも、この世じゃねーな」
 
/ ,' 3「!」
 
从;゚∀从「えええええッ!? わ、私たちは死んだのか!?」
  _
( ゚∀゚)「ちげーよ。別次元≠ネだけだ」
 
从;゚∀从「別……」
 
 
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624 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/01(金) 18:21:56 ID:aEObt95w0
 
  _
( ゚∀゚)「ブーン、とか言ったか? その頭痛……具体的には、どう――?」
 
 まるで医者のように問われ、
 内藤は同じ姿勢のまま答えた。
 
 
( ;゚ω゚)「な、…なんか、頭蓋骨ごと握りつぶされそうで、神経が引っ張られて…る、感じがして、あと……」
 
 
 
( ;゚ω゚)「躯が捻れそう≠ネ感じが……するお…ッ」
  _
( ゚∀゚)「……!」
 
 言われて、ジョルジュは一瞬反応を見せた。
 まるでこの症状に心当たりがありそうな、そんな反応を。
 
 しかしその表情はすぐにゆるんだ。
 ポケットに手を突っ込んでは、ちいさく言った。
 
  _
( ゚∀゚)「………打撲による、一時的な症状だろう。我慢してくれ」
 
( ;゚ω゚)「そ……そうかお」
 
 
  _
( ゚∀゚)「……それよりも、だ。本題に入ろうじゃねーか」
 
/ ,' 3「そういえば、途中じゃったの。……能力が、どうこうっちゅー」
 
从 ゚∀从「てめーに訊きたいことは山ほどあるが――」
  _
( ゚∀゚)「そりゃーそうだろうが、まず俺の能力について言っておこう。俺だって、用があんだから」
 
/ ,' 3「……」
 
  _
( ゚∀゚)「俺の今の#\力は―――」
 
 
 
 
 
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625 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/01(金) 18:23:14 ID:aEObt95w0
 
 
 
 
 
 
 
 
 
               パンドラズ ・ ワールド
           「【 未 知 な る 絶 対 領 域 】」
 
 
 
                  キリヒラ
            「世界を『 開 闢 』く者の名だ」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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