- 118 名前: ◆qQn9znm1mg 投稿日:2012/06/19(火) 19:26:17 ID:CSzP7kRUO
-
第三話「vs【大団円】」
ノパ听)「来てみたのはいいものの……。ったく、姉貴らしいな」
(;^ω^)「……ッ!」
突如として姿を見せた女に、内藤は驚愕した。
毛先がウェーブがかった赤髪の少女を見て、ではない。
登場と同時に切った啖呵の内容を聞いて、だ。
詠唱とはまた違う語り調
ハインリッヒを「姉貴」と呼び
近くにいるだけで『大団円』を感じてしまう、そんな彼女を、内藤は、知っていた。
彼女は、短い歩幅で歩み寄ってきた。
倒れたハインリッヒ、見下すアラマキ、そして内藤の集うところへ。
その距離が八メートルに達した時点で、内藤は自分が思い浮かぶ限り唯一の名前を口にした。
(;^ω^)「……待てお、ヒート=カゲキ」
ノパ听)「!」
名を呼ばれたヒートの歩みが止まった。
同時に、内藤を強く睨んだ。
ヒートは一瞬心の中が空っぽになり、内藤を見続けた。
.
- 119 名前: ◆qQn9znm1mg 投稿日:2012/06/19(火) 19:28:05 ID:CSzP7kRUO
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(;^ω^)「どーしてあんたがここにいるか――なんて野暮は問わないお」
(;^ω^)「……その、なんだ」
(;^ω^)「もしかして、救援に来ちゃったのかお?」
ノパ听)
内藤は、ちいさく、しかしヒートの耳に届くような音量で訊いた。
その質問をする必要性は、あまりになさすぎる。
それなのに問うたその胸の内では、
内藤はなるべく正確に、現状を把握しようと努めていた。
目の前にいるヒート=カゲキは、やはり目を丸くさせたまま、内藤の言葉を漸く認識した。
そして目を細め、内藤を更に強い眼力で睨みつけた。
ノパ听)「……手前、誰だ」
(;^ω^)「……ただの、しがない小説家ですお」
ノパ听)「………姉貴、こいつ誰だ?」
内藤の言葉を、ヒートは一秒で聞き流した。
彼の放った言葉に偽りがあることを、即座に見抜いたのだ。
.
- 120 名前: ◆qQn9znm1mg 投稿日:2012/06/19(火) 19:30:40 ID:CSzP7kRUO
-
なぜ、自分の名前をわかった?
なぜ、あの男だけは雰囲気があそこまで違う?
その疑問だけで、ヒートは彼を信じようという気にはさらさらなれなかった。
だから、彼女はなぜか倒れているハインリッヒに事情を問うた。
訊かれて、ハインリッヒは声帯を震わせた。
从 ゚∀从「……そいつは――」
/ ,' 3「ほう?」
从; ∀从「――ぎゃっ!」
ハインリッヒが口を開こうとした瞬間、アラマキが動いた。
ハインリッヒの左手首を踏み、骨が折れる音を鳴らした。
彼女は苦痛の声を漏らした。
一方のアラマキは、その喘ぎ声が収まるまで足に力を籠めた。
砂と手首が擦れる音をとめてから、アラマキはヒートの方を向いた。
/ ,' 3「残念じゃが、『レジスタンス』は今日付けで解散じゃ。
誰かは存じておらぬがの、諦め――」
ノパ听)「なにしてんの、姉貴?
『ヒーローなら体力を回復して、ヒールを倒すんじゃないの?』」
.
- 121 名前: ◆qQn9znm1mg 投稿日:2012/06/19(火) 19:31:41 ID:CSzP7kRUO
-
(;^ω^)「ッ! じーさん離れろ!」
/ ,' 3「?」
アラマキの言葉を無視するかのように、ヒートはハインリッヒに引き続き声をかけた。
その瞬間だ、内藤の背筋が冷たくなったのは。
咄嗟にバックステップで後退し、同時にアラマキにも避難を忠告した。
しかし、アラマキは一体何の話かわからず、首を傾げた。
アラマキなら、咄嗟に数十メートル後退することも可能だっただろう。
しかしそれをできなかったのは、内藤の放った言葉の意味がわからなかっただけではない。
今の自分に脅威が迫るなど、予想だにしていなかったのだ。
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- 122 名前: ◆qQn9znm1mg 投稿日:2012/06/19(火) 19:32:59 ID:CSzP7kRUO
-
从 ゚∀从「サンキューッヒート!」
/;,' 3「な――!?」
たとえば、そう。
『倒したはずのハインリッヒが全快になって反撃してくる』ような『大団円』、など。
从 ゚∀从「人体に――『優先』ッ!」
/;,゚ 3「がああああああああああッ!」
『英雄』の正義の鉄拳が、アラマキの左腕を貫いた。
.
- 123 名前: ◆qQn9znm1mg 投稿日:2012/06/19(火) 19:37:19 ID:CSzP7kRUO
-
( ;゚ω゚)「アラマキィィィィィィィィィッィイ!」
ノパ听)「へー。姉貴の鉄拳をぎり避けたんだ。すごーい」
これが、ハインリッヒが宣言した『劇』でないことは、内藤にはわかっていた。
これは【劇の幕開け《イッツ・ショータイム》】から決まっていた『脚本』ではない。
言うなれば『脚色された脚本』だ、内藤は即座にそう理解した。
なぜなら、このような『脚本』、内藤は手がけたことがないのだから。
/;,' 3「小賢しいわ!」
アラマキは訳がわからなかった。
なぜハインリッヒが動けるようになれたのか。
まだ少女、ヒートの正体も明かせていない。
だが、このままだと危険だ、ということだけはわかりきっていた。
そのため、アラマキは即座に飛び上がった。
否、それは飛び上がったわけではない。
【則を拒む者《ジェネラル・キャンセラー》】の効果で
己にかかっていた重力を一時的に解除≠オ、
形ばかりの跳躍をしてみせたのだ。
いうなればハインリッヒが見せた曲芸のまねごと。
しかし、跳躍した高度、一瞬にして五十メートル。
ハインリッヒが跳躍しようが、慣性を解除することで追撃を阻止できる距離だ。
そうすることで、なんとか追撃だけでも拒もうと考えていた。
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- 124 名前: ◆qQn9znm1mg 投稿日:2012/06/19(火) 19:40:25 ID:CSzP7kRUO
-
しかし
ノパ听)「『あ、ヒーローってマッハ2.5で移動できるんだよ?』」
从 ゚∀从「そのとーり!」
/;,' 3「!?」
アラマキの経験と勘を持ってしても拒めない敵は、後ろにいた。
卓越した反射神経を持ってしても、超越した脚力を持ってしても、
追いつくはずのないアラマキを先回りして待ち受けていた。
殴りかかるハインリッヒを見て、追撃を拒むのを
諦めたアラマキは、次なる手に出た。
再び【則を拒む者】を発動する、という。
むろん、今までのように、いちいち詠唱だのしている暇はなかった。
だが、何をどう解除するのかを逐一言っていたのは、なにもハンデのつもりではない。
それは、あえて対象を口にすることで、誤作動を防ぐためである。
アラマキは誤作動を恐れたが、死に勝る恐怖など
存在しないというのがアラマキの持論だ。
意を決して、『則』を『拒んだ』。
/ ,' 3「(そのマッハの原理、『解除』させてもらおうッ)」
从;゚∀从「うげ!」
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- 125 名前: ◆qQn9znm1mg 投稿日:2012/06/19(火) 19:42:37 ID:CSzP7kRUO
-
アラマキが胸中で呟くと、ハインリッヒはがくんとうなだれ、力なく
アラマキを殴ったかと思うとマッハ2.5の動きは途端に消えてしまった。
同時に、アラマキは右肘でハインリッヒの背中を思い切り殴った。
殴った反動で右腕を肩の高さにまであげ、そして再び『則』を『拒んだ』。
/ ,' 3「空気を押し上げる力を、『解除』しよう」
うちわを扇ぐ時なんかがそうだ。
空気を扇げば、自然と大気を押していることになる。
その場で気流を生み出し、風という目に見えない物体を
押し上げる力を『解除』し、その反動でアラマキは落下速度を上げた。
一般人がやっても高所から飛び降りた程度にしかならないが、
身体能力が彼らと段違いなアラマキの場合、それは違う。
アラマキは、肘うちで落下しているハインリッヒと
ほぼ互角のスピードを生み出してしまった。
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- 126 名前: ◆qQn9znm1mg 投稿日:2012/06/19(火) 19:45:35 ID:CSzP7kRUO
-
いくら高度があろうと、彼らにその数値は問題ない。
有する《特殊能力》、戦闘力、身体能力。
そのどれもが数値では表せない程抜きん出ているため、
彼らは何らそれに脅威を感じなかった。
しかし、ハインリッヒは別のことに脅威を抱いていた。
このまま自分が地面に叩きつけられる瞬間、アラマキは
地面が請け負う力を全て自分に送り返すように
『則』を操るだろう、とわかっていたのだ。
正直言って、今の自分がそれを耐えられる程の
強固な躯を持っているのか、わからない。
だからこそ、現状を打破するにはどうすればいいか、を考えていた。
そんな時だ。
ノハ )「『そんなんじゃ劇は終わらねぇっての。
無事に着地して、早く大団円を迎えてくれよ』」
いうなれば『脚色家』。
ひとりの『脚色家』が、『脚本』を『脚色』した。
.
- 127 名前: ◆qQn9znm1mg 投稿日:2012/06/19(火) 19:47:12 ID:CSzP7kRUO
-
/ ,' 3「地面にかかる力を『解――」
/;,' 3「―――!?」
着地は、二人同時――否、アラマキが一瞬後、だった。
アラマキは当然、ハインリッヒにダメージを与えるべく
彼女に二倍の力が向かうように『則』を操った。
しかし、その手応えはまるでなかった。
ハインリッヒはまるで雲に包まれたかのように、ふんわりと、華麗に着地したのだ。
その一連の動作に、アラマキが能力を発動し彼女を迎え撃つ隙など存在しなかった。
無事に着地できたのを見て、ハインリッヒは安堵の息を吐いた。
そしてすぐさま構え、アラマキを視界の中心に据えた。
流れるように指の関節をぱきぱきと鳴らし、戦闘態勢に入った。
その一部始終を見て、アラマキが感じた第二の疑問は
アラマキに殴られた背中に、痛みを感じていなさそうだったところだ。
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- 128 名前: ◆qQn9znm1mg 投稿日:2012/06/19(火) 19:50:39 ID:CSzP7kRUO
-
从 ゚∀从「……ひとつ、訊きてぇな」
/ ,' 3「なんじゃいの」
飄々とした声で答えるが、顔は笑っていなかった。
いや、笑えるはずもなかった。
得体の知れぬ少女――ヒート=カゲキ――がいる限り、
『英雄』がどこから現れてどう攻撃するのかわからない。
アラマキは常に、最大級の警戒心を抱いておく必要があった。
从 ゚∀从「いま、なにを『解除』して私の動きを止めた?」
/ ,' 3「……ふん」
从 ゚∀从「答えろ」
ハインリッヒが強くアラマキを睨んだ。
別に答えても、情勢はなにも変わらないだろう
と思ったアラマキは、促されるがまま、答えた。
/ ,' 3「なあに。マッハの原理じゃよ」
从 ゚∀从「……? マッハの原理って……なんだ?」
/ ,' 3「……そんなこと」
頬を伝う汗を拭おうなどとせず、続けた。
/ ,' 3「おぬし、『物体の慣性力は、全宇宙に存在する
他の物質との相互作用によって生じる』
っちゅーなとある偉人の言葉を知らぬと申すか?」
从 ゚∀从「?」
/ ,' 3「一緒じゃ。マッハっちゅーなもん、言わば速さの『比』。
『相互作用』を『拒め』ば、マッハなんてもん消えるんじゃよ。
……それが、マッハにおける『則』じゃからな。
つまり、音速を超えた超高速移動は封じたも同然ってことじゃ」
从 ゚∀从「……なるほど」
.
- 129 名前: ◆qQn9znm1mg 投稿日:2012/06/19(火) 19:53:28 ID:CSzP7kRUO
-
/ ,' 3「今度はこっちが訊くがの……。
そこの赤髪、いったい誰じゃ」
視線も指も使わず、しかし雰囲気かなにかで、
少し離れた場所にいるヒートを指した。
ハインリッヒも視線は動かさなかったが、
指しているのがヒートであろうことは容易に推測できた。
从 ゚∀从「妹。ヒート=カゲキってんだ」
/ ,' 3「『能力者』、か?」
从 ゚∀从「私に訊くよりも、さ。適任がいるんじゃねーか?」
ハインリッヒがそういうと、アラマキははっとして内藤の方を見た。
この時ばかりは視線や警戒など気に留めることはできなかった。
自分たちが拳を交わした一瞬間の隙に、ヒートに
襲われたのではないか――そんな危惧をしたのだ。
(;^ω^)「……」
しかし、内藤は無事だった。
アラマキたちともヒートとも充分に距離を取っている。
尤も、彼らなら一瞬で詰め寄れる距離ではあるのだが、
そもそも彼らが内藤を襲う理由は、どこにもない。
また、ハインリッヒの言葉がどういう意味か、内藤にもわかっていた。
つまり、解説をしろ、と促しているのだろうな、と。
解説をする義理なんて内藤にはないが、断ればどうなるのか。
これほど、内藤にとって想像したくない結末はない。
だから素直に、重い口を開くしかなかった。
.
- 130 名前: ◆qQn9znm1mg 投稿日:2012/06/19(火) 19:58:21 ID:CSzP7kRUO
-
(;^ω^)「……」
(;^ω^)「カゲキ三姉妹≠ェ揃ってないだけましだけども……
じーさん、最悪だお」
(;^ω^)「そこの、カゲキ三姉妹の次女、ヒート。
扱う能力は――【大団円《フィナーレ》】ッ!!」
/ ,' 3「……フィナーレ?」
(;^ω^)「『脚本(げんじつ)』を『脚色(かきかえ)』てしまう《特殊能力》だお!」
(;^ω^)「ハインリッヒが『劇』を立ち上げないと発動できないけど、
一度発動してしまうとこの世のなにもかもを『脚色』てしまうんだお。
…………別名、『脚色家』。それが、【大団円】」
.
- 134 名前: ◆qQn9znm1mg 投稿日:2012/06/24(日) 09:01:02 ID:a9LkYkQQO
-
/ ,' 3「……じゃあ、きゃつめの怪我が治癒されとるのも?」
(;^ω^)「『一度はやられたヒーローが回復してリベンジに向かう』
っていうような『脚本』に『脚色』られたんだお」
/ ,' 3「……ほう」
視線を、再びハインリッヒに向けた。
ハインリッヒは、『英雄』とは不釣り合いな、邪悪な笑みを浮かべていた。
いやむしろ、最終局面で主人公たちを迎え撃つ悪役のような、そんな面構えだった。
从 ゚∀从「言ったろ? 『英雄が優先される世界だ』って」
/ ,' 3「そうかの。じゃあ――」
/ ,' 3「『脚色家』から討つッ!」
( ^ω^)「っ!」
.
- 135 名前: ◆qQn9znm1mg 投稿日:2012/06/24(日) 09:07:40 ID:a9LkYkQQO
-
一瞬にしてヒートに詰め寄ったアラマキが、蹴りを繰り出した。
『英雄』でさえぎりぎり避けられるかといったレベルのそれを、
『脚色家』のヒートが避けられるはずがない、そう思ったのだ。
ヒートを倒しさえすれば『脚本』が『脚色』られることはなくなり、
元通り自分がハインリッヒを倒す『脚本』で終わるはずだ。
そう推理したアラマキの行動は確かに的を射たものであったが、それは不可能だった。
/;,゚ 3「むあ……ッ…っ!?」
アラマキが蹴ろうとした瞬間、一メートル四方ほどの
半透明な壁がヒートを守ったのだ。
どういうことか、アラマキが蹴ったというのに、
その打撃音は、分厚いガラスをノックした程度にしか聞こえなかった。
いや、その打撃音を発したのはアラマキの脚からで、
半透明の壁からは音は一切発されることはなかった=B
ノパ听)「……?」
咄嗟に一歩後退りしたヒートは、少し当惑した。
アラマキの狼狽のしようと目の前の壁の意味がわからなかったのだ。
おそるおそる近づけども、アラマキは襲ってこない。
少し考えると、これらの現象の答えはでた。
.
- 136 名前: ◆qQn9znm1mg 投稿日:2012/06/24(日) 09:16:16 ID:a9LkYkQQO
-
ノパ听)「ああ……なるほど」
テ メ エ ワ タ シ
ノパ听)「残念。『出演者』に『脚色家』は襲えないんだわ」
/;,' 3「なに……!?」
ノパ听)「『悪役(ヒール)』として出演している以上、
『劇』に出演していない人は殴れないってこった!」
完成された映画に、『監督』が姿を見せることなどあるのだろうか。
答えは、ノー。
決して、『監督』や『照明係』、『脚本家』は姿を見せない。
だからこそ、『出演者』はそういった裏方を、戦闘の対象にすらできないのだ。
そういうと、アラマキも納得したような顔をした。
決して認めたくないのだが、それが能力ならば抗えない。
焦燥感が一気に高まったが、自分はハインリッヒと戦うしかない、と思った。
だが、内藤。
彼だけは、未だに納得していなかった。
首を傾げて、必死にあること≠考えていた。
(;^ω^)「(そんな付属効果、あったかお……?)」
と。
しかし、内藤の意思などほったらかしで、『劇』は今もなお進もうとしていた。
内藤がどう思っているかなど、彼らには関係のない話なのだ。
アラマキは、ハインリッヒを再び前にした。
正攻法で迎え撃つしかない、と考えていた。
.
- 137 名前: ◆qQn9znm1mg 投稿日:2012/06/24(日) 09:18:16 ID:a9LkYkQQO
-
从 ゚∀从「……」
/ ,' 3「……」
距離は五十メートル。
むろん、そんな数字はあてにならない。
問題は、両者が向き合っているという事実だけだ。
この事実さえあれば、距離など関係なく戦闘が再開する。
アラマキは左腕を壊され、戦力は大幅にダウンしている。
一方のハインリッヒは、圧倒的な能力を持つヒートが後方支援に就いた。
それは、誰が反論するまでもなく、カゲキ姉妹の優勢だった。
从 ゚∀从「……ヒートさ」
ノパ听)「なに?」
从 ゚∀从「ぶっちゃけ、アラマキが隻腕になろうが、
単身じゃ勝ち目なさそーに見えんだわ。
てなわけで、『脚色』よろしくっ!」
ノパ听)「……」
ノハ )「…………」
(;^ω^)「(……まずいお。あーは言ってるけど、本当はアラマキが
左腕を使えなくなっただけで既にハインリッヒの優勢なんだお)」
(;^ω^)「(能力発動の条件を満たそうとしてる≠フか、それとも本心なのか……)」
.
- 138 名前: ◆qQn9znm1mg 投稿日:2012/06/24(日) 09:20:43 ID:a9LkYkQQO
-
ヒートがどう『脚色』するかを考えている間、ハインリッヒには隙があった。
その隙は、あまりにも大きく、滑稽で、狙いやすいものだ。
アラマキが、その隙を衝かないはずがない。
地を蹴り、反動を増幅させて三歩でハインリッヒの前に立った。
いや、立ってはいない。
実際は三歩目を踏み出した時、その反動を右の正拳突きに上乗せして放ち、
ハインリッヒの目の前に到着したと同時に、脇腹にそのパンチを見舞っていた。
立ったのは、その後だ。
从; ∀从「かッ…は………」
/ ,' 3「よそ見などするもんじゃ――ないッ!」
自身の拳に戻ってくる反動も、全てハインリッヒに押し返した。
加速による補正も加わっているため、今まで以上にダメージは大きかった。
そして、続けて右足で、ハインリッヒの腹を抉りかねない程に強く蹴り上げた。
思わぬ威力に、ハインリッヒは吐血した。
【劇の幕開け】を発動していなければ、内臓の内側から破裂しかねない威力だ。
アラマキが続けて左腕≠ナ殴りかかってきたのを見て、
ハインリッヒは反射的に『優先』を胸中で宣言した。
むろん、『英雄』を『人体』に。
.
- 139 名前: ◆qQn9znm1mg 投稿日:2012/06/24(日) 09:22:10 ID:a9LkYkQQO
-
/ ,' 3「残念。そっちは左腕じゃ」
从; ∀从「――ッうぐ!!」
アラマキの壊れた左腕は、もう見るも無惨な形に更に壊れてしまった。
骨がおかしい方向に曲がっており、血が噴き出し、剥がれ落ちそうな肉が見えている。
一度壊されてしまった以上、もう捨てたものと見ただろう。
文字通り捨て身の攻撃を、アラマキは何の躊躇いもなく放った。
ハインリッヒが新たなる『優先』を発動する前に、
アラマキは健全な右腕でハインリッヒの左のこめかみを殴った。
骨が砕けそうだったが、どうやら、加速や重力の助けなしで
『英雄』の顔に穴を空けるのは難しかったようだ。
ダメージと、吹っ飛ばす勢いを与えただけに過ぎなかった。
左腕が左腕でなくなったアラマキは苦痛を覚えるが、
それを振り払い、ハインリッヒが吹っ飛ぶ力を『解除』した。
同時に軽く反時計回りしながら跳ねて、左足で回し蹴りを見舞おうとした。
.
- 140 名前: ◆qQn9znm1mg 投稿日:2012/06/24(日) 09:23:49 ID:a9LkYkQQO
-
/#,' 3「つぇあッ!」
从; ∀从「人体に『優先』ッ!」
/#,' 3「……ちぃ!」
蹴りかかった左足にかかる慣性を『解除』して蹴りを止め、
不自然に止まった足の代わりに右の掌底で鼻の下――人中――をねらった。
ハインリッヒの【劇の幕開け】のうちのひとつ、
『英雄の優先』における弱点は、これだった。
同時にいくつも『優先』させることができないので、
アラマキが手を替え品を替え、目にも留まらぬ速さで
連打を見せてきては、能力の発動が間に合わなくなるのだ。
ハインリッヒが自身を『優先』させる前に、
鼻の下にアラマキの掌底が決まった。
吹っ飛ぶ力を『解除』してその負担分をハインリッヒに請け負わせる。
続けてヘッドバットを浴びせようとした。
ノハ )「『無駄無駄。どうせヒーローはすぐに回復して逆転するんだから』」
从 ゚∀从「もらったッ!」
/;,' 3「ぬお!」
.
- 141 名前: ◆qQn9znm1mg 投稿日:2012/06/24(日) 09:25:47 ID:a9LkYkQQO
-
【大団円】を迎えるために回復したハインリッヒは、
先ほどの掌底や蹴りを喰らったとは到底思えない動きで、右膝によりアラマキを蹴り上げた。
予想だにしなかった攻撃のため、それを跳ね返す余地はアラマキにはなかった。
从*゚∀从「逆転劇ッ! 燃えるねぇ〜ッ!」
/;,' 3「……ぐッ!」
/;,' 3「(攻撃が速すぎて全部反射できん……ッ!)」
ノハ )「……」
【劇の幕開け】でパワーアップし、
【大団円】を迎えるべく更にパワーアップしたハインリッヒ相手では、
左腕を壊されたアラマキ一人だと、殺されないように立ち回るので精一杯だった。
右からのフックを、頭を左に傾けて掠らせる。
続けてやってきた回し蹴りを反射したが、それはフェイクで、
本命だった次の脳天を遅う掌底に大ダメージを与えられた。
.
- 142 名前: ◆qQn9znm1mg 投稿日:2012/06/24(日) 09:26:58 ID:a9LkYkQQO
-
そんななかでも、アラマキは逆転の一手を思いついていた。
『重力の解除』だ。
だが、高速戦闘のなか言葉にせずに重力を『解除』するのは、非常にリスキーだ。
一瞬でも隙を見つけてハインリッヒにかかる重力を『解除』したいのだが、できない。
一進一退の攻防ではなく、それはまさに一方的な殴打の嵐だったからだ。
/;,' 3「(――ならば!)」
/;,' 3「(こやつの踏み込みで地面に生じる力を……『解除』!)」
从 ゚∀从「あるぇ」
アラマキがそれを発動した瞬間、
それはハインリッヒがまさに地を踏み込み鉄拳を放とうとした瞬間だった。
地面に向かった力が、全部ハインリッヒに向かった。
そのせいで、右足が不自然に不用意に浮かんでしまった。
なんだと思った瞬間を、アラマキが衝いた。
.
- 143 名前: ◆qQn9znm1mg 投稿日:2012/06/24(日) 09:28:22 ID:a9LkYkQQO
-
/;,' 3「重力を『解除』ッ!」
从;゚∀从「ッ!!」
ハインリッヒが真上に飛び上がった。
力をいっさい有しない、重力の喪失によるものだ。
その、身体が感じる無重力による違和感は、
ハインリッヒに既にトラウマとして刻みつけられてあった。
先ほどまでの余裕はいっさい消え、
当時の状況を思い出してしまい、一瞬のうちに顔が青ざめた。
ノハ )「『最終奥義・無重力水泳(スペーススイマー)により、ヒーローは無重力にも屈しない!』」
从 ゚∀从「お、ほんとだ」
/;。゚ 3「なにィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッィイ!?」
.
- 144 名前: ◆qQn9znm1mg 投稿日:2012/06/24(日) 09:30:09 ID:a9LkYkQQO
-
ハインリッヒが高度十メートルに達したところで、
迎えるべき【大団円】は姿を変え、ハインリッヒにその場限りの《特殊能力》を与えた。
空を自在に飛ぶかの如く、ハインリッヒは宙を動き回ってみせた。
それにはなんの『力』が発生していないことを、アラマキは認識した。
彼女は今、言わば無重力を飛び回っているのだ。
慣性や相互作用など無く、未知なる何かの力で宇宙空間を自在に動き回るのと
同義である以上、それは既存の力の法則を明らかに無視しているわけだ。
つまり、アラマキには彼女にかかる力を『解除』するのは不可能である。
操るのは重力であるため、超高速で動けるわけではない。
だが、アラマキに動きを制限されず、加えて上から左右から
自由に攻撃できる以上、彼にとって厄介であることには違いない。
从*゚∀从「スペースキィーック!」
/;,' 3「そっ…そんな反則があるのかッ?!」
.
- 145 名前: ◆qQn9znm1mg 投稿日:2012/06/24(日) 09:31:29 ID:a9LkYkQQO
-
(;^ω^)「(……そう、これがカゲキ姉妹の恐ろしいところだお……)」
(;^ω^)「(ハインリッヒ単身じゃあ、最強と呼ぶにはまだ弱いけど……。
彼女にはヒートみたいなバックがいる。
そのバックと手を組むと、誰も彼女に勝てないんだお。
今は三姉妹は揃ってないからマシだけど……でも、あの有り様かお……)」
内藤は、溜息を吐いた。
(;^ω^)「(考えたくないけど……。
【劇の幕開け】……【大団円】……あとひとり)」
(;^ω^)「(【夢幻の被写体】がここにいたら……!
アラマキ元帥だろうと、勝てっこないお!)」
.
- 146 名前: ◆qQn9znm1mg 投稿日:2012/06/24(日) 09:32:52 ID:a9LkYkQQO
-
◆
アラマキにとって、地獄絵図でしかなかった。
ハインリッヒが突進してきても、それに
アラマキが『解除』できる『力』は存在しない。
殴りかかってきた瞬間にする反射、
それくらいしか彼に操れる力の則はなかった。
不規則で不可解な軌道で動くため、
アラマキが培ってきた戦闘論は全く通じない。
「ああ動いたからこう動けば勝てる」
そんな理論など、全く通じなかった。
ハインリッヒに殴りかかった瞬間、
彼女はアラマキの前方上空に向かって回転しながら移動した。
そして擬似的な踵落としでアラマキの首筋をねらった。
アラマキはすぐさま背を曲げ首を下げて、姿勢を低くした。
同時に、ハインリッヒはふわりと動いてアラマキの右横に就いた。
流れるように繰り出した右の拳で、アラマキの腹をねらう。
アラマキが回避不可である以上反射されるとわかっていたので、
自身の右足をアラマキの右足の膝の方に向けた。
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- 147 名前: ◆qQn9znm1mg 投稿日:2012/06/24(日) 09:34:28 ID:a9LkYkQQO
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/;,' 3「解除――」
从 ゚∀从「大外狩りっ」
/;,' 3「ッ!」
ヒートの与えた『無重力水泳』は、どんな圧力にも
抗力にも勝る、相対性のない絶対的な力だ。
ハインリッヒが無重力を自在に操る以上、それで
押し込まれてはアラマキは抗うことができない。
アラマキは、力を拒むことができず、まるで赤子のように扱われる。
転びそうになった時をねらい、ハインリッヒはアラマキの手首を左手で掴んだ。
ハインリッヒが無重力下で左に捻れるように回転し、左方向にアラマキを投げ飛ばした。
/;,゚ 3「おお…ッ……!」
从 ゚∀从「スペースパァーンチ!」
/;,' 3「『解除』!」
从;゚∀从「お」
投げ飛ばした直後、その背中に向けてハインリッヒはパンチを放った。
アラマキは自身にかかる慣性の力を『解除』し、真下に落ちた。
ハインリッヒの拳は、空を切った。
空振ったのを見て、アラマキは降下と同時に
ハインリッヒの足首をがしりと掴んだ。
そして、胸中でガッツポーズをした。
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- 148 名前: ◆qQn9znm1mg 投稿日:2012/06/24(日) 09:36:56 ID:a9LkYkQQO
-
/ ,' 3「無重力なら……」
从;゚∀从「―――ッ!?」
/ ,' 3「こうするまでじゃっ!」
从;゚∀从「じ、人――人、体に――ゆ―――うせ――」
ハインリッヒの足首を掴んで、アラマキは片手でハインリッヒを振り回した。
その俗にいうジャイアントスイングという技は、無重力のハインリッヒには確かに有効だった。
慣性の存在しない『無重力水泳』に、無理やり慣性をつけることができるからだ。
そして、その慣性によって生じる力は、アラマキの能力の恰好の獲物である。
ハインリッヒも負けじと、すぐさま自身を人体に『優先』させようとするが、
振り回されているためか、うまく思考がまとまらなかった。
下手に発動しようとすれば、ろくでもない誤作動が怖い。
結果、アラマキにされるがままとなってしまった。
充分加速された彼女を、アラマキは高らかに掲げ、
そのままの勢いで、地面に叩きつけた。
地面に向かってゆく力を全てハインリッヒに押し返し、
叩きつけると同時にハインリッヒの頭を踏みつけ、力の逃げ場をなくした。
結果、ハインリッヒは経験したことのない脳震盪をはじめて経験した。
脳が豆腐のように激しく揺れ、吐き気、不快感を覚えた。
流す涙を流そうともできない。
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- 149 名前: ◆qQn9znm1mg 投稿日:2012/06/24(日) 09:38:50 ID:a9LkYkQQO
-
从 ∀从「――」
/#,' 3「もういっちょ!」
再びハインリッヒを持ち上げ、振り回した。
自分と一緒に廻る世界には、目もくれない。
目がまわりそうなのを、アラマキは堪える。
漸く手にしたチャンスを、逃すわけにはいかなかった。
そして、アラマキがそれを逃したのは、
まさしくその二撃目の瞬間だった。
ノハ )「『実は脳震盪なんてないしダメージもないよ。
早く勝って劇を終わらせてくれ』」
またも、『脚本(げんじつ)』は『脚色(かきかえ)』られた。
从*゚∀从「おっけい!」
/#,' 3「―――――ちくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!」
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- 150 名前: ◆qQn9znm1mg 投稿日:2012/06/24(日) 09:40:40 ID:a9LkYkQQO
-
どんな力が働いたのか、アラマキの右手からするッとハインリッヒの足が抜けた。
人体に優先させて、アラマキが彼女を一時的に握れないようにしたのか。
一旦退くためか、ハインリッヒ瞬時に空高く浮かんだ。
アラマキは己の無力さを痛感した。
【大団円】がいる限り、これは鼬ごっこに過ぎない、とわかったのだ。
/#,' 3「ブーン君、その小娘を止めてくれ!」
(;^ω^)「おっ!?」
急に名前を呼ばれ、内藤は驚いた。
傍観者でいたつもりが、加われ、と言ってきたからだ。
戦う前までの穏やかな声ではなく、
明らかに殺意に満ち足りた、恐ろしい声だった。
/#,' 3「おぬしの話によれば、『劇』に加わってないブーン君なら小娘――
『脚色家』を止めれるはずじゃろう!?
このままじゃ永久に終わらぬ、止めてくれい!」
( ;゚ω゚)「――!」
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- 151 名前: ◆qQn9znm1mg 投稿日:2012/06/24(日) 09:42:16 ID:a9LkYkQQO
-
「確かにそうだ」と、内藤は思った。
作中では誰も『脚色家』を止められないが、
この場には、自分、内藤がいるではないか、と。
確かに己なら、ヒートに殴れるし、逆にハインリッヒに襲われることもない。
安全圏にいながらにして、唯一『劇』に『大団円』以外の
『また違った大団円』を迎えさせることができるのだ。
そして、ヒートは戦闘タイプのキャラクターではなかったはずだ。
自分も喧嘩など下手中の下手だが、ヒートという少女を怯ませる程度はできる。
だが、内藤は迷いも生じた。
自分が――否。
『作者』が『登場人物』の戦いに水をさしていいのか。
それでまた『パラレルワールド』に支障を来すのではないか。
そう懸念したのだ。
ただでさえ、アラマキがドクオと出会い、
ハインリッヒとアラマキが序盤で出会すなど、
様々な『異常(イレギュラー)』は存在している。
これ以上「なにか」を起こしてしまって、いいのか。
自分でさえ知らない【大団円】を迎えて、いいのか。
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- 152 名前: ◆qQn9znm1mg 投稿日:2012/06/24(日) 09:43:08 ID:a9LkYkQQO
-
(;^ω^)「――――」
( ^ω^)「――迷うことなんて、ないお」
内藤は、意を決して、ヒートの方に向かった。
ヒートにも当然、アラマキの声は聞こえている。
予想だにしなかった展開に、狼狽しているようだった。
また、ハインリッヒにもアラマキの企みは伝わった。
急いで急降下し、内藤の方に向かう。
いくら『水泳』とは言え、内藤の走りとは比べものにならない速度だ。
内藤とヒートとの距離が元の半分になる前に、ハインリッヒは内藤のもとについた。
从;゚∀从「うちの妹に―――」
だが。
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- 153 名前: ◆qQn9znm1mg 投稿日:2012/06/24(日) 09:45:24 ID:a9LkYkQQO
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从;゚∀从「――なにっ!?」
アンタ ボ ク
(;^ω^)「『英雄』が『一般人』を襲うなんて、言語道断だお」
ノハ;゚听)「っ!」
見えない壁のようなもので、ハインリッヒの拳は遮られた。
【劇の幕開け】のメリットが、デメリットに姿を変えてしまった時だった。
『英雄』は『一般人』を襲えない、と、ヒートもすぐにわかった。
先ほど、自分も『悪役』から『脚色家』への攻撃を、そうして防いだばかりではないか、と。
『英雄』に助けてもらえないとわかった今、ヒートは震え上がった。
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- 154 名前: ◆qQn9znm1mg 投稿日:2012/06/24(日) 09:46:44 ID:a9LkYkQQO
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ノハ;゚听)「や、やめて、私戦闘なんて無理だから……っ」
(;^ω^)「僕だってそうだお、おあいこだお。
でも、口だけでも塞がせてもらうお!」
二人の距離、八メートル。
ノハ; 听)「やめて! 姉貴が死んじゃう!」
(;^ω^)「殺さないようにアラマキのじーさんに頼んでおくお」
六メートルになった。
ノハ; )「嘘だ、あの国軍が殺さないわけない!」
(;^ω^)「今は僕の成り行き上の友人だお。
きっと生かしておいてくれるお」
三メートルにまで迫った。
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- 155 名前: ◆qQn9znm1mg 投稿日:2012/06/24(日) 09:47:26 ID:a9LkYkQQO
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ノハ )「『最後の最後でヒーローは全回復する。だから――」
(;^ω^)「もう無駄だお!」
手が、届く距離。
ノハ;;)「――ヒーローは負けちゃだめなんだよおおおおおおおおッ!!」
(;^ω^)「(追いついた!)」
ハインリッヒが最後の最後に回復し、
内藤の手がヒートの口に、届いた瞬間だった。
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- 156 名前: ◆qQn9znm1mg 投稿日:2012/06/24(日) 09:48:07 ID:a9LkYkQQO
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ヒートの腹に、大きな穴が空いた。
具体的に言えば
何者かの腕がヒートの腹を貫いた=B
( ;゚ω゚)「――!? ッ!?」
ノハ;;)「……ガ…………?」
从;゚∀从「ヒートぉぉぉぉぉぉぉッぉお!!」
/;。゚ 3「…………!?」
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- 157 名前: ◆qQn9znm1mg 投稿日:2012/06/24(日) 09:49:37 ID:a9LkYkQQO
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( <●><●>)「【大団円】ほど面倒な能力はない。よって、殺す」
( <●><●>)「『爆撃ッ!!』」
ヒートが遠くに投げ飛ばされたかと思うと、
その矢先で、爆発がヒートの躯を呑み込んだ。
内藤の真横にいる男を、アラマキ、ハインリッヒはおろか、
内藤でさえ、名を聞かずとも知っていた。
恐怖で震える声帯を抑え、
内藤はか細い声を絞り出して、言った。
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- 158 名前: ◆qQn9znm1mg 投稿日:2012/06/24(日) 09:50:19 ID:a9LkYkQQO
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( ;゚ω゚)「どーしてここにいるんだお……」
( ;゚ω゚)「………ゼウス……ッ!!」
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