- 874 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/18(月) 17:40:42 ID:sDFjx8Yo0
-
「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌
. だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
. 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌
. だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
. 殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺
. す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
. 殺す消えてお願い消えてお願い消えてお願い消えてお願い消えてお
. 願消えいておい願消おてえい願てえ消おい消消え願てお願えおえて
. いおお願消え願いててお願えて消え消おえ消願いいてお願え消てい
. 消え願えて死ぬ願い消えて殺す死の願いそして全てを拒絶して生きる
. お死ぬ拒死い殺消えて死拒絶消え死ぬい願お消えてお願消消消て
. 消え拒拒願消願死ぬ死ぬ絶消願消て死拒い願消お死願拒絶消願」
.
- 875 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/18(月) 17:41:18 ID:sDFjx8Yo0
-
○登場人物と能力の説明
( ^ω^)
→この世界の『作者』。
/ ,' 3 【則を拒む者《ジェネラル・キャンセラー》】
→あらゆる力及び力の法則を『解除』する《特殊能力》。
从 ゚∀从 【正義の執行《ヒーローズ・ワールド》】
→『英雄』が負けない『世界』を創りだす《特殊能力》。
( <●><●>) 【連鎖する爆撃《チェーン・デストラクション》】
→相手の手負いを『連鎖』させる《特殊能力》。
( ・∀・) 【常識破り《フェイク・シェイク》】
→自然のうちに『嘘』を混ぜる《拒絶能力》。
(゚、゚トソン 【???】
→『ワールド・パラメーター』と呼ばれる少女。
( ´ー`) 【???】
→『オール・アンチ』と呼ばれる男。
_
( ゚∀゚) 【未知なる絶対領域《パンドラズ・ワールド》】
→存在してはならない『領域』を創りだす《特殊能力》。
( ´_ゝ`) 【771《アンラッキー》】
→『不運』を引き起こすが、『能力者』でも『拒絶』でもない男。
(*゚ー゚) 【最期の楽園《ラスト・ガーデン》】
→『楽園』を『保守』し、そちらにワープする《特殊能力》。
川 ゚ -゚) 【???】
→ブレスレットの「鍵」が特徴的な黒髪の少女。
トル゚〜゚) 【???】
→体長と変わらぬ大きさの槌が目立つ少女。
lw´‐ _‐ノv 【???】
→寒色がかった髪の映える飄々とした少女。
.
- 876 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/18(月) 17:41:52 ID:sDFjx8Yo0
-
○前回までのアクション
(゚、゚トソン
→裏切り≠サして気絶
_
( ゚∀゚)
从 ゚∀从
/ ,' 3
( <●><●>)
( ・∀・)
→戦闘開始
( ´_ゝ`)
→逃亡
( ´ー`)
→出動
川 ゚ -゚)
トル゚〜゚)
lw´‐ _‐ノv
→撤退
.
- 877 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/18(月) 17:42:47 ID:sDFjx8Yo0
-
第三十一話「vs【常識破り】\」
モララーの躯を這うように舞っていた、不可視の黒いオーラが
その一瞬にして、泡のようにして弾けとんだ。
( メ∀・)「――――っはははははははハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」
その直後だ。
モララーは、高らかに、狂気に満ちた声で、笑いあげた。
一音一音が、鼓膜を引き裂かん勢いで場にいる人間を襲う。
それは攻撃ですらないのだが、気を抜くと、あっという間に彼に呑まれそうだった。
.
- 878 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/18(月) 17:43:33 ID:sDFjx8Yo0
-
四人が、息を呑む。
ここからどう動くか――まったく、予想がつかないからだ。
【常識破り】と云うスキルがある以上、攻撃に関してはそれこそ読むことができない。
因果律からの干渉も、物理法則を無視した動作も、なんでもできるからだ。
先読みに長けるゼウスでも、彼のこれからの行動を読むことはできなかった。
シィは、逃げ出そうと思えば今すぐにでも逃げ出すことができた。
しかし、それではいざというときに、彼ら――ジョルジュたちを救うことができない。
ほかの四人はいいにしても、ジョルジュだけは必ず助け出さなければならない。
シィは、そんな使命感を背負っていたため、離れることはできず、近くの茂みに身をひそめていた。
内藤も内藤で、シィとはまた別の理由で、この場を離れることはできなかった。
狂ったモララーに、狂ったトソン。
その両者から、いつ狙われるかわからない。
内藤は、ある意味で言えば要注意人物筆頭であるため、その可能性は充分に高かった――のに。
だが、そんなことはお構いなしで。
モララーは、いままでのような発声はしなくなった。
腹の底から声を出すようになっていた。
( メ∀・)「――もう『常識』だの宣戦布告だの……」
(# メ∀・)「どぉぉおおおおおおおお〜〜〜っでも! いい!!」
びりびりと、臨戦態勢をとる四人の肌が焼かれる。
モララーは向いている方向――真南に、歩みはじめた。
その先には――
.
- 879 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/18(月) 17:44:04 ID:sDFjx8Yo0
-
_
( ゚∀゚)「…」
/ ,' 3「…」
(# メ∀・)「…」
ジョルジュとアラマキが、自らを能動的に緊張状態に追い込む。
一瞬でも気を緩めたら死ぬ――そう意識しておかなければ、とても太刀打ちなどできない。
だが、残された二人、ゼウスとハインリッヒに言わせてみれば
同志――否。同じ戦いを生き抜くことになった、仲間を、見捨てるわけにはいかないのだ。
ゼウスもハインリッヒも、打ち合わせをしたわけではないのに、同時に駆け出そうと体躯を低くする。
しかし、踏み出せない。
この一歩を踏み出せば、モララーのもとに向かうことはできる。
だが、できなかった。
無策で行っても、無駄だ、とわかっているからだ。
ハインリッヒも、嘗てゼウス相手に無策で突っ込んだことがあった。
その当時、アラマキが助けてくれなければ、彼女は「即殺」されていた、というのだ。
それを思い出して、ハインリッヒは、駆け出したくなる気持ちをぐッと抑えた。
.
- 880 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/18(月) 17:44:45 ID:sDFjx8Yo0
-
_
( ゚∀゚)「……」
/ ,' 3「のう、おぬし」
_
( ゚∀゚)「なんだ、ジジィ」
「さっきはじーさんと言ってくれたのにな」と、アラマキは呑気な口調で言う。
が、それにジョルジュも構っていられるほど、余裕はなかった。
自分を、緊張させていたのだ。
しかし、その緊張がいっそう引き締められそうなことを、アラマキは口走った。
/ ,' 3「凄いのぅ、ニンゲンってもんは」
_
( ゚∀゚)「どうした、急に」
/ ,' 3「なんちゅーかのぉ……いままで戦場に向こうた時にゃあ感じんかった感情なんじゃが……」
/ ,' 3「死の予感ってのは、やっぱ、するもんなんじゃな」
_
( ゚∀゚)「――――ッ」
.
- 881 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/18(月) 17:45:17 ID:sDFjx8Yo0
-
それを聞いて、ジョルジュは、絶句した。
しかし、反応していられる暇はなかった。
モララーが、もうそこにまで迫ってきているのだ。
飛び出してくる様子はない。
だからこそ、構える必要があった。
様子はない――つまり、いつ飛び出してくるかがわからないのだから。
アラマキは、死期を悟ったというのだろうか。
それも、このタイミングで。
だとすると、それはたちの悪い冗談、では済まなくなる。
ジョルジュは四肢に力を籠め、右腕を後ろに引いてから言った。
_
( ゚∀゚)「なーに寝言ほざいてんだよ、ジジィが」
/ ,' 3「ヒョヒョ。歳喰うとのぉ、虚言っちゅーもんがぽっと出るもんよ」
_
( ゚∀゚)「お前なあ、良くない未来が見えたんなら、ちっとも足掻かないでそれを甘受すんのか?」
/ ,' 3「時と場合によりけりじゃ」
_
( ゚∀゚)「……ケッ」
/ ,' 3「なんじゃ、若僧」
_
( ゚∀゚)「やっぱり……お前と、価値観は共有できねえわ」
/ ,' 3「どーゆー意味じゃ?」
.
- 882 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/18(月) 17:45:57 ID:sDFjx8Yo0
-
いま、互いに飛び出せば、文字通り一瞬で、文字通り鉢合わせする。
モララーと二人との距離は、そこまで狭まっていた。
ゼウスにも、ハインリッヒにも、助太刀を期待できそうにはなかった。
そこで、ジョルジュは、ようやく動きを見せた。
モララーも待ち構えていたものだ。
引いた右手を前に滑らせるようにして、突きつける。
同時に、ジョルジュは、モララーに負けないほどの大きな声を、放った。
_
( ゚∀゚)「良くない未来が見えたら、することはただひとつ――!」
(# メ∀・)「ッ」
_ キリヒラ
( #゚∀゚)「 『 開 闢 』 く ッ!!」
ジョルジュの右腕が伸びきったかと思うと
/ ,' 3「!」
(# メ∀・)「!」
モララーは大の字になり、後方へ飛ばされた――いや、押し出された=B
突風かなにかに押し出されたような、妙な心地だった。
その様子を見て、また放たれた言葉を咀嚼して、アラマキは心が落ち着いた。
一方のモララー。
見えないなにか≠ノ、後ろへ後ろへ、と運ばれる。
その、自分を後方に押し付けようとする見えないなにか≠ノ、心当たりがあった。
. エリア
――パンドラの『領域』。
.
- 883 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/18(月) 17:46:34 ID:sDFjx8Yo0
-
( <●><●>)「ッ!」
从 ゚∀从「ッ!」
そうとわかった瞬間、ゼウスとハインリッヒは、好機を見出した。
彼らは、モララーより北側にいた。
そのモララーが、北に向かって押し出されているのだ。
モララーは戸惑っている――なら。
いま、その隙を、狙える。
(# メ∀・)「(な、なんでだ―――)」
その間、モララーは、狼狽していた。
【常識破り】で、『俺にパンドラの箱は効かない』という『嘘』を吐いているのに、
それを『拒絶』したかのように、この見えない『領域』は、自分の行動を制限しているからだ。
が、そのことを考えていると、あっという間に背後からゼウスとハインリッヒに攻撃されるだろう。
そうなってしまうくらいなら、何も考えずに『目の前の壁なんて効かない』自分にすればいいのだ。
从#゚∀从「ちぇあッ――」
(# メ∀・)「――だあああああああああああああッッ!」
从#゚∀从「…くそッ」
【常識破り】。
たった今の『領域』をすり抜けて振り返り、ゼウスとハインリッヒを前に戦闘態勢にはいった。
飛び掛ったハインリッヒだったが、モララーの咄嗟の判断に負け、そのままとどまった。
ハインリッヒとモララーの距離は、五メートルもない。
彼らに関して言えば、かなりの至近距離だ。
金縛りにでも遭ったかのように、ハインリッヒが、動けなくなる。
モララーはこのとき「『英雄』よりも『武神』を優先して殺す」などといった嘗ての考えを、とっくに捨てていた。
もう、どうでもよくなった≠フだ。
.
- 884 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/18(月) 17:47:08 ID:sDFjx8Yo0
-
(# メ∀・)「――ッ!」
从#゚∀从「…っ」
モララーが、飛び掛った。
踏み出す足の動きを見ていたので、一瞬遅れてハインリッヒが後退する。
モララーの戦闘におけるスピードは、確かに速い。
しかし、総合的に見れば、スピードはハインリッヒのほうが上だ。
このときハインリッヒは、モララーの蹴りを間一髪でかわすことができた。
ハインリッヒは咄嗟に動いたため、体勢を保ったまま着地できず、地面に落ちては四メートルほど転がってしまった。
直後、モララーは左後ろからのゼウスの接近を許した。
初速だけならこの五人のなかでも最速だ。
また、気配を悟らせない点においても、同様である。
モララーははッとして振り向いた。
振り向きざまに左手で裏拳も見舞おうとしたが、遅かった。
( <●><●>)「 ッ」
(# メ∀・)「 」
左わき腹を、抉られた。
咄嗟の回避が功を成したのだが、それでもモララーは負荷を与えられた。
油断したから――?
『領域』を喰らったから――?
そんな『因果』が脳裏を駆けるが、いちいち咀嚼している暇はない。
右脚で、すぐ目の前にて無防備な姿でいるゼウスに、カウンターを見舞ってやろう。
モララーはそう思った。
――しかし、ゼウスは笑った=B
.
- 885 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/18(月) 17:47:57 ID:sDFjx8Yo0
-
( <●><●>)「――――『爆撃』ッッ!」
(# メ∀・)「なッ――」
从 ゚∀从「!」
. チェーン・デストラクション
从 ゚∀从「【 連 鎖 す る 爆 撃 】……ッ」
(# メ∀ )「 がアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
チェーン
手負いを『連鎖』させた――。
ゼウスは、無情にも、モララーに非現実的なまでに『爆撃』を見舞った。
ハインリッヒもゼウスも、バックステップで一気に距離をとる。
モララーのいた場所、半径五メートルを包むように
その場に、彼の『爆撃』にしては大規模な爆発が十連続で引き起こされた。
モララーの叫び声が、聞こえる。
悪魔のそれに似た、おぞましい、悲痛な叫びだ。
.
- 886 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/18(月) 17:48:31 ID:sDFjx8Yo0
-
十連続で爆撃を見舞ったあと、ゼウスは更なる『連鎖』を狙おうと、七連続の『爆撃』を試みた。
しかし、『爆撃』は引き起こされなかった。
その場から、手負いを背負ったモララーが消えた≠フだ。
_
( ゚∀゚)「後ろだ!」
( <●><●>)「ッ」
(# メ∀・)「があああああああああああああ!!!」
ゼウスの背後には、肌や肉が全て焼かれたはずのモララーが、健康体のままで浮いていた。
――が、トソンから受けた傷は、それでも消えていない。
そうわかると、ゼウスはこう考えるしかなかった。
やはり、『拒絶の精神』は、弱まってきている―――
「『優先』っ!!」
(# メ∀・)「――!?」
モララーの左拳がゼウスを貫こうとしたとき、確かに、そう聞こえた。
そしてそれは、モララーにとって聞き違えるはずのない、用心しなければならない存在≠セった。
ヒーローズ・ワールド
【 正義の執行 】――ハインリッヒ=カゲキ。
.
- 887 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/18(月) 17:49:21 ID:sDFjx8Yo0
-
『優先』と聞いて、モララーはつい反射的に、拳を止めてしまった。
音速の壁から『優先』されて、ハインリッヒが現れると思ったのだ。
いくら自分でも、『優先』された『英雄』を殴ればひとたまりもなくなる。
――しかし。
一秒経っても、『英雄』は目の前に現れなかった。
前だけでない。後ろにも、左右にも見当たらない。
それどころか、彼女は依然変わらぬ位置に、つったっていた。
「ただ声を発しただけだ」とわかったのは、ゼウスにカウンターをされたときだった。
( <●><●>)「…」
(# メ∀ )「………な……に……?」
状況を把握しきれず、混乱状態に陥ったまま、心臓を貫かれ、モララーは後方に飛ばされた。
意識が朦朧とするなか、ハインリッヒは、安堵の息を漏らしていた。
从;゚∀从「……ひゅー」
( ;゚ω゚)「……ッ!!」
( ;゚ω゚)「あ…あいつ……陽動作戦をした……お……ッ!」
( ;゚ω゚)「『英雄』の………アイツが……ッッ!」
.
- 888 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/18(月) 17:49:57 ID:sDFjx8Yo0
-
◆
ハインリッヒが陽動作戦をとったことで、モララーに致命的な隙が生まれた。
それをゼウスが、見逃すはずもない。
すぐさま、モララーの心臓を空いている左手で貫く。
だが、もちろんそれでこの戦いは終わらない。
意識が朦朧として、力なく宙に飛ばされたモララーは、次の瞬間、消えた。
『俺はここにいる』という『嘘』を、暴いた。
結果、自分が殺されたという『嘘』も一緒に消えて、本当にいた場所≠ノモララーが現れるのだ。
だが、その本当にいた場所≠烽ワた、『嘘』である。
そうして、【常識破り】は何度も還ってくる。
それが【ご都合主義】との違いであり、また【手のひら還し】に似た部分であった。
次は、どこに現れるのだ――
すると、ジョルジュとアラマキの後ろに、着地音が聞こえた。
砂が擦れる音が、彼ら二人に気配を悟らせた。
汗腺から汗が噴き出た。
が、それも一瞬。
振り向くと同時に、その汗は飛ばされ、乾いた土に染み込んだ。
.
- 889 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/18(月) 17:50:28 ID:sDFjx8Yo0
-
モララーは、やはり、完全に怒っていた。
その理由もわからないが、ただひとつ言えることは、
今のモララーは、精神状態がこの上なく不安定である、と云うことだ。
(# メ∀・)「……この…ッ……ヤロ…オオオオオオオオ!!」
その怒号は、ハインリッヒとゼウスのどちらかに向けられた。
そのどちらかまではわからなかったが、二人とも、それに動じることはなかった。
既に、動じているのだから。
/ ,' 3「…」
モララーが歩いてくる。
アラマキは自分が狙われるものだと思い、咄嗟に構えた。
しかし。
モララーは腕を動かす前に、口を開いた。
(# メ∀・)「……オイ、テメエ」
_
( ゚∀゚)「俺、かな?」
(# メ∀・)「あア、そうだ」
力みすぎているのか、声帯の震え方がかなり平生とずれていた。
どこかぎこちなく、片言になっているように聞こえる。
それほど、彼は憤慨しているのだろう。
しかし。モララーは何か、話したい――訊きたいことがあったそうだ。
それを言葉にして放とうとする。
質問に答えなければ、おそらくモララーは躊躇いなく自分たちを抹殺する。
時間を稼ぐ意味でも、機嫌を保たせるためにも、ジョルジュはそれに答えなければならなかった。
.
- 890 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/18(月) 17:51:02 ID:sDFjx8Yo0
-
(# メ∀・)「テメエ、さッキ、俺になにをした=v
_
( ゚∀゚)「なに……だと?」
(# メ∀・)「『領域』が動く……ナンて、俺は聞いテナいぞ」
_
( ゚∀゚)「……ああ、それ」
(# メ∀・)「答えろ。拒否権はねえ」
_
( ゚∀゚)「………」
低い声でそう言われ、ジョルジュは少し黙った。
気配と音で、アラマキ、ハインリッヒ、ゼウスの動向を探る。
彼らは、動こうとしない。
が、動く準備はできていたようだ。
それさえわかれば、ここで自分が時間を稼ぐ必要がないことがわかる。
_
( ゚∀゚)「……そーいや、さ」
(# メ∀・)「…」
_
( ゚∀゚)「まだ、お前たちにコレ、種を明かしてなかったな」
/ ,' 3「……タネ?」
ジョルジュの言葉がモララーにだけ向けられているわけではない、とわかって、アラマキも反応する。
「ああ」と挟んで、彼は「種明かし」を続けた。
.
- 891 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/18(月) 17:51:46 ID:sDFjx8Yo0
-
_
( ゚∀゚)「どーせ、『パンドラの箱』はもう使わねーんだ。『拒絶』化計画なんて、二度としたくねーからな」
(# メ∀・)「……よぉぉく言うぜ、キチガイヤローがよォォ!」
_
( ゚∀゚)「ブーンとやらァァ! お前の蟠り、答えてやらァ!」
(;^ω^)「…お!?」
ジョルジュが、依然モララーと睨みあったまま、不敵な笑みをこぼし――また、冷や汗を流して――
離れたところにいる内藤にわかるように、大きな声を発した。
そして内藤も、その声を聞き取ることができた。
――蟠り?
一瞬、その語の意味がわからなかったが、冷静に考えると、すぐにそれを思い出した。
そういえば、ジョルジュの《特殊能力》について話していたとき――
( ^ω^)『一応訊くと……以上の説明で、合ってるおね?』
_
( ゚∀゚)『半分アタリで、半分ハズレだ』
( ^ω^)『よかったお』
( ;゚ω゚)『―――え?』
パンドラズ・エリア
――内藤の知っていたジョルジュの能力は、【 絶 対 領 域 】だ。
しかし、実態は違った。
すると、内藤もまた、知らないのだ。
この、ジョルジュの「新しい」能力を。
.
- 892 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/18(月) 17:52:31 ID:sDFjx8Yo0
-
_
( ゚∀゚)「【未知なる絶対領域】……
モララーくんのために、その未知なる#\力を、説明してやろう」
(# メ∀・)「―――チッ」
_
( ゚∀゚)「【絶対領域】は、ただ平面の『領域』を張るだけ≠セ。
一方で【未知なる絶対領域】っつーのは―――」
_
( ゚∀゚)「その存在してはならないもの≠
自在に創りだす¥繧ナ自在に操る=v
_
( ゚∀゚)「たーった今お前を襲ったのは、勝手に前に進む∞未知なる=w領域』ッッ!」
_
( ゚∀゚)「そして俺のコレは、未知なるものを『開闢』くためのモノだッ!」
.
- 893 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/18(月) 17:53:13 ID:sDFjx8Yo0
-
――ジョルジュが、そう、大きな声で言い放った。
が、それはモララーのために言ったのではなくて、内藤のために言ったようなものだった。
言われて、モララーは少し言葉を咀嚼したのち、鼻を鳴らした。
どこか、強張った顔の筋肉が、緩んだような気がした。
(# メ∀・)「……やっぱ、そうか」
_
( ゚∀゚)「あ?」
(# メ∀・)「俺の『嘘』が通じなかったんじゃなくて、ただ――」
( メ∀・)「おまえがひとりでに進化してたってだけか」
/ ,' 3「…ッ」
直後感じる、虚無感。
それは自分の心から生まれたのではなくて、モララーの持つオーラから感じ取れた。
拒絶心とはまた違う、やり場のない虚無感。
なぜか、それは拒絶心よりも、ある意味において恐ろしいもののように思えた。
モララーが、歩くのを再開させた。
向かう先にいるのは――アラマキ=スカルチノフ。
もう、謎は解けた。加え、懸念事項がなくなった。
だから、モララーは、この戦いをも再開させるつもりになったのだろう。
そして――拒絶を、終わらせるために。
.
- 894 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/18(月) 17:53:47 ID:sDFjx8Yo0
-
( メ∀・)「―――なーんか、もう、醒めた」
/ ,' 3「ッ」
距離が、十メートルを切った。
モララーはなおも歩きながら、右腕を前に差し出す。
彼が『嘘』を吐くときに見られる、特に意味のないであろう所作だ。
アラマキが身構える。
直後、モララーは口角を吊りあげた。
( メ∀・)「トソンが寝てるうちに、とっととおまえら殺すわ」
/ ,' 3「はて、そううまく行くもんかの? 今の今まで、押されてたおぬしが」
( メ∀・)「は? あれがホンキだって思ってたのか?」
/ ,' 3「ホンキじゃろうとそーでなかろうと、『真実』じゃ」
( メ∀・)「そーかそーか。じゃあ、新しい『真実』を付け加えてやるよ」
/ ,' 3「なん―――」
モララーは、前に突きつけた右手を、ぎゅっと握りしめた。
距離が五メートルにまで迫ったときだ。
すると、先ほどまで悠長に話していたアラマキの様子が、変わった。
いや、変わらなかった=B
変わらなかったからこそ、それはおかしかった。
.
- 895 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/18(月) 17:54:33 ID:sDFjx8Yo0
-
/ ,' 3「――ぬおッ!!」
_
( ゚∀゚)「ど、どうしたんだ」
急にアラマキが、狼狽に満ちた声を発する。
しかし、体勢は依然変わっていない=B
いや、それが変わっていないのではなくて変えることができない≠フだろう、ということはすぐにわかった。
( メ∀・)「『おまえは、もう動けない』っつー『真実』だ。」
/ ,' 3「ッッ!」
ざっ、ざっ、と砂を蹴る音が、すぐ目の前にまで迫ってきた。
そしてアラマキも、モララーの言葉を聞いて、自分がいまどんな状況に陥っているのかを理解した。
【常識破り】によって、自分の躯を固定化させられてしまった―――
( メ∀・)「ダッ!!」
距離、二メートル。
もう、ハインリッヒはおろかゼウスでさえ、間に合わない。
その距離になって、モララーは、ありったけの力を右拳に籠めて、アラマキに向けた。
――そして、アラマキは笑った。
(; メ∀・)「 ッ!? 」
/ ,' 3「……」
.
- 896 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/18(月) 17:55:11 ID:sDFjx8Yo0
-
モララーがアラマキの顔面、鼻っ柱を殴ったかと思うと、
その右の拳が、手首からもがれてしまった。
アラマキの顔に触れた途端、その顔に弾き返された≠謔、だった。
続けて、肩も変な方向に曲がる。
直後に訪れる、痛み――
( <●><●>)「――」
(; メ∀・)「――チッ!」
何が起こったのかは、わからない。
しかしそのモララーの動揺の隙を狙ったのか、
右腕が壊されてしまったと同時に、ゼウスがすぐそこにまで迫ってきていた。
『嘘』により、モララーは少し離れた位置に瞬間移動した。
それによって生まれた空虚を、ゼウスの手が貫く。
あらかじめわかっていたようで、ゼウスは無表情のまま、着地した。
(; メ∀・)「―――こ、今度は、なんなんだ!!」
『嘘』を暴いて、今しがた右腕に与えられた負荷も解除する。
しかし、胸に残った黒い靄は、依然払われることはなかった。
ジョルジュの『領域』の謎を解いたかと思った次の瞬間、新たな謎が生まれたのだ。
モララーは、半ば混乱状態に陥っていた、いや、また陥ってしまった。
――いま、俺はなにをされた。
アラマキを殴ったかと思えば、その力がまるまるこちらに押し返されたような――
.
- 897 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/18(月) 17:55:42 ID:sDFjx8Yo0
-
(; メ∀・)「ッ!! ま、まさか!!」
モララーは、そこまで考えて、すぐに今の『異常』の原因を突き止めた。
嘗て、公園でアラマキ、ゼウス、ハインリッヒが対峙していたときに、このワザを何度も見ていたではないか、と。
こちらにやってくる力の向きを『解除』して、そのまま力を全部相手に押し返す――
ジェネラル・キャンセラー
【 則 を 拒 む 者 】、彼が降臨した―――
.
- 898 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/18(月) 17:56:24 ID:sDFjx8Yo0
-
( <●><●>)「悪いな」
( メ∀・)「ッ!」
背後から、ゼウスが接近したかと思えば、一瞬だけぴたりと静止して、言葉を放つ。
が、その隙をモララーが衝くことはできなかった。
( <●><●>)「確かに、貴様は【常識破り】だが―――」
(; メ∀・)「ぐッ――」
( <●><●>)「こちらも、わりと『常識破り』な連中がそろっているのでね」
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- 899 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/18(月) 17:57:59 ID:sDFjx8Yo0
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(; メ∀・)「ッッ!」
ゼウスに掌で突かれ、思わず体勢を崩し、地面にしりもちをつく。
受身も、防御も、回避も、なにもできなかった。
モララーは、その『真実』が信じられなかった。
『現実』では、自分は圧勝できるスキルと戦闘能力を持っている。
自分が圧勝し、その拒絶を見せ付ける『因果』など、なんの『異常』もない。
しかし。
いまの情勢が、いま、己がもっとも信じたくない『真実』を、雄弁に物語っていた――
从 ゚∀从
/ ,' 3
_
( ゚∀゚)
( <●><●>)
(; メ∀・)「―――ッ!!」
.
- 900 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/18(月) 17:58:41 ID:sDFjx8Yo0
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『英雄』、ハインリッヒ=カゲキ。
『武神』、アラマキ=スカルチノフ。
『開闢』、ジョルジュ=パンドラ。
『魔王』、ゼウス。
気がつけば、自分の周囲四方向を、彼らが囲んでいた。
己の『拒絶』で動きを止めたはずの、アラマキでさえ、だ。
そしてこれは、あるひとつの『真実』を示していた。
―――己の『拒絶』は、所詮この程度だ=\――
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- 901 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/18(月) 17:59:14 ID:sDFjx8Yo0
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◆
アンチ
『拒絶』の一番の特徴は、その精神だ。
あるものをひどく憎み、拒み、怨むことで、心の奥底に育まれる、ちっぽけな精神体。
それはその対象が自分に与える危害が、多くなればなるほど
より、もっと強大に、形を成していくこととなる。
――存在する限りで最強の生物とは、なにか。
過去から、幾度もの議論が交わされてきたが、そのなかでもっとも有力な答えとされているのが、ニンゲン。
攻撃力も防御力も、身体能力も、なにより、本能も捨てた、ステータスとしてはひどく弱い生物。
しかし、その答えにたどり着いた原因は、至極単純だった。
「考えることができるから」。
つまり、高度な精神体をその身に宿し、またそれをどうとでも創ることができるから、
生物としては最弱のステータスを持って生まれてしまったニンゲンのアクションを、限界を超えて生かすことができるのだ。
熊や虎に、腕力で負ける。
ならば銃をつくれ、発砲しろ、急所を貫け。
蜂や蛇に、猛毒で侵される。
ならば免疫をつくれ、抗体を打ち込め、針や牙を抜け。
無機物に、有害物質を放たれる。
ならば対抗物質をつくれ、隔離しろ、それらを取り除け。
そうして、この星に存在するさまざまな生物に、対抗してきた。
その根本となるのは、精神体だ。
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- 902 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/18(月) 18:00:06 ID:sDFjx8Yo0
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ジョルジュ=パンドラがこの点に気づいたのは、いつの頃だったか。
ほかの生物という生物を圧倒する精神体、これは最大の武器となる。
では、その精神体のなかで、いったいなんの精神がもっとも強く、他の精神を圧迫するのだろうか。
「慈愛」、「同情」、論外。
自己以外に向ける、情けなどもってのほか。
自己が最良とは、生ける者万物に共通する前提条件だ。
「正義」、「信条」、論外。
つまりそれは、自己表現の婉曲化されたものだ。
自己をさらけ出すために、他の伝達媒体を使う。それが、こういった精神だ。
ならば、最強の精神とは、いったい――
と、ジョルジュはここで、あるひとつの共通点を見出した。
この、論外となる感情が、どれも、「自己」の前に完全に屈しているということだ。
――そうだ、自己だ。
ジョルジュはそう思い、考えを改めた。
自己をもっとも顕示する精神体こそが、最強ではないか。
そういった精神体が、ニンゲンに、他の生物を圧倒する力をわれわれに与えてきたのではないか。
自己を、表現する。
その答えは、すぐにでた。「欲望」だ。
「欲望」は、いい。自己を満たすための、もっとも手っ取り早く、直接的な感情だからだ。
女を犯すのも、食物を食い荒らすのも、奇行に走るのも、「欲望」こそが先行して成す感情だ。
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- 903 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/18(月) 18:00:36 ID:sDFjx8Yo0
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ジョルジュはそう思い、すぐにそちらの研究を開始した。
程なくして、自己の「欲望」という感情を、限界を超えて感じさせる薬品を生み出した。
物は試しに、とモルモットに打った。
すると、どうだ。
狂ったかのように、ケースに攻撃し、藁を食い散らかし、性器を壁に擦りつけ、
試しに更なるモルモットをいれると、そのモルモットを十分もせぬうちに見るも無惨な形状に変えてしまった。
――これはいい。
そうわかったジョルジュは、すぐさまその薬品をニンゲンにも打った。
隔離施設に、破壊できるもの、食うためのもの、性器を突っ込むためのものを置いて、観察をした。
やはり、嘗てのモルモットと同じような実験結果を、ジョルジュの目に見せ付けてくれた。
――成功、か。
ジョルジュはそう思い、狂喜した。
が、それもものの数日だった。
「欲望」には、致命的な欠陥があったのだ。
それは、考えてみれば当然のことだった。
「欲望」とは、つまり、向かう先は自己である。
言い換えると、自己の考えること以上のことは、まったくしないのだ。
疲れたから、破壊活動をやめる。
怠いから、牛飲馬食をやめる。
飽きたから、強姦行為をやめる。
これでは、ただ本能を取り戻しただけの、非力な生物に戻っただけだ。
本能を投げ売ったからこそ、ニンゲンは生物の頂点に君臨する存在となったのに。
ジョルジュは、己のとった行動は、ただニンゲンの朽ちてゆく様を網膜に焼き付けただけだった、と後日わかった。
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- 904 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/18(月) 18:01:07 ID:sDFjx8Yo0
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おかしい。確かに、「欲望」こそが自分の求める、至高の感情物質なのに。
そこで、ジョルジュは考え直した。
こういった研究のときだけ、彼の頭脳は、世界でも随一のものとなる。
それが、彼をマッド・サイエンティストと言わしめる原因だった。
自己に突き動かされるも、その向かう先も自己にある。それが失敗だったのなら
自己に突き動かされるも、その向かう先は外界にある。そうすれば――?
――とここに行き着いて、「これはどういうことなんだ」とジョルジュは珍しく頭を悩ませた。
これは、自分の心に巣くう感情に自己を支配されるも、
その感情は特定のなにかによってもたらされるものである、ということなのだ。
内的矛盾を孕んでないか。ジョルジュは、そう思って、しばらくこの研究を進めるのをやめた。
自分の頭で研究が行き詰まったということは、それ以上考えても無駄だ、ということなのだから。
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- 905 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/18(月) 18:01:51 ID:sDFjx8Yo0
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そして、ジョルジュにアイディアがもたらされたのは、ある日、裏通りを歩いていたときだった。
人身売買に、違法薬物の取り扱い、また強姦や殺人などが、目の前で繰り広げられている。
ジョルジュは、以前「欲望」を打ち込んだ男と彼らとが似ていたように思えて、やはり、この研究は失敗か、と思った。
汚らわしいのだ。
おぞましく、不愉快で、満たされない。
これが自分と同じ生物であるのか、と思うと、顔をしかめずにはいられなかった。
表通りに向かおうとすると、途中で、ついにアウトローに絡まれた。
――というより、一方的に射撃された。
この裏通りでは、『能力者』でもない限り、相手を制止した上で金品を提示させる、なんてことはしない。
そうする前に、さっさと殺して、さっさと奪って、さっさと去るほうが、よっぽど合理的で効率的だからだ。
が、発砲音を聞いたと同時に、ジョルジュは、その音の方角に向けて『領域』を張った。
その『領域』に弾丸が着弾するが、音は発しないし、地面に力なく落ちることもない。
まるでそこに食い込んだかのように、固定させられてしまった。
その奇怪な現象を見せ付けられたせいか、アウトローが痺れを切らして、ジョルジュに襲い掛かった。
ジョルジュは面倒くさく思い、【絶対領域】を巧みに使って、アウトローの行動を制限した。
そして、常備している拳銃を構え、アウトローの頭部を打ち抜き、脳漿を散らかしてやった。
ここまでは、いつもと変わらぬ情景だ。
しかし――ふと、ジョルジュは思った。どうして、俺はこの男を殺した、と。
自分の命が狙われたから――といつもなら即答するのだが、この日は違った。
というのも、裏通りに足を運んだ際、彼は感じたのだ。
――「拒絶」を。
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- 906 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/18(月) 18:02:21 ID:sDFjx8Yo0
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「………ッ!!」
ジョルジュの目は、見開かれた。
自己に突き動かされるも、その向かう先は外界にある≠サの条件を満たす感情が、ついに見つかったからだ。
それは、嘗ての「欲望」のように、自己の都合で行動を止めるようなものではない。
対象が存在する限り、永久に、行動を止めることはないのだ。
それが、「拒絶する」ということなのだから。
そして、ついに生み出すことのできた『拒絶』だが、やはりそれにも、問題はあった。
『拒絶』の第二の特徴が、目的が「満たされること」にあったということだ。
《拒絶能力》を手に入れ、拒絶心により発達した身体能力も手に入れたというのに。
「満たされるため」に彼らはそのスキルや腕を振るう、というのだ。
だから。
たとえ、百の力を持っていても。
いざ拳を振るわせると、十ほどの力しか発揮させることができない。
これが、『拒絶』の。
この上のない、ハンディキャップだった。
だがそれでも、たとえ十ほどの力しか使うことはなくとも、
一介の『能力者』を相手取らせると、相手になにもさせないうちに圧勝してしまう。
彼らの発揮できる力は、『拒絶』のそれが十だとすれば、ほんの一にも満たないからである。
だから、第二の特徴には絵を瞑ることができた。
しかし、『拒絶』の第三の特徴。ここにもやはり、問題があった。
対象に対する拒絶心が尽きれば、その得たあらゆる能力を、途端に失ってしまう――
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- 907 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/18(月) 18:02:54 ID:sDFjx8Yo0
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◆
(; メ∀・)「くそッ!」
モララーは立ち上がったかと思えば、すぐに十メートルほど離れた位置にあらわれた。
そしてすぐさま戦闘態勢に入り、近くにいたハインリッヒめがけて、飛び蹴りをかます。
が、その蹴りは、嘗てハインリッヒとアラマキとが同時に彼に挑んだときと比べて、随分と精度が落ちていた。
確かに力強く、迅く、鋭いものではある。
おそらく、まともに受ければ、骨や肉くらい、あっさり持っていかれるだろう。
『拒絶の精神』がもたらす、精神体の賜物といってもいいだろう。
しかし。
「無鉄砲」「当てずっぽう」「むやみ」。
そんな言葉が当てはまるような、雑な攻撃だった。
当然、ハインリッヒはそれを避けることができた。
その後方にいたアラマキが、その衝撃を『解除』して、蹴りを受け止める。
再び、モララーは四人に囲まれる状況となった。
もう、わけがわからなくなっていた。
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- 908 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/18(月) 18:03:25 ID:sDFjx8Yo0
-
(; メ∀・)「――ど、どういうことだ!! どうして、俺が、……っ!」
それ以上先は、言わない。
言うと、それを自分で認めてしまうことになるからだ。
認めてしまうと、自分は―――
_
( ゚∀゚)「ほら、吐けよ、『嘘』を」
(; メ∀・)「なに……?」
両手を広げて、ジョルジュが、無防備をアピールする。
不意打ちに長けるゼウスも、こんな至近距離にいるのに、モララーを攻撃しようとはしなかった。
そしてそれは、ハインリッヒとアラマキも一緒だった。
_
( ゚∀゚)「お前は、いますぐにでも、俺たちを殺せるんだぜ」
_
( ゚∀゚)「【常識破り】を使えば、イッパツじゃねーか」
_
( ゚∀゚)「なぜ、それをしない?」
(; メ∀・)「……っ!!」
モララーは、思わず黙った。
いや、ジョルジュのその言葉は、暗に彼を黙らせる効力を持っていたのだ。
.
- 909 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/18(月) 18:04:02 ID:sDFjx8Yo0
-
また、モララーは。
つい先ほど、トソンから言われた言葉を、思い出した。
(゚、゚トソン『ったく。ホンキ出したら、満たされず虚無感が残る。拒絶心が強まる。そんな悪循環に陥ると云うのに』
( ・∀・)『手加減してたらそれ以上の蟠り、憎悪が募るだけだ』
(゚、゚トソン『それを打ち破ってこその生きる目的≠ナしょうに』
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- 910 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/18(月) 18:04:40 ID:sDFjx8Yo0
-
―――即死の『大嘘』は、吐かないんじゃない、吐けない≠フだ。
そして、その理由は、トソンがああ言っていたし、自分でも大前提として知っていた。
そのことを、ジョルジュも言った。
_
( ゚∀゚)「わかってるよ。そうしたら、自分の存在意義を、自ら拒絶≠キることになるんだもんな」
(; メ∀・)「……っ!」
モララーが、なにか言いたげな目をしている。
そして、その心中でなにを語っていたのか、ジョルジュには明瞭に伝わっていた。
_
( ゚∀゚)「ああ、お前の疑問はもっともだ」
_ .ホンキ
( ゚∀゚)「そうだとしても、今までの邂逅じゃあ勝っていた――少なくとも、『大嘘』を見せずとも、充分通じてた」
ショボンも、ワタナベも、モララーも。
相手を一瞬で葬り去ってしまうような『拒絶』を、平生では見せることはなかった。
理由は、前述のとおりだ。
それは、大きなハンディとなっていた。
しかしそれでも、彼ら三人は、彼ら、『能力者』たちに圧勝していた。
が――
_
( ゚∀゚)「なのに」
_
( ゚∀゚)「どうして、今、『大嘘』なしじゃ勝てなくなったのか――それが、わからないんだろ」
(; メ∀・)「………」
_
( ゚∀゚)「答えてやるよ」
ジョルジュは、なんの感情も介さずに、淡白な様子で言った。
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- 911 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/02/18(月) 18:05:27 ID:sDFjx8Yo0
-
_
( ゚∀゚)「お前の『拒絶の精神』が、打ち砕かれたんだよ」
_ ・ .・ ・
( ゚∀゚)「あの女が――お前の『嘘』の鎧を壊したことで、な」
――モララーは、目の前がだんだん白く染まっていった。
すると、頬を温いものが伝っていくのがわかった。
.
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