- 140 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:12:11 ID:9WBx39Jg0
-
○登場人物と能力の説明
( ^ω^)
→この世界の『作者』。
/ ,' 3 【則を拒む者《ジェネラル・キャンセラー》】
→あらゆる力及び力の法則を『解除』する《特殊能力》。
从 ゚∀从 【正義の執行《ヒーローズ・ワールド》】
→『英雄』が負けない『世界』を創りだす《特殊能力》。
( <●><●>) 【連鎖する爆撃《チェーン・デストラクション》】
→相手の手負いを『連鎖』させる《特殊能力》。
( ´ー`) 【全否定《オールアンチ》】
→なにも受け付けない《拒絶能力》。
( ・∀・) 【常識破り《フェイク・シェイク》】
→自然のうちに『嘘』を混ぜる《拒絶能力》。
(゚、゚トソン 【暴君の掟《ワールド・パラメーター》】
→『拒絶』化してしまった、それまでは『拒絶』ではなかった少女。
_
( ゚∀゚) 【未知なる絶対領域《パンドラズ・ワールド》】
→存在してはならない『領域』を創りだす《特殊能力》。
( ´_ゝ`) 【771《アンラッキー》】
→『不運』を引き起こすが、『能力者』でも『拒絶』でもない男。
(*゚ー゚) 【最期の楽園《ラスト・ガーデン》】
→『楽園』を『保守』し、そちらにワープする《特殊能力》。
.
- 141 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:12:55 ID:9WBx39Jg0
-
○前回までのアクション
( ´ー`)
→『世界』を『拒絶』
( <●><●>)
→横に二等分され死亡
/ ,' 3
→惨劇を前に金縛り状態
从 ゚∀从
→四肢をもがれ「サッカーボール」化
_
( ゚∀゚)
→肺に穴を開けられ常時窒息状態
( ^ω^)
(*゚ー゚)
→接触
.
- 142 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:13:42 ID:9WBx39Jg0
-
拒絶に、ついに呑まれかけた
戦ってもないのに拒絶に呑まれそうになった
――そんな内藤を現実の世界に呼び戻したのは、口を利いたことのない少女だった。
.
- 143 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:14:15 ID:9WBx39Jg0
-
( ;^ω^)「あんたは……」
(;*゚ー゚)「………シィ。ファミリーネームはないわ」
そこで内藤は、記憶を遡らせた。
この広場に至るまでの、経緯を、鮮明に。
いまは、ネーヨと『革命』が戦っている。
その前は、トソンが『拒絶』化した。
その原因はモララーを止めにきたことであるし、
止めに、という以上、モララーはそれほど暴れていた。暴れそう、だった。
その、前。
あの、混沌のうねりのような空間で――
( ^ω^)「……シィ……!」
――ここで内藤は、二つのことを思い出した。
一つが、彼女が自分を介抱してくれていたこと。
そしてもう一つ。
シィはジョルジュ以外の人間に近づくことはない≠ニいうこと。
.
- 144 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:14:45 ID:9WBx39Jg0
-
内藤の知り得ないことではあるが、シィはほかに、とある『不運』な男には近づくことこそあった。
しかし、そんな例外を除いて考えると、だ。
(*゚ー゚)『……パンドラ』
_
( ゚∀゚)『ん……、ん?』
あのとき、ジョルジュが不審に思ったように
彼女が、ほかの人間に接触を試みることは、ない。
それ、なのに。
(;*゚ー゚)「ちょっと、……イイ…かしら」
彼女はいま、内藤に、明らかに自分から進んで、接触を試みている。
そのことが、内藤にとっては奇妙以外のなにものでもなかったのだ。
だが、今は非常事態――を通り越して、もはや非情事態≠セ。
彼女が唯一心を開く男、ジョルジュなんか、生き地獄を喰らっている。
彼女がそれを見て取り乱さないのもなかなか不思議な話であったが、
今の内藤はその点を衝くほど、精神に余裕がなかった。
そんな事態であるからこそ、彼女は恐怖心などを捨てては
こうして、内藤というまったくの他人と言葉を交わそう、と決意したのだろう。
そう思うと、内藤も、あれこれと野暮なことを考えないようになった。
.
- 145 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:15:16 ID:9WBx39Jg0
-
( ;^ω^)「ど……どうしたんだお」
(;*゚ー゚)「どうして……あなたは、助けにいかないの?」
( ; ω )「ッ!」
――いきなり、シィは内藤の弱い部分を衝いた。
決して、悪意や他意などはない。
シィは、そういった、ヒトの暗い部分を持ち合わせていない少女だ。
いまの質問は、ただ純粋に疑問に思ったがために出たものなのである。
しかし、それでも内藤にとっては、厳しい質問となった。
即答は、できるのだ。
「自分は能力的に戦うことができない」と。
だが、それを即答することは、彼にはできなかった。
まず、自分の無力さを再認識させられるため。
次に、同志を捨てるという罪悪感に苛まれるため。
また、個人的な抵抗もあったのだ。
あの、拒絶の渦巻く戦渦に飛び込みたくなかった、と。
それが、あまりにも身勝手な考えのように思えて、
そんな自分がまた惨めにも思えて―――
.
- 146 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:15:51 ID:9WBx39Jg0
-
( ;^ω^)「……ごめんお」
(;*゚ー゚)「…? どうして謝るの?」
シィが無意識のうちに追撃をかける。
ただでさえネーヨのせいで精神が崩壊寸前だというのに――
と心中で内藤は毒づくが、しかし悪気がないのはわかっているので、口にはできない。
( ;^ω^)「なんでもないお。で、あんたはどうしたんだお」
(;*゚ー゚)「………。」
内藤は、この世界の『作者』。それは、疑う余地はない。
しかし、その余地が生まれてしまうような出来事が、ここ二日で連続して起こってきた。
たとえば、能力を忘れる。
人物名を忘れる、なにをしていたのかを忘れる。
――記憶の喪失。
たとえば、掟が破られる。
ハインリッヒが進化したり、アラマキが新たな発想をしたり、ネーヨが『世界』を『拒絶』したり。
――前提の覆敗。
――そしてそれが、今も起こっていたのだ。
というのも、内藤は
( ;^ω^)「(……シィ……。えっと、どんなやつだっけ……?)」
シィという人物を、ほとんど知らなかった。
.
- 147 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:16:23 ID:9WBx39Jg0
-
ラスト・ガーデン
( ;^ω^)「(【最期の楽園】……確かに、そんな能力を創った覚えは……ある)」
( ;^ω^)「(でも……あれ? 原作に、出したっけ? ボツネタだったかお?)」
フリー・フリクション
【 不 協 和 音 】のときでも、似たようなことは起こった。
その能力名を聞いても、名前をはっきりと思い出せなかったのだ。
しかし、今回は違う。
その、能力の時点で、既に疑問符を
打ち立てないといけないようなほど、記憶が機能していないのだ。
そして内藤は、キャラの設定はともかくとして、
その能力の設定に関しては、決して忘れることはないであろうほど
それぞれの記憶が、脳裏に蓄積されているのだ――平生では。
それが、この有様だ。
内藤は「拒絶」に加えてもうひとつ、なんともいえないマイナスの感情が胸中に浮かんだ。
(;*゚ー゚)「あ、あのね、ナイトー」
( ;^ω^)「! な、なんだお」
.
- 148 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:16:56 ID:9WBx39Jg0
-
(;*゚ー゚)「あなた、なんでもお見通し≠ネの……よね?」
( ;^ω^)「……あー」
_
( ゚∀゚)『……! なぜ、そこまで知ってやがる』
(;^ω^)『僕の前じゃ、なーんでもお見通し』
内藤は、あの空間での会話を思い出した。
あそこには、シィもいたのだ。それも、自分を介抱していた。
話は聞かれていない、と思うほうが難しかった。
あのときはああ言ったものの、自分にそんな能力など備わっていない。
ただ「『作者』である」ということを婉曲的に表現しただけなのである。
それを本気でとられると、面倒なことになる。内藤は、そう思った。
( ;^ω^)「それが、どうしたんだお」
(;*゚ー゚)「私……ちょっと、気になることが、あって」
( ^ω^)「気になること?」
.
- 149 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:17:29 ID:9WBx39Jg0
-
そのとき内藤は、どきッとした。
『作者』だからこそ、ふと思ったことだ。
なにか、逆転の布石を見つけたのか――?
内藤の集中力が研ぎ澄まされていく。
目の前にいる少女、シィに、その集中力が注ぎ込まれる。
彼女の眉の動きから鼻孔の僅かな動きまで、目に入ってきた。
内藤の様子が変わったのを察したのか、シィは少し言葉を詰まらせた。
前述のとおり、シィはジョルジュ以外の男に口を利くことはないのだ。
内藤の、食いかかってくるかのような様子にたじろいでしまうのは、仕方がなかった。
(;*゚ー゚)「なにかが……」
( ^ω^)「なにかが?」
(;*゚ー゚)「なにかが迫ってくる=v
.
- 150 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:18:05 ID:9WBx39Jg0
-
( ^ω^)
( ^ω^)
( ;^ω^)「……はい?」
内藤は、少し黙った。
彼女の言う「気になること」を検証するためである。
数秒の沈黙――この間も、ネーヨの笑い声と『革命』たちの苦痛に喘ぐ声は飛び交っている――を
挟んで最初に内藤が放てた声といえば、それしかなかった。
彼女の言った「気になること」が、思いのほか的外れなものだったためである。
当初内藤は、この絶望的な戦いにおける、逆転の兆しに気づいたのかとばかり思っていた。
ネーヨのクセだとか、ネーヨの異変だとか、そのようなものであるのか、と。
しかし、言われたかと思えば、「なにかが迫ってくる」だ。
内藤は少し、思考がまわらなくなった。
( ;^ω^)「どういう意味?」
(;*゚ー゚)「それをあなたに見通して≠烽轤「たかったのよ」
( ;^ω^)「あ、ああ……そうなの。」
.
- 151 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:18:38 ID:9WBx39Jg0
-
シィの精神年齢は、幼い。
ジョルジュが研究するようなことに関してはある程度精通しているのだが、
それ以外のこと――常識や一般教養など――に関しては、まるでさっぱりである。
こんな事態、それもジョルジュも襲われている惨劇を前にして、
よくそんな違和感を感じたなあ、と内藤は半ば呆れた。
しかし、だからといって丸投げはしなかった。
これは言い換えれば、こんな事態でも気になるほど≠フ強烈な違和感なのである。
内藤がそれに気づいていない以上、内藤の知り得ない違和感なのか、視点が違うからなのか。
惨劇から目を背けるためにも、この惨劇を打開するためにも
内藤は今一度、彼女に言われるがまま、それを見通して≠ンようかと思った。
( ^ω^)「……具体的には、どんなものが迫ってくるか、言えるかお?」
(;*゚ー゚)「わかってたら、そう言う」
( ^ω^)「(こいつ……)」
――純粋と残酷は、紙一重だ。
内藤は、ふとそう思った。
.
- 152 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:19:09 ID:9WBx39Jg0
-
(;*゚ー゚)「………でも」
( ^ω^)「お?」
(;*゚ー゚)「なんて言うか……」
(;*゚ー゚)「心臓の鼓動が、すごく強くなってて」
(;*゚ー゚)「…………苦しい。」
( ^ω^)「……苦しい、か」
内藤は、腕を組んだ。
苦しい――まあ、この状況から考えるに、おそらくはそれは
ネーヨのせいで心に植えつけられた拒絶心のことなのだろう。
視線をゆっくりおろしながら、そう推理する。
( ^ω^)「(……ん?)」
.
- 153 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:19:41 ID:9WBx39Jg0
-
( ^ω^)「(でも……それだったら、やつが『拒絶のオーラ』を解放した時点でそうなるはず……)」
( ^ω^)「(それに、それが拒絶心だとしたらなにかが迫ってくる≠チてのは……?)」
やはり、『作者』としての思考の補正は、もうかかっていなかった。
真っ先に浮かんだ「これだろう」という推理が、穴だらけだったのだ。
(;*゚ー゚)「今まで、感じたことがないわ。……パンドラが、死にそうだから……?」
( ^ω^)「……」
内藤は、ジョルジュのほうを見ない。
見てしまえば、せっかく今、こうして落ち着けているのが、
また「拒絶」に呑まれる段階にまで戻ってしまうからだ。
背後から伝わる、心を壊してしまいそうなほどの「拒絶」。
それを肌と触角のようなもので感じながら、内藤はシィを見つめていた。
( ^ω^)「……たぶん、それは違うお」
(;*゚ー゚)「違う…?」
.
- 154 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:20:11 ID:9WBx39Jg0
-
( ^ω^)「ネーヨは……殺さない≠だお」
( ^ω^)「あいつは……っていうか、『拒絶』は、相手に拒絶を植え付けて、
もがき苦しむ様を見てはじめて満たされる。
……だから、殺すことはない」
( ^ω^)「『パンドラが死ぬ運命にあるから違和感を感じる』……それは、ないと思うお」
(;*゚ー゚)「………そう、なの。」
内藤の言葉には、説得力があった。
そして、実際にそれは事実だ。
シィも、自分の予想を消さざるを得なかった。
(;*゚ー゚)「でも、なにか、ヘン」
(;*゚ー゚)「なんだか……なにか、コワいものが、すぐそこにまで来てる……」
(;*゚ー゚)「そ、そんな感じがするの。」
( ^ω^)「……。」
.
- 155 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:20:44 ID:9WBx39Jg0
-
内藤はもう一度、シィの言葉を咀嚼した。
嘘や勘違い、思い過ごし、自意識過剰――
少なくとも、そういった類のそれではないのだろう、ということだけはわかった。
確たる根拠はない。
しかし、なんとなく、そう思った。
( ^ω^)「……」
( ^ω^)「(なにかが、迫ってくる……か)」
(;*゚ー゚)「そこで、なんだけど……」
( ^ω^)「お?」
再びそのなにか≠フ正体を考えてみようとすると
シィはなにか案でも用意していたのか、それを持ちかけようとしてきた。
.
- 156 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:21:21 ID:9WBx39Jg0
-
(;*゚ー゚)「ここから……逃げ出すって、ダメ…?」
( ^ω^)「逃げ出すって……一人で?」
(;*゚ー゚)「みんな連れて、に決まってるでしょ」
( ^ω^)「うーん」
( ^ω^)
(;*゚ー゚)
( ^ω^)
( ;゚ω゚)「―――バァーカ言っちゃだめだお! どぉーやって逃げ出すって――」
(;* ー )「ラスト・ガーデンッ!」
( ^ω^)「――!」
――そこで、内藤ははッとした。
彼女、シィも、戦闘能力こそないものの、『能力者』なのだ。
【最期の楽園】。
『楽園』を『保守』し、そちらにワープする《特殊能力》。
つまり――「瞬間移動する」能力。
.
- 157 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:21:57 ID:9WBx39Jg0
-
( *´ー`)「あはは――……ハハ。」
从'',;: Д゙リ
( ´ー`)「………飽きたな」
_
( Д )「 力゙ 。 」
( ´ー`)「おうおうパンドラ。もうしまいか? ホネのねえやつだな」
_
( Д )「 。 」
( ´ー`)「……チッ。おもしろくねえヤローだぜ」
( ;^ω^)「……、」
そのことを思い出してから、見たくこそなかったものの、
内藤はチラリ、とその惨劇をもう一度だけ見た。
ネーヨの、鼓膜を劈くような笑い声は、ほとんど枯れている。
玩具だったハインリッヒとジョルジュが、またも「拒絶」に呑まれたからだ。
声をかけても、蹴り上げても、睨みつけても、反応を示さない。
死んではいないが、ほぼ死んだも同じ。
そんな物を相手にして、ネーヨの心が満たされるはずもない。
.
- 158 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:22:30 ID:9WBx39Jg0
-
ネーヨは、『世界』をも『拒絶』する術を身につけた。
玩具が使い物にならなくなったら、もう一度使えるような『世界』にするのだ。
本来なら、そんな『世界』が繰り返されて、そのたびにネーヨが満たされる。
性欲にも、薬物乱用にも勝る、快楽の頂点。
「拒絶」という、マイナスの感情によって引き起こされる副作用。
それが、ネーヨを包み込む。
それに際して、満たす側の『革命』の皆は、蝕まれていく。
今でこそ、『世界』がリセットされたら元に戻るようになっているようだが
それでも記憶は継続されていることを考えると、いつまでもそうなるとは到底思えない。
―――そうなってからでは、間に合わない。
いま――まだ根底にある精神体が生きている、今。
今でないと、間に合わない。
ネーヨという、史上最悪の『拒絶』から逃げ出すのは。
( ;^ω^)「……!」
(;*゚ー゚)「な、ナイトー…?」
( ^ω^)「………シィ」
.
- 159 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:23:05 ID:9WBx39Jg0
-
内藤は、頭を思いっきり下げた。
( ;゚ω゚)「頼む! 力を、貸してくれ!」
(;*゚ー゚)「……へ? チカラって、能力…のこと?」
( ;゚ω゚)「そーだお!」
( ;゚ω゚)「らすとがーでん……、要は、瞬間移動する能力だお?」
(;*゚ー゚)「そ、そうだけど……」
( ;゚ω゚)「(どうして、気づかなかった!)」
( ;゚ω゚)「(走って逃げ出せないのなら……)」
( ;゚ω゚)「(能力を使って逃げ出せばいいんじゃないかお!)」
( ;^ω^)「(なにも、ここは、特殊能力なんてものがありえない『世界』……じゃ、ない)」
( ;^ω^)「(そう………)」
( ^ω^)「パラレルワールド、なのだから……っ!」
.
- 160 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:23:35 ID:9WBx39Jg0
-
第三十六話
「vs【全否定】W」
.
- 161 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:24:18 ID:9WBx39Jg0
-
そう思うと、希望が見えてきた。
どのみちネーヨの場合、逃げたという『現実』をも無視して、追いかけてくるだろう。
彼の場合、シィの【最期の楽園】と違って、「ポイント特定」などのような、位置を知っておく必要はない。
ただ「玩具が逃げた」ということを『拒絶』すれば、半自動的に彼らが逃げた先に瞬間移動できるのだから。
しかし。
結果論がそうであったとしても、
たった一瞬だけでも、隙ができる。
また、ネーヨの『拒絶』を、微力ではあるが拒絶することができる。
それは『拒絶』の面々にとって、一番面白くないことなのだ。
もともとが精神体の『拒絶』。
ネーヨはそれの代名詞である以上、その精神体を揺さぶることができれば、あるいは――
そう思い至ると、シィの能力を使って逃げるというのは、
現状でいま自分がとることのできる、もっとも合理性の高い「逃げ道」であるように思われた。
――そもそも、逃げる手段があった、という時点で、それは大きな発見だったのだ。
.
- 162 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:24:55 ID:9WBx39Jg0
-
(;*゚ー゚)「いま? いますぐ?」
逃げることが許された――シィの場合、逃げだしたい対象は
ネーヨではなくまた別の存在にあるそうなのだが――シィは、催促するかのようにまくし立ててきた。
が、内藤はすぐに快い返事をしない。
苦い顔をして、うつむいた。
それを見て、シィも同じく、一瞬明るくなった顔を、暗くさせた。
( ;^ω^)「……いま逃げたところで、だ」
( ;^ω^)「四肢を失ったハインリッヒに、
. 戦意を失ったアラマキに、
. 酸素を失ったパンドラに、
. 命を失ったゼウス」
( ;^ω^)「……とてもじゃないけど、すぐにネーヨに捕まって、
. 今度は、シィ、あんたまでひどい目に遭わされてしまうのがオチだお」
(;*゚−゚)「………。」
.
- 163 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:25:36 ID:9WBx39Jg0
-
『現実』を再認識して、シィは口をきゅっとしぼった。
やはり、見た目は成人女性のように思われても、中身はまだ子供なのだ。
( ;^ω^)「……でも」
そして、中身はまだ子供だからこそ。
この、内藤の、希望をちらつかせるような言葉に、おもしろいほど食いつくことになるのだ。
(*゚ー゚)「!」
( ;^ω^)「ネーヨがもう一度『世界』を『拒絶』して、時をリセットしたとき」
( ;^ω^)「……たぶん、あと一度くらいなら、やつらも精神体を残してくれる」
( ;^ω^)「となったら、そのときに一斉にワープするのが、最善だお」
(*゚ー゚)「じゃ、じゃあ――」
シィの目が、打って変わって輝きを見せる。
その輝きに、もう一度『現実』――どうせネーヨはすぐ追ってくる――を
突きつけることはできなかったが、代わりに苦笑だけ浮かべて、内藤はうなずいた。
.
- 164 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:26:06 ID:9WBx39Jg0
-
( ;^ω^)「だから……」
( ^ω^)「用意≠………頼むお」
(*゚ー゚)「用意…?」
( ^ω^)「僕が、戦場を見張っておく」
( ^ω^)「ネーヨが『世界』を『拒絶』した、そのとき。僕が、合図する」
( ^ω^)「そしたら……」
(*゚ー゚)「……すぐに、能力を使えってこと…かしら?」
( ^ω^)「そうだお。ただ、これには問題がある」
( ^ω^)「やつらを勝手に転送するのはいいとして」
( ^ω^)「ただでさえ、『拒絶』に呑まれて、精神体が半壊の状態なんだお」
( ^ω^)「そんななか、いきなり正体不明の現象でワープなんかさせられてみろ」
( ^ω^)「そのショックのせいで、僕たちがあいつらにトドメを刺しちゃう可能性、だって……ある」
.
- 165 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:26:39 ID:9WBx39Jg0
-
(*゚−゚)「…!」
( ^ω^)「だから、『世界』が『拒絶』されてみんなが復活したとき……」
( ^ω^)「僕が、大声であいつらに呼びかけるお」
( ^ω^)「……『逃げるぞ』、って。」
(*゚−゚)「で、でも、そんなこと言ったら、アイツが……!」
( ^ω^)「そう。だから、これは賭けだお」
(*゚−゚)「賭け?」
( ^ω^)「ネーヨが、僕たちの目論見を見破って、あんたを殺すか」
( ^ω^)「僕たちが、ネーヨの追跡を振り払って、どこか安全地帯に逃げ切るか」
( ^ω^)「……成功したって、ちょっと猶予が生まれるだけの、ハイリスクローリターンな賭け」
( ^ω^)「そんなメリットの薄い賭けが、唯一、現状を打破できる、最善の一手」
( ^ω^)「ベットは、己の命。ドロップは、許されない」
( ^ω^)「………乗るかお?」
.
- 166 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:27:12 ID:9WBx39Jg0
-
(*゚−゚)「……」
この間も、ネーヨは次にアラマキを標的にしたようで
彼に、着々と「拒絶」を植えつけていっている。
悩んでいるうちにネーヨがもう一度『世界』を『拒絶』してしまえば、
この賭けに参加する資格すら剥奪されることになる。
だが一方で、安請け合いできる賭けでもない。
つまりこの作戦は、内藤とシィの息が、完全に合っていないとまず勝てないのだ。
加えて、内藤と『革命』の誰か――ならともかく、相手はシィだ。
内藤としても、安易に乗ってはいけない賭けなのである。
一つひとつの判断が重大で、かつ難しい。
こんな局面で彼女にこのような負担をかけるのを、内藤は申し訳なく思った。
しかし、彼女は彼女で、覚悟はあったようだ。
ちいさな手をきゅっと握り、彼女は大きくうなずいた。
(*゚−゚)「………乗る」
.
- 167 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:27:48 ID:9WBx39Jg0
-
( ^ω^)「……決まりだお」
(*゚−゚)「……」
( ^ω^)「僕が『逃げるお』って言ったら、躊躇いなく、
ネーヨ以外のみんなを、どこか安全そうな場所に転送してくれお」
(*゚−゚)「………うん。」
今度はちいさくうなずく。
目の前でシィがおどおどしているからこそ、内藤は却って平静を保つことができていた。
そうと決まれば――と、内藤は、惨劇の繰り広げられている戦場に目を向ける。
( ;^ω^)「(あとは、僕ががんばれば………)」
从'',;: Д゙リ
_
( Д )
_,.
( r#゙;:,;'´ ",,li'、○>)
( ; ω )「(僕が………がんばれば……!)」
.
- 168 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:28:22 ID:9WBx39Jg0
-
◆
( ´ー`)「……」
/ ,゛3
( ´ー`)「………」
/ ,゛3
―――アラマキは、ものの五秒ほどで、気を失った。
最初は、四肢をもぐのも飽きたからと、目、耳、鼻を壊した。
ネーヨの当初の予定では、そこから彼は「無」の世界を恐れ、苦痛で喘ぎ叫ぶはずだったのだが
しかしどういうことか、アラマキはそんな予想を大きくはずれ、ただ静かに、その場に倒れたのであった。
これでは、満たされるどころか、逆にフラストレーションが溜まる。
自分の放っている「拒絶」が、まるで大したものでないと言われているかのように思える。
それが腹立たしくて、先ほどまで心地よい気分だったのが、今ではそれはすっかり消えてしまっていた。
ネーヨは、歯を食いしばる。
アラマキの気を失った顔が、まるで自分を嘲っているかのように見えるのだ。
彼の胴体を横から思いっきり蹴ったが、抵抗を『拒絶』していたため、蹴ったという感触はしなかった。
豆腐を切ったかのように、すッとアラマキの胴体が切断される。
むなしく転がる下半身を見て、ネーヨは余計にいらいらが募った。
いや、今回の場合は、どちらかというと虚無感のほうが近かった。
.
- 169 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:29:08 ID:9WBx39Jg0
-
( ´ー`)「……なんだろうな、このむなしい感じ」
ひとり、ぼそっとつぶやく。
どうして、自分は今、こうしてむなしさを感じているのだ。
己の持つ『拒絶』は、【全否定】。
言い換えれば、完全に自分の願望を押し通すことができるスキルだ。
たてつくことのできない、言わば絶対の存在。
それを有している以上、自分は最強で、だからこそ満たされることができるはずだ。
それなのに。
今、自分の胸に渦を巻いているのは、あきらかな負の感情である。
虚無感。喪失感。
敗北感。劣等感。
ひょっとすると、拒絶を押し付けることで生まれるのは、
快楽ではなくまた別の負の感情ではないのか――
ふと、ネーヨはそんなことを思った。
.
- 170 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:29:40 ID:9WBx39Jg0
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( ´ー`)「起きろよ、くそじじい」
/ ,゛3
抵抗の『拒絶』を解除して、蹴る。
アラマキの上半身は、物理的に転がった。
それを追いながら、ネーヨは続ける。
( ´ー`)「なんだ、さっきのはただの買いかぶりだったってのかァ?」
( ´ー`)「なんで、ソッコーで拒絶に呑まれるわけよ」
/ ,゛3
相手を拒絶で埋め尽くすのが目的ではあるのだが、違う。
一瞬で気を失わせて、それで満たされるわけでは、決してないのだ。
ショボンもワタナベもモララーも、言わば、その過程≠楽しんでいたわけである。
泣き喚き、狂い、叫び、祈り、絶望する。
ジェットコースターに近いその感覚が、彼ら『拒絶』を満たすのだ。
少なくとも、今しがたのアラマキは、
ネーヨの欲しているそれとはまるでかけ離れていた。
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- 171 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:30:10 ID:9WBx39Jg0
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自分の有する拒絶が、自分の拒絶するそれを生み出してしまう。
これは、ネーヨの持つ拒絶があまりにも強すぎるからこそ起こってしまう、パラドックス。
心の底から満たされようとするならば、決して避けることのできないパラドックスだ。
つまり、中途半端に快楽を得ることこそできるものの、
完全に、心の底から満たされるのは不可能だ――
そんなことに、ネーヨは今さら、気づいてしまった。
ハインリッヒを弄んでいたときも、楽しかったものの、
それは久しぶりの快楽から成るもので、決して心の底から、
まるで洗われるかのような気持ちに浸れたわけではない。
――あれ?
――俺はいままで、何をしてた?
( ´ー`)「……こんなハズじゃ、なかったんだけどなァ」
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- 172 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:30:47 ID:9WBx39Jg0
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ネーヨは、頭を掻いた。
ゼウスはうっかり殺してしまったし、その他の面々もあっという間にこのザマだ、と。
モララーたちを駆逐したのは、ただのまぐれだったのだろうか。
しかし、三連続で続くことを、まぐれとは言わない。
そう考えるとやはり、ネーヨはどこか、物足りなく思った。
( ´ー`)「『革命』以上のエサなんざ、探すのすら面倒だしなァ」
( ´ー`)「もう『拒絶』はアレ以外全滅」
( ´ー`)「……結局、こいつらをいたぶれるだけいたぶらねえと、元がとれねェ」
( ´ー`)「面倒なことになったぜ……ったくよォ」
取らぬ狸の皮算用。
百聞は一見に如かず。
案ずるよりも産むが易し。
この現状をもっとも端的に表現するいい言葉が、浮かばない。
そんな混沌とした心情が、先ほどからある負の感情とともに浮かんできた。
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- 173 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:31:23 ID:9WBx39Jg0
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( ´ー`)「つまんねえ」
( ´ー`)「つまんねえ」
( ´ー`)「つまんねえ」
( ´ー`)「俺は、今すぐ、この星をぶち壊すことだってできんだぜ」
( ´ー`)「なんで、こんな『世界』に俺はひれ伏さなければなんねえんだ」
( ´ー`)「満たせよ。さっき、俺はおめえの上に立ったハズだぜ」
( ´ー`)「満たせよ」
( ´ー`)「さあ」
ネーヨは、右腕を大きく上に掲げ、それを目で追っては、言った。
( ´ー`)「オールアンチだ。」
( ´ー`)「もう一度、このエサどもを蘇らせろ……『世界』。」
.
- 174 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:31:56 ID:9WBx39Jg0
-
―――稲妻が、走った。
(;*゚−゚)「――っ!」
( ;゚ω゚)「あんたら、起きろ!」
( ´ー`)「ッ!?」
『世界』が変わる――戻る。
ネーヨの言いなりになって、元に戻る。
その瞬間、聞き覚えのある声が、空間を支配した。
右手を挙げたその所作をとたんに取り払い、ネーヨは声のしたほう、背後に振り返った。
そこには、内藤とシィが、いつの間にか現れていた。
――どうやって、ここまできた。
アラマキたち、『革命』の面々は、もう元の状態に戻っている。
ゼウスは生き返っているし、ほかの三人は健康体に回復している。
そんな状態になった彼らは、ぽかんとした状態で、内藤――と、シィを見ていた。
.
- 175 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:32:38 ID:9WBx39Jg0
-
( ´ー`)「……なにが―――」
さすがのネーヨもこのことには思考が追いつかない。
どうしたんだ、そう思った次の瞬間、ネーヨの顔は豹変った。
( ;゚ω゚)「逃げるお!!」
( ´ー`)「―――…なに?」
眉間に少ししわができた
なにをしようとしているかはわからないが、
とにかくそれはネーヨにとっては面白くないことだった。
――逃げる、だと?
へたに面白くないことをされると、余計に負の感情が積みあがるので、阻止しなければならない。
ネーヨは現状を把握するよりも優先して、二人の動きを止めにかかった。
いや、かかろうと、した。
. ラスト・ガーデン
(;* − )「【最期の楽園】ッ――!」
.
- 176 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:35:38 ID:9WBx39Jg0
-
( ´ー`)「―――ッ!」
ネーヨはその瞬間、目を疑った。
消えた≠フだ。
先ほどまで、目の前にいた連中が、皆。自分だけを残して。
さすがに理解が追いつかない。
突如としてその場に現れた内藤とシィ。
手段などあるはずもないのに、逃げることを宣言した内藤。
そして、次の瞬間に消えたという、この事実。
しかし、先ほどの内藤の「逃げる」という言葉と現状とを
照らし合わせて見れば、存外早く、その答えは見つかった。
このときばかりは、ネーヨは自分のこの沈着な人格をありがたく思った。
眉間にしわを寄せ、黒い影をはやし、
口角を吊り上げ、食いしばった歯を見せ、不敵に笑う。
( ー )「……! 瞬間移動≠ゥ!」
.
- 177 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:36:08 ID:9WBx39Jg0
-
ネーヨは、拳を構えた。
――面白くなってきやがった。
そう思いながら、彼は『拒絶』した。
自分も瞬間移動することで、出会いがしらに誰かを殴り殺そうと思ったのだ。
そしてネーヨは、彼らの逃げた先――に、瞬間移動した。
.
- 178 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:36:39 ID:9WBx39Jg0
-
◆
( ;^ω^)「うまく行っ――」
そして、ネーヨが瞬間移動したのは、
内藤たちがシィの能力でその場を逃げ出してから、ほんの一秒後の出来事だった。
『革命』の面々が「わけがわからない」と言いたげな顔をしているなか
現状を知っている内藤は、安堵の息をつこうとしていた。
ひゅー、と、情けない息を吐き出そうとする。
次の瞬間、ネーヨが、目の前――ちょうど、ハインリッヒのまん前――に現れた。
.
- 179 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:37:14 ID:9WBx39Jg0
-
( ー )「――ッ。」
( ;^ω^)
やはり、所詮はただの足掻きだったか――
そう思うのも束の間、彼は現れたと同時に、拳を振りぬいた。
( ;゚ω゚)「―――、――ッ!!」
( ー )「オラアアッ!!」
.
- 180 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:37:48 ID:9WBx39Jg0
-
―――そして、その右拳は、からぶった。
それも当然だろう。
彼らは、転んでいた≠フだ。
シィの能力が、未完成だったからがゆえに―――
.
- 181 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:38:25 ID:9WBx39Jg0
-
( ー )「―――なに?」
( ;゚ω゚)「――今だ!!」
从;゚∀从「 『優先』 ッ!」
確かに、やつらのいた場所に瞬間移動したはず。
しかし、どうして俺は、からぶってしまったのだ。
――そんなことが頭に浮かんだがゆえに生まれた、一瞬の隙。
それを衝くべく最初に動いたのは、ハインリッヒだった。
転がっている状態から、持ち味の脚で、ネーヨのわき腹を狙う。
半ば、クセのようなものだった。
【正義の執行】による『優先』は、現在は使えないのに。
あのネーヨが隙を見せた、というのを知った瞬間、無我夢中で、ハインリッヒは『英雄の優先』を発動した。
が、ネーヨに一瞬隙が生まれたからといって、彼はそれをやすやすと受けるほど、甘い男ではない。
彼女の正義の鉄拳が自分に触れる前に、彼も半ばクセのように『拒絶』を発動した。
( ー )「知るかァァッ!!」
そして、
.
- 182 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:38:57 ID:9WBx39Jg0
-
―――ネーヨの胴体は、真っ二つに切断された。
.
- 183 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:39:30 ID:9WBx39Jg0
-
从;゚∀从
( ;゚ω゚)
( ー )
( ´ー`)「――――え――
.
- 184 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:40:02 ID:9WBx39Jg0
-
( ;゚ω゚)「にッ逃げるぞ!!」
(;*゚ー゚)「ら、ラスト・ガーデンッ!」
从;゚∀从「ちょ―――」
( ; ー )「な――に―――……?」
ネーヨの上半身は、切断部から大量の血を流しつつ、物理法則に従って、地面に落ちた。
その頃には既に、彼らは再びワープ――元いた場所に、逃げていた。
ネーヨの意識は、朦朧としてきた。
.
- 185 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:40:32 ID:9WBx39Jg0
-
◆
場所は戻って、ゼウスの屋敷の前方に広がる広場。
やはり転んだ彼らは、起き上がりながら、
今の一瞬にいったい何が起こったのかを、確かめることにした。
どうやってネーヨから逃げるか、とか
どうやってネーヨを倒そうか、とか
このときの彼らには、そのような考えはまったくなかった。
从;゚∀从「―――待て! ちょ、なにが――」
/;,' 3「なんじゃ、なにがあったんじゃ!」
( ;゚ω゚)「言う! 言うから、ちょーっとダマってろ!」
このときばかりは、混乱してもしかたのない現状だった。
つい先ほどまでは、拒絶に呑まれて気絶していた。
そんななか、気づけば自分は立っていて、気づけば瞬間移動させられて、
気がつけばネーヨがやってきて、気がつけばネーヨは胴体を切断されたのだ。
第一声に「なにがあった」以外を出すほうが、難しかった。
.
- 186 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:41:04 ID:9WBx39Jg0
-
( ;^ω^)「……まず、あんたらはみんな、拒絶に呑まれた」
( ;^ω^)「それを面白く思わなかったネーヨは、また、『世界』を『拒絶』した」
( ;^ω^)「それを見計らって、シィが能力を発動して――さっきの場所に瞬間移動したんだお」
( ;^ω^)「……で、案の定ネーヨが瞬間移動で後を追ってきたわけだけど……」
そこまで言って、内藤はハインリッヒのほうを見た。
彼女も、その視線がなにを意味するのか、わかっているようだ。
言うまでもないだろう。
あの、ネーヨ=プロメテウスが。
【全否定】ゆえに、なんの負荷も受け付けないはずのネーヨが。
明らかに、大ダメージを負ったのだから。
それも、ハインリッヒの蹴りで。
.
- 187 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:41:45 ID:9WBx39Jg0
-
( ;^ω^)「ハインリッヒ! あんた、いったいどーやって攻撃したんだお!?」
从;゚∀从「ど、どうやって、って……」
幸い、まだ根底に潜んである精神体は壊れていなかったようだ。
リセットされることで、呑まれていた拒絶から解放されたハインリッヒは、言葉を濁した。
今回の、ネーヨが攻撃を『拒絶』したにも関わらず『拒絶』できなかった、
その事実のからくりが、内藤は、どうしても知りたかったのだ。
本来ならば、あり得ないことなのである。
誰も、ネーヨの【全否定】には抗えない。
それなのに、ハインリッヒの今しがたの蹴りは――抗ってみせた。
内藤は、ハインリッヒはこの瞬間を狙って、その攻撃をしたのか――
などと深読みをしていたが、実際は、当然ながらそういうわけでもなかった。
ハインリッヒも自分で何が起こったのかがわからず、首を傾げていたのだ。
.
- 188 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:42:21 ID:9WBx39Jg0
-
( ;^ω^)「【全否定】を拒絶する、なにかの手がかりになるかもしれないんだお!
. なにか、ヒントが――」
从;゚∀从「し、知るか! 私だって、わかんねーよ!」
( ;^ω^)「んな無責任な!」
从;゚∀从「だってよ、間違えて『優先』発動しちまったってのに、効いた――」
从 ゚∀从「―――……あれ?」
/;,' 3「――ッ! わかった、わかったぞブーン君!」
( ;^ω^)「え、あ、え?」
ハインリッヒは、そう言葉を並べていると、「なにか」に引っかかった。
なんだ、と思うと、今度はアラマキが、言葉を荒げた。
.
- 189 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:42:57 ID:9WBx39Jg0
-
/;,' 3「よう思い出してみい! こやつの『優先』は、今は『劣後』になっとる!」
/;,' 3「あやつは、いわば蹴りにかかっておった『劣後』を『拒絶』したんじゃ!」
/;,' 3「マイナスとマイナスとがかち合えば、そりゃープラスになるわい!!」
.
- 190 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:43:36 ID:9WBx39Jg0
-
( ;^ω^)「え……『劣後』?」
その瞬間。
内藤の脳裏を、ある声がよぎった。
クルワセ
『てめえらが知ってる「因果」を、全部「 異常 」てやる』
( ^ω^)「――――、」
( ;゚ω゚)「ああああああああああああああああああああああああああッ!!!」
.
- 191 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:44:13 ID:9WBx39Jg0
-
_
( ;゚∀゚)「なんなんだ、さっきから!」
( ;゚ω゚)「――やりやがった!」
_
( ;゚∀゚)「……?」
―――全てを理解した内藤は
まるで「あの少女」の代弁でもするかのように
広場全体に反響するような大きな声で、言い放った。
.
- 192 名前:同志名無しさん 投稿日:2013/04/07(日) 11:44:46 ID:9WBx39Jg0
-
イレギュラー・バウンド
( ;゚ω゚)「【 手 の ひ ら 還 し 】ッ!!」
从 ー 从
クルワセ
( ;゚ω゚)「あいつ……【全否定】まで『 異常 』せやがったッ!!!」
.
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