( ^ω^)は自らのパラレルワールドに迷いこんだようです

475 名前: ◆qQn9znm1mg:2012/09/10(月) 10:58:14 ID:5SV6lZG6O
 
 
○登場人物と能力の説明
 
( ^ω^)
→この世界の『作者』。
 
/ ,' 3 【則を拒む者《ジェネラル・キャンセラー》】
→あらゆる力及び力の法則を『解除』する《特殊能力》。
 
从 ゚∀从 【正義の執行《ヒーローズ・ワールド》】
→『英雄』が負けない『世界』を創りだす《特殊能力》。
 
( <●><●>) 【連鎖する爆撃《チェーン・デストラクション》】
→相手の手負いを『連鎖』させる《特殊能力》。
 
( ・∀・) 【常識破り《フェイク・シェイク》】
→自然のうちに『嘘』を混ぜる《拒絶能力》。
 
从'ー'从 【???】
→ゼウスを完封した『拒絶』の少女。
 
 
.

476 名前: ◆qQn9znm1mg:2012/09/10(月) 10:58:54 ID:5SV6lZG6O
 
 
○前回までのアクション
 
(´・ω・`)
→敗北
 
( ^ω^)
从 ゚∀从
从'ー'从
→対峙
 
( <●><●>)
→生死不明
 
/ ,' 3
→療養完了
 
 
.

477 名前: ◆qQn9znm1mg:2012/09/10(月) 10:59:52 ID:5SV6lZG6O
 
 
 
  第九話「vs【手のひら還し】T」
 
 
 
 ゼウスは、ワタナベと向かい合っていた。
 決して友好的なそれではなく、しかし明確な敵意が感じ取れる訳でもない。
 ひとつはっきりと言えることは、このワタナベという少女から、
 なにもかもを寄せ付けないオーラ――拒絶――が感じ取れることだ。
 
 
( <●><●>)「……」
 
从'ー'从「……」
 
 先ほど負傷させられた左の手刀を、右手でさする。
 いや、負傷させられたわけではない。
 勝手に負傷した≠フだ。
 
 じゃり、と地面を靴で擦った。
 だが、動こうにもゼウスは動けなかった。
 ただ冷や汗のみが動くことを許されていた。
 
 裏通りの煉瓦敷きが、ひどく脆いものであるかのように思える。
 硬いものが柔らかくなって、柔らかいものが硬くなっているような空間だ。
 三度目の唾を飲み下し、ゼウスは改めて状況の把握に努めた。
 
 確定事項は三つだけだった。
 ひとつが、ワタナベは明らかな『拒絶』であること。
 また、その《拒絶能力》が、少なくともゼウスの力では太刀打ちできない程度に強力であること。
 最後に、自分はここで倒れること。
 
 
 
.

479 名前: ◆qQn9znm1mg:2012/09/10(月) 11:04:20 ID:5SV6lZG6O
 
 
 どちらかというと、不確定要素の方が多かった。
 まず、その大部分を占めているのが彼女の有する《拒絶能力》の全貌である。
 
 内藤からは【ご都合主義《エソラゴト》】の存在しか知らされておらず、
 もし自分がそれによってありもしない会議に招かれたのだとすると、
 彼女は【ご都合主義】でない可能性の方が高い。
 
 『拒絶』が狩るべきである獲物――『能力者』――が三人もいる以上、
 もし【ご都合主義】が狩ろうとしているのが自分だけだとしても
 ――それはそれで不審なのだが――自分だけをわざわざ呼び出す必要などないからだ。
 
 ということは、相手は【ご都合主義】でない以上
 目の前の少女が使う《拒絶能力》に対して、自分は全くの無知ということだ。
 
 これはとてつもないハンデだが、
 少なくともなにも知らないというわけではなかった。
 
 数度打ち合った感触で言えば、ゼウスは僅かだが
 ある程度までは彼女の《拒絶能力》を解析できていた。
 
 
( <●><●>)「(まず……こちらの攻撃が向こうまで届かない=j」
 
( <●><●>)「(全てが……反射される)」
 
 
 それは一度目の打ち合いでわかったことだ。
 ゼウスが一瞬で気配を消して真下からワタナベの
 喉元に手刀を突きつけたのだが、その指が喉元に
 つこうとした瞬間、その手刀は逆方向に向かっていった。
 
 いや、巻き戻された=B
 
 だが、時が巻き戻ったわけではない。
 自身の行動そのものが巻き戻されたように思えた。
 
 ワタナベに蹴りかかっても、その脚が
 ワタナベの肌につこうとした時点で弾かれた。
 殴っても蹴っても飛びかかっても、無意味だった。
 
 
.

480 名前: ◆qQn9znm1mg:2012/09/10(月) 11:06:19 ID:5SV6lZG6O
 
 
( <●><●>)「(言うなれば……『反転』)」
 
( <●><●>)「(なにもかもが『反転』させられてしまう)」
 
 それは、初めてゼウスが心の中で言葉をつぶやいた時だった。
 『聞こえないはずの心の声』が『反転』させられ『聞こえる声』になってしまった。
 これは『巻き戻す』『反射』よりかは『反転』の方が相応しく、
 また、ワタナベ自身も自分のこの《拒絶能力》を『反転』と言っている。
 
 反転とは、表を裏に、裏を表にするものだ。
 そう考えると、心の声を読まれたのにも
 攻撃したはずが巻き戻されたのにも合点が行く。
 
 原理は考える必要がない。
 『拒絶』にそんな『因果』と云ったものは通じないのだ。
 
 
( <●><●>)「(どんな行動も、手のひらを返されてしまう)」
 
( <●><●>)「(これが彼女の能力なら、撤退するしか道はないものなのか)」
 
 
从'ー'从「還さねえよ」
 
( <●><●>)「!」
 
 ゼウスが撤退を考えた時、ワタナベは言った。
 ワタナベは心の声でさえ聞こえるのだ。
 今までのゼウスの声は、全部ワタナベに届いていたのだろう。
 
 だが、そうだとしてもゼウスのとるべき行動に変わりはない。
 勝ち目がないのにその者に勝負を挑むのは、根性でも何でもない。
 向こう見ずだ、無鉄砲だ、綺麗事だ、愚の骨頂だ。
 
 誰になんと言われようが、撤退以外の選択肢はあり得ない。
 ゼウスは無心のままで逃げ道を探した。
 
 
.

481 名前: ◆qQn9znm1mg:2012/09/10(月) 11:07:48 ID:5SV6lZG6O
 
 
 煉瓦敷きの裏通りには様々な裏道が存在するのだが、
 不幸なことに、今二人が面しているところは
 進むか戻るかしかない一本道のど真ん中だった。
 
 裏道を使おうものなら、進もうが戻ろうが
 最低でも三百メートルは走らなければならない。
 それも、ワタナベを撒いて。
 
 それができるのだろうか、ゼウスにはわからなかった。
 身体能力は誰にも負けないゼウスだが、それが
 『拒絶』にも通じるのか、不安で仕方がなかった。
 
 数度拳を交えた感触で言えば、
 彼女の能力の適応範囲は自身のみのように思えた。
 打撃を跳ね返し、概念をひっくり返し、態度を手のひら返す。
 
 どれも、ゼウスに直接干渉するものではない。
 できるならば、ゼウスの眼球の向きでも『反転』させればそれでいいのだ。
 
 ならば、逃亡はできるのか。
 そうとは言えそうになかった。
 
 ゼウスの屋敷に戻るのには、ワタナベがいる方角へ進まなければならない。
 迷宮のように入り組んだ裏道を使っていけば、
 やがてワタナベを撒いて屋敷に着くことができるだろう。
 
 しかし、そうするとワタナベも屋敷に向かうのではないか。
 屋敷の前で彼女と出会してしまったら、
 何のために撒いたのかがわからなくなってしまう。
 
 
 
 真の意味での逃亡は、できなかった。
 だから、やはり強行突破しか道はなかった。
 
 
.

482 名前: ◆qQn9znm1mg:2012/09/10(月) 11:09:12 ID:5SV6lZG6O
 
 
( <●><●>)「そこを退いてもらいたいものだな」
 
从'ー'从「ここ―――」
 
 ワタナベが返事をしようとした瞬間、
 ゼウスは姿を消して背後に回っていた。
 
 ゼウスだからこそ使える加速方法だった。
 脊髄反射を能動的に使ってコンマ一秒で膝の力を抜く。
 この時、右足の指で地面を掴み、左の膝を曲がりきらしている。
 
 上半身を前に落とし、右膝を伸ばして前に飛び出す。
 躯を低くして、次に膝を曲げていた左足を地につけ、
 蹴り払うように前に出した右足で地を捉え、加速完了。
 
 滑り込むようにワタナベの背後に回り、
 右足を軸に左足でワタナベの襟首を狙った。
 加速から攻撃まで、一秒も経っていない。
 
 加え、完全な不意打ちなのだ。
 この方法なら一矢報いることができるだろうと思っていた。
 
 
 だが、ワタナベは笑った。
 同じ姿勢、同じ表情、同じ声色のまま続けた。
 
 
从'ー'从「――ろの声が聞こえてるってのに、不意討ちが決まるはずねーじゃん。
      よっぽどばかなんだね〜まじウケるんですけどぉ〜」
 
 蹴り出した左足はやはり巻き戻されるように跳ね返された。
 その左足を勢いに従わせつつ踵から地につける。
 同時に勢いを右足に乗せて、素早い蹴りを見舞った。
 
 だが結果は同じだった。
 
 
.

483 名前: ◆qQn9znm1mg:2012/09/10(月) 11:11:12 ID:5SV6lZG6O
 
 
 
 ――否、同じではなかった。
 「攻撃を見舞えなかった」点では一緒だが、厳密に言えば違った。
 
 攻撃を巻き戻された時はそうでもなかったのに、
 今回の蹴りでは、明らかに足にダメージが押し返されている。
 ワタナベに足が触れたと同時に、逆に向こうから
 蹴ってきたようなダメージがゼウスを襲ったのだ。
 
 
( <●><●>)「――!」
 
从'ー'从「あれれ〜? まーさーかー、
      巻き戻すだけが私の脳だと思った?
      ショボい、ショボいよきみ〜」
 
( <●><●>)「(アラマキのくだんのカウンター技に似ている
         ――というより、同一ではないか)」
 
从'ー'从「アラマキ? 誰やねーん!」
 
( <●><●>)「(……よけいな考察は、あとだ)」
 
从'ー'从「それは賢明だナ。いま考察したら情報が全――」
 
 
 その瞬間、ゼウスは動いた。
 目の前にいる敵が無防備なのに、手を出さない方が難しかった。
 
 とはいうが、彼女の場合、謎の《拒絶能力》の存在が彼の攻撃を
 躊躇わせていたのだが、そんななかでもゼウスには考えがあった。
 
 無意識下での不意打ちなら=B
 無意識になるためには、少なからず他のことを考える必要がある。
 だから、ゼウスは敢えてアラマキのことを考えた。
 
 【則を拒む者《ジェネラル・キャンセラー》】の存在がふと気にかかったのは事実だ。
 だからこそ、自然なかたちで無意識をつくることができた。
 
 
.

484 名前: ◆qQn9znm1mg:2012/09/10(月) 11:12:09 ID:5SV6lZG6O
 
 
 
 そして。
 
从'ー'从「ブッ」
 
 
 ワタナベの左脇腹から、血が流れた。
 成功だ。
 ゼウスの得意の不意打ちが、漸く功を成したのだった。
 
 ゼウスは跳ね返されないうちに距離をとって、
 能力が適用されないように配慮をした。
 『反転』は少なくとも両者の関係が密接になっていなければ行えないもの。
 ゼウスの肢体がワタナベに触れていないならば大丈夫、そう思ったのだ。
 
 
( <●><●>)「(成功か)」
 
从'ー'从「失敗だよ」
 
( <●><●>)「な――」
 
 
 
( <○><◎>)「っ!」
 
 
 瞬間、ゼウスは自分の左脇腹に異変を感じた。
 感じてはいけない異変だった。
 
 
.

485 名前: ◆qQn9znm1mg:2012/09/10(月) 11:13:29 ID:5SV6lZG6O
 
 
 咄嗟に左手でそこ≠ノ触れた。
 ぬちゃ、と手が濡れる音と感触がした。
 見るまでもなく、なにがどうなっているのか明白だった。
 
 ワタナベに傷を負わせたはずが
 傷を与えた側の自身の方が傷を負っていた=B
 
 言うまでもなく、刃物で相手を斬った場合、
 出血をするのは斬られた相手側であって、
 斬った側に害が及ぶことはあり得てはならない。
 
 しかし、それがあり得てしまった。
 攻撃した側のゼウスが傷を負っていたのだ。
 
 さすがのゼウスも、これには動揺を隠せなかった。
 ワタナベは、それで動揺するゼウスを見て笑っていた。
 嘲りの混じった、『拒絶』特有の嫌な笑いを見せていた。
 
 
( <●><●>)「……な、なにをした」
 
从'ー'从「なにって〜」
 
 
 
从'ー'从「『被害者と加害者の関係』を『反転』しただけだよ〜」
 
 
 
.

486 名前: ◆qQn9znm1mg:2012/09/10(月) 11:15:46 ID:5SV6lZG6O
 
 
 それを聞いて、ゼウスは目眩がしそうになった。
 どんな《拒絶能力》かはまだ解明できていないが、あまりにむちゃくちゃだ。
 『関係』という目には見えないものまで『反転』させるなど、
 『反転』の概念を拡大解釈しすぎではないか、とさえ思った。
 
 『被害者と加害者の関係』、それはワタナベとゼウス、
 つまり傷を負った側と与えた側の関係だ。
 それを『反転』させると
 
 
从'ー'从「傷を受けたのがきみになって
      傷を与えたのがボクになったのさ〜」
 
( <●><●>)「…………!」
 
 それを聞いて、ゼウスは理解した。
 
 巻き戻すや跳ね返すなどの予防的『反転』だけでなく、
 事実として既に完了してしまった事象でさえ、『反転』させる。
 
 つまり、一撃で仕留めない限り、全ての負傷は全部自身に帰ってくる。
 ――否、還ってくる≠ニ。
 
 全てが還されるこの《拒絶能力》を相手に、
 ゼウスは一人で立ち向かわなければならなかった。
 
 
 
 結果はわかりきっていた。
 
 そもそも、ワタナベとしても一撃で仕留められそう≠ネ
 攻撃にはそのまま跳ね返す<Jウンター技を使えばいいし、
 因果律からの改竄≠フようなカウンター不可の技には
 巻き戻す%チ定区間での時間軸操作を行えばいい。
 
 全てに対して『反転』を用いれるワタナベを相手に、
 ゼウスが勝てるはずもなかったのだ。
 
 
 
 
.

487 名前: ◆qQn9znm1mg:2012/09/10(月) 11:17:26 ID:5SV6lZG6O
 
 
 

 
 
 
 ワタナベに担がれているのが、彼女に完膚なきまでに
 打ちのめされたゼウスだとわかり、内藤とハインリッヒは震え上がった。
 
 『作者』の内藤は、ゼウスの抜きん出た戦闘能力の異常性を知っているし、
 ハインリッヒは一度戦った者として、彼の強さを身を以て知っている。
 だからこそ、尚更「ゼウスが敗れた」という事実を呑み込めなかった。
 
 
从'ー'从「こいつもなかなかヤる『能力者』って
      聞いてたんだけど、呆気なかったよ。
      こんなんじゃ満たされねえっての」
 
 悪態を吐くようにそう吐き捨てた。
 そして、その言葉から、ゼウスは彼女に一矢報いる
 ことすらできなかったのだろう、とわかった。
 
 闇討ち、不意打ちのような先制攻撃が得意なゼウスが
 ワタナベに攻撃できなかったとなると、
 そもそも攻撃させてくれない《拒絶能力》である可能性が高い。
 
 内藤は自然のうちにそう推理して、
 その有する《拒絶能力》が何か、必死に思い出そうとした。
 
 せめて《拒絶能力》の内容がわかれば、
 『作者』として対策のしようが浮かびそうなものだからだ。
 
 また、ゼウスでさえ打ちのめしてしまうような強力無比な
 『拒絶』を生み出したことによる罪悪感も、それに拍車をかけていた。
 「自分のせいで――」と思うと、居た堪れない気持ちになった。
 
 
.

488 名前: ◆qQn9znm1mg:2012/09/10(月) 11:19:53 ID:5SV6lZG6O
 
 
从'ー'从「――でも。
      ショボン君を倒したきみたちなら、
      このボクを満足させてくれるかもね」
 
从;゚∀从「……ハン!
      てめえは【ご都合主義】に勝てたってのか?」
 
 
(;^ω^)「(この定見を保ってない語調……
      確かに覚えがあるんだけど……)」
 
 ハインリッヒとワタナベが睨み合い威嚇し合うなかで、
 内藤は必死にワタナベの存在を思い出そうとしていた。
 
 「これ」といった決まりがない、付和雷同とも言えるいい加減な人格。
 しかし、攻撃を受け付けることはない#\力を有する。
 
 情報は多いように見えるのだが、それでも内藤はまだ足りなかった。
 もう少し、なにか手がかりがあれば、彼女が何者かを当てる自信はあった。
 自信がなくても、当ててみせるつもりだった。
 
 
从'ー'从「【ご都合主義】ねぇ。確かにあれはうざいよね〜。
      言っちゃえば『現実』が変わるんだから、さ」
 
 ワタナベはおどけた様子で答えた。
 本当にそうと思っているようには見えない答え方だったので、
 ハインリッヒは少しばかり嫌な予感がした。
 
 同じ『拒絶』なら【ご都合主義】の存在も知っているはずだ。
 そして、知っている以上は当然それの恐ろしさも知っているはずである。
 それなのに、全く恐れを抱いていないように見えるその姿は、
 ハインリッヒにある種の『異常』を感じさせるのに充分だった。
 
 
.

489 名前: ◆qQn9znm1mg:2012/09/10(月) 11:21:16 ID:5SV6lZG6O
 
 
从 ゚∀从「……まるで、【ご都合主義】が大したことねぇ、みたいな言いぐさだな」
 
从'ー'从「だってそうだもん」
 
从 ゚∀从「!」
 
 ハインリッヒは驚愕を隠せなかった。
 ある程度は予想はついていたものの、本当にそう思っていたということは、
 彼女は【ご都合主義】を凌駕する《拒絶能力》を有していることになる。
 
 出会い頭で『相手が死んでいた』ような
 『現実』を創り出せば、誰も適わないはずなのに。
 ハインリッヒが、なぜワタナベがそんなことを言えるのか
 を考えていると、そのワタナベはにやっと笑った。
 
 
从'ー'从「ショボン君のは『絵空事』を『現実』にする能力だけどさ〜。
      ボクにはそんな『絵空事』は通じないんだよ」
 
从;゚∀从「………!?」
 
 ハインリッヒは今度は数歩後退した。
 信じられない言葉ではあったが、
 とても彼女が嘘を吐いているようには見えなかった。
 
 本当に、自身の《拒絶能力》を使えば
 【ご都合主義】には勝てる、と言いたげな顔をしていた。
 
 
从'ー'从「だって、ボクに『現実』が降りかかっても、
      全部『絵空事』に戻しちゃうんだもん」
 
 
(;^ω^)「(戻す……?)」
 
.

490 名前: ◆qQn9znm1mg:2012/09/10(月) 11:22:33 ID:5SV6lZG6O
 
 
从'ー'从「それよりも、きみがどーやってショボン君に勝てたか、のほうが知りたいよ。
      『拒絶』以外の人間にゃあ、そう簡単には負けないはずなのに」
 
从 ゚∀从「……」
 
 ワタナベは同じような抑揚のままで、ハインリッヒに問いかけた。
 が、彼女は口を開こうとはしなかった。
 
 なぜ、敵方に易々と情報を譲らなければならないのか。
 まして、ワタナベ自身の能力がまだ明らかでないのだ。
 ハインリッヒはそう思い、口を閉ざしていた。
 
 だが、言われると、当時の情景が思い浮かぶ。
 ほんの一瞬前の出来事なのだ、忘れている方がおかしい。
 脳裏をかけてゆく映像が、まるで数年も前の出来事のように蘇っていった。
 
 そして、【正義の執行《ヒーローズ・ワールド》】で
 ワタナベにも勝てるのではないか、とハインリッヒは思った。
 
 思った直後、ワタナベは声をあげた。
 まるで相手をばかにするような気の抜けた声で、
 その後にちいさな拍手をハインリッヒに送った。
 
 ハインリッヒはワタナベになにがあったのかわからなかった。
 急に拍手をし出して、ついに狂ったのか、とさえ思った。
 
 だが、彼女の身になにが起こったのか、
 直後にハインリッヒは知ることになる。
 
 
.

491 名前: ◆qQn9znm1mg:2012/09/10(月) 11:24:09 ID:5SV6lZG6O
 
 
从'ー'从「へぇ、【正義の執行】か。かぁっくいい〜」
 
从;゚∀从「ッ!?」
 
( ^ω^)「!」
 
 
 決してワタナベを前に口にはしていないはずの
 【正義の執行】という名を、なぜか彼女は言い当てたのだ。
 そのことに、ハインリッヒはおろか内藤でさえ驚いた。
 
 一方のワタナベは、その二人の反応が
 嘗てのゼウスと同じ反応だったためか、少し優越感に
 浸ってワタナベは「やれやれ」と言い、その仕草をした。
 
 
从'ー'从「心の中でしゃべれば聞こえないと思った?
      心の中で情景を浮かべれば見えないと思った?」
 
 彼女は右手を自身額に当て、少し俯いた。
 
 
从'ー'从「ヨワい、頭がヨワいよきみ〜。
      もっと警戒しなくっちゃ。
      ボクを前に『常識』や『道理』なんて言葉、
      まるで意味を成さないんだぜ」
 
(;^ω^)「(っ!
      心を読み∞攻撃を受け付けず
      常識や道理が効かない≠竄ツ……!)」
 
 ワタナベの言葉を聞いて、内藤には心当たりが浮かんだ。
 といっても、それは実体を形成しておらず、まだ霞がかった景色だった。
 確信こそしているのだが、あとひとつ、明確な根拠がほしかった。
 
 だから、内藤はひとつ、行動に出た。
 一歩前に出て、内藤はハインリッヒに声をかけた。
 
 
.

492 名前: ◆qQn9znm1mg:2012/09/10(月) 11:25:18 ID:5SV6lZG6O
 
 
(;^ω^)「ハインリッヒ!」
 
从;゚∀从「……んだよ!」
 
 苛立っているハインリッヒは、そう乱暴に答えた。
 ワタナベの登場――否、その立ち振る舞いに
 苛立っているのはなにも内藤だけではないのだ。
 
 ハインリッヒも、原理のわからない読心術に
 わけもわからず苛立っていた。
 
 
(;^ω^)「一度、ワタナベに石を投げてくれお!」
 
从 ゚∀从「……石ィ?」
 
 
从'ー'从「………」
 
 突然の要求に、ハインリッヒは首を傾げた。
 なにかするのかと思えば、投石である。
 ハインリッヒが当惑するのも、無理のない話だった。
 
 要旨は汲み取れなかったが、内藤がこの状況で
 ハインリッヒが不利になるような展開を
 生みかねない何かをさせるはずはないと思った。
 
 そのため、近くに転がっていた小石を一つ手にとって
 手首のスナップを利かせて、ワタナベの方へ思い切り放り投げた。
 
 
 アラマキが石を手ではたいた時のような凄まじいスピードが、
 ワタナベの心臓に向かって弾丸のように飛び出していった。
 内藤は、このあとのワタナベの動きで、彼女が
 如何なる能力を持つのかがわかるだろう、と思っていた。
 
 それを知ってか知らずか、ワタナベは含み笑いをやめて
 飛んできた石に手をかざすこともなく、呟くのだった。
 
 
.

493 名前: ◆qQn9znm1mg:2012/09/10(月) 11:30:30 ID:5SV6lZG6O
 
从'ー'从「―――な〜んかさぁ」
 
从;゚∀从「うおッ!」
 
 ワタナベに迫っていた小石は、ワタナベの胸部に当たっては、
 心臓を貫くことなく、まるでボールが壁で跳ね返ったかのように
 投擲したハインリッヒの方へ戻ってきた。
 
 ハインリッヒは間一髪でかわした。
 『咄嗟に動けない状況』から『英雄』は『優先』されたのだ。
 
 だが、ワタナベはそれらのことに一切興をさかさず、
 ただ内藤だけを睨みつけて、言った。
 
从'ー'从「相手が誰かを見抜くために試す≠チての、すげェ嫌いなんだよ。
      なに知的な第三者ぶってんの?」
 
(;^ω^)「……」
 
从'ー'从「きみのココロを覗かせてもらったけど、
      もう目星ついてんなら言いなよ、言い当てちゃいなよ」
 
从'ー'从「わかってんだろ? ボクが何者か、ボクがなにをしでかすのか」
 
(;^ω^)「………」
 
 ワタナベが『物理的には見えないはずの脳裏に
 浮かぶ情景』を『見える』ようにして見たその情景では、
 内藤は紙を前にひたすら頭を抱えている姿が見えた。
 
 紙には文字が並んでいた。
 【ご都合主義】などと言った言葉と、
 それの説明書きのようなものが見えた。
 
 それらはフラッシュバックであるため、
 ワタナベでも一瞬しか覗くことはできなかったが、
 そのとき彼女は確かに自分の名とそれ≠見つけた。
 
从'ー'从「ご丁寧にルビまで振ってさぁ」
 
(;^ω^)「………」
 
从'ー'从「………」
 
 内藤は黙っていた。
 そして、「やはり」と思った。
 確信から確定へと変貌を遂げた時だった。
 
.

494 名前: ◆qQn9znm1mg:2012/09/10(月) 11:31:37 ID:5SV6lZG6O
 
 
 いまの小石の流れで、もし小石が
 『硬度を失ったかのように崩れたり』
 『小石の存在が嘘のように壊れたり』
 『運悪くコントロールを誤ってどこかに飛んでいったり』
 『小石が跡形もなく消えてしまうか勢いを殺されたり』
 などの何らかの『拒絶』を起こしていれば、内藤は推理を変えていただろう。
 
 だが、読み通り『小石は弾かれたかのように跳ね返っていった』。
 それを見て、彼女が『拒絶』するものがわかったのだ。
 
 
(;^ω^)「……」
 
(;^ω^)「いいお。言い当ててやるお」
 
(;^ω^)「ワタナベ……。僕ははっきりと、思い出した」
 
(;^ω^)「あんたが『拒絶』するのは――」
 
 
 
 
 
从'ー'从「『因果』」
 
 
 
 
 
从 ゚∀从「!」
 
 
 
.

495 名前: ◆qQn9znm1mg:2012/09/10(月) 11:34:30 ID:5SV6lZG6O
 
 
从'ー'从「『ああすればこれがこうなります』。
      そんな『因果』は、クソ喰らえだ」
 
从'ー'从「『弾丸と化した小石が躯を貫きます』。
      ボクが、そんなの受け入れるわけないぜ」
 
 
 
从'ー'从「全部、そう全部だ。
      巻き戻してやる。
      跳ね返してやる。
      入れ替えてやる。
      『反転(てのひらがえし)』させてやる」
 
 
(;^ω^)「ッ!!」
 
 
 ワタナベは両手をばっと真横に伸ばした。
 まるで空気を包み込むかのように、構えた。
 
 
从'ー'从「【手のひら還し《イレギュラー・バウンド》】。
      てめえらが知ってる『因果』を、全部『異常(くるわせ)』てやる」
 
 
从'ー'从「こっからは常識の通じない世界だぜ」
 
 
 
 
.

496 名前: ◆qQn9znm1mg:2012/09/10(月) 11:36:09 ID:5SV6lZG6O
 
 
 

 
 
 
(# ;% ><●>)「(……そうか、わかった)」
 
从'ー'从「ホ?」
 
 
 裏路地で、ゼウスもやがてその答えに辿り着いたのだ。
 随分と傷を負ったあとで、漸くだった。
 
 『蹴ろうとしたのが巻き戻される』。
 『蹴った衝撃が全部跳ね返される』。
 『蹴った事実関係が入れ替わっている』。
 
 これらの共通点は、どれもその因果を受け入れていない≠ニころにある。
 『ああすればこれがこうなります』という『因果』に、
 例外なく『異常(イレギュラー)』が来されているのだ。
 
 言わば、物をまっすぐ投げられない能力だ。
 正当な結果は、決してこれを前にはやってこないのだ。
 
 まさに『反転』。
 まさに『手のひら返し』。
 まさに『拒絶』。
 
 これらを総括させて、ゼウスはワタナベの持つ
 《拒絶能力》が以下のようである、と推理した。
 
 
 
 
 『因果(けっか)』を『反転(てのひらがえし)』させる《拒絶能力》。
 
 
 
.

497 名前: ◆qQn9znm1mg:2012/09/10(月) 11:38:09 ID:5SV6lZG6O
 
 
 『奥に向かって蹴ったから』
 『奥に向かうベクトルに従って』
 『奥に向かって飛ばされる』。
 
 この能力は、この三段階の全てを『反転』させるのだ。
 
 一段階目なら、蹴るという一連の動作が『反転』される。
 二段階目なら、蹴った衝撃が『反転』される。
 三段階目なら、蹴った事実関係が『反転』される。
 
 とにかく、我々が知っているような『因果』はやってこない。
 だから、自分のように凄まじい戦闘能力を持っていても、
 『戦闘能力に長けていれば勝利する』という『因果』が『拒絶』される。
 
 ゼウスはそう推理した。
 
 
从'ー'从「ひゅ〜ッ! すっごく頭いいんだね、惚れた!
      うっそぴょーん、ボクが好きなのは生涯通して一人だけサ」
 
(# ;% ><●>)「……」
 
 『反転』する能力だからか、性格もころころ、
 それこそ手のひらを返すように変わっていた。
 《拒絶能力》を得るのに際してついてきた副産物的なものだろうか、とゼウスは思った。
 
 そして、その副産物のおかげで、自分の第二の
 技となっている先読みができなくなっていた。
 ゼウスとしてはむしろこちらの方が大きかった。
 
 
(# ;% ><●>)「『爆撃』も効くまい」
 
从'ー'从「え、なんて?」
 
 ふと、ゼウスはぼそっと呟いた。
 
 傷という『因果』がまずできない以上は
 【連鎖する爆撃《チェーン・デストラクション》】は発動できないし、
 仮にできたとしても爆風、轟音、高熱、その全てが『反転』させられる。
 
 ゼウスのような、生身に効く攻撃しか持たない人にとっては
 このワタナベは死に神以外のなにものでもなかった。
 
 
.

498 名前: ◆qQn9znm1mg:2012/09/10(月) 11:40:13 ID:5SV6lZG6O
 
 
 ゼウスが呟いた時、微かにワタナベは動揺した。
 今までは心の中で呟いていたのが一転、
 手のひら返して肉声で発せられたからだろうか。
 
 その一瞬を、ゼウスが衝いた。
 壁を蹴って上へと向かい、逃走を図ったのだった。
 攻撃ではなく逃走で、しかも一瞬の出来事だったため
 ゼウスは、漸く撒けたかと一瞬安堵してしまった。
 
 だが、全てを『反転』させるワタナベに逃走は効かなかった。
 言わば「逃走」が「特攻」に『反転』させられるのだ。
 当然、個人の意思までは『反転』できないため、これは比喩となる。
 しかし、これは比喩にしてはできすぎな比喩だった。
 
 
从'ー'从「今度は鬼ごっこ? わーいわーい!
      鬼ごっこは好きだよ、ほんとうの鬼はいないんだもん」
 
(# ;% ><●>)「(くッ……)」
 
从'ー'从「――ってのは嘘。あ、モララーじゃないよ。
      『開くはずの距離』が『逆に縮まってきている』んだ」
 
(# ;% ><●>)「(……空間がねじ曲がっているとしか思えん)」
 
 
 物理法則のなにもかもを無視した姿だった。
 ゼウスが逃げれば逃げるほど、ワタナベがついてくるのだ。
 ゼウスが本気を出せば、新幹線はおろかジェット機にも勝ちかねない。
 
 そんなゼウスより速い動きをしているわけではないのに、
 実際的にはそれ以上の速度を出して動いているのだ。
 ゼウスは、これは夢ではないのかと疑いもしたほどだった。
 
 
从'ー'从「ボクの能力を見抜くって、結構凄いよ。
      だからそれに最大級の敬意を払って――」
 
(# ;% ><●>)「……っ」
 
 
 
从'ー'从「『体力の自然治癒』も『反転』させてあげる」
 
 
 
 
.

499 名前: ◆qQn9znm1mg:2012/09/10(月) 11:41:40 ID:5SV6lZG6O
 
 
 

 
 
 ワタナベはそう言うと、ゼウスを放り投げた。
 手荷物がなくなって、足枷がとれたような心地だった。
 ゼウスは声をひとつもあげず、横たわった。
 血が未だに流れているのが信じられなかった。
 
 ハインリッヒはゼウスの変わり果てた姿を見て
 不安を覚えたが、それはすぐに払拭させた。
 
 『英雄』が戦う前から不安になっているなど、論外である。
 そう自分に言い聞かせて、先ほどまで怯えていたのを、なんとか振り切った。
 
 
从 ゚∀从「俺は後手必勝派でよ……。
      先攻とるこたぁねーんだ」
 
 ハインリッヒが静かに言った。
 返すようにワタナベは彼女を嘲った。
 先ほど見せていたシリアスな雰囲気は、もうどこかへ行っていた。
 
 
从'ー'从「ひゅ〜ッ。さっすがモテ子さんは違うなあ!」
 
从 ゚∀从「――でも。今回ばかりは、先攻もらうぜ」
 
从'ー'从「どーぞどーぞってなんでやねーん!」
 
 ワタナベが一人で手を挙げた。
 彼女なりにふざけてみたわけなのだが、
 ハインリッヒにとっては不快以外のなにものでもなかった。
 
 だが、というより、おかげで、ハインリッヒは躊躇うことがなかった。
 
 
 
从 ゚∀从「――ふん」
 
 
 
从 ゚∀从「『イッツ・ショータイムッ!』」
 
 
 
 
.

500 名前: ◆qQn9znm1mg:2012/09/10(月) 11:42:52 ID:5SV6lZG6O
 
 
从'ー'从「アリ?」
 
 
 ハインリッヒの眼が朱くなり、中央に三日月が浮かんだ。
 その些細な変化に、ワタナベは少し動揺した。
 その一瞬後で、ハインリッヒは即座に行動にでた。
 
 地を蹴り、音速の壁から『優先』された『英雄』は
 あっという間にワタナベの目の前まで詰め寄り、
 一瞬の間だけ、そこでとどまった。
 
 
从 ゚∀从「反射すんなら――」
 
 力を一瞬ためて、反射に『優先』させ、
 押しつけることのできない絶対的な負荷を与えるものとして
 ハインリッヒはワタナベの心臓に殴りかかった。
 
 
从 ゚∀从「それに『優先』すりゃいいだけだ!」
 
 
 このまま、ハインリッヒの拳がワタナベの左胸に触れそうになれば、
 『英雄』の拳が人体に『優先』され、ノーガードで
 そもそも触れることのない攻撃が成立していたのだ。
 触れていなければ発動不可だろう、と考えたがゆえの判断だった。
 
 
 
 
.

501 名前: ◆qQn9znm1mg:2012/09/10(月) 11:43:54 ID:5SV6lZG6O
 
 
 
 だが。
 
 
 
从;゚∀从「いッ……あっと!」
 
 
 拳がワタナベの服に触れようとした途端、拳に異変が感じられた。
 そんなはずはないのに、なぜか拳がねじ曲がるような感触がしたのだ。
 
 その本能に従い、無意識のうちに拳は引かれていた。
 ワタナベは相も変わらず薄気味悪い笑みを浮かべていた。
 
 拳の骨が若干凹んでるのをみて、ハインリッヒは当惑した。
 が、それを堪えて彼女はワタナベに
 大きな声で吐き捨てるように話しかけた。
 
 この違和感の正体にワタナベが絡んでるはずだ、と思ったのだ。
 そして、それはおおかた当たっていた。
 
 
从;゚∀从「てめえ、なにしやがった」
 
从'ー'从「え〜? なんで教えなくちゃなんないの〜?」
 
 ワタナベは掌を空に向け、くるくる躯全体でまわった。
 ハインリッヒを、歯牙にかけるまでもない
 存在だと思っているように見えた。
 
 当然ハインリッヒはそれを許さない。
 恫喝するように、更にもう一回り大きな声を発した。
 今度はワタナベも答えざるを得なかった。
 
 
.

502 名前: ◆qQn9znm1mg:2012/09/10(月) 11:45:54 ID:5SV6lZG6O
 
 
从;゚∀从「おいっ!」
 
从'ー'从「んもぅ〜。簡単じゃん」
 
 すると、ワタナベは右の掌をハインリッヒに突きつけた。
 突然の行動に、ハインリッヒも当然驚いた。
 
 
 
从'ー'从「あなたが『優先』とか言ってたので――」
 
 
 その手をひっくり返して、手の甲をハインリッヒに見せた。
 続けてワタナベはこう言った。
 
 
 
从'ー'从「『優先』を『劣後』に『反転』させました」
 
从'ー'从「優先事項とやらは全部劣後事項にかわります!」
 
 
从 ゚∀从
 
 
从 ゚∀从「…………は」
 
 
 
 
 
从;゚∀从「はああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
      ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッぁあ!?」
 
 
 ハインリッヒは絶叫した。
 彼女の『反転』し得る範囲が広すぎる、と思ったのだ。
 対象は負荷だけではないことを知った。
 能力でさえ、ワタナベは『反転』してしまう、とも。
 
 身体能力がものを言わないのはゼウスの例を見て知っていた。
 だから《特殊能力》を使わなければならないのだが、
 とてもさせてくれそうになかった。
 
 
.

503 名前: ◆qQn9znm1mg:2012/09/10(月) 11:47:42 ID:5SV6lZG6O
 
 
(;^ω^)「無茶だ、ハインリッヒ!」
 
 
 内藤が叫んだ。
 
 
(;^ω^)「そいつの能力言うから、よぉく聞けお!」
 
(;^ω^)「――言うなれば、『因果』を『反転』させる《拒絶能力》ッ!
      ダメージから概念から何から何まで、
      なにもかもを『反転』させるんだお!」
 
(;^ω^)「『英雄の優先』は発動するな!
      『英雄』が悲惨な目に遭ってしまうんだお!」
 
从;゚∀从「じゃ、じゃあ――」
 
 
 
 
从;゚∀从「―――勝てねえ」
 
从'ー'从「その通り!」
 
从 ゚∀从「ッ!」
 
 
 内藤が叫んだのを聞いて、ハインリッヒは『英雄』の敗北を危惧した。
 いつも自身の勝利しか考えてないハインリッヒが
 不安がるなど、前代未聞の出来事であった。
 
 【ご都合主義】を前にした時とは、また違う感覚だった。
 ショボンの前では、目の前の『現実』から
 目を逸らしたくなる衝動に駆られた。
 
 
 しかし、今回は違った。
 
 恐怖。
 不安。
 絶望。
 
 ――拒絶。
 
 
 
.

504 名前: ◆qQn9znm1mg:2012/09/10(月) 11:49:39 ID:5SV6lZG6O
 
 
从'ー'从「これでもボク、戦闘もできるんだよ〜」
 
从;゚∀从「(音速の壁に『優先』っ!)」
 
 ハインリッヒが前を見ると、紫の髪を風に載せた
 ワタナベが、目の前まで迫ってきていた。
 咄嗟にハインリッヒは癖で音速の壁に自身を『優先』させた。
 それが常套手段であり、発動も手軽だからだ。
 
 だが、見える世界は彼女が知っている世界とは違っていた。
 音速の壁を超えれば、瞬間移動同然となって、
 景色は一瞬でなにもかも変わるはずなのだ。
 
 それなのに、ハインリッヒが見た世界は、
 ワタナベが右へゆっくり流れていくようなものだった。
 そのワタナベは、ハインリッヒを見てにやにやとしていた。
 
 
从'ー'从「うわ、おッそ。しわの数かぞえれるよ」
 
从'ー'从「あ、音速の壁を超えようとした?
      その上がるはずだった速度の分だけ、
      きみの速度の基準値より引き下げました」
 
从;゚∀从「(なんつー手のひら返し――あ、そうか)」
 
从;゚∀从「なるほど……。
      【手のひら還し】ってそういうことか……」
 
从'ー'从「そうそう」
 
 
 直後、ワタナベの掌底がハインリッヒの腹に直撃した。
 
 
 
.

505 名前: ◆qQn9znm1mg:2012/09/10(月) 11:52:03 ID:5SV6lZG6O
 
 
 
从; ∀从「が……ッ…!」
 
从'ー'从「掌底はね、傷をつけない代わりに、内臓に
      ヤベェダメージを残すんだって――
      って、聞いてないよね〜」
 
 ハインリッヒは、腹の底から空気を吐ききったような声を出した。
 この攻撃から『英雄』が『劣後』される以上、
 ダメージは通常よりも倍増されたと見ていい。
 
 また、ワタナベの言うとおり、皮膚を超えて
 内部に浸透するダメージは通常の打撃よりも重い。
 ハインリッヒをいたぶるという意味では、
 パンチなんかよりも掌底の方が都合がよかったのだ。
 
 よろけたハインリッヒに、ワタナベは左手で重い掌底を放った。
 その重い攻撃がハインリッヒの人中に入り、なす術がないまま、後方に倒れた。
 
 
 その、倒れた瞬間。
 ワタナベはにやりと口角を吊り上げた。
 
 
从'ー'从「起きろよ」
 
从; ∀从「!?」
 
 地面で背中を打ったはずのハインリッヒは、
 なぜか元通り起きあがった姿になっていた=B
 
 文字通り、達磨のように起きあがった。
 状況を把握しきれないハインリッヒを待っていたのは、
 既に構えに戻っていたワタナベの右手による掌底だった。
 
 咄嗟の出来事だったため、ハインリッヒがそれをかわせるはずもない。
 ハインリッヒは、彼女の掌底を再び喰らい、顔面の
 裏側にひどく重くのしかかるダメージを喰らってしまった。
 
 受け身をとるにとれないハインリッヒは、やはり地面に倒れ込む。
 どうやって逃げようか、そう思っていた時だ。
 
 
.

506 名前: ◆qQn9znm1mg:2012/09/10(月) 11:53:13 ID:5SV6lZG6O
 
 
从'ー'从「だから寝んなって」
 
从; ∀从「が……」
 
 
 再び、ハインリッヒは起きあげさせられた。
 今度は左の掌底で、同じく人中を衝かれた。
 
 【正義の執行】を発動していなければ、既に骨が砕けていそうだった。
 が、同時に、それのせいで『すべてのものにおいて劣後される』状況であるため、
 すべてにおいてワタナベに逆らえないという最悪の状況にもなっていた。
 
 ハインリッヒを倒しては起こして、再び殴る。
 それを繰り返しながら、ワタナベは呪文のように唱えた。
 
 
从'ー'从「達磨ってすごいよね〜」
 
从; ∀从「うご……」
 
 
从'ー'从「何度転がしてもッ」
 
从; ∀从「……っけ…ッ」
 
 
从'ー'从「起きあがるんだからッ」
 
从#) ∀从「なッ………!」
 
 
 
从'ー'从「なッ!!」
 
从#) ∀从「がァァッ!」
 
 
 
.

507 名前: ◆qQn9znm1mg:2012/09/10(月) 11:54:37 ID:5SV6lZG6O
 
 
 掌底が拳に変わり、ハインリッヒを強く遠くへ飛ばした。
 この時は、先ほどまでのように起きあがるなんてことはなかった。
 従来の物理法則に従い、地を跳ねて数メートルはとばされた。
 
 そして、そこまでワタナベは一歩ずつ詰め寄った。
 ハインリッヒは、思いのほか蓄積されていた
 ダメージのせいで、ろくに動くことができなかった。
 
 それは、掌底の特性であるのと、
 『英雄』が掌底から『劣後』されているから、である。
 
 じゃり、と地面を踏みしめる音が近づいてきた。
 うずくまって動けないハインリッヒに、ワタナベがいやらしく言った。
 
 
从'ー'从「『転んだ』と云う『因果』を『反転』させました」
 
 そして、脇腹に両手を当て眉を吊り上げた。
 語調の抑揚も大きく変わった。
 
从'ー'从「転んでも転んでも起きあがれるんだから
     ありがたく思いなさいよねっ! ぷんぷん!」
 
 そして、一瞬で素に戻った。
 
 
从'ー'从「――なんつって。今時エセツンデレはねーわ」
 
从#) ∀从「………」
 
 薄れゆく意識の中、ハインリッヒは思った。
 「手のひら返しを体現しているような性格じゃねえか」と。
 
 
.

508 名前: ◆qQn9znm1mg:2012/09/10(月) 11:55:22 ID:5SV6lZG6O
 
 
 その理由は、簡単だ。
 彼女が『拒絶』だからだ。
 
 ショボンが【ご都合主義】を会得する時、
 尋常のない量の『拒絶』を抱き、
 その負の感情を完璧にコントロールしていた。
 
 
 そして、本人の人格も、その『拒絶』に呑み込まれてしまった。
 
 
 ショボンが、どこまでもひねくれた性格の持ち主だったのはそのためだ。
 そして、それは『拒絶』の皆に通じるものがある。
 
 ワタナベの場合、司る『拒絶』は『因果』。
 そして生まれた、【手のひら還し】。
 結果、彼女は文字通り、常に手のひらを返すような性格を得ていたのだ。
 
 
 
.

509 名前: ◆qQn9znm1mg:2012/09/10(月) 11:56:43 ID:5SV6lZG6O
 
 
 

 
 
 
从#) ∀从「(………だめだ……確かに『拒絶』は強ぇや……)」
 
 ハインリッヒは静かに、そう思った。
 【ご都合主義】と同じく、確かに目を、
 耳を、情報を全て疑いたくなる程の強力さだ。
 
 あまりにも理不尽な強さで、
 とてつもなく非情な能力で、
 あまつさえ精神もおかしくなっている。
 
 能力そのものが最悪で、
 能力の使用者も最悪なら、
 決まって最悪な展開しか訪れない。
 
 ハインリッヒは必死に打開策を考えていた。
 ショボンの時は、内藤の機転でうまく切り抜けられたのだ。
 
 ねじ曲げられた『現実』を『英雄が優先される』と云う『世界』で塗り替えた。
 以降はことあるごとに自分が負ける要素から
 『優先』させたことで、なんとか勝てたのだった。
 
 しかし、ワタナベは違う。
 彼女は、全てを『反転』する。
 『勝利』も、『優先』も、なにもかも。
 
 だから、勝ち目という意味では勝ち目がなかった。
 
 
.

510 名前: ◆qQn9znm1mg:2012/09/10(月) 11:58:06 ID:5SV6lZG6O
 
 
 ワタナベは、心を読める。
 ゼウスの心を読んだ時のように、
 ハインリッヒの心も躊躇いなく読んでいた。
 
 
从'ー'从「え〜急に褒められてもねぇ〜。
      あ、そうだ今度チョコパおごろっか!
      一時間以内に食い切れたらタダってそれバケツパフェやーん!」
 
从#) ∀从「(……弱点はねぇのか……?
       この、とんでもねぇ《拒絶能力》の……)」
 
从'ー'从「弱点〜? そうだね、不意を衝かれたらびっくりしちゃうの〜」
 
从#) ∀从「(………チキショウ、完全にココロ読まれてやがる……。
       これじゃあ不意打ちなんてできねぇな……)」
 
从'ー'从「うんうん、人生諦めが肝心! 生きることも諦めな!
      おっとこれじゃあ矛盾だねぇ〜」
 
从#) ∀从「………」
 
 
 ハインリッヒは考察に疲れ、静かになった。
 無心になったので、ワタナベも心を読めず、面白くなかった。
 ハインリッヒを嘲ることである程度は満たされていたのに、
 それがめっきりなくなってしまった。
 
 『拒絶』は皆、満たされることを望んでいる。
 ハインリッヒを挑発できないようになると、
 次はいよいよ戦闘がはじまる。
 
 ハインリッヒは、それを知っていた。
 いや、知っていたからこそ無心になったのだ。
 
 
.

511 名前: ◆qQn9znm1mg:2012/09/10(月) 11:59:23 ID:5SV6lZG6O
 
 
从'ー'从「……つまんねぇな」
 
从#) ∀从「……」
 
从'ー'从「………」
 
 
 ハインリッヒは、ワタナベに抗えない、と半ば諦めていた。
 ここで朽ちてもおかしくない命だ、とも思っていた。
 だから、あれこれ考えて不安に駆られるよりかは
 こうして静かに次の相手の出方を待っている方が気が楽だった。
 
 そう云う作戦であることを知っていても、
 ワタナベにとってはやはりつまらなかった。
 もう少し構ってほしいと思っていた。
 
 これでは自分が受け入れられず、
 いつも通り『拒絶』されたままなのだ。
 それでは、このように強力な『能力者』を強襲する意味がなくなってしまう。
 
 ワタナベは口を尖らせた。
 だが、ハインリッヒにも意地がある。
 彼女は一向に行動にでようとしないので、
 いよいよワタナベの方も我慢できなくなった。
 
 無理矢理、戦闘に洒落込もうとした。
 
 
从'ー'从「――じゃあ」
 
从#) ∀从「がふ…ッ……」
 
 
从'ー'从「せいぜい抗ってくれよ。
      それこそがおれの生き甲斐なんだからな」
 
 
从#) ∀从「………」
 
 
 
 
.

512 名前: ◆qQn9znm1mg:2012/09/10(月) 12:02:04 ID:5SV6lZG6O
 
 
 
 
 ワタナベが、掌底を構えた。
 狙うはハインリッヒの心臓。
 真上から垂直に衝く掌底は、ハインリッヒから容易く命を奪い取るだろう。
 
 
从'ー'从「………」
 
 
 
 
 
 ハインリッヒが、目を瞑った。
 
 直後、ワタナベがちいさく声を発した。
 
 
 
 
 
 
 
.

513 名前: ◆qQn9znm1mg:2012/09/10(月) 12:02:56 ID:5SV6lZG6O
 
 
 
 
 ―――同時に、ハインリッヒの顔に生温かい液体が飛んだ。
 生臭く、しかし何度も嗅いだことのあるにおいだ。
 
 死を覚悟したハインリッヒにとっては、
 当初それが自分のものではないかと思った。
 
 しかし、自分は痛くもなんともない。
 平生のまま、こうして横たわっている。
 
 
 試しに目を開くと、予想通りの赤い液体がそこらに飛び散っていた。
 目の前には、ワタナベが立っている。
 
 ――が
 
 
从;゚∀从「な………なに?」
 
 
 
从゚ー 从
 
 
 
 ワタナベは立っていたのだ。
 しかし、異変があるとするなら
 
 
 彼女の心臓から手が突き出されていた≠アとだ。
 
 
 
 
.

514 名前: ◆qQn9znm1mg:2012/09/10(月) 12:04:22 ID:5SV6lZG6O
 
 
 
 心臓の部位から、止め処なく液体――血が、流れている。
 それも尋常のない量で、即死を疑う程だった。
 
 いつの間にか心臓を貫かれていたワタナベは、
 少し痙攣したのち、息絶えたのかがくんとうなだれた。
 それを見てから、背後にいた人物は≠サの手を抜いた。
 そして、彼女が倒れたのを確認して、彼は口を開いた。
 
 
(# ,*;゙><  >)
 
 
 
 
(# ,*;゙><●>)「――どうやら【手のひら還し】はデフォルトで
        常時適用させることのできない能力だったようだ」
 
 
 
 
.

515 名前: ◆qQn9znm1mg:2012/09/10(月) 12:06:26 ID:5SV6lZG6O
 
 
从;゚∀从「て―――てめぇッ! なんで――」
 
(# ,*;゙><●>)「不意打ちのタイミングを測るために
        絶命したふりをしていただけだ」
 
 
 ハインリッヒはがばっと躯を起こし、
 いま目の前に立っているゼウスにそう問いかけた。
 
 ゼウスは死んだはずではないのか。
 死んでないにしても、動けないほどのダメージを与えられていたはずだ。
 
 動けたことは結果としてプラスに働いたが、
 どうしても「なぜ」が付きまとってくる。
 
 それもこれも、全てがこのたった一瞬の
 「不意打ち」のために用意された材料だったのであれば、
 彼が不意打ちの得手である、と認めざるを得ない。
 
 そして、実際に彼はこの一撃のために、自ら倒れたふりをしていたのだ。
 
 
(# ,*;゙><●>)「所詮、『拒絶』も対応できるのは意識の範疇にある対象のみ。
        ……『不意打ちが弱点』だったのは幸いだった」
 
从;゚∀从「………ふ、深いことはあとで聞くが……」
 
 ハインリッヒは、ゆっくり立ち上がった。
 自分も、まだ余力は残していたのだ。
 倒れていたのも、ゼウスと同じ理由だ。
 彼に、そのことについてとやかく言うつもりはなかった。
 
 砂埃をはたいて、ハインリッヒはワタナベを見下ろした。
 ぽっかりと空いた穴を見て、ハインリッヒは吐き気を催した。
 いくら戦闘凶と言われど、心臓の部位に
 大きな穴があるのを見たのはこれがはじめてなのだ。
 
 
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516 名前: ◆qQn9znm1mg:2012/09/10(月) 12:08:23 ID:5SV6lZG6O
 
 
从;゚∀从「……これは、『勝った』ってことで……いいのか?」
 
(# ,*;゙><●>)「なにを躊躇う必要がある」
 
 ハインリッヒの弱気な一言に、ゼウスが渇を入れた。
 だが、ハインリッヒの気持ちも充分理解していた。
 
 【手のひら還し】と云うとんでもない《拒絶能力》を持つワタナベなのだ。
 そう一筋縄でゆくはずがなく、簡単に倒せるはずがない、と。
 
 『現実』ではそんなワタナベもこのように即死したが、
 ハインリッヒにとってはにわかに信じがたかった。
 息の根を確かめた上で、世界一の医者に診てもらいたいほどだった。
 
 ワタナベを案じた上での選択ではない。
 『確実に死んだ』と云う確証がなければ、
 とてもワタナベが死んだとは思えなかったのだ。
 
 
从 ゚∀从「だってよ……」
 
(# ,*;゙><●>)「………」
 
 ハインリッヒが死んだワタナベに一瞥を与えると、
 ゼウスも遅ればせながら同じように彼女をちらっと見た。
 
 どう見ても、死んでいる。
 当然のことながら、彼らは心臓に穴を開けて
 なおも言葉を発し続ける者を見たことがない。
 
 心の隅でまだ埃の積もった箇所は残っているが、
 それはただの思い過ごしだ、と割り切るほかなかった。
 
 そう考え、安堵の息を吐いたハインリッヒが、
 隅っこの方で震えている内藤の方を見た。
 そして、現状について見解を伺った。
 当然自分たちと同じ考えだろう、とハインリッヒは思っていた。
 
 
从 ゚∀从「……デブよ、こいつ死んでるよな?」
 
 
 
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517 名前: ◆qQn9znm1mg:2012/09/10(月) 12:09:35 ID:5SV6lZG6O
 
 
 
 
 しかし。
 
 内藤は、肯かなかった。
 
 
 
 
(;^ω^)「……あんたら、『拒絶』を嘗めすぎだお」
 
从 ゚∀从「ハ?」
 
 
 
从;゚∀从「―――ハ?」
 
 
 内藤がそう言った直後、背後で布擦れの音がした。
 土を踏みしめる音も、血が滴る音も、服をはたく音もした。
 
 それらの音を聞いて、ハインリッヒは途端に冷や汗が止まらなくなった。
 同時に、背筋も信じられない程に寒くなった。
 
 「まさか」「そんなはずはない」
 そんな考えが脳内を駆け巡るものの、
 『彼女』は、確かに声を発し、
 ハインリッヒのそんな淡い望みを、見事に打ち砕いた。
 
 
 
 
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518 名前: ◆qQn9znm1mg:2012/09/10(月) 12:10:37 ID:5SV6lZG6O
 
 
 
  「『心臓を貫けば死ぬ』。
   そんなこと、小学生でも知ってるけど、同時に
   その『因果』が『反転』させられることは知らないんだ」
 
 
 
(;^ω^)「………ッ…!」
 
从;゚∀从「は!? ちょ、てめえ――」
 
 
 
  「あと、『不意打ちが弱点』のことだけどさ。
   あれは『嘘』。モララーばりの大嘘だよ。
   ボクはあえて不意打ちさせてあげた≠フサ」
 
 
 
(# ,*;゙><●>)「……なに……ッ?」
 
 
 
  「忘れたみたいだから、も一度だけ言ったげる。」
 
  「ボクの名は―――」
 
 
 
 
 
 
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519 名前: ◆qQn9znm1mg:2012/09/10(月) 12:11:41 ID:5SV6lZG6O
 
 
 
 
      イレギュラー・バウンド
从'ー'从「【手のひら還し】ッ!」
 
 
从'ヮ'从「ボクの『生死の概念』を、『反転』させたッ!!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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