( ^ω^)謎公園のようです

9 名前: ◆VvVid8msb2 投稿日:2011/08/07(日) 20:42:20.28 ID:pcV12Y7q0
第一話「公人紹暦」


 「超神秘的ナイトスポット、グラウンドヴィレッジ」

 ――とある雑誌ではそう書かれた。
 強ち、間違いではないと思う。
 しかし、その雑誌に書かれた事は夜と関係ない初心者向けの文字稼ぎだった。

 僕の名は内藤 穂来。小学四年生だ。
 特にこれと言った特徴はなく、特にこれと言った事件も起こらない人間だ。

('A`)「おいブーン、んな所で何してんだよ」

 この男は鬱王 獨雄。僕と同じ小四だ。
 そして幼少時からの盟友でもある。

 僕は、その顔から「ブーン」と呼ばれている。
 豚を連想させるふっくらとした常に笑っているキモい顔、だそうだ。
 そして豚の鳴き声からブーンと呼ばれている。

10 名前: ◆VvVid8msb2 投稿日:2011/08/07(日) 20:43:06.51 ID:pcV12Y7q0
('A`)「ッったく…。お前は昔から何でんな所が好きなんだろうな」

 今僕がいるところはグラウンドヴィレッジの鉄塔の地下だ。
 皆最上階に行こうとする中この鉄塔の地下に行く人数は極わずかだ。

 しかし、風が吹き荒れる最上階――実に28階よりもひんやりしていて気持ちいい。
 穴場中の穴場。そういう所だと僕は思う。

( ^ω^)「だって此処は涼しいじゃないかお」

('A`)「涼しいって…お前なぁ……。
    最上階に行けばもっと涼しいかも知れねえぜ。」

 最上階はこの季節は風が吹き荒れ、お世辞にも快適とはいえない。
 しかし、やはり皆最上階へ向かうのは達成感からだろうか?

( ^ω^)「皆変人だお。ここが一番心地よいお」

(;'A`)「変人はお前だろ、こんな所に誰もいないぜ」

 獨雄は一見常識人だ。
 しかし実際はこんな変人に構ってくれるetc...最強の変態だ。
 それは皆知っているから皆獨雄を変人ポジションにおいている。

11 名前: ◆VvVid8msb2 投稿日:2011/08/07(日) 20:43:40.36 ID:pcV12Y7q0
 その点、冷静な面もある。
 何秒間か空白が続いた。何かが気まずい。

('A`)「…グラウンドヴィレッジは夏が一番旬だからな。
    各地の長期休暇で他国からも大量に人が雪崩れ込むし…。
    結局はシンボルである鉄塔の最上階に行きたくなるんだろ」

 突如解説を始める獨雄。
 結局彼単体で変態である。

 たとえば、こんなエピソードがある。

 獨雄は、一年生の頃からどんな事も完璧にこなし、クラスの人気者になっていた。
 そのくせ性格も人以上。神童と呼ばれ、確か何処かのテレビにも三桁単位で出ていたと思う。

 しかしそんなある日の事だった。
 電撃的に広まった噂。その内容は。

 獨雄が女子を振った、という事だった。

12 名前: ◆VvVid8msb2 投稿日:2011/08/07(日) 20:44:27.53 ID:pcV12Y7q0
 内容としては大したことでもない。
 実際獨雄は之までも大量の夢見る女子と少しの男子を地獄に蹴落としてきた。
 だからその事も大した事件にはならないはずだった。

川 ゚U゚)「ド、ド、ドドクオ様……、こ、これ……受け…、と、取って」

('A`)「断るぜ」

 女子生徒に握られているのは「ドクオ様へ ラブレター」と大っぴらに書かれたハートマークの手紙だ。
 いやはや、全く、恥情が無いのかと疑いたくなる。バレバレだろうが。

 そういう事を考えながら、獨雄は普段のとおりテンプレートに振った。
 しかし、その後の問答が問題だった。

 その女子生徒は数分間黙殺していた。
 ショックから立ち直れないのか、まだ悪夢だと思ってるのか。

川 >U<)「ど、え、どどど、どうして、ですか?」

('A`)「……毎回それを聞かれるんだよな、
    人を嫌いになる理由なんてないだろ。」

13 名前: ◆VvVid8msb2 投稿日:2011/08/07(日) 20:44:45.84 ID:pcV12Y7q0
 女子生徒が悲痛な叫びを上げた。
 獨雄はそれすらも無視して、話を続けようとする。

 しかし、女子生徒の声によって遮られる。

川 ;U;)「じゃ、じゃあ……。
      ドクオ様はどんな人が好きなんですか?」

('A`)「オレか……オレはな…」

14 名前: ◆VvVid8msb2 投稿日:2011/08/07(日) 20:45:22.98 ID:pcV12Y7q0
    「スポーツ万能な癖して保健の授業に入るとすぐさま成績が落ちて
     ツンデレで若干女装趣味があって紋服が似合い和風的で
     黄色と碧と紫色で腰まである髪で、空を飛ぶ程度の能力を持っていて
     尚且つ体重は32kg以上35Kg以下、身長は140cm以下、現在オレより3歳上、
('A`)  そして人のことを思いやれる純情な心がある中でおっちょこちょいで
     不器用でオレがフォローしてあげる以外に立ち直れなくって
     ガラスみたいに可憐でスカトロ趣味とカリバニズム趣味見たいなものがあって
     ドS中のドSで、鰓呼吸で半魚人的な肌で、実は角が十本生えていて、
     そしてオレのいう事に基本的に従う男子、そいつをオレは好きだ」




川 ゚U゚)「………え、えええ、え、え?」


川 U )「―――――――――――――――――!!」

 少し断り方がハード過ぎたかな、と後悔する獨雄だったが時既に遅し。
 女子生徒はその場から姿を消し、女子生徒のコネで翌日の校内放送に録音された物が流されるという事がおきた。

15 名前: ◆VvVid8msb2 投稿日:2011/08/07(日) 20:46:08.34 ID:pcV12Y7q0
 そして当時小学二年生にして獨雄は、変人を通り越して変態というポジションにまでいたったのだ。

 その他にも、空き地で見つけた蝮をマムシドリンクにして全裸で飲んだ事。
 エロ本を学校でこっそり読み漁ったこと。

 その他諸々で獨雄は過去のイメージが一拭され、変態になったのだ。
 しかしその頃のイメージもだいぶ薄れ、今では普通の変人ポジションに落ち着いているが。

 とにかく、獨雄は本性を出すとすさまじい危険人物中の危険人物だ。
 若干小学二年生にして禁断の知識に辿り着いた、デンジャーカリスマだ。


 そして、その獨雄は僕に毎日付き合ってくれる良き仲となっている。
 その、「好きな人物の基準云々」とは関係あるのか知らないが、しかし結局友達だ。

18 名前: ◆VvVid8msb2 投稿日:2011/08/07(日) 20:47:28.92 ID:pcV12Y7q0
('A`)「どうかしたのか、ブーン。
    いきなり考え出して。
    お前らしくも無い。走馬灯でも見たか?」

 そして、僕はこの獨雄と違って凡才中の凡才にして馬鹿だ。
 全てのことを満足に出来ない。

(;^ω^)「べ、別に何か考えていたわけじゃないお!」

('A`)「そうか、ならよかった。
    てっきりお前が壊れたかと思ったぜ」

 この通り、僕は何も考えない人、というキャラになっている。
 仕方ないし、それでキャラが通るならそれでいいかとも諦めている。

19 名前: ◆VvVid8msb2 投稿日:2011/08/07(日) 20:48:40.54 ID:pcV12Y7q0
('A`)「それよりもう日も影って外も涼しいぜ。
    Sエリアに行こうぜ」

( ^ω^)「…また行くのかお。
      ……別にいいけどお。」

 Sエリアは、このグラウンドヴィレッジのエリアの一つだ。
 A〜Z、1〜9、あ〜ん、T〜\という文字フル活動のこの公園の仲間わけで最初のほうに割り振られた場所である。
 比較的この塔から近いところにあり、レンタル自転車で大体40分でつく。

 最初は塔にいる時の獨雄のこの申し出も丁重に断っていたが、今では違う。
 正直この体格もどうにかしたいと思っていたところなので、嫌々ながら結局行くことになっている。

('A`)「ならこんな塔に引き篭もってないで早く行くぜ!」

 獨雄の声が響き、僕は獨雄の手に従われるとおりに塔の外へ出て行った。
 階段を上り、また上り、更に上って外に出た。

22 名前: ◆VvVid8msb2 投稿日:2011/08/07(日) 20:49:59.34 ID:pcV12Y7q0
 外は、夏休み特有の熱気に包まれ、大量の世界中の人々が戯れている。
 ある者は噴水に当たり、ある者は「滑り台顔面滑り」を行い顔中血だらけで、ある者は塔から何もつけずに落下している。
 見渡すだけで四箇所ほどで道化師がマジック云々を披露していて、パッと見五千匹を越える鳩が宙を舞っていた。

 流石に全世界一の公園と言うだけはある。
 何時見ても壮大すぎるその光景に唖然としながら借りていた自転車に鍵を入れる。

 獨雄が、自転車を発進させた。

 リリン、リリーン。

 僕も、自転車を進めた。
 ベルの音が、人ごみに響いた。


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