ー`)し俺達は平穏に過ごせないようです(谷

3 名前:以下、雑談にかわりまして本編をお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 21:44:26 ID:Ayhf351Q0

J( 'ー`)し「ねえドクオ、少し話があるんだけど……」

夏休みも二週間近くが過ぎ、カレンダーが八月へと変わった日曜日。
俺の部屋をノックする声があった。

('A`)「んあ、何?」

J( 'ー`)し「ちょーっと話が長くなりそうだから、リビングまで来てくれない?」

なぜだろう、母の笑顔の裏にただならぬ気配が満ちているのだが……

('A`;) (まさかベッドの下のアレが……発見された?)

昨日ブーンの家に遊びに行った後、俺の部屋が妙にすっきりしてる気がしたが……
もしや母が勝手に掃除して、それで……

('A`) (まあとりあえずgdgd考えても仕方ない、リビングまで行くか)

リビングまで移動した俺を待っていたのは、渋い顔の母と一通の封筒だった。

J( 'ー`)し「とりあえず、これに目を通してくれない?」

封筒は俺宛てで、会社名には『マルチマウス』と見慣れない名前が書かれている。
そして表面に書かれた文章は……

『当会社のサービス御利用の代金について』

なんだ、この不安にさせる文面は?

4 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 21:45:27 ID:Ayhf351Q0

J( 'ー`)し「……とりあえず開けて、内容を教えてくれない?」

若干嫌な汗を掻きながら封筒の開け口を破り取る。
中から出てきたのは二枚組みの書類と銀行の振込用紙。
とりあえず四つ折にされた書類を開き、内容を検めた。

『 ネットゲーム『タコベヤード』の御利用代金について 』

……その最初の一文で、俺は大体の状況を理解できてしまった。

('A`;) (タコベヤードって……少し前にやってたネトゲだよな)

たしか無料お試し期間があって、色々とやった事を覚えてるが……

('A`;) (あれ? でも無料期間以降は手を出してなかったよな……)

書類を読み進めていく内、俺の顔が段々と青くなっていく。

('A`;) (えっ、あれ無料のサービスじゃなかったの!?)

装備が手に入れる福引、ガッポリ金が稼げるダンジョン……
調子に乗って山ほど利用してたそれらが、有料サービスの欄に入っている。

二枚目を見た俺は、そこに書かれていることを見て愕然とした。

5 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 21:46:45 ID:Ayhf351Q0

利用したサービスの内容と回数、金額が表になっているその紙。
……一番の問題は、最後に記された合計金額だった。


(゚A゚;)「さ、三万四千円だとっ……!? 嘘だろ!?」


桁を一つ間違っているんじゃないかと何度も見返したが、いくら見ても金額は変わらない。
軽く俺の財布の中身を四回は吹っ飛ばせる金額だ。

J( '-`)し「…………で、どうする気よ」

一枚目の紙に目を通した母が俺に問いかけてくる。

('A`;)「いやいや、でもこの金額はおかしいだろ!?」

J( 'ー`)し「でも、ドクオは遊んだのよね? 注意事項はしっかり読んだの?」

('A`;)「そ、それは……」

確か最初に長い契約文があったが、めんどいから読み飛ばした記憶が……

J( '-`)し「…………」

('A`;)「……すいませんでした」

6 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 21:48:09 ID:Ayhf351Q0

J( 'ー`)し「はあっ……ドクオが選べる道は二つあるわ。
      一つはもうこんなことが出来ないように、パソコンを没収する事」

('A`;)「それだけは勘弁してください」

親父のお古とはいえ、色々愛着が詰まったPC。
あれとかこれのデータが無くなれば、正直明日からどう暮らせば……

J( 'ー`)し「で、もう一つは――」



        俺達は平穏に過ごせないようです


     J( 'ー`)し<『その7:塊マンボ! 〜 2nd watermelon Mix 〜』ですってねぇ

7 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 21:49:09 ID:Ayhf351Q0


【('A`)「あー、クー。今大丈夫か?」

川 ゚ -゚)】『もしもし、何の用だ? 言っておくが私は今中ボスを倒している最中でな。
      つまらない用事なら切るぞ。ってかキレルぞ』

電話の向こうからは緊迫した戦闘音の様なものが聞こえる。
そういえばクーはけっこうなゲーマーだったな。

【('A`;)「あー、それは悪いな。実はこの夏に仕事を探していてな……」

川 ゚ -゚)】『仕事……金でも欲しいのか?』

【('A`)「実はカクカクウマシカで……」

川 ゚ -゚)】『なるほど。今月中にお金を貯めなければ、PC没収という訳だな。
      しかしタコベヤードとは……あそこの悪評を事前に調べなかったのか?』

【('A`;)「反省してます。ともかく、なるべく期間が短くてガッツリ稼げる所があれば……」

川 ゚ -゚)】『わかった、いくつか知り合いを当たってみよう』

【('A`)「悪い、頼んだ。じゃあな!」

ふう、これで一通りの知り合いには頼んだな。
あとは返信をひたすら待てば――

8 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 21:50:38 ID:Ayhf351Q0

('A`;)「ありゃ、早速か……」

この陽気な音楽はブーンだな。

【( ^ω^)ノ 『おいすー、今大丈夫かお?』

【('A`)「ああ、大丈夫だ」

【( ^ω^)『さっきのバイトの話だけど、父さんからOKを貰ったお!』

【('A`;)「マジでっ!? ありがとな! で、内容は?」

【( ^ω^)『明日の午後、倉庫を整理して欲しいそうだお。給料は三千円。
       ボクもいつもやってるけど、そこまで大変な仕事じゃないお』

【('A`)「いやー、ありがとな。助かるぜ」

【( ^ω^)『じゃあ明日の午後二時、店まで来てくれお』

【('A`)「了解、よろしく伝えといてくれ。じゃあな!」

【( ^ω^)ノシ『また明日だおー!』

よし、一つ目の仕事ゲット! さーて、頑張りますかな……

9 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 21:51:29 ID:Ayhf351Q0

     ○     ○     ○

('A`)「あの、今日はよろしくお願いします!」

升^ー^)「はは、そんなに気構えなくていいよ。
      落ち着いてマイペースでね」

こちらの人はブーンの父親、自営業で酒屋を営んでいる。
その落ち着いた性格は、一体何割がブーンに遺伝してるのやら……

升^ー^)「ではホライゾン、いつもの様に頼むよ」

( ^ω^)「おっおっ、任せてくれお!」

ブーンの父親と別れ、店の裏手にある倉庫へと回る俺とブーン。
中には段ボールや箱が乱雑に積まれていて、確かに整理の必要を感じさせる。

( ^ω^)「じゃあ始めるお!」

二人で黙々と片付け始める俺達。
日本酒にウイスキー、泡盛などなど様々な酒を棚へと移動させるのだが――

10 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 21:52:13 ID:Ayhf351Q0

('A`;)「なあ、この中寒くね?」

倉庫内は空調で冷やされているようで、ひんやりと冷た―― いや、むしろ寒い。

( ^ω^)「そりゃあお酒を管理してるから当然だお」

ブーンが言うには、お酒は温度変化と光に弱いらしい。
確かにワインとかは専用の冷蔵庫で保存するもんな。

( ^ω^)「とりあえずこれを着ておくお!」

('A`)「おっ、ありがとな」

ブーンが店のロゴが入ったジャンパーと軍手を渡してくる。
冬の寒さといっても過言では無いほど冷えてるからな……
ブーンの心遣いに感謝して、俺は作業を続けた。


('A`)「んで、これはあっちへと――ん?」

( ^ω^)「父さんかお?」

俺達がしばらく作業を続けていると、倉庫のドアを開ける影があった。
てっきりブーンの両親のどちらかが様子を見に来た物だと思ったが――

(`・ω・´)「ん、二人とも頑張ってるようだな」

バーボンハウスのマスター、シャキンさんの姿がそこにあった。

11 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 21:53:00 ID:Ayhf351Q0

('A`)「あっ、お久しぶりです」

(`・ω・´)「そう思うならたまに店に顔を出して欲しいんだがな……
       ブーン君、このメモに書かれた酒を探してくれないか?」

( ^ω^)「任せてくれお!」

メモを受け取り棚の方へ向かうブーン。


(`・ω・´)「ところでショボンから話を聞いたんだが……君は仕事を探しているのか?」

('A`)「あっ、はい!」

(`・ω・´)「明後日の晩、時間はあるか?
       もしよければ頼みたい仕事があるんだが」

('A`)「あー、もしよろしければ……」

(`・ω・´)「ん、ではよろしくな。明日ショボンに詳しい内容を送らせるよ」

('A`)「わかりました、こちらこそよろしくお願いします」

その後シャキンさんはブーンから数本の酒瓶を受け取り、帰っていった。
シャキンさんの仕事って事は……やっぱりバーの手伝いかな?

13 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 21:53:45 ID:Ayhf351Q0

     ○     ○     ○


('A`;)「あの、本当にいいんですか?」

升^ー^)「気にしない気にしない。私の妻だって喜んでるしね」

ハ ・ω・)ハ「久しぶりに腕を揮るえるんよ。さあ、出来たんよ」

( ^ω^)「おおっ、美味しそうだお!」

現在俺はブーン宅の食卓、机の上へと並べられた御馳走の前に座っていた。
……なぜこんな事になったかと言うと、話は一時間ほど前まで遡る。



  ('A`)「ふぃーっ、ようやく終わったか」

  ( ^ω^)「お疲れだお!」

  ('A`)「ああ、そっちもな」

倉庫の片付けを終えた俺達は、とりあえず表の店へと回った。

  升^ー^)「お疲れ様です、ドクオ君。まず忘れない内にこれを……」

店内で暇そうにしていたブーンの父親が、俺の手へと封筒を渡してくる。  
促されて中を開けると、そこにはピン札の千円札が三枚ほど並んでいた。

14 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 21:55:09 ID:Ayhf351Q0

  ('A`*)「ありがとうございます!」

  升^ー^)「いやいや、もしよければまた頼むよ。
        ところでドクオ君、今夜は予定があるかい?」

  ('A`)「いや、特に予定は無いですが……」

  升^ー^)「もしよければ、夕飯を食べていかないかい?
        色々と話を聞きたくてね……」

  ('A`)「あっ、ではお言葉に甘えて……」

……なんてやり取りをした後、今この場にいるのだが――


('A`;) (なんだ、この量と種類は……)

15 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 21:56:00 ID:Ayhf351Q0

机の上に並べられた数枚の大皿には、これでもかと言うほどの量のおかずが盛られている。

飴色のタレが山ほどかけられた、豚の三枚肉の煮込み。
白い湯気を上げる、金色の卵と緑の葱で彩られた炒飯。
見ただけでも香ばしさや辛味などが伝わってくるエビチリ。

色とりどりの野菜達が混ざり合っている、シンプルだが美味しそうな炒め物。
狐色に揚がった白身魚の唐揚げには、べっこう色に輝くソースがかかっている。
チンゲン菜と共に何かの貝が炒められた皿からは、魅惑的な香りが漂っていた。

人数分用意された蒸篭の中には、半透明の皮で覆われた蒸餃子がある。
スープ皿の中には薄く延ばされた溶き卵の他に、茶色い何かを干したような物が入っていた。


('A`;) (どこの中華料理屋だよ、本当に……)

( ^ω^)「おっおっ、そろそろ食べていいかお?」

升^ー^)「そうだね、いただくとしようか」

( ^ω^)「それじゃ、いただきまーすだお!」

挨拶を手早くすませると、自分の皿へと料理を盛り始めるブーン。
皿の上に山ほど盛ったそれらを、これまた凄い勢いで消費していく。

ハ ・ω・)ハ「ほら、ドクオ君も遠慮せず食べるんよ」

ブーンの母親が、茶碗に炒飯を盛って渡してくれる。

16 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 21:56:47 ID:Ayhf351Q0

('A`)「あっ、ありがとうございます!」

ハ ・ω・)ハ「早くしないと家のブーンが全部食べてしまうんよ」

確かに、このペースだと食べ尽くすのも時間の問題だな……
とりあえず一通りのメニューを皿に取り、じっくりと味わっていく。

('∀`*)「何これ! めっちゃ美味い!」

ハ ・ω・)ハ「あらあら、ありがとなんよ。デザートもあるからゆっくり食べるんよ」

普通に店でも開けそうな味のレベル……ブーンも毎日こんな物を食べれるなんて幸せ者だな。

升^ー^)「ところで母さん、そろそろいいかい?」

ハ ・ω・)ハ「はいはい、わかってるんよ」

ブーンの母親は台所に行き、一本の酒瓶と数個のグラスを持って戻ってくる。

升^ー^)「どうだい、ドクオ君も一杯やらないかい?」

('A`)「あっ、じゃあお言葉に甘えて……」


……思えば、これが悲劇の始まりだった。

17 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 21:57:28 ID:Ayhf351Q0

     *     *     *

( A iil)「っ゛う゛う゛っ……あ゛た゛ま゛か゛ー……」

(; ^ω^)「……大丈夫かお?」

ハ;・ω・)ハ「ごめんよ、うちの旦那が馬鹿みたいな量飲ませて……」

( A iil)「い゛も……ぎゅるぎゅるする……ウッ」

(; ^ω^)「とりあえずトイレまで行くお! こっちに来るお!」

ハ#・ω・)ハ「まったく、調子に乗りすぎなんよ!」

升;^ー^)「いやあ、あまりにスイスイ飲むものだから……すまないね、ドクオ君」

ハ ・ω・)ハ「まったく……とりあえず今夜は家に泊まらせるかよ」

18 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 21:58:14 ID:Ayhf351Q0

     □     □     □

枕元の方で、俺の携帯が鳴り響いている。
クラクラする頭を起こしながら俺は必死に携帯へと手を伸ばし、通話ボタンを押した。

【('A`)「もしもし、鬱田ですが……」

『あっ、ドクオ。今大丈夫?』

……頭に響いてくるこの声、その正体は――

【('A`)「まあ大丈夫だが……ツン、こんな時間に何の用だ?」

【ξ;゚听)ξ『こんな時間って……もう朝の10時よ? まあいい、本題に入るわね』

今更気付いたんだが……ここどこだ?
見慣れない和室の真ん中、畳の上に敷かれた布団の上に俺はいる。

……そんな事をボンヤリと考える俺を、電話の向こうにいるツンは待ってはくれない。

【ξ ゚听)ξ『今日の夜、時間ある? ちょっとお仕事頼みたいんだけど……』

【('A`)「……あー、もしかしてバイトか?」

19 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 21:59:56 ID:Ayhf351Q0

【ξ ゚听)ξ『まあそんな所。夜7時半から10時まで、給料は二千円。どう?』

どうと言われても、どうせ夜はやる事ないしな。
一円でも多く稼ぎたい今、その話を蹴る道理はない。

【('A`)「わかった、大丈夫だ。よろしくな」

【ξ ゚ー゚)ξ『こっちこそ頼むわよ。じゃあ今日の7時半、場所は私の家で。
        じゃあね、待ってるわよ!』

そこで会話は切られ、携帯からはツーツーと言う音が流れてきた。

ツンの家に入った事は無いが、家の前までは何度か行った事がある。
まあお金も無い事だし、なるべく稼がないとな……あれ?

('A`;)「そういえば仕事内容聞いてないな……」

ツンの両親は自営業という訳では無いらしい。
家の掃除とかなら日中やらせるだろうし……

そんな事を悩んでいる時、俺の前にある襖がガラリと開く。

( ^ω^)「おおっ、目を覚ましたかお!?」

そのニコニコ顔を見た時、俺はようやく昨日の晩の状況を思い出した。

20 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:00:38 ID:Ayhf351Q0

(; ^ω^)「ボクの父さんのせいでごめんだお!」

('A`)「あー、いや。気にしてないぜ」

調子に乗って飲んだのは俺だし、それに一宿一飯の恩がある。

( ^ω^)「とにかく、今日はゆっくりするといいお。
      朝ごはんは食べるかお?」

('A`;)「いや、胃が重いから無理だ。この分だと昼もいらないかもな……」

( ^ω^)「そういうと思ったお、ちょっと待ってるお」

部屋を出て行ったブーンは数分後、何かのお椀とスプーンを持って戻ってくる。

( ^ω^)「母さん特製のスープだお。二日酔いには効果覿面だお!」

('A`)「あー、じゃあこれくらいなら……」

トマトと唐辛子を使ったコクのある、しかしすんなりと喉を通るスープ。
それを飲んでいくうちに、段々と頭が覚醒していくのがわかる。

('A`)「ふぅ、さっぱりした。ご馳走様、ありがとな」

( ^ω^)「おっおっ、きっと母さんも喜ぶお!」

21 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:01:25 ID:Ayhf351Q0

その後俺はしばらくをブーンの家で過ごし、昼過ぎに自分の家へと帰還した。
昨日の晩に家への連絡があったみたいで、俺の母親も特に心配した様子は無かったが――


J( 'ー`)し「今度は家にブーン君を連れてきてね、絶対よ絶対」

('A`;)「はいはい、わかってます」

相当お返しをしたがっているみたいで、俺へと勢い良く詰め寄ってきた。

とりあえずツンとシャキンさんの約束を、『今日と明日、友人の家へバイトに行く』と親に了解させる。
(ツンの家という事は伏せてある。もし夜に女の子の家に行くなんて事がばれたら……)
普段は心配性な母親だけど、ちゃんとした目的があるのならとOKサインを無事に貰えた。

('A`)「さーて、夕方までゆっくりと……おや?」

携帯にショボンからのメールが入る。
内容を要約すると……

・集合場所は明日の夕方6時にバーボンハウスへ
・晩御飯はこちらの方で用意する
・服装は、少しなら汚れてもいい格好で

('A`;)「……一体何の仕事なんだ?」

まあとりあえず、今夜のツンの用事を済ませてからかな……

22 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:03:08 ID:Ayhf351Q0

     ○     ○     ○

俺は早めの晩飯を食べ終え、今はツンの家の前に居た。
二階建てで小さめの一軒家、庭には植木鉢が並べられている。

('A`)「さてっと……」

チャイムを鳴らして少し後、パタパタと足音が聞こえてきて、玄関のドアが開かれる。

そ ゚ー゚)そ「はいはーい、どちらさま?」

ドアから顔を覗かせたのは、大体二十歳過ぎほどに見える女性。
顔立ちや雰囲気から見て、明らかにツンの姉だな。
……あれ? でもツンに姉が居るって話、聞いたことが無いけど……

('A`)「あっ、すいません。鬱田ドクオといいますが、ツンさんはいらっしゃいますか?」

そ ゚ー゚)そ「ツンちゃんはちょっと前に出かけたみたいだけど。
       一度だけすぐ帰るとは言ってたけどねー……」

遅れてはいけないと少し早めに出たのだが……失敗だったか?

そ ゚ー゚)そ「どうする? ツンちゃんが帰るまで中で待つ?」

('A`)「そうですね、ではお言葉に甘えて――」


「ごめーん、お待たせー!」

23 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:03:51 ID:Ayhf351Q0

顔を向けると、向こうの路地から走ってくるツンの姿が目に入った。

ξ;゚听)ξ「ちょっと……準備に手間取ってね……」

息を軽く切らせながらこちらまで走ってきた彼女。
準備って事は仕事についてだろうが……

('A`)「いや、俺も今来た所だ」

ξ ゚听)ξ「OK、今すぐ出れるわね?」

('A`)「ま、まあ大丈夫だが……」

そ ゚ー゚)そ「お疲れー、ツンちゃん。せっかくだからゆっくりしていったら?」

ξ ゚听)ξ「いや、なるべく早く終わらせたいから……」

そ ゚ー゚)そ「ふーん、そうなの。ところで何の用事なの?
       ブーン君が好いてくれてるっていうのに、浮気とかは……」

ξ;゚听)ξ「心配しなくてもそんな関係じゃ……って、母さん!
       だからブーンはただの幼馴染だって、何度言えば――!」

あいかわらずのツンデレっぷr…………ちょっと待て、今なんて言った!?

24 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:05:05 ID:Ayhf351Q0

('A`;)「ツン。今、『母さん』って……言った?」

ξ ゚听)ξ「……あれ、もしかして聞いてなかった?」

俺の前の女性、どう見ても二十の中頃は越えてないだろう女性が口を開いた。

そ ゚ー゚)そ「はじめまして、ドクタ君。
       ツンの母親をやってます津出レイカです、よろしくね」

(゚A゚;)「嘘だあああぁぁっっ!!」

ξ;゚听)ξ「母さん、ドクタじゃなくてドクオだから。
       あとドクオ、ちょっと驚き過ぎよ」

('A`;)「えっ! 若ッ、若いよ!? えっ、何歳なの!?」

ξ ゚听)ξ「一応30の前半ね」

そ ゚ー゚)そ「ツンちゃん、あまり女性の歳をばらすものじゃありません」

('A`;)「見えない! 全然見えないし!?」

そ*゚ー゚)そ「あらあら、お世辞が上手ねぇ」

25 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:05:45 ID:Ayhf351Q0

ξ ゚听)ξ「ともかくドクオ、さっさと移動するわよ!」

先ほどこちらへ向かってきた道へと走り出すツン。
俺は慌てて後を追いかけた。

('A`)「ちょっ、待てよ!」

そ ゚ー゚)そノシ「何をするか知らないけど、気をつけるのよー」


     ○     ○     ○


ツンの後を追いかけて着いた先は、住宅街の中にある公園だった。
っていうか、この公園は……

('A`;)「なあ、ここって……」

俺の脳裏に、四月の初め頃に見たある光景が蘇る。


腕から物騒な刃物を生やして、ギラギラした目付きで笑う男。
電話ボックスの上に立つ、全身に桜色の粒子を纏った少女。
その少女の肩へと乗る、全身モフモフで人語を喋る謎の生物。

魔法少女・プラナスチェリーと初めて会った公園、訪れるのはあの日以来だ。

26 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:06:52 ID:Ayhf351Q0

夜としては早めの時間だが、公園には俺達以外の人はいない。

ξ ゚听)ξ「さーて、じゃあバイト始めますか」

('A`;)「バイトって……ここで何を?」

ξ ゚ー゚)ξ「決まってるでしょ、つまり――」

携帯を右手に持ったツンがこちらに微笑みながら話しかけてくる。
次の瞬間、その携帯が大量の桜の花弁と化し、ツンの体の周囲へと広がった。

('A`;) (はぅわっ!?)

ツンの着ていた私服が消え、ツンの艶やかな肢体が一瞬だけ見えた……ような気がする。
もっとも周りに漂う花弁で、体の大半が隠されていたのだが……

桜の花弁はツンの体へと張り付き、やがてある服装へと変化していく。
主に白を基調とし、レースの飾りが多用されたゴスロリファッション。
以前と違う点として、所々にある桜色の部分の赤みが増している様にも見える。

彼女の手に握られているのは、先端に五枚の花弁を付けたシンプルな桜色のステッキ。
こちらも違う点として、花の中心部に赤い宝石が埋め込まれていた。
そしてその花飾りの上では、器用にバランスを取る謎の生物がいる。


ξ ゚听)ξ「と、こういう訳よ」

./・ω・ ヽ「久しぶりだぽ」

27 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:07:42 ID:Ayhf351Q0

('A`*)「あ、ああ……久しぶりだな」

ξ;゚听)ξ「何顔を赤らめてるのよ……」

./・ω・ ヽ「気にするな、ぽは気にしないぽ」

ぽは体をゴム鞠のように弾ませ、ツンの肩へと飛び乗る。
しかし器用な奴だな、どんな身体構造をしてるのやら……

ξ ゚听)ξ「まあともかく……今回のバイトは、ようは魔法の被検体になってほしいわけよ。
       大丈夫、痛いようにはしないから」

('A`;)「そういう内容は早めに伝えてくれよ……まあいいけどさ」

ξ ゚听)ξ「じゃあ早速、『桜色の剛力』っと……」

ツンの構える杖の先から桜色の光が出て、俺の右腕へと纏わりついてくる。
なんだかほんのりと腕が温かいような……

('A`)「で、これは何の呪文なんだ?」

ξ ゚听)ξ「そうねぇ……ドクオ、ちょっとあのベンチを右腕で持ち上げてみて」

ツンが指差す先には、石造りの重そうなベンチがある。
地面には固定されてなさそうだが、こんな重い物を持てる訳が――

そんな俺の考えは、ベンチに手をかけた時に打ち崩された。

28 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:08:25 ID:Ayhf351Q0

('A`;)「うおっ、軽ッ!?」

まるで発泡スチロール製かと疑いたくなるほど、軽く持ち上がる石のベンチ。
一度下ろしてから今度は左手で持ち上げようとしたが、今度はビクともしない。

('A`)「この魔法は腕力強化か?」

ξ ゚听)ξ「うん、まあそんな所。一応他人にも使えるみたいね。
       ……正直かなり神経は使うけど」

ツンが言うには、自分を強化するのと、他の人を強化するのとでは魔力の消費が段違いだとか。
大体の体感だが、およそ五倍近くの魔力と神経を食うらしい。

ξ ゚听)ξ「まあそれをなるべく軽減するために、今練習してる訳だけどね。
       さて、次は――」

それからツンは、色々な呪文を俺へとかけてくる。
単純な身体強化や身体弱化に始まり、金縛りや回復魔法などの痛みの無いもの。
二人いないと効果が解らないテレパシーの様な物も試した。


そして時間はあっという間に過ぎ去り、公園にある時計が十時の針を刺した。

29 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:09:12 ID:Ayhf351Q0

ξ ゚ー゚)ξ「……ふぅっ、お疲れ様! 付き合ってくれてありがとね!」

('A`;)「いやいや、まあ気にするな」

先ほど持ち上げていたベンチに座りこみ、体の疲れを抜く俺。
結局最後の方は、強化した肉体で実戦っぽいものもやったしな……

./・ω・ ヽ「付き合ってくれてありがとうだぽ」

ξ ゚听)ξ「何か飲み物買って来るけど、希望ある?」

('A`)「あー、じゃあカフェオレで……」

ξ ゚听)ξ「OK、じゃあぽと待っててね」

もけもけ生物を俺の隣に置き、公園の出口の方へと向かうツン。

./・ω・ ヽ「今日は本当にありがとうだぽ」

('A`)「あー、いや……こっちも楽しかったしな」

./・ω・ ヽ「出来れば機会があれば、ちょくちょくツンの相手をしてほしいぽ」

('A`)「まあ時間があればやってもいいが……最近何かあったのか?」

この二ヶ月くらい様子を教えてくれなかったからな。
いつの間にか衣装も変わってるように見えるし……

30 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:09:55 ID:Ayhf351Q0

./・ω・ ヽ「それは本人に聞くべきだぽ」

('A`)「いっその事、ブーンに洗いざらい話しちゃえばいいんだよ。
    多分あいつなら喜んで相手になってくれるぜ?」

./‐ω‐;ヽ「んー……やっぱり無闇に正体を広めるのはよくないぽ」

ξ ゚听)ξ「おまたせー。何の話をしてたの?」

('A`)「いや、最近ツンに何かあったのかって話だが」

俺にカフェオレを渡したツンは、膝にぽを乗せて俺の隣へと座ってくる。

ξ ゚听)ξ「ん? あの事を聞いたの?」

('A`)「いや、全然聞いてない。よければ教えてくれ」

ξ ゚听)ξ「だいぶ話が長くなりそうだけど……いい?」

('A`)「まあ俺も気になるしな」

ξ ゚听)ξ「そうねえ、じゃあまずは6月の事から――」

31 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:10:36 ID:Ayhf351Q0


ξ ゚听)ξ「――と、まあこんな感じかな?」

('A`;)「色々苦労してるんだな……」

エニグマとのバトル、謎の仮面の人物、それにヒートとの戦い……

('A`;)「ってか、ヒートってそんな奴だったのかよ」

ξ;゚听)ξ「特に魔力で強化されている様子は無かったから……
       絶対に喧嘩はしない方がいいわよ」

マジで壁一枚ぐらいは素手でぶち抜けるほどだとか……どんだけだよ。

('A`)「ところでさ、ツン。ブーンに打ち明けて特訓相手にさせるってのはどうだ?」

ξ ゚听)ξ「考えもしなかった事を言ってくれるわね。
       私が首を縦に振ると思う?」

('A`)「ですよねー……」

ξ ゚听)ξ「まあ今日のでかなり流れが掴めたから助かったわ。
       もしかしたら、また頼む事があるかもしれないけどよろしくね」

('A`)「んー、まあたまにはな」

32 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:11:21 ID:Ayhf351Q0

ξ ゚听)ξ「さてっと、そろそろお開きにしますか。
       はい、これ。今日のバイト代ね」

ツンが俺へと、可愛らしいピンクの封筒を差し出してくる。
だが特訓の最中から、俺には一つの考えがあった。

('A`)「あー、ツン。俺それいらねーや」

ξ;゚听)ξ「えっ……?」

('A`)「今日みたいな事ならロハで請け負う、それが俺のジャスティスだ」

ξ;゚听)ξ「でも、お金に困ってるんでしょ?
       私も言い出した手前、受け取ってもらわないと――」

まあそんな簡単にはツンは折れないよな。だったら――

('A`)「じゃあ今は貰って行く! だけど勘違いするなよ!
    これは借りただけだからな! 今度返すからな!」

ツンの手から封筒を引ったくり、公園の出口へと走る俺。
しばらく固まっていた後に零れたツンの呟きは、当然俺には聞き取れなかった。


ξ;゚听)ξ「今のドクオの……何?」

./・ω・;ヽ (ツン、君がそれを言うかぽ?)

33 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:12:02 ID:Ayhf351Q0

     ○     ○     ○

そして日付が変わって次の日。
昼飯を終え部屋でgdgdしていた時、俺の携帯が鳴り響いた。

('A`)「クーからか……あー、もしもし?」

川 ゚ -゚)】『ドクオ、私だ。今大丈夫か?』

【('A`)「別に構わないが……どうした、クー?」

川 ゚ -゚)】『以前バイトをしたいと言っていただろ?
      今日叔父さんと会った時、その話をしたんだが――』

【('A`)「おっ、OK出たのか?」

川 ゚ -゚)】『ああ、ある実験のモニターになってほしいそうだ。
      大体三時間ぐらいで、給料は五千円に交通費付き。
      なるべく早いほうがいいらしいが、明日の午後とか空いてないか?』

【('A`)「まあ空いてるが……どうすればいい?」

川 ゚ -゚)】『明日の午後一時、神速駅の前にある噴水まで来てくれ。
      格好は普段着で大丈夫だ。じゃあな』

【('A`)「了解ー。ところで何のモニターな――」  プツッ ツーツーツー

……ちっ、切られたか。

34 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:12:44 ID:Ayhf351Q0

('A`)「さてっと、そろそろ家を出るかなー」

バーボンハウスへはもう何度も行ってるので、迷う事はまずありえない。
一応何があるか解らないので、俺は少し余裕を持って家を出て行く。


夏の暑い時間帯も過ぎ、太陽の勢いも少しは落ち着いてきた。
夏の夕方独特の生暖かい空気が街を包み、時折吹く風が火照った体を覚ましてくれる。
歩道に植えられた街路樹は青々とした葉を茂らせ、ミシミシと言う音と共に枝から人が落ちて――


('A`;)「ってちょっと待てえええぇぇっっ!!」

「ぐべあっ!?」

俺のすぐ真横へと落下した物体を慌てて避ける。
えっ、受け止めろって? 無理に決まってるじゃねーか。

(; ´_ゝ`)「いてててて……」

('A`;)「あ、兄者……」

( ´_ゝ`)「……おお、ドクオか。こんなところでどうした?」

……いや、それは明らかにこちらのセリフだろ。

35 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:13:26 ID:Ayhf351Q0

('A`)「いや、バイトに行く途中だが……兄者こそ何で木に登ってたんだ?」

( ´_ゝ`)「あー、俺前世ではセミだったからさ。
      ほら、前世の記憶に突き動かされる事あるだろ?」

('A`)「ふーん…………」

兄者の話を聞き流しながら、俺は街路樹の横にある建物を眺める。
四階建てのテナント、二階部分には大きな曇りガラスが見え、
ポップな字体で『女性専門入浴施設 せんとーIN』と書かれていた。

('A`)「前世の記憶ねー…………」

(; ´_ゝ`)「なっ、違うぞ、ドクオ! 俺はあくまでも前世の衝動に駆られて木を登っただけでな――」

大きな身振りを交えながら力説する兄者。その衝動で、ポケットからデジタルビデオカメラが零れ落ちる。

('A`)「兄者、これ落としたぞ」

( ´_ゝ`)「おっ、ありがとな。ともかく、曇りガラスでも角度などによっては微妙に中が見えるとか……
      そんなやましい理由は決して全くこれっぽちも全然無い!」

右手にビデオカメラを持つ兄者が力説しても、可哀相なほど説得力はゼロだ。

36 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:14:16 ID:Ayhf351Q0

('A`)「さーて、警察の番号はと――」

(; ´_ゝ`)「NOOOOOO! ウェイタミニッ!」

……お前はハロー先生かよ。

(; ´_ゝ`)「わかった! 俺の秘蔵の悟りzipやるから!」

勿論この『悟り』は、『さとり』とは読まない方である。

('A`)「犯罪者乙。それに俺は年上派だ」

(; ´_ゝ`)「虹だから犯罪ではないが……くっ、残念ながら俺はそっちの手持ちがないな」

('A`;)「じゃあお風呂を盗撮しようとするなよ……」

( ´_ゝ`)「ダカラ オレ チガウ   オフロ トウサツ スルキ マッタクナイ」

('A`)「はいはい、犯人は皆そう言うんだよねー」

(; ´_ゝ`)「だからその携帯にかけた手を離して下さいお願いだから頼んだ止めてボタン押さないで」

兄者をからかうのも楽しいが、一応この後アルバイトがあるんだよな……

('A`)「ちっ、時間だ」

( ´_ゝ`)「……ん? 何かあるのか」

37 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:14:56 ID:Ayhf351Q0

('A`)「実はカクカクヒシャヒシャニマイドリって訳で……」

( ´_ゝ`)「なるほど……タコベヤードに引っ掛ったって訳か」

('A`)「ん? 有名なのか?」

( ´_ゝ`)「ああ、かなり悪い意味でな」

('A`)「やっぱそうなのか……つーかそろそろ時間ヤバイじゃん。
    じゃあな! 犯罪はほどほどにしとけよ」

( ´_ゝ`)「……通報はしないでいいのか?」

('A`)「ぶっちゃけめんどい」

( ´_ゝ`)「ですよねー……じゃあな、バイトgngr」

('A`)「了解、言われなくてもな」

手を振る兄者を尻目に、バーボンハウスへと向かう俺。
俺を見送った後に兄者が呟いた一言を、当然俺が知る機会は無かった。



( ´_ゝ`)「まあ、ドクオの努力は無駄となる――いや、無駄にする訳だがな……」

38 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:15:43 ID:Ayhf351Q0

     ○     ○     ○

六時になるほんのちょっと前、俺は『CLOSED』の札が掛けられた扉を開ける。
ほのかな明かりの点いた店内のカウンター席では、シャキンさんが暇そうに新聞を読んでいた。

(`・ω・´)「時間ちょうどだな。ようこそ、バーボンハウスへ」

('A`)「あのー、今日はよろしくお願いします」

(`・ω・´)「まあ気楽に構えてくれ、そんな厄介な仕事では…………うん、ないはずだ。
       とりあえず腹ごしらえといこう。そこにでも座ってくつろいでいてくれ」

シャキンさんは新聞をカウンターの脇へと畳んで置き、キッチンへと移動していく。
それよりさっきの仕事の話、妙に間が空いたのが気になるが……

待つこと10分ちょっと、俺の前へ数枚の皿が差し出された。

メイン料理はグラタン。カリカリに焦げたチーズとパン粉、ホワイトソースの香りが香ばしい。
副菜は刺身が乗った海鮮サラダに、キャベツを多めに入れたコンソメスープ。
いい感じに焼かれたフランスパンが二切れと、デザートには……何だ、これ?

(`・ω・´)「知り合いから教わったアボカドのジュースだ。
       仕事の時間まではまだあるから、ゆっくり食べてくれ」

('A`)「それじゃ遠慮なく、いただきまーす」


料理は相変わらずの絶品。皿を舐めたくなるほどの美味しさだった。

39 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:16:26 ID:Ayhf351Q0

20分後、食後の紅茶を淹れたシャキンさんが俺の隣の席へと座る。

(`・ω・´)「どうだった、料理の味は?」

('A`)「どれも文句無しの美味しさでしたよ。
    ……強いて言うならデザートが重かったですね」

アボカドをミキサーしたものにチョコソースをかけたデザート。
……カロリーの事は考えないほうがいいな。

(`・ω・´)「やっぱりそうか……少し改良の余地があるかな?」

('A`)「美味しくはあるんですけどね……」

しばらく二人が紅茶をすする音が店内に流れた。

('A`)「そういえば、今日の仕事って何なんですか?」

(`・ω・´)「すまん、説明してなかったな。簡単に言えば、トラックへの荷物の積み込みだ。
       そこまで量はないし、一往復だけだから気楽にやってくれ」

('A`)「わかりました、よろしくお願いします」

40 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:17:12 ID:Ayhf351Q0

紅茶を飲み終えた俺とシャキンさんは、店の側にある駐車場まで向かった。
そこに止めてある幌付きの軽トラに乗り込み、ひたすら街中を突っ走っていく。


(`・ω・´)「…………」

('A`;)「…………」


車内に流れる音は車の振動音と、カーラジオから流れる音楽番組だけ。
非常に気まずいこの空気……やはり何か話を振るべきか?

(`・ω・´)「……そうだ、ドクオ君!」

('A`;)「あっ、はい!」

(`・ω・´)「君はキャンプは好きかい?」

('A`;)「キャ、キャンプですか……?」

先手を打たれたうえに予想外の話を切り出された事で、俺の頭は一時フリーズした。
キャンプ……小学校の課外学習でしか経験した事無いな。

('A`;)「あまり行った事は無いですけど……」

(`・ω・´)「そ、そうか……」

……再び訪れる沈黙。確実にさっきより重くなっている。

41 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:17:54 ID:Ayhf351Q0

しばらく経った頃、シャキンさんが再び口を開いた。

(`・ω・´)「実は近いうちに、ショボンと行こうと考えているんだ」

('A`)「えーっと……キャンプにですか?」

(`・ω・´)「うむ。それでだが、君達もよければ一緒に来て欲しい」

('A`)「君達って事は……ブーンやツンとかもですか?」

(`・ω・´)「そうだ。あともう一人、あの落ち着いた女の子――」

('A`)「ああ、クーですね」

(`・ω・´)「そう、彼女もだ。君達四人は特にショボンと仲良くしているだろ?
       そのお礼と言うか……まあとにかく、一緒に楽しもうという事だ」

('A`)「いいですね、みんな喜ぶと思いますよ!」

(`・ω・´)「そうか。日程は来週の火曜辺りを予定しているが……まあショボンに連絡させるよ」

('A`)「はい、よろしくお願いします!」

固かった車内の空気も解け、それから適当な雑談が始まった。
街のネオンとラジオからの音楽番組を背景に、車は国道を突き進む。

42 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:19:10 ID:Ayhf351Q0

およそ一時間後、美府市からは離れた町にある海沿いの倉庫群。
連なる倉庫の一つの前でトラックは停車した。

(`・ω・´)「しばらく待っていてくれ、手伝いが必要になったら合図する」

そう言い残してシャキンさんはトラックを降り、近くにある倉庫へと入っていったのだが――

('A`;) (しかし夜の倉庫群ってブキミだな……)

所々にポツポツとある外灯が頼りない灯りを放つ以外に、辺りに光源は無い。
フロントガラスから見える景色は闇の比重が大きく、波が防波堤へと当たる音だけが聞こえてくる。

数分後、倉庫から出てきたシャキンさんが手招きをしてきた。
そして俺は倉庫へと足を踏み入れ――この仕事を請けた事を少し後悔する事になる。


(C`ハ´)「ホニャララララアルアル」

(`・ω・´)「ホニャホニャホニャアルアル」

<K`Д´>「マンギョンボンゴーニダニダ」

(`・ω・´)「テコンドーニダニダ」

……この多国籍な方々はどなたですか?

43 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:19:51 ID:Ayhf351Q0

しばらく何かを話し込んでいたシャキンさんがこちらを向き、倉庫の一角を指差した。

(`・ω・´)「ドクオ君、そこの段ボールを車に積んでくれ。割れ物だから丁重にな」

('A`;)「わ、わかりました……」

外国語がかかれたそれを手に取ると、ずっしりとした重さが伝わってくる。
何かやばい物じゃないだろーな……?

(C`ハ´)「ワタシ テツダウ アルアル」

('A`;)「あっ、ありがとうございます……」

他国籍な人にも手伝ってもらい、20はあるそれらをなんとか荷台へと積み終える。
シャキンさんはもう一人としばらく話し込んだ後、俺が荷物を積み終わる直前までどこかへと消えていた。

(`・ω・´)「お疲れだな。じゃあ帰るとするか」

('A`;)「あ、はい…………」

……行きとは打って変わり、帰りの車内の空気は非常に重い。
何も聞けない悶々とした時間が過ぎていく。

44 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:20:41 ID:Ayhf351Q0

しばらく走った頃だ、シャキンさんの車が急に左へとウインカーを出した。
バーボンハウスへ行くにはここで曲がる必要は無いので、どこかへ寄る用事があるのか?

('A`)「あのー、何か用事が――」

(`・ω・´)「すまない、ちょっと待ってくれ」

真剣な顔で返事を返したシャキンさんは、次に妙な行動に出た。
道を少し走った車は、再び左へと曲がる。
同じ事をもう二度ほど繰り返し、車はぐるりと回って元の道へと戻る事になった。

('A`;)「どうしたんですか?」

(`・ω・´)「……つけられているな」

('A`;)「つけられるって……尾行ですか!?」

(`・ω・´)「ああ」

('A`;)「な、なんでそんな事に……」

(`・ω・´)「さあ? 心当たりはないな」

('A`;)「とにかく、どうするんですか!?」

慌てる俺に手の平を見せ、シャキンさんは落ち着いた声で問いかけてきた。

(`・ω・´)「ところでドクオ君、何か飲みたくないか?」

45 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:21:23 ID:Ayhf351Q0

     ○     ○     ○

国道沿いにあるコンビニ、その駐車場の一番角へと軽トラは停車する。
俺は落ち着き払った表情で店内へと入り、雑誌コーナーへと移動した。

('A`;) (よし、ここまでは計画通り。あとは……)

適当な週刊誌を立ち読みするふりをして、目線を軽トラへと送る。


  (`・ω・´)『いいか、ドクオ君。コンビニに入ったら適当に時間を潰していてくれ。
         特に何もなければ、この千円で好きな買い物をして出てきてほしい。
         もし異常事態になれば……悪いが上手く一人で帰ってくれ』

  ('A`;)『解りましたけど……異常ってのはどうやって判断すれば……?』

  (`・ω・´)『わかった、危険な時はクラクションを二回鳴らそう。それで判断してくれ。
         逆に大丈夫ならライトを二回点灯させる。大丈夫か?』


コンビニに着く直前にそんな会話をして、計画通りにこうしてコンビニ内にいる。
俺がコンビニに入ってすぐ後、シャキンさんの隣に止まった車から男が二人出てきた。
二人はシャキンさんのそばへと行き、何かを話し込んでいる様に見えるが……

('A`;) (ん? 男が懐から何か黒いものを…… まさか、拳銃!?)

46 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:22:47 ID:Ayhf351Q0

俺の不安がピークに達した時、軽トラのライトが眩しく輝いた。
二回の点滅、つまりは安全のサイン。

('A`;) (ふぅっ、早とちりか……考えてみればそんな非常識な事、あるわけ無いよな)

……友人の一人が魔法少女である事には目を瞑っておこう。


とりあえずコーヒーを二本買い、軽トラへと戻る俺。
男の片方はトラックから降りたシャキンさんと話し、もう一人は荷台を漁っている。

('A`)「シャキンさん、どうしたんですか?」

(`・ω・´)「いやいや、警察の人が急に来てね――」

( ゚д゚ )「ん? 息子さんですか?」

(`・ω・´)「いや、息子の知り合いだ。今日は手伝いに来てもらっている」

シャキンさんの横にいる、線が細いがどことなく只ならぬ雰囲気を持つ男。
彼が一度敬礼をして、こちらへと話しかけようとしてくる。って、あれ……?

('A`;)「あのー……もしかしてVIP高校の先生ですか?」

授業を受けた事は無いが、何度か高校の廊下で見かけた事のある顔みたいだけど……

( ゚д゚ )「……ああ、もしかしてVIP高で働いてる弟と勘違いしてるのか? 
     私は彼の兄、特捜課の者だ。実は今ある密輸組織を追っていてな……」

47 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:23:28 ID:Ayhf351Q0

('A`;)「み、密輸……ですか?」

( ゚д゚ )「ああ。念のため港から追わせてもらったよ」

「湖池警視ー! チェック終わりました!」

荷台から響く若い男の声。湖池と呼ばれた警視は睨みつけるような目付きのまま応対する。

( ゚д゚ )「おう、結果はどうだった?」

「持ち主の報告通り、酒瓶ばっかりですね。他に怪しい所は無いです。
 どうします? 一応ビンを開けて中身を見ますか?」

( ゚д゚ )「……葉本さん、何本か開けていいですか?」

(`・ω・´)「一本四千円近くするんだが……」

( ゚д゚ )「わかりました。では四本ほど買い取りましょう」

財布から万札を二枚出し、シャキンさんへと渡す警視。中々気前がいいな。

( ゚д゚ )「という訳だ。四本ほどより抜いてくれ」

「わかりました」

そして数分後、荷台から声が返ってくる。

48 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:24:08 ID:Ayhf351Q0

「警視、これ本当に只の酒ですね」

( ゚д゚ )「……本当なのか?」

「ええ、飲みなれているから解りますよ。とても美味しい酒、それだけですねwww」

(;゚д゚ )「おい、お前……まさか飲んでるのか?」

「あっ、いや……適切な捜査の一環として……」

( ゚д゚ )「……来月の給与査定、心待ちにしておけよ」

「そんなぁ……酷いですよ、警視〜」

(;゚д゚ )「すいません、こちらの早とちりのようですね。お騒がせしました」

(`・ω・´)「いえいえ。街の平和を守るため、これからも頑張ってください」

( ゚д゚ )「はっ! 協力、感謝します!」

荷台から人を引き連れ、警察の方々は車へと戻っていく。
部下の顔が赤く腫れ上がっていたのは見間違いではないだろう。

(`・ω・´)「さーて、こっちも帰るとするか」

('A`)「あっ、わかりました」

49 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:24:56 ID:Ayhf351Q0

そこから後の話は早かった。
元の駐車場まで戻った軽トラから荷物を降ろし、近くの倉庫まで運び込む。
全てを終えた頃には、夜の11時を回っていた。

折角だからという事で、シャキンさんに家の近くまで送ってもらう。
誰もいない狭い駐車場、そこでシャキンさんと別れの会話をする。

(`・ω・´)「お疲れ様。助かったよ」

('A`)「いえいえ……」

まあ時間の半分以上は助手席に座るだけだったしな……
今まででは一番楽な部類かな?

(`・ω・´)「はい、これが給料だ」

('A`)「ありがとうございます」

やけに薄い封筒を渡してくるシャキンさん。
千円って事は無いだろうし……五千円札だと嬉しいんだがな。

('A`)「では失礼します」

(`・ω・´)「例のキャンプの話、よければ他の人にも伝えてくれ」

('A`)「解りました。ではまた!」

50 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:25:40 ID:Ayhf351Q0

     *     *     *

家へと帰るドクオを見守り、手を振るバーボンハウスのマスター。
彼はドクオが視界から消えたのを確認すると、大きくため息をつきながら呟きをもらした。

(`・ω・´)「やれやれ、素直な子だったな……」

軽トラまで戻ったシャキンは、車の下へと手を伸ばす。
しばらくその辺りを探った彼は、ゴトリという音と共に四角い物を取り出した。

表面を黒い光沢に覆われた、金属製のアタッシュケース。
見た目以上に重そうなそれを抱え、軽トラの運転席へと乗り込む。

(`・ω・´)「……だから、俺みたいな卑怯な大人にはなってくれるなよ」


軽トラが走り去った公園には、もう人の姿は無かった。

51 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:27:11 ID:Ayhf351Q0

     △     △     △

('A`;) (しかし昨日のあれ、どういう事だったんだろう……)

今俺は、電車の中で揺られていた。
時間はちょうど正午を過ぎた辺り、客席にはまばらに人が座っている。
俺の目的地の神速駅まではもう少し。

……いや、それよりも――

('A`;) (やっぱヤバイ仕事だったのかなー……?)


昨日の晩、意気揚々と家に帰り、遅めの風呂を浴びた俺。
寝る前、忘れない内に貰った封筒の中身を確認しておこうとしたのだが――

  (゚A゚;)『い、一万五千円……!?』

茶色がかった二種類の札。何度見直しても一万と五千円。
思わず透かしなどを確認してしまったが、よっぽど精巧な偽札でない限りは本物だろう。


('A`;) (やっぱ封筒を間違えたのか……?
     とにかくショボンと連絡を取って、確認を――)

『まもなくー神速駅ー、神速駅ー。降り口は左側ー ……』

('A`) (おっと、とりあえず目の前の仕事を終わらせないとな)

52 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:27:54 ID:Ayhf351Q0

数回来た記憶を頼りに、駅前へと向かう。
記憶通りの場所に待ち合わせ場所である噴水があり、既にそこにはクーの姿があった。
待ち合わせの時間まではまだあるが、とりあえず声をかけようと――


川 ゚ -゚)  「くっ、最後のサファリボールなんだぞ。
つ[GBA]  頼むっ、おとなしく捕まってくれっ!」  ポチポチポチポチポチ!


('A`;)「…………」

川 ゚ -゚)  「よし! いけっ、このまま……ぬがあああああぁぁぁっっ!」
つ[GBA]   ポチポチポッ……

('A`;)「…………」

川  - )  「あとちょっとだったのに……せっかくの色違いが……」
つ[GBA]

('A`;)「…………」

川 ゚ -゚)「ん? ドクオか?」

('A`;)「今の、何?」

川 ゚ -゚)「…………あまりにも暇だったのでな、おとなしくゲームを嗜んでいたところだ」

今すぐおとなしいって言葉を辞書で引け。

53 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:28:36 ID:Ayhf351Q0

川 ゚ -゚)「まあいい、そろそろ行くとするか」

('A`:)「……ああ、そうだな」

さくっと立ち上がり、バス停へと向かうクー。
……いかん、ツッコミの機会を逃してしまった。

ちょうど到着したバスに乗り込み、俺達は適当な席へと着く。

川 ゚ -゚)「一週間ぶりだったな。どうだ、バイトの調子は?」

('A`)「まあ順調だな」

川 ゚ -゚)「どこで働いてるんだ?」

('A`)「とりあえずはブーン、ツン、あとバーボンハウスでだな。
    ブーンは実家の酒屋の手伝いで、ツンは……」

……やべ、そういやツンのバイト内容言えないじゃん。

川 ゚ -゚)「ん? ツンがどうしたんだ?」

('A`;)「……あー、こっちも親戚の商店の手伝いだ」

川 ゚ -゚)「ふーん、そうか」

54 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:29:19 ID:Ayhf351Q0

('A`)「それで、昨日のバイトなんだが――」

俺は思い切って、昨日の事を洗いざらいクーへと話してみた。

川 ゚ -゚)「んー、それは……でも中身はちゃんと酒だったんだろ?」

('A`)「少なくとも外見上はそうだったし、警察の人もそう言ってたがな」

川 ゚ -゚)「二つほど思いついたが……夢のある話と無い話、どちらが聞きたい?」

('A`;)「それは……じゃあ夢がある話から」


川 ゚ -゚)「実はシャキンさんは本当に密貿易に関っている。ドクオに渡したお金は口止め料も込みだ。
     酒に偽装した薬品……そうだな、麻薬か何かを仕入れ、こっそり販売をしている。
     大量の酒に紛らわせてな。 ……まあ非常に失礼な想像だが」


('A`;)「……本当に失礼な想像だな」

というか、別に夢がある話には聞こえない。

川 ゚ -゚)「まあ彼の人柄からして、まず万に一つもありえないだろう」

('A`)「まあそうだな。ちなみに夢の無い話は?」

川 ゚ -゚)「シャキンさんは実は大金持ち、もしくは本業で何か稼げる仕事をしている。
     バーボンハウスはあくまで趣味で開いている店で、儲けは度外視だ」

55 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:30:03 ID:Ayhf351Q0

('A`)「うんうん、それでそれで?」

川 ゚ -゚)「持っている金が多い分、渡す額も常識外の価格になった。
     そんな所でどうだ?」

……明らかにこっちの方が夢があるだろ。

バスの窓からは、大きな敷地を持つ会社が見えてくる。
一際でかいビルに書かれたアルファベットは、『JPG』の三文字。


     ○     ○     ○

从‐[゚]∀[゚]ハノ「やーやー久しぶりだね、君。 ……あれ? クーにゃん?」

川 ゚ -゚)「クーにゃん言うな死ね。何だ?」

この国最大手である総合グループの一つ、『JPG』。その建物の中に入って歩く事数分。
部屋の一つに入った俺達を待っていたのは、白衣を着たクーの叔父さんだった。
名前は確か……植岡だったはず。JPG勤めとは知らなかったがな。

从;[゚]∀[゚]ハ「アルバイトにはあのツンちゃんって娘も連れてくるって話じゃ――」

川 ゚ -゚)「釣りですた」

从‐[ ]∀[ ]ハ「つ、釣り……」

('A`;)「あ、あのー……」

56 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:30:45 ID:Ayhf351Q0

从‐[ ]∀[ ]ハ「これだけ騙されたのは昨夜以来だよ。
        『15歳の♀だが<a href="#500">>>500</a>行ったらπ画像を上げる』。あれだけkskしたのに――」

割と最近だな。そして予想以上のダメっぷりだ。

川 ゚ -゚)「叔父さん、早くバイトの話を始めてくれ」

从‐[゚]∀[゚]ハ「まさかアップルパイの画像を上げてくるとは……
        ああすまない、仕事の話だね。早速始めよう」

手招きされて向かった先は、歯医者とかに置いてありそうな椅子に、モニターがおいてある机。
周りには実験用だろう機械が並び、部屋の端にある別のパソコンへと繋がっている。

从‐[゚]∀[゚]ハ「まずはここに座って……よし、ちょっと待ってて。
        これでおでこの辺りを綺麗にしてくれ」

濡れタオルを渡されたので、それで汗ばんでいた肌を拭う。
次に植岡さんは電線の付いたパッドと、チューブに入ったジェルの様な物を取り出した。

从‐[゚]∀[゚]ハ「はいはーい、次はこれを塗って、それで――」

思ってたよりはべた付かないジェルを塗った場所に、植岡さんは手際よくコード付きのパッドを貼り付ける。
全ての準備が終わると、植岡さんは壁際のパソコンへと移動した。

57 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:31:49 ID:Ayhf351Q0

从‐[゚]∀[゚]ハ「どう? 痛くない? OK、じゃあとっとと始めるよ」

('A`;) (まだ何も喋ってないけど……)

モニターの電気が灯り、安っぽい3Dで描かれた映像が映し出される。
一般的な家庭の一室、その真ん中に男が立ち竦んでいた。

从‐[゚]∀[゚]ハ「見えてるかい?」

('A`)「ええ、部屋の真ん中に人が立ってるのが見えますが……」

从‐[゚]∀[゚]ハ「OK、じゃあ動かしてみて」

……? 動かすって言われても、手元にはコントローラーやキーボードの類は――
そんな事を考えた時、画面の真ん中にいる人がピクリと動いた。

('A`;)「えっ……?」

画面の人物を注視するたびに、彼はピクピクと全身を振るわせる。


从‐[゚]∀[゚]ハ「そういえば今回の実験を説明してなかったね。
        『思考型コントローラー』とでも言えばいいかな?」

試しに頭の中で『前に進む』ように念じてみる。
それとほぼ同時、画面の男が室内を歩き出した。

58 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:32:30 ID:Ayhf351Q0

从‐[゚]∀[゚]ハ「脳波から思考パターンを読み取ってそれを反映させる……
        まあまだ単純な動きしか無理だけどね」

右を向くように念じると、画面の視点もぐるりと変わった。

('∀`*) (すっげー! 今の科学ってこんな事が出来るのか!?)

从‐[゚]∀[゚]ハ「じゃあまずは……部屋、というか家から出てくれ」

('A`*)「はいっ!」


このプログラムは割りと綿密に組まれているようだ。
ただ部屋を出るだけでも『ドアノブを捻る』『ドアを開く』という思考を正確にしないといけない。
普段無意識にやっている事を意識的にやる……言葉にすると単純だが、実際には中々難しいな。


从‐[゚]∀[゚]ハ「よし、家を出たね。じゃあ次は……この矢印の方へ向かってもらえるかい?」

玄関を開けると、そこはありふれた住宅街だった。
画面の上部に、赤い矢印と数字が表示される。
8000っていうのは……多分目的地までの距離なんだろうな。

从‐[゚]∀[゚]ハ「あー、そうそう。街中にある乗り物には大抵乗れるから。
        動かし方は大体の感覚で。いちいち『アクセルを踏む』とか考えなくていいからね」

目的地へ向かって、俺は『走る』ように命じる。
実際に走るのとあまり変わらないスピードで、男は走り出した。 が……

59 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:33:12 ID:Ayhf351Q0

('A`;) (やっぱ8000ってのはメートルなのか……?)

走り出してもほとんど減らない数値。当たり前だがスピードにも限界があるようだし……

('A`)「おっ、あれは……乗れます?」

しばらく走っていると、道の端に自転車が止まってるのが目に入る。

从‐[゚]∀[゚]ハ「勿論だよ。別にバランスを気にする必要はないから」

早速自転車に近づき、またがる様に思考を働かせた。

('A`) (おっ、凄い! 流石文明の利器だな)

走るのとは段違いのスピードで進む自転車。
スピードをあまりに下げ過ぎると地面に片足をつくあたり、CGの芸が細かいな。

住宅街を抜け、大通りへと差し掛かる。
明らかに見つけてくれと言わんばかりに路駐された自動車。これは……

('A`*)「……いいですか?」

从‐[゚]∀[゚]ハ「一応死なない様には出来てるけど、安全運転でね」

車に乗ると、アングルが少し後ろへと下がった。
運転なんてした事は無いが、ゲーム感覚でこうやれば……

60 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:33:58 ID:Ayhf351Q0

('A`) (OKOK、単純だな)

从;[゚]∀[゚]ハ「ガードレールに当たってガリガリしてるからね。一応ちゃんと道を走って」

('A`;)「あっ、すいません……」

一度試しに関係ない方向へと向かうため交差点を曲がろうとしたが、見えない壁に阻まれた。
流石にそこまでは作りこんでないか……

車は市街地の端を抜けるバイパスへと侵入し、誰もいないその道路をかっ飛ばす。
残り距離が1000を切った頃、目の前に海が見えてきた。
どうやらこのまま道路を進むと、橋で海を渡って小島へと着くようだな。

('A`)「……あれ?」

残り100メートル、目の前に見えてきた白い塀には見覚えがあるロゴが。
JPG社の施設、その駐車場に入った所で数値がゼロになった。

从‐[゚]∀[゚]ハ「OK、じゃあ今度はここまで来てねー」

再び矢印と、200という数字が表示される。
その先にあるのは……滑走路?
とりあえずそこまで歩いていき、目の前に現れたのは――

('A`;)「……戦闘機?」

从‐[゚]∀[゚]ハ「さーて、ここからがこの実験の本番だよー」

61 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:34:41 ID:Ayhf351Q0

漆黒のボディー、鋭角的なデザイン。
翼の下にはミサイルハッチが取り付けられ、機体の先端には機銃がぎらついている。

('A`)「えーっと、これを動かすんですか?」

从‐[゚]∀[゚]ハ「うん、そう。じゃあ簡単な飛ばし方を説明するね。
        基本は今までと一緒。ただ高度が加わるのと、停止が出来ないのは注意して。
        とりあえず乗って、飛ばしてみてくれ」

('A`)「了解!」

早速飛行機へと乗り込む。今までの視点とは違い、実際に中から目視したようなものへと変わる。
それとともに画面のあちこちにウインドウが開き、様々なデータが表示された。

从‐[゚]∀[゚]ハ「OK、じゃあサクッと説明するね。ますは画面上部真ん中の数字、これは高度計と速度計。
        その右側にある二つの四角いのはレーダー。敵は黄色、ミサイルとかは赤で表示される。
        その下のは武装、これは後から説明するよ。そして画面真ん中の模様は水平器で――」

('A`)(正直よくわからないが……覚えなくても何とかなるかな?)

从‐[゚]∀[゚]ハ「まあとりあえず飛ばしてみよう。
        滑走路を突っ走って、速度計の色が緑に変わったら飛ぶように念じてくれ」

('A`*)「わかりました!」

走り始めた飛行機は段々とスピードを上げていき、やがて速度を示す数字が赤から緑へと変わる。
俺は飛行機を浮かべるように念じ―― 漆黒の戦闘機は重力から解き放たれた。

62 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:35:23 ID:Ayhf351Q0

从‐[゚]∀[゚]ハ「とりあえず高度を3000まで上げてね。そしたら自由に動かしていいから」

言われた通りに数字が突破するまでひたすら上昇し、それからしばらく水平飛行をしてみる。
右旋回、左旋回、上昇、下降、急反転、宙返り……

('A`*) (やべぇ、楽しすぎる!)

手足と言っても過言では無いほど思い通りに動く機体。
気分はすでにエースパイロットだ。

从‐[゚]∀[゚]ハ「OK、操縦には慣れたようだね。じゃあお楽しみの攻撃といこうか。
        まずはターゲットを出すからちょっと待っててくれ」

画面のレーダーに黄色い点が幾つか浮かび上がる。
視界の端、青い空の一角に赤い気球が見えた。

从‐[゚]∀[゚]ハ「攻撃用のウェポンは二種類、ミサイルと機銃だ。
        ミサイルは誘導型だが弾数が六発のみ。
        機銃はそうそう弾切れにはならないけど、誘導性は無いからね」

目標である気球、その一つを正面へと捕らえる。
ミサイルを射出するイメージを取り……

('A`)「いっけえ!」

白煙を上げ、一体のミサイルが気球目掛けて飛んでいく。
接触と同時に爆発が起き、気球は煙を上げながら落下していった。

63 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:36:15 ID:Ayhf351Q0

その後もミサイルと機銃を駆使し、計八体の目標を撃ち落す。
一回目標にぶつかりそうになった事以外は、それといったトラブルも無かった。

从‐[゚]∀[゚]ハ「いーじゃん、いーじゃん! じゃあステップアップだ」

レーダーの端から、こちらへと向かってくる三つの点。
やがて視界にこちらの機体とよく似た戦闘機が現れ、こちらの左右を通過していった。

从‐[゚]∀[゚]ハ「とりあえず補給しておくから、次は動く目標を狙ってくれ。
        あ、戦闘中には当然補給が無いから、ミサイルの残弾には注意して」

('A`)「わかりました、始めます!」

まず機体を反転させ、最初に目に映った右端にいる機体を追いかけた。
機体を正面にとらえ、現れたマーカーが赤くなったのを見計らい、ミサイルを撃ち込む。
ミサイルは蛇行しながら目標を追いかけ――

('A`;)「なっ!?」

標的に当たる寸前、戦闘機の後ろから大量の白煙を上げる何かが打ち出される。
ミサイルはその白煙へと方向を変え、何も無い空中で虚しく爆散した。

从‐[゚]∀[゚]ハ「あー、そうそう。標的にはフレアが搭載されているからね」

つまりはミサイルを回避するオトリか……ってかそんな事は先に教えてくれ!

64 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:36:59 ID:Ayhf351Q0

('A`:)「くっ、どうすれば……」

機銃で狙おうにも、ここまで動きが速い相手には……

从‐[゚]∀[゚]ハ「まあ僕が言えるのは、『追いかけるのgngr』って事だけだね」

('A`;)「ちくしょおおおおぉぉっっっ!!」


相手を必死で追いかけ機銃をバラ撒く事20分、何とか三機全てを撃ち落とした。

( A ;)「つ、疲れた……」

从‐[゚]∀[゚]ハ「お疲れー、少し休憩してきなよ。クーにゃん、これでしばらくお茶でも飲んできて」

川 ゚ -゚)「ん、わかった。おじさんはどうする?」

从‐[゚]∀[゚]ハ「取ったデータの整理があるからここにいるよ。帰りにいつものコーヒー買ってきてね」

川 ゚ -゚)「わかった。あと次クーにゃん言ったら飛び蹴りだからな」

从‐[゚]∀[゚]ハ「はははっ、クーにゃんも冗談を―― ぐはっ!」

綺麗な回し蹴りがわき腹へとめり込む。あれは相当痛そうだな。

川 ゚ -゚)「じゃあな。行くぞ、ドクオ」

65 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:37:44 ID:Ayhf351Q0

     ○     ○     ○

クーに連れられて行った先は、社内にあるカフェテラス。
俺はワッフルセット、クーはケーキセットを注文し、窓際の席へと着いた。

川 ゚ -゚)「ほら、私の自慢の『ピカっち』だ。野生産だが、ぼうとこすばの3Vなんだぞ」

席に着いた俺に対し、自慢そうにGBAの画面を見せるクー。
画面には黄色いネズミの姿が写っていた。

('A`;)「あー、それは良かったな」

……クーというものがなんだかよくわからない。

川 ゚ -゚)「それより大変そうだったな、さっきの戦闘」

('A`;)「だってミサイル使えないんだぜ? ああするしか――」

川 ゚ -゚)「ある程度近づけば、フレアを使われる前に撃ち落せる。わからなかったか?」

('A`)「んな事わかんねーよ……」

川 ゚ -゚)「まあ帰ってからの続きを楽しみにしておく事だな」

そう言いながら俺の皿にあるワッフルの一切れを掻っ攫うクー。
もう突っ込むのもめんどくさい……

66 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:38:35 ID:Ayhf351Q0

二人ともお菓子を食べ終え、飲み物も半分を切った頃だ。
俺達の姿を見て、声をかけてくる人物がいた。

( 谷)「……おや、ドクオじゃないか」

ぴっしりと全身をスーツで固め、くちひげを蓄えた中年過ぎの男性。
その落ち着いた態度からは、どことなく紳士的な空気を漂わせて――いや、こんな説明はめんどいな。

('A`;)「なっ……!? なんでここに……」

川 ゚ -゚)「ドクオ、知り合いなのか?」

( 谷)「おやおや、なかなか利発そうな女性ではないか。まさかドクオの彼女かい?」

川 ゚ -゚)「いえ、違います。ただの友人です」

……ここまでキッパリ否定されると、心に刺さるものがある。
それはともかく――

('A`;)「いきなり何を言ってるんだよ、オヤジ!」

( 谷)「息子がこんな綺麗な子と話している……親としては気になるのが当然だ」

川 ゚ -゚)「……もしかして、ドクオのお父さんですか?」

( 谷)「ああ、そのとおりだ。ウチの息子が世話になってるようだね」

67 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:39:15 ID:Ayhf351Q0

川 ゚ -゚)「いえいえ、こちらこそお世話になっています」

( 谷)「いや、それにしても綺麗なお嬢さんだな。
    これからもウチの息子と仲良くしてくれ」

川 ゚ -゚)「はい……」

どうした? 何かクーの顔が少し赤みがかっている気が……

('A`)「それよりさ、父さん。何でここにいるの?」

実は親父もJPG務めだが、美府市にある支社に通っているはずだ。

( 谷)「こちらにある部署に呼び出されてな。
    待ち合わせの時間まで社内を見学していた所だ。
    ドクオはどうしてここにいるんだ?」

('A`)「あー、クーからバイトに誘われてな」

( 谷)「ふーん、そうか……クー?」

川 ゚ -゚)「あっ、砂緒クーといいます。よろしく」

( 谷)「砂緒クー……砂緒……まさかあの十年前の――
    あっ、いや、すまない。忘れてくれ」

ん? 何か聞き捨てならない言葉が……?

68 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:39:57 ID:Ayhf351Q0

('A`;)「親父、ちょっと今の――」

( 谷)「ん? すまない、時間が来てしまったようだな。
    じゃあな、ドクオ。クーさんもまたな」

気になる言葉を残して、親父はカフェを去っていった。

('A`)「十年前って……」

川 ゚ -゚)「ドクオには関係ない話だ。私たちもそろそろ戻るぞ」

トレイを持ち返却口へと進むクー。
いつも以上に冷静……というよりは冷たい口調だ。
しかし十年前か……今度こっそり調べてみるかな。


     ○     ○     ○

从‐[゚]∀[゚]ハ「やーやー、お帰り」

川 ゚ -゚)「ほれ、コーヒーだ」

从‐[゚]∀[゚]ハ「ありがとねー。じゃあ続き、いこっか?」

再び電極を頭に付け、先ほどの椅子へと戻る。
画面には相変わらず空を飛ぶ戦闘機。

从‐[゚]∀[゚]ハ「じゃあ最後のステップ、『実戦』をやっちゃいますか!」

69 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:40:40 ID:Ayhf351Q0

('A`;)「じ、実戦……」

从‐[゚]∀[゚]ハ「大丈夫大丈夫、気楽に構えなよ。
        その前にフレアについて説明しとくね」

画面を見てみると、武装が一つ増えている。

从‐[゚]∀[゚]ハ「フレアってのは、まあダミー装置みたいなものだね。
        誘導型ミサイルに狙われた時、これをバラ撒けば回避できるって事さ。
        弾数は六回分。使う時はミサイルや機銃を使う時と同じ要領でね」

武装が三つか……まあ落ち着いてやれば大丈夫だろ。

从‐[゚]∀[゚]ハ「注意点は二つ。まずフレアの有効時間は射出後一秒から六秒にかけての五秒間って事。
        あとミサイルは機体とフレアの近い方を狙うから、撒いたらすぐ離れる事。
        ……まあ習うより慣れろって事で、早速やっちゃいましょ!」

画面は相変わらずの青空。眼下には広い海が広がり、右のほうには都会的な街並みが見える。
レーダーに突然、自機へと迫る赤い光点が現れた。
速度は戦闘機より速く、後方から一直線にこちらへと迫ってくる。

从‐[゚]∀[゚]ハ「まずはフレアの練習からね」

('A`;) (これがミサイル! よーし……)

赤い光点が自分に重なる時を狙い、『フレア』と脳内で強く念じ――

画面の中の機体が爆発、空中で砕け散った。

70 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:41:22 ID:Ayhf351Q0

('A`;)「……あれ?」

从‐[゚]∀[゚]ハ「あー、タイミングが遅いよー。もうちょい早めに」

再び画面へと機体が現れる。そして数秒後、同じ方向から迫ってくる赤い点が一つ。
五秒は持続するって言ってたから、このくらいのタイミングで――

('A`)「よしっ!」

从‐[゚]∀[゚]ハ「OK、上出来! もうちょいなら早めに撒いてもいいから。
        じゃあ実戦開始! 最初は一対一からね」

数秒後、レーダーの右端に光点が映る。
機体をそちらに向け、黒い黒点を正面へと捕らえた。

('A`) 「(よし、まずは――) ッ!? いきなりかよ!」

早速こちらへと迫るミサイル。こちらがフレアを出し回避する間に、敵機は左方を通り過ぎて行った。

('A`) (『空戦の基本は相手の後ろを取る事』 ……と、昔アイツが言ってたな)

中学時代の友人の言葉を思い出し、機体をぐるりと後ろへと向けた。
向こうの機体もこちらの後ろを取ろうとしているようで、機首をこちらへと向けている。
そのまま両者は後ろを取ろうとし、結果ぐるぐると同じ場所で回ることになった。

('A`;)「(このままじゃ埒が……)んなろっ!」

時々回転を変えたり変えられたり、追いかけっこはしばらく続いていく。

71 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:42:04 ID:Ayhf351Q0

('A`;) (ぐっ…………一回試しにやってみるか!?)

俺は機体を転回させるのを止め、しばらく直進する。
それを待ち構えてたかのように、こちらの後を追い始める敵機。
赤い光点が二つに分かれ、一つがこちらへと猛然と迫る。

('A`)「これでっ、どうだぁっ!?」

俺はフレアを撒くと同時、急上昇するように強く願う。
機首を上げはじめた機体、直上を向いても動きはなお止まらず、更に機体は傾いていく。
やがて機体は背面飛行の型を取るが、それでもまだ動きは止まらない。

フレアにミサイルが命中し、爆炎が広がるのが頭上に少しだけ映る。
やがて機体は急降下、そして元の水平軌道まで戻った。
まるでバク宙でもするかの様な軌跡を描いた戦闘機。その眼前にあるのは、敵機の後姿。

('A`)「いっけえええええぇぇぇっっ!!」

从‐[゚]∀[゚]ハ「ほぉっ、やるねぇ!」

フレアを撒く間も無く、敵機はミサイルを受けて砕け散った。


从‐[゚]∀[゚]ハ「よし、じゃあ次は――ん? ちょっと待っててね」

植岡さんはマイク付きのヘッドホンを取り出し、誰かと会話を始める。

从‐[゚]∀[゚]ハ「あー……いや、まだそれは早いと……えっ、でも―― わ、解ったよ!」

72 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:42:45 ID:Ayhf351Q0

会話を終えた植岡さんは大きなため息を吐いたあと、俺に言葉をかける。

从‐[゚]∀[゚]ハ「朗報だよ。ウチのスタッフ一番のエースが相手をしたいだってさ」

('A`;)「エース?」

从‐[゚]∀[゚]ハ「そ、エース。隣の部屋から相手するだってさ。
        しかし相当なハンデだね、これは……まあ当然か」

('A`)「ん? ハンデ付きですか?」

从‐[゚]∀[゚]ハ「無かったらあっという間に終わるからね。内容を聞くかい? まず相手のフレアはゼロ。
        しかも君の機体の体力が六機分に、つまりミサイルにも五回まで耐えられる。
        早い話、向こうは全てのミサイルを避け、全てのミサイルを君へと打ち込まないと駄目なのさ」

('A`;)「それは……相当なハンデですね」

从‐[゚]∀[゚]ハ「……まあそれでも僕は、君が負けると思うけどね」

……よし、絶対勝ってやる。

しばらくして、正面から迫る機体が見えてきた。

从‐[゚]∀[゚]ハ「すれ違ってから対戦スタートだから。頑張ってね」

俺の側方を敵機が駆け抜ける。
その機体の色は、深い青色。

73 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:43:31 ID:Ayhf351Q0

     ○     ○     ○

(゚A゚;)「…………」

从‐[゚]∀[゚]ハ「はい終わりー。残念でしたー」


……圧倒的、まさに圧倒的だった。

機銃による牽制に混ぜてのミサイル攻撃。
地上付近まで滑空してのミサイルからの回避。
最後の一撃なんて、俺が先ほどCPUに使った手段と全く同じ物を使われた。

('A`;)「えーっと……いくらなんでも強すぎませんか?」

从‐[゚]∀[゚]ハ「そりゃ経験が違うから、ちなみに機体性能は全く同じだからね。
        違うのはハンデ分とパーソナルカラーぐらいさ」

……悔しい、こうなればもう一回だけ――

从‐[゚]∀[゚]ハ「さーて、そろそろ終わりにしますか。お疲れ!
        データも結構とれたしね、協力感謝!」

('A`;)「あの――」

从‐[゚]∀[゚]ハ「まあ君の気持ちも解るけど、我慢してね」

川 ゚ -゚)「そういう事だ。お疲れだな、ドクオ」

74 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:44:13 ID:Ayhf351Q0

どこへ行ってたのか、いつの間にか部屋から消えてたクーが戻ってきた。

('A`;)「いや、でも――」

川 ゚ -゚)「……ドクオ、あまりその装置をつけてると、脳内を全て読まれるぞ」

('A`;)「マジ!?」

慌てて電極を頭から引き剥がす。そういえば、思考を読むっていってたし――

从‐[゚]∀[゚]ハ「いやいや、今の技術だと表層的な物しか読めないよ。
        はいこれ、今日のアルバイト代。少しオマケしといたよ」

渡された封筒を開けると、中には六千円。
自分の手持ち八千円と合わせると、一応これで目標達成だ。

('A`)「ありがとうございます!」

从‐[゚]∀[゚]ハ「いやいやー、こちらこそ感謝してるよ。
        これで研究も進む……近いうちに形に出来るかもね」

考えただけで物が動くシステムか……ちゃんと実用化できれば凄いな。

川 ゚ -゚)「ドクオ、駅まで一緒に帰るか?」

('A`)「ああ、よろしくな」

植岡さんに別れを告げ、俺達は研究室を出ていく。

75 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:45:02 ID:Ayhf351Q0

     *     *     *

从‐[゚]∀[゚]ハ「……しかし、あれがクーにゃんの知り合いか」

キーボードを叩きながら、研究室で一人呟く植岡。

从‐[゚]∀[゚]ハ「けっこうクーにゃんと性質が似てたな。
        まあクーにゃん自体は特別な感情は無いみたいだけど……」


画面には、一枚の絵が表示されている。
線画で描かれた、妙な形をした戦闘機の様な物。
全体的に鋭角なデザインをしているそれを前に、植岡は呟く。


从‐[゚]∀[゚]ハ「まあデバイサーとしては使えるかもね。ちょっと考慮にいれとこ」


研究室の一角で響くタイピングの音は、しばらく途切れる様子を見せなかった。

76 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:45:43 ID:Ayhf351Q0

     △     △     △

すっかり日の勢いも落ち着いた夏の夕方、俺とクーは帰りのバスに揺られている。

('A`)「しっかし最後の相手半端無かったなー……」

川 ゚ -゚)「私の見たところ、ドクオは隙が多過ぎだ」

('A`)「……そんな言うほどあったか?」

川 ゚ -゚)「例えば三発目のミサイルに当たった時も、純粋に左回りをしてただけだろ?
     もっと緩急をつけて、相手に動きを読ませないようにしないと駄目だ。
     他にも障害物に当たらない事を重視しすぎて、機体が大回りになったり――」

('A`;)「んな無茶言うなよ……」

川 ゚ -゚)「『どうせシミュレーションだ、死んでもいいさ』と考えながらやればいい」

('A`;)「そこまで考えれないって。正直機体の制御で手一杯になるぞ?」

川 ゚ -゚)「まあ慣れだな。ドクオもその内出来るようになるさ」

77 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:46:29 ID:Ayhf351Q0

('A`)「慣れねぇ……クーもやった事あるのか?」

川 ゚ -゚)「やった事も何も、実際に私の腕を見ただろ?」

('A`;)「…………っ! まさか!?」

クーは自慢そうに人差し指を振りながら、こちらの目へと視線を移す。

川 ゚ -゚)「その通り、あの機体のパイロットは私だ」

('A`;)「マジすか…………」

川 ゚ -゚)「叔父さんの気まぐれでちょっと付き合わされてな。
     気付けば研究室のエースだよ」

('A`)「何かコツとかあるのか?」

川 ゚ -゚)「自分は今画面の中にいる、そう思い込むんだ。
     それだけで戦果は一割ぐらい変わるぞ」

変わっても一割だけかよ……

78 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:47:17 ID:Ayhf351Q0

('A`;)「……そういやさ、あのプログラムは何に使うんだ?」

川 ゚ -゚)「何って……色々あるだろ。
     例えばリモコンを無くした時でもエアコンを点ける事が出来たりとか」

わざわざそんな局地的な状況でなくても、もっと役立つ技術がありそうな……

川 ゚ -゚)「もしかしたら、凄く画期的な技術として使われるかもな。
     まあまだ色々と問題は多いが――」

('A`)「ん? 問題があるのか?」

川 ゚ -゚)「実はあの技術……誰でもそこまで動かせる訳じゃない。
     人によっては最初の部屋を出る事すら無理だな」

('A`;)「……もしかして俺って、かなり凄い?」

川 ゚ -゚)「まあ適正的には、十人に一人ぐらいの才能だな。
     もっとも、それだけ考えが単純って事でもあるが」

……褒められてるのか、それとも貶されてるのかよく解らないな。
それにそのプログラムでエースって事は、クーの思考も単純って事に――

79 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:47:59 ID:Ayhf351Q0

『えー、次は神速駅前ー』


川 ゚ -゚)「……私はこのまま家の近くまで乗っていく。
     今日はお疲れだったな、楽しかったよ」

('A`)「……いや、こっちこそだ、ありがとな」

……何か言う事は―― あっ、そうだ。

('A`)「今度の週明け、火曜日。シャキンさんがキャンプに行かないかだって」

川 ゚ -゚)「キャンプ……わかった、楽しみにしてると伝えてくれ」

ひらひらと手を振るクーを後ろ目に見ながら、俺はバスから降りる。


帰りの電車の中、俺は今までのバイト料を計算し直す。
……このアルバイト生活も今日で終わりか。

('A`;) (ってか、あまりまともなバイトは無かったな……)

倉庫整理はともかく、怪しい運び屋に謎のプログラムの試験、果ては魔法の実験体……
真面目に働いてる人から見れば、ふざけんなって話かもな。

('A`) (まっ、ともかく結果オーライ。しかし今年の夏は金欠確定だな……)

とりあえずシャキンさんのキャンプ、楽しみにしておくかな。タダみたいだし。

80 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:48:50 ID:Ayhf351Q0

     ○     ○     ○

J( 'ー`)し「ふぅん、じゃあお金は貯まったのね?」

('A`)「ああ、なんとかな」

夕食を食べ終え、リビングでまったりとお茶を飲む俺と母。
父親は仕事の関係で、今夜は帰ってこないそうだ。

J( 'ー`)し「じゃあ早速お金渡してくれない?
      財布に入れておくから」

('A`)「わかった、ちょっと待って」

一度俺の部屋へと戻り、お金をまとめる。
しめて三万四千円。これだけのお金があれば、あんな事やこんな事も……
……いや、考えるだけ虚しいな。

('A`)「はい、これ」

J( 'ー`)し「じゃあ明日、ちゃんと振り込んでおくからね」

しばらく二人でテレビを眺める。
いつも見ている雑学番組も終わり、今は洋画が流されていた。
少し古臭い描写も多いが、中々面白いな。

81 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:49:38 ID:Ayhf351Q0

いよいよ映画も佳境に入り、派手なアクションシーンが入ってくる。
母はそこまで興味が無いのか、やや退屈そうに眺めてるな。

J( 'ー`)し「ふああぁあっ……母さんもう寝るからね」

('A`)「あっ、おやすみー」

寝室へと向かう母を見送り、俺はテレビ画面へと目を戻す。
画面の中では、羊の大群から逃げ惑う若いカップルが映っていた。

やがて映画は終わり、画面にテロップが流れる。
感想を一言で表すなら、『斬新』がピッタリだ。

('A`)「……まあまあだったな」

台所へ移動し麦茶を注ぎ、再びテレビの前へと陣取る。
この後のバラエティを見てから寝るとするか……そんな事を考えた時だ。

『――という事で、今ではすっかり水族館のアイドルとなってます。 ……では、次のニュースです。
 ネット上で悪質な手段で金銭を要求する、違法な会社に対する摘発が始まり――』

番組のつなぎ目に流れる短いニュース。
ボンヤリした頭で眺めていたが、ある単語が耳に飛び込み、一気に覚醒する。

『今回摘発されたのは『マルチマウス』という会社で、同社の経営するネットゲーム、『タコベヤード』の――』

82 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:50:26 ID:Ayhf351Q0

('A`;)「なっ……」

『――契約に無い料金を請求するという物で、現金を合計でおよそ200万円を騙し取った疑いが――』

(゚A゚;)「なっ、ななななな……!?」

『――社長である 根墨 功 氏を逮捕すると共に、詳しい捜査を進めています。さて、次は天気予報――』

(゚A゚;)「なんだってーーー!?」

金を払うべき場所が詐欺を働いてた……つまり――

('A`;) 「って事は……金払わなくていーじゃん!」

慌てて俺は母の寝室に駆け込み、寝る寸前の母へと声をかける。

('A`;)「ちょっと、母さん! 起きてくれ!」

J( '-`)し「んー、何よー……お昼ご飯は昨日食べたばかりでしょ……」

('A`;)「寝惚けてるんじゃない! 実はカクカクシラカバで――」

83 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:51:10 ID:Ayhf351Q0

J( 'ー`)し「例の会社が倒産した……? はいはい、釣り乙」

('A`;)「釣りじゃねええぇぇぇっっ!!」

J( 'ー`)し「……とにかく会社が無くなっても、母さんの財布に入ったお金は私の……ZZZ」

('A`;)「よくわからん事をいいながら寝るなっ!」

J( 'ー`)し「子供のお金は……私のお金……ZZZ」

('A`;)「どこのジャイアンだよーっ!?」



結局必死の説得と説明の成果が実り、稼いだお金が戻ってくるのは一週間後の話。
この件以降は必要以上に制約文を確認するようになったのも、それまた別の話だ。


     【次回に続く】

84 名前:【次回予告】[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 22:52:33 ID:Ayhf351Q0
  _
(; ゚∀゚)「えっ、このタイミングで終わり……!?」

('A`)「終わりだ。さて、次は――」


  皆が待ちわびた夏休み、嫌いな奴など存在しない!
  海に山川、肝試しに虫取り、花火大会にスイカバー!
  正直イベントてんこ盛り、クマーの前で死んだふりはダメ!

  そんな次回、第7話:『塊マンボ!』
                             始めるか、俺の自爆ショー……

  _
(; ゚∀゚)「何、予告のこのテンション……って、あれ?」

('A`;)「俺は知らん……って、なんかデジャヴを感じるな……」


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