- 3 名前:以下、雑談にかわりまして本編をお送りします 投稿日:2010/08/13(金) 21:18:08 ID:OCPlljOg0
兄さんが大学生の頃、よくつるんでいる友人がいたんだよ。
僕も何度か会った事があるんだけど……仮にSさんとでもしておくね。
Sさんは好奇心旺盛っていうか、向こう見ずな所があるっていうか……
まあとにかく……陽気で元気いっぱいな人だったね。
そのSさんがね、ある夏の夜に兄さんを肝試しに誘いに来たんだよ。
場所は近所の山奥にある廃病院。もう10年以上前に閉鎖された所。
兄さんは快く承諾して、二人だけでそこにいったんだよ。
二人で古びた構内を色々探索してさ、手術室っぽい所とか、霊安室とか……
でもやっぱり現実は厳しいね。心霊っぽい現象は全然起きなかったらしい。
結局骨折り損というか、ただの廃墟探索で終わったんだよ。
そして数日後にさ、兄さんが僕の所に現像した写真を持ってきたんだよ。
何でも探索の時に色々取ったらしくてさ、僕に見せてやろうって事で。
兄さんとSさんも一通り見たんだけど、面白い物は入ってなかったらしいんだ。
そして僕は一人で写真を見ていたんだけど、ある写真に釘付けになったんだ。
それは普通の使い捨てカメラで取られた、何の変哲も無い廊下の写真。
だけど、そこに映っていたのは――
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2010/08/13(金) 21:20:45 ID:OCPlljOg0
(´・ω・`)「その廊下を歩く、兄さんとSさんの後ろ姿だったんだよ……」
('A`;)「…………」
川 ゚ -゚)「…………」
(; ´_ゝ`)「…………」
('、`;川「…………」
( ^ω^)「…………? あれ、何がおかしいんだお?」
('A`;)「えっ、いや……だから写真に二人の姿が写ってるのが……」
( ^ω^)「でも廃墟に行ったのはその二人なんだおね?
別におかしい所はないお」
(;´‐ω‐)「……やれやれ、時々君の馬鹿っぷりが羨ましくなるよ」
ため息をつきながら手元のロウソクを吹き消すショボン。
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2010/08/13(金) 21:23:30 ID:OCPlljOg0
ここは俺達が普段使っている、一年Q組の教室。
そして時間は、もうすぐ夜の十時を回ろうとしている。
教室の真ん中は机がどけられて、ポッカリとしたスペースが空いていた。
その真ん中ではユラユラとロウソクの炎が揺れ、更にそれを取り囲む様に人が並んでいる。
揺れる炎の数は二十とちょっと、それを見つめる人影は全部で21人。
……全ての始まりは、今日の午後の事だった。
俺達は平穏に過ごせないようです
('、`*川<『その7:塊マンボ! 〜 4th Horrornight Mix 〜』だってさ
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2010/08/13(金) 21:25:33 ID:OCPlljOg0
夏休みの真っ最中に、久しぶりにクラス全体と顔を合わせるイベント。
それが休みの真ん中、お盆前にある登校日である。
俺が中学の頃までは平和教育と決まっていたが、この高校は違う。
担任が担当する授業を二時間ほど受ける、それが登校日の内容だ。
大抵は普通の授業で出来ない目新しい事をやる様だ。
例えば隣のW組の担任、英語を教えているちんぽっぽ先生のクラスは洋画を見るらしい。
うちのクラスの担任は数学教師なので、授業もそれ関係かと思いきや……
( ><)「それで、僕は思い切ってちんぽっぽ先生を誘ったんです!
彼女は最初凄く嫌な顔をしてたんだけど、しぶしぶ映画に――」
夏休みの真っ只中で先生もやる気が無いのか、延々と雑談を続けている。
クラスの半分近くは聞き流しているだろうに、全く気にする素振りを見せないのはある意味凄いな。
( ><)「で、僕は昼御飯を近くのイタリア料理店、『パール・ジャム』で――」
和寒内先生の話を右耳から左耳へと流しながら、ぼんやりと最近読んだマンガについて考える俺。
まさか前巻で主人公の食べた餃子が伏線だったとは……想像もつかなかったな。
そんな俺を現実世界へと引き戻したのは、後ろから肩へと当てられる何かの感触だった。
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2010/08/13(金) 21:27:56 ID:OCPlljOg0
('A`;) (んあ?)
後ろを向くと、その席にいるクーが腕を伸ばしている。
その手に握られたのは……小さなメモ用紙か?
川 ゚ -゚) (早く取れ。くれぐれも先生には見つからないようにだ)
('A`) (了解した)
川 ゚ -゚) (読み終わったら前に回せよ)
('A`) (わかってるって……)
アイコンタクトで会話を済ませ、受け取ったメモへと目を移した。
『 ホラーな一夜を過ごしませんか?
今夜9時から、学校でこっそり肝試しを開催!
もちろん学校側非公認、別の意味でもヒヤヒヤしながら一晩を過ごそう!
参加したい人、詳しい内容を知りたい人は、本日4時までに下のアドレスまでGO!
haruno-7kusa@f.gifphone.ne.jp
主催者:日暮ミセリ 伊藤ペニサス
※読み終わったら前後の次の人へ、列の最後では右に回してね 』
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2010/08/13(金) 21:30:40 ID:OCPlljOg0
('A`) (へー、肝試しか……)
どうせ今夜は予定が無いし、参加してみるか。
……の前に、とりあえず次の人だな。
('A`) (おーい、ぃょぅ。これを……)
(=゚ω゚)ノ (……ん、わかったょぅ)
よし、メモは無事に渡ったな。
まあとりあえず和寒内先生の話を聞き流しつつ、授業が終わるのを待つかな。
( ><)「……という訳で、皆怪我をしないように過ごしてほしいんです!
委員長、号令をお願いするんです!」
从'ー'从「きり〜つ、れい〜」
アリヤッシター
(; ><)「ちょっ、挨拶が適当すぎるんです!」
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2010/08/13(金) 21:32:10 ID:OCPlljOg0
('A`)「なあ、今夜はどうする? 俺は参加する気だが――」
( ^ω^)「おっおっ、もちろん参加するお」
(´・ω・`)「まあ今夜はやる事ないしね、僕も参加させてもらうよ」
川 ゚ -゚)「私も同じくだな。 ……ん? ツン、どうしたんだ?」
ξ;゚听)ξ「あー……ごめん、ちょっと化粧直しにいってくる」
暗い顔つきで教室を出て行くツン。
あそこまでどんよりした顔を見るのは初めてだな。
( ^ω^)「……ツンはお腹の調子でも悪いのかお?」
('A`)「あー、いや……まあツンも女だからな」
川 ゚ -゚)「いや、ドクオの考えてるのとは違うと思うぞ。
ともかく……ブーン、ツンは怖い話が好きなのか?」
( ^ω^)「いや、そういえばかなり怖がってたはずだお。
先生とかが怪談話をするとき、ツンは必死で耳を塞いでたお」
川 ゚ -゚)「それだ。ツンは強がりな面が強いからな。
内心では参加したくないのだろうが、皆が参加するので悩んでるのだろう」
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2010/08/13(金) 21:34:30 ID:OCPlljOg0
('A`)「まあ誰にだって苦手な物はあるしな……」
(´・ω・`)「ツンが今日は休みたいって言っても、気にせずスルーしようね」
( ^ω^)「おっおっ、了解だお」
川 ゚ -゚)「……あれ? もうツンが帰ってきたようだぞ」
ξ ゚ー゚)ξ「おまたせー、ごめんね!」
('A`;) ヒソヒソ(……なんかやたら明るくないか?)
(; ^ω^) ヒソヒソ(ポーカーフェイスどころじゃないお)
川 ゚ -゚)「ツン、調子は大丈夫なのか?」
ξ ゚ー゚)ξ「ん? 大丈夫だけど……どうしたの?」
川 ゚ -゚)「いや、それならいいんだが……」
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2010/08/13(金) 21:36:29 ID:OCPlljOg0
ξ ゚ー゚)ξ「あっ、そうそう! 今夜の件よね。
今夜の肝試し、私も参加するわよ!」
(; ^ω^)「あのー……本当に大丈夫かお?」
ξ ゚ー゚)ξ「ん? 何が?」
('A`;)「いや……ツンが大丈夫ならいいが」
(;´・ω・) ヒソヒソ(ツンの様子おかしくない?)
川 ゚ -゚) ヒソヒソ(やっぱり無理してるのか?)
( ^ω^)「おっおっ。まあともかく、皆で行くお!」
ξ ゚ー゚)ξ「折角だし皆で晩御飯食べない? どっかで集まってさ」
( ^ω^)「じゃあ久しぶりにバーボンハウスに行こうお!」
(´・ω・`)「あっ、ごめん。兄さんは今日用事があって店を閉めるらしいよ」
('A`)「じゃあ近くのペロコにでもするか。時間は?」
川 ゚ -゚)「7時ぐらいでいいんじゃないか? そうと決まればさっさと帰るぞ」
ξ ゚ー゚)ξ「りょーかい、じゃあまた晩にねー!」
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2010/08/13(金) 21:38:27 ID:OCPlljOg0
○ ○ ○
そして時間はあっという間に過ぎ、今は約束の時間。
('A`)「あのー、SSKセット一つお願いします」
パー゚フェ「はーい、飲み物は何にしますかー?
私としましてはパフェがおすすめですが」
('A`;)「いや、コーラでお願いします」
パー゚フェ「わかりました。サイドメニューは定番のパフェでいいですか?」
('A`;)「いや、一番人気のポテトでお願いします」
パー゚フェ「他にも注文はありますか? パフェとかはいかかですか?」
('A`;)「いや、以上でいいです」
……やたらとパフェを押してくる店員を押し切り、奥のテーブル席へと向かう。
いつもの集合場所であるテーブルには、すでに俺以外の面子が揃っていた。
( ^ω^)ノシ「おいすー、来たかお!」
('A`)「来るに決まってるだろ、常考……」
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2010/08/13(金) 21:41:27 ID:OCPlljOg0
川 ゚ -゚)「おっ、ビビらず来たか」
('A`)「そりゃビビる訳ない……って、何でトレイの上にパフェが二つもあるんだ?」
川 ゚ -゚)「ドリンクにもサイドメニューにもパフェの項目があったのでな。
折角だから頼んでみたんだが……正直胃が重い。両方同じ物だし」
('A`;)「いや、頼むなよ……」
せめて片方は普通のを選ぼうぜ……
(´・ω・`)「まあブーンが食べるだろうから、別にいいんじゃないの」
( ^ω^)「おっおっ、貰っていいのかお?」
川 ゚ -゚)「別に構わないが、間接キスになるから誰かが嫉妬するかも――」
ξ;‐凵])ξ「小学生じゃあるまいし、その位気にしないわよ……」
川 ゚ -゚)「どうした、ツン。元気が無いぞ」
ξ;゚听)ξ「えっ、いや……そんな事ないわよ」
確かに。学校で別れるまでは、むしろ妙にテンション高かったような……
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2010/08/13(金) 21:44:02 ID:OCPlljOg0
川 ゚ -゚)「もしかして怖いのか?」
ξ;゚听)ξ「ち、違うわよっ! ぜーんぜんそんな事無いからっ!?」
(´・ω・`)「もし怖いなら、無理に参加しなくてもいいんじゃないかな?」
ξ;゚听)ξ「だからっ、全然怖くないですっ! これっぽっちも問題ないですっ!」
昼はあんな妙な空気だったから疑問に思ってたが、やっぱり怖かっただけか。
ってかこないだ深夜の学校に忍び込んだようだが……あれはツン的にセーフなのか?
川 ゚ -゚)「まあツン、いざとなればブーンが守ってくれるさ」
ξ;゚听)ξ「なっ、何バカな事言ってるのよ!?」
(; ^ω^)「おっ、守るのかお……」
ξ#゚听)ξ「アンタも微妙そうな顔をするな!」
川 ゚ -゚)「まあツンなら勢いで殴って、幽霊を倒してしまうかもな」
ξ;゚听)ξ「クーは私の事なんだと思ってるの!?」
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 21:47:06 ID:OCPlljOg0
○ ○ ○
夕食を終わらせ、夜の学校へと向かう俺達。
普段は開いてないはずの裏口からこっそり入り、校舎一階の指定された窓から侵入する。
('A`;)「ってか、何でこんな侵入ルートが出来てるんだ?」
川 ゚ -゚)「昼のうちにこっそりミセリが開けてたらしいぞ」
(´・ω・`)「先生の行動パターンまで掴んでるのは気になるね……」
ミセリからの情報だと、教師達は先に帰っており、校舎内は無人らしい。
しかし警備システムとかあるはずだが、それはどうしたんだろう……
ξ;゚听)ξ「やっぱ携帯の灯りだけだと暗いわね……」
( ^ω^)「でも電気はつけちゃ駄目ってメールに書かれてるお」
まあ蛍光灯がついていたら、流石に周りの住民に不審がられるからな。
携帯の光ぐらいなら気のせいだと勘違いしてくれるという算段だろう。
('A`)「どうする? 足音が一つ増えてたりとかしたら――」
ξ;゚д゚)ξ「た、叩っ殺すわよ!? 変な事言わないで!」
……本気で怖い話は苦手みたいだな。
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 21:49:18 ID:OCPlljOg0
教室につくと、内部は昼帰ったときから様変わりしていた。
教室の端へと並べられた机と椅子。
がらりと開けられたスペースに引かれたビニールシート。
そしてその真ん中でゆらゆらと燃える、大量のロウソク。
ミセ*゚ー゚)リ「あっ、ツンちゃん達も来たか。これで半分ね」
(´・ω・`)「半分って事は……まだ人が来るの?」
('、`*川「全部で20人ちょいだから、まだまだ来るわよ。
詰めるようにしてロウソクの前に座っといて」
ロウソクは真ん中に密集して並べられたものと、その周りに円を描くように並べられた物がある。
……どうやらこの円状に並べられたロウソクの前につけばいいようだな。
从 ゚∀从「よお、お前らも来たか」
( ^ω^)「おっおっ、面白そうな話は乗るに限るお」
川 ゚ -゚)「……あれ? 渡辺さんは来てないのか?」
/ ゚、。 /「何でも怖いとかで……私とハインだけになりました」
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 21:52:05 ID:OCPlljOg0
ロウソクの前に座ってるのはハインにダイオード、そして……
(゚、゚トソン「おや、仲良しグループの到着のようですね」
ξ;゚听)ξ「あれっ、何でここにいるの?」
悪い意味で有名な人物、都村トソン。彼女は隣のクラスであるW組のはずだが……
d (゚、゚トソン「なにしろ、私とミセリは友達のようですから。
今夜肝試しをやると聞きつけ、こうしてここにいる訳です」
从 ゚∀从「そういや中学や部活も違うはずなのに、どうして友達になったんだ?」
(゚、゚トソン「以前ペットのビーグルが生物室から逃げ出したようでして……
たまたま通りかかった彼女に探すのを手伝ってもらったのです」
ミセ*゚ー゚)リ「また今度モフモフさせてねー」
(゚、゚トソン「しかしQ組は羨ましいですね、クラス内の仲がいいようで。
W組は私から見ても殺伐としてるようですから……」
('、`;川「ちょっと仲が良すぎだとは思うけどね……」
些細な小競り合いはあるが、派閥抗争やいじめなどという言葉はQ組に無縁である。
大体数人ずつのグループに分かれていて、時々は交流を持つという、いたって平和な図。
まあ仲がいいに越した事はないが……
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 21:54:15 ID:OCPlljOg0
('A`)「そういやさー、どうやって警備システムを落としたんだ?」
たしか無闇に人が入ると、警備会社に連絡が行くって話を聞いた事あるんだが……
ミセ*゚ー゚)リ「ああ、あれね。実は夏休みに入る前辺りから故障してるのよ。
休みの終わりぐらいまでは直らないって話をこっそり聞いちゃってね。
なんでも原因が不明で、修理には基盤ごと全部取り替えるしか無いとか……」
ξ;゚听)ξ「原因不明の故障ね……」
……なんとなく元凶が近くにいそうだが、まあここは気にせずにおこう。
('、`*川「はい、これでも食べてくつろいどいて」
(* ^ω^)「おおっ、こんないっぱいのお菓子どうしたんだお!?」
/ ゚、。 /「私の家はスーパーですから……期限間近の物を貰ってきたのです」
( ^ω^)「ありがとだお、さっそくいただくお!」
从 ゚∀从「そういやさー、結局全部で何人来るんだっけ?」
ミセ*゚ー゚)リ「予定だと全員で21人……あっ、誰か来たわね」
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 21:57:23 ID:OCPlljOg0
* * *
( ´_ゝ`)「うぃーす、元気してっかー?」
( <●><●>)「さっき会ったばかりなので、皆元気だと思います」
\(^o^)/「オツカレー」
ミセ*゚ー゚)リ「兄者君にワカ君、オワたん。お疲れー」
(; ´_ゝ`)「お、オワたん……だと……!?
み、認めんぞ! そんな物言い!」
ミセ*゚ー゚)リ「えー、オワ君よりは呼びやすいと思うけどな?」
(* ´_ゝ`)「なっ、なら俺の事もアニたんとっ……いやっ、ニーたんとでも呼んでくれ!」
アセ;゚ー゚)リ「いや、なんか気持ち悪いオーラ漂ってるし……
兄者君は兄者君ってイメージだし……」
(#´_ゝ`) シ 「ぐっ、羨ましいぞっ! この野郎!」 ベシベシッ
\(^o^;)/「あっ――」
( <●><●>)「待ってください、叩くのは――」
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 21:59:42 ID:OCPlljOg0
◎ ◎
◎ ◎ ティウンティウンティウン
◎ ◎
(; ´_ゝ`)「やべっ、やっちゃったか……」
( <●><●>)「……まあ、肝試しが始まるまでには復活すると思います」
(; ´ー`)「入り口で何やってるかーヨ……」
マト#>д<)メ「早く中に入れよ! 邪魔なんだよ!」
ミセ*゚ー゚)リ「あっ、ネー君にマトちゃんだ」
マト;>д<)メ「ちょっと待て! 何でオレはちゃん付けなんだよ!?」
ミセ*゚ー゚)リ「えー、そっちの方が可愛いと思うけどな?」
マト#>д<)メ「男がっ! 可愛くても! 意味無いんだよ!」
(; ´_ゝ`)「ちょっと待った、マトマト! それは聞き捨てならないぞ!
最近巷で流行っているジャンルには、『男の娘』というジャンルがある。
これは外見上どう見ても女の子だが、実は男の子であるというもので――」
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 22:02:00 ID:OCPlljOg0
マト;>д<)メ「いきなり気持ち悪い話をするんじゃない! 訴えるぞ!」
ミセ*゚ー゚)リ「あれ? そういえばぃょ君は?」
( ´ー`)「ああ、あいつは具合が悪くなったから休むだってーヨ」
( ´_ゝ`)「――という感じに二次を性欲だけで見る人には、只のホモ扱いになってしまう。
だが感情の高ぶり、いわゆる『萌え』の要素で見ている人には格好の材料となるのだ!
なにしろ外見は可愛い女の子だが、男と同等に扱っても精神的に問題ないという――」
ノパ听)「すまないっ、ちょっとどいてくれないか!?」
( ´_ゝ`)「おっ、すまん……ともかく、男であるのであんな発言やこんな発言も――」
ミセ*゚ー゚)リ「あっ、ヒーちゃん来たんだね!」
ノパ听)「ああ……ところで兄者の奴、誰も居ない所に向かって何を呟いてんだ!?」
('、`*川「気にしちゃダメ、耳が腐るわよ。ところで彼氏君は?」
ノパ听)「ああ、ロマならそこにいるぞ」
( ゚"_ゞ゚)「まさか貴殿が恋などに現を抜かすとは……我には度し難いな」
(; ФωФ)「いや、まあ……そういう事であるので……」
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 22:04:02 ID:OCPlljOg0
ミセ*゚ー゚)リ「ロマ君にオッサー到着っと。後は……」
( ´_ゝ`)「――という訳でこの娘は『ショタ』『女装』の要素を内蔵しつつも、全く別の娘へとなってる訳だ。
ここで重要なのは、本人が女扱いされるのを良しとしない事!
このポイントを崩すと、ただのオカマキャラに成り下がってしまうから――」
( <●><●>)「……誰もあなたの話を聞いてない事はわかって――」
「その話、異議ありっ!」
(; ´_ゝ`)「なっ、誰だっ!?」
(#*゚ー゚)「ただのオカマキャラですって!? 何よ、ただって! ただって!?」
いい? 古来からカマ系のキャラってのは――」
(;,,‐Д‐)「頼む、しぃ…… いきなりディープな討論を始めないでくれ……」
ミセ*゚ー゚)リ「しぃちゃんにギコ君、以上で全員ね」
('、`;川「だいぶ入り口がカオスになってるわね……」
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 22:06:25 ID:OCPlljOg0
△ △ △
ミセ*゚ー゚)リ「はーい、じゃあ皆ロウソクは持ったわね?」
ロウソクを持ちながらぐるりと輪を描き、シートの上へと座る面々。
並べられたお菓子が無ければ、黒魔術をやると言われても納得しそうだ。
ミセ*゚ー゚)リ「えーっと、まずは予定通り百物語……ではなく、四十九物語から始めます。
一つ話が終わるたびに、ロウソクを一本ずつ消していってね。
とりあえず二周分、四十二話……じゃなくて四十話分、始めます」
('、`*川「ぃょぅが来なくなったからね。じゃあまずは私から。
これは私の中学の頃の友達から聞いた話なんだけど――」
そして恐怖の怪談話は始まっていく。
(*゚ー゚)「いちまい、にーまい――」
どこかで聞いた事のあるような話をする者。
从 ゚∀从「それでデータを保存しようとした瞬間だ。バツンという音と共に停電が――」
なんかベクトルが違う話をする者。
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 22:09:26 ID:OCPlljOg0
ノパ听)「それで、こうグワーッと生首が降ってきてさ! それもいっぱい!!」
喋り方が下手なのでまったく怖くない者。
/ ゚、。 /「そこでその男は呟いたのです…… 『開くの十時か……』」
ベクトルの違う話をする者。
川 ゚ -゚)「箱に書かれている、Vの数が少しずつ増えている……」
淡々と怖い話をする者。
( ´ー`)「缶の中には、びっしりとゴ○○リの姿があったんだーヨ」
ベクトルの違う話をする者。
( ´_ゝ`)「『いいか、一階に鍵を忘れてきた……』」
ベクトルの違う話をする者……
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 22:12:12 ID:OCPlljOg0
○ ○ ○
とりあえず一週分は終わったのだが……
イカ#゚−゚)リ「何なのよ!? 一周回って、まともな話は半分も無いじゃない!」
ノハ;゚听)「えっ、アタシの駄目だったか!?」
('、`*川「いや、ヒートは頑張ってたと思うけど……」
たしかに、怪談的な話はやたらと少なかった。
俺のクッシーの話はセーフだったんだろうか……?
ミセ#゚ー゚)リ「とにかく、二周目は怪談話限定だからね!?」
('、`*川「あっ、私は最後にさせて。ミセリからどうぞ」
ミセ*゚ー゚)リ「いいわよ、皆にお手本を見せてあげるわ!」
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 22:15:10 ID:OCPlljOg0
B F A
これは数十年前のイギリスの田舎町、どこにでもあるような一家に起こった悲劇です。
山のはずれに家を建てている、マリソン一家。
一家の大黒柱であるジョニーさん(38)は、多くの羊達を養って生活しています。
気立てが良く、とても優しい奥さんのカルラ(36)と、可愛い娘二人のアンナ(12)とマリー(10)。
彼女達も主人の手伝いに加わり、毎日が家族の温かい笑顔に溢れる……そんな生活でした。
ある日、山へと遊びに行っていたアンナとマリーが一匹のオオカミを拾ってきます。
そのオオカミはまだ子供で、左前脚に大きな傷を負っていました。
木陰で鳴き叫んだいたこの子を、偶然近くを通りかかったアンナが見つけたという訳です。
しかし父親のジョニーさんは、元の場所に戻してくるようにと言ってきます。
オオカミの害によって今まで何頭もの羊が亡くなっているので、子供とはいえ庇う謂れはありません。
ジョニーさんは何度も捨ててくるように言い、姉妹は泣く泣く山へとオオカミを連れ戻しにいきました。
その晩にトイレに行くために起きて来たジョニーさんは、離れの倉庫で何かが鳴いているのに気がつきます。
小屋の扉を開けてみると、なんとそこには娘が逃がしたはずのオオカミが古い毛布に包まれていました。
実は娘達はオオカミを逃がすふりをして、こっそりと倉庫の中へ連れ込んでいたのです。
……さて、ジョニーさんは娘達の行動に苛立ちながらも、このオオカミをどうするか考えました。
山へ逃がしても、その内大きくなって羊達を襲ってくるかも……
そう考えたジョニーさんは、部屋の片隅にあった斧へと手を伸ばし、オオカミの頭へと――
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 22:17:22 ID:OCPlljOg0
翌朝起きてきた娘達に、ジョニーさんは倉庫にオオカミが居た事について問い詰めます。
すぐに娘達は保護していた事を認め、ジョニーさんは嘘を吐いた事に対して謝るように言いました。
妹のマリーは素直に謝りましたが、姉のアンナはオオカミがどうなったかについてしつこく聞いてきます。
そんなアンナの態度にイライラしながらも、ジョニーさんは何と答えるか悩みました。
バラバラにして裏のスギの木の根元に埋めた、などと真相を語れば、娘の心を傷つけてしまう……
そう考えたジョニーさんは、アンナに裏山へと逃がしたと伝えました。
さて、こうしていつもの日々が戻ってくる……少なくともジョニーさんはそう考えていました。
……しかしこの日を境に、段々と妙な出来事が起こり始めるのです。
数日たった晩、妻のカルラの慌てた声によって、ジョニーさんは目を覚ましました。
妻が言うには、裏の勝手口から妙な音がするから見てきてほしい、との事です。
風の音か何かだろうと反論はしてみるものの、妻は頑として聞き入れません。
結局夫婦そろってランタンを手にして勝手口の側まで来ると、確かに妙な音が聞こえてきます。
部屋の中からでも聞こえるほどの荒い息遣い、大きな物がドン、ドン、とドアへとぶつかる音……
山の中からグリズリーでも降りてきたかと不安になったジョニーさん。
隣の部屋まで移動し、恐る恐る窓から身を乗り出して勝手口を見つめます。
……しかし勝手口の前には何もおらず、音はピタリと止んでしまいました。
首を傾げながらも夫婦は眠りにつき、その夜は何事も無く過ぎていきます。
ところが翌朝、勝手口のドアを外側から見たカルラさんは、大きな悲鳴を上げることになりました。
――ドアの表には、獣の爪で引っかかれたような傷が無数についていたのです。
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 22:19:44 ID:OCPlljOg0
△ △ △
ξ; )ξ「イヤアアアアアァァァッッ!!」
(; ゚ω゚)「ぎゃああああぁぁぁぁぁっっ――!?」
ミセ;゚ー゚)リ「ちょっ、まだ途中よ!?」
ξ; )ξ「ダメッ! これ以上怖くて聞けない!」
(; ω )「ぐ、ぐびが……」
(;´・ω・)「ツン、とりあえずブーンの首を絞めるのは止めなよ」
川 ゚ -゚)「まったく……これで三度目か」
こんな怖がりなのに、何でここに来たのやら……
ξ;゚听)ξ「だって! 心霊が幽霊なのよっ!?
怖いと思わないほうが異常だわ!?」
('A`;)「理由になってるのか、それって?」
というか、日本語にすらなってない気が……
そもそもさっきの話に心霊的な流れあったか?
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 22:21:12 ID:OCPlljOg0
ξ;゚听)ξ「はぁーっ……ちょっと油断してたらこんな怖い話をしてくるなんて……」
ミセ;゚ー゚)リ「いや、そりゃ肝試しだしね」
とりあえず、ツンの胆は相当小さい事は確かだな……
('、`;川「怖いなら耳塞いどきなよ」
ミセ*゚ー゚)リ「とりあえず、続きを話――」
「コラァッ! 何をやってるですかっ!?」
アセ;゚ー゚)リ「キャアッ!?」
ミセリが話し出そうとした途端、教室の扉が勢い良く開かれ、怒り声が上がる。
パニックになる教室内、一瞬先生が来たのかと身構えるが……
*(#‘‘)*「さっきからギャーギャー騒いで五月蝿いのです!
まったく……こんな夜に何してるんですか!?」
入り口に立つ影は、この学校の女生徒のものだった。
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 22:25:31 ID:OCPlljOg0
○ ○ ○
*(;‘‘)*「はあっ、こっそり忍び込んで怪談話ですか……
いくら今日は先生がいないとはいえ、思い切った事をやるのですね」
とりあえず急に飛び込んできた彼女を座らせ、事情を話していく。
背の低さと顔立ちから見て、てっきり同学年だと思っていたが……
ミセ*゚ー゚)リ「本当にすいませんでした、ヘリカル先輩」
彼女の名前は近沢ヘリカル、2年生のS組。
先輩は美術部で、夏の終わりのコンクールのために夜遅くまでかけて作品を仕上げてるとか。
自分の教室へと戻る時に階下から叫び声が聞こえたので、恐る恐るここまで来たらしい。
*(‘‘)*「まあ私としても、幽霊じゃなくて安心してるのですが……
それにしても、中々面白そうな企画ですね」
ミセ*゚ー゚)リ「あれっ、このぐらいの事やりませんか?」
いや、ここまで徹底してやる奴はそうそういないと思うぞ。
*(‘‘)*「私が一年の頃は規則が厳しかったですから……」
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 22:27:25 ID:OCPlljOg0
ミセ*゚ー゚)リ「よければ先輩も参加しませんか?」
*(‘‘)*「えっ、いいのですか?」
ミセ*゚ー゚)リ「一人欠員が出たので、先輩が参加していただけるとちょうどいいんです。
あっ、もちろん作品作りに支障が出なければの話ですが」
*(‘‘)*「別に今は落ち着いている所なので作品は問題無いですが……
皆さんは構わないんですか? 私なんかが入ってしまって」
ミセ*゚ー゚)リ「多分大丈夫だとは思いますが…… どう? 嫌だって人はいる?」
川 ゚ -゚)「普通に参加するのは賛成だ」
マト#>д<)メ「別にいいだろ、そんくらい……」
(* ´_ゝ`)「かわいいオニャノコが増える事に反対はしな―― ケボォッ!?」
(,,‐Д‐)「すまん、腕が滑った」
ミセ*゚ー゚)リ「――って事で、どうです?」
*(‘‘)*「では、お言葉に甘えて……
あっ、先輩扱いとか敬語とかは不要ですからね」
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 22:30:17 ID:OCPlljOg0
○ ○ ○
そしてヘリカルさんも加えて怪談話は続く。
ミセリが口を酸っぱくして言っただけの事はあり、今度の話は中々怖い物が続く。
相変わらす勢いが強すぎて空回ってたりしてる奴はいるが、大半は普通に怖いと思える物ばかりだ。
ξ; )ξ「幽霊なんて幻想です……偉い人にはそれがわからんのです……」
……少なくともツンがほとんど耳を塞いでいるぐらいには、だな。
(ちなみに二回目のツンの順番は、代わりにクーが話す事によって切り抜けた)
そして二周目も残るは一名、ペニサスを残すのみ。
揺れる炎は残り八つ、最初に比べると辺りも大分暗くなってきている。
ミセ*゚ー゚)リ「じゃあ最後の話、お願いね」
('、`*川「あー、それなんだけどさ……本当に最後じゃダメかな?」
ミセ*゚ー゚)リ「えっ? てことは、先にあれを話すって事?」
( 、 *川「お願い! 絶対に恐怖のドン底に叩き落すような話をしてあげるからさ!」
ミセ*゚ー゚)リ「………まあそこまで言うならいいけどさ」
ミセリの目を見据え、懇願するペニサス。
無茶苦茶ハードル上げまくってるな……
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 22:32:41 ID:OCPlljOg0
ミセ*゚ー゚)リ「じゃあ先に、この学校に伝わる七不思議を発表します!」
( <●><●>)「この学校にもあったのですか? 聞いた事ありませんが」
ノパ听)「あれっ、ワカッテマスは知らないのか!? ほら、妙なクラス分けの理由とかさ」
/ ゚、。 /「校長の銅像が爆発するというものもありますね……この間、実際に起こったようですし」
ξ;゚听)ξ (それって……そういえば、修復を忘れてた気が……)
ミセ*゚ー゚)リ「ふっふっふっ……そんな有名な話、このアタシがする訳無いじゃない!
今回する七不思議はあまりの恐怖の故、封印された七不思議……
誰にも語り継がれてない、『真の七不思議』ってわけ!」
('A`;)「いや、語り継がれない点で七不思議失格だろ……」
ミセ*゚ー゚)リ「まあともかく、一つずつ話していくわね。
まずは体育館のお話から――」
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 22:35:03 ID:OCPlljOg0
B F A
昔ね、この学校にはホッケー部があったのよ。
地方大会に出場するほどの強さを持つかなりの強豪だったらしいけど、知っての通り今は無い訳。
どうして無くなったかというと……それはある事件があったからね。
当時部活内はギスギスした空気で、部員同士のケンカがよくあったらしいの。
で、ある日に部室内で起こったケンカが段々とヒートアップしていってね……
部員の一人がケンカ相手、当時キーパーだった子を、思いっきり壁の方へと押し出したらしいの。
その壁には物を掛けるための五寸釘が打ち付けられててね、そこに顔から突っ込んだから……
長く飛び出した釘はその子の目を貫いただけではなく、脳にまで達して――
学校側はあくまで事故として処理したらしいわ。押した生徒も殺意とかは無かった訳だし……
まあ勿論部活は休止状態になったんだけど……
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 22:37:31 ID:OCPlljOg0
その事故からしばらくして、不穏な噂が流れ始めたの。
「ホッケーマスクを被り、スティックを持った生徒が校内をうろついている」
最初は他愛もない噂話だと思われてたんだけど……段々と教師の中からも目撃例が出てきたのよ。
その頃から、例の突き飛ばした子が急に学校に来なくなってね。
友達が家まで様子を見に行くと、いつもうわ言の様にある言葉を言ってるの。
殺してしまった生徒の名前を呟いて、その後に詫びの言葉を続ける……ただそれを延々と繰り返すだけ。
最初は家の中なら動き回れたのに、最後は部屋に鍵を掛けて閉じこもる始末。
まるで何かに怯える様な仕草をする息子に、母親もおろおろするしか出来なかったそうよ。
で、ある日の晩。息子の部屋から物凄い叫び声が聞こえてきたのよ。
慌てて部屋までいった両親が見たのは、もぬけの殻となった息子の部屋。
すぐに警察を呼んだけど、結局その日の晩は息子が見つかる事は無かったわ。
でも次の日、その息子は思わぬ場所で、変わり果てた姿で見つかる事になったの。
それは、ホッケー部の部室。壁に、まるで昆虫標本かの様に四肢を釘で打ち付けられた形でね。
全身はホッケーのスティックで殴られた様な傷がびっしりとあって、片目は綺麗に潰されていたわ。
それで、この事件は終わり……だと良かったんだけど――
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 22:39:09 ID:OCPlljOg0
* * *
ミセ*゚ー゚)リ「今でもたまに、体育館の部室があった場所から聞こえてくるらしいわよ。
男の、助けを求めるような泣き叫ぶ声がね……」
从 ゚∀从「あのさー……何でそんな大事件があったのに、一般には知られてないんだ?」
ミセ;゚ー゚)リ「し、知らないわよ!? 七不思議ってそんな物じゃないの!?」
(; ´ー`)「ハイン、それを言ったらお終いだーヨ」
(; ´_ゝ`)「ってかホッケーマスクって…… どこのシリアスキラーだよ」
( <●><●>)「あなたがシリアルキラーと言いたい事はわかってます」
ξ ゚听)ξ「無い、そんな噂は無いに決まってるわね、そう、無いのよ。
ただの噂だから。無いから、無い、無いからね、無いわよ……」
(; ^ω^)「ああ、ツンがどんどん壊れていくお……」
ミセ*゚ー゚)リ「とにかく、次の話行くわよ!」
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 22:42:02 ID:OCPlljOg0
B F A
これは数年前、図書室で起こったお話。
当時図書委員だった女の子が、先生に頼まれて目録作りをやる事になったの。
その子は本が好きだったこともあり熱心に仕事を続けて、気がつけば夜中になってて。
で、整理の終わった本を片付けようとしたんだけど……ここで困った事が起きた訳。
ほら、うちの学校の図書館ってさ、奥にやたら高い本棚あるでしょ?
その子はそこの最上段に本を返す必要があったけど、降ろすときに使ったハシゴが無くなってたの。
史書の先生が別の場所へと持って行ってしまった事を、その子は知らなかったのよ。
で、その子はどうしたのかというと、棚を足場にしてよじ登り始めたわけ。
流石に早く帰りたかったし、本を出しっぱなしにするよりは……とでも思ったんだろうね。
でも、その頃は棚の補強がまだされてなくてね……
片方だけに力が掛けられた棚は、その女の子を押し潰す形で倒れこんだのよ。
その子は頭の打ち所が悪くて、今も意識不明のまま病院のベッドに横たわってるらしいわ。
……で、その棚は厳重に補強されて、今もそのまま使われてるんだけど――
その事が起こってから、棚に収められた本におかしな事が起こり始めたの。
それはページの所々にベットリとした血糊がついてる事、それも最上段の本にだけね。
最初はその事故の時について、そのまま気付かす戻したんだろうって思われてたんだけど……
いくら新しいのに買い直しても、いつの間にか血で汚れてるの。
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 22:44:23 ID:OCPlljOg0
△ △ △
ミセ*゚ー゚)リ「結局一番上の棚には、何も置かれなくなったけど……
今でも新しい本を入れておくと、血で汚れちゃうらしいよ」
ξ;゚ー゚)ξ「フ、フン! 誰かがケチャップを溢してるのよ!
もしくは天井からケチャップが漏れてるのね!」
('A`;)「むしろそっちがホラーなんだが……」
川 ゚ -゚)「そうだな、図書館内は飲食厳禁だし……」
(;´・ω・)「ツッコミ所そこなの?」
手元のロウソクを吹き消し、再び話し始めるミセリ。
揺れる炎はあと六つ。
ミセ*゚ー゚)リ「……じゃあ、三番目の話を――」
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 22:46:08 ID:OCPlljOg0
B F A
この校舎にある踊り場のさ、壁の真ん中に何かがついてたような跡があるの知ってる?
ほら、三階と四階の間、正門に近いほうの階段ね。
実は昔はね、あそこに大きな鏡がつけられてたらしいのよ。
それがなぜ今は無いかというと……それはある噂が広がったから。
『踊り場で鏡を覗くと、後ろにいないはずの人が立っている。
そしてその人物に襲われ、鏡へと引き摺り込まれる……』
教師達も馬鹿な噂だと笑ってたんだけど……
実際に見たって噂が跡を絶たず、そればかりか最終的には行方不明者が出ちゃってね。
なんでも友人達と帰宅するために階段を下りていたら、急にその子の姿が掻き消えたとかで……
幸い一週間後にその子は校内でうろついてる所を発見されるんだけど、明らかに何かに怯えててね。
一心不乱に、ただこう呟くのよ――
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 22:48:11 ID:OCPlljOg0
* * *
ミセ*゚ー゚)リ「『ホッケーマスクを付けて、斧を持った男が追いかけてくる……』ってね」
('A`;)「なんかネタ被ってるぞ!?」
ξ ゚听)ξ「まっ、今は鏡がない訳だし、怖くは――」
ミセ*゚ー゚)リ「ふっふっふっ……甘いねぇ、ツンちゃん」
ξ;゚听)ξ「えっ、どういう事?」
ミセ*゚ー゚)リ「確かに大きな鏡は無くなったけど……
その人物は手鏡とか、とにかく反射する物だったら何でも映るんだって。
そう、今現在でもね……」
;:ξlii )ξ::「し、信じないわ……絶対信じないから……」
(; ^ω^) (本当になんでここに来たんだお?)
ミセ*゚ー゚)リ「さて、いい具合にツンちゃんが怖がった所で四つ目いきますか!」
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 22:50:29 ID:OCPlljOg0
B F A
美術室の倉庫の奥にさ、布を掛けられた絵があるの知ってる? やたら大きい奴。
実際に捲ってみたら解るけど、そこには黄ばんだ無地のキャンパスがあるだけ。
……でもこの絵には、ある一つの噂があるの。
『深夜に絵を見ると、そこには血まみれの女が描かれている』
なぜこんな事が囁かれたかというと、これまた噂話なんだけどね……
十数年前に美術部員の女の子がね、遅くまで学校に残って自画像を描いてたらしいわ。
ようやく描きあがった時、学校に麻薬中毒者が侵入してね……
そいつが持っていた鉈を、女の子の頭へと振り落として――
女の子が倒れた時、流れ出した血がべっとりとキャンパスについたらしいの。
そう、まるで絵の中の子までが頭を割られたようにね。
結局その絵は女の子と一緒に火葬されたんだけど……
ある朝美術の先生が倉庫に入った時、おかしなものを見つけたの。
それはたしかに昨日まで無かったはずの、無地のキャンパス。
折角置いてあるという事で、部員の一人が静物画を描いたんだけど……
描きあがった翌日、絵を見た部員達は悲鳴をあげる事になったわ。
なぜなら果物を載せた皿の後ろには、頭から血を流しながら笑う女性が描かれていたから……
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 22:52:10 ID:eyuym9Z20
* * *
タタ*゚ー゚)リ「その絵はすぐ処分されたんだけど……また翌朝、真っ白なキャンパスが置かれてるのよ。
何度捨てても現れるので、今は布をかけて放置されてるって訳」
(゚、゚トソン「現役美術部さん、この話を聞いた事はあるようですか?」
*(‘‘)*「一応長い事部員をやってますが、そんな話初耳ですよ。
……まああんなでかいキャンパス、中々使う機会もありませんし。
大方先生が片付けるのが面倒で、そのまま放置中なんじゃありませんか?」
マト#>д<)メ「ってか、さっきから人死に過ぎだろ!」
( ´ー`)「そんなに死んでたら、もっと有名な噂になってるだろーヨ」
ミセ;゚ー゚)リ「アタシが調べた結果なんだから……噂があるの自体は事実だし……」
( ´_ゝ`)「ソースどこ?」
ミセ*゚ー゚)リ「ごめんね。放送部として、情報源の守秘義務があるの。五つ目にいくわね」
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 22:54:08 ID:eyuym9Z20
B F A
これは昔、今は無くなってしまった化学部で起きた出来事。
从;゚∀从「いや、今も普通にあるし! 俺部員だし!?」
準備室で部員同士の間で喧嘩が始まったんだけど、段々とその規模が増して来た訳。
从;゚∀从「さらっと無視しながら話進めるなよ!」
そして部員の一人が相手を薬品棚へと突き飛ばして、棚から落ちた薬品が頭へ――
从;゚∀从「しかもなんか展開が一つ目と被ってるぞ!?」
突き飛ばされた部員はそのまま亡くなってしまったけど……しばらくして、ある噂が流れ始めたの。
从;゚∀从「どうせその生徒がうろついてるって噂だろ……」
『顔が薬品で爛れた生徒が、ホッケーマスクを付けて廊下をうろついてる……』
从;゚д从「なんでそこでホッケーマスク!? 完璧に一つ目と一緒じゃねーか!」
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 22:56:10 ID:eyuym9Z20
* * *
ミセ*゚ー゚)リ「今でも深夜、化学室のそばには人影がうろついてる事があるらしいわよ……」
从;゚∀从「結局最後までスルーしやがった……」
ξ*゚听)ξ「ラン、ラ、ララ、ランランラン……ラン、ラ、ラララー♪」
(; ^ω^)「ああ、もうツンはおしまいだお……」
('A`)ノシ「おーい、ツーン……生きてるかー?」
川 ゚ -゚)「へんじがない ただのしかばねのようだ」
ミセ* ー )リ「じゃあ六話目に移るけど、今度は口を挟まないでね……」
从;゚∀从「あ、ああ……(なんだ、この気迫……?)」
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 22:58:05 ID:eyuym9Z20
B F A
この学校のあった場所ってさ、実は昔に遺跡っぽい物があったらしいの。
ほら、プールの裏手に石碑と祠があるでしょ?
あれはこの地に宿る神様を治めるためにあるらしいわよ。
まあそれが原因かは知らないけど、この学校では夜、妙な事がよく起こるらしいの。
誰もいないはずの教室に人影が見えたり、教室内の物の位置が変わってたり……
……特に石碑の近くにある屋内プールでは、特段に怪奇現象が多いらしいのよ。
ビート板が空を舞うとか、プールの水が割れるとか、首長竜のような生物が泳いでるとか……
……その中でも、一際有名な物があるのよ。
それはこの学校にまだ警備員がいた頃の話。
警備員は深夜に一回、学校中を見回る必要があったの。
そのルートの中には当然プールの見回りもあるんだけど……
その晩、警備員が屋内のプールへと繋がる扉を開けた時、最初に感じた違和感は臭いだったわ。
いつもの塩素臭さではなく、まるで腐った魚を放置をしたかのような、鼻から胃に突き抜ける生臭さ。
その激しい臭気に耐えながら水面を照らすと、そこには真っ黒な汚水が広がってたの。
汚水の正体を探るためにプールサイドに近づいた警備員は、それが何か気付いて息を呑んだわ。
その正体は、プールいっぱいに溜まったどす黒い血の海。
恐怖に震える警備員は、その海の真ん中辺りに何か白い物が浮いてるのに気がついてしまうの。
- 47 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 23:00:16 ID:eyuym9Z20
* * *
ミセ*゚ー゚)リ「そして照らした光の先に浮かんでいた物は……無数のホッケーマスクだったの」
('A`;)「どんだけジェイソンネタ引き摺るんだよ!?」
从;゚∀从「普通死体とか手とかだろ!? ホッケーマスクだけ浮かんでても怖くねーよ!」
ミセ;゚ー゚)リ「だから文句はソース元に言ってよ……」
ξ*゚∀゚)ξ「とけいのはりがね ゆっくりゆっくり ちかづいてくるの」
(; ^ω^)「ああ、もうツンは戻って来れない所まで行ってしまったお……」
川 ゚ -゚)「大丈夫だ、私に任せろ」
( ^ω^)「なっ、何か秘策があるのかお!?」
川 ゚ -゚)「ああ……セイッ」 メメタァッ
ξ )ξ「ブルゴニュッ!?」
(;´・ω・)「ちょっ、いきなり鳩尾を殴りつけるのは……」
ミセ*゚ー゚)リ「じゃあ、最後の話をするわね」
- 49 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 23:02:08 ID:eyuym9Z20
B F A
この学校ってさ、保健室でのサボりが極端に少ないの。
まあ入試が難しめなのもあって、ある程度の真面目さが無いと入れないのがあるかもしれないけど……
大抵保健室で休んだ人が感じるのが、「ここで寝たくない」という不快感。
アタシも一回気分が悪くなって休んだ事があったけど……
誰もいないのに誰かに見られてるような、嫌な感じがして眠れなかったわ。
その原因というか、なんというか……一つの逸話があるのよ。
十年ぐらい前だったか……保健室に入り浸る、少し素行の悪いカップルがいたのよ。
まあ授業をサボるくらいだけだから、保健の先生も大目に見ながら、時々注意してたんだけど……
ある日ね、そのカップルがいつもの様に二人で保健室にいたの。
男の方はベッドに寝転びながら、女の子の方は近くのソファで休んでたわ。
適当に二人で話をしたり、本を読んだりでグダグダ過ごしてたんだけど……
女の子の方がね、急に 『喉が渇いた。ジュースが飲みたい』 って甘えた声を出してきたの。
『保健室のお茶で我慢しろ』、『欲しいなら一人で行け』って男は説得するけど、女の子は聞く耳を持たない。
やれやれっていう感じで男は折れて、二人してジュースを買いに自販機まで行くことになるんだけどね……
女の子が保健室から出た途端、急に必死な表情になって、職員室がある方に向けて走り出すの。
手を繋いだ男は慌てて女の子に理由を尋ねるんだけど、その子は泣きそうな顔をしながら、こう言うの――
- 50 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 23:04:31 ID:eyuym9Z20
△ △ △
( ´_ゝ`)「『アンタの寝てるベッドの下に、斧を持った男が隠れてたのよ!』」
アセ;゚д゚)リ「ちょっ、セリフ取らないでよ!」
('A`;)「これまたポピュラーな都市伝説だな……」
ミセ*゚ー゚)リ「ま、ちなみに……その男はホッケーマスクも付けてたらしいわよ」
从;゚∀从「またジェイソンオチ!?」
ξ ゚听)ξ「……あれ、ここはどこ?」
(* ^ω^)「ツン! 戻ってきたのかお!?」
川 ゚ -゚)「ここはQ組の教室、今は肝試し中だ」
ξ;゚听)ξ「ちょっ、何でそんな怖い事やってるのよ!?
えっ、しかも周り暗いし!? なんで私、肝試しに参加してるの!?」
('A`;)「いや、それは一番俺達が聞きたい」
- 51 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 23:06:47 ID:eyuym9Z20
ミセ*゚ー゚)リ「さてっと、これで七不思議は終了!
残すはペニちゃんの話だけね」
('、`*川「了解。まっ、大トリはこっちに任せなさい」
ペニサスが残された最後のロウソクを持ち上げ、顔の前に掲げた。
ユラユラと揺れる炎によって彼女の顔が暗闇に浮かび上がり、双眸が怪しく輝いている。
さて、どんな話が飛び出してくるのやら……
('、`*川「皆はさ、言霊って知ってる?
言葉には不思議な力が宿っていて、口に乗せるだけでその力が発揮されるー、って奴。
まあそんなの信じられない人が大半だろうけど……」
ロウソクを目の前でチラつかせながら、彼女は言葉を続けていく。
('、`*川「割とね、この効果はバカに出来ないのよ。
例を挙げれば限りないけど……呪いとかはこの効果があるからこそ発揮出来る訳ね。
特に昔の人ほど、この考えに共感を持っててね……」
('、`*川「王族の悪口を言っただけで殺されたりとか、昔はあったらしいじゃない?
あれは悪口に込められた悪意が現実になり、王家に凶事をもたらすから……って理由らしいわ」
('、`*川「で、どうせ昔の信仰だろう……って心の中で思ってる人、多いでしょ?
……でも、実はそうじゃない。言霊って本当にあるの。
今から話すのは、そんなお話――」
- 52 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 23:08:36 ID:eyuym9Z20
干干 干干 干干
これはとある高校で起きた出来事。
ある教室にね、噂好きな二人組の女の子がいたの。
いつも二人は仲良しで、適当な話題で盛り上がりつつ、毎日を楽しく過ごしていたんだけど……
その学校はまだ歴史が浅くて、代々語り継がれる〜 的な噂は無かったの。
その女の子達はそれが面白くなくてね……で、ある事を思いついたわ。
それは、学校の七不思議を自分たちで作り上げる事。
二人で相談しながら、次々とそれっぽい怪談話を考え出していったの。
音楽室のピアノが独りでに鳴り出すとか……
雨の日になると、立ち入り禁止のはずの屋上に人影が見えるとか……
四階の端にある倉庫に、生徒が一人で入ると神隠しに会うとか……
そんな話を作り上げてる時の二人は、最高に楽しかったらしいわ。
で、出来上がった話を他の知り合いに拡散して、少しずつ広めたんだけど……
ここでだんだんとおかしな事が起こり始めたの。
女の子は七つの話を一度に作らず、一つ話が出来る事に広めていってたの。
で、五つ目の話、『化学室の壁に浮かぶ人型の染み』の噂を広めようとしたんだけど……
友達へと噂を流そうとした時、逆に向こうから噂話を持ちかけられたの。
その内容はまさしく、彼女達が今から流そうとした噂そのものだったわ。
- 53 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 23:10:53 ID:eyuym9Z20
勿論二人ともその噂は他の人に話してないし、首を傾げながらその話を聞いたわ。
まあその時は他にも話を作ってるグループがあって、偶然被ったんだと思ったんだけど――
二人が調べて行くと、七不思議にある出来事が実際に起こったという噂がかなりあったの。
まあ噂話に則った嘘の話だって事で、その時二人の間ではまとまったのよ。
でも数日後、『正面玄関に飾られた絵は人の血を吸う』っていうのを考え出した次の日、事件は起きたわ。
朝に二人が登校すると、正門前が騒がしかったの。
救急車とか警察の車が止まっていて、正面玄関の前には黄色のテープが張られていたわ。
そのまま生徒は体育館に集合になって……そこで開かれた全校集会の話で、二人は驚愕するの。
『生徒の一人が玄関先で、出血多量の重傷を負った。原因は不明』
二人は恐怖に震えながら、その話は広めない事にしたんだけど……
翌朝もまた、新たな犠牲者が出たの。
二人は悩んだわ。人を傷つけるつもりなんて無いのに、犠牲者を出してしまった。
出来る事ならなんとかしたい……そう考えた二人は、ある事を思いついたの。
それは、七不思議の最後の一つを考え出す事。その内容は――
『校章にもなっている鈴蘭の絵が入った物を身につけると、他の七不思議の災いから逃れられる』
その噂が迅速に広まった事で、それ以上の犠牲者が出る事は無くなったわ。
その学校は外部から人が来る際、必ず鈴蘭の絵がついたものを渡すらしいわよ。
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 23:12:33 ID:eyuym9Z20
* * *
('、`*川「これでこの話はおしまいだけど……言葉は真実に変わる事があるの。
それも強い意志で作られた、噂話は特にね……」
ロウソク越しにペニサスは、周りの視線を確認した。
皆の顔を一回り見渡した後、彼女は言葉を続ける。
('、`*川「七不思議はその最たる物、元々7という数字には不思議な魔力があるんだけど……
ところで今回の話のロウソクの数、覚えてる?」
数人が頷いたのを確認し、彼女は再び語り出す。
('、`*川「……そう、49本。7を7回ほど重ねた数。
そしてこの数字は、縁起の悪い数字、忌み数としても捉えられてるの」
ロウソクを少しだけ下げ、炎を口の正面に捕らえる彼女。
( 、 *川「しじゅうく、始終苦しむ……終わりの無い苦しみ、とね。
さて、あなたは抜け出す事が出来るのかしら……」
最後の灯火が吹き消され、教室には闇が訪れた。
- 55 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 23:14:49 ID:eyuym9Z20
△ △ △
周りが暗くなった瞬間、ツンが息を呑む音が聞こえた。
一応外からの僅かな光があるので、ぼんやりと人影は見えるのだが……
『このまま何のアクションも無いのか?』と、少し不安になった時だ。
今までのロウソクの灯りとは違う、人工的な白い光が正面に灯った。
ミセリの手元にあるライトが光り、周りに最低限の光をもたらす。
ミセ*゚ー゚)リ「さーて、皆さん。お話お疲れ様でした。
じゃあお楽しみイベント第二弾! 本命の肝試しに移るわね」
そういうとミセリは、どこからともなく四角い箱を取り出してきた。
福引で使われるような、正方形で上部に丸い穴が開いた箱。
('、`*川「えー、この中には人数分のくじが入ってます。
書かれてる内容は、実際に肝試しで行くべき場所の名前。
場所はさっきミセリが話した七不思議の、それぞれの場所が書かれてます」
ミセ*゚ー゚)リ「つまりは七箇所それぞれを、三人のペア……じゃなくてトリオで探索する訳。
くじ引きは完全にランダムだから、男子ばっかりや女子ばっかりでも文句言わない事!
メンバーの交代は、両者の同意が取れたらOKとします」
('、`*川「まっ、とりあえずはくじ引きからね。じゃあギコから時計回りで」
(,,゚Д゚)「おう。 保健室、か。ほい、しぃ」
- 56 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 23:17:00 ID:eyuym9Z20
くじを渡されたしぃは、やけに気合を入れながら箱へと手をつっこむ。
(*゚ー゚)「ありがと。保健室ほけんしつほけんしつーっと! どうっ!?」
懇願しながら折り畳まれたくじを開くしぃ、だが現実は虚しい。
(;*゚−゚)「美術室……神はアタシを見捨てたの?」
いちいち神を引き合いに出すなよ。それとも紙とかけてるのか?
次々とくじは引かれていき、あっという間に俺の番。
('A`)「さーてっと、何が……保健室か」
保健室は最初のギコ以来、誰も当ててない。
後は残りのメンバー次第だが……
川 ゚ -゚)「ふむ、階段か」
( ^ω^)「おっ、図書館だお!」
ξ;゚听)ξ「……プール」
(´・ω・`)「体育館だね」
これまた見事にばらけたな……
- 57 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 23:19:49 ID:eyuym9Z20
で、結局最後の保健室組は……
\(^o^)/「保健室……ナンテコッタイ」
男三人か……俺だってナンテコッタイだよ。
ミセ*゚ー゚)リ「全員引いたわね? 結果に満足してない人いる?」
その声に反応して、いくつかの手が上がっていく。
ミセ*゚ー゚)リ「じゃあ五分間、交換タイムを設けます。
その間にそれぞれのチームで固まっておいてね!」
まず俺がやるべき事、それはしぃとコンタクトを取る事。
しぃはギコと一緒になるために手段を選ばないだろうから、もしオワタとしぃが交代する事になったら……
あのバカップルの相手を延々とする……それだけは避けないとな。
(*゚ー゚)「お願い、ギコ君と交代して!」
(゚、゚トソン「私としては美術室が気になるようですが……」
*(‘‘)*「私もせっかくのホームですから……これをかえる気は無いです」
どうやらしぃは保健室の券を手に入れるのではなく、ギコを美術室の誰かと交代させる気だ。
でも交渉は上手くいってないから……ここはチャンスだな!
- 58 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 23:21:26 ID:eyuym9Z20
('A`)「なあ、しぃ。ちょっといいか?」
(;*゚ー゚)「ごめん、今は取り込み中だから――」
('A`)「俺、保健室だったんだけd ――」
(*゚ー゚)「今すぐ交換して下さいお願いします!」
交渉成立! 悪いな、オワタ。
そういや奴は今どうしてるんだ?
\(^o^)/「じゃあよろしくー」
(,,゚Д゚)「ああ、よろしくな……ドクオはあっちで何やってんだ?」
あれ? 意外と普通にギコと話している。ナンテコッタイなんて言ってたくせに……
まあそれはともかく――
('A`)「えー……という訳で、よろしくお願いします」
(゚、゚トソン「こちらこそのようです」
*(‘‘)*「まっ、別に誰とでもいいですしね……」
先輩がいるからちょっと緊張はするが……まあ男三人組みよりはマシかな?
- 59 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 23:23:20 ID:eyuym9Z20
他の組み合わせはどうなってるのか、少し辺りを見渡してみる。
(´・ω・`)「じゃあよろしくね。体育館は元ホッケー部の部室だっけ?」
ミセ*゚ー゚)リ「そうそう。いくつか個室がある中の、今は物置になってる部屋ね」
( ゚"_ゞ゚)「凄惨な悲劇で彩られた地は、今はただ刻の流れで朽ち逝くのみ……か」
( ^ω^)「ツン、そんなに怖がる必要は……あれ? 意外と普通そうじゃないかお」
ξ ゚听)ξ「ただ単に夜の学校を歩くだけ……そうよね? 幽霊なんて存在してないよね?」
(; ^ω^)「そ、そうだお。夜の校内を歩いて、図書室まで行くだけだお……」
( <●><●>)「考え方によっては、そうなる事もあります」
川 ゚ -゚)「で、階段は鏡を壊せばいいんだったか?」
マト;>д<)メ「いや、絶対違うだろ……」
(; ´ー`)「そもそも今は鏡無かったはずだーヨ」
- 60 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 23:25:22 ID:eyuym9Z20
从 ゚∀从「先に言っとく、化学室内で変な真似したらぶっ飛ばすからな」
(; ´_ゝ`)「だから俺は虹しか興味ないから……」
从 ゚∀从「特に窓際にある机の引き出し、あそこだけは絶対開けるなよ!?」
('、`*川「それ、フリにしか聞こえないけど」
/ ゚、。 /「あれ、ヒートは図書室じゃありませんでした……? ここはプール組ですよ」
ノパ听)「こっちはロマがいるから、ツンと代わってもらったんだ!」
( ФωФ)「まあよろしくである。あとダイオード嬢、迷惑をかけたらすまん……」
(;,,゚Д゚)「なっ、なんでしぃがここに!?」
(*゚ー゚)「ドクオ君と代わってもらったんだけど…… 何なのかなー、その言い草は♪」
(;,,゚Д゚)「ま、待て! 別にしぃと居るのが不満な訳じゃなぐぎゃああああああぁぁぁっっ!!?」
\(^o^)/「ギコオワタ」
……どのグループも楽しそうだな。
- 61 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 23:27:37 ID:eyuym9Z20
○ ○ ○
ミセ*゚ー゚)リ「よし、じゃあ全員指令書とライトは持ったわね!?
繰り返し言うけど、電灯は点けない事。ただし緊急時は別ね」
ノパ听)「緊急時ってどんな時だ!?」
ミセ*゚ー゚)リ「不審者が襲い掛かってきたとか、階段から落ちて大怪我を負ったとか……
まあそんな事はほぼありえないだろうけど、どんな時でも安全優先でね」
ノパ听)「大丈夫だ! 不審者がいてもぶち倒す!」
(; ФωФ)「いや、それはやめるのである……」
ミセ*゚ー゚)リ「じゃあまずは、プールのグループからスタート!
何度も言うけど、こっそり行動が基本だからね!」
ノパ听)「じゃあな! 行って来る!」
/ ゚、。 /「それでは……」
( ФωФ)「お先に失礼するのである」
ヒートが先頭に立ち、三人が出て行く。
彼女の意気込みだと、肝試しというよりは夜の探索って空気だな。
- 62 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 23:30:27 ID:eyuym9Z20
ミセ*゚ー゚)リ「次に出るのは美術室組だから、準備しといてね」
*(‘‘)*「わかったのです」
(゚、゚トソン「よろしくお願いするようです……ドロタボウ君、でしたか?」
('A`;)「ドクオだよ! 何でマイナーな妖怪の名前なんだよ!?」
*(‘‘)*「指令書はドクオ君が持っていますね?」
('A`)「ああ、大丈夫です」
ミセ*゚ー゚)リ「じゃあそろそろ出てもらっていい?」
(゚、゚トソン「OK、行ってくるようです」
さーて、肝っ玉を確かめてくるかな……
- 63 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 23:33:11 ID:eyuym9Z20
□ □ □
ドクオが意気揚々とした顔で教室を出て行く……
何でみんなそんなにお気楽な顔で居られるのかしら?
ξ;゚听)ξ「理解できないわ……」
化け物とか狂人ならまだいいけど、問題は幽霊。
過去の人物の怨念が祟ってくるとか……ダメ、考えちゃ駄目!
ξlii‐凵])ξ(それにしても、何で私は肝試しに参加してんのよ……)
今日の授業中に例のメモが渡った後は、私はずっとある事を考えていた。
それは、肝試しに参加しないための上手い言い訳。
確か親戚との食事会があるって事にして、みんなに話そうとしたけど――
ξ ゚听)ξ(……授業が終わった後、私は何をしてたの?)
……記憶はある。放課後はいつものメンバーで話をして、皆参加するという話になった。
その後は駅でクーとショボンと別れて、そのまま帰宅して……
夕方までクーから借りた小説を読んで過ごして、その後はペロコレアへ――
ξ;゚听)ξ(いや、絶対おかしいわ……)
少なくとも私が、参加するなんて言う筈が無い。
まるで私じゃない誰かが私の中にいて、勝手に体を動かしてたような……
そういえば、トイレに向かった時に――
- 64 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 23:35:19 ID:eyuym9Z20
( ^ω^)「――おーい、ツーン……?」
ξ;゚听)ξ「……ほへっ?」
( ^ω^)「そろそろ行くけど大丈夫かお?
もし怖いなら、ここに残ってもいいんだお」
ξ;゚听)ξ「こ、怖くないわよ! それにもしここに残ったら一人になるじゃない!」
( ^ω^)「おっおっ、それもそうだお」
ξ#゚听)ξ「なっ、何なのよ! そのニヤニヤ笑いは!?」
(; ^ω^)「おっ、これは元からだお」
( <●><●>)「……二人とも。後続が待っているので、早く行くべきだと思います」
ξ;゚听)ξ「ご、ごめんね、ワカ君」
( ^ω^)「おっ、じゃあ行くかお」
ミセ*゚ー゚)リ「気をつけてねー」
- 65 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 23:37:22 ID:eyuym9Z20
ミセリに渡されたライトを持ち、ズカズカと廊下を進んでいく面々。
……こんな風にサクサク進むと、怖さも半減されるので助かるわね。
( <●><●>)「おや、あそこの教室に誰かいませんか?」
ξ;゚听)ξ「き、気のせいよ! きっと置き忘れたマネキンとかよ!」
(; ^ω^)「ツン、普通学校にマネキンはないお」
( <●><●>)「すいません、ただの等身大フィギュアでした」
ξ;‐凵])ξ「よ、よかった……」
(; ^ω^)「……何でそんな物が学校にあるんだお?」
( <●><●>)「おや、窓の外に浮かんでいるのは……生首、のように見えますが?」
ξ; )ξ「ち、違うわよ、絶対に! きっと顔だけ出してる黒子よ、黒子!」
( <●><●>)「いや、あれは……木に吊るされたスイカですね」
(* ^ω^)「持っていかないかお?」
ξ;゚听)ξ「バカな事言ってないで、とにかく早く終わらせるわよ!」
- 66 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 23:40:06 ID:eyuym9Z20
* * *
从 ゚∀从「おっしゃ、とうちゃーく!」
化学室の隣にある準備室、ここには多くの薬品や予備の実験道具が保管されている。
普段は厳重に施錠されているはずのこの部屋だが、なぜか三人が来た時には鍵が開いていた。
('、`*川「入るのは初めてだけど……思ったより綺麗ね」
从 ゚∀从「そりゃ毎日俺も使うからさー、どうせなら清潔に――
って、結構汚れてんなー……休みになってからは来てなかったからか」
( ´_ゝ`)「おおっ、でかい金庫発見! あれは危険な薬品を納めるやつか?」
从 ゚∀从「そうだ。他には安全だけど、目が飛び出るような値段の薬品も入ってるぜ」
('、`*川「へー、まあ私たちが中を見る機会はなさそうね」
从 ‐∀从「ところがどっこい、ハインちゃんは開け方を知っているのです」
('、`;川「えっ!?」
从 ゚∀从「こっそり先生が開ける所を盗み見ちゃってな……
大丈夫、私的にちょくちょく使わせてもらってるぐらいで、悪用はしてないぜ」
(; ´_ゝ`) (それは悪用に入るのでは……)
- 67 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 23:42:40 ID:eyuym9Z20
('、`*川「ところでさ、あのゴチャゴチャした机は何?」
从 ゚∀从「んあ、俺専用の机。空いてたから使わせてもらってる」
( ´_ゝ`)「汚ねぇ机だな……」
从#゚∀从「OK、表へ出ろ」
('、`*川「ってかよく机使わせてもらったわね。先生とか部長は許してくれたの?」
从 ゚∀从「先生は話し合いをしたら……ってアレ? 俺が部長って事言ってなかったか?」
( ´_ゝ`)「初耳、kwsk」
从 ゚∀从「元は三年の部長一人だけの、解体寸前の部活でさ。
『受験に集中したいから』って理由で、俺が入部後三日目で退部しやがったんだ」
('、`;川「よく廃部にならないわね……」
( ´_ゝ`)「俺の記憶では、一度出来た部活は担当教員と部員がいる限り、存続可能なはずだ。
まあ予算はガッツリ削られるが」
从 ゚∀从「週一でもいいから、とにかく入部者が欲しいんだけどなー……
あーあ、誰か入ってくれる人いないかなー……」
('、`;川「私を見ても無駄だからね。バレー部で忙しいし……」
- 68 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 23:45:19 ID:eyuym9Z20
( ´_ゝ`)「ときにハイン、借りている机は技工室ではなかったか?」
从 ゚∀从「んにゃ、技工室でも机を借りてるぜ」
(; ´_ゝ`) (このパイプの広さは何だ……? ガバガバか、ガバガバなのか?)
从 ゚∀从「さーてと……まあともかく、さっさと指令を終わらせますか。
ペニサス、指令書には何て書かれてるんだ?」
('、`*川「今開くから待ってね。えーっと……」
『
【指令書:化学室】
化学準備室の中に張られた、英単語八文字が書かれたガムテープを探し出せ!
ヒントは、『あるお主』!
※ガムテは剥がして持って帰る事
※棚の中や実験道具に隠れた所には無いので、開けたり触ったりしない事!
』
从;゚∀从「なんかどこかで聞いた事のあるゲームだな……」
('、`*川「まあともかく……ヒントは『あるお主』ねぇ……」
从 ゚∀从「………………なるほどな、そういう事か」
( ´_ゝ`)「ああ、俺もピンと来たぜ」
- 69 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 23:47:05 ID:eyuym9Z20
('、`;川「二人とも速いわね……じゃあ兄者君からどうぞ」
( ´_ゝ`)「いいか、まず『あるお主』、これだけじゃ意味が解らない!
そこでまず、ローマ字へと分解する!」
あるお主 → ARUONUSI
( ´_ゝ`)「次にみかか変換を使用するんだ! 知らない人はググれ!」
ARUONUSI → ちすならみなとに
( ´_ゝ`)「『ちすならみなとに』……大分意味のある文になってきたが、まだ少し不可解だ!
しかしここに濁音を一つ加えるだけで、全ての謎は解き明かされる!」
ちす『゛』ならみなとに
(; ´_ゝ`)「『ちずならみなとに』……そう、『地図なら港に』、ということだ!
つまり人類は滅亡するんだよ!!」
从;゚∀从「「な、なんだってーーー!!」」('、`;川
('、`;川「……って、人類滅亡は関係ないでしょ。つい乗っちゃったけど」
从;゚∀从「わざわざ港まで行くのか? こんな夜に、どこの港まで?
そうじゃなくてだな、この暗号の意味は――」
- 70 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 23:50:21 ID:eyuym9Z20
○ ○ ○
川 ゚ -゚)「へー、マトマトもやったのか、あのゲーム」
マト#>д<)メ「ああ、とりあえず常闇の神殿のボス強すぎだろ。
何とか防御半減と特攻で倒せたが」
川 ゚ -゚)「あれはボスが呼び出すザコを混乱させたら楽だぞ。
私の印象深いボスは、海底洞窟の深海竜だな。
ブルーオーブの存在を知らなかったからな……」
マト#>д<)メ「あー……アレ無しで倒すのはかなりきつくないか?」
川 ゚ -゚)「ああ、お蔭で買い貯めてた蘇生アイテムを使い切ってしまったよ」
マト#>д<)メ「そういやさ、カジノで手に入る高級アイテムが無いとサブボスを倒せないの、どう思う?」
川 ゚ -゚)「あれは開発者の実家を焼き討ちしたくなったな……
最近は無理矢理長く遊ばせるゲームが増えてないか?」
マト#>д<)メ「強制的で単調な金稼ぎとか……マジでそんな開発者は死んでほしいな」
川 ゚ -゚)「それでも発売日に新作を買ってしまうのは、悲しきゲーマーの宿命かもな……
そういえば、今度出るMCTBの新作は――」
(; ´ー`) (話に着いていけネーヨ……)
- 71 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 23:53:02 ID:eyuym9Z20
マト#>д<)メ「あー、この踊り場じゃないか?」
川 ゚ -゚)「そうっぽいが……あれ? あんな所に鏡あったか?」
( ´ー`)「今回の為にミセリが付けたんだろーヨ」
川 ゚ -゚)「なるほど。姿見にしては小さいし、充分ありえる話だな」
マト#>д<)メ「で、指令は何だ!?」
( ´ー`)「ちょっと待てヨ、今広げるーヨ」
『
【指令書:階段】
階段に設置された鏡、それに三人で映った所を撮影してね。
必要なのは三枚分、できれば違う携帯で撮ること!
』
( ´ー`)「この大きさの鏡に映るには、そうとう密着しないと駄目だろーヨ」
川 ゚ -゚)「全員携帯はもってるよな? さっさと終わらせるぞ。
まずは私から……ネーヨ、もうちょい私の方によれ」
(;*´ー`) (胸が……微妙に腕に当たってるーヨ……)
川 ゚ -゚)「じゃあ写すぞ――」
つ白
- 72 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 23:55:26 ID:eyuym9Z20
○ ○ ○
(,,゚Д゚)「ようやく保健室に到着か」
(*゚ー゚)「途中何も無かったわね……」
(,,゚Д゚)「おいオワタ、指令書は何て書かれてる?」
\(^o^)/「エーット……」
『
【指令書:保健室】
ベッドの下に潜り込んで、青い小瓶を三本回収しよう!
出来れば三人全員が参加してね!
』
(,,゚Д゚)「三本か……どうする? 誰かがまとめて取るか?」
(*゚ー゚)「アタシは折角だから皆で取るのがいいと思うな。オワタ君はどう?」
\(^o^)/「みんなにサンセー」
- 73 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 23:57:53 ID:eyuym9Z20
(,,゚Д゚)「誰からいく? 多分最後の人の方がきついぞ。
一番取り難いのを取らなきゃならんからな」
(*゚ー゚)「あっ、アタシからやらせて」
(,,゚Д゚)「よし、じゃあ二番手はオワタな」
\(^o^)/「イイノー?」
(,,゚Д゚)「ああ、狭い所の探索は慣れてるからな」
(*゚ー゚)「じゃあ、早速取りにいくね」
\(^o^)/「気をツケテー」
(,,゚Д゚)「何かあったら大声で叫べよ、全力で足を引っ張るからな」
(*゚ー゚)「……それ、物理的な意味で頼むわね」
しぃは二つ並んだベッドの下へと潜り込み、ライトを左右に振って下の空間を確認する。
(*゚ー゚) (当たり前だけど人影は無しっと。さっき奥の方で光ったのがそれかな……?)
灯りが反射した方に向かって這い進むしぃ。やがて彼女の目に、壁際で光る青い小瓶が入ってきた。
(*゚ー゚) (左右にも小瓶が並べられてるわね……まあ一番取り易いのから頂きますか)
体から一番近い小瓶に向け、しぃは手を伸ばし――
- 74 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/13(金) 23:59:24 ID:eyuym9Z20
○ ○ ○
ノパ听)「着いたぞっ、プールサイド! 相変わらず何とも言えない匂いがするなっ!」
(; ФωФ)「なぜ鍵が開いてたか、激しく気になるのであるが……」
/ ゚、。 /「……聞いた話によると、ミセリの父親は鍵屋をやってるそうですよ」
ノパ听)「アタシも聞いてるぞっ! そういや商売道具とか言って、変な形の棒を見せてもらった事もあるな」
(; ФωФ) (間違いなくピッキングツールであるな……)
/ ゚、。 /「……ともかく、さっさと終わらせましょう。指令の紙には何と?」
ノパ听)「ちょっと待ってろよ……」
『
【指令書:プール】
プールの四隅に置かれたカードを回収してね。
全部で四枚、取り忘れの無いようきっちりと!
』
ノパ听)「――との事だっ!」
( ФωФ)「そうか、なら時計回りに回っていくのである」
- 75 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 00:02:19 ID:XKoRFkY20
/ ゚、。 /「……そういえばヒート、その後のロマとの付き合いはどうですか?」
ノハ*゚听)「最高だぞ! 二日に一回は遊びに行ってるしな!」
(; ФωФ)「ちょっ、何を聞いてるのであるか!? ヒートも反応しないのである!」
ノハ*゚ー゚)「昨日は一緒にゲーハーまで行ってな! 一緒にボーリングをしたんだぞ!」
/ ゚、。 /「ヒート……あなたはさっき何と言いましたか?」
ノパ听)「えっ……だからロマとゲーハーまでボーリングに――」
/ ゚、。 /「『ボーリング』ではなく、『ボウリング』です。リピートアフタミー」
ノハ;゚听)「ボ、ボウリング……」
/ ゚、。 /「はい。以後も気をつけてくださいね……」
(; ФωФ) (どうでもいいのである……)
/ ゚、。 /「ロマ……今どうでもいいとか思いませんでした?」
(; ФωФ)「……いや、決して我輩はそんな事思ってないぞ」
- 76 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 00:04:46 ID:XKoRFkY20
/ ゚、。 /「プールの端まで来てしまいましたね……」
ノパ听)「なあ、カードってこれじゃないか!?」
( ФωФ)「肝試し用とマジックで書かれてるし、間違いないであろう、が……」
/ ゚、。 /「商店街のポイントカードですね……ポイントは全然溜まっていませんが」
ノパ听)「しかも期限が切れてるぞ」
( ФωФ)「……使わないカードを再利用したのであるか」
ノパ听)「またまた見つけたぞ!」
/ ゚、。 /「これは……水エネルギーカードですね」
( ФωФ)「懐かしい物を……」
/ ゚、。 /「私がまだ小さくて『はがしてすてる』のテキストが解らなかった頃、
実際にカードの表面だけ剥いで、捨ててしまった事があります」
ノパ听)「最近のは裏のデザインが変わってるらしいな! これは古い奴のようだが」
( ФωФ)「プールサイドだから水という事か……」
- 77 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 00:06:53 ID:XKoRFkY20
/ ゚、。 /「今までのが各プールの角にあったという事は、三枚目はこの辺りに……」
( ФωФ)「おっ、これではないか?」
ノハ;゚听)「うおっ、青眼の白龍……」
/ ゚、。 /「表面にでかでかと『肝試し用』と書かれてますね」
ノパ听)「社長の泣き声が聞こえてきそうだな」
(; ФωФ)「それより何でミセリ嬢はこんな物を……」
ノパ听)「最後の一枚は……あれ?」
/ ゚、。 /「おかしいですね、必ず角の同じ場所に置かれていたのですが……」
( ФωФ)「どこかに飛ばされたのかも知れないのである。とりあえず探して――」
ノパ听)「おっ、あれじゃないか!? プールに何か浮かんでるぞ!」
/ ゚、。 /「こんな暗いのによく見えましたね、ヒート。しかし手が届きそうには無いですが……」
- 78 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 00:08:50 ID:XKoRFkY20
ノパ听)「よし、じゃあ泳いで取ってくる!」
(; ФωФ)「いやいや、着替えも無いのに止めるのである」
/ ゚、。 /「そこの壁に立て掛けられた棒は使えませんか?」
( ФωФ)「上手く掬えばいけそうであるな……ヒート、水面を照らしていてほしいである」
ノパ听)「了解、任せてくれ!」
( ФωФ)「よっと…………よし、このまま上手く引っ掛ければ――」
ノパ听)「おっ、おおっ……? おおおっ!!」
/ ゚、。 /「ナイスキャッチ、ですね」
( ФωФ)「ふぅ……なんとか取れたであるな」
ノパ听)「これは……スタンプカード、か?」
/ ゚、。 /「外側には模様だけで何も書かれてませんね。中はどうなってます?」
( ФωФ)「ちょっと待って欲しいのである、濡れてくっ付いて――」
- 79 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 00:12:40 ID:XKoRFkY20
○ ○ ○
ξ;゚听)ξ「ようやく着いたわね……」
(; ^ω^)「ようやく着いたお……」
( <●><●>) (……ここにくるまで、ツンさんは合計12回ほど叫んでます。
更に言えば、同じ数だけブーン君が酷い目に会いました)
ξ;゚ー゚)ξ「ハハ……ここまで来たらもう怖いものは無いわね……」
( ^ω^)「ともかく指令を終わらせて帰るお! えーっと、何々だお――」
『
【指令書:図書室】
例の本棚の最上段に文庫本が入ってるので回収する事!
中にしおりが三枚入っているので、各自が持って帰ってね!
※ 本も忘れず一緒に持って帰って!
』
ξ ゚听)ξ「やっぱり例の本棚、か……」
( ^ω^)「最上段……手が届くのかお?」
( <●><●>)「とりあえず、現物を確認しましょう」
- 80 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 00:15:18 ID:XKoRFkY20
三人は図書室の奥へと足を進めていく。
いくつも並んだ棚の脇を通り抜け、やがて壁際に備えられた大型の本棚まで辿り着いた。
ξ ゚听)ξ「けっこう高いわね……私の身長の倍近くはあるかしら?」
( <●><●>)「そうですね、3メートルほどでしょうか……
ともかくこのままだと手が届きませんね」
( ^ω^)「……一番上の棚には、何も入ってないように見えるお」
ξ;゚听)ξ「棚の上の壁、ボルトが打ち付けられてるわね……」
( <●><●>)「おそらく耐震のための仕掛けでしょう。
一番上を空けてるのは、単純に蔵書の出し入れが面倒だからかもしれません」
ξ ゚听)ξ「……ちょっと待って、あれじゃない?」
( ^ω^)「あれって……おっ、ちょっとだけ本が見えてるお!」
( <●><●>)「……棒などで落とせそうには無いですね。
やはり登るしかありませんか……」
( ^ω^)「おっおっ、じゃあボクに任せるお!」
ξ ゚听)ξ「頼んだわよ、ブーン――」
- 81 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 00:17:23 ID:XKoRFkY20
○ ○ ○
(´・ω・`)「……この部屋、でいいのかかな?」
ミセ*゚ー゚)リ「一番奥、今は使われてない部屋ね。ここであってるよ」
( ゚"_ゞ゚)「陰鬱なる遺された部屋は、今は時の流れが降り積もる、か……」
ミセ*゚ー゚)リ「……ショボ君、通訳お願い」
(´・ω・`)「『暗くて埃っぽい』って事じゃないかな?」
( ゚"_ゞ゚)「まだ見ぬ未来が迫る……託された願いは何処に?」
(´・ω・`)「『時間が勿体無いから、早く指令の紙を出して』って事みたいだね」
ミセ;゚ー゚)リ「よくわかるわね……はい、これが指令の紙」
『
【指令書:体育館】
更衣室とかが並んでいる所の一番奥の部屋、
ロッカーに隠された三色のボールペンを探そう!
』
- 82 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 00:20:03 ID:XKoRFkY20
(´・ω・`)「勝手に開けていいの?」
ミセ*゚ー゚)リ「うん、今は使われてない部屋だしね」
( ゚"_ゞ゚)「我は南方から解放する……主等は北方より探索せよ」
ミセ;゚ー゚)リ「いちいち方角とか覚えてないって……」
(´・ω・`)「まあ彼の反対から順に開ければいいでしょ……おや?」
ミセ*゚ー゚)リ「あっ、それが例のボールペンね」
(´・ω・`)「青いキャップの部分に目印がついてるね。あと二本か……」
( ゚"_ゞ゚)「赤き液体を収めた筆……我の手中に収める事が出来た」
ミセ*゚ー゚)リ「おっ、オッサーも見つけたようだよ」
(´・ω・`)「こっちにも無し……あとはこのロッカーだけか」
( ゚"_ゞ゚)「残されし封じられた扉、我が手を下すほどの事もあるまい」
ミセ*゚ー゚)リ「ショボ君、ガンといっちゃいなよ」
(´・ω・`)「はいはい、じゃあ開けるよ――」
- 83 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 00:22:14 ID:XKoRFkY20
△ △ △
(゚、゚トソン「というわけで、私は苦労して生物部を立ち上げたのです。
一人だけで部活を作りあげたのは、前例が無いようですね」
('A`;)「そうなんだ……それで、その生物部ってのは――?」
(゚、゚*トソン「よく聞いてくれたようです! 生物部と言うのは、その名の通り生物について探求する部活です。
色々な生き物を飼育したり、観察したり、解剖したり、改造したり……
そうやって生物に秘められた謎を解き明かしていく、それを目的とした部活です」
('A`;) (不穏な単語があったぞ、今……)
(゚、゚トソン「今現在生物部では、五種類の生物を飼育してますね。
前々から飼っている犬のビーグル君に、鶏のコーチン君。
カブトとクワガタも蛹になったようですし、グッピー達もすくすくと……」
('A`)「そいつは凄いな……そういやさ、部員は何人いるんだ?」
( 、 トソン「……あまりそれについては触れて欲しくなかったようです。
週一という条件でミセリは参加してくれたのですが……」
('A`;)「ご、ごめんな……(実質二人か)」
- 84 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 00:23:44 ID:XKoRFkY20
(゚、゚トソン「ですがっ、あなたが参加してくれれば三人まで増えるようです!
さあっ! この入部届けにサインを!」
('A`;)「…………すまん、俺はしばらく帰宅部でいたいんだ」
放課後は急に何処かへ遊びにいくという話が多いからな、仲間内では。
というか、いつも入部届けを持ち歩いているのか……?
(゚、゚トソン「そうですか……でも、不定期に遊びに来るのは歓迎なようです。
放課後は大抵第二生物室にいますので……」
*(‘‘)*「ドクオ君、部活に入るのはオススメですよ。
生活にメリハリが出ますし、クラスとはまた違った空気が味わえます」
('A`)「そ、そうですか……」
*(‘‘)*「……というわけで、美術部に入部しませんか?
今なら画材を一割引で提供できますよ」
('A`;)「いえ、結構です……」
どこからともなく入部届けを出しながら話しかけてくるヘリカルさん。
部活をやってる人間には、入部届けを常に携帯するのが常識なのか……!?
- 85 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 00:25:34 ID:XKoRFkY20
*(‘‘)*「さて、ここが倉庫ですよ。正式名称は美術準備室ですが……」
入った時に俺が率直に感じたことは――
('A`;) (……ゴチャゴチャしてるな)
部屋の半分以上は埃を被った段ボールや、前衛的なオブジェなどに占拠されている。
話に出てきた布を掛けられたキャンパスだけでも、十以上は数があるんだが……
(゚、゚トソン「で、指令書の内容ですが、何と?」
('A`)「ちょっと待ってろよ……」
『
【指令書:美術室】
隣の倉庫、一番奥にある一番大きなキャンパス。
その布を剥がして、そこにおいてある物を撮影&回収する事!
キャンパス全体を写すように取ってね!
』
('A`)「一番でかいキャンパス……あれか」
*(‘‘)*「でかすぎて誰も使ってない奴ですね。
じゃあ早速捲ってみますか……」
ヘリカルが黄ばんだ布に手をかけ、丁寧に取り外していく。
その下から出てきたのは……
- 86 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 00:27:05 ID:XKoRFkY20
('A`)「……週間雑誌?」
キャンパスに引っ掛けられている薄い雑誌。
何かのファッション誌だろうか、表紙には可愛く微笑む女の子がいるが――
*(‘‘)*「顔面に『肝試し用』と書かれていますね……」
(゚、゚トソン「ともかくこれを持っていけばいいようですか」
*(‘‘)*「ちょっと待ってください、撮影がまだじゃないですか?」
('A`)「あー、じゃあ俺がパシャっと取っちゃいますよ」
ポケットから携帯を取り出し、キャンパスへと向ける。
('A`)「じゃあ撮影しまーす」
雑誌を上部に収めながら携帯のピントを合わせ、撮影ボタンを――
- 87 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 00:30:26 ID:XKoRFkY20
* * *
各員が思い思いの行動を取っていたその時。
時計の長針と短針が重なり、真上を指す。
それと同時、普段は決して起こらないはずの異変が起きた。
それは、普段の学校生活では日常的に耳にする音。
しかし、こんな深夜には決して鳴るはずの無い音。
独特のリズムで鳴らされる鐘の音は、同時に校内へとある事を知らせる。
それは今までにはない、確かな異変が起き始めたという事。
そしてその異変は、悪意の牙となって面々へと襲い掛かる。
- 88 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 00:35:58 ID:XKoRFkY20
△ 【美術室】 △
('A`;)「め、めっちゃびびった……」
*(;‘‘)*「こんな深夜にチャイムが鳴るなんて……今までありませんでしたが?」
(゚、゚トソン「まあともかく、写真の方は取れたようですか?」
('A`)「ちょっと待てよ、今確認を――」
( 、 ;トソン「きっ、きゃああぁぁっっ!!?」
(゚A゚;)「う、うぉわああっっ!!?」
思わず手に持った携帯を放り投げてしまう俺。
いや、そんな些細な事はどうだっていい! だって、さっきまで無地だったはずのキャンパスが……
*(;‘‘)*「ひ、人の顔……ですか……!?」
まるであぶり出しかのように、キャンパスへと絵が浮かび上がってくる。
どす黒い濃淡で描かれた、写実的な絵。
そこに描かれていたのは今にも叫び声を上げそうな、女性の恐怖に怯える顔だった。
(゚、゚;トソン「み、ミセリにしては手が込んでいるようですね」
*(;‘‘)*「いや、これは小細工には見えないですよ……」
- 89 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 00:37:28 ID:XKoRFkY20
見たくはないと脳内では思うのに、何故か視線はキャンパスへと釘付けになってしまう。
絵の中の女性は、俺達の後ろ側を見つめながら恐怖で固まっているようにも見える。
振り向くのが恐ろしいが……そんな事も言ってられないな。
('A`;)「と、ともかく、ここから離れないか!?
一度教室に戻れば、他の皆がいるし――」
ガンッ
*(;‘‘)*「な、何の音ですか!?」
(゚、゚;トソン「――ッ!? あ、あれは……」
トソンが震えながら指差す方へと眼をやり、そして見たくない現実が入ってくる。
準備室のドア、曇りガラスの向こうに人影があった。
生徒の物にしてはやや大柄なそれは、右手に持った何かを一心不乱に扉の鍵へと叩きつけている。
('A`;)「まさか……ジェイソン?」
いつの間にドアに鍵が掛かっていたかは解らないが、今侵入を防いでいる点では非常に助かる。
しかしあそこに張り付かれていると出て行きようが……
*(;‘‘)*「と、ともかくバリケードを作るのです! ドクオ君、そこの机をドアまで寄せてください!」
('A`;)「りょ、了解!」
ひとまず俺達は防壁を作り上げるために、倉庫内の机などをドアまで移動させていく。
こんなもので耐えることが出来るのかは不安だが……やるしかないな、今は。
- 90 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 00:39:27 ID:XKoRFkY20
□ 【図書館】 □
(; ゚ω゚)「お……嘘だお……」
ξ;゚−゚)ξ「あ、あああ……」
……どうしてこんな事になってしまったんだろう?
未だに私の思考は、現在まで追いついてはくれない。
いきなりのチャイムに驚きながら、ブーンが無事に取ってきた本を三人で覗き込んだ所までは間違いない。
そう、ペラペラとページを捲っていると、ひらりと一枚のしおりが落ちたんだっけ?
白いしおりに何かの文字が書かれてるようだったから、私は拾おうとしゃがみ込んで――
(; <●><●>)『あぶっ――!!』
頭の上で、メキリ、とでもいうような音が聞こえてきた。
それと共に私に何かが降りかかり、同時に隣へと何かが倒れこむ。
そちらへと振り向くと、そこにはワカッテマスが床に伸びていた。
ξ;゚听)ξ「どうしたの、急に――」
(; ゚ω゚)「ツン!?」
いきなりブーンが私の肩を掴んできて、私の体が捻り起こされる。
おもわず抗議をしようとしたけど、私の目に飛び込んできた情報がそんな暇は無いことを告げてきた。
- 91 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 00:41:59 ID:XKoRFkY20
ワカッテマスが立っていた後ろ辺り、そこに人影が立っていた。
その人影は顔を白いマスクの様な物で覆い、右手には何かを握り締めている。
それは、軽く振るのにちょうど良さそうな、小さめの手斧。刃は赤黒い何かで汚れていて――
( ;0::0;)「…………」
……待って、どうして刃から赤黒い液体が滴っているの?
どうしてワカッテマスは、さっきからずっと妙な声を溢しているの?
どうしてブーンは、変な男ではなくてワカッテマスの頭の方を見て――?
( ::/;:.><○>)「ア、ア゙ァ…… 」
ξ; − )ξ「え……?」
妙な声を上げていたワカッテマスの声が擦れ、やがて静寂が訪れた。
……いやいや、いくらなんでもありえないでしょ?
何かのドッキリよね? ミセリが手の込んだエキストラを使って――
( ;0::0;)「…………」
- 92 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 00:44:06 ID:XKoRFkY20
……いや、こんな事を考えている余裕はないじゃない!
手遅れになる前に、私にしか出来ない事をしないと!
ξ;゚听)ξ (ブーンの前とかそんな事はともかく、携帯を――)
私はポケットに手を入れ、携帯を取り出す。
フワフワの白い毛玉と、赤い小さな勾玉のストラップがついた携帯。
魔法を使うための必須アイテムを手に握りながら、後は始動の呪文を願うだけで――
( ;0::0;)「…………!」
(; ゚ω゚)「ツン!!」
―― そこからの事は一瞬だった。
目の前の男が急に動き、手斧を振り上げる。
それにいち早く反応したブーンが、私の右腕を掴んで走り出す。
そしてそれに驚いた私は、携帯を握り締めていた左手の力を緩めてしまい――
ξ;゚听)ξ「あっ……!?」
あっけなく私の手から携帯が離れ、男の近くへと転がっていく。
思わず足を止めようとするが、ブーンの力強い走りによって私の体はどんどん流される。
そしてあっという間に私達は図書室を離れ、廊下へと飛び出していった。
- 93 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage 寝落ちてた……] 投稿日:2010/08/14(土) 04:05:35 ID:NrrbPD0w0
* 【保健室】 *
(;*゚ー゚) (ふぅ、ビックリした……何だったのよ、今のチャイムは?)
突然のチャイムに驚いていたしぃは、やがて自分のやるべき事を思い出したかのように瓶へと手を伸ばす。
一番体から近い、中央にある小瓶を掴んだしぃ。そんな彼女の視界の端に、何かがゆらりと動くのが見えた。
(*゚ー゚) (ん……何?)
持っていたライトの光を軽くずらし、何気ない気持ちで左の方、先ほどまで何も無かった方を見る。
はたしてそこには、白いホッケーマスクをつけた男がいて、こちらを見つめていた。
( ;0::0;)「…………」
(;*゚д゚)「い、いやああぁっっ―― へぶぉっ!!?」 ガンッ
慌てて身を起こそうとし、しこたま頭をベッドの金属部分へとぶつけるしぃ。
痛みに悶絶しながら頭を抑える彼女に向け、男の手が伸ばされていく。
(;*゚−゚)「っ、くぅ……えっ、キャアアァァッ!?」
( ;0::0;)「…………!?」
男の手が寸前まで迫った時、彼女の両脚が何者かに掴まれた。
しぃが驚く間も無く、体が足元の方向に強く引き摺られていく。
激しく顔面を地面に擦り付ける事にはなったが、結果的に男の魔の手からは逃れる事が出来た。
- 94 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage 本当にごめん] 投稿日:2010/08/14(土) 04:07:11 ID:NrrbPD0w0
(;,,゚Д゚)「しぃ、大丈夫か! どうしたんだ!?」
(* ー )「ギコ君か……大丈夫だけど……大丈夫じゃないかも……」
(,,゚Д゚)「うおっ、鼻血が出てるじゃないか? ほら、ティッシュを――」
(;*゚ー゚)「今度から助ける時はもうちょっと優しく……とか言ってる暇じゃないっ!
出たのよ、ベッドの下に! ジェイソンがっ!」
\(^o^)/「……ホント?」
(;,,゚Д゚)「っ! ……どうやら信じるしかないようだな」
ベッドの下からのそりと、太い男の腕が飛び出してきた。
あくまでゆっくりと、しかし確かな威圧感を持ちながら、段々と男の体が這い出してくる。
上半身まで抜け出てきた男は首を上げ、ホッケーマスクの下から驚く面々を睨みつけた。
(;,,゚Д゚)「……にっ、逃げるぞ!」
(;*゚ー゚)「了解!」
\(^o^;)/「わかっ、あっ――」
室内の椅子に足を引っ掛け、地面へと倒れるオワタ。
彼が光の粒子と化すのと、男が完全に這い出したのを後ろ眼に見ながら、二人は廊下へと飛び出した。
- 95 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 04:10:03 ID:NrrbPD0w0
○ 【階段】 ○
川 ゚ -゚)「いやあ、びっくりしたな。急にチャイムが鳴り出すんだから」
(; ´ー`) (全然驚いてるようには見えネーヨ……)
マト#>д<)メ「で、写真はとれたのか?」
川 ゚ -゚)「ちょっと待てよ、これが…………」
( ´ー`)「どうしたーヨ、急に黙り込んで?」
川 ゚ -゚)「……後ろに何かが写っている」
マト;>д<)メ「はあっ!? つまんない冗談を言うと訴えるぞ! 見せてみろ!」
川 ゚ -゚)「ほれ」
( ´ー`)「どれどれ…………って、別に変な所はないようだーヨ」
マト;>д<)メ「ほら見ろ、やっぱ何も―― っ!?」
携帯の画面の中では、廊下の鏡へと映された三人がぎこちなく肩を寄せ合っている。
本来なら静止画であるはずのその画面、しかしそこに動きがあった。
鏡の中の三人の後ろ側、背景にゆらゆらと写りこむ白い何かの影。
最初は見え辛かったその影が、だんだんと大きくなっていく。
- 96 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 04:13:05 ID:NrrbPD0w0
マト;>д<)メ「こ、ここここ、これ、これって!?」
(; ´ー`)「やべーヨ、やば過ぎるーヨ!」
川 ゚ -゚)「二人とも、鏡の方を見てみろ」
マト#>д<)メ「鏡って――ぎゃぁぁあああっっ!?」
三人の姿が映っているはずの鏡、しかしそこには異質な物があった。
まるでガラス窓かのように鏡面に手をあて、こちらの様子をうかがう人物。
その人物の顔はホッケーマスクによって隠され、表情を窺い知る事はできない。
川 ゚ -゚)「これは……まずいかもな」
(; ´ー`)「まずいに決まってるーヨ! あと何でそんなに落ち着いてられるんだーヨ!?」
二人が話してる間に、鏡の人物は新たな動きに移った。
まるで水面を抜けるかのように、男の手が鏡から抜け出てくる。
三人が驚きで絶句している間にも、男の顔までが鏡面の外側に出てきて――
( ;0::0;)「……!? …………! ……!!」
マト;>д<)メ「…………?」
川 ゚ -゚)「……体が引っ掛って出られないようだな」
- 97 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 04:15:21 ID:NrrbPD0w0
左腕と頭だけを鏡面から突き出し、ジタバタともがいている男。
高い身長と全身を覆った分厚い筋肉は見る者に脅威を与えるが、今では明らかにそれが災いしている。
(; ´ー`)「……こんな時、どういう顔をすればいいかシラネーヨ」
川 ゚ -゚)「……とりあえず笑えばいいんじゃないか?」
マト#>д<)メ「返せ! さっきまでの緊張感を返せ!」
(;;0::0;)「……! …………」
(; ´ー`)「仮面なのに汗かくなーヨ…… 顔の模様と同化しているし……」
川 ゚ -゚)「まったく、こんな奴はほっといて、さっさと教室まで帰る――」
クーは後ろを振り向き、そして見てしまった。
後ろの壁面、そこに大きな姿見が現れていた事を。
そこからもホッケーマスクをつけた男が、難なく出てきていた事を。
その男が右手に持った斧を振り上げ、マトマトの頭へと振り下ろそうとしている事を。
( ;0::0;)「…………!」
マト#>д<)メ「んあ――? 」
そしてクーが声を上げる間も無く、その手は振り落とされた。
- 98 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 04:17:38 ID:NrrbPD0w0
○ 【プール】 ○
(; ФωФ)「これは……」
水面に浮かんでいたカードを開いたロマネスク。そこに書かれていたのは――
/ ゚、。;/「血文字……ですか?」
ノハ;゚听)「この匂い……間違いないな」
( ФωФ)「書かれている内容は『Massacre』であるか。
我輩は意味が解らないが……二人は解るのであるか?」
/ ゚、。 /「英語はそこそこの成績ですが……私も知りませんね」
ノパ听)「英語はさっぱりだぞっ! でも、どこかで見た事がある気がするな?」
( ФωФ)「しかしこのカードは異質なのである。『肝試し用』もかかれておらぬし……
何故か背筋に来るものが―― うおっ!? 何事であるか!」
ノハ;゚听)「チャ、チャイムかっ! こんな時間なのに!?」
/ ゚、。 /「現在はちょうど12時……しかし深夜に鳴らす理由が解りませんね」
(; ФωФ)「まったく、おかしな事だらけであるな」
- 99 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 04:20:05 ID:NrrbPD0w0
……その時は誰も、その異変には気がついてなかった。
チャイムが鳴り終わるとほぼ同時。プールの中央、水面下に黒い影が現れた事を。
水の中の影は波を立てることなく、滑るようにプールサイドを目指す。
その影は三人へと近づきながら、しっかりと目標を見定めた。
狙うは水面のすぐそばに立ち、こちらに背を向けている赤髪の少女。
ノハ;゚听) (Massacre ……どこで見たんだっけ? 読み方はマッサクレ……でいいのか?
マッサカー…… マッカーサー…… 松坂……!?)
そして彼女は、まだその脅威に気がついていない。
やがて影は誰にも気付かれる事なく、プールサイドまで到着した。
未だに考え込んでいる彼女の後ろへと着き、飛び出すタイミングを窺う。
( ФωФ)「せめてこの英語が解れば、何かの糸口になるのであろうが……」
/ ゚、。 /「マッサージの書き損ないですかね……?」
ノハ*゚听)「そうだ! これは『まっさかー』っていうミセリのジョークじゃ――」
彼女が発言をした時、つまりは注意を他の二人へと集中させた時。
その時を機とし、影は水上へと勢い良く躍り出た。
( ;0::0;)「…………!!」
顔をホッケーマスクで覆い、右手の斧を振り上げているその影。
男は驚く二人の顔を少女の背中越しに見ながら、彼女の頭へと手斧を振り落とし――
- 100 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 04:22:33 ID:NrrbPD0w0
ノパ听)「とおっ!」
男が当たると確信した時、いきなり彼女の姿勢が前方へと崩れた。
そのままヒートは右脚を軸にして、くるりと素早く回りつつ左脚を跳ね上げる。
その足はちょうど斧の側面を捕らえ、男の手から斧を弾き飛ばす。
ノハ#゚听)「灼熱砂万那、上位! 雷麒奏撃!」
ヒートは未だに落下してない男へと、更なる攻撃を加えた。
一瞬の内に四回の蹴りを、男の腹部の同じ場所へと叩き込む。
男は後ろへと吹き飛ばされ、コースを2レーンほど越えた水面で水しぶきが上がった。
ノハ;゚听)「な、何が起きたんだ!?」
/ ゚、。;/「いえ、それはこちらのセリフだと思いますが……」
( ФωФ)「と、ともかくここから離れて――」
/ ゚、。 /「っ! ……新手が来たようですね」
プールの中央からこちらへと迫る影が、再び現れる。
影の数は三つ、それぞれ少し離れた陸地を目指して進んでいた。
- 101 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 04:24:52 ID:NrrbPD0w0
( ФωФ)「ど、どうするであるか……」
/ ゚、。 /「そうですね……こんな事になった今としては、ここから離れるのが――」
ノパ听)「ロマ! 鈴木を連れて壁の角まで下がってろ!」
(; ФωФ)「い、いいであるが……お主はどうするのであるか?」
指をバキバキと鳴らし、笑顔を浮かべながらヒートは答える。
ノハ*゚ー゚)「決まってる、久しぶりの実戦だ! 悪いが派手にやらせてもらうぞっ!!」
プールサイドへと上陸した男達に向かい、ヒートは走り出す。
男達がそれに気付いた時には、すでに一人がプールへと叩き戻されていた。
ノパ听)「中位! 空鳥斜来落!」
流れるような動作でもう一人の男の首元に足をかけ、横へと蹴り飛ばす。
飛ばされた男は最後の一人へとぶつかり、二人はもつれ合いながら水面へと落下した。
ノパ听)「なんだ! もう終わりか!?」
- 102 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 04:27:05 ID:NrrbPD0w0
ヒートの挑発に反応したのか、プールに落ちた男達が再び動き出す。
それと共に遠くにある非常口が開き、そこからもワラワラと男達が出現した。
ノハ*゚听)「物量戦かっ!? よし、皆まとめてかかってこい!!」
( ФωФ)「……楽しそうであるな」
/ ゚、。 /「……生き生きしてますね」
< ウオオーッ !! シャクネツサバンナリュー、ジョウイ ! シカガネリョウダンザン !!
( ФωФ)「ここまで元気なのは久々に―― うおっ、あれは痛そうである……」
/ ゚、。 /「きれいに顔面に入ってましたからね……」
< ドウシタドウシター !? ヨワスギルゾー !!
( ФωФ)「どうするか? ここから離れた方がいいかもしれぬが……」
/ ゚、。 /「……あんなに暴れている横を通って行けとでも言う気ですか?」
< シャクネツサバンナリュー、チュウイ ! エンジュショーコー ラクゲキキャク !!
( ФωФ)「……黙って観戦するであるか」
/ ゚、。 /「……それが懸命そうですね」
- 103 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 04:30:03 ID:NrrbPD0w0
○ 【体育館】 ○
( ゚"_ゞ゚)「宵の刻に鐘が奏でるとは……明らかに異質だ」
(´・ω・`)「今日は登校日だったからね。先生が設定を変えて、そのまま忘れてたとか――
ん? ミセリさん、どうしたの? 何か顔色が悪く見えるけど……」
ミセ;゚ー゚)リ「いや……ちょっと嫌な噂を思い出しちゃってね」
(´・ω・`)「ん? このチャイムに関る事?」
ミセ*゚ー゚)リ「そうなの。実はこの七不思議なんだけど、実は調べてみると二十近くあってね……
適当に面白そうなのを選りすぐったんだけど、選ばれなかった物の中に――」
( ゚"_ゞ゚)「十二の時を告げる鐘、があるのか」
(;´・ω・) (選りすぐった結果が、あのジェイソンラッシュなのかい?)
ミセ*゚ー゚)リ「そうなの。深夜十二時の鐘を聞いた者に不幸が訪れる、ってね」
(´・ω・`)「ただの噂だよ。ほら、さっさと任務を終わらせて帰るよ」
ショボンはロッカーにかけた手に力を込め、古びたロッカーを開けた。
カビ臭い空気と埃が舞い、ショボンは一瞬顔をしかめる。
そしてそのロッカーの中から、斧を持った腕が振り出された。
- 104 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 04:32:29 ID:NrrbPD0w0
ミセ;゚ー゚)リ「えっ―― 」
ミセリの左肩に向け、勢い良く振り出される斧。
彼女はただ、それを呆然と見ることしか出来なく――
(;´ ω )「ミセ―― あぐっ!」
そして、急に目の前に飛び出してきたショボンにも対応出来なかった。
ミセ;゚−゚)リ「ショ……ショボ君!?」
(;´・ω・)「……僕は大丈夫だから……早く逃げて」
ショボンの左腕には深々とした傷がつき、あふれ出すという言葉が適切なほどの流血をしている。
片膝を地面につけながら荒々しく息をする彼の前に、ロッカーから出てきた男が立った。
ミセ;゚−゚)リ「い、嫌よ! 見捨てるなんて、そんな事出来る訳無いじゃない!」
(´・ω・`)「やれやれ……オサム君、お願い」
( ゚"_ゞ゚)「汝の思惑は承知している」
アセ;゚д゚)リ「えっ、きゃああっ!?」
ミセリの腹部を抱きしめ、そのまま肩へと担ぎ上げるオサム。
バタバタともがく彼女を全く気にせず、ショボンへと語りかける。
- 105 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 04:35:10 ID:NrrbPD0w0
( ゚"_ゞ゚)「争いを好むのは愚者のみ、精々常黄泉へ行き着かぬ様にな」
(´・ω・`)「ああ、それよりミセリさんを頼んだよ。相手がこれ一人とは限らないしね」
オサムはそのまま部屋を駆け出していき、部屋には二人だけが残される。
白いホッケーマスクで表情を隠し、右手の斧を力なく下がらせている男。
その男を前にして、ショボンは傷口を右手で庇いながら立ち上がった。
(´・ω・`)「わざわざ待ってくれたのは君なりの優しさかい?
悪いけど、今の僕は容赦出来ないよ……」
その言葉に反応してか、男はゆらりと動きショボンへと襲い掛かる。
ショボンは上段から落とされる斧をかわし、近くのロッカーに向け走り出した。
先ほど中身を確認したそこからバールのようなものを取り出し、男に向け構える。
(´・ω・`)「教室にアイテムを置いてきたのは失策だったけど……
さあ、これで互角……いや、傷の分だけ僕が不利なのかな?」
( ;0::0;)「…………」
両者が睨み合う事数刻、先に動いたのは男の方だった。
振りかぶった斧を斜め上から叩き落す、力のある一撃。
ショボンにはそれを避けるほどの余地はなく、バールを盾にして受け止めるが――
(;´・ω・)「ぐっ……」
片手で支えている以上、勢いを押し殺すのは到底無理だった。
- 106 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 04:38:39 ID:NrrbPD0w0
弾かれたバールが左肩にぶつかり、腕の傷に激痛が走る。
苦痛で顔を歪めるショボン。右手のバールを取り落とさなかっただけでも僥倖だろう。
(;´・ω・)「やるね、でも――」
ショボンが言葉を続ける間に、男からの二撃目が入った。
前へと突っ込む事で刃はかわす事は出来たが、男の腕が体へと激しくぶつかる。
その馬鹿力によってショボンは弾き飛ばされ、部屋の入り口の扉へと勢い良く衝突した。
( ;0::0;)「…………」
(メ´ ω )「づっ……はぁ、はぁっ……」
扉にあった曇りガラスが割れ、ショボンの頬に決して浅くは無い傷をつけている。
そのまま扉へとしだれるようにもたれ掛かるショボン。
先ほどまで手にしていたバールは、男の攻撃によって既にショボンの手からは離れていた。
( ;0::0;)「…………」
男は扉の前へと移動し、腰をついたショボンの前へと立つ。
ショボンの頭へ確実な一撃を叩き落す為に、男は両腕でゆっくりと斧を振り上げる。
――そして、それはショボンが待ち望んでいた行動であった。
- 107 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 04:40:56 ID:NrrbPD0w0
(メ´ ω )「っ……!」
( ;0::0;)「……!? 」
突然ショボンが弾かれたように立ち上がり、男の喉下に向かって腕を突き出す。
その手元には鋭利に光る、ガラスの破片が握られていた。
吸い込まれるようにガラスは男の喉へと刺さり、男の体がビクンと撥ねる。
(メ´ ω )「……ははっ」
ショボンはそのまま男の喉を掻き切るように腕を降った。
更に男の腕元へと刃を滑らせ、内側にある筋を切断する。
斧を取り落とし、ぐらりと揺れる男。そして、ショボンの行動は終わらない。
(メ´ ω )「……あはっ、もう倒れちゃうの? さっきまでの意気込みは?
僕を殺す気じゃなかったの? どうしたの? せめて何か反応してよ?」
何度も何度も、手元のガラス片を男へと叩きつけるショボン。
あるものは喉の傷口を広げるように、あるものは肋骨の隙間を潜るように、
あるものは仮面の隙間から眼に刺さるように……全ての攻撃が、正確に男の急所を狙っていた。
- 108 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 04:43:06 ID:NrrbPD0w0
(メ´ ω )「はははっ、面白くないんだけど? さあ、立ち上がってよ? 動いてくれないの?
今この部屋に居るの、僕と君だけなんだけど? 君が立たないといけないんだよ?
僕だって痛い思いしたんだよ? 君だって痛いでしょ? さあ、立って反撃をしようよ?」
最早倒れてピクリとも動かない男に向け、ショボンは何度もガラス片を振り下ろす。
それでも飽き足りないのか、ショボンは男の手にしていた斧を取り、男の体へと振り落とし始めた。
……それからどれほどの時が経っただろうか。
ショボンがふと気がついた時には、床に『男だった物』があった。
細切れになり、最早体のどの部分だったか判別できない肉片。
流れ出た液体で妙な色に染まった、男が身につけていた仮面の欠片。
それらを踏みつけながら、ショボンはぼんやりとした顔で部屋の中をうろつく。
(メ´・ω・)「……そうだ、二人を追わないといけないね?」
何かを思い出したかの様な顔でそう言ったショボンは、その部屋を後にした。
……右手に、大事そうに斧を抱えたままで。
- 109 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 04:45:42 ID:NrrbPD0w0
○ 【化学室】 ○
从#゚∀从「あー、クソッ! 急なチャイムでどこまで話したか忘れたじゃねーか!」
( ´_ゝ`)「どこまでも何も、まだ何も話してないと思うが……」
从 ゚∀从「そうだったか? まあいい、じゃあ謎解きに入るぞ」
('、`;川「ってか、二人とも不自然なチャイムはスルーなのね」
从 ゚∀从「いいか? 兄者がさっき言ってた、『一度ローマ字にする』って奴、実はあれが正答なんだ。
まずローマ字にして、そしてそれを逆読みすると――」
ARUONUSI → ISUNOURA
( ´_ゝ`)「 I SUN OURA ……『私の太陽のオーラ』って事か!」
从#゚∀从「オーラは “AURA” だ、この馬鹿! そして普通にローマ字読みしやがれ!」
('、`*川「……じゃあ、『イスの裏』って事?」
从 ゚∀从「そこまで捻った暗号じゃないし、まあこれが妥当な案じゃないのか?」
- 110 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 04:48:17 ID:NrrbPD0w0
( ´_ゝ`)「いや、まてよ。もしかしたら、それをみかか変換する事で――」
从#゚∀从「馬鹿な事言わずに、とっとと椅子をひっくり返すぞ。
俺がこっちでペニがそこ、兄者は残り全部な!」
(; ´_ゝ`)「ちょっと待たれい! 俺の範囲が明らかに広い気がするが……」
从 ゚∀从「かっこいい兄者の活躍する姿、見てみたいなー」
('、`;川 (すっごい棒読みだし……)
(* ´_ゝ`)「ふははははっ! 一部と言わず、全て俺に任せろ!」
('、`*川 (あっ、こんなのでも釣られるんだ……)
从 ゚∀从「なら早く手を動かせ、任せたぞ」
( ´_ゝ`)「うおおっ! 秘儀、流石流石返し!」
从;゚∀从 (『さすがりゅう、いしがえし』なんだろうが……)
('、`;川 (被ってるわね……)
- 111 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 04:50:36 ID:NrrbPD0w0
( ´_ゝ`)「サーチ、アンドデストローイ! ガムテはどこだ!?」
从;゚∀从「おいおい、破壊はするなよ」
( ´_ゝ`)「とか言ってたら発見! パスワードは【KIMODAME】、せばああああん!」
('、`;川「相変わらず何を言ってるのか解らないわね……」
从 ゚∀从「まあ見つけたのは良くやった」
(* ´_ゝ`)b「おおっと、いくらかっこよくても惚れんなよ! 怪我するぜ!」
从 ゚∀从「…………」
('、`*川「…………」
( ;0::0;)「…………」
(; ´_ゝ`)「ど、どうした? 皆急に押し黙って……」
- 112 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 04:52:40 ID:NrrbPD0w0
从 ^∀从「よし、やっぱ殺そう♪」
('、`*川「たしかそっちの棚にメスがあったよね?」
( ;0::0;)「…………」
(; ´_ゝ`)「待て待てーっ! なして殺さればいかんかーっ!?」
从 ゚∀从「OK、まずはこれとこの薬品を混ぜ合わせて……」
('、`*川「あら、あなた斧持ってるじゃない。ちょっと借りるわよ」
(;;0::0;)「……!?」
(; ´_ゝ`)「ちょっ、そのビーカー泡がブクブクしてるし!
ってかその仮面の人誰だよ!?」
从 ゚∀从「今はお前をどう残酷に処刑するかが最重要課題だ。
そんな些細な事は気にするなよ」
('、`*川「そういやこの人誰なの? ついノリで斧借りちゃったけど」
(;;0::0;)シ 「……、…………」
('、`*川「まあいっか、誰でも」
(;;0::0;) そ 「……!!」
- 113 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 04:55:05 ID:NrrbPD0w0
从 ゚∀从「はい、かんせー。目と耳どっちがいい?」
(; ´_ゝ`)「何それ、ぶっかける対象?
あっ、でもぶっかけの基本は顔じゃ――」
从#゚∀从「OK。まず斧で頭をかち割って、そこに流し込むという事で。異論は?」
('、`*川「ついでにお腹もかっさばいて、そこにも流し込もうよ」
(; ´_ゝ`)「何なのこの人たち!? 発想が怖すぎるんだけど!?」
从 ゚∀从「でも他にも試してみたいのが……そうだ、ペニ!
色々作った道具があるんだが、見てみるか?」
('、`*川「またゴチャゴチャと色んな物を取り出してきて……
このバズーカみたいなの何なの?」
从 ゚∀从「見た通りのバズーカだ、理論上はコンクリートの壁ぐらいぶち破れるな。
そうだ、こいつの的にもなってもらうか」
('、`*川「いいわね、それ。ついでにこの凶悪そうな刃物の切れ味を試してみない?」
(; ´_ゝ`)「ああ、俺を無視して変な方向に話が進んでいく……」
( ;0::0;)ノ「……、…………、……」
( ;_ゝ;)「変な仮面の人にまで慰められるし……もうやだ」
- 114 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 04:57:33 ID:NrrbPD0w0
△ 【美術室】 △
……俺は今ほど準備室の扉が内開きであった事に感謝した事はなかった。
三人で作り上げたバリケードによって扉が開く事は阻まれ、なんとか男の侵入は阻めてるが……
*(‘‘)*「……で、これからどうしましょう?」
('A`;)「どうしようか……」
バリケードにより、こちらの身動きも取れなくなっている。
美術室に繋がるドアはあるのだが、そちらにも厳重な鍵が掛かっていた。
('A`)「そうだ、携帯で連絡を取れば――」
(゚、゚トソン「先ほど試しましたが、上手くいきませんでした。
どうやら何らかの妨害する力が働いてるようですね」
トソンが彼女の携帯を取り出し、画面に表示された『圏外』の文字を指差してくれる。
今までこの学校において、携帯のアンテナが減ったのなんて見た事が無いが……
('A`;) (まあこんな異常事態だからな。出来ればツンに連絡をしたかったが――)
桜色の魔法少女の姿を頭から追いやり、次の案を考える事にする。
他に当てになりそうなのは……いや、連絡が取れないなら一緒か。
('A`;)「自分達だけで切り抜けるしかないって事か……」
- 115 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 05:00:09 ID:NrrbPD0w0
('A`)「ヘリカルさん、何かいい案はありませんか?」
*(‘‘)*「そうですね……このまま朝まで待って、それから助けを呼びますか」
('A`)「それが一番かもな……トソンはどうだ?」
(゚、゚トソン「私の性格では、やられっ放しは性に合わないようです。反撃に出ませんか?」
('A`;)「反撃ったってな……こっちには何も武器は――」
(゚、゚トソン「もしあるとしたら……ドクオ君はどう思うようですかね」
トソンがポケットからある物を取り出しながら、自信満々にそう言って来る。
それはタバコを半分に切ったほどの大きさの、筒状の青い何か。
まったく武器のかけらにも見えないが……
そんな俺の視線に気付いたのか、トソンが説明を加えてくれる。
(゚、゚トソン「これは笛です。これを吹けば、しばらくすると助けが来てくれるようです」
('A`)「……助けって何がだ?」
(゚、゚トソン「それは来てのお楽しみ、のようです」
トソンはそのまま笛を口に銜え、力いっぱい息を吹き込む。
それと共に音色が…………全然聞こえないんだが……?
- 116 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 05:03:04 ID:NrrbPD0w0
('A`:)「……なあ、吹けてなくね?」
(゚、゚トソン「いいえ、これで合ってるようです」
*(;‘‘)*「……っ!? あれは!」
('A`)「もう助けでも来たの……げっ!?」
ヘリカルさんが指差す入り口をみると、そこには扉をよじ登る影があった。
……まさか、ドアの上にある窓から侵入する気か!?
('A`;)「ヘリカルさん、何か棒状のものがありませんか!?」
*(‘‘)*「そこのロッカーに箒がありますが……どうする気ですか?」
('A`)「あいつが顔を出した時、思いっきり突いてやります!」
*(‘‘)*「わかりました……けど、無理は禁物ですよ」
('A`)「もちろんです!」
ヘリカルさんから渡された箒を掴み、バリケードの机へと登る。
俺がちょうど机の上に立った時、天井側にある窓ガラスが叩き割られた。
割られた窓にごつい手が掛けられ、白い男の顔が現れる。そこに向けて――
('A`)「おおりゃっ!」
俺は箒の先を、男の喉下を狙い突き出した。
- 117 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 05:05:22 ID:NrrbPD0w0
( ;0::0;)「……!」
俺の一撃は見事に喉に命中、男の動きがピクリと止まった。
('A`)「このまま叩き――なっ!?」
……物事はそうそう上手くいってくれないようだ。
男の左腕が伸び、箒の先を掴み取る。のみならず――
( ;0::0;)「…………」
('A`;)「なっ……!?」
男の指の力だけで、俺の握る箒の端がメキメキと折れ曲がっていく。
あんな腕力、もし腕とかを掴まれたら……
('A`:)「ってヤバ―― ぐおっ!」
突如俺の握っている箒に力がかかり、男の手に奪い去られる。
……のみならず、奪われた箒は俺の肩へと襲い掛かってきた。
不安定な体勢から叩かれたにも関らず、非常に鋭い。もしまともな攻撃を受けたら……
( ;0::0;)「……」
そして箒を手放した男は、一気に身を乗り上げて部屋の中に入ってきた。
慌てて俺は机から飛び降り、二人の下まで逃げ戻る。
- 118 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 05:07:07 ID:NrrbPD0w0
('A`;)「どうするよ!? 逃げ場無いし……!」
*(;‘‘)*「わ、私に言われても困ります……」
目の前の男は、じわじわとこちらに向けて近づいてくる。
横をすり抜けるほどの空間は無いし、もし通り抜けてもバリケードが……
(゚、゚トソン「――! どうやら間に合ったようですね」
('A`;)「間に合ったって、何が―― うおっ!?」
突如ドアの曇りガラスを割って、飛び込んでくる影があった。
飛び込んできたそれは、軽い唸り声を上げながら男へと襲い掛かる。
▼・ェ・▼「グルルル……バウッ!」
( ;0::0;)「……!?」
('A`;)「い、犬……!?」
(゚、゚トソン「あれこそが生物部の研究の成果……『ビーグル君』!
その俊敏性と攻撃力は、虎をも凌駕するようです! ……多分」
*(;‘‘)*「虎をもですか。とてもそうには見えませんが……」
- 119 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 05:09:49 ID:NrrbPD0w0
ともかくビーグル君は、勇猛果敢に男へと飛び掛っている。
男の足や手の関節に噛み付き、攻撃を紙一重でかわしていく。
虎は言い過ぎにしても、男と充分渡り合ってるほどの強さはあるようだな。
(゚、゚トソン「『かみくだく』! そして間髪いれずに『たたきつける』です!
よしよし、調子はいいようですね! ビーグル君、次は『にぎりつぶす』で!」
('A`;)「それ犬のやる技じゃないだろ!?」
(゚、゚トソン「まあ冗談はこの位にするようです。しかし、決定打にはなりませんね……」
('A`)「まあこのまま時間を潰せば、その内他の人が助けてくれるんじゃ――」
(゚、゚トソン「甘いようですね。もしこの怪異が事実だとするなら、他の人もピンチなはずです。
しかたありませんね……こうなれば『ギガインパクト』を使わせるしか――」
*(;‘‘)*「ああっ!? ビーグル君が!?」
('A`:)「なっ、捕まった!?」
▼;・ェ・▼「グッ……キュ、キューン……」
( ;0::0;)「…………」
男に首元を捕まれ、宙吊りにされるビーグル君。
くそっ、唯一の頼みの綱だったのに……!!
- 120 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 05:12:39 ID:NrrbPD0w0
('A`;)「くそっ、放しやがれ!」
( ;0::0;)「……!」
( A ;)「ぐほっ!?」
俺は勢いに任せて掴みかかろうとしたが、蹴り一発で吹き飛ばされてしまった。
そんな俺を全く気にせず、男が両手でビーグル君の首を絞め始める。このままだと……!
▼; ェ ▼「グッ……ギュッ……」
( ;0::0;)「…………」
(゚、゚トソン「しょうがないようですね……第二段階に移行します。
ビーグル君、フォルムチェンジ! そして『ほうでん』です!」
▼ ェ ▼「キュ……BAOOOOTH!!」
(;;0::0;)「……!?」
('A`;)「なっ!?」
突如ビーグル君の体から紫電が走り、それが男へと襲いかかる。
こちらの目までも焼きそうな強い光が瞬き、男の体がガクガクと痙攣した。
- 121 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 05:15:54 ID:NrrbPD0w0
(゚、゚トソン「ビーグル君、情け容赦は無用なようです!
『ミサイルばり』の後に『どくどくのキバ』、とどめに『かえんほうしゃ』を!」
▼゚ェ゚▼「GURUUUUU…… GAWUU!」
(;;0::0;)「……!!?」
ビーグル君の身体中の体毛が針の様にとがり、男の体へと発射されていく。
次々に男の体へと突き刺さり怯んだ隙に、ビーグル君は一気に飛び掛った。
男の手を強く噛んだビーグル君は一歩距離を取り、口を大きく開ける。そして――
▼゚盆゚▼「GOWAAAAAOOOO!!」
('A`;) (メッチャ不細工だし!)
天井まで届きそうなほどの、猛烈な炎を吐き出した。
……ってかこいつ犬なのか? むしろ生物なのか!?
- 122 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 05:17:29 ID:NrrbPD0w0
( ;0::0;)「…… 」
▼゚ェ゚▼「GAW、GAW、GURUYYYYYYYY――」
(゚、゚トソン「……そこまでのようです。ビーグル君、おすわり!」
▼゚ェ゚▼「GA―― キュ、キューン……」
(゚、゚トソン「よしよし、お利口さんのようですね」
▼・ェ・▼ ヘッヘッヘッヘッ……
('A`:)「あのー、トソンさん……」
(゚、゚トソン「ん、どうしたのですか? 攻撃に巻き込まれた訳ではないようですし……」
('A`;)「いや、そのビーグル君ってさ……本当に犬なの? 放電とか、炎とか吐いたし……」
(゚、゚トソン「掛け値無しの本物の犬です。もっとも、色々と手を加えてはいますがね。
電気ナマズの器官を組み込んだりとか……その点では純粋な犬とは呼べないようです」
('A`;)「さいですか……」
放電はナマズだとして、火を吹く生物は何だよ……
(゚、゚トソン「ともかくここから脱出するのがいいようです。他の人も助けにいきましょう!」
へいへい。まあこの犬がいれば何とかなるかな?
- 123 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 05:20:06 ID:NrrbPD0w0
□ 【廊下 ( ^ω^) ξ ゚听)ξ】 □
(; ^ω^)「はぁっ、はぁっ……ここまで来れば……」
ξ ゚−゚)ξ「ねえ、ブーン。ワカッテマスはいいの?」
( ^ω^)「……きっと、もう助からないお」
ξ;゚听)ξ「いや、でも携帯を取りに戻れば――」
(#^ω^)「ツン! まだそんな事を言うのかお!!」
ξ − )ξ「……そうよね、ごめん……」
ブーンに説明しても通じないだろうし、ここまで離れた今では……
あの後廊下で別の男と出くわし、今はようやっと逃げ切る事が出来た所。
今から図書館に向かってもリスクが大き過ぎるだけか。
あの男からは魔力を感じなかったから、ぽの存在に気付かれなければいいんだけど……
(; ^ω^)「しかし、これはおかしすぎるお。電気は全然点かないし、窓の外は真っ暗だしお……」
ブーンのいうとおり、照明のスイッチはウンとも言わないし……
窓の外は、学校から外側が闇に覆われ、街の灯りは欠片一つ見えていない。
- 124 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 05:22:59 ID:NrrbPD0w0
……そして一番おかしいのは、これだけの異常事態にも関らず、魔力の力を全く感じない事。
せめて変身出来れば何か解るかも知れないけど…… ああっ、なんで携帯落としちゃったんだろ……
( ^ω^)「はあっ……ともかく、さっきみたいに廊下も安全じゃないお。
とりあえず誰かと合流する事を考えるお」
ξ ゚听)ξ「ここからなら、クー達の階段が近いわね。でも……」
( ^ω^)「クー達も無事じゃない可能性がある……というか高いお」
ξ ゚听)ξ「いや、待って……たしかクーの所にはネーヨ君が一緒じゃなかった?」
怪盗エニグマの関係者であろう彼なら、もしかして何か対抗する手段があるかも……
( ^ω^)「おっおー……そういえば、そうだった気もするお。
でもなんでネーヨなんだお? 何か鍵を握ってるのかお?」
ξ ゚听)ξ「いや……ともかく、彼なら力になってくれるはずよ」
( ^ω^)「わかったお、じゃあそこの階段を――」
ブーンがそう言いかけた時、私の視界の端にチラリと映る物があった。
- 125 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 05:25:17 ID:NrrbPD0w0
ξ;゚听)ξ「まって! 誰かが向こうから来るわ!」
(; ^ω^)「おおっ……とりあえず階段に向けて逃げるかお!?」
「おおーいっ! ちょっと待ってくれー!!」
ξ ゚听)ξ「ん? この声は……」
(;,,゚Д゚)「ハァッ、ハァッ……お前ら、無事だったか!?」
ξ ゚听)ξ「ギコ!? どうしたのよ、しぃとオワタは!?」
( ^ω^)「それにライトはどこにいったお? それにその首の痕は……?」
(,,゚Д゚)「ちょっと待って、順番に答えさせてくれ。
いや、その前に……二人は大丈夫か? 狂ってないか?」
- 126 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 05:28:30 ID:NrrbPD0w0
ξ;゚听)ξ「狂うって言われても……多分大丈夫だとしか」
(; ^ω^)「その証明は難しい気がするお」
(;,,゚Д゚)「スマン、確かにそうだな。ともかく、二人が大丈夫な前提で話すぞ。
いいか、しぃを見かけても絶対近づくな。アイツはもう ――」
ξ;゚听)ξ「ちょっと、一体何があったの!?」
(,,゚Д゚)「もうお前らはホッケーマスクの男にあってるよな?
俺達の所にもそいつが現れて、しぃと一緒に逃げたんだが……
あっ、ちなみにオワタは勝手に自滅してたな」
(; ^ω^)「それで、どうなったんだお?」
(,,゚Д゚)「廊下に出ても別の男に追われてな。物陰に隠れてたんだが――」
|M| |M| |M|
(;* − )「もうヤダ! いつまで逃げ続ければいいのよ!?
そもそもミセリがこんな企画を考えなければ――!」
(;,,゚Д゚)「おいおい、ミセリを攻めるなよ。こんなの想定してる訳ないだろ……?」
- 127 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 05:30:45 ID:NrrbPD0w0
(;* − )「でも……でも……ウッ、グスッ……」
(;,,‐Д‐)「やれやれ……」
(* − )「…… 」
(,,゚Д゚)「ん? しぃ、大丈夫か――」
(* ー )「…………!」 ガッ!
(;,,゚Д゚)「なっ!? ぐっ……し、しぃ!?」
(* ー )「はっ、あはっ、あははははははははははははっ――!!」
* * *
ξ;゚听)ξ「……じゃあ、いきなり襲い掛かってきたって事!?」
(,,゚Д゚)「ああ、なんとか隙を突いて逃げる事は出来たが……」
(; ^ω^)「首の痕はその時のものかお」
(,,゚Д゚)「万力のような力で絞めて来たからな……
多分アイツはしぃじゃない、別の何かだ」
- 128 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 05:33:00 ID:NrrbPD0w0
ξ ゚听)ξ「偽者、もしくは何かに憑かれてる……」
(,,゚Д゚)「ああ……再度言うが、しぃを見かけても近寄るなよ」
(; ^ω^)「おっおっ、わかったお。けど――」
ξ ゚听)ξ「……私は大丈夫よ。と言っても、証明は出来ないけどね」
( ^ω^)「ボクも大丈夫だお、いつものボクだお!」
ξ ゚ー゚)ξ「わかった、その言葉信じるわ。だから――」
( ^ω^)「おっおっ、ボクもツンの事信じるお!」
(;,,‐Д‐)「……あー、そろそろいいか? 話を進めたいんだが――」
ξ;゚听)ξ「えっ、あっ! ご、ごめん!」
(; ^ω^)「すまんお。ともかくボクらは、これから階段に向かうお」
(,,゚Д゚)「階段……マトマト達が行った所か。何か当てがあるのか?」
( ^ω^)「ボクもよく解らないけど……でも、人数が多い方が頼もしいお!」
ξ ゚听)ξ「よし、じゃあ慎重に向かいましょう。
ギコ、私のライトを貸すから時々後ろを見張ってくれる?」
(,,゚Д゚)「わかった、任せてくれ」
- 129 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 05:35:36 ID:NrrbPD0w0
☆ ☆ ☆
こうしてボク達は、クー達が向かったはずの階段まで辿り着いたお。
でも、そこでボクらを待ってたのは――
(;,,゚Д゚)「こいつぁひでぇな」
ξ ;−;)ξ「も、もうやだ……」
マ;メ;:д:: )メ
踊り場一面に広がった血の海と、変わり果てたマトマトの姿だったお……
(;,,゚Д゚)「どうする? ここからは早く離れた方がいい気がするが……」
( ^ω^)「割れた鏡があるお。クー達がやったのかお?」
(,,゚Д゚)「多分ここからホッケー男が出てきたんだろうな。
で、それに対抗するために……しかし、クーとネーヨはどこに行ったんだ?」
ボクはふと思い立ち、上り階段の方を照らす事にしたお。
そこにあったのは、点々と続く血の足跡。でもこれは上履きの跡じゃないお……
- 130 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 05:38:18 ID:NrrbPD0w0
(,,゚Д゚)「それは……もしかして男の足跡か?」
( ^ω^)「多分そうだお。この跡を追えば、もしかしたら二人の所に着くかもしれんお」
(;,,゚Д゚)「でもその場合、確実に男に遭遇するよな……」
(; ^ω^)「……そういえばそうだお。危うく自分からピンチになる所だったお」
(,,゚Д゚)「んー……しっかし、どうすればいいんだ?」
ξ ゚−゚)ξ「でもここに居ても意味無いし……後を追いましょ」
(;,,゚Д゚)「ちょっと待って、その先には男がいるんだぞ!」
ξ#゚听)ξ「じゃあ何よ! 二人を見捨てる気なの!?」
(; ^ω^)「ちょっと落ち着くお、ツン! ギコの言う事ももっともだお!」
ξ#゚−゚)ξ「いいわ! それなら私一人でも行くんだから!」
いきなりボクのライトを奪いかかろうとしてくるツン。
ツンの目は本気だお、説得は難しいかお……
- 131 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 05:40:14 ID:NrrbPD0w0
(; ^ω^)「ちょっ、待って、ま……あーっ、解ったお! 二人を助けにいくお!
でもちょっと待ってくれお、何か武器を調達してから行くお!」
(,,゚Д゚)「武器、か……廊下にある掃除用具入れからモップでも拝借してくか」
ξ ゚听)ξ「ねえ、そこにある消火器はつかえない?」
( ^ω^)「目くらましにはいいかもしれないお、一応持ってくかお。
っと……結構重いお、これ。ツン、ライト持ってくれないかお?」
ξ ゚听)ξ「わかったわ……あとブーン、ごめん。ありがと」
( ^ω^)「気にするなお。それにこれで、クー達を助ける事が出来るお」
(,,゚Д゚)「よし、じゃあ他の武器を調達しに行くぞ。
ツンは後ろに回ってくれ、俺が先頭に立つ。
ブーンはいざとなったらツンを連れて逃げてくれよな」
(; ^ω^)「おっおっ、そんなのダメだお!
戦う時は一緒に戦って、逃げる時は一緒に逃げるお」
ξ ゚听)ξ「ともかく行きましょ、無駄な時間は過ごせないわ。
あとギコ、ブーンの言ったように皆で行動だからね!」
- 132 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 05:42:45 ID:NrrbPD0w0
* 【廊下 ミセ*゚−゚)リ ( ゚"_ゞ゚)】 *
体育館から逃げ出した二人は他の男にも追われた結果、今は特技棟二階の廊下にいた。
ミセ*;−;)リ「もう嫌…… なんでこんな事に……」
( ゚"_ゞ゚)「ミセリ氏、少々冷静に物事を見極めてくれ。
錯乱による軽佻な行動でショボンの計らいが灰燼に帰す事を、我は忌諱するぞ」
ミセ*;−;)リ「だからもっと解りやすい言葉で話してよ……」
( ゚"_ゞ゚)「むぅ……むっ、何奴かの靴音がする」
ミセ;゚−゚)リ「えっ、またあの男が来たの!?」
( ゚"_ゞ゚)「いや、不明瞭であるが……兎も角、身を潜めるのが最良であろう」
ミセ*゚−゚)リ「わ、わかったわ。そこの教室にしよ!」
近くの教室内へと入り、手頃な机の下へと潜り込む二人。
足音は段々と教室まで近づいてきて、それと共に声が聞こえてくる。
「おーい、ミセリさーん! オサムくーん!」
ミセ*゚ー゚)リ「こ、この声って……もしかしてショボ君!?
ショボくーん! こっちこっちー!!」
ミセリの声に反応して、足音の主が教室内へと入ってきた。
- 133 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 05:45:28 ID:NrrbPD0w0
(メ´・ω・)「はぁっ、はぁっ……無事だったんだね!?」
ミセ*゚ー゚)リ「ショボ君! 怪我とかはしてな――」
ショボンの影を見たミセリは、机の下から飛び出し歓喜の声を上げる。
……しかしその声は、ショボンの姿をライトで照らした時に途切れる事となった。
(メ´・ω・)「……どうしたの? 急に黙り込んで……?」
ミセ;゚ー゚)リ「……なんで……ショボ君は血塗れなの?」
(メ´・ω・)「……男とやりあっただけだよ? 何の問題も無いからね?」
ミセ;゚−゚)リ「それに……その斧は?」
(メ´・ω・)「いやいや、あの男から奪っただけだよ? 気にしなくていいんだよ?」
軽快に笑いながら、ショボンはミセリに向け足を進めようとする。
ミセ;゚д゚)リ「いやっ! こっちに来ないで!!」
(メ´・ω・)「……どうしてそんな事言うの? 僕は君を助けようとしてるだけなのに?」
- 134 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 05:47:50 ID:NrrbPD0w0
ミセ;゚−゚)リ「と、とりあえずその斧を放してよ! そうすれば……」
(メ´・ω・)「なんでだい? これは護身用に持ってないと――
ああ、そっか…… 君もこれを手放した隙に僕を襲う気だね?」
ミセ;゚听)リ「な、なんでそうなるの!?」
(メ´・ω・)「駄目だよ? そんな事言っても僕は騙されないからね?」
ミセ*;−;)リ「何でよ……おかしいよ、ショボ君……」
(メ´・ω・)「泣いても無駄だよ? 僕は騙されないからね?
その涙の裏では僕を殺す算段を立ててるんでしょ?」
ミセ*;д;)リ「助けてっ、オッサー! ……オッサー?」
ミセリはオサムが隠れていたはずの机へと目を移す。
……しかしそこには何の人影も無かった。
ミセ;゚听)リ「オサム君!? どこに行ったの!?」
(メ´・ω・)「オサム君……? 何を言ってるの?
彼ならそこにいるのが解らないの……?」
- 135 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 05:50:36 ID:NrrbPD0w0
ショボンが指差す方向、教室の端へと目をやるミセリ。
そして彼女の目に映し出されたのは――
ミセ; д )リ「あ……ああ……!?」
( "_ゞ:;: 。.,
頭を奇妙な形へと変形させ、床へと血溜を広げる、変わり果てたオサムの姿だった。
ミセ; − )リ「う、嘘よ……! こんなの、タチの悪い夢……」
(メ´・ω・)「僕が教室に入った時、彼から僕に襲い掛かってきたんだからね……?
ミセリさんは見てなかったの? 気付かなかったはずないよね?」
ミセ;゚−゚)リ「オッサーが襲うなんて、そんな時間ある訳ないじゃない!
ショボ君が何を言ってるのかわからないよ……」
(メ´・ω・)「……やっぱり君はおかしいよ? やっぱり君は偽者なんだね?
本物のミセリさんとオサム君はどこ? 君に聞けば解るかな?」
斧を持ち上げながら、ショボンはゆっくりとミセリとの距離を詰めていく。
それに追いやられるようにミセリは下がっていくが、やがて背中へと壁が当たる。
壁を背にして逃げ場が無くなったミセリ、その前に立ったショボンは斧を振り上げた。
- 136 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 05:52:59 ID:NrrbPD0w0
(メ´・ω・)「さあ、本物の二人はどこ? 答えれば助けてあげるよ……?」
ミセ;゚−゚)リ「お願い、ショボン君! 目を覚ましてよ!」
(メ´・ω・)「……やっぱり、君は偽者なんだね? いいよ、自分で探せばいいんでしょ?
僕は二人を探さなきゃいけないんだからね、君にはもう構ってられないんだよ?」
ミセ ;−;)リ「誰か……助けて……」
(メ´・ω・)「何を言ってるんだい? 偽者の君に助けが来るわけが――」
……その瞬間、ミセリは三つの音を立て続けに聞いた。
一つは、教室の外からズシリと響く、大量の火薬が弾ける衝撃音。
その次は、教室と廊下を隔てる窓ガラスが砕け散る、高い破砕音。
そして最後の一つは――
(メ´ ω(:●三 「ふごっ―― !?」
ショボンの顔へと鉄球がぶつかり、彼が倒れつつ口から出した異音だった。
- 137 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 05:55:08 ID:NrrbPD0w0
ミセ;゚−゚)リ「な、何が起こったの!?」
教室の外へと目をやるミセリ。そこにあったのは――
从;゚∀从「あれ、おっかしーな? 理論上は頭が破裂するはずなのに……」
(;(:;#)_ゝメ)「そんなグロテスクな物、見れない方が幸せだろ」
妙な筒を肩へ構えたハインと、顔面がボコボコになっている兄者の姿。
それを見止めたミセリは、教室の外へと駆け出した。
ミセ*;ー;)リ「ハインー、兄者くーん! 怖かったよー!」
从 ゚∀从「間一髪だったな、ミセリ……って、ちょっ! 抱きついてくるな!」
(*(:;#)_ゝメ)「そうそう、抱きつくなら俺へ―― イテッ! 傷口は蹴らないで!」
- 138 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 05:57:55 ID:NrrbPD0w0
ミセ*つー;)リ「ありがとう……あれ、ペニちゃんはどこ?」
从 ゚∀从「いや、それなんだが……化学室で突然妙な男が現われてな」
ミセ*゚ー゚)リ「そっか、だから兄者君はあんな醜い姿に……」
(;(:;#)_ゝメ)「いや、この傷の元凶はハインとペニサスのせいだったよな!?
男が現れたのも、突然でも何でも無いだろ? あと醜いはやめて心に刺さるから」
从 ゚∀从「まあともかく……なんとか退治したんだが、ペニサスが何処かへ消えちまったんだよ」
ミセ;゚−゚)リ「えっ、ペニちゃんがいなくなっちゃたの!?」
从 ゚∀从「んで、装備を整えて探してる最中、ふと見るとミセリがピンチになってるからな……
とりあえずショボンをぶっ飛ばしたんだが、やっちゃってよかったんだろ?」
ミセ*゚ー゚)リ「うん、うん! 本当にありがとう!!」
( (:;#)_ゝメ)「ところでもう一人……オサムだったっけ? あいつはどうした?」
ミセ ゚−゚)リ「オッサーは……あれ?」
教室の中、オサムが倒れていた所へと目をやるミセリ。
だがそこにはオサムの姿はおろか、何の痕跡も残されていなかった。
- 139 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 06:00:24 ID:NrrbPD0w0
ミセ;゚听)リ「嘘……さっきまでそこに倒れていたのに……」
从;゚∀从「オサムは一緒だったが、何処かへ消えたって事か?」
ミセ;゚−゚)リ「多分そうだけど……何がなんだかよく解らないよ」
从 ゚∀从「まあいい。じゃあペニサスとオサム、二人を探す事に――」
(:(:;#)_ゝメ)「おっ、おい! あれ!!」
(メ´ ω(#:))「……どうしてなの? なんでこんなに偽者が多いの?
もういいよ、全員殺せばいいんでしょ、そうだよね?」
从;゚∀从「チィッ、まだ威力が足りないのか!?」
ミセ;゚−゚)リ「ショボ君……」
从;゚∀从「逃げて他の男に遭遇してもめんどいし……
ここでショボンを迎え撃つぞ! いいな!?」
- 140 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 06:03:13 ID:NrrbPD0w0
○ 【校庭 川 ゚ -゚) ( ´ー`)】 ○
(; ´ー`)「ふぅっ、一体どうすればいいんだーヨ……」
川 - )「…………」
(; ´ー`)「はぁっ……だからマトマトの件は、クーには責任ネーヨ。
いい加減機嫌戻してくれーヨ」
川 - )「でも……私は見ることしか出来なかった……」
( ´ー`)「そんな事言ったら俺なんて気付きもしなかったーヨ。
ともかく、この学校から脱出する事を考えるーヨ」
周りに響かないよう、小さな声で会話をするネーヨとクー。
二人の姿は校舎の上の階ではなく、校庭の片隅にある植え込みの影にあった。
近くの校舎の壁には、上の階から伸ばされた長いロープが垂れ下がっている。
( ´ー`)「正門からも出られないし……何か脱出の糸口は無いのかーヨ?」
数分前、ロープを伝って校庭へと降りた二人は、闇に閉ざされた校外へと向かった。
もしかしたら外へ出られるかもという一縷の望みを賭けて行った行動だが――
- 141 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 06:05:37 ID:NrrbPD0w0
(; ´ー`)「これは……崖になってるのかーヨ?」
正門と外界の境。そこでプッツリと地面が途切れ、大きな何も無い空間が口を開けていた。
ネーヨは手頃な石をまず足元に落とし、次に遠くへと投げてみたが、結果は同じ。
広大な闇へと溶け込んでいく石が見えるだけで、底に到達する気配は全くなかった。
(; ´ー`)「はぁっ……とりあえずQ組まで戻ってみるかーヨ」
川 ゚ -゚)「……いや、ここはミセリかペニサスに合流するのがいいだろう」
( ´ー`)「おっ、調子戻ったのかーヨ?」
川 ゚ -゚)「すまない、取り乱してしまって……ありがとな。
ともかく、主催者の二人なら何かを知ってる可能性がある。
もしかしたら、この異常事態を抜け出す噂があるのかもしれないし……」
( ´ー`)「確かに正論だーヨ。二人はたしか、体育館と化学室だったかーヨ?」
川 ゚ -゚)「ここからなら体育館が……待て、何か聞こえないか?」
ウッ・・・ ウッ、グスッ・・・
- 142 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 06:07:45 ID:NrrbPD0w0
(; ´ー`)「女のすすり泣き……怪談にしてはベタすぎるーヨ」
川 ゚ -゚)「……よし、向かうぞ」
(; ´ー`)「正気かーヨ!? 行かない方が身のためだーヨ!」
川 ゚ -゚)「しかしクラスの誰かかもしれないだろ? あっちの方か……」
クーは泣き声の方へと向かって走り出した。
少しの間ポカンとしていたネーヨだが、慌てて後を追い出す。
(; ´ー`)「元気になったらこれかーヨ、まったく!」
二人がいた所からたいして離れていない木陰、そこに座り込む小さな影があった。
誰かが近づいてくる音を聞き、声の主は悲鳴を漏らす。
川 ゚ -゚)「怖がるな、クーだ。そっちは……?」
「クーなの……?」
泣き声の主が、草陰からゆっくりと顔を出した。
(*;ー;)「よかった! クー……!」
……声の主、しぃはクーへと駆け寄っていく。
- 143 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 06:10:34 ID:NrrbPD0w0
(*;д:)「ふぁぁぁああああん!! 怖かったよおおぉぉぉっっ!!」
川 ゚ -゚)「おー、よしよしよし……大丈夫か? 怖かったな……」
(; ´ー`)「よかった、しぃかーヨ」
クーの胸元に飛びつき、泣き声を上げるしぃ。
しぃの頭をなだめるように優しく撫でながら、クーは言葉を続けていく。
川 ゚ -゚)「で、一体何があったんだ? 一緒にいた二人は?」
(*∩д;)「それが……ギコ君がっ、ギコ君が!!」
川 ゚ -゚)「ギコ……? 彼がどうし――」
クーが問い直そうとした時、突如上の方でガラスが割れる音が響く。
上へと目をやった三人は、四階の窓ガラスが割れている事を確認できた。それに――
( ;0::0;)「…………」
ガラス片と共に、一人の男が落ちてくる事もだ。
- 144 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 06:12:25 ID:NrrbPD0w0
川 ゚ -゚)「なっ……こっちの位置がバレたか?」
( ;0::0;)「……!!」
校庭へと降りた男は、二本の足だけで難なく着地の衝撃を殺した。
そのまま三人の方へと顔を向け、ゆっくりと歩みだす。
(; ´ー`)「くっ、とりあえず校舎内に逃げるーヨ!」
川 ゚ -゚)「そうだな。ここは引くぞ、しぃ。 ……しぃ?」
(;*゚д゚)「あ……ああ……」
(; ´ー`)「こらっ、何を座り込んでるかーヨ!?」
(;*゚−゚)「ダメ……力が抜けて立てない……」
( ´ー`)「ちぃっ……もうこうなりゃしょーがネーヨ。
クー、しぃを引き摺ってでも連れて逃げるーヨ!」
川 ゚ -゚)「ちょっと待て、そっちはどうする気だ?」
( ´ー`)「ギリギリまでこいつを食い止めて、それから逃げるーヨ」
ネーヨは懐に手を入れ、金属製の警棒を取り出す。
一見はただの折りたたみ警棒にも見えるその正体、実は改造スタンガンである。
多くの警官達を軽く触れるだけで倒していったそれを手にしたネーヨは、男へと向かった。
- 145 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 06:15:25 ID:NrrbPD0w0
(#´ー`)「うらあっ! 倒れろーヨ!」
男の首元に電圧を最大にまで上げたスタンガンを叩き込み、手元のスイッチを押し込んだ。
男の体に紫電が走り、全身が一瞬青白く輝く。だが――
( ;0::0;)「……!!」
(; ´ー`)「おっと、そうはいかネーヨ!」
体に流れる電流などまったく気にせず、男は足元から斧を振り上げてきた。
攻撃が効かない事を考慮に入れていたネーヨは、男の反撃を余裕を持ってかわす。
以前スタンガンが効かない相手と戦った経験が、偶然にも活きた形だ。
スタンガンで叩く場所を変えつつ、目の前の男へと攻撃を加えていくが――
(; ´ー`) (このままじゃジリ貧だーヨ……)
大型の獣すら昏倒させる威力の電圧を喰らっても、目の前の男は怯みさえしない。
男の攻撃は大振りなのでこちらに当たりはしないが……ネーヨがそんな思考をした時だ。
(; ´д`)「がっ……!?」
横に降られた男の斧をしゃがんでかわした時、今までに無い速さで男の膝が蹴り出された。
それは油断していたネーヨの顔へと当たり、彼の視界と思考する時間を奪う。
- 146 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 06:17:27 ID:NrrbPD0w0
(; ´―`)「や、やべ――!」
ネーヨの目に飛び込んでくるのは、必殺の一撃を入れるために振り上げられた斧。
尻餅をつく格好になったネーヨには、それをかわす術は無い。
( ;0::0;)「……、 !?」
斧を振り上げた男、その後ろから飛び掛る影があった。
その影は掲げられた右腕にと絡み付き、男の攻撃を妨害する。
川 ゚ -゚)「ネーヨ、早く立て!」
(; ´ー`)「ばっ……何で戻って来たーヨ!」
川 ゚ -゚)「これ以上、誰一人見捨てて――あうっ!?」
男が右腕を強く動かし、クーは校舎の影際まで弾き飛ばされる。
彼女を助けようと立ち上がろうとするネーヨ、だが再び男の蹴りが襲い掛かってきた。
なぎ払うように横合いから入ってくる蹴りはネーヨのわき腹にあたり、彼を再び地面に倒す。
(; д )「うっ……ゲホッ!」
ひざまずきながら苦しそうな声を上げるネーヨを尻目に、男はクーの方に近づいていく。
クーも男の接近には気付いているが、飛ばされた衝撃によって立ち上がる事が出来ない。
そして、クーの目の前へと男がせまり――
「おおおおおおおおおっっ!!」
- 147 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 06:20:18 ID:NrrbPD0w0
( ;0::0;)「……!?」
川 ゚ -゚)「この声は――!?」
突如響いた声に、男の動きが止まる。
声の正体を突き止めるため、左右を確認する男。
その発信源は見当たらず、だが声の音量は飛躍的に大きくなっていく。
( ;0::0;)「……!!」
そして男が声の正体に気がついた時は、既に手遅れだった。
(#゚ω゚)「どらっせえええええいいっ!!」
(;; :: ;)「……!! 」
上空から落ちてきた影―― ブーンが、手持ちの消火器を男の頭に叩き落とす。
ブーンの体重も上乗せした落下の衝撃、消火器自体の硬度と重さも合わさり、その威力は計り知れない。
消火器から手を放したブーンは両手を大きく広げ、そのまま大の字で地面へと落下した。
川;゚ -゚)「……ブ、ブーン? 生きてるか!?」
声の間隔からして、恐らくブーンは相当の高さから落下してきたと推測したクー。
実際にその考えは当たっており、彼は校舎の四階から飛び降りてきている。
普通なら無事にすむはずは無い。慌ててクーは身を起こし、彼の元へ向かう。が――
- 148 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 06:22:59 ID:NrrbPD0w0
(; ^ω^)「いてててて……着地失敗したお……」
何事も無かったかのように身を起こすブーン。
服についた砂を払いつつ、笑顔で立ち上がろうとする。
川 ゚ -゚)「ブーン、無事なのか!?」
( ^ω^)「おっおっ、大丈夫だ 〔 ガンッ 〕 ぐおおっ!?」
男の頭から離れ落ちた消火器が、立ち上がりかけたブーンの頭を直撃した。
そのまま男は後ろにゆっくりと倒れていき、消火器はブーンの足の小指へと落下する。
( ;ω;)「あんぎゃあああっっ! これは酷すぎるお!?」
川 ゚ -゚)「……やれやれ、最後まで決めてくれよな」
( つω;)「うっうっ……ともかく、クーは大丈夫かお?」
川 ゚ -゚)「こっちは大丈夫だが……むしろブーンに聞きたいな、そのセリフは。
結構な高さから落ちてきたんだろ? 頭に異常は無いか?」
(; ^ω^)「おっおー、まあ落ちた分には問題ないお。むしろ消火器が痛かったお」
川 ゚ -゚)「……まあともかく、ツンはどうした? あとワカッテマスは?」
( ^ω^)「ツンは一緒に行動してるけど、ワカッテマスは……」
川 ゚ -゚)「そうか。いや、言わなくていい……ちょっと待て、ツンを置いてきたのか!?」
- 149 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 06:25:04 ID:NrrbPD0w0
( ^ω^)「おっおっ、ギコと合流してるから問題ないお!
多分二人ともこっちに向けて降りてくるはずだお」
川 ゚ -゚)「そうか、なら問題は――」
(;*゚ー゚)「ちょっと待って、ギコ君と二人だけなの!?」
遠くから行動を見守っていたしぃが飛び出し、クーのそばまで駆け寄ってくる。
( ^ω^)「そうだけど何か……って、しぃかお!?」
川 ゚ -゚)「どうしたブーン、そんな慌てふためいて……」
(; ゚ω゚)「クー、しぃから離れるお! しぃはおかしくなってるお!」
(;*゚−゚)「えっ……? 何を言ってるのよ、ブーン君!?」
(; ^ω^)「だって、ボクはギコからちゃんと話を聞いたんだお!?
しぃがいきなり襲い掛かってきたって! 間違いないお!」
(;*゚д゚)「えっ……おかしいわよ、ブーン君! だって……だって……」
(#^ω^)「いい加減にするお! ネタはもう――」
川 ゚ -゚)「ちょっと待て、ブーン! そう一方的に攻めるな!」
(*;д;)「だって……襲ってきたのはギコ君だもん!!」
- 150 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 06:28:48 ID:NrrbPD0w0
○ 【数分前 廊下 ( ^ω^) ξ ゚听)ξ (,,゚Д゚)】 ○
階段から足跡を辿っていった三人は、割と早く男の姿を見つける事が出来た。
窓の外を見つめる男に気付かれないよう、ゆっくりと迫って行く。
(; ^ω^) ヒソヒソ(しかしあんな所に立って、一体何をしてるのかお?)
ξ;゚听)ξ ヒソヒソ(夜景を眺めてるとかロマンティックな話じゃなさそうね……)
(;,,゚Д゚) ヒソヒソ(そもそも外は何も見えないだろ……ん? 動くか?)
男が窓に手をかけ、開けるような仕草をする。
窓には鍵がかかってる様でガタガタとしか揺れず、だが男はそのまま揺さぶり続けた。
やがて男は窓を開ける事を諦めたのか、一歩下がり――
( ;0::0;)「……!!」
窓ガラスへと頭から突っ込み、校外へと落下していった。
廊下に他の障害が無い事を確認した三人は、男が落ちた窓へと迫る。
ξ;゚听)ξ「窓ガラスを開けれないって事は……知能はそうとう低いのね」
( ^ω^)「それにしてもクー達はどこにいったんだお……」
(;,,゚Д゚)「おい、あれ! ネーヨじゃないか!?」
- 151 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 06:30:03 ID:NrrbPD0w0
校庭には光源が二つあり、一つは男をすぐそばで照らしていた。
もう一つのライトはやや遠目から、向かい合う二人を映し出している。
男のそばでライトを持つ影は右手に持った棒を振り回し、男に攻撃を仕掛けているようだが……
(;,,゚Д゚)「ぐっ……ネーヨの攻撃は全然効いてないようだな……」
(; ^ω^)「このままじゃやられちゃうお! って、ああっ!? 地面に倒れたお!」
ξ;゚听)ξ「これだと……って、あれは!?」
遠目からライトで照らしていた人物が、地面に座っているもう一人へとライトを手渡す。
そのまま校庭を回りこみ、振り上げられた男の腕へとしがみ付いた。
女性に見えるその影は少しの間男ともがき、やがて校舎そばまで弾き飛ばされる。
ξ:゚−゚)ξ「このままだと二人が……」
( ^ω^)「……ギコ、ツンを頼むお」
(;,,゚Д゚)「ツンを頼むって何を―― バッ、何してやがる!?」
そこからのブーンの行動は迅速だった。
素早く鍵を開け窓をスライドさせたブーンは、サッシへと足をかける。
二人が止める間も無くブーンは窓枠へと跳び上がり、消火器を手にしたまま落下していった。
- 152 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 06:32:25 ID:NrrbPD0w0
ξ;゚听)ξ「ちょっ……ブーン!? ブーーーーン!!」
(;,,゚Д゚)「おいツン、そんな身を乗り出すな! お前まで落ちるぞ!」
ξ;゚−゚)ξ「だって、ブーンが! ブーンが落ちたのよ!?」
(;,,゚Д゚)「とにかく落ち着け! ほら、あいつは無事そうだぞ!」
下の方では、動いているブーンの姿が確認できるが――
ξ;゚听)ξ「私達も降りるわよ、ギコ!」
(;,,゚Д゚)「ちょっ、だから飛び降りようとするな! せめて階段で降りてくれ!」
ギコの言葉で少しは冷静になったのか、窓枠にかけた足を離すツン。
身を翻し、階段に向けて走り出す。
ξ#゚听)ξ「まったく、あのバカはっ!!」
(;,,゚Д゚)「そう急ぐなよ、転ぶぞ!」
ξ#゚−゚)ξ「あのバカは四階から飛び降りたのよ!?
それに比べれば転ぶくらい―― キャアッ!?」
階段を途中で踏み外し、踊り場まで転げ落ちるツン。
幸い落差はほとんどなかったので、彼女が怪我をする事はなかった。
- 153 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 06:35:22 ID:NrrbPD0w0
ξ;‐凵])ξ「ったー……あー、もう!!」
(;,,゚Д゚)「だから言わんこっちゃ……待て、ツン! 周りがおかしくないか?」
ξ;゚听)ξ「なによ、周りがおかしいって…… えっ、なんで!?」
何の変哲も無い光景だったので、最初はギコの言葉に気付けなかったツン。
だが少し前の状況と照らし合わせると、答えはすぐに見つかった。
ξ;゚听)ξ「ここって……マトマトがいたはず……」
先ほど自分達が見た凄惨な光景、それの名残が綺麗に消え去っている。
辺りには血痕の一滴も無く、また壁にあった割れた鏡も無くなっていた。
(;,,゚Д゚)「おかしい……絶対おかしすぎる……」
ξ;゚−゚)ξ「……って、ブーン!」
(;,,゚Д゚)「あっ、おい! 無闇に先に進むのは――!」
ツンはギコの静止の声を聞かず、怪談を駆け下りていく。
一方ギコは周りの状況を再度確認していたため、ツンを追うのが少し遅れた。
……この事が後になって彼の大きな障害になるとも知らずに。
- 154 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 06:38:12 ID:NrrbPD0w0
ツンは階段を次々と駆け下りていった。
内側の手すりに捕まりながら、踊り場ごとに身を捻っていく。
……やがて、ツンはある異変に気付いた。
ξ ゚听)ξ (あれ? この先が一階じゃなかったっけ?)
この校舎は各学年の教室が入っているため、二階から上の構造は基本同じだ。
階段には階数を示す記号は無く、一度廊下まで出ないと階数が解らない造りとなっている。
そのため階を行き間違え、別の学年の教室に入ってしまう事がたびたびあるのだが……
ξ ゚−゚)ξ (数え間違えたのかしら……ともかく、早く行かないと!)
ツンは廊下に繋がる踊り場を曲がり、階の中腹にある踊り場を曲がる。
その先にあったのは――
ξ;゚听)ξ「えっ!? 何でよ!!」
一階を示す壁に飾られた大きな油絵は無く、代わりに殺風景な壁が見える。
少なくとも二階より上を表すそれを目の前にして、ツンの足は一度止まった。
ξ;゚−゚)ξ (このまま行っても……いや、でもブーンが!)
ブーンに会うため、彼女は再び走り出す。
降りた階数が二桁に到達しようとも、彼女はただがむしゃらに降り続けた。
そんな彼女に答えたのか、突如風景にある変化が現れる。
……だがそれは、彼女にとっては望ましくない出来事だった。
- 155 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 06:40:00 ID:NrrbPD0w0
ξ;゚听)ξ (か、鏡……!?)
階と階を挟む踊り場の左側の壁、下り階段に近い方に一枚の大きな姿見が現れた。
階段にまつわる七不思議がツンの頭に一瞬よぎり、彼女はそれを思考から外そうとする。
しかしそのツンの不安は、奇しくも現実の物となってしまう。
| 0::0;)「…………」
ξ; )ξ「ヒッ…… いっ、いやああああああぁぁぁっっ!!」
彼女が鏡の横を駆け抜けると同時、男が鏡から躍り出してくる。
後ろに男をつける形になった彼女は、そのまま下を目指そうとするが――
ξ ;−;)ξ「嘘ッ、下にも!?」
下の階に降りたツンは、その下の踊り場にも男が出現したのを見た。
上と下とで挟み撃ちになる形、ツンに残された道は廊下へと逃げるしかない。
そしてツンは廊下へと足を踏み出し――体が宙を舞った。
ξ ;凵G)ξ「えっ……!?」
ツンが見ていた廊下の光景が消え、辺りが闇に閉ざされる。
闇の中をひたすら落ちていく浮遊感。ぐるぐると体が回転し、どちらに向かって落ちているかも解らない。
永遠とも一瞬とも取れない時間が過ぎ―― 突如その感覚が止まった。
- 156 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 06:44:37 ID:NrrbPD0w0
ξ; )ξ「もう、何が何なのよ……!?」
ツンは辺りを見渡し、自分が廊下の端に座り込んでいる事に気がつく。
そこは先ほどまでいた校舎ではなく、二つ離れた場所にある旧校舎、通称『クラブ棟』の一角であった。
ξ ゚听)ξ (異世界に辿り着いたとかじゃ無さそうだし、男から逃げられた事を思えば……)
少し安堵の息を漏らしたツンは、ブーンに会うために立ち上がろうとする。
―― その時、彼女の視界にある全ての教室の扉が一斉に開いた。
ξ;゚听)ξ「えっ……!?」
( ;0::0;) ( ;0::0;) ( ;0::0;)
それぞれの教室から、思い思いの武器を持った男たちがわらわらと出てきた。
ふと男の一人がツンの姿に気付き、残りの男も連鎖的にツンへと視線を送る。
ξ;゚听)ξ「あ、ああ……」
ツンの後ろは壁、逃げ場など無い。
男たちはゆっくりとツンに迫っていく。
ξ )ξ「ごめん、ブーン。私……」
- 157 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 06:47:03 ID:NrrbPD0w0
「GURURURUUUUUUW!!」
(;;0::0;)「……!?」
ツンに迫っていた男たちが、響き渡った唸り声に足を止める。
そしてもっともツンから離れた男が、いきなりパタリと地面へ倒れた。
「……グル君、『はかいこうせん』です!
向こうに人がいるようですから、当てないようにするのですよ!」
「GUAAAAAAATH!!」
女の声の後、廊下に一条の閃光が走る。
男たちの体を貫いたそれは、器用にツンを避けながら上下左右へと動き回る。
そして男たちが折り重なるように倒れ、その向こう側から数名がツンの元へと走ってきた。
('A`;)「ツン! 大丈夫か!?」
(゚、゚トソン「精神はともかく、体に傷はないようですね」
*(‘‘)*「こんないっぱいの男たちに囲まれて、よく無事でしたね」
ξ*;凵G)ξ「ドクオ、トソン、ヘリカルさん……!」
- 158 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 06:50:30 ID:NrrbPD0w0
▼゚ェ゚▼「GAW、GURUUUYYYYY!」
ξ ;−;)ξ「ひっ!?」
(゚、゚;トソン「おっと、忘れてたようですね。ビーグル君、おすわりです!」
▼・ェ・▼「キュ、キューン……」
('A`)「ツン、ブーン達はどうした? ってか何であれをやらないんだ!?」
ξつ凵G)ξ「そ、それが――」
ツンが事情を話すにつれ、ドクオの顔が険しくなっていく。
('A`;)「そっか、俺的にはツンの力を頼りにしたかったんだが……
まあいい、それよりブーンが心配だな」
(゚、゚トソン「では校庭へと向かうのがいいようですかね?」
('A`)「ああ、とりあえず合流しよう。ツン、立てるか?」
ξ ゚听)ξ「うん、ありがと……。ところで、その犬は……?」
('A`)「あー……行きながら説明してくよ」
- 160 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 06:52:54 ID:NrrbPD0w0
○ 【廊下 ミセ*゚ー゚)リ 从 ゚∀从 ( ´_ゝ`)】 ○
(メ´゚ω゚)「あはははははっはははっ!? どうしたの、こっちに来なよ!?
追いかけっこばっかりだと楽しくないんだけどさっ!?」
从;゚∀从「んにゃろっ、あの人外ヤローめ……」
( ´_ゝ`)「ミセリン、まだ走れるか?」
ミセ;゚ー゚)リ「大丈夫だけど、その名前では呼ばないで」
ショボンに追いかけられながら、特技棟の中を逃げ回る三人。
ある程度距離を取り、稼いだ時間で手持ちの武器で攻撃するという一撃離脱を繰り返している。
他の校舎へと続く通路や一階への階段は防災用のシャッターで塞がれ、校舎からは脱出できないでいた。
一度は離れた時間を利用して物陰に隠れる事もしたのだが、
危うく見つかりそうになり、今はひたすら逃げ回る戦術を取っている。
普段の脚力差ならとっくの昔に追いつかれていてもおかしくはないが……
从 ゚∀从「ってかなんであいつはまだ動けるんだよ?
マキビシとか粘着弾とか喰らってるはずだろ!?」
(: ´_ゝ`)「おいおい、俺に聞かれても困るぜ。
まあ現状で動けてる分仕方ないだろ?」
兄者が背負ったリュックの中身、ハインの作った道具により時間稼ぎには成功していた。
- 161 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 06:55:03 ID:NrrbPD0w0
ミセ*゚ー゚)リ「あっ、そっちはさっきマキビシ撒いた方じゃないっけ?」
从 ゚∀从「やべ、そうだったな。じゃあこっちに逃げるか」
逃げる方向を変え、階段へと向かう三人。
ショボンもややたどたどしい足取りながら、三人を追っていく。
ミセ;゚−゚)リ「はぁっ、はぁっ……しかし、向こうも体力あるわね……」
从;゚∀从「俺も正直限界寸前だぜ……やっぱあのまま隠れとくべきだったか?」
ミセ*゚ー゚)リ「いや、あれだと絶対見つかってたよ」
階段を上がりきり、再び廊下に出る三人組。
( ´_ゝ`)「俺、無事にこの先生きのこれたら、モナ王のバニラ味を食うんだ……」
从;゚∀从「なぜそこでフラグ立てるし!?」
アセ;゚д゚)リ「やすっ! せめてハーゲンにしようよ!」
階段が見張れる位置で僅かな休息を取り、ショボンの姿が見えると同時に再び走り出す。
(メ´゚ω゚)「ははっ、何で逃げるの? 偽者のくせに? 大人しくこっちに来てくれない!?」
从;゚∀从「ぜってーやーだねーっと!」
- 162 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 06:57:14 ID:NrrbPD0w0
( ´_ゝ`)「しかしこうして逃げてばかりもあれだな……
もう他に攻撃できそうな道具は無いのか?」
从 ゚∀从「他に立ち向かえそうな物は準備できてないな。
ワイヤースパーク、ネットランチャー、爆裂バット……全部効かなかったし。
……いや、待てよ。あいつを試してねーじゃん」
ミセ*゚ー゚)リ「あいつって何?」
从 ゚∀从「ハバネロボール、ハバネロの粉末を使った催涙煙幕玉だ。
上のスイッチを押し込めば、その瞬間に大爆発!
ただ一瞬で教室一面に広がるほどの拡散力があるから……」
( ´_ゝ`)「あれ? じゃあ100%自爆するんじゃね?」
从 ゚∀从「うん、そうだ。まあ誰かショボンに突っ込んで使ってくれる人がいれば問題ないが……」
( ´_ゝ`)「ねえ、何で俺を見ながら言うの? やらないよ俺は」
从#゚∀从「やれ! そして散って来い! 大丈夫、骨は放置しとくから!」
(; ´_ゝ`)「せめて拾うくらいしてくれ! ってか死ぬの確定!?」
- 163 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 06:59:59 ID:NrrbPD0w0
(メ´゚ω゚)「はははっ、もういいよ!? そこまでして逃げるなら考えがあるからね?」
ミセ;゚ー゚)リ「あんな事いってるけどどうする?」
从 ゚∀从「ほっとけほっとけ、どうせ只の戯言――キャアッ!?」
突如ハインがバランスを崩し、廊下へと倒れこむ。
(; ´_ゝ`)「うおっ、大丈夫か?」
从;゚д从「ぐっ……脚がっ!」
ハインの右脚には、決して浅くは無い傷跡がパックリとついている。
近くには床に刺さる手斧、先ほどまでショボンが手にしていた物だ。
ミセ;゚−゚)リ「ショボ君が投げたの、これ!?」
从;゚∀从「二人とも俺にかまわず逃げろ! あと兄者、リュックの赤いボールを渡せ!
俺が食い止めるから、二人は逃げて――」
( ´_ゝ`)「……悪いが、そいつは出来ない相談だ」
兄者は手斧を拾い、こちらに向かってくるショボンへと走り出す。
こちらに向かってくるショボンは丸腰、それを狙っての行動である。
- 164 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 07:02:26 ID:NrrbPD0w0
(メ´゚ω゚)「ははっ、兄者君が相手をしてくれるかい?」
( ´_ゝ`)「ああ。そして悪いが、少し大人しくなってもらうぞ!」
斧を横ぶりに構え、ショボンの腰を見据える兄者。
人を殺せるほどの度量は兄者にないので、足を奪おうという考えでの攻撃だったが……
(メ´゚ω゚)「甘いよ、すごく甘いからね?」
(; ´_ゝ`)「なっ!?」
一直線に突っ込んできたショボンにタイミングを合わせ、斧を振った兄者。
だがショボンは待ち構えていたかのように後ろに跳び、その攻撃をかわす。
(メ´゚ω゚)「攻撃の流れがバレバレなんだよ、解る? もっと殺気を殺さないと!?」
(; _ゝ )「がっ……!?」
ショボンが足を振り上げ、兄者の右腕を蹴り飛ばす。
蹴られた弾みで斧は廊下の端へと転がり、カラカラと音を立てた。
ショボンは鋭く尖ったガラス片を懐から取り出し、兄者へと斬りかかる。
(メ´゚ω゚)「これで兄者君の偽者は――」
(; ´_ゝ`)「ちくしょおおおっっ! 二次元に行くまで死ねるかぁっっ!!」
- 165 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 07:05:02 ID:NrrbPD0w0
腕を交差させ、ショボンへと突っ込む兄者。
だがその行動は、再びのショボンの蹴りに阻まれる。
(; _ゝ )「うっ、がふっ……!」
从 ;д从「あにじゃあああああっっ!!」
(メ´゚ω゚)「バイバイ、偽者君?」
そしてショボンの持つガラス片が、兄者の首へと振り落とされた。
( _ゝ )「ぐっ…… 」
从 ;−从「あ、兄者……?」
ミセ*;д;)リ「やだ……やだよ……もうこんなの……
お願い……夢なら覚めて…………!」
(メ´・ω・)「…………よし、じゃあ後は君達だね?」
- 167 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 07:07:35 ID:NrrbPD0w0
ショボンは一歩ずつゆっくりと、床に座り込んだ二人に近づいていく。
ハインの道具は兄者が背負ったリュックの中にあるので、もはや二人に抵抗する術は無い。
从#;Д从「テメェ……やるなら俺だけやれ!」
ミセ#゚−゚)リ「ダメよ、そんなの! お願い、ショボ君! いつもの優しいショボ君に戻って!?」
(メ´・ω・)「……何を言ってるんだい? いつもの僕じゃないか?」
「……いや、それは違うな」
突然廊下に流れた声、それによってショボンの動きが止まった。
(メ´・ω・)「……なんだい、この声は?」
「いつもの君が般若とするなら、今の君は阿修羅という所だな」
ショボンの後ろ側から聞こえる声、その主が顔を出す。
ミセ;゚д゚)リ「えっ、なんであなたがここに!?」
〜 〜 〜
- 168 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 07:10:00 ID:NrrbPD0w0
○ 【プール ノハ*゚ー゚) (ФωФ ;) / ゚、。 /】 ○
ノパ听)「うらあああっっ!! 上位、双象螺旋管!」
ヒートの放った拳が、また一人男をプールの中へと弾き飛ばす。
彼女の周りは二十を越える数の男が並んでおり、その倍の人数が水面へと浮かんでいた。
( ;0::0;)「……! …………?」
(;;0::0;)「……!? ……! ……!!」
/ ゚、。 /「心なしか、男達も襲うのを嫌がってるようですね……」
(; ФωФ)「さすがに何度も返り討ちにあってるのであるから……
少し仮面の男たちが可哀想であるな……」
ノパ听)「どうしたんだ、怖いのか!? 一斉にかかって来てもいいんだぞ!?」
(;;0::0;)「…………!」
ノパー゚)「よーし、じゃあ十秒待つ! その間に逃げるか来るか決めとけよな!」
(;;0::0;)「……!?」
- 169 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 07:13:08 ID:NrrbPD0w0
ノパ听)「いくぞっ、いーち、にー、さーん――」
(;;0::0;)「……!? ……? ……!」
(;;0::0;)「!! ……! ……!!」
(; ФωФ)「あーあ、動揺してるのであるな」
/ ゚、。 /「律儀に逃げ出さないのが真面目ですね……」
ノパ听)「……なーな、はーち、きゅーう、じゅう!
よし、覚悟を決めたんだな!? いっくぞおおおおおっっ!!」
前方へと踏み込んだヒートは、まず手短な男に蹴りを叩き込む。
男達もそれに反応し、ヒートを取り囲むように移動するが――
ノパ听)「灼熱砂万那流、上位! 三蛇輪廻昇樹天!」
足を軸にして、華麗に踊るように何度か回転するヒート。
その間に彼女の両手、両脚が男の間を巡る様に動き回る。
そしてヒートが回転を終えた時、周りを囲んでいた男達が一度に崩れ落ちた。
- 170 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 07:16:17 ID:NrrbPD0w0
ノパ听)「まだ終わらないぞっ!」
崩れた男一人の足を掴み、豪快に体を回して他の男へと投げつける。
ノパ听)「中位! 孤狼山雪咆!」
そしてヒートは別の男二人へと駆け寄り、掌底をそれぞれの男へと叩き込む。
後ろから近づいた男には三連の蹴りを放ち、傍にいた男の首を掴み、前方に押し投げる。
一連の行動終わった後に無事に立っている男は、少し離れた場所にいる三名だけだった。
ノハ*゚ー゚)「はははっ、どうした!? もっと私を楽しませてみろ!?」
残った男三人は顔を見合わせた後、入り口へと駆け出して行く。
ノハ;゚听)「っておい、逃げるのか!? アタシと戦えよな!?」
口ではそう言っているが、ヒートは男達を追う事はしなかった。
ここを離れて後ろの二人が襲われては意味が無いし、何より逃げる相手を追うのは彼女の主義に反する。
ノパ听)「あーあ、せっかく熱くなってきてたのになー……」
彼女は地面に倒れている男達を掴み、プールの中へと投げ飛ばしていく。
何となく陸上に置いたままにはしておきたくなかったのと、戦い足りない腹いせからの行動であった。
( ФωФ)「ヒート、お疲れであるが……大丈夫であるか?」
ノパー゚)「うん、アタシは問題ないぞ!」
- 171 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 07:19:00 ID:NrrbPD0w0
/ ゚、。 /「あれだけの強さ、どうやって身につけたのですか?」
ノパ听)「師匠に教えて貰ったんだ! 『流派:灼熱砂万那』って言ってな――」
( ФωФ)「……待つのである、ヒート。何かが聞こえないか?」
ノハ;゚−゚)「…………エンジン音、か? いや――」
/ ゚、。 /「何かの金属音も聞こえますね。まさか……」
ノハ*゚ー゚)「チェーンソー! チェーンソーだな!?」
(; ФωФ)「どうしてそんなに嬉しそうなのであるか……?」
/ ゚、。 /「ちなみにジェイソンは、劇中でチェーンソーを使った事は一度もありませんから。
ついでに言うと、初期の作品ではホッケーマスクすらつけていませんね」
ノハ;゚听)「えっ、そうなのか!?」
(; ФωФ)「というか、何でそんなに詳しいのであるか……原作見たのであるか?」
/ ゚、。 /「いえ、Wikipediaで調べました。作者は怖がりなのでホラー映画なんて見れるはずが――」
(;#ФωФ)「裏事情ストーーーップ!! メタネタは禁止である!!」
- 172 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 07:20:30 ID:NrrbPD0w0
そんな問答をしてる間にも、エンジン音は近づいてくる。
ノパ听)「対処はさっきと一緒でいいなっ?」
/ ゚、。 /「対処といっても……私達は何もしてませんが」
( ФωФ)「ヒート、無茶はいかんのであるからな」
ノパ听)「りょーかい、無茶はしない! まあさっきまで余裕だったから楽勝だろっ。
それにアタシは一度でいいからチェーンソーとやってみたかったしな!」
ヒートは入り口のそばのスペースまで移動し、男を待ち構える。
やがてエンジン音が大きく響き、入り口から男が三人ほど飛び出してきた。
男はヒートの周りを半円状に取り囲み、手持ちの武器を彼女に向けて構える。
ノハ;゚听)「なっ、その武器は……!?」
男達は、回転する円盤状の刃をヒートに向けている。
その円盤からは持ち手が伸び、男の後ろ側辺りでエンジンへと繋がっていた。
主に雑草等を刈り取るための道具、草刈機。
それを手にした男達は、ヒートの隙をうかがう。
- 173 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 07:22:47 ID:NrrbPD0w0
ノハlii´兪)「なんだ、ただの草刈機か……」
(; ФωФ)「ちょっ、ヒート! なんでそんな表情を浮かべてるのであるか!?」
ノハ´兪)「せっかくチェーンソーとやれると思ったのに……もう草刈機とは戦った事あるぞ……」
/ ゚、。 / (あっ、あるんですね……)
( ;0::0;)「……! ……!」
落胆するヒートへと、まずは正面の男が仕掛けてきた。
手にした草刈機の刃を腰の高さまで持ち上げ、ヒートへと突っ込んでいく。
ノパ听)「とおっ!」
ヒートは右腕を伸ばし、まっすぐ突き出された刃の向こう側、柄の根元を掴み取る。
彼女の胸の前では高速で回転する刃、少しでも動けば彼女の無い胸を削り取るだろう。
ノハ#゚听)「誰が無い胸だっ!?」
(; ФωФ)「だからメタネタは止めるのであるっ!」
……ともかく、正面からの攻撃をヒートが止めている間に、左右の男が動いた。
彼女を挟み込むように、両側からそれぞれの草刈機を振り回す。
- 174 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 07:25:02 ID:NrrbPD0w0
ノパ听)「甘いんだよっ!!」
ヒートはその攻撃を見て、両脚で地面を蹴りつける。
腕は草刈機を押さえたまま、右腕を支点として逆立ちする様な形を取った。
ノパ听)「そしてっ! 中位、猿蛇回脚落!」
そのまま逆立ちの状態で前方の男へと倒れこむヒート。
男の首へと両脚を掛けて、体をひねりながら着地する。
ゴキリという音と共に男の首が妙な方向へとねじれ、男は倒れて動かなくなった。
( ;0::0;)「……!」
ノパ听)「おっ、やる気か!?」
仲間が倒れたのに激昂したのか、残った男の片方はがむしゃらに草刈機を振り回しながらヒートへと迫る。
彼女はそれを避けつつ、隙をうかがうが――
( ;0::0;)「!! ……!」
ノハ;゚−゚)「むっ、なかなかやるな……!」
攻撃はでたらめなのだが手数が多く、何より一度当たれば致命傷になる。
ここは慎重に動こうと決める彼女だが、そうも言ってられない事態が起こった。
事態を静観していたもう一人の男が、ロマネスクとダイオードに向けて走り出したのだ。
がむしゃらに攻撃する男が間に入っているので、ヒートはすぐには到達できない。
- 175 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 07:27:14 ID:NrrbPD0w0
ノハ;゚听)「なっ!? しまった!!」
( ;0::0;)「……」
/ ゚、。;/「この速さなら、逃げても間に合わないでしょうかね……!?」
(; ФωФ)「くっ……! ダイオード嬢、我輩の後ろに!」
ノハ#゚听)「そんな事……させるかああああぁぁぁっっ!!!!」
(;;0::0;)「……!?」
ヒートは床がへこみそうな勢いで蹴りつけ、目の前の男の頭上へと跳び上がる。
男の頭を踏み台にしながら、もう一人の男へと向かうが――
ノハ;゚听) (ダメだ、間に合わない……!!)
すでに男はロマネスクの前まで迫り、草刈機を振り上げている。
(; ФωФ)「…………!」
彼女が地面に着地する寸前で、男の草刈機がロマネスクへと迫り――
「やれやれ、こっちもハードじゃないか」
- 176 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 07:30:08 ID:NrrbPD0w0
いきなり現れ、ロマネスクと男の間に入った影。
それが回転している草刈機の刃を、素手で掴み止めた。
(;;0::0;)「!?」
(; ФωФ)「なっ……!?」
ノハ;゚听)「えっ!?」
/ ゚、。;/「何故あなたが……!?」
「早く次に行きたいが……とりあえず、こいつらをお片付けしてからだな」
『彼女』は目の前の男に向け、空いている左手を突き出した。
〜 〜 〜
- 177 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 07:32:20 ID:NrrbPD0w0
○ 【玄関 (,,゚Д゚)】 ○
ツンが無限に続く階段に捕らわれていた頃、ギコは何の変化も無く一階まで到達していた。
ギコは彼女が先に行ったと信じ、とにかく落下したブーンに会う為に校庭へと急ぐ。
そして彼は、校庭の端で何人かと話をしているブーンを見つけた。
(,,゚Д゚)「ブーン、無事か!?」
(; ^ω^)「おっ……ギコかお?」
普通に立ちながら話をしているブーンに、とりあえず安心するギコ。
だが彼はブーンの近くに立つ人物が誰なのかに気がつき、表情が一変する。
(#,,゚Д゚)「なっ……ブーン! どうしてそいつがそこにいる!?」
(*゚−゚)「ギコ君こそ……何でよ! ツンちゃんはどうしたの!?」
(,,゚Д゚)「お前には言われたくな―― ちょっと待て、ツンはこっちに来てないのか!?」
川 ゚ -゚)「ああ、姿は見てないな。やっぱり……」
(#^ω^)「ギコ! ツンをどこにやったお!?」
(;,,゚Д゚)「どこにやったと言われても……ツンは俺より先に走っていったはずだが」
- 178 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 07:36:08 ID:NrrbPD0w0
(#^ω^)「そうかお、そう言うのかお……」
(;,,゚Д゚)「ちょっと待て! 本当に俺は知らないぞ!?」
川 ゚ -゚)「まあいい、少し痛めつければ化けの皮を剥がすだろ」
(;,,゚Д゚)「おい、その手斧は何だ!?」
( ´ー`)「やっぱりしぃの話が本当なのかーヨ」
(*゚−゚)「ギコ君……なんで……」
(;,,゚Д゚)「ぐっ……ネーヨ、騙されるな! そいつは偽者なんだ!」
(# ^ω^)「うるさいお! お前なんかを信じたボクがバカだったお!!」
(#,,゚Д゚)「くそっ! しぃ、テメェ……よくも皆を誑かしやがったな!」
(#*;−;)「裏切ったのはギコ君じゃない! ツンを返してよ!?」
「やれやれ……はいはーい、皆落ち着いてー」
- 179 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 07:37:54 ID:NrrbPD0w0
(; ^ω^)「こ、この声は……!?」
校舎の影から手を叩きながら近づいてくる人物。
彼女は四人に近づきながら言葉を続ける。
「はーい、とりあえず二人組作ってー」
川 - )「グフォッ……」
(;*゚ー゚)「ああっ、なんかクーが尋常じゃないダメージを受けてる!?」
(;,,゚Д゚)「ってかお前、どうやってここに!?」
「そんな些細な事どうでもいいじゃないか。
それより私の手元を見てくれ。こいつをどう思う?」
(; ´ー`)「凄く……って、それ一体なんだーヨ?」
「なあに、ただの睡眠薬さ。それではまた会おう」
その人物が握った紙が、黄色の光を放つ。
光が収まった後、校庭にいたのは彼女一人だけだった。
lw´‐ _‐ノv「さーて、残るは桜餅組か」
肩をコキコキ鳴らしながら、彼女は校舎へ向かう。
- 180 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 07:40:06 ID:NrrbPD0w0
○ 【廊下 ξ ゚听)ξ *(‘‘)* ('A`) (゚、゚トソン】 ○
(゚、゚トソン「ビーグル君、『あばれる』です! 遠慮してたらやられるようですからね!」
▼#゚ェ゚▼「BOAAAAAAATH!!」
(;;0::0;)「……!!」
( ;0::0;)「!」
('A`;)「男の数多過ぎだろ。もう廊下が埋め尽くされてるじゃないか」
*(;‘‘)*「玄関まではもう少しなのに……」
ξ;゚−゚)ξ「ビーグル君大丈夫かしら? 相当疲れてそうにみえるけど……」
(゚、゚トソン「ビーグル君、次は『かえんぐるま』です!
まだいけるようですか? 無理なら言ってくださいね」
▼゚ェ゚▼「WOF、GUWOOOOOOF!」
ξ;゚听)ξ「ってかあれ犬なの? 燃えながら突っ込んでるんだけど?」
('A`;)「考えるな、俺はもう気にしない事にした」
- 181 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 07:42:14 ID:NrrbPD0w0
(゚、゚トソン「ビーグル君、『とっしん』を―― っ!
よけてください、ビーグル君! 横から来るようです!」
( ;0::0;)「……!」
▼゚ェ゚▼「GOF、GURRRR――TH!? GYAN!」
('A`;)「ビーグル!!」
男の斧がビーグルのわき腹に食い込み、ビーグルを跳ね飛ばす。
廊下の端に倒れこみ動かなくなった彼を男達が即座に囲み、姿が覆い隠された。
(゚、゚;トソン「ビーグル君!」
ξ;゚听)ξ「ちょっ、何飛び出そうとしてるのよ!?」
(;、;トソン「だって、私のビーグル君が! ビーグル君が……」
ξ:゚−゚)ξ「だからって、トソンもやられちゃ意味無いでしょ!」
*(;‘‘)*「それより、これだと……」
('A`;)「とりあえず逃げるぞ!」
唯一にして最大の戦力だったビーグル君がいない今、廊下の男を突破するのは無理だった。
ドクオ達はUターンして逃げ出そうとするが……
- 182 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 07:45:02 ID:NrrbPD0w0
ξ;゚听)ξ「っ!? 後ろにも!」
('A`;)「ぐっ、囲まれたか……」
後方の曲がり角から男が数人出てきて、ドクオ達の進路を塞ぐ。
逃げ場が無くなった四人に向かって、男達はじわじわと近づいていった。
(;、;トソン「うっ……あっ……」
*(;‘‘)*「ダメ、なのですか……」
ξ;‐凵])ξ (お願い! 携帯が無くても、ほんの少しだけでも力を……)
('A`#)「んにゃろっ! ここで終われるかっ!」
道中の男から奪った手斧を武器に、ドクオは男達に向かおうとする。
ξ;゚听)ξ「ちょっ、ドクオ! そんな斧一本で倒せる相手じゃないわよ!」
('A`;)「いいか! 俺があいつらを足止めするから、その隙に駆け抜けてくれ!
新しく来たほうは人数が少ないから、なんとか突破は出来るはずだ!」
ξ#゚听)ξ「バカッ! ドクオはどうなっちゃうのよ!」
('A`)「いいか、俺の中学の友達が言ってた言葉がある。
『男はたとえどんな過酷な状況だろうと、女性を全力で守らないといけない……』」
- 183 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 07:47:51 ID:NrrbPD0w0
*(‘‘)*「ドクオ君……」
('A`;) (まあこれだけなら名言だろうが……後に続く言葉がちょっとなー……)
ξ ;凵G)ξ「……知らないわよ、そんな事!
全員で行動するのが一番だってブーンが言ってたの!」
('A`)「そっか、ブーンが言ってたのか……ならしかたねーな」
ξ ;−;)ξ「ドクオ、それじゃ――」
('A`)「なら尚更引けねーな! ツン、ブーンに無事会えよ!
そして俺のPCを破壊しといてくれって伝言頼むぜ!」
そう言い残し、ドクオは男に向かって走り出した。
ξ#;凵G)ξ「ドクオのバカーッ!!」
('A`#)「うらぁっー!!」
( ;0::0;)「……!」
ドクオは右端の男に突っ込みながら、斧を滅茶苦茶に振り回す。
その勢いに押され、端の男は一歩左へとよれた。
- 184 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 07:50:01 ID:NrrbPD0w0
空いたスペースへ割り込みつつ、ドクオは更に斧を振って男達を牽制する。
('A`;)「今だっ! 駆け抜けろ!」
その声の勢いに押され、トソンとヘリカルがツンの手を取り走り出す。
ドクオと壁の間の僅かなスペースへと駆け込み、走り抜けようとするが――
*(;‘‘)*「きゃっ!」
ξ;゚听)ξ「ヘリカルさんっ!」
(゚、゚;トソン「ダメなようです! 今は走り抜けないと!」
最後尾を走っていたヘリカルさんが足をもつらせ、廊下に倒れこんだ。
……そして、負の連鎖は続いていく。
('A`;)「ヘリカルさ―― ぐおっ!?」
倒れた彼女にドクオが目を捕られた一瞬の隙を突いて、男がドクオを殴り飛ばす。
廊下に倒れた二人に向かい、男達がゆっくりと近づいていった。
( A ;) (これで俺も終わりか……ごめんな、みんな)
男はドクオの横に立つと、左腕の斧を振り上げる。そして腕が振り落とされ――
―― それと同時に、男の胴体を金色の閃光が突き抜けた。
- 185 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 07:52:17 ID:NrrbPD0w0
光の矢が刺さった男は、手持ちの斧と一緒に光の粒子と化し、空中に溶けて消える。
いつまでも衝撃が来ない事に気がついたドクオは、恐る恐る閉じていた目を開いた。
('A`;)「……あれ? な、なにが……?」
「クサい、クサ過ぎる…… 『ごめんな、みんな』……?
真顔でそんな事言える奴、どうかと思うがな……」
( д ;)「ぐはっ……!?」
ドクオに大打撃を与えた声の主は、ドクオの後ろ側、
当初道を塞いでいた男の群れを掻き分け、顔を出した。
lw´‐ _‐ノvつ 「はい通りますよー、ちょっとどいてーっと……
やあ、久しぶりだな皆の者。終業式以来か?」
(゚、゚;トソン「あなたは……シューのようですか?」
ξ;゚听)ξ「なんでここに……ってか、今日教室で顔を会わせたじゃないの」
lw´‐ _‐ノv「細かいことは気にすんな、たかが二十日ちょいの誤差じゃないか」
('A`:)「いや、あきらかに違うんじゃ―― シュー、危ない!」
明らかに隙だらけに見えるシューの背中へと、男二人が斧を振り落とそうとする。だが――
- 186 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 07:55:25 ID:NrrbPD0w0
lw´‐ _‐ノv「やれやれ、せっかちな男は嫌われると統計に出てるぞ」
シューは落ち着き払った表情で、制服の内ポケットから素早く一枚の紙を抜き取る。
白くて細長い紙に、黒い筆で何かの文字が書かれているお札、彼女はそれを男との間に投げた。
投げられたお札は空中でピタリと静止し、強く振り下ろされた斧をいとも容易く止める。
lw´‐ _‐ノv「現に私の周りの男3人、女5人、その他2人にアンケートをとった所、
実に57%もの人が、『唐揚げにはレモンをかけない』という結果が出ている」
シューはパチリと指を鳴らす―― ような仕草を取る。残念ながら音はしなかったが……
ともかくその行動と共に、投げられた札に明るい黄色をした光が灯った。
lw´‐ _‐ノv「こんな大差がついてるのに、まだレモンをかけるという愚考を犯すのかい?
私は塩コショウ派なのだよ。そもそもレモンとご飯合わないし」
札の光が強くなっていき、だんだんと札の輪郭が見えなくなっていく。
そして次の瞬間、光が数本の雷光と化し、周りの男達を貫いた。
- 187 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 07:57:32 ID:NrrbPD0w0
lw´‐ _‐ノv「あ、でもケチャップはありだな。まあ鶏肉にしっかり下ごしらえしてあるのが前提だが。
近所にある某中華店の唐揚げ定食は酷いぞ、パサパサで何の味もしないからな」
稲妻は更に直進していき、最後の男まで貫いたところで、それを追うように光の柱が伸びる。
光の柱に当たった男達の体は白く輝き、やがて青色の粒子となって空気中に四散していった。
lw´‐ _‐ノv「まっ、私は春巻き定食派だが」
シューはドクオのそばに残った男達に向けて、札を数枚取り出して投げつけた。
投げられた札は空中で光の刃となり、男の体へと突き刺さる。
その傷口からじわじわと男の体は光の粒子となり、宙に崩れ消えていく。
廊下に立つ男を全て消し去ったシューは、ドクオ達の方へと歩いていった。
lw´‐ _‐ノv「さてと……無事なようだな、皆の者」
('A`;)「……さっきまでのは一体何だったんだ?」
lw´‐ _‐ノv「華の十五歳の主張だ。気にするな、私は気にしない」
ξ;゚听)ξ「いやいや、気にするわよ!」
- 188 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 08:00:50 ID:NrrbPD0w0
(゚、゚トソン「凄いですね、今の! まるで魔法使いのようでしたよ!」
lw´‐ _‐ノv「はっはっはっ、残念ながら私はそんな非常識な存在じゃない。
そんなのはクラスに一人いれば充分なはずだがな……」
ξ;゚−゚)ξ (今私を見た……? ま、まさかね……)
lw´‐ _‐ノv「まあそれはともかく、さっさとこの茶番を終わらせようでないか。
今何レス目だと思ってるんだよバーロー、無計画に書き溜めた結果がこれだよ!」
('A`;)「おそろしくメタ的な事言わなかったか?」
lw´‐ _‐ノv「まあそれはともかく……こいつをみてくれ、どう思う?」
先ほどもクー達に使ったセリフを言いながら、シューは新たな札を取り出した。
(゚、゚トソン「おふだ……のようですか?」
lw´‐ _‐ノv「ご名答、そんな君にはプレゼントだ」
三人が反応する間も無く、シューはトソンに向けてお札を投げつける。
投げられた札はトソンの胸に突き刺さり、そこから急速にトソンの体が光の粒子と化していく。
*(;‘‘)*「ト、トソンさん!?」
( 、 ;トソン「こ、これは……何が起こってるようですか……!?」
- 189 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 08:02:35 ID:NrrbPD0w0
('A`;)「ト、トソン!?」
*(;‘‘)*「しっかりするのです!」
既に肩の辺りまで消えかけ、狼狽しているトソンへと迫る二人。
ドクオは腹部のあった所に浮かんでいる札を抜き取ろうとするが、ピクリとも動かない。
そして札を掴んだドクオの右腕や、トソンの体に触れたヘリカルも粒子化が進行していく。
('A`;)「ぐっ、迂闊だったか!?」
*(‘‘)*「き、消えるのは嫌なのです……」
時間をかけずにトソンの姿は消え、やがて他の二人も完全に粒子となり宙に消えた。
シューの他に廊下に残ったのは、呆然とした顔で立ち尽くすツンだけとなる。
ξ;゚−゚)ξ「ア、アンタは……」
lw´‐ _‐ノv「おっと、そんな敵意バリバリの顔でこっちを見てくるな。
ツン、君はおかしいと思わないのか? 今のこの状況に」
ξ:゚听)ξ「えっ、それは……おかしい事だらけだと思うけど……」
lw´‐ _‐ノv「なぜ君はライトを持たないのに暗闇の状況が解る?
無限に続く階段、倒れても起き上がる男、消える死体……
……しかし、真実とはいつもシンプルなものだ」
- 190 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage ちょっと休憩してくる] 投稿日:2010/08/14(土) 08:05:38 ID:NrrbPD0w0
lw´‐ _‐ノv「そう、全ては夢なのだよ」
ξ;゚听)ξ「ゆ、夢……? こんなにリアルなのに?」
lw´‐ _‐ノv「……まあいい、答え合わせは現実でしようじゃないか」
ツンの目の前にまで歩いたシューは、ツンの額へと札を貼り付ける。
急速にツンの全身が光の粒子と化し、暗闇に溶けて消えていった。
lw´‐ _‐ノv「さーて、これからが少々面倒なんだよな。
まったく、あのモサモサ耳の奴は……」
指を弾いて音を出そうとしたシュー、だが今回も音は鳴らない。
しかしシューの姿は薄れ、そして消えていく。
そしてあとには、耳が痛くなりそうなほどの静寂が訪れた。
- 192 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage おまたせ] 投稿日:2010/08/14(土) 08:21:54 ID:NrrbPD0w0
△ △ △
(‐A‐;)「んあ……?」
俺が目を覚ました時、最初に目に入ったのはチラチラと揺れるロウソクの光だった。
どうやら俺は床に座り込んで、そのまま眠っていたらしいが……
('A`;) (ん……? ちょっと待てよ!?)
俺の脳内に、先ほどまでの光景がフラッシュバックする。
美術室での血まみれの絵と、突然現れたホッケーマスクの男。
斧を持った男達と、それに立ち向かうビーグル君。
廊下での絶体絶命の危機に現れたシュー。そして――
……とても夢とは思えない、確かにこの身で体験したはずの数々の超常現象。
だが、今俺が居る場所は……
('A`;) (ここって……元の教室だよな?)
ちょうど肝試しの話をしていた時と全く同じ配置で、メンバー全員が座っていた。
皆も俺と同時期に目を覚ましたのか、不思議そうな顔で辺りを見渡したりしている。
- 193 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 08:23:21 ID:NrrbPD0w0
从;゚∀从「えっ、何? なんでみんなここに?」
/ ゚、。;/「流石にこれは……私の理解も追いつきませんね」
ノハ;゚听)「あれっ、プールにシューが来て……あれ?」
マト;>д<)メ「……ん? オレ階段にいたよな?」
\(^o^)/「人生ハジマタ」
(;´‐ω‐)「なんだろ……頭がボンヤリする……」
(; ´_ゝ`)「これは……まさかリプレイか? やり直しできるのか?」
皆の意識がはっきりしてきたのか、段々と騒がしくなる教室内。
あれ? そういえば輪の中に誰かが足りない気が……
やや寝惚けた頭で誰がいないかを確認しようとした時だ。
lw´‐ _‐ノv「やーやー、皆お疲れ。そしてお帰りー」
のんきな顔で教室に入ってくるシューの姿があった。
格好は先ほど出会った格好と同じなのだが……
- 194 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 08:26:40 ID:NrrbPD0w0
lw´‐ _‐ノv「む……こら待て、暴れるな」
∧∧
・< ' *;彡 ジタバタジタバタ
⊂と \ _ _,ノl
ミ| )、__,ノ
し'し'
シューは腕に何かを抱いているが……何だろ?
銀色の毛並みの動物、犬に似てるけど微妙に違うような……
( ^ω^)「子犬……じゃないお。何かお?」
/ ゚、。 /「可愛いですね。やたら反抗的な所も含めて」
ノパ听)「おっ、狐じゃないか! 意外と照り焼きがいけるんだよな」
( ФωФ)「狐だったのであるか……ってか、食べたのであるか!?」
・< ' *;彡 そ ビクッ !
lw´‐ _‐ノv「こらこら、こいつが警戒してるじゃないか。
とりあえず料理するなら後からにしてくれ」
从;゚∀从「後ならいいのかよ!? お前の発言でそいつすっごい震えてるぞ!」
- 195 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 08:28:45 ID:NrrbPD0w0
( ゚"_ゞ゚)「で、彼奴は一体如何様な存在であるのか……
まあこの欠けた人員から推測するに、自ずと窺い知れるがな」
lw´‐ _‐ノv「ああ、とりあえず日本語でOK。
簡単に言うと、このキツネ君こそが今日皆に起こった異常の元凶だ」
・< ' *;彡 …………
( ´ー`)「いやいや、そんな狐に化かされるなんて事がある訳ネーヨ」
lw´‐ _‐ノv「ほう、母親の名を勝手に継いで、あんな事をした君が言うのかね?」
(; ´ー`)「ちょい待てーヨ、なぜその事を……!?」
lw´‐ _‐ノv「まあそれは置いといて……話を進めるぞ。
今日は皆で円陣を組んで語っていたのだろ?
恐らくその時、このキツネ君は皆に術をかけたのだ」
( <●><●>)「……では怪談話の途中からは、全て夢という訳ですね」
lw´‐ _‐ノv「イエス、ザッツライ。このキツネ君は中々に優れた力の持ち主でな……
全員の目線さえ集めれば、全員の意識を共有させて同じ内容の夢を見せたり、
その夢の中の方向性を操ったりは簡単だっただろう」
(*゚ー゚)「よかった、じゃあギコ君があんな事をしたのも夢だったのね」
(,,゚Д゚)「そうか、俺としぃは途中から夢が違った訳か……」
- 196 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 08:30:14 ID:NrrbPD0w0
ξ;゚听)ξ「ちょっと待って、そもそもシューは何でそんな事が解るの?」
lw´‐ _‐ノv「ん、ツンには言ってなかったか? まあいい、それじゃまずは私の説明からしよう。
ある時は普通のクラスメイト、ある時は織座神社の巫女さん。そして……」
シューは空いた手で札を一枚取り出してくる。
先ほど俺が夢の中で見たのと変わらないお札、いきなりそいつが金色の閃光を放つ。
そして光が晴れた時、そこにいたのは……
lw´‐ _‐ノv「平安時代から続く最強の陰陽師、『倉部林間』の第八十八代目だ」
黒と白を基調とした和服を着たシューが、相変わらずキツネを抱えて立っていた。
川 ゚ -゚)「……これまたド派手な早着替えだな」
(; ^ω^)「自分から最強っていうのはどうかと思うお」
lw´‐ _‐ノv「まあ、これで信じてもらえたとは思うが……」
ミセ*゚ー゚)リ「すっ、凄い! ねぇねぇ、透視とか出来るの?」
ノハ*゚听)「壁抜けはっ!? もしや未来予知も出来るのか!?」
lw´‐ _‐ノv「おいおい、陰陽師を何だと思ってるんだい? まあ出来るけどさ」
*(‘‘)*「って、出来るのですか……」
- 197 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 08:32:19 ID:NrrbPD0w0
(; ´_ゝ`)「ちょっと待った! 今までの話本当なのか?」
lw´‐ _‐ノv「ん、全て本当だ。まあ正確な未来を読むのは不可能だがな」
(* ´_ゝ`)「いや、どこかの神社で巫女さんやってるんだよな?
今度写真を撮りに行くから場所教えてくれ」
从;゚∀从「食いつくのそこかよ!?」
lw´‐ _‐ノv「ん、いいぞ。後で地図を渡しておこう」
(* ´_ゝ`)「イーヤッフー! これで巫女服の資料が手に入るぜ!」
('A`;) (地図って……まさかあれを渡す気じゃないだろうな?)
いつぞやの時に渡された地図が頭をよぎる。
あれは今でも時々夢に出てくるからな……恐ろしい事に。
lw´‐ _‐ノv「さてと……まあそんな私は、今夜学校で善からぬ事が起きているのを察知したのだよ。
ここに来てみると案の定、皆が虚ろな目をして座ってるじゃないか」
・< ' *;彡 ………… ジタバタ
lw´‐ _‐ノv「で、こいつ一人だけがニヤニヤしていたからな。
激しいバトルの末にこいつを束縛し、そして夢を解除する事が出来たという訳だ」
- 199 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 08:35:02 ID:NrrbPD0w0
・< ' *;彡 ……
lw´‐ _‐ノv「さあ、皆に謝るんだ」
・< ' * 彡 ……プイッ
lw´ _ ノv「ほお……どうやら覚悟が出来てるようだな……」
:: ・< ' *;彡 :: gkgkbrbr
ミセ;゚ー゚)リ「ちょっと、謝るって言っても相手は狐じゃ――」
・< ' *;彡「……ご、ごめんなさい。つい出来心で……」
アセ;゚Д゚)リ「しゃ、喋ったーーー!?」
ノハ*゚听)「うおっ!? 凄い、とにかく凄いぞ!!」
マト#>д<)メ「ちょっと待て、どうせ腹話術とかだろ!?」
lw´‐ _‐ノv「私にそんな高等技術がある訳ないだろ、常考」
・< ' *;彡「いやいや、陰陽師の方がよっぽどじゃ……」
('A`;) (狐にツッコミをされてる……しかしどこかで聞き覚えのある声だな)
- 200 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 08:37:13 ID:NrrbPD0w0
川 ゚ -゚)「……そういえば、そのキツネ君はどこから来たのだ?」
lw´‐ _‐ノv「ん、まだ気付いてないのか? いなくなったメンバーを考えれば……」
確かにさっきから誰かが足りない気はするんだが……誰だか解らないんだよな……
ミセ;゚ー゚)リ「いない、ねぇ……全員揃ってる気はするけど……」
lw´‐ _‐ノv「んなこた無いだろ。む、まさか……」
シューのジト目が、手元のキツネ君へと向かう。
・< ' *;彡「……いや、そりゃ私だって保険ぐらいかけてるわよ」
lw´‐ _‐ノv「まあいい、私の口から正体を話してもいいな?」
・< ' * 彡「えーっと……それはこれからの学生生活のため、出来れば勘弁してもらえると……」
lw´‐ _‐ノv「何なら今すぐ人化の術をかけても問題はないのだが――」
・< ' *;彡「ゴメン、ばらしてもいいから! むしろ私から自己紹介するから!」
- 201 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 08:40:01 ID:NrrbPD0w0
lw´‐ _‐ノv「という訳で、キツネ君が自己紹介してくれるそうです。
ではみんな、万雷の拍手でどうぞー!」
ワーワー パチパチパチ
ヒューヒュー マッテタゾー
・< ' *;彡「やたらノリいいわね!? ってか少しぐらい状況を疑問に思う人がいないの?
私が言うのも何だけど狐が喋ってるのよ? しかもシューは陰陽師だし!」
lw´‐ _‐ノv「無駄だよ、ワトソン君。君の術の後遺症みたいなのが残ってるみたいだ。
どんな異常事態でも順応するというか……まあ私もやり易くて助かるがな」
(゚、゚トソン「む、呼んだようですか?」
lw´‐ _‐ノv「いや、呼んでない。モルディブに帰れ」
・< ' * 彡「はあっ、もう腹を括るしかないわね……
えーっと……この姿でははじめまして、伊藤ペニサスです」
ああ、そういえば円陣から消えて……って、マジかよ!?
- 202 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 08:43:03 ID:NrrbPD0w0
ミセ;゚д゚)リ「嘘……ペニちゃんなの?」
・< ' *;彡「そ、そうよ……」
ミセ:゚ー゚)リ「今日だけ化けてたって事? それとも昔からなの?」
・< ' * 彡「入学当初からずっとね。隠しててゴメン」
ノハ;゚听)「全然気付かなかったぞ……」
そういえばミセリとヒートは、よくペニサスと仲良くしてたな。
そんな二人の事だ、きっと色々衝撃も多いのだろう。
ミセ*゚ー゚)リ「いや、別に隠してたのはいいんだけどさ……
今日みたいな事が無ければ、到底信じられなかっただろうし」
ノパ听)「まあアタシもミセリと同意見だな。
そういえば、いつも帽子を被っていたのは耳を隠すためとかか?」
・< ' * 彡「うん、耳が出ちゃた時の対策に。
尻尾はともかく、耳は隠しようがないし」
(; ´_ゝ`)「なぜ隠すし!? 隠したら狐っ娘の魅力が無くな―― グベアッ!?」
(#*゚ー゚)「せっかくの狐っ娘の声が聞き取れないじゃない! 少し黙ってなさい!」
(;,,゚Д゚)「しぃ、人の事言えんと思うぞ……」
- 203 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 08:45:06 ID:NrrbPD0w0
ミセ;゚ー゚)リ「あっ、もしかして学食のメニューが毎日きつねうどんだったのって……
いやいや、そんなベタ過ぎる事は――」
・< ' # 彡「ベタで何が悪いの! いいじゃん、好きなんだからさ!!」
ノパ听)「そういえば時々語尾にコンって付いたのも……」
・< ' *;彡「そんな事実ないわよね!? ……えっ、もしかして付いてたの?」
ノパ听)「安心しろ、冗談だ!」
・< ' *;彡「ぐっ、ヒートに釣られるとは……」
(,,゚Д゚)「ちょっと俺からもいいか?」
・< ' * 彡「ん、何?」
(,,゚Д゚)「狐って誰でも人間に化けれるのか? それも完璧に」
・< ' * 彡「あー、私は特別な血を継いでるからね。
それに同じ血統内でも、私ほど上手いのは中々いないわよ。
ってかアンタがそれを聞くの? てっきり知ってる物かと思ってたわ」
(,,゚Д゚)「お前はこっちを知ってるかも知れんが、俺は勘が鈍いからな。
参考までに聞かせてもらいたいだけだ」
- 204 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 08:47:40 ID:NrrbPD0w0
(゚、゚トソン「私からも質問していいようですかね?」
・< ' * 彡「どうぞ。もうこうなりゃ何でも答えてあげるわ」
(゚、゚*トソン「色々な生物を見てきましたが、人に化けるようなのは初めてです。
ぜひあなたを解ぼ…… じゃなく解た…… でもなく……
とにかく観察されてもらえないようですかね?」
・< ' *;彡「五体無事に帰ってこれる保障がないので止めとくわ。
ってか質問じゃなくて要望じゃん、それ」
( ФωФ)「うむ、では我輩からも。やはり人の格好をするのは辛いのであるか?」
・< ' * 彡「いや、別にそれほどじゃないわ。
むしろ今の状態でこの声を出す方がキツイわね……」
( ´ー`)「じゃあ今すぐに人の格好になればいいんじゃないかーヨ」
・< ' *;彡「アンタねえ……人化の術は服を作り出せないのよ」
(; ФωФ)「……つまりは丸裸になるという事であるか」
lw´‐ _‐ノv「ちなみに教室の外にはホヤホヤの制服一式がありますよ」
- 205 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 08:50:02 ID:NrrbPD0w0
・< ' * 彡「あのー、そろそろ人化してきていい?
正直この状態で喋り続けるの喉が痛いんだけど……」
lw´‐ _‐ノv「わかった、三分間待ってやる」
・< ' *;彡「せめて五分は待って欲しいんだけど……まあいいわ」
シューの腕からようやく開放されたキツネ君……改めペニサスは、廊下へとトコトコ歩いていく。
lw´‐ _‐ノv「解ってると思うが、今廊下ではペニサス生着替えショーが行われてるからな。
迂闊に覗こうとした者には……死ぬほど痛いぞ」
川 ゚ -゚)「ところで、シューは前からこの事を知ってたのか?」
lw´‐ _‐ノv「モチのロン、国士無双の四暗刻だ。
そもそもこの高校に入れるよう手配したのは私だし」
从;゚∀从「おいおい、お前にそんな権限あるのかよ?」
lw´‐ _‐ノv「実はこの学校は曰くつきのウンタラカンタラで、その除霊の仕事が私の祖母にウンタラカンタラ……
で、祖母が知り合いの九尾の狐から、学校に行きたい狐がいるという相談を受けてウンタラカンタラ……
ちょうどその頃私が代替わりをしていて、監査役がつくならという事でOKが出たという訳だ」
ξ;゚听)ξ「やっぱ曰く付きだったの!?」
lw´‐ _‐ノv「大丈夫、危険な霊はいなくなってる……そう、危険なのはな」
- 206 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 08:52:21 ID:NrrbPD0w0
ノパ听)「……あれ? でもアタシはペニサスと中学校同じだったはずだぞ?」
lw´‐ _‐ノv「ヒートよ、それは彼女の自己申告だろ?
一度でも中学時代に顔を合わせた事があったか?」
ノハ;゚听)「そういえばクラスが違ったと言ってたが……当時顔を見た記憶は無いな」
lw´‐ _‐ノv「まあともかく、今の内に話しておきたい事がある。
今回起きた出来事は、おそらくペニサスの茶目っ気だろう。
特に悪意は無いはずだ、少なくとも精気を吸ったりなどの痕跡は無いしな」
ミセ;゚ー゚)リ「内容はハードだったけどね。私は三回ぐらい死んだと思ったわ」
lw´‐ _‐ノv「しかしだな、ペニサスがこの学校に入る条件に『人に危害を加えない』というのがある。
もしその約束が破られてしまったら…… BOM! という事になってしまう」
(; ´ー`)「いやいや、それじゃ何があるかわからネーヨ!」
lw´‐ _‐ノv「まあ日本語でいうと、『退学』だな」
ノハ;゚听)「そ、そんな……そんなの嫌だぞ!」
lw´‐ _‐ノv「私も一応陰陽師の端くれだし、見逃す訳にはいけないのだが……」
- 207 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 08:54:51 ID:NrrbPD0w0
lw´‐ _‐ノv「さっきも言ったように、退学の条件は『人に危害を加えない』だ。
つまりは危害が無ければ、別に術を使うことには制限は無い。
でだ、皆に聞きたい。今夜この教室で、何者かに危害を加えられた者はいるか?」
ミセ*゚ー゚)リ「……! いや、一人もいないんじゃないかな?」
川 ゚ -゚)「非常に愉快な出来事はあったようだが……」
( ´ー`)「全ては夢の中の出来事だーヨ」
lw´‐ _‐ノv「……まあ被害を受けた人がいないなら、こちらも動きようがないな。
では人前で術を使った事による、厳重注意だけという事にしておこう。
一応この様な事は秘密にしていかないといけないからな……」
ミセ*゚ー゚)リ「やっぱ政府の思惑とかあるの?」
lw´‐ _‐ノv「いや、超常現象が当たり前にある事が表面化すると、仕事がやり辛くなるからだ。
ネタが明らかな手品なんてみたくないだろ?」
……うーん、シューの言いたい事が正直わからないな。
むしろ客側が事実を知ってるほうが仕事しやすい気が……
lw´‐ _‐ノv「そうそう、あと皆にもう一つ頼みたい事がある。
出来れば彼女の件は、出来るだけ秘密にしてほしい」
- 208 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 08:57:31 ID:NrrbPD0w0
……まあ、当然の措置かもな。
というか、話しても信じてもらえないだろうし。
lw´‐ _‐ノv「もし迂闊に話した場合……特に外部にそれを漏らしたものがいた場合だ。
ハンブラビのクモの巣を味わう事になるだろう」
( ゚"_ゞ゚)「我には貴行の難渋たる言動が掴めぬ。略述して談じてくれぬか?」
lw´‐ _‐ノv「ブレーメン発言乙。有名な法典があるだろ?
ほら、あの……『目には目を、歯磨きはしっかりと』、だ」
从;゚∀从「そんな文だったっけ!?」
lw´‐ _‐ノv「幸いな事にこのクラス内には色々と秘密を持った物が多い。
心当たりのある人は多いだろ? えっ、そうでもない?」
('A`;) (俺自身は思いつかないが……確かにだな)
少なくとも俺は、空飛ぶ男と魔法少女を知っている。
しかしシューの発言だと、まだまだいるって事なのか……?
lw´‐ _‐ノv「まっ、秘密などなくても結果は同じだがな……
BOM だ、BOM 。死ぬほど痛いぞ」
('A`;)「何が爆発するんだよ!」
ってかBOM好きだな……
- 209 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 09:00:05 ID:NrrbPD0w0
('、`*川「おまたせー。いやー、やっぱこっちの方がしっくりくるわ」
ミセ*゚ー゚)リ「おっ、お帰り!」
(; ´_ゝ`)「ちょぉいと待てえいっ! なしてキツ耳じゃなかたばらんか!?」
∧∧
('、`;川「どこの方言よ……ほら、これで満足?」
( _ゝ )「…………」
マト;>д<)メ「し、死んでる……幸せそうな笑みを浮かべながら……」
(* ー )「ハァッ、ハァッ……リアルキツ耳……」 ドバドバ
(;,,゚Д゚)「うおおおいっ! 鼻血が凄い事になってるぞ!?」
('、`*川「耳出すのめんどいから、そろそろ収めるわね」
ミセ;゚ー゚)リ「出すほうが面倒なの?」
('、`*川「普段はこっちの方が楽なのよ」
- 210 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 09:02:54 ID:NrrbPD0w0
○ ○ ○
lw´‐ _‐ノv「む、これは……」
/ ゚、。 /「ん? どうしたのですか」
lw´‐ _‐ノv「諸君。いいニュースと悪いニュースがあるのだが、どっちから聞きたい?」
ミセ;゚ー゚)リ「何よ急に……じゃあいい方からお願い」
lw´‐ _‐ノv「私の奥歯に詰まっていたニラがようやく外れた。
夕飯の時以来ずっと歯がゆい思いをしていたが、ようやく開放だ」
从;゚∀从「限りなくどうでもいい事じゃねーか!」
( ´ー`)「で、悪い方は何だーヨ?」
lw´‐ _‐ノv「和寒内先生が今教室に向かっている。あと三分ほどで到着予定だ」
ミセ;゚д゚)リ「ワカちゃんこっち来てるの!? なんで!?」
(,,゚Д゚)「そういや教室の電気いつの間にか点いてるな……それでか」
ミセ;゚ー゚)リ「と、とにかく全員逃げ出す準備を! 誰が捕まっても恨みっこ無しでね!
とりあえず電気を消すから、さっき渡したライト使って!」
- 211 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 09:05:01 ID:NrrbPD0w0
ξ;゚听)ξ「ちょっと待って! ライトは渡されてないわよ!?」
ミセ;゚ー゚)リ「さっき肝試しの時に……あっ、そういや夢だったか!」
('、`*川「はい、この袋に入ってるからさっさと回していって」
lw´‐ _‐ノv「あっ、階段を登りきったみたいだな。推定あと三十秒で到着だ」
('A`;)「もう絶望的じゃないか!」
ノパ听)「よし、アタシに名案があるぞ!」
( ФωФ)「名案……何であるか?」
ノパ听)「とにかく皆ライトの電気を消してくれ! あと教室の後ろ側で待ってくれないか!?」
言われた通りに迅速に動く皆。こういう時の謎の団結力は異常だな。
ヒートが入り口の横に陣取る事数秒後、扉がガラリと空き、懐中電灯の灯りが教室に差し込んだ。
( ><)「こ、こんな夜中に誰かいるんですか!?」
おっかなびっくり声を上げる和寒内先生。その前にゆらりと、ヒートが歩いてきた。
- 212 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 09:07:07 ID:NrrbPD0w0
(; ><)「う、うひゃああああっっ!?」
ノハ )「灼熱砂万那流――」
( ><)「って、砂緒ヒートさんじゃないですか! なんでこんな時間に――」
ノハ#゚听)「下位、石火雷鼠駆!」 バババッ !!
((#)><)「ゆっ、ゆべしっ!?」 バタンキュー
懐かしい擬音を発しながら気絶する和寒内先生。
ってかヒートの手の動き、目で追えなかったぞ……
ノパー゚)「よし、これでOK!!」
ミセ;゚д゚)リ「OKじゃなーい!! 目が覚めたらどうするのよ?」
ノパ听)「大丈夫、一時間は何をやっても目を覚まさない!
オマケに気絶前の記憶は曖昧になるぞ!」
ミセ*゚ー゚)リ「なんだ、それなら大丈夫ね」
('、`;川「大丈夫なの!?」
- 213 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 09:10:12 ID:NrrbPD0w0
ミセ*゚ー゚)リ「ともかく今日はこれで解散!
ライトは貸し出すから、新学期の時に持ってきてね」
('、`*川「皆でゾロゾロ帰ると目立つから、少数ずつで帰った方がいいかも」
ミセ*゚ー゚)リ「それもそっか……誰か早く帰りたい人いる?」
川 ゚ -゚)「では私達から帰らせてもらえないか?
正直怖がりなツンを早く帰らせてやりたいからな」
ξ;゚听)ξ「こ、怖がりちゃうわ!」
怪談話の時あんなに怖がってたのに、よく言うよな……
ミセ*゚ー゚)リ「ツンちゃん達からで異論はないね?
よし、じゃあ気をつけてねー」
( ^ω^)「ふー、しかしなんか大変な一日だったお……」
川 ゚ -゚)「夢の中のはずなのに、どっと疲れたよな。
そういえばブーン、あの時はかっこよかったぞ」
('A`)「ん? ブーンが何したんだ?」
川 ゚ -゚)「校舎の四階から飛び降りて、ピンチだった私を助けてくれたんだ。
そうだよな、ブーン?」
- 214 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 09:12:12 ID:NrrbPD0w0
( ^ω^)「あれっ? クーも同じ夢を見たのかお?」
川 ゚ -゚)「シューが言ってただろ? ペニサスは同じ内容の夢を見せたとな」
ξ ゚听)ξ「まったく……夢だから良かったものの、今度からは後先考えなさいね」
( ^ω^)「善処するお。そういえばツンはあの後どうなったんだお?」
ξ ゚听)ξ「階段を降りてたらいつの間にか部室棟に出ててね。
例の男に囲まれてピンチだったのを、ドクオ達が助けてくれたの」
('A`)「まあほとんどトソンのビーグル君のお蔭だがな。
……そういやあの犬、なんであんなこと出来たんだ?」
ξ;゚听)ξ「夢の中だから……だと思いたいわね」
とりあえずビーグル君の件を掻い摘んで他の三人へと説明する。
( ^ω^)「カッコいいお! 見てみたいお!」
(´・ω・`)「うーん……やっぱり夢だったからじゃない?」
川 ゚ -゚)「だが化け狐がいたぐらいだからな、いてもおかしくないかもしれない。
そういえばショボン、そっちはどうだったんだ?」
(´・ω・`)「んー……それがよく覚えてないんだよね。
なんか凄く楽しい事をやってた気がするけど……」
- 215 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 09:14:28 ID:NrrbPD0w0
('A`;)「楽しい事……? どんな内容だったんだよ」
(´・ω・`)「んー……ダメだ、やっぱ思い出せないな」
川 ゚ -゚)「もしかしたら、ショボンだけ見た夢が違ったのかもな」
( ^ω^)「ショボンと一緒に行動した人に聞けばいいんじゃないかお?」
川 ゚ -゚)「たしかミセリとオサムだったな。実質ミセリ一択か」
('A`;)「オサムは何言ってるか解らないからな……」
こうして今日の事を適当に語り合いながら、俺達は校舎の外へと向かう。
夢の中とはいえドップリと疲れた面々、心の中では皆早く帰って寝たいと思ってるはずだ。
だからなのかどうなのかは知らないが……俺達は誰も気付かなかった。
普段は使われていないはずの、扉一枚の狭い裏口。
学校をぐるりと取り囲むフェンスと開かれた扉によって影。
そこに隠れるようにして、一人の人影がある事を。
- 216 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 09:16:46 ID:NrrbPD0w0
('A`)「そういやお盆はどうする?」
川 ゚ -゚)「私は何もないな。通常開店24時間営業だ」
ξ;゚听)ξ「どこのスーパーよ……」
俺達は何も気付かないまま、裏口まで到着した。
人が並んで通るには厳しいスペース、まずはツンとクーが順番に校外へと出て行く。
そしてクーの後を付いて俺が外へ出ようとした時だ。
俺の腕が何者かに掴まれ、俺の体が引き止められた。
('A`;)「んあ!? 何すんだよ、急に――」
てっきりブーンがふざけてつかんで来たのかと疑い、二人の方へと振り返る俺。
だが二人とも少し離れた場所で、ある一点を凝視しながら固まっていた。
それに二人の両手はそれぞれ俺の見える位置にある。って事は、この腕の主は……!?
俺はおそるおそる、二人が凝視する方へと目をやる。そこには――
- 217 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 09:18:27 ID:NrrbPD0w0
(゚A゚;)「あ、ああ……」
(#‘ω‘ #)「……鬱田、なぜここの扉が開いていてアンタが出入りしてるんだっぽ?」
一年の英語担当、愛媛ちんぽっぽ先生の姿がそこにあった。
- 218 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 09:21:00 ID:NrrbPD0w0
○ ○ ○
なぜあんな所にちんぽっぽ先生がいたかというと、その日は和寒内先生と飲んでいたらしい。
そして和寒内先生が学校に忘れ物をした事を思い出し、二人で取りに来たそうだ。
教師は全員裏口の鍵を持っていて、正門が開いてない時はここを利用しているとか。
そして裏口まで来た時、普段は閉じられているはずの裏口が開いてるのが発覚。
ちんぽっぽ先生が隠れながら裏口を見張りつつ、和寒内先生が一人忘れ物を取りに行く事になったらしい。
多分和寒内先生は教室に電気を付いてるのを見つけ、様子を見に行ったんだろう。そしてヒートに……
ちんぽっぽ先生は彼が帰ってこない事を不審に思いつつ、
(※他の校舎で、裏口から教室の灯りは見えない) 裏口をずっと影から見張っていたらしい。
で、俺達はそんな彼女に気付かず、ノコノコと前を通り過ぎようとしたという訳だ。
(*‘ω‘*;)「まったく、あんたらは……一体何人で肝試しをやったかっぽ?」
lw´‐ _‐ノv「百から先は数えてない」
ミセ;゚ー゚)リ「ごめん、ややこしくなるからシューちゃんは黙ってて」
そして後から出てきた面々もイモヅル式に捕まり、今はハイパーお説教タイム。
コンクリに正座は厳しいのですが……
- 219 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 09:23:15 ID:NrrbPD0w0
(*‘ω‘ *)「ったく……Q組は少しはまともだと思ってたけど、思い違いだったっぽ」
ミセ*゚ー゚)リ「あのー、本当にすいませんでした」
(*‘ω‘ *)「謝って済むならこの世に警察や裁判所はいらんっぽ。
いいっぽ、これはれっきとした不法侵入という犯罪行為だっぱ!」
ミセ;゚−゚)リ「うう、ごめんなさい……」
(*‘ω‘ *)「ただでさえ警備の機械が壊れててピリピリしてるのに……
まさかそれを知って忍び込んだのかっぽ?」
ギク;゚ー゚)リ「い、いや! そんな事無いですよ!」
(*‘ω‘ *)「ふーん……まあいいっぽ。ともかくここにいる全員、原稿用紙10枚分の反省文!
あと休み明けに復習テストを行うっぽ! 赤点には放課後補習コースだっぽ!」
(; ^ω^)「そ、そんな!? 勘弁してくれお!」
ノハ;゚听)「頼むっ! アタシ達が悪かった!」
(*‘ω‘ *)「いーや、今更そんな事言ってもダメだっぽ! ここにいる21人全員覚えたっぽ!」
うう、英語は苦手なんだよな……あれ?
('A`)「21人って…… 一人足りなくないか?」
肝試しメンバーは21人、それにシューが加わってるから合わせて22人のはずだが……
- 220 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 09:25:43 ID:NrrbPD0w0
(#‘ω‘ #)「何かっぽ!? まだ隠れてる奴がいるかっぽ!?」
ミセ*゚ー゚)リ「あっ、ドッ君。ヘリカルさんなら途中で別れたよ。
なんでも泊り込みで作業をするとかで……」
なるほど、なら問題は――
(*‘ω‘*;)「……ちょっと待つっぽ。今何て言ったかっぽ?」
ミセ;゚ー゚)リ「あっ、いや! 違いますよ! 泊り込みってのは家の話で学校じゃ――」
(*‘ω‘*;)「違うっぽ! もしかしてあんた達、今日『近沢ヘリカル』という生徒と会ったのかっぽ!?」
な、なんだ……!? かなり興奮してるようだが…… それになぜフルネームを?
ミセ;゚−゚)リ「え、ええ。一緒に肝試しをしましたが……」
(*‘ω‘ *)「……背の高さはこのくらいで、髪を両横で縛ってたかっぽ?」
皆が頷くのを見た先生は、大きくため息を吐く。まるで世界の終わりのような顔をしてるんだが……
ミセ*゚ー゚)リ「あのー…… ヘリカルさんに何かあるんですか?」
(*‘ω‘ *)「……ちょっとだけ昔話をするっぽ。
話したかもしれないけど、高校当時私はこの学校に通ってたっぽ」
そういやいつかの授業でそんな話をしてたな……
- 221 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 09:27:37 ID:NrrbPD0w0
(*‘ω‘ *)「で、当時の私には一人の友達がいたっぽ。
明るくて、絵を描くのが好きな子だったっぽ。」
なんか少し嫌な予感がするんだが……
(* ω *)「でもその子はある日、階段を踏み外して落ちてしまったっぽ。
踊り場の鏡に頭をぶつけて、そのまま打ち所が悪くて……」
ミセ;゚ー゚)リ「その生徒、名前は何て言うんですか?」
半分以上は確信している顔つきで、ミセリは訊ねる。
やっぱりあの名前なんだろうなー……
(*;ω; *)「近沢ヘリカル、当時二年生だったっぽ……」
ξ )ξ フラッ パタッ
(; ^ω^)「ツン、大丈夫かお!?」
ミセ;゚ー゚)リ ボソボソ(ちょっ、気付いてた?)
('、`;川 ヒソヒソ(し、知らないわよ!)
lw´‐ _‐ノv ヌソヌソ(無害そうだから黙っといたのだが)
ミセ;゚ー゚)リ コソコソ(知ってたなら教えて! あと効果音気持ち悪いから)
- 222 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 09:30:21 ID:NrrbPD0w0
(*;ω; *)「そうかっぽ、彼女はまだ成仏してないのかっぽ……」
( ´_ゝ`)「でもよ、先生……ヘリカルさん、楽しそうにしてたぜ」
(*;ω; *)「……そう、なのかっぽ?」
( ´_ゝ`)「ああ、俺には少なくともそう見えた。そうだよな、皆?」
从 ゚∀从「まあ、確かにそんな悲観的には見えなかったな。あと兄者、そのドヤ顔止めろ」
/ ゚、。 /「彼女なりに幽霊生活を楽しんでるのかも知れませんね……
あとその顔止めてください最高に気持ち悪いです」
( ´_ゝ`)「…………」
(゚、゚トソン「一緒に行動しましたが、彼女イキイキとしていましたよ。
死んでる人に使うには相応しくない表現なようですがね」
(*つω; *)「そうかっぽ……それならよかったっぽ……
みんな、彼女と仲良くしてありがとうだっぽ」
- 223 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 09:32:33 ID:NrrbPD0w0
とまあこうして、斧男や狐や幽霊に追われた長い一夜もようやく終わった。
まあ皆無事で、めでたしめでたし ――で終われれば良かったんだがな……
('A`;)「反省文なんて書いた事ねーよ……」
川 ゚ -゚)「まずは事実を書いて、後から反省点と改善点を書くのがコツらしい」
ξ ゚听)ξ「ブーン、これが終わったら英語の猛特訓だからね」
(; ^ω^)「反省文書き終わったら遊べると思ってたのにお……」
(´・ω・`)「兄さん、店を使わせてくれてありがとうね」
(;`・ω・)「まあ今日も休みだから構わないが……」
ちんぽっぽ先生は最後にしっかり罰則について釘を刺してきた。
くそっ、いい雰囲気で忘れてくれると思ったんだが無理だったか。
夏もようやく半分を過ぎた。残りは残りでまた色々あるんだろうな……
【次回に続く】
- 224 名前:【次回予告】[sage] 投稿日:2010/08/14(土) 09:35:04 ID:NrrbPD0w0
- _
(; ゚∀゚)「い、今俺はとんでもない事実に気がついてしまった……」
('A`)「ん、何をだ?」
_
(; ゚∀゚)「この次回予告は、以前からずっとループしてるんだよーっ!!」
('A`)「……俺は前回ぐらいで確信してたぞ」
_
(; ゚∀゚)「くっ……教えてくれ、おっぱい!!
俺はあと何回この次回予告を繰り返せばいい!?」
('A`;)「もっとまともな物に聞け。で、次なんだが――」
皆が待ちわびた夏休み、嫌いな奴など存在しない!
海に山川、肝試しに虫取り、花火大会にスイカバー!
正直イベントてんこ盛り、観覧車は揺らすの厳禁!
そんな次回、第7話:『塊マンボ!』
俺が正義だっ!
< 聞きたいかね…… 今回の時点であと99812回だ
_
(; ゚∀゚)「多っ!!」
('A`;)「いや、この声誰だよ!?」
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