( ^ω^)ペットのようです

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/15(木) 02:25:51.74 ID:YbJldPx9O
「君は、何が楽しくて生きているのだ?」

男は私にそう言った。
私は、顔をだらしなく緩ませて笑いながらうつむいた。そんな自分が心から嫌いだと思った。


これは高校時代の記憶。随分前の事であるのに、やけに新鮮味を持ったまま私の頭の中で何度も再生され続けている。


夕陽の光が教室の窓を通して、私とジャージ姿の男と綺麗に並んだ机や椅子を照らしていた。

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/15(木) 02:26:44.51 ID:YbJldPx9O
放課後の教室は、まるで世界が終わってしまったかのように静かだった。私は、放課後の教室が好きだ。

たった一人、教室の窓から外を見ているとすべてが夢のように思えた。
ただ、ボーと窓の外を見ていた私は、男の声を聞いて視線を男の方へとかえた。

「どうするんだ?これから」

私は、またみっともない表情を作った。こんな顔をする自分が心底、嫌であるのだがこうするしか手段が浮かばなかった。

そんな私にうんざりしたのか、男は「明日、学校に来たらすぐに職員室に来なさい」と言いながらドシドシと音をだして教室を出て行った。

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/15(木) 02:29:03.30 ID:YbJldPx9O
教室に一人きりになった私は、そのまま椅子に座りボーっと窓の外を見ていた。
ふと机を見ると、机には私が授業中に描いた落書きではないものが書いてあった。
私は、こんなものにはもう慣れっこであったが、そう思いながらも右手で掴んだ消しゴムを上下に動かした。
動かすたびに、シーンとした教室にガタガタと机が揺れる音が響いた。


( ^ω^)「ドクオは、いつもつまらなそうな顔をしてるお」

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/15(木) 02:29:52.11 ID:YbJldPx9O
('A`)


ミルクがコーヒーの中に消えていくのをボーっと見ながら、私はその事を思い出していた。

( ^ω^)「うっまーwwwwアップルパイうまうまだおwwww」

それもこれも、私のペットであるブーンが、この店のオーナーのペットに言った一言からだ。

( ^ω^)「おwwwwドクオwww笑えおwww」

(;'A`)

( ^ω^)「ふー。本当に本当にドクオはいつもつまらなそうな顔をしているお」

この店のオーナーのペットのAAは、覇気のない湿った雰囲気を出し、のらりくらりと背中をまるめながらブーンに新しいアップルパイを運んできた。

そのAAに対して、ブーンは何度も「つまらなそうな顔をしている」と言った。

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/15(木) 02:31:13.72 ID:YbJldPx9O
(;'A`)

( ^ω^)「おwwwwww困っているのかお?でも、ドクオが笑うまで煽るおwww」

ドクオくんは、一言も言葉を発しないところを見るに私たちの言葉を話す事は出来ないのだろう。

しかし、私や他のお客の注文を聞いてオーナーに伝えているところを見るに、私たちの言葉を理解する事は出来るようであった。

( ^ω^)「ほれほーれー」

(;゚A`)

私「こ・・・こら、ブーン。嫌がっているよ」

ブーンはドクオくんの脇腹を何度も何度もツンツンと突っついていた。そのたびに、ドクオくんは困った顔をしていた。

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/15(木) 02:32:30.04 ID:YbJldPx9O
オーナー「いやいや、いいんだよ。ドクオも喜んでいるのだから」

私「あ・・・これは、どうもすいません」

オーナー「なにも謝る事はない。ドクオは見ての通りこうだからね。久しぶりに知っているAAと会えて喜んでいるよ」

( ^ω^)「ブーン」

((( ^ω^)(;゚A`)

カウンターの奥からのれんをくぐり、私の前に顔を出したオーナーはニコニコと笑っていた。

オーナーは、私より20歳ほど上のように見える。頭の賢そうな、整った顔をしており、店の名が胸に入った黒いポロシャツと長い白のエプロンを腰に巻いていた。

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/15(木) 02:36:03.57 ID:YbJldPx9O
私の住むアパートから歩いて5分もかからない場所にこのカフェレストランはある。

私は随分前からちょくちょく利用させてもらっていたが、オーナーと話すのは初めてであった。

オーナー「君は良く来てくれているね?よく、窓際の奥のテーブルにいるだろう?」

私「えぇ」

オーナー「今日はカウンター」

私「えぇ」

オーナーは手探りで私に話しかけているようだった。
ペットたちの事で話しかけてしまったため、会話を続けなくてはと配慮したのかもしれない。
個人的に、このぎこちない空気が嫌で仕方がなかった。

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/15(木) 02:36:57.23 ID:YbJldPx9O
( ^ω^)「待つおwwwwドクオwww」

(;'A`)

((( ^ω^)(;'A`)

私「ブ・・・ブーン!走るのはやめなさい、他のお客さんに迷惑でしょ・・・」

オーナー「ははは。かまいやしない。他のお客といっても、君をいれて三人しかいないのだから」

オーナー「ねー?大丈夫でしょう?おねーさんたち」

オーナーの問いかけに、入り口近くのテーブルに座っているOL二人がニコニコと笑顔で、手をふった。常連客のようだ。

私は、少し冷めてしまったコーヒーを飲んだ。

オーナー「君は、いま学生かい?」

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/15(木) 02:38:55.24 ID:YbJldPx9O
私はドキッとした。
初対面の人との会話では、必ずこういう質問の機会が訪れる。
そのたびに私は、情けない笑みを浮かべるのだった。

私「恥ずかしながら・・・今は、その」

オーナー「あぁ、不況だからね。世の中、そうだから」

私「えぇ」

オーナー「でも、若いうちに苦労しといた方がいいんだよ?若いうちはいろいろ経験しないと」


私が「今は・・・」と答えると多くの人が、若いうちは苦労しろだのなんだのと教えのようなものを説いた。
それを、ヘラヘラ笑いながら相槌をうつ自分が嫌いだった。


( ^ω^)「おwwwwww」

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/15(木) 02:39:59.29 ID:YbJldPx9O
私「うん?どうしたんだい」

( ^ω^)「飼い主さん!ぼくはまたお腹が空いてしまいましたお」

私「うーん。残念だけど、ブーン・・・」

オーナー「ははは。いいの、いいの。お金は、気にするな。いつもきてくれているし、ドクオとも遊んでくれたのだから」

私「いやいや、しかし」

オーナー「若いうちは甘えるもんなんだ!さ、ブーンくん。オムライス作ってやるからな!」

( ^ω^)「おおっwwwwwタダ飯だお」

(;'A`)ハァハァ・・・

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/15(木) 02:40:38.65 ID:YbJldPx9O
私「すまないね・・・ドクオくん。疲れただろう?」

(;'A`)コクッ

私がそう言うと、ドクオくんはコクッと首を縦にふった。

私「・・・」

私「それに失礼な事を言ってしまって」

('A`)?

私「つまらなそうな顔をしているだなんて」

('A`)

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/15(木) 02:41:27.11 ID:YbJldPx9O
( ^ω^)「だって、凄くつまらなそうな顔をしているんだお」

私「ブーン。いいかい?そういう事は何度も言っていいものじゃないんだよ」

( ^ω^)「おー・・・心配して言ってたのだお」

私「お節介だよ。それはね」

('A`)


実際にドクオくんがそう感じたのかはわからないが、私はブーンにきつくそう言った。

それは、ドクオくんの気持ちを考えたわけではなく、勝手な私の気持ちをブーンにぶつけただけだった。

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/15(木) 02:43:24.96 ID:YbJldPx9O
( ^ω^)「おー・・・」

私「いやいや・・・すまなかったよ。ブーン」

('A`)

('A`)( ^ω^)ドカッ

( ^ω^)「お!!!」

( ;^ω^)「おのれ、ドクオ。背後から蹴りを入れるとは鬼畜の所存だお」

(;'A`)ゴクリッ

( ^ω^)「ブーン」

( ^ω^)(;'A`)

私「ブーン、あまり騒いで店を壊してはいけないよ」

ドクオくんは、私とブーンの間の重い空気を読み取ったのかなんなのかはわからないが、私はホッとした。

ブーンがまた楽しそうにはしゃいでいるし、ドクオくんも楽しんでいるのだと思えたからだ。

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/15(木) 02:44:39.75 ID:YbJldPx9O
プルンとした卵がなんとも美味しそうなオムライスが、カウンターに置かれた。


( ^ω^)「ひょおー!うまそーな匂いがするお」
オーナー「さ、お食べ」

私「ブーン。お礼を・・・」

( ^ω^)「おじちゃん、太っ腹だおwww」

('A`)

オーナー「ははは。確かに肥満体型なんだけどな」

私「・・・」

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/15(木) 02:50:53.28 ID:YbJldPx9O
ガツガツと美味しそうに食べるブーンを見ていると、もやもやしていた頭がスッと空っぽになったような気がした。


オーナー「君、是非また来てくださいよ」

私「えぇ。もちろん」

オーナー「そうか!よかったよ。ドクオも喜んでいるしね」

('∀`)

オーナーに頭を撫でられているドクオくんは、顔を緩ませ、綺麗な笑顔を見せていた。


( ^ω^)「うまかったおーwwwww」

私「では、そろそろ・・・ブーン?」

( ^ω^)「はーい」

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/15(木) 02:52:39.19 ID:YbJldPx9O
オーナー「じゃ、近いうちにまた。さよなら、ブーンくん」

( ^ω^)「はーいだおー」

私「どうも。ごちそうさまでした」

('A`)ノ

( ^ω^)「ドクオー。バイバイだおwwwww」

オーナー「ありがとうございました」




18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/15(木) 02:53:47.48 ID:YbJldPx9O
私「美味しかったね。ブーン」

( ^ω^)「美味かったお」

私「また友達と会えたしね」

( ^ω^)「会えたお!!」

( ^ω^)「いつ見ても、ドクオはまーったくかわっていないんだおwwwwww」

私「けれど、あまりドクオくんをからかってはいけないよ?」

( ^ω^)「気をつけるお」

私「・・・」

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/15(木) 02:55:30.05 ID:YbJldPx9O
( ^ω^)「ブーン」

私「・・・」

( ^ω^)「あー今日は楽しかったお」

( ^ω^)「昨日も楽しかったけどwwwww」

私「ブーンは」

( ^ω^)「お?」

私「ブーンは、何が楽しみで生きているんだい?」

( ^ω^)


しまったと思った。私はまた、自分勝手な思いをぶつけてしまった。

今の言葉でブーンは傷つかなかっただろうかと、不安になった私は歩くのを止めていた。

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/15(木) 02:56:26.60 ID:YbJldPx9O
私「ブーン」

( ^ω^)「考えるまでもないですおwww毎日がエブリディですおwwww」

私「え?」

( ^ω^)「美味しいご飯食べて、ゴロゴロして、TV見て、元気いっぱい走って・・・いろいろ楽しいお!だから生きてるお」

私「・・・」

( ^ω^)「あ、寝るのも好きだお」

私「・・・」

私「そうだな。そうだよ、ブーン。私も寝るのが大好きだよ」

( ^ω^)「知ってるおwwwwww」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/15(木) 02:57:15.34 ID:YbJldPx9O
私の中にあったもやもやは、ブーンの言葉ですっかりなくなった。

それでいいのだ。私が、あの言葉を思い出す事はもうないだろう。
私は、また歩き出した。


私「あとは本を読むのも好きだね」

( ^ω^)「知ってるおー」

( ^ω^)「お!?」

( *^ω^)「ツンだお!!」

私「ふふふ。それにブーンは・・・」

( *^ω^)「別にそんなあれはないお!」

私「まだ何も言っていないよ」

( ;^ω^)「しくじったってやつだお」


23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/15(木) 03:01:49.75 ID:YbJldPx9O
女「こんばんは。お散歩ですか?」

私「こんばんは。えぇ、よく行くカフェにブーンを連れて行ったんです」

( *^ω^)「美味しかったお」

ξ゚听)ξ「フン!汚らわしい!顔にソースついてるわよ」

女「へぇーそんなに美味しいんですか」

私「えぇ。いい雰囲気のお店でして・・・」


ホカホカと心地よく暖かい夕陽が私たちを照らしていた。

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/15(木) 03:03:51.31 ID:YbJldPx9O
( ^ω^)ペットのようです









第2話 おしまい☆



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