川 ゚ -゚)想い出のようです(^ω^ )(・∀・ )('A`;)

42 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 02:59:30.04 ID:acHl5leu0
食事も終わり各自思い思いに時を過ごす。
あるものは食器を片づけ、あるものは風呂に入り、あるものはテレビを見て、またあるものはできたばかりの彼女にメールを送る。
そしてここに、CDを返すというもっともな理由を付けて女の部屋に通わんとする不届き者がいた。
そう、モララーである。
まあしかたない。今回はほぼモララーとクーの話なのだから。

( ・∀・)「クー、入るぞ。」
がちゃ
( ・∀・)「借りてたCD・・・って聞こえてないな。」

クーはヘッドホンをつけ音楽を聴いていた。
瞬間的にクーの長い黒髪とその間からのぞくうなじに目が行った。
後ろからそっと近づく不届き者モララー。

43 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 03:00:08.19 ID:acHl5leu0
・∀・)   ●゚ -゚)

( ・∀・) ●゚ -゚)

( ・∀・)/●゚ -゚)

  ●ミ ポイッ
( ・∀・) 川 ゚ -゚)そ!!

ヘッドホンを外し後ろから抱きつく。シャンプーの匂いが昼間の事を想起させる。

川;゚ -゚)「な!ななな、なんだ!兄さんか!」
( ・∀・)「いやーCDを返しに来たんだけど、クーがあまりに熱心に聞いてたもんだから、ね。」
川;゚ -゚)「ならノックをしてくれ。心臓に悪い。」
( ・∀・)「ん〜?したよ?」
川;゚ -゚)「そうか。」

44 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 03:00:57.23 ID:acHl5leu0
モララーがCDを渡し、クーがそれを受取る。その一連の動作の中に何故かキスも混ぜてみる。
少し紅潮したクーをニヤニヤと眺める。
ついでにと言ってモララーは別のCDも取り出した。

川 ゚ -゚)「これは?」
( ・∀・)「vipQのニューアルバム。昨日買ったんだ。」
川 ゚ -゚)「いいのか。」
( ・∀・)「そりゃ愛する妹のたm
川 ゚ -゚)「シスコンめ寄るな変態。」
( ・∀・)「もうパソコンに入れてあるんだ。」
川 ゚ -゚)「そうか。」
( ・∀・)(お前だってブラコンだろ。)
川 ゚ -゚)(私だってブラコンだったな。)

ヴィップクオリティー。通称vipQ。兄者・弟者・妹者の3人組のフュージョンバンド。
演奏自体は上手いが悪いうわさが多い。
妹者に触れようとするファンを兄2人が片っぱしからぶちのめすのだ。
その暴力性は音楽にも顕著に表れていて、まだインディーズでありながら派手な髪のお兄さんたちの間でひそかにブームとなっていた。
兄者が作る奇天烈な電子音。弟者が放つギターの爆音。そして妹者のどこか内向的で破滅的な優しい歌声。
彼らの音楽は一たび聞けば麻薬の様にハマって抜け出せなくなる不思議なサウンドだった。
モララーはvipQを初めて聞いたその日のうちにvipQのCDをすべて買った。
決してシスコン同士惹かれるものがあったというわけではない。

45 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 03:01:41.12 ID:acHl5leu0
川 ゚ -゚)「ありがたい。妹者の歌には前から興味があったんだ。」
(;・∀・)「vipQを知ってるのかよ。」
川 ゚ -゚)「私を誰だと思っている。」
( ・∀・)「いやー俺が知ってるクーのバンドはもっと大人しかったからね。次のライブいつやるんだ?」
川 ゚ -゚)「いや、高校に入って解散した。」
( ・∀・)「あらら・・・」
川 ゚ -゚)(もらら・・・)

クーはモララーの影響で中学に入ってすぐフォークソング部に入った。
以来ずっとベースを弾いていたのだが、今年の4月にバンドが解散してからほとんど弾く機会がなかった。
高校にはバンドをやるような部活はなかったのだ。

( ・∀・)「非常にもったいないね。学校でも結構人気だったじゃん。」
川 ゚ -゚)「あれはツンのヴォーカルがかわいかっただけだ。実際はなんてことのない‘さわやか青春バンド’だ。」
( ・∀・)「まあ確かにこそばゆい歌が多かったねー。たしかバンド名は・・・」
川 ゚ -゚)「ラブリーホイップ。」
( ・∀・)「ラブwwwwリーwwwwwwホwwwwwwwwイwwwwwwwwwッwwwwwwwwwwプwwwwwwwwwwwwwwwwww」
川#゚ -゚)

46 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 03:02:32.90 ID:acHl5leu0
モララーはよく街の方のライブハウスに行っていた。ギターの腕も相当なものだった。
それでもバンドを組んだことは一度もなかった。

川#゚ -゚)「私だってもう少し激しい音楽がやりたかったさ。」
(#)・∀・)「なら別のバンドを組めば良かったじゃないか。てっきりクーはああいう方向性なんだと思っていたよ。」
川#゚ -゚)「一度組むと中々居心地が良くてな。悪いか。」
(#)・∀・)「馴れ合い乙!そんなんじゃあいい音楽は作れないよ。」
川#゚ -゚)「モラ兄さんに何がわかる。バンドを組んだこともないくせに。」
(#)・∀・)「・・・」
川 ゚ -゚)「あ。」

いくら改善されたとはいえ、彼らが住んでいる町はまだまだ田舎だった。
ドクオ程じゃなくてもやはり差別はあった。
若い人たちはそういうものに対して非常に敏感だ。
モララーはその毅然とした態度によっていじめられこそしなかったが、周りの人は違う。
モララーに関わったら自分がいじめられるかもしれない。
そういた思いをモララー自身が深く理解していた。
だからこそ彼は常に『クラスの一人』でいるように心がけた。
特定の人と仲良くなることでその人を傷付けることを恐れたのである。

47 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 03:03:22.40 ID:acHl5leu0
川;゚ -゚)「すまない。言いすぎた。」
(#)・∀・)「いやいやこっちも言いすぎたよ。」
川;゚ -゚)「いやでm
(#)・∀・)「クー。」

だからモララーはブーンとツンの関係が羨ましくもあった 。
誰かと親密になる。
これがモララーの唯一の望みだった。
モララーとクーの関係には、一つはこういったモララーのコンプレックスがある。

川;゚ -゚)「な、なんだ。」
(#)・∀・)「せっかく今日から夏休みなんだし、プラス県まで足をのばしてライブを聴きにいかない?」
(#)・∀・)「一度行ってみたかった所がいくつかあるんだ。もちろん、ブーンとドクオも誘って。」
川;゚ -゚)「・・・・・・」
川 ゚ -゚)「・・・・・・」
川 ゚ー゚)「いいな。行こう。」

48 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 03:04:47.11 ID:acHl5leu0
プラス県と言えば国内最大の大都会である。

('、`川「あらいいじゃない。行っておいで。」
(´・ω・`)「いいね。行ってきなよ。」
('A`)「でも・・・少し遠いとおm
( メ ω(#)「行くお!」

こうして我らが4兄弟はプラス県まで遠足に行くことになった。

( ・∀・)「いやー楽しみだね。」
('A`)「人がたくさん・・・怖い・・・」
川 ゚ -゚)「大丈夫。お姉ちゃんが付いてるぞ。」
( メ ω(#)「プラス名物ksmsパフェ食べたいお」

第二話「都会」

49 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 03:05:38.24 ID:acHl5leu0
( ・∀・)「そろそろプラス県だね。」
((;'A`))gkgk
川 ゚ -゚)「・・・・・・」
( ・∀・)「いやあワクワクして来たよ。」
((;'A`))brbr

電車は4人を乗せてプラス県へと向かう。
景色はいつの間にか田園風景から住宅街へと変わり、さらにビル街へと突入しようとしていた。
人見知りが激しい・・・というか他人恐怖症であるドクオの震えは電車の揺れのせいだけではないだろう。

( ^ω^)「ドックン、気にしすぎだお。」
((;'A`))「でも・・・」
( ^ω^)「ならブーンも脱ぐお!そうすれば一緒だお!」
川 ゚ -゚)「それはそれでどうかと思うぞ。ドクオ、とりあえず帽子を深くかぶっておけ。」
((;'A`))「うん・・・」

50 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 03:06:19.64 ID:acHl5leu0
ドクオの黒斑はとにかく目立つ。なにしろ顔の半分が黒いのだ。
顔は言うまでもなく人間の玄関である。そこに黒斑があるのだから胸が黒いブーンとはわけが違う。

( ・∀・)「ほらドクオ。俺だって夏は半袖だから右腕が丸出しじゃないか。」
( ・∀・)「こんなの気にしなければ大丈夫なんだよ。」
((;'A`))「・・うん・・・・」
( ・∀・)「・・・」
( ・∀・)「ブーン、クー。」
川 ゚ -゚)「合点承知!」(^ω^ )
コチョコチョイヤ-ヤメテコチョコチヤメナイオコチョコチョコチョコチョ

ドクオが人が多いところが苦手なのは十分理解していた。でもモララーは無理矢理ドクオを連れて来た。
モララーは今回の旅行をなんとなく断行したのではない。思い付きではあるがそれなりに考えがあってのことだった。
もちろん、クーとのデートの口実を作りたかったのもあるが。

52 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 03:07:20.87 ID:acHl5leu0
(;'A`)「はあ・・・はあ・・・」
( ・∀・)「さあ、そろそろプラス駅に着くよ。もうウジウジは禁止なんだからな!」
(;'A`)「うん・・・わかったよ・・・」

電車がプラス駅につき、慌てて4人はホームに降りる。

(;^ω^)「ここは・・・なんだお?」

そこは駅でありながら高い壁と天井に囲まれた巨大な空間だった。
駅が丸ごと途方もない大きさのビルに取り込まれているという構図だ。

(;^ω^)(本当に人間がこれを作ったのかお?)

神を思わせる大きさと硬さと精密さ。ゲームで神殿に足を踏み入れた時の感覚に近いかもしれない。
天井の幾何学的な構造を見ていたら目眩がした。
そんなブーンの戸惑いは、ビルの外に出たところで最大を迎えた。

53 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 03:08:29.49 ID:acHl5leu0
( ・∀・)「きたきたw」
(;^ω^)「おお・・・」
川;゚ -゚)「これは・・・すごいな・・・」
(;'A`)「え・・・・え!!?」

空を覆い尽くす摩天楼。
我が家よりも数倍大きいドラマのポスター。
無機質な空気。
一直線にせわしなく動く人!人!人!
このショックは上京した経験がある人にしかわからないだろう。

川;゚ -゚)「やはり人が多いな。」
( ^ω^)「おっ。でもかわいいおにゃのこもいっぱいだお!」
川 ゚ -゚)「君はツン一筋じゃなかったのか。伝えておこう。」
(;^ω^)「是非アイスおごらせてくださいお。」
川 ゚ -゚)「うむ。」
( ^ω^)(・・・)
(^ω^)
(^ω^)(ツンξ゚听)ξはクーの親友であり ブ ー ン の 彼 女 だ お !!!!!!!!!!!!!!)
(^ω^)(ブーンテラリア充wwwwwwwww勝ち組ktkrwwwwwwwwwお前ら童貞乙wwwwwwwwwww)
(^ω^)(あっ、ブーンもまだ童貞だったおね。でも彼女がいるから事実上の非童貞だお^^)

川 ゚ -゚)「どうした」
( ^ω^)「なんでもないお」

54 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 03:10:10.46 ID:acHl5leu0
(((;'A`)))「あ・・・・あ・・・・。」
( ・∀・)(まずいな。ここまでとは。)
( ・∀・)「ドk
川 ゚ -゚)「ドクオ!!!!/ドックン!!!!」(^ω^ )
( ・∀・)!
(;'A`)ビクッ!
川 ゚ -゚)「一緒にアイスを食べないか。」
( ^ω^)「ブーンがおごるお!」
(;'A`)「・・・」
('A`)「・・・」
('∀`)「ありがとう・・・」
( ・∀・)(ドクオ・・・お前・・・ブーンかよ・・・)
( ・∀・)(しかし、クーといいブーンといい、さすがだな。)
( ・∀・)(・・・)
( ・∀・)「さてさて諸君。」
( ・∀・)「アイスもいいがまずは食事にしようか。ちゃんと店は調べて来てあるぞ。」
( ^ω^)「おっおっ!待ってましたお!」
川 ゚ -゚)「私はおいしいパスタが食べたいぞ。」
('A`)「僕は何でもいいよ・・・」
( ・∀・)「喜べ!イタリアンだ!」
( ^ω^)「やっt川*゚ -゚)「よっしゃーーーーー!!!!!!!!」

55 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 03:10:58.65 ID:acHl5leu0
―イタリアンなレストラン―

( ∵)イラッシャーセー
オナカスイタオ! コンデルナ ヨヤクシトイテヨカッタヨ …ア…
( ∵)ドーゾー
ウマソウダオ! デザートモタノンデイイカ イイヨカワイイイモウトノタm(ry オイシイ…
( ∵)アザーシター

( ^ω^)「うまかったお!兄さんえらいお。」
( ・∀・)「ははは。ひれふせ。」
川 ゚ -゚)「ドクオ、食べすぎてないか?」
('A`)「うん・・・大丈夫だよ・・・」

こんな感じで彼らの旅行はスタートした。
今年の夏休みは何かが起きる!を実行に移したのである。
ブーンが大会直前にも関わらず仮病を使ったのは言うまでもない。

56 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 03:11:51.17 ID:acHl5leu0


('∀`)wkwk

初めての都会に不安いっぱいだった彼らも少しずつ慣れていき、今は好奇心でいっぱいだった。
今まで見た中で一番高い建物が次々と更新されていく。
今まで見た中で一番高そうな車が次々と更新されていく。
今まで見た中で一番奇天烈な人が次々と更新されていく。
若者にとってこれほど楽しいことはない。

('∀`)nyny

さて、上記のモララーの考えが当りつつあった。
モララーはよく街のライブハウスに行くからわかるのだが、鬼差別は都会ではほとんど存在しない。
都会の子供が村八分や部落といった問題にうといのと同じだ。
せいぜい、早死にしてしまう可哀そうな病気くらいの認識しかないのだ。
人が多いプラス県に敢えて行くことで、ドクオの他人恐怖症を治せるのではないか。
それがモララーの考えであり、wkwknynyなドクオがその考えを支持しているように思われる。
実際、自分を見て恐怖しない人がこれほど多くいるということは、ドクオにとって大事件であった。

57 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 03:12:35.75 ID:acHl5leu0
( ^ω^)「・・・」
( ^ω^)「モラ兄。」
( ・∀・)「ん?」
( ^ω^)「ここのひとたちって・・・」
( ・∀・)「うん。この染みにまったくビビってないね。」
( ^ω^)「だおね。あんなに嬉しそうなドックン久しぶりに見たお。」
( ・∀・)「そもそも未だに鬼だなんだ言ってる方がおかしいんだ。」
( ・∀・)「この現代において狂ってるとしか思えない。」
( ^ω^)「・・・」
( ・∀・)「それにここには僕たちの100倍くらい奇抜な格好の方がちらほらいるしねwww」
( ^ω^)「だおねw」
川 ゚ -゚)「ドクオ、あんまりお姉ちゃんから離れるんじゃないぞ。」
('∀`)「うん!」
川 ゚ -゚)「ここは人がいっぱいいて危ないぞ。」
('∀`)「うん!」

この都会はドクオにとって天国だった。
( ^ω^)(かわいいおにゃのこも美味しい食べ物も多いだなんてここは天国かお?)


58 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 03:13:37.24 ID:acHl5leu0
( ・∀・)「ライブの時間までまだかなりあるね。どうしようか。」
('∀`)「もっと色々見ていたいな・・・」
( ^ω^)「賛成だお。ブーンももっとイロイロ見て回りたいお。」
川 ゚ -゚)「私も行きたい楽器屋があるんだ。」
( ・∀・)「そうだね。じゃあ各自時間まで自由行動と行こうか。」
( ・∀・)「ただしこの駅からあんまり離れすぎちゃダメなんだからな!」

とは言ったものの、一人で動く勇気のないブーンとドクオは一緒に街を回ることになり、モララーとクーも当然二人で回ることになった。

( ^ω^)「ドックンみるお!あのお姉さん超短いスカートはいてるお!」
( ^ω^)「あっちのお姉さんはおめめがパッチリだお!」
('A`)「うん・・・すごいね・・・」
( ^ω^)「凄いお!凄すぎるお!!」

基本クーとツンがいない時は一切自重しないブーンは、ここぞとばかりに¥唾をまき散らしながら網膜に桃源郷を焼き付けていた。
ブーンらしいというかなんというか。なんか作者はこういう奴が嫌いじゃないぞ!
一方、モラクー組はというと・・・

59 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 03:14:24.51 ID:acHl5leu0
( ・∀・)「うおお!コンビニが二つ並んでる!」
川 ゚ -゚)「・・・」
( ・∀・)「しかも向かいにも一つある!」
川 ゚ -゚)「・・・」
( ・∀・)「凄いなプラス県・・・人がゴミのようだ!」
川 ゚ -゚)「・・・」
( ・∀・)「・・・」
川 ゚ -゚)「モラ兄さん。」
( ・∀・)「ん?」
川 ゚ -゚)「服を買いたい。付き合ってくれ。」

というわけで服を買いにきていた。
さんざん悩んだ挙句、意を決したクーは青いワンピースを持って試着室へ。

60 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 03:15:13.39 ID:acHl5leu0
( ・∀・)(しかしあの化粧もしないようなクーがかわいい服を欲しがるとは・・・)
( ・∀・)(場所が変われば人も変わるってことか。)
( ・∀・)(確かに周りの人は皆高そうな服着てるけどさ、そんなの気にしなくていいのに。)
( ・∀・)(クーは素でかわいいんだからもっと自信を持てばいいんだ。)
( ・∀・)(そんな服を変えたぐらいd
がらっ
川 ゚ -゚)「・・・」
( ・∀・)「・・・」
川 ゚ -゚)「・・・」
( ・∀・)「・・・mjd?」
川 ゚ -゚)「・・・変か?」
( ・∀・)「いやいやいや!すごくイイ!感動!!」
川 ゚ -゚)「そうか。」
( ・∀・)「このまま靴も買いに行こう!いや、この場合サンダルでもいいな。」

61 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 03:16:28.77 ID:acHl5leu0
さて、皆さんは初めて女子と手をつないで歩いた時の事を覚えているだろうか?
人生には色々な‘初めて’がある。初デート・ファーストキス・初セクロス。
そのなかでも、好きな人と初めて手をつないで歩いた記憶というものは格別に甘酸っぱいものである。異論は認めない。
何が言いたいって作者や皆さんがどうのこうのということではなく、モララーとクーのことである。
二人はご存じ兄妹である。いくら血がつながっていないとはいえ禁断の愛には違いないだろう。
育ててくれた両親に対する申し訳なさや、ブーンとドクオにすら黙っていることは二人を苦しめてきた。
さらに彼ら一家は町では有名なのだ。恋人でいられるのは互いの部屋でのみだったと言っていい。
そんな二人は今まで一度も堂々と手をつないで歩いたことはない。
部屋の外では互いにそっけなく接していなければいけないのだ。

( ・∀・)(いやー今日も絶好の行楽日和だね。)
( ・∀・)(さすが俺。ナイススケジューリング!)
( ・∀・)チラッ
川 ゚ -゚)「・・・」
( ・∀・)(今日のクーは一段とかわいいなあ。さすがは俺の彼女だよなあ。)
( ・∀・)(・・・あれ?)
( ・∀・)(クーは俺の彼女か?彼女でいいんだよな?いまさらだよな?あれ?)
( ・∀・)(・・・)
( ・∀・)「クー。」

62 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 03:17:20.54 ID:acHl5leu0
先ほど二人の関係の原因の一つにモララーのコンプレックスをあげた。
しかし直接的な原因はクーにあった。クーがモララーに迫ったのである。
当時モララーが高一、クーが中二。
黒斑病患者にとって高一という学年は大きな意味を持つ。そのころから生存率が一気に下がるのだ。
終りの始まりと言ってもいいかもしれない。

川 ゚ -゚)「なんだ。」
( ・∀・)「いやさ、俺ってクーの彼氏でいいのかなって。」

モララー・クー・ブーン・ドクオの四人は幼いころからいつも一緒にいた。
特に親しい友人がツンを除いて他にいなかったことも関係しているが、それ以上に四人には運命的な強い絆があった。
言うなれば劉備・張飛・関羽。
「同年、同月、同日に生まれることを得ずとも、願わくば同年、同月、同日に死せん事を。」
である。
しかし運命は残酷なもので、クー以外の死はすでに予約済みだった。

63 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 03:18:18.20 ID:acHl5leu0
川 ゚ -゚)「いまさらだな。私はそう理解しているぞ」
( ・∀・)「でもさ、きちんと話したことなかったよね。」
( ・∀・)「それにほら、俺だって本当h
川 ゚ -゚)「うるさい!」

必ず近い将来三人の死を背負って生きていかなければならなくなる。
モララーが高校の制服に初めて袖を通したその日、クーはそのことを初めて現実として理解したのである。
あとはあっという間であった。
短絡的な行動以外に感情をぶつけることが出来なかった。
そんなクーの想いを鎮めることも出来なかった。
普段は不敵に振舞っているこの二人も本当はただの子供。ガキであった。


65 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 03:19:28.43 ID:acHl5leu0
川 ゚ -゚)「モラ兄さん。」
( ・∀・)「・・・」
川 ゚ -゚)「私はモラ兄さんの彼女だ。私はそのことを少しも悔いていない。」
川 ゚ -゚)「誇りにすら思っている。」
( ・∀・)「・・・」

その夜、二人は‘初めて’を共にした。
すなわち、二人は初めて運命と向かい合うことによって泣き、嘆き、運命を呪ったのである。
肉体関係はあくまで二次的なものであった。
恋愛感情すら傷を舐め合う夜を重ねるうちに生まれた副産物であった。

( ・∀・)「・・・」
( ・∀・)「・・・」
( ・∀・)「・・・」
( ・∀・)「わかった。変な事を言ってごめんね。」

66 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 03:20:11.74 ID:acHl5leu0
そのことをモララーはずっと悔いていた。
いくら家族と言っても自分は本来赤の他人。こうして暮らしているだけでもその恩は計り知れない。
しかも父親であるショボンは自分を死の淵から救ってくれた大恩人。
それなのにこんな裏切るような真似をしていいはずがない。
クーにしたってそうだ。
もうすぐ死ぬという今になってこんな事をしていてもクーを苦しめるだけだ。
呪われた人生の最後に少しの快楽を味わってさようならか?
最悪じゃないか。
被害者ぶって、自己陶酔に溺れて、その実大切な人を傷つけているだけじゃないか。

( ・∀・)(クーの方がよっぽど大人だな。)
( ・∀・)(俺も、いつまでもこんなんじゃ駄目だよな。)


67 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 03:21:09.36 ID:acHl5leu0
しかしそれでもモララーはクーとの関係を断つことが出来なかった。
作者は彼を弁護したい。
想像してほしい。実の親に捨てられて以来、彼は誰よりも毅然と振舞っていた。
弟妹のために差別と闘い、そして手本を示すように立派に死ぬことが自分の宿命だと言い聞かせてきた。
恩あるショボンとペニサスには決して甘えはしなかった。
周りに危害が及ばないよう誰かと親密になる事を避け続けた。
そんな彼にとってクーとの関係が、それが例え過ちであったとしても、どれほど温かかったことだろう。
いかに彼の心を溶かしたであろう。
一晩中悩み自責したあとでも、朝クーの顔を見るたびに彼は自らの生を称えずにはいられなかったのだ。

68 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 03:21:57.35 ID:acHl5leu0
( ・∀・)「本当に今更だけど、今やっと整理がついたよ。もう大丈夫。」
川 ゚ -゚)「まったく、いつまでもウジウジするから。どうも兄さんは考えすぎる。」
( ・∀・)「ははは。クーは厳しいな。」
( ・∀・)「それじゃあクー。お詫びにクレープというものを奢ってやろう。」
川 ゚ -゚)「クレープ?」
( ・∀・)「ああ。甘くてふわふわでおいしいぞ。」
川 ゚ -゚)「なに?行こう。是非行こう。早く連れてってくれ。」
( ・∀・)「じゃあ、はい。」

( ・∀・)つ

川 ゚ -゚)(・・・?なんだこの手は?)
川 ゚ -゚)(・・・)
川 ゚ー゚)(ああそうか。彼氏だもんな。)

70 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 03:22:50.47 ID:acHl5leu0





川 )=O=(   )






71 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 03:23:45.93 ID:acHl5leu0
人生には色々な‘初めて’がある。
中には苦いものもあるかもしれない。
人によってはそれは思い出したくないようなトラウマかもしれない。
でも、好きな人と初めて手をつないで歩く瞬間というものは誰にとっても甘酸っぱい。それも格別に。
モララーとクー。このカップルにとってもそれは例外ではない。

( ^ω^)「ドックン!あっちをみるお!網タイツだお!正真正銘の本物網タイツだお!」

そのことを理解していた。だからブーンはあえて二人に声をかけなかった。


第二話「都会」 終わり


戻る 次へ

inserted by FC2 system