アーカイブ


51 名前: ◆fkFC0hkKyQ 投稿日:2009/11/12(木) 23:11:35.41 ID:ETkeZZFBO
【アーカイブ No.01 内藤ホライズンの学生証】

・取得者/不明
・取得条件/車を飛び出す
・日時/前日 23:00

氏名:内藤ホライズン
生年月日:昭和61年5月7日
学籍番号:1170373688
所属:尾府大学 社会学部 民俗学科
キャンパス所在地:東京都 赤坂 ○○区
発行日:昭和80年3月15日

右の者を当大学の学生として認める。



──丁寧にパスケースに入れられていた学生証。
証明写真には、丸顔の人の良さそうな垂れ目の青年が写っている。
パスケースにはメモ用紙が一緒に入っており、何やら乱れた字でこう書かれていた。

“テーマ 東北の隠れキリシタンとその変遷について”

52 名前: ◆fkFC0hkKyQ 投稿日:2009/11/12(木) 23:12:49.30 ID:ETkeZZFBO
【アーカイブ No.02 泥まみれの結婚指輪】

・取得者/不明
・取得条件/山小屋の戸を開ける
・日時/1日目 00:00

落人地区、敦社岳の山小屋の床で見つかった結婚指輪。
シンプルなデザインのシルバーリングで、サイズは約15号ほど。
リングの内側には、やや薄くなっているものの文字が彫り込まれている。

“from Sii to Giko”

53 名前: ◆fkFC0hkKyQ 投稿日:2009/11/12(木) 23:14:01.86 ID:ETkeZZFBO
【アーカイブ No.03 血塗れの背広】

・取得者/不明
・取得条件/何者かに追われる
・日時/第一日目 00:00



──血で染まったかのように真っ赤に汚れた背広。荒郷村は戸夜川下流の河川敷で発見された。元々はダークグレーの配色だったと思われる。
内ポケットには一枚の写真がしわくちゃになって入っていた。

件の写真は同村内の板呼山で撮影されたようで、紅葉する山の木々を背景に、
小学生程の少年と顔色の悪い痩身の中年男性とが肩を組んで楽しそうに写っている。
中年男性の方が左手をファインダーの外に伸ばしていることから、この写真は彼が片手で撮影したものだと推測できる。

写真の裏にはボールペンで、「2009.10.17.親友と」と独特な達筆で書かれていた。

45 名前: ◆fkFC0hkKyQ 投稿日:2010/02/18(木) 22:09:12.37 ID:iWa4jYkm0
【アーカイブ No.04 マタキチストラップ】

・取得者/不明
・取得条件/鐘の音を聞く
・日時/前日 23:00

荒郷村のご当地キャラクター、「マタキチ」をあしらった地域限定販売のケイタイストラップ。
荒郷商店街の伊藤商店の軒先で発見された。
ストラップのワイヤーが切れている事から、元は携帯電話につけられていたものが、何かの弾みに千切れて落ちたものと思われる。

「マタキチ」とは、この地域で古くから活躍する阿仁マタギ(猟師)を可愛く、かつゆるくデフォルメしたキャラクターで、湯沢市観光協会が一般から募って昭和78年に採用されたキャラクターである。

右手に村田銃を握り、左手に熊の毛皮をぶら下げ、頭にスゲガサを被って、なんとも言えない笑顔を浮かべたマタキチの姿は、地元の女子高生の間で密かにブレイクした。
しかし、阿仁マタギは元々北秋田市の周辺が発祥であり、それを一般市民から指摘された事により湯沢観光協会はこのキャラクターをご当地キャラクターから解任。既に幾つものバリエーションとして発売されていたマタキチグッズの製造も中止された。

このような経緯から現在は入試困難なこの「マタキチストラップ」の当時の値段は税込み350円。
現在、マニアの間では原価の百倍以上の値段で取引されている。

47 名前: ◆fkFC0hkKyQ 投稿日:2010/02/18(木) 22:11:20.06 ID:iWa4jYkm0
【アーカイブ No.05 広報あらさと】

・取得者/五柳ギコ
・取得条件/宿直室の床を調べる
・日時/第1日 02:00

荒郷村役場が週に一度のペースで発行している地方紙。発行日は二週間前となっている。

“五柳夫妻に五つ子ちゃん懐妊、少子化問題も解決か”

―― 一昨年、狐塚地区在住の五柳ギコさん(26)、しぃさん(24)夫妻の間に待望の第一子が誕生した…と思ったのも束の間、またもや五柳一家から当編集部におめでたの知らせが届いた。
しかも今度はなんと五つ子だというのだから驚きである。まんずたまげた。
五柳ギコさんの父親であるフサギコさん(65)は、何時もの仏頂面を少しだけ緩め、「多ければいいってもんじゃね」と吐き捨てた。
これに対してお孫さんのでぃちゃん(02)が「じいじ、昨日一人でお酒飲みながら“えがったなぁ”って泣いてたよ」と“証言”したことにより、一家と取材陣の間に笑いが巻き起こった。
予定では、出産は来月中ということだったが、気の早い杉浦神父(42)は出産祝いとして夫婦に赤ワインのヴィンテージボトルを贈ったそうだ。
杉浦神父は取材陣を前にして「とっても美味しいワインなのである。村の皆さんにもおわけするので、是非とも飲んで欲しい」とコメントを述べた。
五柳夫妻には、是非とも元気な五つ子ちゃんを生んで欲しいものである。

49 名前: ◆fkFC0hkKyQ 投稿日:2010/02/18(木) 22:16:03.56 ID:iWa4jYkm0
【アーカイブ No.06 月刊ヌ― 創刊記念号】

・取得者/不明
・取得条件/「赤い雨」を目撃する
・日時/第1日 01:00

世界の超常現象やUMA、UFOなど幅広いオカルト分野を取り扱った雑誌。
読者投稿コーナーに葉書が採用されると、巨大ペンダグラムが貰える。
キャッチフレーズは「世界の謎とロマンを追いかけるハイパーミステリーマガジン」。

“異界からの落し物?――ファフロッキーズ現象の謎に迫る――”

――ある日いきなり空から札束が降ってきたらいいのに……読者諸兄は、そんな空想をしたことは無いだろうか?今月は、そんな空からの不思議な落下物について紹介したいと思う。
初めに断わっておくと、残念ながら過去に空から札束が降った前例は無い。空から降ってくるのは雨や雪ぐらいで、稀に旅客が煙を上げながら落ちてくるぐらいだ。
しかしながら、世界ではその他に普通では考えられない物が降ってきたという記録が幾つも残っている。
1954年イギリス、バーミンガムのサトンパークでは海軍のセレモニーの最中、雨とともに何百匹、何千匹というカエルが空から降って来て見物人たちの傘にぶつかり、地面に落ちたあともピョンピョンと飛び跳ねていたという。
近年の例では1989年オーストラリアのクィーンズランド州で民家の庭に1000匹のイワシが降ったとされる。

50 名前: ◆fkFC0hkKyQ 投稿日:2010/02/18(木) 22:18:10.08 ID:iWa4jYkm0
これらは超常現象研究家チャールズ・フォートにより「ファフロッキーズ(FAllS FROM THE SKIES)現象」と名付けられ、この他にも石やバナナ、果ては血の雨が降ったという記録も存在する。
これまでにこの現象の原因として様々な仮説が上げられてきた。
サイクロンで巻き上げられたものが落ちてきたとする「サイクロン説」。
人為的な悪戯だとする「トリック説」。
ワームホールに吸いこまれた物質が、空中に転移した結果とする「ワームホール説」。
他にも、飛行機の積み荷が落ちたからだとか、枚挙に暇がないが、結局のところこの現象の原因は未だ不明なままだ。
本誌としては、この現象の名付け親であるチャールズ・フォートの提唱したワームホール説を支持したい。
何故って?異界からの落し物、と考えた方が浪漫があるからに他ならない。

42 名前: ◆fkFC0hkKyQ 投稿日:2010/03/06(土) 22:01:20.93 ID:fSa/jN+60
【アーカイブ No.07 埜頭経羅絵巻 巻ノ伍 江殿出立ノ事】

・取得者/若梨ビロード
・取得条件/食堂の絵を目撃する
・日時/前日 22:00

サワチカ屋敷の食堂の壁に掛っていた絵画。
大きさは横5メートル、縦1メートル弱。檜の額に収められている。

――巨大なキャンバスの中では、異常に手足の長い人間達が、大勢で踊りまわっている様が描かれている。
彼らの頭上、天空には、巨大な渦巻きが浮かび、人々はそれに向かって手を差し伸べているようにも見える。
配色が赤系統のみと言う事もあり、言いようの無い不気味さが絵全体から漂ってくるようだ。

タイトルは額縁の下に金属のプレートで下がっているが、何と読むのかは不明。
専門家達もこの絵の作者は特定できず、恐らくは一般の手による宗教画かなにかだろう、というのがおおよその見解だという。

43 名前: ◆fkFC0hkKyQ 投稿日:2010/03/06(土) 22:03:56.07 ID:fSa/jN+60
【アーカイブ No.08 内藤ホライズンの論文】

・取得者/不明
・取得条件/荒郷教会に辿りつく
・日時/第1日目 01:00

――秋田県に逃げのびた隠れキリシタンは数あれど、荒郷村に逃げ伸びた人々は、他の地方の同胞達とは一風変わった信仰の変遷を辿ったようだ。
信仰の隠れ蓑として、他宗教の教義を盛り込む。
別にそれ自体は珍しい事では無いが、荒郷村に逃げ込んだ隠れキリシタンは、それに至るまでの経緯が多少ユニークだ。
彼らが初めて荒郷村に足を踏み入れた時期は、残念ながら記録に残っていない。
幕末の終わり頃か、それより僅かに前かというのが一番有力な説だ。
彼らは荒郷村に落ちのび、そこで隠れ蓑とする地元の民間信仰と出会うわけだが、一つ面白い記録が残ってい

原稿用紙はここで途切れている。
用紙の端にはP2と通し番号が振られていた。

44 名前: ◆fkFC0hkKyQ 投稿日:2010/03/06(土) 22:06:17.77 ID:fSa/jN+60
【アーカイブ No.09 庚申塔】

・取得者/伊藤ペニサス
・取得条件/庚申塔で躓く
・日時/第1日目 01:00

――人の体内には、三尸虫(さんしのむし)というものが潜んでおり、60日毎に回ってくる庚申(かのえさる)の夜、人間が眠っているうちに天へと昇り、天帝にその人間の犯した罪を報告する。
天帝は、この時報告された罪の軽重によってその人間の寿命を決めるので、長寿を願う人々は庚申の夜は三尸虫が体から抜け出さないように、宴会(庚申祭り)を開いて眠らないようにする。
というのが庚申信仰である。これは中国の道教から伝わった信仰だという。
庚申塔とは、その庚申祭りを三年間、述べ18回続けて行った事を記念して建てられるもので、全国に広くこの庚申塔が見られる。

荒郷村で見られる庚申塔は、他の地方で見られるそれに比べて高さ50センチ弱と非常に小さい。
また、村内に伝わる庚申信仰の内容は、厳密には庚申信仰とは細部が異なり、別の体系に基づ信仰であると思われる。
その為、荒郷村で見られる庚申塔も、「庚申塔に良く似た別物」である可能性が高い。
43 名前: ◆fkFC0hkKyQ 投稿日:2010/03/07(日) 22:04:19.53 ID:fbeacQhE0
【アーカイブNo.10 翁林祭りのお知らせ】

・取得者/不明
・取得条件/翁林祭りの事を聞く
・日時/前日 17:00

荒郷村内で出回っている回覧板。

〜翁林祭りのお知らせ〜

収穫機も終わり、落ち葉が舞う季節となりました。今年も翁林祭りの時期が訪れようとしています。
つきましては、村内の皆様に今年の翁林祭りについてご案内を申し上げます。

日時…10月22日 17:00

場所…板呼山自然公園中央広場

お集まりの際はてるてる坊主をお忘れなきよう、宜しくお願いします。



荒郷村役場

45 名前: ◆fkFC0hkKyQ 投稿日:2010/03/07(日) 22:07:05.00 ID:fbeacQhE0
【アーカイブNo.11 空のワインボトル】

・取得者/鬱田ドクオ
・取得条件/空のワインボトルを見つける
・日時/第1日目 01:00

――空になったワインボトル。

ラベルは元々貼られておらず、銘柄は不明。

ボトルの底に赤い液体が残っている事から、赤ワインが入っていた事がわかる。

47 名前: ◆fkFC0hkKyQ 投稿日:2010/03/07(日) 22:09:20.33 ID:fbeacQhE0
【アーカイブNo.12 サンカ 〜知られざる山の民〜】

・取得者/不明
・取得条件/デレと再会する
・日時/第1日目 03:00

秋田の民俗学者「荒巻文蔵」が著した山人(サンカ)の研究書。昭和49年初版発刊。
「荒巻文蔵」は特異な説を唱える事から、学界からは異端視されており、本書も発刊から2年で絶版となっている。

――かの柳田國男も言うように、「彼らは日本という国の先住民族である」、という説を私は否定しない。
私の唱える説は、彼のその説を基本とし、更にその深い所まで掘り下げた物だという事を先に述べておこう。
得てしてこの先住民族というものは迫害される傾向にある。
アメリカ開拓史におけるインディアンがそうであったように、彼らサンカも現在の日本人の先祖がこの土地にやってきた折にその殆んどが追いたてられ、山に住むようになったのだ、というのが柳田國男の唱えるところだ。
この事から、日本は自らが侵略民族であるという事を認めたくないが為に、サンカに纏わる資料のことごとくを闇の中に葬ってきた、と考える者も居る。
最も、そえは私の考える仮説とは異なる。
しかしてサンカに関する資料が残っていないのも事実だ。
では、何故残っていないのか。

48 名前: ◆fkFC0hkKyQ 投稿日:2010/03/07(日) 22:11:38.76 ID:fbeacQhE0
読者諸賢に問おう。

我々人類とは全く異なった社会構造を持つ知的生命体と人類が出会った場合、人類はどのような反応を取りうるか。

恐らくは、初めに混乱がある筈だ。
向うがこちらに敵対的なのか、はたまた友好的名のか。
コミュニケーションはとれるのか。共存は可能なのか。

ここまでで、賢明な読者にはもう察しがついているだろう。
つまりは、そう言うことなのだ。

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