( ・∀・)モララーは隠居暮らしのようです。

4 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/13(金) 20:55:43.20 ID:z/bxbLb90
ξ゚听)ξ「じゃあ準備はいいかしら?」

( ^ω^)「オッケーだお!」

(*゚∀゚)「もーまんたいだぜ!」

ガイアの日の朝。
季節は夏を迎えた。
夏休みに入ったブーンとツンはほとんど毎日ここに来ている。
今日は仕事を休みにしたツーも、二人と一緒にモララーの隠居を訪れていた。
すっかり馴れ親しくなったようで、楽しげに遊んでいる。
心身共に、傷はかなり癒えてくれたようだ。

丘の上に立って、ブーンとツーが小さな木の板の上に乗っかっているのだ。
そしてそこへツンが魔法をかける。
すると、板と草の摩擦がほぼ0になり、まるでスケートボードのように滑降できるのだ。

ξ゚听)ξ「いくわよ? レディー…ゴー!」

パチンとツンが指を鳴らす。
同時に魔法がかかり、木の板が滑り出した。

5 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/13(金) 20:56:43.02 ID:z/bxbLb90
(* ^ω^)「ひょー! きーもちいい!!」

(*゚∀゚)「サイコーだぜ!!」

足と木の板に粘着の魔法もかけているので、体重移動したら転ぶなんてこともない。
二人はどっちが速く下へ降り切れるかを勝負しているのだ。

身体を沈ませ加速をあげたり
上手く重心を移動させて相手に近づいたり
相手の身体を少し押してバランスを崩させたり

様々な戦闘の末

両者は同時に体勢を崩して草原へと転がっていってしまった。

ξ;゚听)ξ「うわ…大丈夫ー?」

上からでもわかる。
とても痛そうな鈍い音が聞こえたからだ。
だが草っ葉に沈む二人は、元気よく飛び出してきた。

(* ^ω^)「「あははははは!!」」(゚∀゚*)

顔を見合わせると一緒に笑い出した。
少し擦りむいているが気にするほどの怪我ではない。

6 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/13(金) 20:58:09.57 ID:z/bxbLb90
( ・∀・)(すっかり遊び場になっちゃたなぁ…。)

洗濯物を干していたモララーがそんな子供達を見て優しく笑った。
手伝ってくれ、なんて野暮なことは言わない。
今まで出来ていたし、苦にもなったことはないからこれくらいは問題は無いから。
なにより、子供は子供らしく。こっちの手伝いよりも、ああやって元気一杯に遊んでいて欲しい。

( ・∀・)(これが僕の守った未来……なのかな。)

ふと、ブーン。基ロマネスク=ホライゾネルの言葉を思い出してしまったモララーだった。

(*゚∀゚)「そういえばさ、兄ちゃん。」

( ・∀・)「なんだい?」

シルムのタルトの食べかすを頬っぺたに付けたツーが突然聞いてきた。

遊びまくった彼女らに、今日は少しだけ豪華に…とモララーがタルトを焼いてくれたのだ。
シルムは柑橘系のオレンジより少しだけ赤みがかかった酸味が優しい果実だ。
それを贅沢に使いまくった、街でもあまり見かけないタルトをモララーは用意してくれていた。

(*゚∀゚)「兄ちゃんて結婚とかしてねぇの?」

(; ・∀・)「ぅぐっ!?」

8 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/13(金) 20:59:20.19 ID:z/bxbLb90
突拍子も無いことを聞いてきたツーのせいで、飲みかけたシルムの紅茶が気管に入りかけた。
大きく咳をして、ブーンに背中を叩いてもらう。
だいぶ落ち着いたのでモララー聞き返した。

(; ・∀・)「な、何?」

(*゚∀゚)「や、兄ちゃんってカッコイイ顔してるし、メチャメチャ強いからお嫁さんの一人くらい居るもんかと思ってさ。」

( ^ω^)「ぼくはここに夏になる前からいるけど…そんな人見たことないお。」

ξ゚听)ξ「私も見たことないわね。」

(; -∀-)「そういうことだよ、ツーちゃん。
      僕には妻も居ないし、恋人の一人もいない。独身の男さ。」

(*゚∀゚)「へー…モテないの?」

(; ・∀・)「…かもね。僕は15の時まで闘技学校通ってたけど…何もなかったからさ。」

( ^ω^)「でも、モララーさんって闘技学校卒業時に受ける傭兵テストを一発で合格して
      さらにそのまま『大魔術師』になったんですおね?」

ξ゚听)ξ「つまり、元々並外れた魔術師だったから、他の人が寄り付かなかった。
      って可能性もありますよね。」

10 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/13(金) 21:01:50.22 ID:z/bxbLb90
(*゚∀゚)「ほー。オレの学校にはそんなの一人も居ないからわかんねぇや。」

フォークをタルトに突き刺して、ツーは大口を開けてその一片を放り込んだ。

( ・∀・)「…それはあるかもね。たしかに、まともな友達は居たためしがないよ。
      誰も僕に寄り付かなかったからなぁ……怖かったんだろうね。
      友達、って呼べる人は多分…共に戦争を生き抜いた人たちくらいかな。」

少しだけ寂しそうに話すモララー。
大きな力は戦いには役に立つ。
現に大陸一つをねじ伏せるほどの力をモララーは持っていたから。

だが、それを学校生活に持ち込むと…
子供は恐怖の対象でしか見ることができない。
自分の力の何十倍もあるんだ。

もしも友達になったとして…
些細な喧嘩で半殺しにされてはたまったもんではない。
だから子供達は意図的にモララーを避けてしまったのだ。

( ^ω^)「……。」

ξ゚听)ξ「……じゃあモララーさん。私も聞いていいですか?」

フォークを持った手でツンは挙手をした。

12 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/13(金) 21:03:52.44 ID:z/bxbLb90
( ・∀・)「なに?」

ξ゚听)ξ「恋人が欲しいと思ったことって、あります?」

純粋な質問だ。
今年で25になるモララー。
いくら逸脱した魔術師だとしても…人間だ。一人の男だ。
そういう気持ちになっても少しもおかしなことではない。

( ・∀・)「……わからないなぁ。」

ξ゚听)ξ「へ?」

( ・∀・)「僕は僕よりも、他人のことばっかり考えてた。
      僕が頑張れば戦争が終わる。そんなことばっかりね。
      だから自分のことを考える余裕なんて……なかったんだ。」

( ^ω^)「ふーん…じゃあ、モララーさんはアッー! ってことかお?」

(; ・∀・)ξ;゚听)ξ「「全然違う!!」」 (゚∀゚*)?

疑問符のツー。
突っ込む二人。
ボケるブーン。
ここ最近のお決まりパターンは、今日も同じようにして流れていた。

13 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/13(金) 21:06:16.66 ID:z/bxbLb90
アポロンの日の午後。
今日はツー抜きでの隠居訪問。
仕事があるが、何度も何度も手伝ってもらっては悪いとツーが断ってのことだ。

( ・∀・)「あ、そうだ。川の方にスイカを冷やしてたんだ。」

(* ^ω^)「おー! 夏の風物詩スイカですかお!! ぼく大好きだお!!」

ξ゚听)ξ「種を取るのと手と口周りがべチョべチョにならなければ私も大好きです。」

それぞれの感想を聞いて、食べるのだと判断したモララーは腰をあげた。
少し待っているようにと言いつけて、家を出る。

( -∀・)「っ!」

途端に眩しい光が天から降り注いだ。
夏らしい熱線が肌をじわじわと焼いていく。
少し歩いただけなのだが、じんわりと汗が滲んできた。
だが、心地よい冷風により気だるさや鬱陶しさは感じない。

蝉の鳴り響く森の中へモララーは入っていった。
木の葉のバイザーのおかげで日光も気にならない。
天然の避暑地を生い茂る緑をかき分けてモララーは歩く。

15 名前:14 ごめんね。お兄ちゃん早漏でごめんね ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/13(金) 21:09:05.69 ID:z/bxbLb90
入ってからすぐその耳に川のせせらぎを聞き入れた。
定期的に流れる水の音。1/fのゆらぎは夏なのに暑さを感じさせない気候と相俟って効果を倍増させていた。

モララーは流れの弱い川の一角に仕掛けたスイカを取った。
器用に岩場へと足をかけて、濡れることもなく見事スイカを抱えることに成功する。
もってきたタオルで水気をふき取り、一つだけ持っていくことにした。

実はもう一つスイカを仕掛けてあるのだが、それはまたツーが一緒に来た時のために残しておくことにした。
野生動物に取られたら取られたでまた冷やせば良い。自然のものが自然に返って何が悪いことなのか。

モララーはそう思いながら岩場を飛び、川辺の砂利へと足をつけた。

( ・∀・)「…おや?」

そして気づいた。
スイカを仕掛けた下流域の岩場
何かが揺らめいている。

咄嗟に不幸な動物が足を滑らせて命を落としてしまったのかと思った。
だが、目を凝らしてみると…
違う。動物じゃない。

揺らめいているのはボロボロになった衣服。
引っかかっているのは不自然に折れた右足。
細い手はだらしなく流れに沿っている。

19 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/13(金) 21:12:54.71 ID:z/bxbLb90
( 、 トソン

人間の女性だった。

(; ・∀・)「!」

なんでこんな所に人が居るのかは後回しだ。
まずは助けなければ、とモララーは水の上を風魔法で滑空しその女性の元へ向かう。

(; ・∀・)「…生きてる…ね!」

手を口に当て、脈も確認。
どちらも弱弱しいが一生懸命生きようと必死に活動している。

モララーは急いで抱きかかえて、念じた。
蒼い魔法陣が発生し、二人は光球へと変化した。

( ^ω^)「スイカー…スイカー…まだかお…。」

ξ゚听)ξ「まだ出ていって5分くらいでしょ? 少しは我慢なさい。」

机に両手を伸ばしてもたれるブーンと、腕を組んで待つツン。
そんな二人の座る椅子の傍へ突然青色の魔法陣が発生した。

( ^ω^)「お?」

ξ゚听)ξ「転移魔法…? モララーさんよね?」

22 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/13(金) 21:15:36.90 ID:z/bxbLb90
普段から使ってるので魔法の発動には対して驚かなくなった。
が、疑問はある。
炊事、洗濯にすら魔法を使用したがらないモララーがどうして転移魔法を突然使ったのだ?
スイカが温くならないうちに急いで持って返ってきたかったからだろうか?

推測をしているうちに、光球が壁をすり抜けて飛んできた。
青い光はモララーの形をつくりあげる。
そして次に、モララーの腕に抱えられている傷ついた女性を形成した。

(; ・∀・)「二人とも! 薬茶の準備をお願い!」

(; ^ω^)「へ?」

ξ;゚听)ξ「! わ、わかりました!」

狼狽するブーンを無理やり引っ張ってツンは薬茶の準備をした。
簡単な火炎系の魔法ならばツンでも出来る。薬茶作りにはそう時間はかからない。
そう思ったモララーはまず力なくぶら下がるその足の治療を考えた。

とりあえず屋根裏へあがり、ベッドに寝かせる。
深く辛そうに呼吸をする女性の足をモララーは見る。

脹脛が不自然に歪曲している。
肉を破って露出した白骨がとても痛々しい。

26 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/13(金) 21:18:40.73 ID:z/bxbLb90
(; ・∀・)「……。」

クレスト草を塗ってもこれは治る怪我じゃない。
切り傷刺し傷にはとても強いが、骨や病気に関してはクレスト草は役に立たないからだ。

ならば出来ることは一つ。
モララーは立ち上がり、自分の額に指を向けた。
そして女性の足へも指をむける。

次に展開されたのは赤色の魔方陣。
発生した魔方陣は、淡い光を放って女性の足を覆う。

それは小さな変化から始まった。
徐々に徐々に、露出した骨が皮膚の中へ戻っていく。
折れた箇所が再生しているのだ。

ξ;゚听)ξ「できました!」

風魔法でツンはモララーの所へ薬茶のコップを渡す。
応急処置を終えたモララーは女性の口へゆっくりと薬茶を飲ませてから、息をついた。

(; ・∀・)=3「よし。」

骨折は治した。体調の方は薬茶で治ってくれるだろう。
念のために、とモララーは女性の足へ添え木をして包帯を巻いてあげた。

30 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/13(金) 21:21:36.06 ID:z/bxbLb90
モララーが使ったのは回復魔法。ポピュラーな聞こえではあるが、実は超高度な魔法だ。
近衛魔術師しか使えないほどなのだが…実戦で使われたためしは無い。

大量の魔法力を使う上に、人体へ少し無理をさせるからだ。
回復魔法とは聞こえがいいが、その実はただ自然治癒力を強制的に早めているだけ。
いつまでも使い続ければ体の崩壊を招くのは必至である。

( ・∀・)「ってことさ。」

( ^ω^)「へ〜…。」

ξ゚听)ξ「教科書に載ってたまんまですね。」

薬茶つくりの最中に見慣れぬ赤い魔方陣の発生を眼にしていた彼らはそれについての質問をしていた。

女性は深い眠りについている。
濡れていた上にボロボロだった衣服も脱がして、モララーのものを着せておいた。
勿論、着替えを行ったのはツンである。
覗こうとしたブーンがツンの雷魔法で黒焦げにされたのは言うまでも無い。

ξ゚听)ξ「にしても、見ない衣服ですよねコレ。」

( ^ω^)「ぼくも見たことないお。」

32 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/13(金) 21:25:13.06 ID:z/bxbLb90
その脱がせた衣服をツンは見せた。
ボロボロだが、なんとなく全容はわかる。
つなぎのような衣服で、マントのように羽織って着るらしい。
腰には帯が巻いてあって、それで衣服がはだけぬように固定するみたいだ。
足につけていた靴下も、普通のソックスではなく二股に分かれた足首までを覆う白いもの。
藁で編まれた不思議なサンダルも履いていた。

( ・∀・)「……。」

それに対し、モララーは心当たりがあった。
いや、本当は知っている。
昔、何度も何度も血に染まるその衣服を見たことがあるからだ。

(゚、゚トソン「…?」

衣擦れの音が聞こえた。
それに反応して階下の3人は顔を屋根裏へと向ける。

( ^ω^)「起きましたかおー?」

ξ゚听)ξ「大丈夫ですかー?」

34 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/13(金) 21:28:37.94 ID:z/bxbLb90
階段を上がりながら二人は声をかける。
パッと見た感じ、年上な気がしたので彼らは敬語を使っていた。
モララーはその二人の後ろからゆっくりと何故か俯き加減でついていった。

(゚、゚トソン【あなた達は…? ここはどこですか?】

(; ^ω^)「お?」

ξ;゚听)ξ「? 何を言ってるんですか?」

上半身だけを起こした女性は二人の姿を見ると質問をした。
だが通じない。
まるで聞いたことのない言葉で何かを喋っているのだ。

(; -∀-)=3「やはり…か。」

( ^ω^)「どういうことですかお?」

ため息をついたモララーが指先を女性に向けた。
一瞬無色の魔法陣が発生すると、それは女性の全身を覆った。

36 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/13(金) 21:31:44.22 ID:z/bxbLb90
(゚、゚;トソン「な、何をするんですか!?」

( ^ω^)「お! 今度はわかるお!」

ξ゚听)ξ「私にもわかったわ!」

さっきは意味不明の言語を話していたが、今はちゃんと通じる。
手で顔を守るようにした女性の行動、言葉共に理解できている。

( ・∀・)「…知らないかな? VIP大陸の子供は普通、知らないか。」

でもモララーは知っている。
だからモララーは言語変換の魔法をかけたのだ。
間違いない

( ・∀・)「この人はラウンジ大陸の人だよ。」

ξ゚听)ξ( ^ω^)

ξ゚听)ξ(^ω^ )

ξ;゚听)ξ(; ^ω^)「「えぇえええ!!??」」

38 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/13(金) 21:34:19.35 ID:z/bxbLb90
一瞬間を置いて二人は同時に驚愕の声をあげた。

戦争が終わってからも、ニ大陸の仲は決していいわけではない。
未だにVIP大陸の沿岸部には所々関所が設けられており、ラウンジ大陸の人間が無断で侵入することを禁じている。
もちろん、そのことから考えられることだが…政治的な意味だけでなく文化的に関しても仲はよくない。

両者が両者を嫌っているので、言語を学んだり文化を知ったりすることは国そのものが禁じていたのだ。
だから、戦争でしか相手の大陸の人間を知る手段は無い。
戦後に育ったブーンとツンがラウンジ大陸の人間を知るはずもなかった。

( ^ω^)「…。」

ξ゚听)ξ「…。」

(゚、゚;トソン「…。」

( ・∀・)「…。」

4人は見詰め合っていた。
足の怪我もあり、女性はベッド。3人は立ったままという形だ。
正確には俯いて少し困った顔をする女性へ、興味の対象として二人の子供が熱視線を送っているだけなのだが。

( ^ω^)「お名前はなんていうんですかお?」

(゚、゚;トソン「あ、都村トソンと言います。」

41 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/13(金) 21:37:27.73 ID:z/bxbLb90
ξ゚听)ξ「どうやって書くんです?」

(゚、゚トソン「はぁ…えっと…こうです。」

紙とペンを渡されたトソンという名の女性はスラスラと自分の名前を書き始めた。
VIP大陸では見たことも無い形態の文字に二人は驚く。

( ^ω^)「これで、つむら とそん って読むんですかお?」

(゚、゚トソン「はい。」

ξ゚听)ξ「まるで象形文字ね。さっぱり読めないわ。」

渡された紙を見て二人は唸りながらも楽しげに話し合う。

そんなトソンへモララーが聞いた。

( ・∀・)「直球的な質問をしていいですか?」

(゚、゚トソン「はい?」

( ・∀・)「どうしてラウンジ大陸の人がこんな山奥に?」

43 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/13(金) 21:40:26.32 ID:z/bxbLb90
もしも関所を通ってきたとして…
向かうなら中心地のVIP王国くらいだろう。
基本的に大陸同士は忌み嫌っているから、旅行でこの大陸に来るなんてことはまず考えられない。

なにより、この山の中はVIP王国から離れている。
どうしても、ここに来た理由がわからないのだ。

(゚、゚;トソン「あの…それですが…。」

( ・∀・)「?」

トソンはモジモジと手をいじりだした。
大きめのシャツとズボンが身体に合ってなくてとても着心地は悪そうだ。

( 、 ;トソン「私もわからないんです。」

( ・∀・)「…というと…」

(゚、゚;トソン「今わかることは、自分の名前くらい…ってことです。」

( ^ω^)「…ツン、どういうことだお?」

44 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/13(金) 21:42:20.97 ID:z/bxbLb90
ξ゚听)ξ「あんたバカぁ? つまりね」

ξ゚听)ξm9て「この人は記憶喪失ってことよ!」
ドギャァアアン!!

(; ^ω^)「えぇえええ!!??」

わかってるもんだと思って言ったつもりだが、ブーンは本気で驚いていた。
すぐに理解していたモララーは二人のやり取りをよそに外を見て思う。

( ・∀・)「時期に日が暮れるよ。今日はもうお帰り。」

二人の肩に手を置いてモララーが言った。

( ^ω^)「えー? もうかお?」

ξ゚听)ξ「もう少し話聞きたかったです。残念ですね。」

(゚、゚;トソン「はぁ…。どうも。」

だが、未知の宝石箱みたいな人間が目の前にいるのだ。
好奇心の塊である二人が愚図らないわけもない。

45 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/13(金) 21:45:28.75 ID:z/bxbLb90
( ・∀・)「じゃ、またね。」

( ^ω^)ノシ「ばいばいだおモララーさん、トソンさん!」

ξ゚听)ξノシ「またお話ししましょうねー!」

暗くなる前に二人を帰した。
一度トソンには家の中へ入ってもらい、魔法の発動シーンだけは見せないようにしてからだ。
だから二人の声はドア越しだったのだが、トソンはそれでも少し嬉しかった。

( ・∀・)「…そうえいば聞いてませんでしたね。
      具合はどうです?」

(゚、゚トソン「えぇ。とってもいいです。」

体調は万全。足も回復魔法で処置を施した。
普通に考えれば悪いわけもない。
不調があるとすれば、頭の中にある記憶だろう。

( ・∀・)「どうして怪我を負ってたのか、とか…やっぱりわかりませんか?」

(゚、゚トソン「…すみません。」

47 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/13(金) 21:47:53.39 ID:z/bxbLb90
(; ・∀・)「いや、謝ることじゃないからいいんですよ。」

シュンとするトソンを見ると、まるで自分が悪いことをしたような気分になってしまう。
元々、そんなに女性に対する免疫を持たないモララーは少し困惑してしまった。

(゚、゚トソン「でも、なんとなくだけど…わかることがあるんです。」

( ・∀・)「なんですか?」

少しでも情報があれば引き出してみたいところだ。
モララーは先を促す。

(゚、゚トソン「私はラウンジ大陸の人間で、ここはVIP大陸なんですよね?」

( ・∀・)「そうですよ。」

(゚、゚トソン「……なんといいますか…確証は持てないんですけど…」

(゚、゚トソン「私、この大陸で何かをするために来たと思うんです。」

( ・∀・)「……そうですか。」

(゚、゚;トソン「すみません。曖昧なこと言ってしまって。」

( ・∀・)「いいですよ。記憶なら時間をかけてゆっくりと戻していきましょう。
      それまでは、そのベッドを使っていても構いませんよ。
      食事は日持ちのいい乾物をベッドの脇においてあります。
      食欲がわいてきたらにご自由に食べてください。」

(゚、゚;トソン「え? でも…。」

49 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/13(金) 21:50:34.61 ID:z/bxbLb90
( ・∀・)「お気になさらず。間接的だけど、少しでも僕は罪滅ぼしをしたいんです。」

(゚、゚トソン「……罪滅ぼし…?」

( -∀-)「……。」

モララーは返事をすることなく階段を降りて外へ出て行った。
夏だから凍死する可能性はない。山の夜なら暑さもそこまで気にならない。
けど少しでも寝心地のいい場所を、とモララーは馬小屋へ入ってそこに詰まれた藁の上へと寝転んだ。

突然の主人の来訪に馬は喜びを身体で表現する。
鼻を近づけてくる馬へと、モララーは語りかけた。

( ・∀・)「…意味のないことかもしれない。
      でも、できることはしたいんだ。」

それだけ言うと、これからの時間をどうやって過ごそうかと考える。
まだ夜更け前だし…生活用品は全部家の中だし…戻ったら居心地悪いだろうし…

どうしようか。

答えてくれたのは、馬ではなく情けなく鳴り響く自分のお腹の虫だった。







つづく


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