- 2 名前: ◆hCHNY2GnWQ[sage] 投稿日:2009/08/31(月) 20:46:08.26 ID:DKSQiB1d0
- ( -∀-) =3
黒衣を羽織った彼は夜月に照らされていた。
特殊な繊維で編まれているそれは、光をてらてらと反射させている。
魔法による行灯に照らされた煉瓦敷きの道はぼんやりとしか見えない。
街路樹や鋼鉄の柵などを映し出すだけで、人間大の影を落とすものは一つもなかった。
そんな見渡しのいい場所。
彼が座ってため息をついたのは、大陸有数の豪邸であるノーファル家の屋上だった。
第二話「これしかない」
- 3 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/08/31(月) 20:48:50.15 ID:DKSQiB1d0
- (`・ω・´)「……。」
聖魔術師シャキン=ノーファルは、本皮製の椅子に座って魔術書を読んでいた。
ロマネスクのように彼も時には王国へ行って傭兵の訓練を行うこともある。
他にも、戦果のおかげで手に入れた資産を元に様々な事業にも手を出していた。
だが、今日は偶々の休日。
やることがないのならば、己を高めるために時間を使用するのが彼の信条だった。
聖魔術師とはいえど、まだまだ伸びしろは残っているのである。
ふと、ノックの音が聞こえてきた。
(`・ω・´)「入れ。」
指をパチンと鳴らすと、両開きの扉が金具の音を立てた。
錠前のロックが魔法によって解除されたのだ。
( ´ー`)「失礼いたします。」
(`・ω・´)「……!」
部屋に入ってきたのは、茶器を載せたカートを押す一人の執事。
黒いスーツに縦じまのシャツ、夏真っ盛りでも忘れないタイを身に着けている。
そろそろ頃合かと思って、紅茶のお代わりを持ってきたのだ。
予想違わず、シャキンの机に置かれているカップの中身は空になっていた。
- 5 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/08/31(月) 20:50:40.87 ID:DKSQiB1d0
- ( ´ー`)「おかわりをお持ちいたしました。」
(`・ω・´)「…。」
シャキンはその執事らしい当然の動きをじっと見つめた。
持ち上げたカップ、注がれる甘い香りをした液体。
再び皿に置かれた時には、湯気を立てて視覚も刺激してきた。
(`・ω・´)「ご苦労。」
備え付けられているミルクを取って、水面に垂らし込む。
すると、オレンジ色だった紅茶が真っ赤に変化した。アージンという紅茶特有の現象だ。
(`・ω・´)「……。」
ミルクを入れ終えたシャキンはゆっくりとスプーンを使ってかき混ぜる。
ちゃんと混ざりきったのを確認すると、水中からスプーンを取り出してじっとその先を見つめた。
すると、徐々にその先端が変形を始めたのだ。
理由は勿論、シャキンが魔法を使っているから。
だが、その理由は不明。なぜなら、スプーンは三叉の尖鋭なフォークへと変わったからだ。
茶菓子もないのに、何故?
- 8 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/08/31(月) 20:53:50.29 ID:DKSQiB1d0
その時。
シャキンはフォークを投げつけた。
目標は、自分の後方にじっと待機している執事へ向けてだ。
常人ならば、回避は難しいだろう。
シャキンは悟られぬようにスプーンを変形させたし、投げたのも後ろを向いたままだからだ。
しかし
フォークは当たらない。
執事の顔面スレスレの所で停止しているのだ。それも空中で。
(`・ω・´)「いつまでそうしているつもりだ。」
( ´ー`)「はて、何のことでしょうか?」
(`・ω・´)「ロマネスクのような騎士系の人間ならば誰も気づかないだろうが…
訓練された魔術師ならば、その程度は看破することは容易い。」
椅子ごと振り返りシャキンは執事へ向けていった。
(`・ω・´)「さっさと魔法を解け、モララー=レンデセイバー!」
- 10 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/08/31(月) 20:56:58.65 ID:DKSQiB1d0
- ( ´ー`)「……。」
( ・∀・) =3 ポンッ
そこに現れたのは執事ではなく、青年だった。
纏っているのは黒衣。彼の二つ名の由来ともなった光を反射させない素材で編まれている。
( ・∀・)「流石は聖魔術師ですね。魔法力の波動だけで人物の特定までできるとは。
恐れ入ります。」
(`・ω・´)「何のようだ。」
深々と礼をして敬意を表すモララーを無視してシャキンは用件を問うた。
経験から動揺を隠すことは慣れているが、内心は焦りで蝕まれている。
昨年、訪れたときは完膚なきまでに無抵抗化されてしまった。
修練を重ねたといえど、未だに及んでいるとは思えない。
勝つことの出来ない相手が、再び自分のもとへ訪れたということは非常に恐ろしいことである。
( ・∀・)「なに、また風の噂を聞きましてね。」
(`・ω・´)(…チッ。)
また風の噂か…。
どこで繋がっているか知らんが、こいつの運び出してくる風の噂は良い物ではないことは確かだ。
- 11 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/08/31(月) 21:00:12.37 ID:DKSQiB1d0
- ( ・∀・)「お子さん…ショボン君がイジメにあっているんだとか。」
(`・ω・´)「…それがどうした?」
( ・∀・)「おや、驚かれないんですか?」
(`-ω-´)「言われずとも知っている。」
シャキンは用件が大したものじゃないと察知すると、魔術書へ目を移した。
その行為にモララーはひどく違和感を覚える。
息子を溺愛していた彼が、どうしてその危機にこんなにも無関心なのだ?
( ・∀・)「…何故助けないんです?」
(`・ω・´)「所詮は子供の喧嘩だ。いずれは落ち着くだろう。
いちいち私が矢面に立てば、面子も潰れよう。」
( ・∀・)「…つまり、近衛魔術師になりたいから息子に構っている時間などない…と?」
(`・ω・´)「…。」
シャキンは答えなかったが、モララーはそれが肯定だと受け取った。
- 13 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/08/31(月) 21:03:18.86 ID:DKSQiB1d0
- ( -∀-) =3
そしてため息をつく。
一年前、彼の行いや考え方に苛立ちブーンのためという建前を携えて襲撃したことがある。
シャキンのもつ最強魔法すらも打ち消し、言葉による攻撃も行った。
少しは変わってくれると思ったが…むしろ逆だ。
悪化している。
子供にすら無関心になり、自分の身の回りから自分自身のみの保身へはしってしまったのだ。
偉くなることがそんなに必要なことなのか?
娯楽や俗世にあまり興味がないモララーにとっては理解できない。
でも、わかることは一つある。
このまま放っておけば、間違いなくショボンは心に癒えない傷を負ってしまうだろう。
別の策は打ってはいるが…それはこどもの世界の話。
こどもの世界とは、常に大人の世界の支配下に置かれている。
そして、大人の世界はこどもの世界の全てを自由に動かす権利を持っているのだ。
悪いこともいいことも。隠し事さえも握られている。
しかし、対するこどもはそれに抗うことはできない。
経験、体躯、頭脳。あらゆる点で劣っているのだ。敵うはずもない。
ただこどもは従うだけ。反抗しようものなら、生きていけるかどうかも危ういところだ。
- 15 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/08/31(月) 21:07:39.94 ID:DKSQiB1d0
- かと言って悪い点ばかりではない。
逆に言えば、大人が干渉してやることでこどもの世界の『悪』を緩和してあげることもできるのだ。
そう、今で言うならショボンの現状のように。
( ・∀・)「…。」
少し考えたモララーは別の方向から攻めることにした。
( ・∀・)「戦時中…あなたは獅子奮迅の活躍でしたよね。」
(`・ω・´)「なんだ突然。」
モララーは目を閉じてその光景を思い出すようにしてシャキンへ話を続ける。
( -∀-)「サロンの森での戦い…最終防衛線を守りきったあなた達の戦いは素晴らしかった。
数では間違いなく劣っていたというのに…それをひっくり返した。」
(`・ω・´)「…。」
( ・∀・)「騎士は近距離戦闘を、魔術師は遠距離戦闘を。
この定石を見事に遵守し、あなたは戦った。」
( ・∀・)「あなたの嫌う、ロマネスクさんとね。」
(`・ω・´)「ふん。そうでもしなければ私も死んでいたからな。
仕方なく、だ。あいつには戦闘員以外の感情など持ってなどおらん。」
- 16 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/08/31(月) 21:12:06.81 ID:DKSQiB1d0
- ( ・∀・)「まぁまぁ。
少なくとも、あの時のあなたとロマネスクさんはあるべき騎士と魔術師の形を成していたと思います。
互いの苦手な間合いを互いが補う。素晴らしいです。」
(`・ω・´)「…。」
( ・∀・)「そして、偶然か運命か。あなたの息子は魔術師を目指し、ロマネスクさんの息子も騎士を目指している。」
( ・∀・)「思考は違えど、あなたもこのVIP大陸を守るために必死に戦った人の一人だ。」
( ・∀・)「これからもこの大陸が栄えていくには…未来の力も必要なのではないですか?」
(`・ω・´)「……。」
( -∀-)「すみませんね、長居をしました。お茶は冷めぬうちに召し上がってください。」
( ・∀・)「では。」
再び深く礼をしたモララーは蒼い魔方陣を足元に発生させた。
そして、光球へと変化すると窓をすり抜けて空の彼方へと飛んでいった。
(`・ω・´)「…ふん。」
シャキンもモララーが来る前に行っていた魔術書を読む作業へと戻った。
が、その表情は難解な術式を読むような難いものではなく少しだけ柔らかなものになっていた。
- 19 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/08/31(月) 21:16:52.99 ID:DKSQiB1d0
――――他方、V校にて。
ξ゚听)ξ(…学校に居る間はやっぱ普通なのよね。)
ツンは言われた通り、ショボンの観察を行っていた。
移動教室も幸いなことに同じなので、動向を伺うには好都合だった。
流石にトイレだけは
ただ違うことは一つ。
去年はいつも、ショボンの周りには誰かが居た。
ヘラヘラした奴らばかりだったけど、少なくとも彼を慕っているようには見えた…
が、現在は正反対。
ショボンは授業の合間もつまらなそうに魔術書を読んだり、外を見たり、寝たふりをしたりしている。
誰かと話すなんてことは、一度もなかった。
ξ゚听)ξ(問題はここからなのよね)
それは終業のチャイムが鳴った後だった。
ショボンは疲れた顔で立ち上がり、机の物を片付ける。
一箇所に集め終えると、圧縮の魔法をかけて丸いキーホルダーへと変化させる。
それをベルトに下げるというスタイルが魔術師クラスの日常だ。
騎士クラスは筋トレの意味も含め、あえて鞄を使って登下校させている。
- 21 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/08/31(月) 21:21:52.35 ID:DKSQiB1d0
- (´・ω・`)「!」
教室の外へ出ると、彼の行く手を阻む影があった。
(,,゚Д゚)「よぅ、ショボンくん。」
<ヽ`∀´>「ちょっと面貸すニダ。」
(;´・ω・`)「…。」
昨日徹底的に苛めたばかりだというのに…こりない奴らだ。
ξ゚听)ξ(一応は予定通りってわけね…間隔が早すぎる気もするけど。)
するとツンはポケットから小さな石を取り出した。
無骨な形をした真っ白な小石だ。
それを口元まで持っていくと、魔力をこめて話し始めた。
ξ゚听)ξ「聞こえる? 今日も来たみたいよ。
透過魔法で私も後をつけるから、後で連絡するわね」
( ^ω^)《わかったお!》
間髪入れず、小石からも声が帰って来た。
それは聞きなれた幼馴染の声…ブーン=ホライゾネルのものであった。
- 23 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/08/31(月) 21:26:43.31 ID:DKSQiB1d0
- 通信魔法の一種で、まだ魔術師レベルのツンにとっては高度なもの。
が、それを彼女は才能で補ったのだ。
ブーンには黒い小石を渡している。
それとツンの持つ白い小石がリンクすることにより通信が可能なのだ。
先に魔法をかけるので、魔法に不慣れな騎士の人間も簡単に通信することができるのである。
ツンは不良の二人がショボンを挟んで歩いていくのを見届ける。
そして校内を出たと同時に、一瞬物陰に隠れて自分に透過魔法をかける。
足音だけは消せないので、ゆっくりゆっくりと歩く。
ノーファル家は名家なのでその住所くらいは大抵の人が知っている。
なのに、歩いているのは本来の目的地とは全く違うところ。
商店街を離れ、少し裏道に入る。
時間的には人々が夕食の材料を求めて賑う時間だ。
にも関わらず、道を一本外れただけで人気のない町へと風変わりしてしまった。
ξ;゚听)ξ(姿を消しているとはいえ、流石にちょっと怖いわね…。)
しばらく歩くと行き止まりにたどり着いた。
ゴミ袋やポイ捨てされた生ゴミが散乱している。
できるならば、一秒でも早く逃げ出したい場所だ。
- 24 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/08/31(月) 21:30:52.21 ID:DKSQiB1d0
- (;´>ω<`)「っ!」
到着と同時に一人がショボンの肩を掴み、乱暴に投げる。
尻餅をついた先はゴミ袋の山だ。
肉体ダメージは弱いが、精神的には非常に効く。
(,,゚Д゚)「さて、昨日言ったよな? その分は持ってきたかよ?」
一人の生徒が腰を下ろしてショボンを睨む。
だがショボンは俯いて目を逸らすだけ。
その行動を見ただけで、彼らは理解した。
あぁ、こいつは約束を破ったんだな…と。
<ヽ`∀´>「ウェッハッハー!! 別に構わんニダ。
金がないなら、ないで仕方ないニダ。」
(;´・ω・`)「え…。」
(,,゚Д゚)「そうだな。ないもんをねだっても仕方ない。」
ξ゚听)ξ(あら…?)
これは、遂に負の連鎖が終わるのか…?
- 25 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/08/31(月) 21:34:09.03 ID:DKSQiB1d0
とショボンもツンも考えた
その刹那
(;´゚ω゚`)「カハッ!?」
腹に強烈な拳が叩き込まれた。
筋肉の鎧を持たぬ魔術師にとって、騎士の鉄拳は非常にダメージが大きい。
座ったままといえど、まるで鉄の棒で抉りこまれたような痛みが腹部を襲った。
(,,゚Д゚)「その分は、ストレス解消のサンドバックとして…なぁ!」
<ヽ`∀´>「ウェーッハッハ!!」
二人は立ち上がり、様々な攻撃を浴びせる。
蹴り、殴り、叩き、物を投げ、罵声を吐く。
ショボンは両手を頭の上で抱えてその攻撃にじっと耐えていた。
ξ;゚听)ξ(ちょっ…! まだなの?)
ツンはキョロキョロと後ろを見ていた。
場所は既に教えたはずだ。
- 27 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/08/31(月) 21:37:48.10 ID:DKSQiB1d0
- なのに到着が遅すぎる…。
どういうことなの?
「ちょおーーーーっと待ったあーーーー!!!」
ξ゚听)ξ(,,゚Д゚)<ヽ`∀´>(;´>ω・`)「!?」
大きな声が聞こえた。
声変わりをしたてのような微妙に高いけど、重みのある低い声。
それは空から響いていた。
(;゚Д゚)「な!?」
( ^ω^)「この世に邪悪が蔓延るならば! 散らせてみせよう悪の花!」
クルッとターンをしてからブーンは親指を背中越しに立てて叫んだ。
(* ^ω^)「ブーン様の登場だぁああああ!!!」
ξ;゚听)ξ(何してんのよあのバカ…。)
<;ヽ`∀´>「な…ブーン!?」
- 29 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/08/31(月) 21:41:34.70 ID:DKSQiB1d0
- ( ^ω^)「とぅあ!」
とブーンは飛んだ。
地面までの高さは数mもある。
言っていなかったが彼が立っていたのは路地裏を挟む形で建設された店の屋根。
そこからブーンは躊躇なく飛んで見せたのだ。
(; ゚ω゚)「ぶほぁ!?」
そして着地した。
ゴミ袋の山へと。
(; ^ω^)「あたた…。着地は失敗したかお…。」
(;´・ω・`)「ブーン…? なんでキミが!?」
後ずさりをする二人の間にブーンはゆらりと立つ。
背中越しにショボンが問いかけた。
( ^ω^)「…話は後だお。今はこの現状を打破するのが先だお。」
(;゚Д゚)「ち…。そいつの味方するってわけかよ…。クソが。」
<;ヽ`∀´>「生意気ニダ…。」
二人は虚勢を張るが、脳裏には去年の喧嘩事が浮かび上がっている。
怒った時のブーンは二人よりもきっと強い。
特に、成長期真っ盛りの彼らにとってはその成長率は半端ないものだ。
- 30 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/08/31(月) 21:45:27.67 ID:DKSQiB1d0
- ( ^ω^)「とっとと決めるお。やるのか、やらないのかお。」
(;゚Д゚)「く…。」
二人は変わらず後ずさる。
ブーンは構えもとらず、ただ憤怒の瞳で睨みつけているだけだ。
ただそれだけなのに…怖い。体が震える。
不良である彼らはとことん力に弱い生き物だった。
ξ゚听)ξ(やるわねブーン。これなら、とりあえずなんとか…)
「なにやってるアルか?」
ξ;゚听)ξ(!?)
動向を見守っていたツンが声が聞こえた先を振り返る。
( `ハ´)「ギコとニダーアルよね?」
(=゚ω゚)「楽しそうなことやってるよぅ♪」
ぞろぞろと雁首そろえて歩いてきたのは別の不良たち。
学校は違えど、意気投合して仲間とすることなどよくあること。
ちょうど、ツーと仲良くなったブーンとツンのように。
- 31 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/08/31(月) 21:48:56.49 ID:DKSQiB1d0
- (;゚Д゚)「お、おぅ! オメーラか!!」
<ヽ`∀´>「ちょうど良かったニダ! 加勢してくれニダ!」
(; ^ω^)(うぉう…。)
彼らが並んだ姿は圧巻だった。
人相の悪そうな奴らが路地裏の道を完全に塞いでいる。
その顔に込められているのは、ただ悪意のみ。
ξ;゚听)ξ(これは流石にブーンでも分が悪いわ!)
どうしよう。
今飛び出していった所で…たぶんこの数をすべて倒すのは無理だろう。
一度に6、7人をも相手しなければならないのだ。
天才とはいえど、まだ魔術師程度の彼女にとっては至難の業である。
ξ;゚听)ξ(かと言って放っておくことはできないし…
あ〜どうしよう!! モララーさんみたいに色々魔法が使えたら…)
ξ゚听)ξ(…ん?)
とツンはここで思い当たる。
ξ゚听)ξ(…モララーさん……)
ξ;゚听)ξ(そうか! これなら一時的でも逃げ出せる!!)
- 32 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/08/31(月) 21:54:14.90 ID:DKSQiB1d0
- (,,゚Д゚)「おらおら、さっきまでの威勢はどーしたよ?」
( `ハ´)「ビビッてないでさっさとかかってくるアル。」
ニヤニヤニタニタ
笑いながら彼らは距離を縮めてくる。
ブーンは腰のダガーナイフを抜こうとしたが…そこまではできない。
彼らにとっては威嚇にもならないだろう。
チラリと後ろを見る。
ショボンはうな垂れてただ下を向いているだけ。
なんでだ?
そんな情けない聖魔術師の息子を見てブーンは疑問に思う。
ツン曰く、彼は成績に関してはトップレベルだという。
ならば…間合いさえ取れれば騎士程度の人間には負けないはずだ。
彼らは力こそあれ、技術など心得ていないただの不良。
成績は良くない。
数が過多してなければ、ブーンのような正統な騎士であれば勝てるくらいなのだ。
なのに…なぜ?
- 33 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/08/31(月) 21:58:07.06 ID:DKSQiB1d0
- ξ><)ξ「あんた達ーーーー!!」
またもや大きな声がする。
今度はちゃんと水平方向からだ。
誰もがその発声に条件反射で振り向く。
すると
ξ゚听)ξ「エナジーライト!」
ツンの両手が瞬間、まばゆく発光した。
(;>Д<)「うおっ!?」
<;ヽ>∀<>「まぶしっ!!」
(; >ω<)「目がぁあああ!!」
そちらを見た全員が一斉にうずくまる。
両手は一様に目を押さえていた。
その隙をみてツンは不良どもの間を駆け抜ける。
- 36 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/08/31(月) 22:01:46.03 ID:DKSQiB1d0
- ξ゚听)ξ「ブーン! いくわよ!」
(; >ω<)「へ? ツン? ど、どこだお?」
ツンはブーンの影に隠れているショボンを見て言う。
ξ゚听)ξ「あんたもよ。」
(´・ω・`)「…。」
彼は目潰しにあわなかった。
ツンが魔法を唱えた時、咄嗟に目を押さえたからだ。
だから発光は遮られており、まったく効果がなかったとうわけだ。
ξ゚听)ξ「ラグなんてほとんどなかったのに…やっぱ、聖魔術師の血を引いてるだけはあるのね。」
(´・ω・`)「…どこへ行くっていうんだい?」
ξ゚听)ξ「ついてくればわかるわよ!」
言いつつ、ツンはブーンの胸倉を掴んだ。
- 37 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/08/31(月) 22:05:20.86 ID:DKSQiB1d0
- いや、正確にはその胸に下がっている瑠璃のペンダントを、だ。
そして一気に魔力をこめる。
もう片手はショボンの肩を握っていた。
すると、足元に蒼色の魔法陣が発生した。
瞬時に魔方陣は彼らを光の球へと変化させると
空高く舞い上がり、町から何10kmも離れた山奥へと飛んでいったのだった…。
つづく
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