- 4 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2010/01/23(土) 23:58:21.47 ID:QLkp/jVE0
- 一振り
二振り
三振り
なんだ、あっけねぇ。
仰々しい動きにくそうな鉄鎧を纏った連中は、瞬く間に崩れ落ちていった。
俺の手に握られた妖刀は血を吸い、鈍く赤く光を放っている。
誰に教わるのでもなく編み出した我流の技を一つ放っただけ。
敵大陸の野郎共とまた別の進化を遂げた武器の切れ味と、とある特殊効果のせいかもしれないがな。
同じように、肉体を守るために装着した鎧も真っ赤に染まってた。
そんな自分の姿を客観的に見ると、まるで悪鬼のようだ。
俺が悪いんじゃねぇ。
俺の命を奪おうとした、こいつらが弱いのがいけねぇんだ。
- 6 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2010/01/24(日) 00:01:19.05 ID:v4qevJeB0
- ペッと口に入ってきた返り血を吐き、刀を握りこむ。
目の前に居るのは、俺の獲物たち。
(#'A`)「死にてぇ奴はかかってきなぁあああッ!!!」
大声を上げて俺はその軍団の中へ突貫していく
同時に聞こえた、『終戦』の号令と共に……。
第四話「終わらなかった戦い」
- 7 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2010/01/24(日) 00:04:17.79 ID:v4qevJeB0
- (;'A`)「!」
まるで創作物の登場人物のように、俺は布団から跳ね起きた。
額に、頬に、身体にこびり付いているのは汗腺から溢れ出た俺の記憶。
(;'A`)「…チッ!」
乱暴に布団を投げ飛ばし、俺は立ち上がる。
ほんのりと湿っている畳を素足で歩き、朝日が漏れる障子を開け廊下に出ると涼やかな風が全身を打った。
('A`)「……今日も…平和か……」
ボリボリと胸元を、甚平の袖内からかきながら呟く。
背には桜の花を象った紋章が真っ赤な糸で編まれていた。
――――平和。
いい響きだと、人は言う。
11年前、長年に渡るVIP大陸との戦争が終わり敗戦大陸となった我がラウンジは、今日も忙しなく活動していた。
蒸気が家々から舞い、牛馬が所々を歩いている。夏の名物である、スイカ売りも数多く見かけるな。
敗戦以降、男性の象徴でもあったちょん髷はめっきり数が減りみな『ざんぎり頭』と呼ばれる短髪を嗜んでいた。
そんな見晴らしの良い所に住んでいる俺は誰かって?
- 8 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2010/01/24(日) 00:08:56.40 ID:v4qevJeB0
- まず場所の説明だ。
ココは、俺の城。
名はつけるのが面倒だから、貰った時からつけていない。
が、人は『毒々城』と呼んでいるらしい。
俺の名前が 毒田(ぶすだ) ドクオ という名前だからだろう。
別になんと呼ばれようと構わない。ココが俺の根城でさえあれば、それでいい。
先に言っておくが、今言ったようにここは貰った城だ。
大陸内で一番の剣豪を決める由緒正しき大会に出たときにもらった戦利品。
だから、生まれはそこらへんのガキと一緒。田舎もんさ。
ただ、今の身分は一国の主と…最強の人殺しの証を背負ったただの狂人だ。
この背中に編まれた真っ赤な桜の紋々は、どれだけ血を浴びようと戦い続ける者という意味が込められているらしい。
戦闘狂と人は言うが、俺はその響きは嫌いじゃない。
……さて、自己紹介が済んだところで話を戻そう。
- 11 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2010/01/24(日) 00:12:23.98 ID:v4qevJeB0
- 俺は、平和という響きが大嫌いだ。
何故かって?
そんなもの当然だ。
平和であれば、俺の活躍の場面がないからだ。
つまり、俺の生きてる意味がないというわけ。
そんなことが許されるのか?
何のために腕を磨いたと思ってる。
何のために下げたくない頭を下げて兵士に志願したと思っている。
すべては、戦いを楽しむためだろうが…!!
- 12 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2010/01/24(日) 00:16:03.57 ID:v4qevJeB0
- その楽しみを奪われてもう11年。
国内では最強の剣豪になってしまった以上、ラウンジ大陸で俺を楽しませてくれる奴なんかいない。
/ ゚、。 /「失礼します」
('A`)━・~「なんだ」
俺が朝一番の日課となっているキセルに火をつけてふかしていると、家臣が静かにやってきた。
肩膝をついた状態で、俯き加減に頭を垂れて話そうとする家臣の言葉を俺は待つ。
/ ゚、。 /「…遂に、完成いたしました。本日中に、こちらへ運ばれてくるようでございます」
('∀`)━・~「…そうか。わかった、下がっていいぞ」
/ ゚、。 /「はっ!」
- 13 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2010/01/24(日) 00:19:20.92 ID:v4qevJeB0
- キレのいい返事と共に、スッと立ち上がり再び失礼しますといった家臣は数歩後ずさりした後に向きをかえて廊下を出て行った。
俺はにやける頬を隠そうとせず、口に溜まった煙を外へ吐き出した。
('∀`)━・~「フフフ…待ってろよ……モララー=レンデセイバー…!!!」
( ^ω^)「…? モララーさん、これ何ですかお?」
( ・∀・)「ん? あぁ、それは…」
(゚、゚トソン「それは、お団子っていう食べ物ですよ。ラウンジ大陸に昔から伝わるお茶菓子です」
夏の昼下がり。
まだ長期休暇中のブーン達はモララーの自宅に遊びに来ていた。
- 15 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2010/01/24(日) 00:23:44.59 ID:v4qevJeB0
- 今日はいつも忙しいツーも一緒。
すると、総勢6人という大世帯。元々、一人で住む用に設計していたモララーの家では少し人数オーバーだ。
机に設置した椅子は四つ、暖炉前のロッキングチェアを合わせても5つ。
これでは足りないとモララーは急遽、椅子を一つ作成し用意していたので問題はない。
そして目の前にあるのは、トソンお手製の団子の山。
串一つにつき、三つ丸い弾力のある物体が突き刺されている。
加えてそれぞれの前には、見慣れない緑色をした液体がコップから湯気を放っていた。
(´・ω・`)「聞いたことがありますね…米や雑穀を粉状にして丸めた物…でしたっけ?」
(゚、゚トソン「えぇ、そうです。専用の工具がなかったので、ちょっと手荒な方法でやりましたけどね」
(*゚∀゚)「へー。そんな食べ物があるんだなー、あっちには」
ξ;゚听)ξ「…とはいえ、いくらトソンさんが作ってくれた物でもラウンジ大陸の食べ物ってのは…」
( ・∀・)「ちょっと抵抗があるかい?」
( ^ω^)「そうかお? ぼくはおいしいならそれで良いと思うお!」
ξ゚听)ξ「あんたは単純だから良いわね。でも見てよ、こんな緑色の物を躊躇なく食べられる?」
(゚、゚トソン「それはヤモギ団子ですよ。近くに生えていたから、作ってみました」
ξ;゚听)ξ「ヤモギ!? 雑草じゃないですか!? そんなもの食べるんですか!?」
- 16 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2010/01/24(日) 00:27:23.61 ID:v4qevJeB0
- ツンが驚いている理由は、言葉で言ったそのとおり。
ヤモギとは、いたるところで自生している緑色の葉っぱをした草だ。
ラウンジ大陸は古くからこの草を揚げたり、団子に練りこんだりして愛食してきた。
…が、そちらの文化なんぞこれっぽちも興味のないVIP大陸からしてみれば、魔法栽培された作物よりも気持ちが悪いものだろう。
何処ででも見かけるし、躊躇わず踏み潰せるような何の変哲もない草だから…。
( ・∀・)「まぁ、抵抗があるのは君たちからしたら当然かもしれないけどね」
( -∀-)「ただ、世の中は本当に広いんだ。
閉鎖的な考え方は生産性を生まない。
伝統にいつまでもすがり付いていると現状はいつまで経っても変わらないんだよ」
(; ^ω^)「……?」
モララーの言葉を上手く理解できなかったブーンが周りをキョロキョロする。
ツーは同じように首をかしげて疑問符を浮かべているし、ツンは団子とにらめっこ。
ショボンは情けないなぁ、とでも言うように鼻でため息をついてからくわっと口をあけた。
(´・ω・`)「男は度胸なんでも試してみるもんさ、ってことだよ」
( ^ω^)「! なるほど」
そしてパクッと先端の団子を一つ、ほお張った。
ブーンも同じようにハムッと口に入れた。
- 18 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2010/01/24(日) 00:31:00.01 ID:v4qevJeB0
- (;´・ω・`)「ん…思ってたよりモチモチして食べづらいな…」
( ^ω^)「でも粘り気はないお。すぐに歯で切れるお」
ξ;゚听)ξ「…で、どうなのよ…味は」
(´・ω・`)「うん、普通においしいよ」
( ^ω^)「そうだおね。しつこすぎない甘さがまた良いお」
(*゚∀゚)「お、ホントだ。うめぇ!」
ツンを除く三人はおいしそうに団子を食べ始めた。
飲み込めるサイズまで噛むのが辛いのか、いつまでも口に入れたまんま咀嚼をしていたが、それが更に食欲をそそる姿に見えてくる。
(゚、゚トソン「文化が違うからお口には合わないかもしれないけど…残してもいいから一度食べてみてくださいな」
トソンは笑顔で促す。
モララーもツンをじっと見ている。
そこまで言われたら食べないわけにはいかない。
ξ;--)ξ「…」
意を決し、おずおずと口を開けてその丸い物体を含んでみる。
見た目では苦そうなイメージだったが、感想にあったように甘めだ。
そして噛むとヤモギが入ってるとは思えないような甘味が更に口を満たす。
- 21 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2010/01/24(日) 00:35:02.58 ID:v4qevJeB0
- ξ゚〜゚)ξ モグモグ
(゚、゚トソン「どうですか?」
( ・∀・)「おいしいでしょ?」
ξ* 〜 )ξ …コクン
今まで否定ばっかりしてたので、肯定するのが恥ずかしいのかツンは一度首を振っただけだった。
でも、行動は素直なもの。
次々に串に刺された団子を平らげていっていた。
( ^ω^)「ところで、トソンさん」
(゚、゚トソン「はい?」
( ^ω^)「この緑色の飲み物はなんですかお? 紅茶じゃないみたいですけど…」
ブーンはコップに満たされている液体を指差した。
夏でもほんのり湯気が立っているのは、熱い飲み物だろう。
だが、匂いを嗅いでも今までにない香りが嗅覚を刺激するだけ。
一体これはなんなのだろう。
(゚、゚トソン「それは緑茶という飲み物です。ちょっと苦いかもしれませんが、おやつの後には最適ですよ」
- 22 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2010/01/24(日) 00:38:46.55 ID:v4qevJeB0
- ( ^ω^)「りょくちゃ…。なんか仰々しい感じのする飲み物ですおね」
(´・ω・`)「イメージ的には、ラウンジ大陸のコーヒーと捉えれば良いんですか?」
(゚、゚トソン「そうですね。その考え方で相違はないかと」
ξ゚听)ξ「熱いところや苦いって所は一緒みたいね」
(*゚∀゚)「それじゃ、飲むか!」
( ・∀・)「ラウンジ大陸では、それを啜って音を立てて飲むみたいだよ。
熱いからそうした方が良いみたいだね」
ξ;゚听)ξ「音をわざわざ…? 獣じゃないんだから、そんなことしては…」
(゚、゚トソン「そうかもしれませんが、ラウンジ大陸ではその『啜る音』というのが風流なんですよ」
( ・∀・)「郷に入りては郷に従え。言われた通り、やってみようか」
じゃあ、とみんながコップを持ちズズーッと啜る。
(; ^ω^)「苦ッ!」
(;゚∀゚)「熱い!」
(´・ω・`)「や…でも、甘い物のあとにはよく合うよコレ」
ξ゚听)ξ「そうね。歯が浮きそうな口の中が中和されていくわ」
これまた好評だったみたいで、音を立てながらどんどん子供たちは緑茶を飲み干していった。
- 23 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2010/01/24(日) 00:42:30.84 ID:v4qevJeB0
- (゚、゚トソン「しかし、良くお茶っ葉なんて育ててましたね
VIP大陸にはあまり見かけないと思っていましたが…」
( ・∀・)「うん、一度口にしたことがあってさ。おいしいもんだから、作ってみようって考えてたんだ。
流石に、正しい製造方法まではわからなかったんだけど…トソンさんが居てよかったよ」
(^、^トソン「それはよかったです」
(´・ω・`)「……熱いね」
ξ゚听)ξ「熱いわね」
( ^ω^)「アツいおねー」
(*゚∀゚)「…あ! いやー、おアツいこと!」
(; ・∀・)「キミ達、絶対それお茶の感想じゃないよね?」
(゚、゚トソン「ふふふ…」
賑やかな笑いで満たされる小さな小さな山小屋。
そこにあるのは忌み嫌う他文化のお茶菓子。
だが、間違いなくそこには壁を越えた平和な世界があった。
- 24 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2010/01/24(日) 00:46:43.56 ID:v4qevJeB0
- ――――――
……チッ。
簡単に探せるかと思ったが、そう甘くはねぇみてぇだな。
てっきり、近衛魔術師にでもなってるかと思ったが…
なんだよ、隠居してるって。
もしも、俺の期待を裏切るようなことがあったらただじゃすまねぇぜ。
とりあえず、粗方大きな街には行ったが情報は聞けなかった。
……と、なると…
山の中か森の中だろうな。流石に海の中はないだろう。
よし、まずはVIP街の近くの山の中を捜索してみるか…
- 25 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2010/01/24(日) 00:50:18.50 ID:v4qevJeB0
- ( ・∀・)「調子はどう?」
(-、-*トソン「…えぇ、まぁボチボチと言ったところです…」
モララーは冷水を汲んだ桶をトソンの枕元に置いた。
そして、そこに半分だけ浮いている布切れを出来る限り絞り、高温になっているトソンの額へそっと乗せた。
( ・∀・)「山の気候変動は激しいからね、まだ一年しか過ごしてないトソンさんにはまだちょっと辛かったかな?」
(゚、゚*トソン「…かもしれませんね」
モララーは、しゃがれた声を発するトソンの布団をもう一度綺麗にかけなおしてあげた。
夏も終わりかけ、という時期。
街中はまだ半袖で構わないぐらいだが、山の上ではもうそんな格好では風邪を引くくらい肌寒い。
その事をモララーは知っているし、対策もしていたのだが…やはり免疫というものは即座に出来るものではないらしい。
モララー自身はピンピンしているのだが、トソンは完全にダウンしてしまった。
( ・∀・)「今日は町に降りる日なんだ。半日もしたら帰ってこれるんだけど…大丈夫かい?」
(゚、゚*トソン「えぇ…私も子供じゃありませんからね…ゆっくり寝ていれば大丈夫かと…」
( ・∀・)「…わかった。軽食と、飲み物は枕元においておくからね」
(-、-*トソン「はい…ありがとうございます」
トソンは小さく咳をしてから、目を閉じて体力の回復をはかった。
モララーはしばらくその寝顔を拝見し、顔中から吹き出る汗を拭いたりして待っていた。
- 27 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2010/01/24(日) 00:54:20.90 ID:v4qevJeB0
- …ふと、魔法発生の波動を感じる。
今から行くのだから、下で待っててくれればいいのに…
と思うが、もしもその合図がなかったら自分はずっとココで看病していたかもしれない、と思い自嘲してから外へと出た。
( ´∀`)「じゃ、いつもの分置いておくね」
(*゚∀゚)「おう!」
魔法をかけてしゃがれた顔と声になったモララーがツーの八百屋へ荷物を運ぶ。
一緒に来ていたブーンとツン、それにショボンまでも手伝ってくれた。
( ^ω^)「こういうの嫌いかと思ってたお」
(´・ω・`)「別に嫌いじゃないよ。やれと言われたら勿論やるさ」
と現代っ子らしい返事をしつつショボンとブーンは力を合わせて大きな荷物を運んでいた。
( ´∀`)「よし、これで最後だね」
ドスッと木箱を重ね、今日持ってきた分は運搬完了だ。
薄らかいた汗を手の甲で拭いつつ、モララーは微量ながらもありがたいお金を貰う。
(*゚∀゚)「あ、そうそう。ついでにコレも持ってけよ」
ツーが差し出したのは、小さな絹の袋。
口が縛ってあるので、中は何だかわからないが持った感触は…
- 28 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2010/01/24(日) 00:58:32.46 ID:v4qevJeB0
- ( ´∀`)「これは…薬かい?」
(*゚∀゚)「うん。トソンねーちゃんが風邪ひいたんだろ?
うちのとーちゃんも使ってるやつだから、問題はないはずだぜ!」
( ´∀`)「そっか…ありがとうね」
( ^ω^)「あ、そうだお。ぼくたちもトソンさんのお見舞いの品でも買うかお?」
(´・ω・`)「うーん、そうだね。この前はおいしい団子をごちそうになったし…いい提案だね」
ξ゚听)ξ「じゃ、病人でも食べられそうなものでも探しに行きましょうか」
と勝手に軽くなった馬車に乗り、子供たちは行ってしまった。
一応は帰りの手段なので、それがないと困る。
モララーはツーに再びお礼を言ってから彼らの背中を追っていった。
―――――
やはり山は冷えるな。
陣羽織を持ってきておいてよかった。
焼け石も懐に入れているから、そこまで寒さは感じない。
- 30 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2010/01/24(日) 01:01:45.28 ID:v4qevJeB0
- ただ、いい加減荷物を持って歩くのも飽きてきたな。
長時間着用するもんでもないから、やはり戦闘以外では身に着けないのが普通だが…
大岩を一日引き続けても次の日同じように行動できた男の俺が、そんなことに拘る必要もないか。
少し立ち止まり、家臣の一人に着付けを任せる。
まだまだ歩く予感がしたのか、時期尚早では? と問い返してきたが…構わずやらせる。
…陣羽織と何が違うかねぇ。こんな物が重いだなんて、他の奴らは鍛え方が足りないんじゃねえか?
流石に頭部は歩きづらくなるから、手持ちだが……全然問題はない。
愛刀は腰に差して、足袋の紐をキュッと締めて再び歩き出す。
こんな山奥に人が住んでるかはわからない…だが、あらゆる可能性を模索すべきだ。
ラウンジの人間が街中で大暴れするよりもこういう人里離れた所の方が大事にはなりにくいだろう。
それに……まるでなくなった半身を求めるが如く。
俺の身体は、なぜか迷い無く足を進める。
直感がそう言っているのだ。決して今歩いている道は間違ってなんかいないとな。
歩き始めること、数刻。
俺は遂に――――
- 31 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2010/01/24(日) 01:04:35.63 ID:v4qevJeB0
- 蒼い光がとある森の中で瞬いた。
次に出てきたのは、馬車と人間。
(; -∀・)「まったく…こんなに買い込んで…」
( ^ω^)「まぁ良いじゃないですかお。トソンさんも喜んでくれますお!」
荷車を運ぶ馬に乗りながらブーンはカラカラ笑う。
ショボンは足を荷車の端にかけ、取り付けた取っ手でバランスを取り運ばれている。
ツンは微妙に空いた荷台の中の隙間に腰をかけていた。
モララーはその子供たちの遊具みたいになってしまった荷車を運ぶ馬の手綱を握りリードするように歩いている。
(´・ω・`)「トソンさんだけじゃきっと食べきれないと思うので、モララーさんも召し上がってくださいね」
ξ゚听)ξ「偶には魔法食も悪くはないと思いますよ?」
(; ・∀・)「まぁ…たまにならね。
僕も常に健康ってわけではないし、体調悪いときは時々魔法食に頼ってるけど…。
それにしたって買いすぎじゃないかな?」
どれくらい買ったのかというと
山を降りる前と降りた後で、体積が同じくらい
といえばいいだろう。
天然食と違って、日持ちがするから良いものの…いつ食べきれるのだろう。
- 32 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2010/01/24(日) 01:08:40.47 ID:v4qevJeB0
- ちなみに料金は子供(というか、その親)持ち。
貴族の息子たちということで、かなり割引が利いていたので調子に乗ってしまったみたいだ。
( ・∀・)「けど、きっとトソンさんも喜んでくれるよ。
これだけみんなが心配してくれてるんだものね」
( ^ω^)「おっおっおっwwww」
( ・∀・)「――ッ!?」
( ^ω^)「………お?」
ξ゚听)ξ「あら?」
(´・ω・`)「ん?」
唐突にモララーが歩みを止めた。
当然、馬車も動きを止める。
何もないその山道。
もうモララーの自宅が見えるほど近くに来たその地点で、モララーは急に足を止めたのだ。
- 34 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2010/01/24(日) 01:12:04.75 ID:v4qevJeB0
- ( ^ω^)「? モララーさん、どうしたんですかお?」
ξ゚听)ξ「モララーさん?」
(´・ω・`)「何かありましたか?」
(; ・∀・)(……なんだ、この尋常じゃない殺気…。
未熟とはいえ、戦士である彼らが気づかないということは…僕にだけ向けられているものか…?)
モララーは冷や汗を垂らしながら、ひたすらに回りに気配をうかがう。
その様子にブーンたちが心配になり、なんども呼びかけるがそれすらも耳に届かない。
すると……
小屋の少し手前
モララー達の行く手を阻むが如く、現れた者が居た。
('A`)「モララー=レンデセイバーだな…?」
その真っ赤な鎧を纏った人物は、問うと同時に腰に差した刀を抜いた。
- 36 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2010/01/24(日) 01:15:30.77 ID:v4qevJeB0
- ( ・∀・)「……だとしたら?」
('A`)「…ずっと待っていたんだ……この時を」
そして両手で握りこみ、スッと上段の構えを取り
(#'A`)「俺は毒田ドクオッッ!!! モララーレンデセイバー!!!! その首貰い受ける!!!!」
名を名乗ると同時に、その刀を思いっきり振り下ろした。
すると、まるでその叫び声に応じるが如く
刀から、強烈な突風が舞い起こりモララー達を襲った!
(; -∀・)「くっ…!?」
(; ^ω^)「ふぉわああああ!?」
ξ;><)ξ「キャァアアア!!??」
(;´>ω・`)「…な、何っ!?」
みんなが混乱し、ただその突風に抗っている中で
(; -∀・)(!!!…これは……!!)
一人この攻撃の意図に気づいたモララーだったが…
- 38 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2010/01/24(日) 01:18:16.89 ID:v4qevJeB0
- (; ・Д<)「ガッ!?」
一瞬、反応が遅れた。
やるべきことを頭の中で考えて、行動に移そうとしたその時
数えるほどの人物しか見たことがないであろう
モララーの鮮血が舞った…!
つづく
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