( ・∀・)モララーは隠居暮らしのようです。 双

2 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2010/02/03(水) 20:45:30.39 ID:ysHGWMs50
第五話「届いた刃」










(; ・Д<)「ガッ!?」

モララーの身体が突然、後ろへと吹き飛んだ。
何か、物理的な衝撃が加わったような鈍い音がし…共に真っ赤な液体が宙に浮かぶ。

衝撃の強さに抗えず、そして身体に刻まれた傷の痛みに耐えられず、モララーはゴロゴロと転がっていく。

('A`)「……フン、これが世界最強の魔術師だって…? 笑わせるなよ」

ドクオはモララーの生死を確かめるため、刀の構えを解く。
同時に、強風が止み子供たちが解放された。

(; ^ω^)(;´・ω・`)ξ;゚听)ξ「「「モララーさん!!」」」

弾かれたかのように三人は飛んでいったモララーの所へ走り出す。
目の前には敵が居るというのに、完全に背を見せる形で、だ。

だが、ドクオはあえて攻撃はしない。
敵意を持ってるわけでも、こちらが殺意を持ってるわけでもないのだ。攻撃する理由が無い。

4 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2010/02/03(水) 20:49:40.39 ID:ysHGWMs50
(; >∀・)「ぐ…ぅ…!」

意識はしっかりしている。
だが、胸が焼け付いたかのように痛い。

とっさに押さえた右の腕は、シャツごと真っ赤に染まっていた。
この血は洗っても落ちないな…と、悠長なことを考えてしまうほどモララーも動揺していた。

ξ;゚听)ξ「モララーさん! 大丈夫ですか!?」

(; -∀・)「あぁ…なんとか…」

呼びかけに反応し、立ち上がってみる。
身体を起こしたことにより、如何にして傷がついたのかを確認できた。

蒼い色のシャツに対角線を描くかのよう、傷がついている。
鈍器のようなものではなく、凄まじい切れ味で引き裂かれたみたいだ。
証拠に服の切り口の繊維がほとんど傷ついていない。

('A`)「立てるみてぇだな。良かったぜ、一発でお陀仏なんてクソみてぇな展開は願い下げだからよ」

(; ・∀・)「……キミは誰だ…? 何故、こんな所でそんなものを着て…」

('A`)「……ふん。バカじゃあねぇみてえだな。ならわかってるはずだろ?
   この装備の意味も、ここにいる理由もな!」

(; ・∀・)「……戦う気か」

6 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2010/02/03(水) 20:54:03.07 ID:ysHGWMs50
('A`)「それ以外に理由が?」

(; ^ω^)「あ、あのモララーさん…?」

ドクオはモララーの言葉を聞くことができた。

至極当然のことのように思えるだろうが…実は違う。

彼らは大陸を同じとしていない。言語は違うわけだ。

通常なら、間違いなく会話など成立しないが…二人の間では成立している。

つまり、モララーは既にその容姿を見ただけでラウンジ大陸の者と判断し既に翻訳の魔法をかけていたのだ。
だからそのことに気づいたドクオは、モララーを『バカではない』と評価した。

ちなみにトソンにかけたものとは違い
当人同士にしか干渉しない魔法なので、周りにいる子供達からしたら異世界の言葉で会話を交わしているように見える。


(; ・∀・)「……わざわざお見舞いに来てくれたのは嬉しいよ。ありがとうね。
      でも、ごめん…今日はこのまま真っ直ぐ家に帰りなさい」

と子供たちに言い残すとモララーはゆっくりと一歩前に出た。

(;´・ω・`)「ど、どういうことなんですか?」

ξ;゚听)ξ「そ、そんな怪我したまんま何をするつもりです!?」

(; ^ω^)「モララーさん!!」

8 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2010/02/03(水) 20:58:51.05 ID:ysHGWMs50
(; -∀-)「……」

巻き込むわけにはいかない。
目の前に立っている人間は間違いなく腕が立つ。

もしも、戦うしかなかった場合…彼らを巻き込まない保証は…出来ない。

言っても聞かないのならば強行手段だ。
モララーはクルッと振り返り、三人の足元へ指を向けた。

( ^ω^)「!」

そして発動される蒼い魔方陣。
三人がその魔法に気づいて何かを叫ぼうとしたその時には
既に彼らは光球となって、山の下へと飛んでいっていた。

('A`)「……話は済んだか?」

(; ・∀・)「あぁ…。隙だらけだったというのに、攻撃を仕掛けてこないんだな」

('A`)「当たり前だ。俺はお前と戦いを楽しむためにはるばる来たんだ。
    後ろから1発で仕留めるくらいは余裕だが、そんなことをするために俺は腕を磨いたわけじゃないんだぜ」

ドクオはゆるく、軽く、型のない型でただずんでいる。
が、隙だらけなわけではない。あらゆる方向からの攻撃に対処できるように気配だけは全方向へ向けられていた。

9 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2010/02/03(水) 21:03:18.10 ID:ysHGWMs50
(; ・∀・)「……どうしてここがわかった?」

('A`)「勘だよ。別に今日、ここに来たわけじゃないんだぜ?
    最初は街を回ったんだが、どうにも情報が見つからない。
    ならば、と次は未開拓地の捜索に当たっただけ。ま、最初に手をつけた所に居たってのはホントにラッキーだがな」

('A`)「きっと、仏様もこれを望んでたんだろうよ。惹かれあう磁石が如く、俺たちは対の存在だからな。
   お前は世界最強の魔術師、で俺は世界最強の武士。ぶつかり合うのはやはり自然の摂理なんだろう」

(; ・∀・)「…」

モララーは考えていた。
この人物が言っているのは嘘ではないだろう。
不意打ちだったとはいえ、自分に一撃入れられる人間などそうは居ない。

そして、あの尋常ではない殺気。ただ放つのではなく、個人のみに向けられる者が果たしてVIP大陸にもいるかどうか…

……そういえば、名を名乗っていたな。

毒田ドクオ…だっけか?


あれ……そういえば聞いたことがある名前じゃないか?


薄れ掛けた記憶を思い起こしてみる。
辛い経験ばかりだった、あの11年前の大戦…その最中。

聖騎士のロマネスクさんが酷い怪我をして帰って来たことがあったな。
全盛期ともいえる頃にも関わらず、あそこまで痛手を負わせられる敵がラウンジに居ると知って少し恐怖した記憶がある。

11 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2010/02/03(水) 21:08:18.35 ID:ysHGWMs50
ロマネスクの看病中…うわごとのようにポツリと呟いた名があった。

それが毒田ドクオ…だった。

(; ・∀・)「そうか、君が『悪鬼』の通り名を持つ毒田ドクオか……」

('A`)「なんだ、知ってるんじゃねえか。なら話は早い。
    どうするつもりだ? 戦うのか? 戦わねぇのか?」

( ・∀・)「……」

目は本物だ。はったりではなく、本気でやりあうつもりだろう。
断ったところで、帰ってくれるはずもない。

……ならば…。

モララーは胸に当てていた手に魔力をこめた。
赤い色の魔方陣。回復魔法だ。
瞬く間に胸を横断していた傷は塞がり、残ったのは血のついた衣服だけ。

('A`)「ははは、お前ならそういう選択を取ってくれると…」

('A`)「!」

気づいた時には遅かった。
モララーの左手が発光したかと思うと、稲光と共に雷の刃がドクオへと一直線に飛んできていたのだ。

13 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2010/02/03(水) 21:13:33.88 ID:ysHGWMs50


…が、ドクオはひるまない。
むしろ、一歩前に踏み込みニヤリと笑っていた。

('A`)「思ってたぜ!」

(; ・∀・)「な!?」

砂に吸い込まれていく水が如く

モララーが放った稲妻の魔法は、ドクオの手に触れると同時に…消えた!

('A`)「今のが開始の合図だろ? ならばこっちも遠慮なくいかせてもらうぜ!!」

足元に転がっていた兜を踏みこむようにして宙へと押し上げる。
放物線を描く兜の角がちょうど上を向いたと同時にドクオはそこへ頭を入れた。

(; ・∀・)「…!」

そしてドクオは地面をも抉りこませるほど力強く大地を蹴り飛ばし、モララーへと突進していった。


―――――。

(; ^ω^)「まだかお!?」

(;´・ω・`)「もう30分もあれば行けるから、黙ってて! 舌を噛み切るよ!」

ξ;゚听)ξ「あんたが重たいのが悪いんだからね!!」

15 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2010/02/03(水) 21:18:33.90 ID:ysHGWMs50
一方、強制的に下山させられた三人は再び山を登っていた。
徒歩では日が落ちる前にはたどり着けないだろうと判断し、二人の魔術師の風魔法を使って、だ。
しかし所詮は魔術師レベルの魔法。更に魔法の使えぬブーンを片腕ずつ抱えて運ぶとなると、スピードは落ちる。

( ^ω^)「……何言ってるかはわからなかったけど、きっとあの人モララーさんと戦うつもりなんだおね?」

(´・ω・`)「だろうね。でも、攻撃したうえに凄い殺意だったよ。
      モララーさんにしか向けられてなかったからわかり辛かったけど」

ξ゚听)ξ「……」

( ^ω^)「? どうしたんだお、ツン。心配なのかお?」

二人の会話に入ってこようとしないツンに違和感を覚えブーンが語りかける。
それでも、少しラグがありブーンがもう一度呼びかけると自意識を取り戻したようだった。

ξ゚听)ξ「……ううん。心配なわけないでしょ。大魔術師よ? モララーさんは。
      そう簡単に負けるわけないし、負ける姿なんて想像できないわ」

(´・ω・`)「それは同感だね。
      不意打ちだったからちょっと動揺してたみたいだけど…本気でやりあえば負けるはずがないよ。
      あの傷も回復魔法で十分治るだろうし」

( ^ω^)「じゃあ、どうしたんだおツンは?」

ξ゚听)ξ「……」

17 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2010/02/03(水) 21:23:40.90 ID:ysHGWMs50
少しだけツンは考える。
移動により身体へ受ける風の音と震動でブーン達は気づいてないみたいだが…実はツンはぶるぶると震えていた。
寒いわけじゃない。怖いわけじゃない。

むしろ……

ξ 凵@)ξ「……ね、ねぇ」

( ^ω^)「? 何だお?」

ξ;゚听)ξ「すごく…不謹慎なこと言ってもいい?」

(´・ω・`)「なんだい? やっぱり負けるかも、って?」

ξ;゚听)ξ「ち、違うわよ! そんなんじゃない!!」

大声で否定してから、ツンは溜めるように間を置き…言った。

ξ゚听)ξ「私のお母さんよりも…ショボンくんのお父さんよりも…教科書に載ってるような近衛魔術師の人よりも…」

ξ゚听)ξ「モララーさんって、もっともっと強い魔術師なのよね?」

( ^ω^)「そりゃ、唯一無二の称号『大魔術師』を冠する人なんだもの。当然だお」

ξ゚听)ξ「そ、そうよね…」

(´・ω・`)「…何が言いたいの?」

ξ;゚听)ξ「うん…その…つまりね…さっきも言ったように凄く不謹慎なんだけどね…」

20 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2010/02/03(水) 21:27:47.38 ID:ysHGWMs50



ξ; )ξ「私、モララーさんが本気で戦ってる姿を見れるかもって思うと…凄くワクワクするんだ…」

一瞬の沈黙。
やはり不謹慎すぎたか、とツンは思いおこし口を開けてフォローしようとしたが

(´・ω・`)「なんだ、キミもだったのか」

( ^ω^)「ぶっちゃけると、ぼくもwktkが止まらないお」

ξ;゚听)ξ「え…ホントに…?」

(´・ω・`)「あぁ。普段、魔法を使うことを抑えてるからあまり実感わかなかったけど…。
      考えてみれば、あの終わるはずがないと思われた大戦を一年足らずで終わらせた人の本気が、今ここで見れるんだよ?
      魔術師として、震えないわけがないじゃないか」

( ^ω^)「歴史に名を刻んだ英雄の戦う姿だお。誰だって、きっと震えるお」

ξ;゚听)ξ「そ、そう…よね…」

(´・ω・`)「ただ、多分あまり近づきすぎると危ないだろう。
      ある程度近づいたら、遠視魔法で見ることにしようか」

ξ゚听)ξ「そうね。私、最近投影魔法覚えたから一緒に使えばすぐそこでやってるように見えるはずよ」

( ^ω^)「そうと決まったら、進むのみだお! ゴーゴー!!」

両足をブラブラさせ、掴まれている手をパタパタ振り回しブーンは二人にエールを送った。

21 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2010/02/03(水) 21:31:38.12 ID:ysHGWMs50
( ・∀・)「はっ!」

(#'A`)「おらぁあああ!!」

モララーが放ったスイカほどもある火球にドクオは物ともせず突っ込んでいく。
両手で刀を持っているので、さきほど魔法をかき消した左手は使えないはず。

だから、今度は身体ごとぶつかりに行った。

するとどうだ。
結果はさきほどと同じ。まるで霧散するかのようにして、火球は消え去ってしまった。

一足飛びで間合いをつめたドクオは、モララーへと袈裟斬りを放つが上空へ舞い上がったことにより回避されてしまう。

('A`)「なら!」

と次は切り上げを行う。
それは完全に空を描いていたが…その刀からまるでカマイタチのような風の刃が放たれた。
しかし、それもモララーの旋回運動により結局は空を描くことになった。

( ・∀・)「……なるほど。わかったよ、その装備のからくり」

('A`)「…なんだ? もうネタバレしちまったか?」

ドクオは余裕の笑みを見せている。
モララーはそんなドクオの前へ優雅に降り立つと、自分が見極めたであろう推測を言ってみた。


…その際、チラリと自宅を確認した動作をドクオが気づいたかは定かではない。

23 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2010/02/03(水) 21:36:11.50 ID:ysHGWMs50
( ・∀・)「…まずはその刀。あなた自身の斬撃や風圧が飛んでいるかと思ったが…違うね。
      おそらくは刀身自体に魔法を…あぁ、ラウンジ大陸ならば『呪術』か。
      呪術を刷り込み、風の呪術を自在に放てるようにした言わば『妖刀』だ」

( ・∀・)「そして、次に魔法が消されるからくり。
      これも根本は一緒だ。こちらでいうスペルキャンセラーのような呪術を鎧自体にかけてある。
      だから、僕の魔法が全部直前で霧散してしまうわけだ」

('A`)「……ははは。恐ろしい奴だなお前。いや、ここは流石と言うべきか? よく見破ったな」

ドクオは刀を突き出すようにして続ける。

('A`)「これは俺の大戦中から使ってる愛刀『風斬之刃(かざきりのやいば)』
   言ったように、風の呪術を俺の意のままに放てる代物だ」

次に、身体を纏っている和風の鎧を見せ付けるように両腕を広げる。

('A`)「こっちは最近完成した、対お前用の具足『不動』
    大金払って、屈指の呪術師たちの『対抗呪文』を重ねがけしたものだ」

対抗呪文というのが、VIP大陸でいうスペルキャンセラーのこと。
具足(全身鎧のこと)のパーツ一つ一つにかけてあるので、現在はドクオの身体を中心に球体のようなフィールドが発生している。

最初は『見せ』のために、まるで拳でかき消したように見えたが本来はただ立っているだけで魔法はかき消される。

('A`)「で、わかったところでどうするんだ? 呪術が効かない場合の対処なんて、考えたことなかったんじゃねぇの?」

26 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2010/02/03(水) 21:42:43.69 ID:ysHGWMs50
種がわかったところで、現状は変わらない。
モララーの魔法は通らないことに変わりはないのだ。

これが騎士同士の戦いならば、まだ腕の差で勝負がついたかもしれない。

だが、これは完全にモララーが不利な戦い。
両手をもがれたハンデに等しいだろう。


( ・∀・)「…どうするもこうするも…なんとかするしかないでしょう。
      今ココで負けを認めたら、帰ってくれるのかい?」

('A`)「んなわけねぇだろ。俺が求めてるのは勝敗じゃねぇ。
    それならば、もう11年前に大陸単位でついている」

('A`)「けど勝負には負けたが、まだ喧嘩の決着はついてない。
    本当に強いのは呪術師なのか、武士なのかいい加減白黒ハッキリつけとくべきだろ?」

( -∀・)「ならば、ラウンジ大陸で最強の呪術師を訪ねればいいだろうに」

('A`)「それが終わったから言ってんだよ。そん時はわざわざ『不動』を作るまでもなく倒しちまったがな」

('A`)「で、次に浮かんだのがお前だ。俺は大陸最強になりたいんじゃない、世界最強になりたいんだ」

( ・∀・)「まったく、はた迷惑な」

(#'A`)「……チッ。火付きの悪ぃ野郎だな。ここまで挑発されても何も思わないのか?」

28 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2010/02/03(水) 21:46:34.01 ID:ysHGWMs50
( ・∀・)「思わないさ。僕が求めたのはあなたと正反対。
      勝つための力が欲しかった、ただそれだけだからね。
      戦うことはそこまで好むところではないんだ」

(#'A`)「達観した考えしやがって…老兵でももうちょっと戦いに熱意を持ってるぜ?
    魔法もチマチマしたものしか使わないしよ」

('A`)「……あぁ、そうか!」

(; ・∀・)「…!」

…しまった、気づかれたか?

('A`)「…そういうことか。お前、その小屋を守りながら戦ってるだろ?」

ドクオが指差した先にあるのは、モララーの自宅。

そうなのだ。
モララーは攻撃を避ける時はできるだけ上空へ避けるようにしている。
そして、攻撃も派手なものではなくドクオだけにあたるような言わば中級魔法のみ。


('A`)「……何があるのかしらねぇが……俺は戦いが面白くなるなら何でもやらせてもらうぜ」

ボソリと呟いたドクオは、しっかりとモララーに視線をぶつけながら続ける。

('A`)「なあ、あんた。もしも、その小屋がなかったら本気で戦ってくれるのか?」


31 名前:◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2010/02/03(水) 21:54:17.40 ID:ysHGWMs50
(; ・∀・)「何…!?」

('A`)「うっぜぇんだよな。こっちはマジで殺りに来てるのに、そっちは全然本気じゃねぇってのが」

ドクオは刀を口元まで持ち上げて鈍く光る刀身に映る自分を見つめた。
その口元は真一文字を描いていたが…一度瞬きをしたと同時に、ニヤリと両端がつりあがった。

(#'A`)「こうでもすれば、出してくれるんだろ!? 本気をなぁあああ!!!」

隙だらけになる代わりに、全身の力を余すことなく注げる。
そんな一切の技の理を無視したかのような大振りをドクオは見せた。


次の瞬間、今までの数倍激しい豪風が巻き起こった。


(; ・∀・)「ッ!!!」



風が向かう先は真っ直ぐ我が家。

…だめだ。

そこには…病気の同居人が居るんだ。

自分の帰りをまだかまだかと待ってる人が居るんだ!

32 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2010/02/03(水) 21:56:30.78 ID:ysHGWMs50





攻撃など……





('A`)「!」




させるものか!!





ドクオの視線はずっとモララーに向けられていた。
瞬きをしたつもりはなかった。

33 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2010/02/03(水) 21:59:00.56 ID:ysHGWMs50


なのに…瞬間的に視界から消えた。


何が起こったかわからず、目を横へすっと動かした。


なんだ、居るじゃないか。

まるで小屋を守るかのように、刀を振るった延長線上にただずんでいる。

音はしなかった。

でも……風は止んでいる。
全霊をこめた、本気で小屋を吹き飛ばすほどの一撃だったはずなのに…

それがまるで、なかったことのように傷一つついていなかった。

('∀`)「ははは! そうそう、そういう動きだよ!! 理解できないくらいのほうがちょうど良いってもんだ!!」

ドクオはその行動を見て笑っている。
まるで玩具を与えられた子供のように、ケラケラと。

('∀`)「なぁもう一回やったら、次はどんなことをしてくれる?
    手口がわかってるなら、カウンターくらいはしてくれるんだろ?」


(  ∀ )「……」

34 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2010/02/03(水) 22:01:36.22 ID:ysHGWMs50
こいつは本気だ。

自分の本気を出すためならば、何でもするつもりだ。

例え、後がどうなろうとしったことではない。

今が楽しければ良いと思っているのだ。



その下卑た笑い声は、確かにモララーの耳に届き

そのふざけた表情は、確かにモララーの心に届き





二つの刃は、確かに…モララーの心の箍を外したのだった。










つづく


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