塔と民話のサーガのようです
- 265 名前: ◆R6iwzrfs6k:2013/01/03(木) 23:36:44 ID:rqidrRV20
- 「なにか特別なものを与えよう」
それから、神様はたくさん考えて、ヒト達に、不思議な力を与えました。
けれどもけっして喧嘩が起きないように、そしてヒト達が助け合って生きていけるように、ある工夫をしました。
――第十階層「にぎやかな国」後編
- 266 名前: ◆R6iwzrfs6k:2013/01/03(木) 23:39:05 ID:rqidrRV20
- ζ( ― *ζ「…………」
私の気分はどん底だった。
ピンクの空も、軽快なマーチも、人々の歓声も、全て疎ましかった。
ζ( ― *ζ(ドクオの馬鹿)
みんな、死にたくてお勤めに参加したわけないのに。
ζ( ― *ζ(……好きって、なんなの)
【+ 】ゞ゚)「デレさん!」
名前を呼ばれてハッとする。
その声の主は、オサムさんだった。
【+ 】ゞ゚)「客席はこっちです」
ζ(゚ー゚*ζ「あ、ああ……。ありがとうございます」
人込みをかき分けて、オサムさんのところへ向かう。
ζ(゚ー゚*ζ「くるうは?」
【+ 】ゞ゚)「くるうなら、ビロードさんと話しています。なにやら話したいことがあるとか」
ζ(゚ー゚*ζ「そうですか」
……もしかして、昨日の話を引きずっているんだろうか。
少し不安になる。
でも、客席の隅っこでビロードちゃんと話しているくるうの表情はとても明るかった。
川 ^々^) (><*)
ニコニコしながらなにかを語りかけているその様子は、とても和やかだ。
- 267 名前: ◆R6iwzrfs6k:2013/01/03(木) 23:41:15 ID:rqidrRV20
- ζ(゚ー゚*ζ(杞憂、だったかな)
くるうがビロードちゃんの頭を撫でているのを見て、私はほっとした。
ζ(゚ー゚*ζ(よかった)
普段は子供っぽいけど、あの怒りが一日で収まったあたり成長したなぁ、なんて思ってしまった。
【+ 】ゞ゚)「そろそろ行きませんか?」
ζ(゚ー゚*ζ「あ、ごめんなさい」
【+ 】ゞ゚)「いえ。ただ、ドクオくんを一人で待たせているのも悪いかと思いまして」
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
私はなんて返せばいいのかわからなかった。
だけど、そのまま黙っていてもオサムさんは変に思わなかったらしかった。
ζ( ー *ζ(はぁ……)
これから、どうすればいいんだろう。
今まで彼とどんな会話をしていたんだっけ?
【+ 】ゞ゚)「……デレさん?」
ζ(^ー^;ζ「っ……なんでもないです」
笑顔を取り繕って、オサムさんに言う。
……でも、さすがにバレバレだったらしい。
オサムさんはなにかを察したようだった。
【+ 】ゞ゚)「……まぁ、あんまり無理しないようにしてください」
そうして、彼は歩き始めた。
- 268 名前: ◆R6iwzrfs6k:2013/01/03(木) 23:42:36 ID:rqidrRV20
- ビロードちゃんとワカさんの活躍はすさまじかった。
ζ(゚ー゚*ζ「いっけぇぇぇ!!」
【+ 】ゞ゚)「おお……」
(*'A`)「すげぇな!やれ、やれ!」
川 ゚ 々゚)「…………」
どんな能力者が来ても、ビロードちゃんとワカさんは、お互いを守りあっていた。
二人のコンビネーションは、抜群だった。
ζ(゚ー゚*ζ「すごいね、すごい!」
思わず興奮して、私はドクオに話し掛けてしまった。
ζ(゚ー゚;ζ(……ちょっと、まずかったかな)
一瞬そう思ったけど、
(*'A`)「な!これなら優勝できるんじゃねぇか!?」
ドクオも興奮していて、満面の笑みを浮かべながらそう返してくれた。
ζ(゚ー゚*ζ(……よかった)
それとなく安心して、私はまたビロードちゃん達の方に視線を戻した。
- 269 名前: ◆R6iwzrfs6k:2013/01/03(木) 23:45:01 ID:rqidrRV20
- ( <●><●>)「ビロード!」
( ><)「はいです!」
ビロードちゃんの手に、光が収束していく。
それは徐々に剣を形作っていって。
( ><)「これで、終わりです……!」
一瞬で間合いを詰めたビロードちゃんは、それで相手を切り付けた。
(;*゚∀゚)「いてて……」
(;*゚ー゚)「つ、つー!」
( <●><●>)「まだやりますか?」
(;*゚ー゚)「っ……降参よ!降参!」
敗北が宣言された途端、客席は沸き上がった。
「いいぞー!よくやった!!」
「潔い!」
「おつかれさま!!」
次々とかけられる言葉は、決して降参した者を罵倒するものではなく、むしろ優しかった。
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
そうだ、これは誰かを殺すために戦っているわけではないからだ。
誰が一番強いのか、それを決めるための戦いだから。
- 271 名前: ◆R6iwzrfs6k:2013/01/03(木) 23:46:28 ID:rqidrRV20
(φー )
ζ( ー *ζ「…………」
一瞬、パミィさんのことを思い出してしまった。
彼が、私達のように旅に出る勇気さえあれば、あそこで死ぬこともなかったんだろうか。
ζ(゚ー゚*ζ(……それでも先はなかったかもしれない)
生まれる国は選べない。
親も選べない。
だけどそれは仕方のないことなのだ。
川 ゚ 々゚)「次」
ζ(゚ー゚*ζ「ん?」
川 ゚ 々゚)「次、決勝だね」
くるうが、ビロードちゃんを見つめながらそう言った。
ζ(゚ー゚*ζ「そうだね」
川 ^々^)「楽しみだなぁ」
満面の笑みを浮かべながら、くるうは言った。
- 272 名前: ◆R6iwzrfs6k:2013/01/03(木) 23:47:25 ID:rqidrRV20
- 決勝戦。
臭いを武器にするビロードちゃん達に相対するのは、プギャーとまたんきという二人組の男だった。
ζ(゚ー゚*ζ「どんな能力なのかな」
私の呟きに答えてくれたのは、オサムさんだった。
【+ 】ゞ゚)「風を操る能力だそうですよ」
ζ(゚ー゚*ζ「へぇ……」
しかし会場は無風だ。
こんな状況でも、風を操ることができるのだろうか?
そんなことを考えているうちに、決勝戦が始まった。
( <●><●>)「まずはお手並み拝見です」
( ><)「です!」
ビロードちゃんが、握り拳を相手の方に突き出した。
そして。
( ><)「いっけぇぇぇ、です!!」
握り締められていた拳が開いた瞬間、手の平から光が飛んでいった。
(;'A`)「なんでもありだな」
ドクオの呟きに私はうなずいた。
( ^Д^)「…………」
(・∀ ・)「…………」
相手は、動揺せずにそれをただ見つめていた。
が、突然間の抜けた音が会場に響いた。
- 273 名前: ◆R6iwzrfs6k:2013/01/03(木) 23:48:27 ID:rqidrRV20
- ぷぅー、ぷすんっ。
それと同時に、小馬鹿にするような笑みを浮かべたプギャーが叫んだ。
( ^Д^)「そんじゃあ、やりますか!」
とその時、光の矢の軌道が急に逸れてしまった。
【+ 】ゞ゚)「ほう」
興味深そうに呟いたのはオサムさんだった。
【+ 】ゞ゚)「無風状態でも風を生み出せるのか」
ζ(゚ー゚*ζ(無風……?)
その言葉がやけに引っ掛かった。
無風でも風を生み出せるなら、それは一人で十分ではないのか、と。
( ^Д^)「派手にやろうぜ!」
(・∀ ・)「おうよ!!」
仁王立ちしているまたんきが叫んだ瞬間だった。
ブボボッ!ボッ!!ブーッ!!!
(;'A`)「!! 違う、オサムさん。風を生み出してるのはあいつだ!!」
ドクオが、またんきを指差して叫んだ。
ζ(゚ー゚*ζ「まさか……」
【+ 】ゞ゚)「…………」
あの音って……。
川 ゚ 々゚)「おなら?」
ζ( ー *ζ「ぶふっ……!」
くるうの一言に私は思わず噴き出してしまった。
ζ( ー *ζ(お、おなら……!)
しかしその威力は馬鹿にできないようだった。
- 274 名前: ◆R6iwzrfs6k:2013/01/03(木) 23:50:10 ID:rqidrRV20
- ( ^Д^)「どっせい!!」
( ><)「!」
無数の鎌鼬がビロードちゃん達に襲いかかる。
が、ビロードちゃんはとっさに盾を作り出した。
【+ 】ゞ゚)「飛び道具の多いビロードさんとあの能力だと、少し分が悪いかもしれないな……」
たしかにそうかもしれなかった。
ビロードちゃんが剣を使うのは、相手が弱り切った時だけなのだ。
遠距離能力同士の戦い。
一体どうなってしまうんだろうか?
(・∀ ・)「まだまだだぜぇぇぇぇ!!!!」
相も変わらず繰り出されるおなら。
( ^Д^)「おらぁぁぁ!!!」
次々襲いかかる風の刃を防ぎながら、ビロードちゃんは銃弾による段幕を展開する。
( ><)「こっちも負けていられませんよ!」
( <●><●>)「ワカッテマス!!」
ζ(゚ー゚*ζ「す、すごい……」
その戦いに、私達は圧倒され、見入っていた。
川 ゚ 々゚)「…………」
ただ、彼女だけを除いて。
- 275 名前: ◆R6iwzrfs6k:2013/01/03(木) 23:51:35 ID:rqidrRV20
弱くて貧相でちっぽけでか細くて、誰かを守るためには不十分で役立たずな私の魔療。
でもね、けどね、誰かの足を引っ張ることはできるんだ。
.
- 276 名前: ◆R6iwzrfs6k:2013/01/03(木) 23:53:37 ID:rqidrRV20
- ( ><)「……?」
その時、ボクは痛みを感じた。
(;><)「?」
頭が、熱い。
じわじわとその熱はあがっていって、ボクの思考力を奪っていく。
(;><)「ぁ……う……!」
手から、銃が滑り落ちる。
地面に着く直前、それは霧散した。
能力が維持できない。
(;><)(どうして……?)
(;<●><●>)「ビロード……?」
お兄ちゃんが、駆け寄ってくる。
だめ、こっちに来ちゃ。
来たら……。
( ^Д^)「今だ」
(・∀ ・)「あいよ」
( <〇><◎>)「!?」
無数の鎌鼬が、お兄ちゃんの体を吹き飛ばした。
(;><)「お、お兄ちゃん……!」
頭痛に耐えながら、ボクはお兄ちゃんに駆け寄った。
(;<〇><●>)「ビ、ビロード……」
(;><)「お兄……ちゃ……」
- 277 名前: ◆R6iwzrfs6k:2013/01/03(木) 23:54:21 ID:rqidrRV20
- ( ^Д^)「寝転がってる暇はねぇぜ!!」
(;><)「っ!?」
体が、吹き飛ぶ。
そのまま壁に叩き付けられて、肺の中の空気が、潰れた。
(;><)「う……ぅ、」
どうして、こんな、急に?
耐えがたい痛みの中で、ボクは必死に考えて。
でも、答えは出なかった。
(;><)(ごめんなさい、お兄ちゃん)
守れなくて、ごめんなさい。
- 278 名前: ◆R6iwzrfs6k:2013/01/03(木) 23:55:41 ID:rqidrRV20
- 川 ゚ 々゚)「………………」
あいつの元へ、男が近付く。
(;><)「…………」
彼女は、動かない。
動けない。
彼女が戦う前に、私が魔療を使ったからだ。
健康なのに、血の巡りが速くなったら、頭がのぼせてしまってどうにもならない。
だから魔療は、むやみやたらに使ってはいけないのだけど。
川 ゚ 々゚)「…………」
使ってしまった。
自分のために、相手の意思を潰すために。
川 ゚ 々゚)(……それで、いいのかな)
いいんだよ。
いつだって私は自分を殺してきたじゃないか。
一度くらい、相手を殺したっていいじゃないか。
- 279 名前: ◆R6iwzrfs6k:2013/01/03(木) 23:56:45 ID:rqidrRV20
- 川 々 )「……わたし、」
【+ 】ゞ゚)「くるう?」
オサム。
オサムが、わたしを見てる。
見つめてる。
バレてしまいそうだ。
わたしが、教えを破ったことが。
川 々 )「ご、ごめんな、さ、」
【+ 】ゞ゚)「くるう……?」
その時だった。
ブシッ、と、わたしの鞄の中から音がしたのは。
('A`)「ん?」
その音に、ドクオが呟いた。
ζ(゚‐゚*ζ「……っ!?」
その臭いに、デレが動揺した。
川 ゚ 々゚)「!!」
その時、わたしは意思を固めた。
鞄から、それを取り出して。
倒れていたビロード目掛けて、オワタくんからもらった謎の缶詰を投げ付けた。
- 280 名前: ◆R6iwzrfs6k:2013/01/03(木) 23:58:45 ID:rqidrRV20
- カラン、と音がした。
(;><)「……?」
目の前には、パンパンに膨らみ、ガスと真っ黒い汁を噴き出しているラベルのない缶詰があった。
(;・∀ ・)「なにこれくっさ!!」
(;^Д^)「おぇぇっ……!」
突然現われたそれに怯んだ二人は、立ち止まってぎゃあぎゃあと騒いだ。
いまだ止まない頭痛にふらつきながら、ボクはゆっくりと立ち上がる。
その体を支えてくれたのは、お兄ちゃんだった。
( ><)「……いつのまに来たのですか?」
(メ<●><●>)「まぁ、先ほどからじりじりと、ね」
お兄ちゃんは、ためらいもなく缶詰から噴き出した汁を手に取った。
(メ<●><●>)「やることはわかりますね、ビロード」
( ><)「……口に出さなきゃわかんないですよ」
軽口をたたきながら、お兄ちゃんに笑いかける。
(メ<●><●>)「まったく……、私を守ってください。でなければ、あなたを守れませんから」
(*><)「…………」
なにも答えずに、ボクは光を収束させた。
最後の最後なのだから、派手にやろう。
(*><)「お二方には、悪いのですが!!」
( ^Д^)「は?」
(・∀ ・)「へ?」
- 281 名前: ◆R6iwzrfs6k:2013/01/04(金) 00:00:51 ID:DvH7HC1.0
- 夕暮れ時。
ワカさんの庭のベンチに座りながら、私はドクオに話し掛けた。
ζ(゚ー゚*ζ「……すごかったね」
('A`)「……な」
オワタくんからもらった缶詰の中身が、あんな風に活躍するとは、予想だにしなかっただろう。
ζ(゚ー゚;ζ「……すごい臭いだった」
('A`)「おう、ちょっと対戦者がかわいそうになったわ」
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
沈黙。
能力バトル大会の興奮で、つい話し掛けてそのまま一緒に帰ってきたものの、やっぱりまだ気まずかった。
ζ(゚ー゚*ζ(どうしようかな……)
と、考えていたら、
('A`)「デレ」
ζ(゚ー゚;ζ「ひゃいっ!?」
真剣な面持ちで、ドクオがこう言った。
('A`)「やっぱり、諦められない」
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
('A`)「嫌いでもなんでもいいから、俺はお前のことを守りたい。ずっと傍にいたい」
ζ(゚、゚*ζ「…………」
ζ(゚ー゚*ζ(別に、嫌いってわけじゃ、ないんだけどなぁ)
とは思ったけれども、なんだかうまく言葉に出来なくて、私はうなずいた。
(*'A`)「そっか」
なのに、ドクオは嬉しそうに笑うから、余計わけがわからなくなってしまった。
ζ(゚ー゚*ζ(まぁ、いっか)
とその時、私はビロードちゃんとワカさん、オサムさんとくるうが帰ってくるのを見つけた。
- 282 名前: ◆R6iwzrfs6k:2013/01/04(金) 00:01:46 ID:DvH7HC1.0
- ζ(゚ー゚*ζ「おかえりなさい!」
('A`)「怪我は、大丈夫なのか?」
( ><)「大丈夫なのですよー。ご心配おかけしました」
深々とお辞儀しながら、ビロードちゃんはそう言った。
ζ(゚ー゚*ζ「ところで、勝負の行方は……?」
( <●><●>)「私達の勝ち、ということで処理されました」
【+ 】ゞ゚)「まぁ、缶詰を投げ入れたことに関してはこっぴどく叱られたが」
苦笑しながら、オサムさんがくるうを見た。
川 ゚ 々゚)「…………」
くるうは、なんともいえない表情でオサムさんから視線を逸した。
(メ<●><●>)「まぁそういうことですから、これから知り合いのところでお祝いをしにいくことになりまして」
( ><)「よかったら、一緒に来てほしいのです!」
ζ(゚ー゚*ζ「いいんですか?」
(*><)「楽しいことはたくさんの人と分け合うのがいいのですよ!」
川 ゚ 々゚)「…………」
ビロードちゃんの笑顔に癒されながら、私はうなずいた。
ζ(゚ー゚*ζ「みんなも、それでいいよね」
('A`)「もちろん」
【+ 】ゞ゚)「ここで出国するのも、野暮な話だよ」
川 ゚ 々゚)「…………」
( <●><●>)「それでは行きましょうか」
嬉しそうに、ワカさんはそう言った。
(*><)「道案内はボクがします!」
ビロードちゃんが歩きだし、私達はその後に続いていった。
- 283 名前: ◆R6iwzrfs6k:2013/01/04(金) 00:02:58 ID:DvH7HC1.0
- ( <●><●>)「少し、ビロードたちから距離を開けて話をしましょうか」
小声で、俺に向かってワカさんが言った。
おそらく、デレのことで話があるんだろう。
('A`)「わかりました」
そこはかとなく、歩く速度を落とす。
川 ゚ 々゚)「それでね、オサムが綿菓子をね」
ζ(゚ー゚*ζ「オサムさん、甘いもの好きなんですか?」
【+ 】ゞ゚)「いやまったく……」
( ><)「それは災難でしたね」
少し先では、デレがみんなと話しているのが見えた。
おしゃべりに夢中な今なら、俺がいないことに気づかないかもなぁ、なんて。
('A`)(ちょっと寂しいけど)
今は、それでいい。
- 284 名前: ◆R6iwzrfs6k:2013/01/04(金) 00:04:20 ID:DvH7HC1.0
- ( <●><●>)「さて、」
なにからお話ししましょうか、と呟きながらワカさんはほんの少し考えて、こう言った。
( <●><●>)「……昔から、この国にはおとぎ話がありまして」
('A`)「?」
( <●><●>)「昔、この国はあんまりにもなにもなさすぎて、神様はつまらないと感じていたのだそうです」
( <●><●>)「ですから神様は、人間に特別な力を与えたそうなのですが。さてドクオくん」
('A`)「は、はい」
( <●><●>)「この能力を使った争いが起きないようにするには、どうすればいいでしょうか?」
争いが起きないようにする。
ほんの少し難しい問題だ。
でも、昨日ビロードちゃんが言った言葉を思い出して、俺は答える。
('A`)「個々の力が弱くて、」
( <●><●>)「…………」
('A`)「互いに助け合わないと、能力が使えないから」
( <●><●>)「その通りです」
緩やかに笑みを浮かべながら、ワカさんは続ける。
( <●><●>)「そう、一人ではなにもできないのです。わたしも両親からビロードとは一心同体の存在であることを叩き込まれました」
( <●><●>)「だからこそ、わたしは思ったのです」
( <●><●>)「デレさんとお姉さんは、二人で一つの対称的な存在ではないのか、と」
('A`)「……二人で一つ?」
予想だにしなかった言葉に動揺しつつ、俺はワカさんに聞き返した。
( <●><●>)「デレさんは、内向的で読書が好きで、恋愛感情には疎く、旅をすることにあまり抵抗がない」
( <●><●>)「対してお姉さんは、活発的で交遊関係も広く、恋愛感情を持ち、塔の外を出ることはあまり好きではない」
- 285 名前: ◆R6iwzrfs6k:2013/01/04(金) 00:07:10 ID:DvH7HC1.0
- ( <●><●>)「おかしいとは思いませんか?普通、一族の伝統とはいえ二度と戻ることのできない旅を進んで行う人がいると思いますか?」
( <●><●>)「また、それをおとなしく見送る人がいると思いますか?」
('A`)「…………」
( <●><●>)「思うに、デレさんの一族たちは二種の人間に分かれて生まれるのです。一人はお勤めに向いている人間、もう一人は国に残る人間……」
国に残る。
つまり、それは、子孫を残すということで。
お勤めに出るということは、それが叶わないから。
ζ( ― *ζ「友達以上の関係なんて、わかんないよ……」
デレの言葉が、反響する。
( A )「……俺の、」
俺の、恋は、最初からみのるはずもなかった?
( <●><●>)「鳴かぬなら 鳴かせてみせなさい ホトドクオ」
('A`)「……へ?」
ワカさんのわけのわからない言葉に、俺は間の抜けた声が出てしまった。
( <●><●>)「ともに鳴かずば 鳴くこともならん」
- 286 名前: ◆R6iwzrfs6k:2013/01/04(金) 00:08:50 ID:DvH7HC1.0
- ( <●><●>)「いえ、これは先人の句を短歌にアレンジしたものでして」
('A`)「はぁ、」
( <●><●>)「デレさんが、恋心をわからないのなら、あなたが教えればよいのですよ」
そうは言うけどさ、ワカさん。
('A`)「……俺にできるかなぁ」
( <●><●>)「やりもしないで諦めるのは一番駄目なことですよ」
ワカさんの言葉が、ぐさりと刺さる。
でも、たしかにそうなんだ。
それに俺は。
ζ(゚ー゚*ζ「あれ、二人ともなんで離れてるの?」
ふと立ち止まったデレが、不思議そうに俺たちを見る。
( <●><●>)「ああ、少しのんびり歩いていまして」
( ><)「まったく、お兄ちゃんはマイペースですね」
ははは、と笑いながらワカさんは歩みを速める。
先ほどの話は内緒ですよ、というようにこっそり俺に目配せをして。
ζ(゚ー゚*ζ「ドクオ?」
('A`)「今いくよ」
やっぱり。
(*'A`)(俺はデレが好きなんだ)
- 287 名前: ◆R6iwzrfs6k:2013/01/04(金) 00:09:53 ID:DvH7HC1.0
どんちゃん騒ぎをした翌日。
名残惜しいけれども、私たちはにぎやかな国を去ることにした。
( ><)「楽しかったですよ!」
ζ(゚ー゚*ζ「私も、ビロードちゃんたちと一緒にいれて楽しかったよ」
【+ 】ゞ゚)「色々お世話になりました」
( ><)「いいのですよー」
川 ゚ 々゚)「…………」
( <●><●>)「寂しくなりますねぇ」
ワカさんが、ちらりとドクオを見ながらそう言った。
ζ(゚ー゚*ζ(そういえば昨日ずっといたし、仲がいいのかな?)
なんてことを思いながら、私はワカさんに頭を下げた。
川 ゚ 々゚)「……行こ、デレ」
扉に手をかけながら、くるうが言う。
そうだ、先に進まなくては。
ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ、お元気で」
( <●><●>)「どうかお気をつけて」
くるうの開けた扉をくぐる。
私の後を、ドクオとオサムさんがついてきて。
- 288 名前: ◆R6iwzrfs6k:2013/01/04(金) 00:10:47 ID:DvH7HC1.0
- ζ(゚ー゚*ζ(あれ?)
くるうは?
そう思って振り向いた時だった。
「っごめんなさい! でも、わたしはオサムが好きだから!」
なんて、声が聞こえてきて。
それから、くるうがこっちに駆け寄ってきて。
川* 々 )「早くいこ?」
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
ζ(^ー^*ζ「うん」
らしくもなく顔を赤くしていたものだから、思わず私は笑ってしまった。
――第十階層「にぎやかな国」後編 了
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