塔と民話のサーガのようです


298 名前:◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 12:40:10 ID:5TUghTwk0
むかしむかし、あるところに不幸せな国がありました。
その国はとても荒れ果てていて、いつも争いごとばかりでした。


ある日、その国に神様がやってきました。

「どうして、この国はいつも不幸に満ちあふれているのですか」

「信じられるものがないからです。親も、兄弟も、なにもかもが信じられないのです」

「それは悲しいことだ」

「ここはいつでも血と姦淫にまみれておりますから、他人を信じられるはずがないのです」

その言葉に対して、神様はこう言いました。

「ならば、私を信じなさい。そして、一日に一度あなた達に詞を授けよう。そのとおりにすれば、幸せが訪れるだろう」


――第十一階層「信心深い国」に伝わる民話

299 名前:◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 12:41:07 ID:5TUghTwk0
まず私たちの視界に入ってきたのは、奇妙な建物だった。

ζ(゚ー゚*ζ「なにあれ?」

('A`)「ピラミッドか?」

川 ゚ 々゚)「でもでも、上のほうがおっきいよー?」


それは、逆さまになった四角錐状の建物だった。
離れた場所からも見えるそれが、とんでもない大きさであることは明白だ。

ζ(゚ー゚;ζ「なんだかすごいとこに来ちゃった?」

【+  】ゞ゚) 「……とりあえず、進むしかないだろう」


オサムさんの言葉にうなずいて、私たちは歩き出した。

300 名前:◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 12:42:14 ID:5TUghTwk0
整備された道をしばらく歩くと、国の入り口らしき門が見えた。


閉じた扉の前には、煙管を手にした男の人と、

( l v l) (・∀ ж・ )

片方の口を縫われた双頭の怪物が立っていた。

ζ(゚ー゚;ζ「…………」

入りにくいなんてものじゃない。
正直怖かった。
けれども、お勤めをするためには、通らなくてはいけないのだから。

ζ(゚ー゚*ζ「すみませんっ!」

勇気を出して、声をかけると煙管の男の人が振り返った。

( l v l) 「もしや、あなた方は旅人さんで?」

うなずくと、彼は嬉しそうに微笑み、

(*l v l) 「だと思いました」

と言った。

( l v l) 「ようこそ、信心深い国へ。わたくしは巫女さまの遣いをしている宗男と申します」

宗男さんは、きびきびとした動きで礼をした。

ζ(゚ー゚*ζ(なんだか機械みたい)

川 ゚ 々゚)「巫女さまってなぁに?」

( l v l) 「実はこの国には、昔からありがたい神のご加護がありまして」

と、話しかけていた口を宗男さんは閉じてしまった。

( l v l) 「ああ、この話はあとにして、先に中へ案内いたします。傷に障ったら大変でございますからね」

ζ(゚ー゚;ζ(傷?)

301 名前:◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 12:44:05 ID:5TUghTwk0
その一言に、ひやりとする。
もしかして私のことだろうか?
でも、宗男さんはそんなこと知っているはずがないのだ。

( l v l) 「デレ様、どうかいたしましたか?」

ζ(゚ー゚;ζ「あ、いえ、その、……」

('A`)「……宗男さん、なんで彼女の名前を知ってるんだ?」

私をかばうように、ドクオが一歩前に出る。

【+  】ゞ゚)「…………」

オサムさんも警戒するように、鞄に手をかけた。

( l v l) 「神は、すべての行いをご存知なのです」

ζ(゚ー゚;ζ「?」

ぼんやりと、どこか遠くを見つめながら、宗男さんは言う。

( l v l) 「もちろんあなたがたがどこから来たのか、道中でなにが起きたのかも知っているのです。 そして、神は巫女さまにそれを伝えるのです」

「ぜんちぜんのー」( ・∀ ж・)

不意に、宗男さんのそばにいた怪物が、そうしゃべった。

( l v l) 「我々は神の言葉に従い、あなたがたを丁重にもてなします」

ζ( ー *ζ「っ……」

ぞわりと肌が粟立つ。
それは、本心からの歓迎ではなくて。

【+  】ゞ゚)「……何故、神を信じるんだ?」

( l v l) 「幸せになれるからですよ」

ζ(゚ー゚*ζ「…………」

( l v l) 「さぁ、どうぞゆっくりしていってくださいな」

怪物に門扉を開けさせながら、宗男さんはそう言った。

302 名前:◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 12:45:25 ID:5TUghTwk0
入国した私たちは、国の歴史や民話などをことこまかく説明されながら、ある建物に通された。
そこは、どうも宿だったらしい。
たくさんの人に出迎えられて、おいしい料理を山ほど出されて。
でも、少し怖かった。
だってみんな、私達のことをなんでも知っていたから。


( l v l) 「今日はこの宿で、ゆっくりお過ごしください」

川 ゚ 々゚)「部屋はみんなべつべつなの?」

( l v l) 「ええ、そういうお告げでしたから」

にっこりと笑う宗男さん。
でも、オサムさんは彼をうさんくさそうに見つめながらこう言った。

【+  】ゞ゚)「ところで、そばにいたあの異形はなんなんだ?」

オサムさんの言葉に、宗男さんは答える。

( l v l) 「ああ、あれはわたくしどもが人工的に造り上げた異形でございます」

(;'A`)「……は?」

ζ(゚ー゚*ζ「じ、んこう、てき……?」

( l v l) 「とある双子の青年をあのように生まれ変わらせろという、神のお告げがありましたから」

303 名前:◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 12:46:13 ID:5TUghTwk0
川 ゚ 々゚)「…………」

( l v l) 「彼らも大いに喜んでいましたよ。この上ない名誉だと」

嬉々として語るさまは、狂気を感じた。

ζ(゚ー゚*ζ「あ、あの、やっぱり、おいとましま……」

( l v l) 「なりません」

ζ(゚ー゚;ζ「え、」

目を見開いて、私をにらみながら宗男さんは言う。

( l v l) 「一泊させなければいけないのです。何故なら」

【+  】ゞ゚)「神のお告げ、か」

( l v l) 「ええ、そうです。過去のように不幸に満ち溢れた国にはしたくありませんからね」

(;'A`)「……狂ってる」

小声で、ドクオがそう呟いたのを私は聞き逃さなかった。
なにかを信じるって、こんなおどろおどろしいものだったっけ?
私はドクオやくるう、オサムさんを信じているけど、こんな風にはならないし、なれないと思うんだけど……。

( l v l) 「とにかく、今日はどうぞ、お休みなさってください」

ζ(゚ー゚;ζ「…………」

嫌です、とは言えない空気だった。
こうして、私達は仕方なく、一晩宿で過ごすこととなった。

304 名前:◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 12:48:02 ID:5TUghTwk0
一人部屋は落ち着かなかった。
昔は一人部屋が好きだったし、寝るのも苦にならなかったのに。
そういえば、お勤めを初めてからは、みんなとずっと寝ていたからかな。

ζ(゚ー゚*ζ(一人って、寂しい)

なちさんからもらった動かない時計のネジを巻きながら、そんなことを思った。
そういえば。
寂しいという感情は、恋する気持ちと同じなのだろうか?
ツンは、恋をすると好きな人と一緒にいる時間が長くなって、離れるととても寂しく感じるのだと、言っていたから。

ζ(゚、゚*ζ(あ、でもそうしたらみんなに恋することになっちゃうな)

ごろごろと寝返りを打ちながら、そう思ったを
私に恋するドクオにも、仲良しのくるうにも、少し苦手だけど頼もしいオサムさんにも、恋をする。
やっぱり少し、変だよね、これ。
じゃあやっぱり、恋ではないのかもしれない。

ζ(´ー`*ζ(みんなに、会いたいなぁ)

早く、朝に、なりますように。

305 名前:◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 12:49:03 ID:5TUghTwk0
翌朝。

【+  】ゞ゚)「ふざけるな!!!」

Σζ(゚ー`*ζ「んぇっ!?」

私は、オサムさんの怒声で飛び起きることとなった。
声は廊下から聞こえてきた。
慌てて扉を開けると、そこにはオサムさんに襟元を掴まれてもがいている宿屋の主人と、おろおろしているドクオがいた。

ζ(゚ー゚;ζ「オサムさん、どうしたんですか?」

【+  】ゞ゚)「くるうがいない」

ζ(゚ー゚*ζ「え?」

彡;l v lミ「だから、くるうさまは先ほど出掛けたと、」

【+  】ゞ゚)「そんなわけない。あいつは一人でどこかに行ったりしない。どこかに行くなら俺を連れていくはずだ!」

(;'A`)「オサムさん!ちょっと冷静になりましょうって!」

【+  】ゞ゚)「冷静になれるものか。おい、それで、くるうはどこにやったんだ?」

今にも人を殺しそうなオサムさんの様子に負けて、宿屋の主人はようやくこう言った。

306 名前:◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 12:50:33 ID:5TUghTwk0
彡;l v lミ「さかしまの城です。宗男さまが連れていくと行ったので、くるうさまの部屋の鍵を開けました……」

【+  】ゞ゚)「っ……!」

それを聞いた途端、オサムさんは宿屋の主人を床に投げ捨てた。

ζ(゚ー゚;ζ「オサムさん……!」

【+  】ゞ゚)「悪いけどデレさん、俺はそこに先に行かせてもらう。二人もなるべく早く、あのピラミッドにきてほしい」

それだけ言うと、オサムさんは宿屋から出ていってしまった。

ζ(゚ー゚;ζ「ちょっ……」

いつもは冷静なオサムさんが、あそこまで取り乱すなんて。
思考がまとまらない。
そもそもなんで宗男さんはくるうを連れ去ってしまったのだろう。

('A`)「デレ!」

ぼんやりしていた私の手を、ドクオが掴んだ。

('A`)「俺たちも早く行こう」

ζ(゚ー゚*ζ「っ……、」

その一言で、私は気合いを入れた。

ζ(゚ー゚*ζ「うん!」

急いで支度しなきゃ!

307 名前:◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 12:52:09 ID:5TUghTwk0
さかしまの城。
神ははるか彼方の天空に御座す偉大な存在だから、地上に足をつかせるだなんてとんでもない。
だから天地ともに入り口があるのだそうだ。

【+  】ゞ゚)「…………」

もっともそんなのは、くるうの安否に関係ないのだが。

門番は全て足を射抜いた。
飛びかかってきた衛兵も、弓兵も、全て片付けた。
城を歩くのは、ただ俺一人。

【+  】ゞ゚)「…………」

今度こそ。
今度こそ、守ると俺は決めたんだ。

【+  】ゞ゚)(師匠やデレさんのようなことはもう起こさない)

遠くにいた尖兵達の肩を、矢が貫く。
崩れ落ちる体。
しかし、生きてはいる。

【+  】ゞ゚)(デレさんとドクオ君はまだ来ないのか?)

若干心配になりつつ俺は歩みを進める。
とはいえ、どうもこの城は、巨大な柱を中心に、緩やかな坂がぐるぐると渦を巻くようにして出来ているらしく、階段や分かれ道が一切ないので、迷う心配はないだろう。

同じような風景を繰り返し、時々兵士を倒して。
いったい、いつになったらくるうのもとへたどり着けるのだろうか?

そう思っていた時だった。

308 名前:◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 12:54:04 ID:5TUghTwk0
「しんにゅうしゃ!」( ・∀ ж・)

【+  】ゞ゚)「!?」

異形の腕が振り回される。
間一髪避ける。

【+  】ゞ゚)「邪魔だ!」

素早く矢を撃ち込む。


「いたーい」( ・∀ ж・)

しかし、胴に刺さったそれを異形は引き抜いた。
出血はあまりない。

「おかえしー」( ・∀ ж・)

【+  】ゞ゚)「!?」

ビュン、と矢が投げ返される。
慌てて避ける。
が、矢から視線を戻した時。

「ひひ」( ・∀ ж・)

ぶん、と振り上げられる腕。
はね飛ばされる体。

【+  】ゞ )「ぐっ……!」

受け身をとって衝撃をやわらげたものの、体のあちこちが軋んだ。

【+  】ゞ゚)(まずいな)

このままでは先に進めない。

【+  】ゞー)(どうする……)

クロスボウに矢を装填しようとした時だった。

ζ(゚ー゚*ζ「オサムさんっ!」

【+  】ゞ゚)「デレさん……?」

('A`)「大丈夫ですか?」

【+  】ゞ゚)「ドクオ君……?」

309 名前:◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 12:55:38 ID:5TUghTwk0
肩で息をしながら、各々武器を構えて異形を見つめる彼らが、なぜだか頼もしく思えた。

「ふえたー?」( ・∀ ж・)

ゆるりと、しかしすばやく異形が距離を詰め、右腕を上げる。
しかし、

ζ(゚д゚*ζ「はぁっ!」

渾身の力で振られた打撃部分が、異形の腕にあたる。

「いたい、」(;・∀ ж・)

怯んだ腕はそのまま、宙に浮いたまま。

ζ(゚ー゚*ζ「オサムさん!」

その一言で、俺は成すべきことをさとった。

【+  】ゞ゚)「すまない!」

一言そう叫んで、異形の脇をすり抜ける。
早く。

【+  】ゞ゚)(早く、くるうを助けにいかなくては)

310 名前:◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 12:56:45 ID:5TUghTwk0
ふかふかのベッド。
白霧色のレースの天蓋。
サテン生地のすべらかなシーツ。
しょりしょり、しょりしょり。
そんな音がするのは、どうして?

川  々 )「んん、…………」

幼い頃に、オサムに読んでもらった絵本みたいなベッド。
あれ?でも、昨日はこんなところで寝ていなかったような。

川 ゚ 々゚)「……?」

手枷が、ついている。
足枷も。

川;゚ 々゚)「…………」

状況が飲み込めない。
昨日は宿屋に泊まって。
部屋の鍵もきちんと閉めたのに。

川;゚ 々゚)「どうして、」

「あれれー、起きちゃったのー?」

不意に、幼い女の子の声がした。
ぺたぺたと足音。

从'ー'从

わたしの視界に、真っ白な女の子が入る。

川 ゚ 々゚)「だれ?」


从'ー'从「ここで神さまからお告げを受け取っている巫女だよー」

名前はないんだぁ、と言いながら、彼女はわたしの髪を触る。

川 ゚ 々゚)「触んないで」

触っていいのは、オサムだけなのに。

311 名前:◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 12:57:42 ID:5TUghTwk0
从'ー'从「赤くてきれいね。わたしの国には赤髪の女の子なんていないのー」

川 ゚ 々゚)「?」

从^ー^从「だからお告げで、長い赤髪の女の子の髪を切れ、なんて言われたときにはすごく困ったのだけど」

川 ゚ 々゚)「……え?」

从'ー'从「ねえねえ宗男さん、はさみ研ぐのまだ?」

( l v l) 「もうしばらくお待ちください、今研いでいますので」

川;゚ 々゚)「っ!」

切られてたまるものか。
そう思ってじたばたするものの、枷はとれる気配はない。

从'ー'从「大丈夫よ、くるうさん。痛いことなんかしないから」

川; 々 )(やだ、やだ!)

オサムのための髪なのに。
長いほうが好きって言ったから、伸ばしてるのに!

从'ー'从「どうしてそんなに嫌がるの?あなたが髪を切られれば、わたしたちは一日幸せでいることができるのよ?」

それって、とても、名誉なことでしょう?



川; 々 )(オサム、)

早く、助けにきて。

312 名前:◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 12:59:02 ID:5TUghTwk0
怪物の体力は底無しのように思えた。
いくらフレイルで打撃を与えても、斧で切りつけても、まったく痛がる様子がないのだ。

(;'A`)「きりがないな!」

振り回された右腕を斧で受け止めて、切りつけながらドクオが叫んだ。

「ひひ、」( ・∀ ж・)

ドクオが飛びすさって、距離をとる。
入れ違いに私はフレイルで怪物の頭を殴り付けた。

「…………」( ・∀ ж・)

ζ(゚ー゚;ζ「…………」

ドクオが切りつけた傷口は、浅かった。

ζ(゚ー゚*ζ(どうすれば、動きを止められる?)

フレイルを持ち直しながら、左側の頭を殴ろうとした時だった。

Σζ(゚ー゚*ζ「なっ……」

ひょい、と左側の頭がフレイルの打撃部を避けたのだ。
軌道をよむのが難しいはずなのに。

( ・∀ ―・)

フレイルは、怪物のくちびるを掠めて、糸を切るだけで終わってしまった。

313 名前:◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 13:00:10 ID:5TUghTwk0
ζ(゚ー゚;ζ「…………」

そのまま怯んでいたら、私は叩きつけられていただろう。

('A`)「デレ、下がれ!」

再び振り上げられた右腕目掛けてドクオが斧を投げつけていなかったら、だけど。

「いたーい」( ・∀ ∀・) 「…………」

たいして痛くもなさそうに、怪物が言った。
浅く刺さった斧を、左手で引き抜こうとする。
投げつけられたらひとたまりもないだろう。
かといってフレイルで防ぐこともままならなくて。
私たちには、どうすることもできなかったはずだった。

ζ(゚ー゚;ζ「ドクオ、」

('A`;)「…………」

私をかばうように、ドクオが前に出る。
斧が引き抜かれそうになったその時であった。

「あれ?」( ・∀ ∀・) 「…………」

右の頭が、不思議そうに首をかしげる。
皮膚が引きつれて、左側の頭は少し顔をしかめた。

「じゃましないで」( ・∀ ∀・) 「…………」

横目でちらりと左の頭を睨む右の頭。
ゆるやかに、左手が動く。
ずるりと斧を引き抜いて、そして。

318 名前:◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 14:20:26 ID:jKCCduck0
右腕に斧を突き立てた。


「ああぁぁ゛あぁ゛ああ゛あ!!?」(  ∀ ∀・) 「…………」

何度も何度も繰り返し。
ぐち、ぶずん、だんっ、ぶぢん。
右腕はもがく。
けれども左腕はやめない。

ζ( ー ζ「どういう、こと?」

('A`;)「わかんねえ……」

分かるのはただひとつ。
これは異常だということ。
不意に、左の頭と視線がかちあった。

「いだい、」( ;∀ ∀・) 「ねえ、」

ζ(゚ー゚;ζ「……?」

「いたい、にーちゃ、」( ;∀ ∀・) 「ころしてよ」

ζ( ― ζ「…………っ!」


(φー )

彼のことを思い出す。
殺すだなんて、そんな。

「うー、う゛ー」( ;∀ ∀・) 「こんなの、のぞんでなんか、いなかった」

ζ( ― ζ「…………」

横たわる巨体。
ぽい、と床に投げ捨てられる斧。
ドクオは静かに歩み寄って、それを拾った。

319 名前:◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 14:21:34 ID:jKCCduck0
「やだ、」( ;∀ ∀・) 「なんにんものしあわせのためにしょうすうがふこうになるなんて、かみさまはすばらしいね」

ζ( ― ζ(そんなの、神さまじゃないよ)

じゃあ、神さまってどんなの?

( A )「……デレ、」

ζ(゚―゚*ζ「やらなきゃ」

仕方ない。それに死んだ方が本人もよかったはずだ。
そんな言葉を自分に言い聞かせて。

ζ(゚―゚*ζ「ごめんなさい」

思いきりフレイルで殴り付けた。
腕がきしんでも、息がつまっても。

ζ(゚―゚ ζ「…………」

そのうちドクオも斧で切りつけて、けれどもなかなか血は出てこなくて。

「しにたくない」( ;∀ ∀・) 「ごめんな、ふたごで」

ζ(゚―゚ ζ「…………」

('A`;)「…………」

ぶじゅっ、という音がした。
白い液体が吹き出した。

ζ(゚―゚ ζ(血、なのかな)

320 名前:◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 14:22:38 ID:jKCCduck0
そういえば、オワタくん、元気かなぁ。
元気じゃないかもしれないなぁ。

「あ、あっ、あ゛……」(  ∀ ∀ ) 「…………」

そのうち、声は途切れて。
真っ白な床に、白い染みが飛び散って。

ζ(;ー; ζ「…………」

知らない間に私は泣いていた。

(;'A`)「デレ、」

ζ(;ー; ζ「これで、よかったんでしょう?」

('A`)「……うん、よかったんだよ」

早くくるうを助けに行かなくては。
そうは思うけど、腰が抜けて動くことは出来なかった。

('A`)「……大丈夫だよ、オサムさんは強いから」

ζ(;ー; ζ「うん、」

行くことで足手まといになるくらいなら、立ち止まってしまいたかった。
それに、もう、人が傷つくのを見るのは嫌だった。

321 名前:◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 14:23:44 ID:jKCCduck0
しょきん、しょきん。
金属がこすれる軽い音。

从'ー'从「うん、気持ちよく切れそうね」

そう言って彼女はわたしに微笑みかける。
その笑みは、ゾッとしそうなくらい気味が悪くて、わたしのことなんかこれっぽちも考えていない身勝手さがあふれでていた。
無駄なこととはわかっていたけど、思わず身をよじるわたしに、男がこう呟いた。

( l v l)「危ないですよ、暴れたら余計なところまできれてしまうかも」

川;゚ 々゚) 「…………」

動きが止まる。
大人しく髪を切られれば、怪我はしないかもしれない。
だけど、髪を切られるのも嫌。
触られるのも、嫌なのに。

川  々 )(オサム、)

322 名前:◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 14:24:55 ID:jKCCduck0
風切り音。

从 ー 从「……え?」

少し遅れて、床にハサミが落ちる音。

从;ー;从「い、あぁ……!」

(;l v l) 「巫女さま!」


(; v ) 「あぐっ……!?」

川 ゚ 々゚)「?」

首をなんとか動かして、状況を確かめようとする。
でも、ここからではよくわからない。

川 ゚ 々゚)「!!」

【+  】ゞ゚)「大丈夫か?」

川 ゚ 々゚)「オサム、」

じっと見つめられて、なんだかわたしは気恥ずかしかった。
だって、寝間着のままだし、こんな風に見られることってあまりなかったし。

【+  】ゞ゚)「無事ならいいんだ」

そう言って、オサムはベッドから離れた。

【+  】ゞ゚)「おい、くるうの枷の鍵は?」

(;l v l) 「素直に言うとでも?」

【+  】ゞ゚)「そうしたらお前を殺すまでだ」

从'ー';从「やめて、宗男にひどいことしないで。鍵ならわたしが持っていますから、だからくるうさんの髪を切らせてください」

323 名前:◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 14:25:57 ID:jKCCduck0
【+  】ゞ゚)「断る。人をさらったうえにあんな異形をぶつけておいて、そんなことを言うのは図々しいにもほどがある」

沈黙。
返す言葉がないらしい。
でもオサムの言ったことは、ごもっともだった。

川 ゚ 々゚)(もし頼まれたとしても、切らせないけど)

かちゃかちゃという音とともに、枷が外される。
久々に自由になった気がした。

【+  】ゞ゚)「立てるか?」

川 ゚ 々゚)「うん」

ふと。
巫女さんと宗男さんの様子が気になって、わたしはそちらを見た。

从; ー 从「どうしよう、言いつけが守れなかったら神さまに見捨てられてしまうわ」

(; v ) 「巫女さま、」

从; ー 从「これからどうしていけばいいの……」

川 ゚ 々゚)「…………」

矢で手を射抜かれたことなんて、彼らには些細な問題だったらしい。
異様な光景に変わりはないけれど。

【+  】ゞ゚)「行こう、くるう」

川 ゚ 々゚)「……うん」

324 名前:◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 14:27:55 ID:jKCCduck0
無事にオサムさんたちと合流することができた私たちは、さっさとこの国から脱出することにした。

川 ゚ 々゚)「よかった、デレが着替え持ってきてくれて」

こんなところ、一刻も早く出ていきたいわ、なんて笑いながらくるうは言うけれど。
その目が笑っていないのは誰の目にも明らかであった。

('A`)「扉、開けるぞー」

ζ(゚ー゚*ζ「うん」

緑青がかった扉が開かれる。

ζ(゚ー゚*ζ「…………」

初めて人を手をかけた。
あれは怪物であったけれど、だけど。

ζ(゚―゚*ζ(でも、たしかに人だった)

あの肉の感触は忘れてはならない。


――第十一階層「信心深い国」 了


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