塔と民話のサーガのようです


353 名前:◆R6iwzrfs6k:2013/03/04(月) 01:53:32 ID:Qi6qAOSA0



その娘の行方を、わたし以外に誰も知りません。




――最上階「神さまに愛された娘」

354 名前:◆R6iwzrfs6k:2013/03/04(月) 01:54:29 ID:Qi6qAOSA0
扉の先には、真っ白な螺旋階段がひとつ。

ζ(゚ー゚*ζ「国じゃ、ない?」

('A`)「みたいだな」

【+  】ゞ゚)「随分高さがありますね」

川 >々<)「目がぐるぐるするー」

階段の上のほうを覗きこみながら、オサムさんとくるうが言った。

ζ(゚ー゚*ζ(こんなの初めてだ)

国がないなら、この先にはなにがあるのだろう?
好奇心と不安が胸でくすぶる。

ζ(゚ー゚*ζ「……行こう」

('A`)「おう」

川 ゚ 々゚)「目回したら助けてねーオサム」

【+  】ゞ゚)「はいはい」


足をかける。
ひんやりとした冷たい音。
石で出来ているらしい。
後がつっかえないようにするためにも、私は早足で階段をのぼった。

ぐるぐる、ぐるぐる。
どんどん地上から遠ざかる。

ぐるぐる、ぐるぐる。
息があがっても、体だけがひたすら動いて。

ぐるぐる、ぐるぐる。
この先に進まなくてはいけないと、何故か強く思って。

355 名前:◆R6iwzrfs6k:2013/03/04(月) 01:55:17 ID:Qi6qAOSA0
ぐるぐる、ぐるぐる。

lw   _ ノv

唐突に、夢を思い出した。
お勤めに行く前に見た、真っ白な女の子の夢を。

ζ(゚ー゚*ζ(彼女は、なにを伝えようとしたの?)

ぐるぐる、ぐるぐる、ぐるぐる…………。

ぐるぐる、ぐるぐる、ぐる…………。

ぐるぐる、ぐるぐる、………………。

ぐるぐる、ぐる……、………………。

ぐるぐる、…………、………………。

ぐる……、…………、………………。

…………、…………、…………。

…………、…………、……。

…………、…………。

…………、……。

…………。

……。



356 名前:◆R6iwzrfs6k:2013/03/04(月) 01:57:02 ID:Qi6qAOSA0
どのくらいのぼったのかわからない。
気づけば、螺旋の終わりがそこにあった。

そこもやはり真っ白な部屋で、

ζ(゚ー゚*ζ「!」

lw´‐ _‐ノv

赤や橙、紫色の、紙のように薄い花弁が散りばめられた真っ白な寝台の上に、赤黒い髪の女の子が眠っていた。
それが夢に出てきた彼女だとなぜか確信した。

ζ(゚ー゚*ζ「なんで……」

無意識のうちにそう呟いて、もつれる足を叱咤しながら寝台に近付いた。

(;'A`)「デレ、どうしたんだ?」

ζ(゚ー゚*ζ「この子、…………」

なんて説明すればいい?
会ったのはこれが初めてだけど、夢に出てきたことがあるのだと?
でも、それってなんだか、変じゃない?

ζ(゚ー゚*ζ「……なんでもない」

そう返して、私は彼女を揺り起こそうとした時だった。

357 名前:◆R6iwzrfs6k:2013/03/04(月) 01:59:08 ID:Qi6qAOSA0
ノリ, ;^ー^)li「ああっ!」

いつのまにか彼女の近くに、人がいた。
五芒星の髪飾りを二つつけた、美しい金髪の女の人だった。

ノリ, ^ー^)li「起こさないであげて」

私の手を、やんわりと握りしめながらその人は言った。

ζ(゚ー゚*ζ「あなたは……?」

ノリ, ^ー^)li「わたしはジャンヌ。シュールの世話をしています」

川 ゚ 々゚)「しゅーる?」

('A`)「そこで寝てる人のことか?」

ドクオの言葉に、ジャンヌさんはうなずいた。

ノリ, ^ー^)li「あなた達は……この塔がどうして出来たのかを調べに来たのでしょう?」

ζ(゚ー゚*ζ「!」

【+  】ゞ゚)「何故それを?」

ノリ, ^ー^)li「今までにも二回、あなた達のような人がここに来たの。何回か説明はしたのだけどねえ」

ζ(゚ー゚*ζ「…………」

私は、言い様のない不信感に襲われた。
目の前にいるこの人が、なんとなく苦手で。

ζ(゚ー゚*ζ(でもみんなはそんなことないみたい)

だから私は平静を装って、ジャンヌさんに聞いた。

ζ(゚ー゚*ζ「では、教えてください。なぜ塔が出来たのですか?」

ノリ, ^ー^)li「……長い話になるわねぇ。今となっては遠い昔の話になるわ」

懐かしむように、彼女は語りだした。

358 名前:◆R6iwzrfs6k:2013/03/04(月) 02:00:41 ID:Qi6qAOSA0
塔が出来る前、ここは広大な森だったわ。
森の外は山や村があって、もっと先には大きな都市があったの。
わたしはもともと小さな村でまじないごとをしている魔女だった。
まじないといっても大したことはないのよ?
病気や怪我の治りを早くしたり、かわいい女の子達の恋愛成就を願ったりするような、ちっぽけなもの。
わたしは、他人のささやかな幸せのために尽力をつくしていた。

けれども、その異端の力が普通であったのはその村だけのようだったわ。
都市からね、たくさんの人が来たの。
魔女を狩る自称正義の騎士団が。
彼らはこう主張してきた。
人の運命を決めているのは神であり、病気や怪我をするのも必然だ。
死する者を引き留めたり、恋慕の想いをねじ曲げるその力は神に反するものである、と。
そしてその力を手に入れるために、夜魔と姦淫しているのだと。
もちろん、そんなことはしていなかったわ。
わたしは代々受け継がれた知識をもとにまじないごとをしていただけのこと。
わたしは人にとっていいと思われることをしたのだから、そんなことを言われてとても不快だったし悲しかった。
それは村の人たちにも同じだった。

359 名前:◆R6iwzrfs6k:2013/03/04(月) 02:02:39 ID:Qi6qAOSA0
村の人たちは、わたしを森に逃がしてくれた。
追っ手から酷い傷を負わされたけど、どうにか逃げおおせたわ。

なぜ、森に逃げたかというとね。
その森にはこんな言い伝えがあったの。

「神様に愛された娘がいて、娘もまた神様を愛していた。 だけど、娘はヒトだから、神様の住う蒼空には 行けなかった。 そこで娘は、神様に誓いを立てた。

「わたしはあなたのためにこの身をささげます。ヒトと交わることなく、千代の刻を過ごしたのなら、わたしはあなたにふさわしい、白くけがれのない女になるでしょう」

そうして娘は、誰もいない森で暮らし始めたという。」

これはけっこう有名な言い伝えでね。
都市のほうにもこれが伝えられていたものだから、騎士達は森に入ることはできなかった。
だってその娘の領域に入ることは、神の領域を侵すことと同義だったから。

わたしはとにかく逃げるのに必死で、気にしていられなかったのだけどね。
でも、別にまじないごとで人を殺したわけではないし、悪いことはしていないはずだから、中に入ってもいいだろうと思っていたの。

361 名前:◆R6iwzrfs6k:2013/03/04(月) 02:04:23 ID:Qi6qAOSA0
ノリ,;^ー^)li(ここまでくれば平気かしら)

出血している左腕を庇いながら、わたしはひたすら歩き続けた。
真夜中に村を飛び出したというのに、いつのまにか空は白んでいました。

ノリ, ^ー^)li(逃げたはいいけど、この先どうしましょう)

そう悩みながら、歩いていた時でした。

ノリ, ^ー^)li「!!」

小屋が見えたのです。
こじんまりとした、本当に小さな家。
誰かいるのかもしれない。
もしかしたら、言い伝えの彼女の家かもしれない。
人がいなくてもいい。
とにかく、体を休めることができるところへ。

わたしは、朦朧とする意識のなかで必死に歩みを進めました。
そして、素朴な木戸をやっとのことでノックして。
わたしは、眠ってしまいました。

362 名前:◆R6iwzrfs6k:2013/03/04(月) 02:06:55 ID:Qi6qAOSA0
気付くと、わたしはベッドに寝かされていました。
左腕の傷には、布が巻いてありました。

ノリ, ^ー^)li(ここは、)

lw´‐ _‐ノv「気がつきました?」

ノリ, ^ー^)li「!」

覗きこんできたその人は、とても真っ白な女の子でした。
髪も睫毛も肌も、なにもかもが真っ白で。
まるで色を落としてしまったかのようでした。

lw´‐ _‐ノv「ヒトが来るなんて久々」

そんなことを呟きながら、彼女はわたしに野草のお茶をくれました。
そして、森の外でなにがあったのかを聞かれたので説明しました。

lw´‐ _‐ノv「魔女狩りをねぇ……」

ノリ,;^ー^)li「わたしの村だけではないそうですが……」

lw´‐ _‐ノv「……ヒトをまとめるには、一定数の悪者が必要だし、他人を食い潰して幸せを得る生き物だから」

ノリ, ^ー^)li「…………」

lw´‐ _‐ノv「だからといって、あなたが捕まる理由にはならないけれど」

やんわりと微笑みながら、彼女は一本のナイフを取り出しました。
そのナイフを自分の腕にあてがって、すっと引きました。

ノリ,;^ー^)li「え、」

その傷口からこぼれる液体は赤ではなく、白でした。
それどころか、肉すらも色がなくて。

ノリ,;^ー^)li「…………」

lw´‐ _‐ノv「正義の騎士団様は、私を見たらなんて言うのでしょうね」

魔女と呼ばれたヒトよりも、神に愛された私のほうが、よほど異端であるでしょうに、と。
そう言っていたのを、わたしはよく覚えています。

363 名前:◆R6iwzrfs6k:2013/03/04(月) 02:08:08 ID:Qi6qAOSA0
シュールに助けられたその日から、わたしは彼女の家に住むこととなりました。
でも、はっきりと口で「一緒に住みましょう」と言ったわけではありません。
なしくずしに暮らして、ぼんやりと時間を共有することが多かったような気がします。
彼女とはよくおしゃべりをしていました。
野草の話であったり、まじないの話であったり、わたしの幼少期の話であったり。
彼女は逆に、あまり自分のことを話したがりませんでした。
でも、よくこう言っていました。

lw´‐ _‐ノv「もうすぐ私は神様のもとへ行くでしょう。そうしたら、この家はジャンヌのものよ」

だけどわたしは、家なんかどうでもよかったのです。
ただ、彼女の友達でありたかったのです。


ある日のことでした。
わたしはその日、シュールとお茶をするために野草を摘みに外に出掛けました。
けれどもなかなか目当てのものが見つからなかったものですから、わたしはずいぶん遠くまで探しに行きました。
帰ってきた頃には日が暮れようとしていました。

364 名前:◆R6iwzrfs6k:2013/03/04(月) 02:10:15 ID:Qi6qAOSA0
ノリ, ^ー^)li「ただいま、シュー」

……部屋のなかは、めちゃくちゃでありました。
嫌な予感がします。
わたしはシューを探しました。


lw  _ ノv

彼女は、寝室の隅で体を抱きかかえるように座っていました。
体を覆っているシーツには、真っ赤な血がついていました。


ノリ, ゚―゚)li「……しゅー、?」

lw´‐ _‐ノv「……やられちゃった」

ノリ, ゚―゚)li「え?」

lw´‐ _‐ノv「さっき、たくさん男のヒトが来て、魔女だといわれたの。魔女を匿った仲間だと」

ノリ, ゚―゚)li「…………」

lw  _ ノv「よごれちゃった。かみさまに、あえないよ」

申し訳なさと後悔と怒りが混じりあいます。
なんて、卑劣で、自分勝手なのでしょう。

だから、わたしは気付かなかったのです。

lw´‐ _‐ノv「ごめんね、ジャンヌ」

そう言って、彼女が己の舌を噛みきったことに。

ノリ,;゚―゚)li「シュー!!」

口からだらだらと真っ赤な血が垂れます。
だけどどうにもならなかったのです。
彼女は神のもとへ昇ろうとしていました。
けれども、汚れてしまった彼女を神は受け入れてくれませんでした。

365 名前:◆R6iwzrfs6k:2013/03/04(月) 02:12:01 ID:Qi6qAOSA0
そのあとの記憶は、あやふやです。
ぐらりと地面が激しく揺れて、あまりにも怖かったものですから、わたしはシュールの亡骸を抱き締めていました。

窓の外を覗くと、森や村を巻き込んで、小屋がどんどん高くなるのがわかりました。
そのうち小屋も形を変えて、色を失いました。

lw  _ ノv「……………………ぁ、」

たった一言、彼女が言葉を発しました。

ノリ, ゚―゚)li「シュー……?」

名前を呼んだその瞬間でした。

lw  _ ノv「ぁあああぁぁあぁぁあああ!!!!」

彼女は、悟ってしまったのです。
神に拒絶されたのだと。

それから気絶するように眠ってしまいました。
それ以来起きることはありません。


汚れた魂を彼女の体に戻すために、彼女は自分の魂を追いかけて、その代償として世界は壊れてしまいました。
この塔は、彼女の体そのもので、たくさんの夢を見ています。
その夢のせいであなた達は死にかけたこともあるでしょう。
あなた達の先祖を殺した夢もあるでしょう。
けれどもどうか、彼女を怒らないでください。
シュールが世界を滅ぼしてしまったのは、もとはといえば騎士団から逃げてしまったわたしのせいです。
それに、彼女はとても優しいのです。
ほんのすこしだけ生き残った人達のために、一番下の階はとても住み心地のいい世界にしたのですから。
そこにいれば、あなた達はそんな目に合うこともなかったのです。

366 名前:◆R6iwzrfs6k:2013/03/04(月) 02:13:39 ID:Qi6qAOSA0
ζ(゚―゚*ζ「……じゃあ、神様のもとに、彼女は、シュールさんは、いけなかったの……?」

やっとのことで言えた質問に、ジャンヌさんはうなずいた。

ノリ, ^ー^)li「その娘の行方を、わたし以外に誰も知りません。民話の結末なんて、そんなものです」

(;'A`)「というか、どういうことなんだ?俺たちが住んでた世界は偽物だっていうのか?」

ノリ, ^ー^)li「そんなことはありませんよ。ただシューの手によって、少し作り替えられてしまっただけです」

【+  】ゞ゚)「……今まで旅してきて、俺たちが見たものはすべて彼女の夢なのか?」

ノリ, ^ー^)li「ええ、一番下の階以外はすべて夢です」

川 ゚ 々゚)「……変な夢ばっかりだったよね」

ノリ, ^ー^)li「夢に整合性を求めるのですか?」

川 ゚ 々゚)「…………」

ノリ, ^ー^)li「夢だからこそ、おかしなことがたくさん起きるのでは?」

ζ(゚ー゚*ζ(夢だった、)

なちさんも、ディアッドさんも、キャノさんも、パミィさんも、オワタくんも、二人ぼっちの小人も、ワカさんも、ビロードちゃんも、巫女さんも。


なにもかもが、夢。

367 名前:◆R6iwzrfs6k:2013/03/04(月) 02:14:50 ID:Qi6qAOSA0
ノリ, ^ー^)li「どうか、彼女とわたしのことはそっとしてくださいな。シューが目覚めてしまったら、この塔はどうなるかわかりません」

ζ(゚ー゚*ζ「…………」

ノリ, ^ー^)li「もしかしたら、あなた達の故郷を潰してしまうかもしれません。彼女の心はとても不安定ですから」

ζ(゚ー゚*ζ「……わかりました」

そう言うと、ジャンヌさんは優しい笑みを浮かべながら、ゆっくりお辞儀をした。

ノリ, ^ー^)li「わかっていただけてありがたいわ」

ζ(゚ー゚*ζ「でも、その前に一つ教えてください」

ノリ, ^ー^)li「なにかしら?」

ζ(゚ー゚*ζ「私には遠く離れた双子の姉へ手紙を届けることができます。それをバタフライエフェクトと呼んでいるのですが、どうしてこんな能力があるのかわかりません」

ノリ, ^ー^)li「……どうしてそうなったのはわからないわ。わたしにもわからないことはたくさんあるから」

ζ(゚ー゚*ζ「そう、ですか」

期待していなかったとはいえ、少し残念であった。

ζ(゚ー゚*ζ「……故郷に帰ったら、この話をしても?」

ノリ, ^ー^)li「ええ、構いません」

そう言いながら彼女はゆるやかに歩き出した。
行く先にはひとつ、ドアがあった。

ノリ, ^ー^)li「どうぞこちらからお帰りください。ただ、この塔のなかのことですから、何が起きるかわかりません。十分お気を付けて」

ζ(゚ー゚*ζ「…………」

無限に続くような真っ白な廊下。
私は、一歩踏み出した。

368 名前:◆R6iwzrfs6k:2013/03/04(月) 02:18:34 ID:Qi6qAOSA0
こつ、こつ、こつ、と音が響く。
誰も、口をきかない。

今まで会った人が、すべて存在しなかったなんて。

('A`)「……俺たちは、本当に存在してるのかな」

【+  】ゞ゚)「……さてね」

川 ゚ 々゚)「…………」

こつこつこつ。

こつこつこつ。

どれくらい歩いたのかはわからない。
けれども、廊下に終わりが見えた。

川 ゚ 々゚)「またドアー?」

もう飽きた、というような調子でくるうが言った。

ζ(゚ー゚*ζ「…………」

私は、まったく別のことを考えていた。

(´レ_` )

夢であるならば。
父にそっくりなあの人は?
旅の途中で何度も出会って、助けられて。

ζ(゚ー゚*ζ「…………」

('A`)「デレ、おい」

ζ(゚ー゚*ζ「あ……。ごめん、どうしたの?」

369 名前:◆R6iwzrfs6k:2013/03/04(月) 02:20:38 ID:Qi6qAOSA0
('A`)「いや、ドア開けたんだけどさ」

【+  】ゞ゚)「あんまりにも暗すぎて、くるうが怖がっているんだ」

オサムさんのいう通りだった。
ドアの先は常闇の国のような薄暗がりがずぅっと続いているようだった。

川 ゚ 々゚)「なんか、すごくやだ……」

ζ(゚ー゚*ζ「…………」

困ったことになった。
この先を進まなければ帰れないし、だけどくるうを置いていくわけにもいかないし。

ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ、私が先に進んで様子見するよ!」

('A`)「それは危ないだろ!」

ζ(゚ー゚*ζ「大丈夫だってば、少し進んで戻ってくればいいでしょ?」

川 ゚ 々゚)「やだ、デレいかないで」

('A`)「……俺も行く」

【+  】ゞ゚)「そのほうがいいかと」

ζ(゚ー゚*ζ「んー……」

結局、話し合いをした結果、私とドクオが試しに百歩進んでみることとなった。
なにかあっても走ればなんとか引き返せる距離だろうし、叫べばなんとか声も聞こえるだろうという理由だった。

ζ(゚ー゚*ζ「くるうはオサムさんと待っててね」

川 ゚ 々゚)「…………」

くるうは、不安そうに私を見つめた。
なんだか本当に子供みたいだった。

ζ(゚ー゚*ζ「大丈夫だって」

そうして、私とドクオは暗闇へと足を踏み入れた。
私が先頭で、後ろはドクオに任せることにした。

370 名前:◆R6iwzrfs6k:2013/03/04(月) 02:23:43 ID:Qi6qAOSA0
一歩、二歩、三歩。

('A`)「真っ暗だな」

ζ(゚ー゚*ζ「ね」

三十五歩、三十六歩、三十七歩。


ζ(゚ー゚*ζ「そういえば常闇の国で、弟者さんに会った」

('A`)「それも、夢なのかな」

ζ(゚ー゚*ζ「そうかもね」

五十八歩、五十九歩、六十歩。

ζ(゚ー゚*ζ「でも、そうだとおもいたくないなぁ」

('A`)「……そう、だよな。ごめん」

ζ(゚ー゚*ζ「んーん、いいよ。大丈夫」

八十三歩、八十四歩、八十五歩。

('A`)「なぁ、デレ」

ζ(゚ー゚*ζ「なに?」

('A`)「……好きだよ」

ζ(゚ー゚*ζ「…………」

371 名前:◆R6iwzrfs6k:2013/03/04(月) 02:25:46 ID:Qi6qAOSA0
九十七歩、九十八歩、九十九歩。

ζ(゚ー゚*ζ「わたしには、わかんな……っ!?」

がくん。
つんのめる体。
足場が、ない。

ζ( ― *ζ(なんで!?)

とっさに叫ぶ。

ζ( ― *ζ「来ちゃダメ!!!」

「デレ!?」

ドクオの焦った声。
ああ、でもそれは遠いところから聞こえたから。
落ちずに済んだんだ。

ζ( ー *ζ(よかった、のかな)

みんなを守れた。
私が落ちただけで済んだ。
ああでも、このあとどうなるんだろう。
もしも死んでしまったら。
誰が父に兄者さんの言葉を伝えるの?




――最上階「神さまに愛された娘」 了


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