- 40 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/03(水) 13:29:30 ID:SFfzYyVoO
- あるところに、魔法使いの国がありました。
みんな優れた魔法を使えるのですが、血の気が多くて、いつも喧嘩をしてばかりでした。
神様は何度も仲良くするように言いましたが、喧嘩はますますひどくなるばかり。
ですから神様は怒って、彼らから優れた魔法を奪って、代わりの魔法を与えました。
それから、魔法使いは喧嘩をしなくなりました。
というのも、与えられた魔法は全てくだらないものだったから、喧嘩のしようがなかったのです。
ゆえに大国は小さな国になり、人々は緩やかに衰退していきました。
――第三階層「くだらない国」
- 41 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/03(水) 13:30:53 ID:SFfzYyVoO
- 次にたどり着いたところは、森でした。
ζ(゚ー゚;ζ「ここどこー」
鬱蒼としげる木々は、人を不安にさせるものである。
まして、さっきまではきちんとした町だったから尚更だ。
【+ 】ゞ゚)「さてね」
そう言いながら、オサムさんはさっさと歩いていってしまいます。
(;'A`)「道、わかるんすか?」
【+ 】ゞ゚)「草をよく見るんだ。少しだけ減っている部分があるだろう?」
川 ゚ 々゚)「ほんとだー」
【+ 】ゞ゚)「つまりわずかだがここを歩いた人がいるんだ」
川*゚ 々゚)「オサムすごぉーい」
きゃっきゃとくるうは喜んだ。
それからまもなく、森を抜けて茶色い道に出た。
わりと頻繁に使われていることは明らかであった。
(;'A`)「よかった…」
ζ(゚ー゚*ζ「ありがとうございます」
お礼を言うと、オサムさんは、
【+ 】ゞ゚)「野垂れ死ぬにはまだ早すぎる」
と言った。
だけど私は見てしまった。
オサムさんの顔色は変わっていなかったけど、耳が赤くなっていることを。
ζ(゚ー゚*ζ(意外と恥ずかしがり屋さんなのかな?)
雰囲気と言葉遣いがあれなだけで、本当は親切な人なのかもしれない。
- 42 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/03(水) 13:32:34 ID:SFfzYyVoO
- 川*゚ 々゚)「見てー!」
そう言うくるうの視線の先には、小さな白壁の家がてんてんと建っていた。
('A`)「……村?」
ζ(゚ー゚*ζ「うーん…」
国にしては小さすぎるような気がした。
だけど、私の国のことを考えたらどっこいどっこいかもしれない。
あそこだって、畑と牛と豚ばっかりだったし。
ζ(゚ー゚*ζ「とりあえず、行ってみましょう」
- 43 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/03(水) 13:34:21 ID:SFfzYyVoO
- 突然やってきた余所者にも関わらず、住人達は暖かく迎えてくれた。
ヽ`・−・)「ようこそ、くだらない国へ」
ζ(゚ー゚*ζ「くだらない国?」
ヽ`・−・)「はい、くだらない国です」
ζ(゚ー゚*ζ「……はぁ、」
ヽ`・−・)「申し遅れました、私はこの小さな国を治めているディアッドという者です」
ζ(゚ー゚*ζ「私はデレ、こっちがドクオ。それから……」
川*゚ 々゚)「くるうとオサムだよー!」
ヽ`・−・)「以後お見知りおきを」
さっそく私は気になったことをディアッドさんに聞いた。
ζ(゚ー゚*ζ「ところでくだらない国というのは……」
ヽ`・−・)「その話はとても長くなりますが、よろしいでしょうか?」
その言葉にうなずくと、ディアッドさんは自分の住まいへ案内してくれた。
彼の家は他の住人達と同じように、白い壁に煉瓦を乗せてできた素朴な家だった。
ζ(゚ー゚*ζ(落ち着くなぁ)
やっぱり狭いところは落ち着く。貧乏性かもしれないけど。
- 44 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/03(水) 13:35:30 ID:SFfzYyVoO
- ヽ`・−・)「まず由来を話すには、昔話をしなければいけません」
私は話を覚える準備を整えた。
ちなみに、ドクオとくるうは私の隣のソファで、ディアッドさんの奥さんが出したお茶とクッキーに夢中になっている。
オサムさんはいつも通り、物静かにしている。
ヽ`・−・)「その昔、私達の住む国は魔法使いの国と呼ばれていました。みんな優れた魔法を使えたのですが、彼らはプライドが高く血の気が多かったため、しょっちゅう戦ってばかりいたそうなのです」
ζ(゚ー゚*ζ「魔法、ですか」
ヽ`・−・)「ええ、今でも一応使えますが…まぁその話は追々」
お茶を一口飲んで、ディアッドさんは続けた。
ヽ`・−・)「そこで神様は何度も魔法使い達に仲良くするように言いましたが、喧嘩はますますひどくなるばかり」
ζ(゚ー゚*ζ(神様、)
また、神様だ。
ヽ`・−・)「なので神様は怒って、彼らから優れた魔法を奪って、代わりの魔法を与えたそうです。それから、喧嘩はなくなりました」
- 45 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/03(水) 13:37:39 ID:SFfzYyVoO
- そう言いながら、彼は右手を差し出した。
なんとなくそれを見つめていたら、ポン!という音と共にクッキーが一枚現われた。
ζ(゚ー゚*ζ「へ、」
思わず間抜けな声が出る。
そのクッキーを、彼はもしゃもしゃと食べた。
ごくんとそれを飲み込んで、話は再開した。
ヽ`・−・)「このように、与えられた魔法は全てくだらないものだったのです」
ζ(゚ー゚*ζ「…なんだか、とっても面白い魔法ですね」
ヽ`・−・)「そうでしょうとも。これで喧嘩できる人はとても稀有な存在ですよ」
ζ(゚ー゚*ζ「あはは…」
川*゚ 々゚)「いいなー」
くるうのつぶやきに、ディアッドさんは穏やかに笑った。
ヽ`・−・)「ですから大国は小さな国になり、人々は緩やかに衰退して……今となっては村のような規模に落ち着いたのです」
- 46 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/03(水) 13:40:28 ID:SFfzYyVoO
- ('A`)「他の人は、どんな魔法が使えるんだ?」
ヽ`・−・)「そうですねぇ。私の妻は風呂場のカビを徹底的に除去できる魔法が使えますよ」
ζ(゚ー゚;ζ(微妙に便利だ)
ヽ`・−・)「それから長老は、足の小指をタンスの角で強打した時と同等の激痛を相手に与える魔法が使えます」
ζ(゚ー゚;ζ「うわぁ」
(;'A`)「痛そうだ…」
川 > 々<)「やだー」
,_
【+ 】ゞ゚)「…………」
みんな、あの痛みを想像して顔をしかめていた。
よく見ると、オサムさんも眉間に皺を寄せていた。
ヽ`・−・)「痛いには痛いですが、あれでは人を殺せませんからね」
ζ(゚ー゚;ζ「まぁそうだけど…」
ヽ`・−・)「昔の魔法は、派手に炎の塊を出したり雷落としたりしてたそうですから」
買ト(゚ー゚;ζ「怖い怖い」
ヽ`・−・)「それに比べたら全然ですよ」
- 47 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/03(水) 13:42:11 ID:SFfzYyVoO
- くだらない国は、とても小さな国で、住人も少なかった。
民話の蒐集も終わってしまったし、日はまたまだ高かったから、私達はすぐ出発することにした。
ヽ`・−・)「何もないところですみませんね」
ζ(゚ー゚*ζ「いえ、貴重なお話ありがとうございます。」
ヽ`・−・)「とんでもない!久々に旅の方が来て楽しかったですよ」
【+ 】ゞ゚)「…その前は、どんな旅人が来たんだ?」
今まで黙っていたオサムさんが口を開いた。
ζ(゚ー゚*ζ「デレさんくらいの年の男の子でしたよ。私がまだ子供だった頃の話なのであやふやですが」
【+ 】ゞ゚)「名前は?」
ヽ;`・−・)「名前?名前はー…うーん…忘れてしまいました」
【+ 】ゞ゚)「そうか」
ヽ`・−・)「…ああ、でもとても目が特徴的でした。糸目で目が垂れていた方でしたよ」
- 48 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/03(水) 13:44:04 ID:SFfzYyVoO
- もしかしたら、と一瞬考えた。
それは、父の双子の片割れ……弟者さんかもしれない、と。
だけど、ここに来たからといって、それは彼が生きている証明になるのだろうか?
ζ(゚ー゚*ζ(ならないよね)
そもそも、弟者さんからのバタフライエフェクトはもうとっくの昔になくなっているのだ。
生きているほうがむしろ奇跡。
ζ(゚ー゚*ζ(……というか生きてるとしたらお勤めサボってるだけじゃん!)
うぅ〜、と思わずうなりながら考えこむ。
川 ゚ 々゚)「デレが変になってるー」
ζ(-、-;ζ「いや、色々ね…」
ヽ;`・−・)「やはり休まれていったほうがいいのでは…」
+ζ(゚ー゚;ζ「いえ、お気遣いなく!」
ディアッドさんにそう言って、私は扉を開いた。
ζ(゚ー゚*ζ「さー次もガンガン行くわよー!!」
('A`)「……デレが壊れた」
【+ 】ゞ゚)「壊れることもあるんだな」
川*゚ 々゚)「多分もとに戻るよー」
わははは!と笑いながら妙なテンションで、私は扉を通っていった。
第三階層「くだらない国」 了
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