塔と民話のサーガのようです

56 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/03(水) 16:26:05 ID:SFfzYyVoO
何も取り柄がなくっても、笑顔は誰にでもできる。
そう、笑顔こそ神様が与えてくださった宝。
どんなにつらくても、笑いさえあればそれでよし。
笑う門には福来る。
笑えないのなら……。


――第四階層「笑顔の国」

57 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/03(水) 16:27:11 ID:SFfzYyVoO
気がついたら、私は手足を縛られて床に転がされていた。

ζ(゚ー゚*ζ「……あれ…?」

なんとか首を動かすと、気絶したオサムさんの姿も見えた。

ζ(゚ー゚;ζ(ドクオは?くるうは…!?)

体をよじってなんとか見渡そうとする私の耳に、キンキンした声が聞こえてきた。

「レッディースアーンド!ゼェントルムェン!!!長らくお待たせしました!今宵皆様のお目にかかりまするは新コンビ「ドックンandクルー!」サイッコーにホットでクールな漫才を見せてくれるよね!?ねェ!?」

キャンキャンと響く甲高い声。
ああ、そうだ、思い出した。

58 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/03(水) 16:29:34 ID:SFfzYyVoO
ζ( ー *ζ「…………」

【+  】ゞ゚)「……彼女、大丈夫か?」

川 ゚ 々゚)「へーきへーき、そのうち元気出るよ」

くだらない国を出た後、私はものすごく落ち込んでいた。
というのも、あの妙なテンションでいたのが恥ずかしくなってしまったのだ。

ζ( ー *ζ(なんであんなことしちゃったのかなぁ)

自己嫌悪に女子としての恥じらい……。
ああ、女の子失格だ…。

ζ( ー *ζ(わはははってなによ、わはははって……)

('A`)「あー…あんまりきにすんな、な?」

ζ( ー *ζ「むり」

私は貝になりたい。


そんなテンションで歩いていたら、


(*+ロ+)「ハァーイ!おはようこんにちはこんばんはー!旅人さん?旅人さんだよねェ?」

('A`)「あ、ああ、まぁ、」

(*+ロ+)「ようこそようこそいらっしゃーい!私はキャノティート!キャノって呼ぉんで、ちょーんまげー!!」

キンキンする声で、彼女?は言った。
というのも、顔は白塗りで色んなメイクをしていたからだ。

('A`)「え、ええと俺はドクオ、そこにいるのがデレ」

川 ゚ 々゚)「わたしはくるう!それとこの人はオサムー」

(*+ロ+)「なるほどなるほど!ようこそ、笑いの国へ!」

('A`)「笑いの国?」

59 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/03(水) 16:31:25 ID:SFfzYyVoO
(*+ロ+)「そうとも!ここは愉快で奇怪で壮快な笑いの国!笑えるのならよっといで、笑えないなら出ていって!」

(;'∀`)「こ、こうか?」

(*+ロ+)「そうそうお兄さんお上手ー!!パチパチ素敵ー!」

川*^ 々^)「にっこー」

(*+ロ+)「ああ、かわいらしい!やっぱり笑顔が一番!スマイリースタイリー!」

(*+ロ+)「ほらお嬢さんとお兄さんも」

ずいっと顔を近付けながら、キャノが喋る。
うるさい、耳障りだ。
      ,_
【+  】ゞ゚)「…………」

ほら、オサムさんも顔をしかめてる

ζ( ー *ζ「……うるさい、今そういう気分じゃないの」

(*+ロ+)「どーしてなして?笑いの国では笑わなきゃいけないんだよ?」

60 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/03(水) 16:32:53 ID:SFfzYyVoO
ζ( ー *ζ「あなたは落ち込んだりしないの?」

(*+ロ+)「どんなにつらくても、笑いさえあればそれでよし、何も取り柄がなくっても、笑顔は誰にでもできるもの」

すると、急に声を張り上げて叫んだ。

(*+ロ+)「そう、笑顔こそ神様が与えてくださった宝!!!笑う門には福来る!」


(*+ロ+)「笑えないのなら……」

パチン、とキャノが指を鳴らした瞬間だった。
今まで誰もいなかったのに、急に人が出て来たのだ。

川*` ゥ´)( ・`ー・´)( ^ー^)@*゚ヮ゚))

みんな、同じような笑みを貼り付けて。

(*+ロ+)「二人とも、死んじゃいなよ」

62 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/03(水) 16:34:26 ID:SFfzYyVoO
【+  】ゞ゚)「やれやれまったく…」

背後から、オサムさんの声が聞こえた。

ζ(゚ー゚;ζ「オサムさん!」

【+  】ゞ゚)「デレさんは無事か……くるうとドクオくんは?」

ζ(゚ー゚;ζ「それが…」


(*+ロ+)「ほらほらお二人さん遠慮しなーい!!!大事な仲間が待ってるんでしょう?笑顔すら浮かべられないクソみたいなゴミクズのお友達がさ!!」

('A`)「……クズでもクソでもないわ」

川#゚ 々゚)「………………」


【+  】ゞ゚)「……どうも、ここはステージかなにかの下みたいだね」

ζ(゚ー゚;ζ「ですね…」


川 ゚ 々゚)「ほんとにドクオと漫才したら、二人を助けてくれるんでしょうね?」

(*+ロ+)「お客がウケたらね〜☆」


ζ(゚ー゚*ζ(どういうことなの…)

【+  】ゞ゚)「……状況がさっぱりなんだが」

ζ(゚ー゚;ζ「私にも分からないわよ」

63 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/03(水) 16:36:49 ID:SFfzYyVoO
(;'A`)(やべー。というかくるうって苦手なんだよなぁ)

川 ゚ 々゚)(オサムのためオサムのためオサムのためオサムオサムオサムオサムオサムオサムオサムオサムオサムオサムオサムオサムオサムオサムオサムオサムオサムオサム)

(;'A`)(つーかこえええ!!!!)


川 ゚ 々゚)「ドクオ」

(;'A`)「はひっ!」

川 ゚ 々゚)「あなたがつっこみね」

(;'A`)「え?」


川 > 々<)「はいどーもー!みんなのアイドルくるうちゃんでーすっ」

(;'A`)(ええいやけくそっ!)

('A`)「いや初めて会ったのにアイドルもクソもないだろ」

川*` ゥ´)( ・`ー・´)( ^ー^)@*゚ヮ゚))「…………」

('A`)(す、すべったぁぁぁ!!!)

川 ゚ 々゚)「くるうの好物はータイノエです」

('A`)「タイノエってなに?」

川 ゚ 々゚)「知らないの?鯛の口に寄生してる動物」

(;'A`)そ

川 ゚ 々゚)「揚げるとパリパリしててシャコみたいな味。ノットガレージ」

(;'A`)「…………」

川 ゚ 々゚)「なんか突っ込めや」

(;'A`)(いや会場もドン引きだから)

64 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/03(水) 16:38:47 ID:SFfzYyVoO
川 ゚ 々゚)「ドクオの好きな物はー?」

('A`)「え、うーん…バナナヨーグルト?」

川 ゚ 々゚)「…卑猥だね」

(;'A`)「何を想像したの!?」

川 ゚ 々゚)「逆に聞くけどドクオは何想像したの?」

(;'A`)「質問を質問で返すなぁー!」

川 ゚ 々゚)「ほら早く言ってごらん?何が欲しいの?」

(;'A`)「話題すり変わってる!違う話になってる!」

川 ゚ 々゚)「大衆の目の前で無様におねだりしなさいな」

(;'A`)「17才とは思えない発言!これはひどい!」

('A`)(あ、でも地味に観客にウケてる…?)

川 ゚ 々゚)「ほらほらなにが欲しいの?」

(;'A`)「何も欲しくないわっ」

川 ゚ 々゚)「そう」


(*+ロ+)(……あの子、何してるのかしら?)


川 ゚ 々゚)「でも私は欲しいものがあるわ」

('A`)「え?」

川* 々 )「さぁ、死にたくないなら伏せなさいな」

65 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/03(水) 16:41:19 ID:SFfzYyVoO
【+  】ゞ゚)「っ!?」

ζ(>ー<*ζ「きゃあっ!?」

爆発音。それから、土埃。

「おま…何か手立てがあるんだったら早く言ってくれよ!!!」

「敵を騙すにはまず味方からって言わない?」

「まぁ、そうだけど…」

「それにこういう魔法使うのは初めてだったから時間かかったのよー」

声が、近付いてくる。
さっきまでステージで馬鹿騒ぎしていた、声。

川 ゚ 々゚)「これがホントの楽屋落ち、なーんてね」

('A`)「デレ、大丈夫か」

川*> 々<)「オサム〜!会いたかった!!!」

【+  】ゞ゚)「…さっきの音は?一体何したんだ?」

川 ゚ 々゚)「たまたまポケットに入ってた小さい空き瓶に、魔力を最大限まで込めて暴発」

買ト(゚ー゚*ζ「やることがむちゃくちゃすぎる!」

66 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/03(水) 16:42:35 ID:SFfzYyVoO
川*゚ 々゚)「んふふー、皆殺しー」

('A`)「そんなことより早く脱出しようぜ!こんないかれた国に長居したらどうなるかわかったもんじゃない」

そう言いながら、ドクオは私を拘束していた縄をほどいてくれた。
オサムさんも縄がほどけたようだ。

('A`)「さっさと荷物を持って出て行こう」

ζ(゚ー゚*ζ「うん!」

荷物をまとめて、急いで外へ。
何人か住人に狙われたものの、私のフレイルでそれらを蹴散らした。

ζ(゚ー゚#ζ「もう二度と行きたくないわ!」

そう叫びながら、私達は扉をくぐって急いで閉めた。

それでも、あの金切声が聞こえてくるような気がして恐ろしかった。


第四階層「笑顔の国」 了


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