- 88 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/05(金) 00:14:18 ID:rtFbbAeUO
- あるところに、なくしものを見つけてくれる神様のようなヒトがおりました。
彼は、どんなものでも見つけることができました。
「お金をなくしたんだ」
「東の木の根にあるよ」
「靴下をなくしてしまったの」
「西の石の下にあるよ」
「玩具をなくしてしまったの」
「北の井戸の底にあるよ」
「チョコレートがなくなってしまったの」
「南の食いしん坊のお腹の中にあるよ」
けれどもある日、誰かがこう言いました。
「きっと奴が隠しているのさ」
その言葉を信じて、みんな彼を無視するようになりました。
すると彼は悲しくなって。それから怒りながらこう言いました。
「みんながそう信じるなら、全部私が隠してしまうよ」
それからというものの、この国では、なくしたものは一度たりとも絶対に、見つかることはありませんでした。
――第六階層「見つからない国」に伝わる民話
- 89 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/05(金) 00:15:34 ID:rtFbbAeUO
- 森の中で、くるう達は野宿をしようとしていた。
デレは枯れ葉を集めたベッドの上で眠っていた。
その隣で、看病を続けていたくるうも寝てしまっていた。
火の番をしているドクオとオサムは、黙ってあたりの様子を伺っていた。
('A`)「……デレ、大丈夫かな」
不安そうなその声に、オサムが答える。
【+ 】ゞ゚)「大丈夫だろう。しかし、少し配慮が足りなかったのは謝るべきだったな」
(;'A`)「いや、あれは仕方なかった……と思います、はい」
あれ、というのはオサムが撃ち殺した病の国の住人のことだ。
間近で人が死ぬところを見てしまったデレは、放心状態になり、オサムに抱えられて国を出たのだ。
【+ 】ゞ゚)「…考えてみれば、まだ17だからな」
くるうも同い年だが、彼女は職業柄、血や死体をしょっちゅう見ていたため動じることはなかった。
【+ 】ゞ゚)「ところでドクオくんは平気なのかね?」
('A`)「鶏とか鹿とかバラしてたんで…。さすがに人は初めてだけど」
【+ 】、ゞ゚)「……人を殺すのは、いけないことだよ」
(; A )「っ……」
ほんの少し口を吊り上げてオサムが言った。
- 90 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/05(金) 00:17:03 ID:rtFbbAeUO
- 笑っているつもりなのかもしれなかった。
しかし、ドクオにはそれが恐ろしいものに見えた。
(;'A`)「……そういえば、オサムさんはいくつなんですか?」
話題を変えようと、ドクオは口を開いた。
【+ 】ゞ゚)「うん、22才くらいかな。捨て子だったから、正確な年齢は分からないんだ」
(;'A`)「……すみません、」
【+ 】ゞ゚)「いや、気にしていないよ」
【+ 】ゞ゚)「ところで君は、この旅についてきてよかったと思っているかい?」
('A`)「……ええ」
【+ 】ゞ゚)「そうか」
オサムは、安心したように呟いた。
('A`)「オサムさんは?」
【+ 】ゞ゚)「……悪くないよ」
('A`)(悪くない、かぁ)
【+ 】ゞ゚)「だけど、国にいた時よりは居心地がいい」
('A`)「?」
【+ 】ゞ゚)「正直帰りたくないんだ」
('A`)「なんでですか?」
ドクオは聞いたが、オサムは何も答えなかった。
【+ 】ゞ゚)「そろそろ子供は寝なさい。あとは任せていいから」
('A`)「…………」
- 91 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/05(金) 00:18:18 ID:rtFbbAeUO
- 本当は理由を聞きたかった。
しかし、こうもあからさまにはぐらかされてしまうと、逆に聞けなかった。
('A`)(いつか、聞くことができるかな)
横たわりながら、そう思う。
それからまもなく、ドクオは寝てしまった。
- 92 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/05(金) 00:19:33 ID:rtFbbAeUO
- 日が昇った頃に、デレ達は歩き出した。
川 ゚ 々゚)「もう大丈夫?」
ζ(゚ー゚*ζ「うん、平気」
デレがうなずくと、くるうは笑った。
オサムは相変わらず無口だった。
ドクオはあたりをキョロキョロしていた時だった。
「おーい!」
と、背後から声がした。
デレ達は振り向く。
(´レ_` )「やぁ、君達も旅人かい?」
ζ(゚、゚*ζ(…父に似てる)
('A`)「ええ。もしかしてあなたも?」
(´レ_`*)「ああ、といってもこれから国へ帰るところだ」
ζ(゚ー゚*ζ「私はデレ、こっちがくるう、ドクオ、それからオサムさん」
(´レ_` )「俺は豸`y龜者」
ζ(゚ー゚;ζ「……え?」
(´レ_` )「ずっとずっと向こうにあるgっf眤d国の出身なんだけど…」
川 ゚ 々゚)「へぇ、そうなんだー」
【+ 】ゞ゚)「どうして旅に?」
(´レ_`;)「その国には語るにもおぞましい風習がありまして。それに嫌気がさしたのです」
川 ゚ 々゚)「顔が真っ青ー」
【+ 】ゞ゚)「大丈夫ですか?」
(´レ_`;)「ええ、なんとか」
(´レ_` )「そうだ、よかったら一緒に、この先にある見つからない国に行きませんか?」
('A`)「おお、いいね」
みんなはうなずきました。
五人はてくてくと見つからない国へ歩いていきました。
- 93 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/05(金) 00:21:18 ID:rtFbbAeUO
- ('A`)「ところで…見つからない国っていうのは?」
(´レ_` )「なくしたものが二度と見つからない国らしい。その昔には、なくしたものを必ず見つけてくれる神様のようなヒトがいたらしいけど」
川 ゚ 々゚)「なんでなくなっちゃうの?」
(´レ_` )「さぁ?気付いたらなくなってしまうのだとか」
【+ 】ゞ゚)「…困るな」
(´レ_` )「まぁね。でもその神様の話を聞いたら、ちょっと同情することもあって」
ζ(゚ー゚*ζ「神様の話?」
(´レ_` )「ん。その神様もといヒトが、なくしものを見つけられるのは、そいつが隠しているからだって噂が流れてさ」
ζ(゚ー゚*ζ「ああ…」
(´レ_` )「それで怒ってしまったのさ。そう思うのなら、俺はそうする、ってさ。それからだね」
川 ゚ 々゚)「…じゃあ、その神様みたいなヒトが、ものを隠しているの?」
(´レ_` )「じゃないかなぁ。……おっと、もうそろそろだ」
- 94 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/05(金) 00:23:32 ID:rtFbbAeUO
- 五人は、見つからない国に入りました。
すると赤ん坊を抱きかかえた女性が近付いてきました。
川д川「ようこそ、見つからない国へ」
( д )「あうーぅぅー」
川;д川「あ、ごめんなさいね。よーしよし」
川*゚ 々゚)「わー、かわいー!」
【+ 】ゞ゚)「…ふむ」
(´レ_` )「男の子ですか?」
川*д川「はい、かわいいでしょう?」
(* д )「ぅー、だぁ」
(*'A`)「かわいい…」
川*^々^)「癒されるねー」
ζ( ー *ζ(…………)
川д川「ところで旅人さん達はここに何をしに?」
(´レ_` )「俺は少し休んでいこうと思ってね。で、君達は?」
('A`)「デレ、どうする?」
ζ(゚、゚*ζ「ええと、」
川д川「……あれ?」
ふとみんなが気付くと、女性の腕から赤ん坊が消えていました。
川;д川「あれ…どこにいったのかな、ミーくん?」
川;゚ 々゚)「さっきまでいたのに…」
- 95 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/05(金) 00:25:20 ID:rtFbbAeUO
- ζ(゚ー゚;ζ(まさか、)
(´レ_` )「…なくした?」
川#д川「そんなわけない!ずっとずっと抱いていたもの!」
川#д川「ああ、そうか。あんた達が盗ったのねきっとそうだわ」
(;'A`)「ち、ちが…」
川#д川「返してよ!私の赤ちゃん!返して!」
女性は、デレにつかみ掛かってきました。
それをオサムが必死に止めました。
川;д;川「赤ちゃん、赤ちゃんがぁぁ…」
(´レ_` )「…どうか落ち着いて。一度村を探してみましょう」
川;д;川「でも、」
(´レ_` )「やるだけのことはやってみましょうよ」
そう言われて、みんなは手分けして国の中を探すことになりました。
オサムは東へ。
くるうは西へ。
ドクオは北へ。
豸`y龜者は南へ。
泣き続ける女性のそばに、デレは居続けることになりました。
- 96 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/05(金) 00:26:53 ID:rtFbbAeUO
- ζ(゚ー゚;ζ「……大丈夫ですか?」
川д川「……ごめんなさいね、さっきは」
ζ(゚ー゚*ζ「いえ、大丈夫です」
女性はいくぶんか落ち着いてきました。
けれどもやっぱり、そわそわとしていて落ち着きがありません。
川д川「…人が、」
ζ(゚ー゚*ζ「?」
川д川「人が、いなくなるのは初めてなんです」
ζ(゚ー゚*ζ「……」
川д川「今までは、胡椒の瓶とか、シーツとか、なくなっても困らないものばかりだったのに」
ζ(゚ー゚*ζ「そうなんですか……」
川д川「ああ…赤ちゃん……」
また泣き出した女性を、デレが慰めようとした時でした。
「……ぎゃあ、おぎゃあ」
ζ(゚ー゚;ζ「泣き声がする」
川д川「え?」
デレは女性の手を取って走り出しました。
赤ちゃんの声がするほうへ。
ひたすら駆けて、駆けて。
それは、扉の近くにある、古い納屋から聞こえました。
ζ(゚ー゚*ζ「この中から、聞こえる」
女性は黙って納屋の戸を開けました。
川*д川「ああ!赤ちゃん!かわいいミーくん」
ζ(゚ー゚*ζ(よかった…)
デレは胸をなで下ろしながら、そう思いました。
川*д川「よしよし、ママが来ましたからねー。もう大丈夫でちゅよー」
(* д )「キャッキャッ」
- 98 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/05(金) 00:37:07 ID:rtFbbAeUO
- 楽しそうな、声がします。
そういえばデレは赤ちゃんの顔を見ていませんでした。
ζ(゚ー゚*ζ「見てもいいですか?」
川*д川「ええ、どうぞ」
そう言った彼女の腕には、
(φー )
頭から、血を流す、男が。
- 99 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/05(金) 00:38:59 ID:rtFbbAeUO
- 「デレ?」
ζ( ー ;ζ「ぁ…あ…」
('A`)「デレ!」
ζ( ー ;ζ「っ……」
('A`)「大丈夫か?だいぶうなされてたみたいだったから…」
ζ( ー ;ζ「……大丈夫」
私は無理矢理微笑んで、ドクオにそう言った。
ζ(゚ー゚*ζ「ここは?」
('A`)「さぁ…。今、オサムさんとくるうが国の様子を見に行ってる」
ζ(゚ー゚*ζ「そっか、」
ζ(゚ー゚;ζ(それにしてもひどい夢だった)
父似の男の人。
赤ちゃんを連れた女の人。
それから、パミィさん。
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
('A`)「何か食う?それとも水がいい?」
ζ(゚ー゚*ζ「…水だけにしようかな」
('A`)「はいよ」
ドクオから、水筒を受け取る。
おいしい。
これだけでも結構救われたような気がした。
ζ(゚ー゚*ζ「ありがとう」
('A`)「おう」
- 100 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/05(金) 00:41:26 ID:rtFbbAeUO
- それから、まもなくしてオサムさん達が帰ってきた。
【+ 】ゞ゚)「どうも国は滅んでしまったようで、誰もいなかった」
ζ(゚ー゚*ζ「滅んだ…」
川 ゚ 々゚)「家と扉しかなかったよー」
そうなると、民話の蒐集もままならない。
そのまま通り過ぎることにしようという話になった。
が、
ζ( ー ;ζ(うそでしょ……)
【+ 】ゞ゚)「どうしましたか、デレさん」
ζ(゚ー゚;ζ「いや、なんでもない、です……」
滅んだ国は、あの夢に出て来た国にそっくりだった。
違うのは、迎えてくれる人がいないだけ。
ζ(゚ー゚;ζ「…………」
川 ゚ 々゚)「やっぱりまだ体調悪い?休もうか?」
ζ(^ー^;ζ「! だ、大丈夫!」
('A`)「本当か?」
ζ(゚ー゚;ζ「うん、それより先に行こうよ!」
なんであんな夢を見たのだろう。
そもそもあれは夢だったの?
父そっくりのあの人は?
なくしものを見つけてくれるヒトの話は?
ζ( ― *ζ(もう、わかんないよ…)
【+ 】ゞ゚)「扉を開けるけど、構いませんよね?」
ζ( ― ζ「はい…」
扉の近くにあった納屋を見つめながら、返事をする。
赤ちゃんの泣き声が、聞こえたような気がした。
第六階層「見つからない国」 了
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