- 112 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/05(金) 16:27:14 ID:rtFbbAeUO
- ぼくは、よく、わからないです。
――第七階層「はくちのくに」
- 113 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/05(金) 16:30:18 ID:rtFbbAeUO
- 次に私達がたどり着いたところは、地面が真っ白な国でした。
川 ゚ 々゚)「きれいー」
ζ(゚ー゚*ζ「ずいぶんさらさらしているわね」
('A`)「うわ、靴の中に入ってきた」
どうも、それは土ではなく砂だったらしい。
歩くたびに、靴に砂が入って不快だった。
川 ゚ 々゚)「……あれって国かなぁ?」
ζ(゚ー゚*ζ「あー…かなぁ」
目をこらせば、遠くにポツポツと家が見えた。
【+ 】ゞ゚)「…人のいる気配がしない」
('A`)「うへぇ、また無人かよ」
川 ゚ 々゚)「そういえばさっきの国はなんで誰もいなかったんだろうねー」
ζ(゚―゚*ζ「…………」
そうだ。
みんな知らないのだ。
あれは夢だから。
ζ(゚―゚*ζ「…………」
【+ 】ゞ゚)「…顔が青いな」
ζ(゚ー゚;ζ「いえ、大丈夫です」
【+ 】ゞ゚)「…すまないな、今度からはもう少し気をつけるよ」
なぜか、オサムさんは謝って私の頭を軽く撫でた。
違う。
オサムさんのせいじゃない。
でも誰が悪いのかと言われたら、
ζ( ― *ζ(…わかんない)
答えは、でなかった。
- 114 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/05(金) 16:32:16 ID:rtFbbAeUO
- 国は、意外と広かった。
でも、迎え入れてくれる人は誰もいなかった。
('A`)「誰もいないのかな?」
川 ゚ 々゚)「…かもしれないね」
だって、家は朽ち果てているものばかりだったから。
ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ、扉を探そうよ」
そう言って歩こうとした時だった。
「うぁー」
ζ( ー *ζ「!?」
突然聞こえた声に、みんなが固まった。
あたりを見渡す。
どうも声は、左にあった家からするみたいだ。
ドクオが、鞄に手を突っ込んだ。
オサムさんはくるうを後ろでかばいながらクロスボウを取り出した。
私もフレイルを取り出す。
「ぅーう、ぅーう」
赤ちゃんみたいな声。
思わず耳をふさぎたくなる。
先ほど見た夢を、思い出してしまいそうだったから。
「うー、」
「こら、しずかに」
それとは別に、たどたどしい言葉が聞こえた。
キィ、と家の扉が開く。
そこから、真っ白な少年が出てきた。
\(^o^)/「ああ、おきゃくさま」
それから、にこりと笑ってこう言った。
\(^o^)/「ようこそ、はくちのくにへ」
ζ(゚ー゚*ζ「白痴の国?」
\(^o^)/「いいえ、はくちです。ぼくはおわた、なかへどうぞ」
- 115 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/05(金) 16:33:59 ID:rtFbbAeUO
- 中に招き入れられた私達は、おわたくんと向き合う形で席についた。
\(^o^)/「ごめんなさい、なにもないよ」
そう言って彼が差し出してきたのは、白い砂が目一杯入ったティーカップだった。
(;'A`)「…これ飲み物なのか?」
\(^o^)/「たべもの、ない。のむのこれだけ」
微妙に会話が成立していないような気がする。
でも、これは彼なりにもてなしているのだろう。
ζ(゚ー゚;ζ(さすがに砂は飲めないけど)
\(^o^)/「きみは、だれ?」
ζ(゚ー゚*ζ「私はデレ、こっちはドクオ」
川 ゚ 々゚)「くるうだよー」
【+ 】ゞ゚)「オサムだ」
\(^o^)/「…でれと、でれでれ?」
ζ(゚ー゚*ζ(あ、だめだ)
やっぱり会話は成立していなかった。
【+ 】ゞ゚)「ここには他に誰もいないのか?」
\(^o^)/「しんだった」
川 ゚ 々゚)「え?」
\(^o^)/「ちがしろくなってばかになる。そしてちをはく」
ζ(゚ー゚*ζ「……」
\(^o^)/「でもすぱむがいるよ」
ζ(゚ー゚*ζ「すぱむ?」
\(^o^)/「ともだち。だいすき」
そう言って、おわたくんは部屋の奥へ消えていった。
それからまもなく、彼は何かを引きずってきた。
ヽiリ,,゚ヮ゚ノi「あーあ、いーあ、あー」
- 116 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/05(金) 16:37:37 ID:rtFbbAeUO
- それは、うつろな笑みを浮かべた女の子だった。
年はおわたくんと同じくらいかな。
\(^o^)/「すぱむ。すぱむ、すぱむ!」
両手をあげて、おわたくんが叫ぶ。
同時に、すぱむちゃんが床に頭をぶつけた。
おわたくんが、すぱむちゃんの服を手放してしまったからだ。
ζ(゚ー゚;ζ「ちょ…大丈夫?」
思わず駆け寄ると、彼女は締まりのない笑みを浮かべて私に抱き付いてきた。
ヽiリ,,゚ヮ゚ノi「まぁまー!」
ζ(゚ー゚*ζ「へ?」
川 ゚ 々゚)「お母さんと勘違いされてるんじゃない?」
ヽiリ,,゚ヮ゚ノi「まま、あ、ぁーあぁ」
すぱむちゃんが私の胸に抱き付く。
ζ(゚ー゚*ζ(泣いてる…)
少し頭を撫でてみる。
ヽiリ,,゚ヮ゚ノi「うーぁ、すぃー」
ζ(゚ー゚*ζ「よしよし」
くるうの言う通り、お母さんに間違えられているのかもしれない。
- 118 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/05(金) 16:39:38 ID:rtFbbAeUO
- ζ(゚ー゚*ζ(もしくは人恋しいか)
\(^o^)/「すぱむ、よろこんでる」
('A`)「…そうか」
複雑そうな表情でドクオがそう言った。
('A`)「……なぁ、少しだけこの子達と遊ぼうよ」
【+ 】ゞ゚)「……」
川 ゚ 々゚)「いいね、たまにはいいと思う!」
ζ(゚ー゚*ζ「そうだねぇ…」
この子達は、いつから二人ぼっちだったんだろうか。
それはおわたくんに聞いてもわからないだろうけど、でも。
ζ(゚ー゚*ζ(ずっと、寂しかったはず)
【+ 】ゞ゚)「……仕方がないな」
ため息まじりに吐かれた、オサムさんの言葉。
だけど、おわたくん達への視線がやわらかかったのを私は見逃さなかった。
- 119 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/05(金) 16:43:29 ID:rtFbbAeUO
- (#'A`)「ぐわぁぁ!鬼だぞぉぉぉ!」
川;゚ 々゚)「ドクオこわいー」
ヽiリ,,゚ヮ゚ノi「あうぅー」
(#'A`)「悪い子いねぇかぁぁぁ!バラバラにすっぞぉぉ!」
ζ(゚ー゚;ζ「なにかが違う!違いすぎる!!」
\(^o^)/「ぼくはしなないよーwwwwwwwwwwwwwwwwwwわるいこじゃないからー!wwwwwww」
ζ(゚ー゚*ζ「くるう、こっちこっち!」
,_
【+ 】ゞ゚)「俺に任せて先に行け」
('A`)そ
ζ(゚ー゚;ζ「オサムさん、鬼ごっこは気迫で鬼を追い払う遊びじゃないよ…」
('A`)+「と見せかけてからのシャバドゥビタァァァッチッ!!!」
【+ 】ゞ゚)そ「なん…だと…」
\(^o^)/「あのふたりこわい」
ヽiリ,,゚ヮ゚ノi「こあいー」
川 々 )「ドクオめドクオめドクオめドクオめドクオめドクオめドクオめドクオめドクオめドクオめドクオめドクオめドクオめドクオめドクオめ…」
ζ(゚ー゚;ζ「くるう落ち着いて!」
まぁ、こんな調子で私達は日が暮れるまでずっと遊び続けた。
本気で鬼ごっこやかくれんぼをするのはいつぶりだろうか。
ζ(゚ー゚;ζ(あれを鬼ごっこと呼ぶのもあれだけど)
- 120 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/05(金) 16:47:05 ID:rtFbbAeUO
- すぱむちゃんは、自力で歩けないのでみんなで交替でおんぶをした。
彼女の体は羽のように軽くて、心配だった。
でも、
\(^o^)/「たのしかったです」
ヽiリ,,゚ヮ゚ノi「いさぃあー」
ζ(^ー^*ζ「……ならよかった」
一緒に遊べて、二人とも満足したみたいだった。
夕食は保存食の缶詰を開けて、一緒に食事をした。
とても楽しかった。
その後が、問題だった。
ヽiリ,,;―;ノi「ぅ゛…え゛っ!」
ζ(゚ー゚;ζ「すぱむちゃん!?」
\(^o^)/「…すぱむ、」
びちゃびちゃと床にこぼれる、白。
だけどその臭いはまぎれもなく血の臭いで、
ζ( ー *ζ(ああ…)
川;゚ 々゚)「すぱむちゃん!」
くるうが慌てて駆け寄る。
ヽiリ,,;―;ノi「あー…ぁ、うぅう…」
\(^o^)/「…すぱむ、しんじゃうの?」
- 121 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/05(金) 16:50:02 ID:rtFbbAeUO
- 川 々 )「……治す」
くるうがぽつりと呟いた。
ζ(゚ー゚;ζ「え…」
川#゚ 々゚)「治すの!絶対助ける!」
そう言ってくるうは鞄から白衣を取り出した。
【+ 】ゞ゚)「くるう、」
川# 々 )「一人でやれる」
てきぱきと道具を出しながら、くるうが言った。
【+ 】ゞ゚)「……」
('A`)「行きましょう、オサムさん」
ドクオが、オサムさんに呼び掛ける。
【+ 】ゞ゚)「…何かあったら、呼べ」
川 々 )「……うん」
\(^o^)/「……くるうちゃん」
川 ゚ 々゚)「なぁに?」
\(^o^)/「すぱむちゃんなおる?」
- 122 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/05(金) 16:50:57 ID:rtFbbAeUO
- 川 ゚ 々゚)「…汝のために己を殺せ、だから」
\(^o^)/「?」
川 ^々^)「だいじょーぶだよ」
くるうの笑みに、おわたくんはなんともいえない表情を浮かべた。
すがるような、それでいて泣き笑いをしているような顔。
\(^o^)/「ぼくは、よく、わからないです」
川 ゚ 々゚)「…デレ、」
ζ(゚ー゚*ζ「うん。……おわたくん、行こう」
私は、おわたくんの手をつないで、部屋の奥に向かった。
その晩は、誰も眠ることも口をきくこともなかった。
ただ一つ言えるのは、誰もがすぱむちゃんの無事を祈っていたということ。
- 123 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/05(金) 16:53:38 ID:rtFbbAeUO
- そして、朝になり。
川 々 )「みんな、」
やつれた様子のくるうが、扉を開けた。
髪の色は、黒から赤に変わっていた。
彼女は、大量に魔力を使うと、髪の毛の色素が抜けてしまうのだ。
\(^o^)/「すぱむちゃんは?」
おわたくんの言葉に、くるうは
川 々 )「…………ごめんね、」
\(^o^)/「…………」
川 ;々;)「ごめんね、ごめんね……」
\(^o^)/「……だいじょーぶ」
おわたくんは、そう言って部屋を出ていった。
(;'A`)「おわたくん」
ドクオが慌てて後を追う。
【+ 】ゞ゚)「…くるう、」
川 ;々;)「だめだった…だめだったの…!」
わあわあと泣き出すくるうに、私とオサムさんはただ、立ち尽くすことしかできなかった。
ζ( ― *ζ(こんなのって、ないよ)
川 ;々;)「あああああ……」
ずっとずっとくるうは泣いた。
私は彼女を抱き締めて泣いた。
オサムさんも、静かに泣いた。
すぱむちゃんのいる部屋からも、泣き声が聞こえた。
もう、どうしようもないくらい悲しかった。
- 124 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/05(金) 16:56:10 ID:rtFbbAeUO
- ひとしきり泣いて、すぱむちゃんのお墓を作ったあと、私達はおわたくんに連れられて扉の前に来ていた。
川 々 )「ごめんね…」
\(^o^)/「ううん、たすけてくれてありがとう」
川 ゚ 々゚)「…助けられなかったんだよ?」
\(^o^)/「でも、すぱむちゃんとあそんでくれた。おはかもつくってくれた」
おわたくんは、真っ赤に泣き腫らした目で、くるうを見つめる。
\(^o^)/「それだけで、じゅうぶん」
川 ゚ 々゚)「……」
\(^o^)/「これ、あげる」
そう言って、おわたくんは、膨張した缶詰を渡してきた。
川 ゚ 々゚)「いいの?」
\(^o^)/「うん」
くるうは、それを手に取ろうか迷っていたようだった。
【+ 】ゞ゚)「受け取りなさい」
川;゚ 々゚)「…でも、」
【+ 】ゞ゚)「それはおわたくんの感謝の気持ちなんだよ。受け取ってあげなさい」
川*゚ 々゚)「……ありがとう」
オサムさんに促されて、くるうはそれを受け取った。
\(^o^)/「きをつけてね」
扉をくぐり抜けながら、ふと思った。
ζ(゚―゚*ζ(一人になったら、彼はどうするんだろう)
考えても、私にできることなんて、ないのだけれど。
第七階層「はくちのくに」 了
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