- 120 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 16:48:26 ID:o4l4GYmw0
シャーロック・ドクオの休日のようです
- 121 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 16:48:47 ID:o4l4GYmw0
(;><)「くそー、なんです!あの変態どS探偵が、なんです!」
(;><)「僕のような清く賢く逞しく、あらゆる意味でエクセレントな助手に、
あんな扱い方するなんて、なんです!」
(;><)「あんにゃろー、なんです!」
時刻は、十時二十分。
東京都の人々賑わうある巨大ターミナル駅前。
ワカンナイデスは晴れやかな初秋の日差しの中、
どんよりと曇った顔を浮かべながら、ブツブツと文句をたれていた。
- 122 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 16:49:14 ID:o4l4GYmw0
(><)「思い返せば…」
ワカンナイデスは昨日の帰り際、ドクオに有給休暇を貰おうとしていたときのことを思い出していた。
('A`)「え、有給?」
毒田探偵事務所の天変地異レベルに散らかった部屋で、ドクオとワカンナイデスは交渉を始めた。
(><)「そうなんです!仕事は集中出来ず、財布の中身はスッカラカン、
将来のプランは全く無し、そんな僕が足りなかったものが分かったんです!
そう、それは女の子だったんです!僕はもうすぐ彼女いない歴2年になろうとしてるんです!
きっと彼女が出来れば、恋に部活に勉強に!これ一つで間違いなし!なんです!」
('A`)「進●ゼミの漫画か、お前は」
(><)「兎に角、有給が欲しいんです!明日だけなんです!」
- 123 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 16:49:44 ID:o4l4GYmw0
('A`)「おk。いいよ」
(><)「ん?……なんです……」
(;><)(……これはおかしいんです。
猟奇的エクストリームサディストのドクオさんが、あっさりと有給におkを出すなんて
なんか気持ち悪いんです……これはきっと何か裏があるんです……)
('A`)「なにそんなパズルでも解いてるような難解な顔してんだ?
あげるって有給普通に。要らないの?」
(><)「ほ、欲しいんです!」
(><)(おおお、マジでくれるとは、なんです!ドクオさん少し見直したんです!)
- 124 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 16:50:30 ID:o4l4GYmw0
('A`)「じゃ俺はスライスされたキムチのニンニクが土に埋めることによって、
もう一度生命を取り戻すかの実験に戻るから」
(><)「やっほーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーなんです!!!!!!!!」
ワカンナイデスはまるで、夏休み前の最後のホームルームを終えた
小学生のごとく、ドアに向かって走り始めた
すると何やらドクオがニヤニヤと、意地悪げな笑みを浮かべた。
('∀`)「その代わり明後日この部屋掃除しといてね」
(;><)「ぎゃああああああああああああああああああああああ」
- 125 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 16:51:23 ID:o4l4GYmw0
(;><)「騙しおったな!なんです!この被災地の人々もびっくりの部屋は、
ドクオさんが散らかしたんです!」
('∀`)「お前もちょっとは散らかしたろ」
(;><)「Oh、そんなBANANA」
という訳で、ワカンナイデスは折角取ることの出来た有給にも関わらず、
心晴れぬ様子でいたのである。
(;><)「こうなったら今日というこの日を全力で堪能してやるんです!」
ワカンナイデスは巨大な都心を行きかう女の子たちを、
舐めまわすような目で見始めた。
今の彼はまるで、茂みに身を隠し、獲物の動向をじっくりと眺める、肉食動物のようである。
唯一違うところと言えば、彼らはプロのハンターであり、自らの気配など消して漏らさない。
鼻息を漏らし、両手をそわそわさせ、地団太を踏む今のワカンナイデスのように。
- 126 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 16:51:54 ID:o4l4GYmw0
「なにあの人、向こうからあたし達の顔めっちゃ見てる」
「怖っ。ね、早くいこ!」
(><)「ふふふふふ。食べ応えのありそうなおなご達が、
刈られるのを待つ草食動物のごとく、この駅前。
いや、サバンナに群れておるわ!」
ワカンナイデスの隣で待ち合わせをしていたであろう若者が、
警戒心を働かせ、少し距離をおいた。
しかし、そんなことには気づきもしないワカンナイデス。
- 127 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 16:52:35 ID:o4l4GYmw0
(><)「Hey Hey そこの綺麗なお嬢さんたち。
どっちか僕と今夜の肉体関係を前提に、お茶でも行かない?」
「きゃー、最低!」
「あんた、マジで死ね!」
(><)「僕がハートをとろけさせる程の超絶イケメンだからって、
そんなに照れなくてもいいんです!」
この男は誰にも止められない。
そう、彼は『変態』なのだ。
- 128 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 16:53:20 ID:o4l4GYmw0
*
ξ゚听)ξ「急ぐ!ブーン!」
(;^ω^)「ちょっと待つお、ツン」
ξ゚听)ξ「いいから!今日はセールなのよ!ネットで調べたあの可愛い靴も
ワンピースも売切れたらどうするのよ!」
(;^ω^)「せっかく休みを取ってお出かけだって言うのに、
そんなにせかせかしなくてもいいお!」
ξ゚听)ξ「関係ない!人生は全力疾走なの!休みだって平日だって、
アタシたちは目標に向かってまっしぐらなのよ!」
(;^ω^)「ぎゃー」
- 129 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 16:53:47 ID:o4l4GYmw0
天気の良い初秋の昼間。
これが稀に見るカカア天下である。
ツンはブーンの言うことを無視し、手を引っ張りながら、
人々のごった返す駅の中を勢いよく闊歩していた。
二人は、今日、久しぶりのデートの為に有給を取って街に繰り出してきたのである。
二人は駅を出て、デパートに向かう小さな通りに差し掛かった。
すると、感じの良い老人が犬を連れて、道を歩いていた。
ξ゚听)ξ「見て!犬!かわいい!!!!!!」
(;^ω^)「なぬっ!?急激な方向転換!?」
ブーンは、ツンの予期せぬ90度の方向チェンジにバランスを保ちきれず、地面に倒れ込んだ。
(;^ω^)「ぶぅふ!」
- 130 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 16:54:12 ID:o4l4GYmw0
道路に鞄を置いて、おじいさんの連れていた犬を撫で始めたツンは、
倒れたブーンのことなど一切気づかずに夢中になっていた。
ξ゚听)ξ「さ!行くわよ!・……って何で床とキスしてるの?」
(;^ω^)「……なんという女だ!」
ξ゚听)ξ「って鞄忘れるとこだった」
ツンは道路に置いた鞄を肩にかけ、再び歩き出そうとしたとき、
真後ろから男が話しかけてきた。
( ´∀`)「気をつけるモナー」
- 131 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 16:54:36 ID:o4l4GYmw0
ξ;゚听)ξ「って、きゃ!誰?」
( ^ω^)「……ん?」
( ´∀`)「この辺、最近ひったくりが急増してるんだモナ。
女性は特に気をつけるモナ。まあ、彼氏さんがいれば大丈夫かモナ」
ξ;゚听)ξ「あ、すいません。丁寧にどうも」
( ´∀`)「それじゃ、気を付けてモナ」
そういって男は立ち去った。
( ^ω^)「誰?」
ξ゚听)ξ「ひったくり魔……まったくいやな世の中だわ。
っていうかあの人だれ?」
- 132 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 16:55:40 ID:o4l4GYmw0
(><)「二十五点」
(><)「七十……二点」
(><)「お、八十点」
(><)「……七十六点……いや、七十五点」
先程から平日の街中の真昼間に、数学者でもないのに数字を連発する男が一人。
繰り返し繰り返し、数字を唱えているのは、
別に彼がアルバートアインシュタインの生まれ変わりだからではない。
- 133 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 16:56:42 ID:o4l4GYmw0
(><)「全く、高得点率が低いんです。世代チェンジなんです。
オーバー九十点ホールダーが見当たらないんです。超面食いの僕にとって、
妥協して九十五、いや六は欲しいんです。」
そう、この男は相対性理論の数式を証明したり、
宇宙の神秘を数字と記号によって解明しようとしていたわけではない。
道行く女性たちのルックスを、彼女らの許可一切なしに点数化していたのである。
そう、何を隠そうこの男は女性のルックスを点数化するマシーンなのである。
(><)「ん……なんです!!!!!!!!!!!」
するとワカンナイデスの前方に、美しい後ろ姿が。
(><)「後姿からの情報によると、暫定得点九十八!確率九十九点九パーセント!」
煙を吹き上げて発射されたミサイルごとき勢いで、その後ろ姿に突っ込んだ。
- 134 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 16:57:09 ID:o4l4GYmw0
(><)「Hey Hey綺麗な御嬢さん。
僕と一緒に『恋の流刑地』観に行って、そのまま二人、
荒れ狂う恋の川に流されない?なんです!」
(´;゜;ё;゜;)「アナタとならば、何処までも!」
(;><)「……パターン五、後ろ姿だけ良くて振り返るとクリーチャーパターン。
ぎゃああああああああああああああああああああああああああなんです!」
(´;゜;ё;゜;)「待って!ダーリいいいいいいいいいいいいいいン!」
(;;><)「着いてくるな、なんです!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
信じられぬ勢いで、人ごみの中走り回る二人。
- 135 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 16:57:47 ID:o4l4GYmw0
二十分後。
(;><)「……はあ、はあ、はあ……。はあ……。
巻いたか……なんです……はあ……」
(;><)「走り回ったら、腹が減ったんです……」
するとワカンナイデスの目の前には、何とも都合良くラーメン屋があった。
(><)「僕の大好物、ラーメンなんです!昼飯はここで決まりなんです!」
店に入ると中々繁盛しているようで、おっさんが忙しそうにラーメンを作っていた。
( ・3・)「ヘイらっしゃい」
(><)「きむちラーメン一つなんです!」
( ・3・)「そんなメニューねーよ」
(><)「なんてしみったれたラーメン屋なんです!」
( ・3・)「あ?」
- 136 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 16:58:12 ID:o4l4GYmw0
(><)「えだまめラーメン一つなんです!」
ラーメンと枝豆が合うのか?別々に食った方が普通に美味くね?
そんな疑問が浮かびそうなラーメンを注文した後、ワカンナイデスは席についた。
( ・3・)「はいよ」
少し待つと、ワカンナイデスの座ったカウンターにラーメンが運ばれてきた。
( ・3・)「おまち。えだまめラーメン一つ」
- 137 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 16:58:37 ID:o4l4GYmw0
一分後。
そんな速くて味が分かるのかという一瞬で、食べ終えたワカンナイデス。
食べ終えた食器には、なぜか綺麗に枝豆の豆が残されていた。
(><)「意外とうまかったんです。やっぱりえだまめは最高なんです」
( ・3・)「兄ちゃん、枝豆は豆を食うもんで、周りのやつを残すんだぜ」
しかし、そんなことは一切気にしないワカンナイデスは語る。
- 138 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 16:59:08 ID:o4l4GYmw0
(><)「親父!僕は一つの事実に気づいたんです!ラーメンこそ至高の食べ物なんです!
かつ丼もハンバーグ確かに上手い。しかしながら、それらは食べたくなったら
簡単に作れてしまうんです。しかし!ラーメンはそんな簡単には作れない!
これこそラーメンが至高であり、食べ物たちの頂点に立つ所以なんです!」
( ・3・)「ありがとよ、兄ちゃん。それじゃ勘定よろしく」
財布を取り出そうとポケットに手を突っ込んだワカンナイデスは、
その身に降りかかった残酷な運命に気づいてしまった。
(;><)(な、ないんです……)
(;><)「家に置き忘れたとか……」
(;><)「まさkのこれはサザエさん状態なんです……」
( ・3・)「兄ちゃん?」
(;><)「ちょ、ちょっとトイレに行ってくるんです!」
- 139 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 16:59:50 ID:o4l4GYmw0
トイレに籠って、汗を浮かべるワカンナイデス。
(;><)「まずいんです……これはまずいんです」
五分後。
店員からはその姿が見えないであろうカウンター越しの床の上。
一人の男が、自衛隊の訓練のごとく、ホフク前進で歩いていた。
(;><)「こちとら伊達に探偵やってないんです!
こんな逆境も今までたくさん切り抜けてきたんです!」
するとトイレに向かう小さい男の子が、興味に目をキラキラさせて、
ワカンナイデスを覗き込んでいた。
- 140 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 17:00:17 ID:o4l4GYmw0
(;><)(……・まずい)
「ね。ね。なにしてるのーー?」
(;><)
ホフク前進の姿勢で死んだ振りをし始めたワカンナイデス。
「ねえ。ねえ」
死んだ振りが効かないと分かり、諦めて口を開いた。
(;><)「し。しずかにしてねー(ボソ てんいんさんにめいわくだからねー(ボソ」
- 141 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 17:00:54 ID:o4l4GYmw0
するとワカンナイデスが、小さいが、物凄い殺意がむき出し冷たい声で言い放った。
(><)「今すぐその汚ねえ口を閉じろ。殺すぞ」
その瞬間、男の子は、殺意を感じ取ったのか今にも泣きだしそうな恐怖の顔を浮かべて、
トイレへと静かに駈け込んでいった。
すぐにトイレから彼の泣き声が聞こえてきた。
( ・3・)「ありゃりゃー、誰か泣いちゃってんのかな?」
(;><)(い、今だ!)
ワカンナイデスは店員が気を取られてる間に、物凄いスピードの
ホフク前進で出口を目指し、たどり着いた。
- 142 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 17:01:30 ID:o4l4GYmw0
(;><)「ははははははははは。どんな危機も、このワカンナイデス様の頭脳を持ってすれば、
子供だましにすぎないんです!」
すると前からさっきの女性が現れた。
(´;゜;ё;゜;)「ダーリン、ここにいたの!」
(;><)「ひぴぎゃあああああああああああああああああああああああああああ!!」
(´;゜;ё;゜;)「逃げないで!私の初めてのダーリいいいいいいいいいン!」
(;><)「死ぬーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
- 143 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 17:02:02 ID:o4l4GYmw0
*
ξ゚听)ξ「うーん……五十、いや四十九点!」
ξ゚听)ξ「二十七点!論外ね」
ξ゚听)ξ「……八十七点!おしいわ!」
デパートのテナントの服屋さん。パステルカラーで彩られた可愛らしい店内。
若々しい女の子たちが静かに目を光らせて服を選んでいる中に、
一人、ひたすら数字を呪文のごとく繰り返している女性が一人。
彼女が数字を何度も何度も口ずさんでいるのは、
彼女がアルバート・アインシュタインの生まれ変わりだからではない。
- 144 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 17:02:37 ID:o4l4GYmw0
( ^ω^)「ツン、さっきから何を言ってるんだお?」
ξ゚听)ξ「品定めよ、品定め。いい?服を買ってる時、女の子はハンターなの!
可愛いものを確実に、かつ客観的に見つけ出し奪い取る。
これこそ、買い物の勝利の方程式なの」
(;^ω^)「そうかお」
ξ゚听)ξ「おしゃれなアタシとしては、九十点以上は欲しいのよねー」
( ^ω^)「僕は上の階のCDを見てくるお」
ξ゚听)ξ「待って!ブーンには荷物を持ってもらうんだから一緒にいて!」
(;^ω^)「マジかお、重いお」
ξ゚听)ξ「つべこべ言わない!あら……」
- 145 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 17:03:05 ID:o4l4GYmw0
ツンの視線の先には、フリフリのついたキュートな水玉のワンピースがあった。
ξ゚听)ξ「現在の立ち位置からの情報によると、暫定得点九十八!確率九十九点九パーセント!」
怒り狂う闘牛のごとき勢いで、そのワンピースに向けて走り出した瞬間、
目の前にもう一人の影が現れ、ツンが掴んだと同時にそれを持ち上げた。
ミセ*゚ー゚)リ「お先に!」
ξ;゚听)ξ「ちょっと待った!……ここは公平にじゃんけんと行きましょう」
ミセ*゚ー゚)リ「公平じゃないわ、私が先に取ったんだもの」
ξ;゚听)ξ「ぐぬぬ。アタシも掴んでたわ」
- 146 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 17:03:23 ID:o4l4GYmw0
ミセ;゚ー゚)リ「むむむ。仕方ないわね」
ミセ*゚ー゚)リξ゚听)ξ「ジャンケン!ポン!……」
ミセ*゚ー゚)リ「しつれーい」
ξ#゚听)ξ「くやしいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」
( ^ω^)「諦めるお、ツン」
ξ#゚听)ξ「フン!あんな小娘が見つけたものより
ずーーーっと可愛い掘り出し物見つけてやるんだから!」
- 147 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 17:04:04 ID:o4l4GYmw0
*
(;><)「……はあ……はあはあ」
死にもの狂いで街中を爆走していたワカンナイデス。
背後から自分を追いかけてくる恐怖に、胸の苦しさを押し殺しながら走リ続けた彼は、
止まってどっと押し寄せた息苦しさにうなだれた。
(;><)「ゾンビ映画の主人公ってきっとこんな気持ちなんです」
背後を振り返り、例の女の姿を探すが、確認できない。
ほっとして彼は息切れしながら、そうつぶやいた。
- 148 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 17:04:43 ID:o4l4GYmw0
目の前には、大きな公園。
目を癒すため植えられた広葉樹が、その周りに張り巡らされ、
真ん中には大きな噴水があった。
子供連れの母親たちが、ベンチで楽しそうに他愛もない話をしている。
彼は、ふと後ろを振り返った。
(;><)「まままままままま、まずいんです!!」
(´;゜;ё;゜;)
遥か遠くに、必死の形相でワカンナイデスの姿を探すあの女が。
どういうわけか手には花束がしっかりと握られていた。
(;><)「shitshitshitshitシッシッシッシっと!!!!!!!!!!!」
- 149 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 17:05:22 ID:o4l4GYmw0
凄い勢いで公園に駆け込み、隠れる場所を探す。
設置されたトイレの裏に、薄暗く人目につかないスペースを見つけた。
(;><)「ここじゃああああああああああああああ」
そこから顔をだし、息を殺して、例の化物の動向を探る。
しばらく見つけられない焦燥に、うろうろと雄たけびを上げていた彼女も、
この場所を離れ、別のどこかへとかけていった。
(;><)「死ぬかと思ったんです……」
- 150 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 17:05:43 ID:o4l4GYmw0
ふと横を見ると、このトイレの裏の狭く暗い場所に、もう一人の男がいたことに気付いた。
( ´∀`)
(;><)「ぎゃあああああああああああああ、ってだれ?」
( ´∀`)「驚かせてしまったみたいだモナー」
不思議な笑みを浮かべながら、男は頭を下げ去っていった。
(;><)「なんでこんなところに……」
胸を撫で下ろし、静かに空を見上げた。
- 151 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 17:06:22 ID:o4l4GYmw0
*
(><)「むにゃむにゃ」
(;><)「はっ!こんな所で寝てしまったんです」
ベンチの上で目を覚ましたワカンナイデスは、我に返り公園の時計を確認する。
時刻は四時を回ろうとしていた。
夕暮れが街をオレンジ色に染めていく。
子供たちが楽しそうに追いかけっこをしている。
それを見守るおばあさん。
- 152 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 17:06:50 ID:o4l4GYmw0
ワカンナイデスは、ユラユラと揺れるパンダの遊具を見つけ、跨る。
(;><)「まったく……」
ゆらゆら。
(;><)「有給取ったっていうのに今日はさんざんな一日だったんです!」
ゆらゆら。
思い返せば、今日はクリーチャーに追いかけられ、
ラーメン屋では財布を忘れ、ナンパなど一度も成功しなかった。
彼にとって、今日は仕事でもしている方がマシな一日だった。
- 153 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 17:07:09 ID:o4l4GYmw0
(;><)「しかも明日仕事に戻れば、あの変態ドS探偵の散らかした部屋の掃除」
ゆらゆら。
(;><)「まったく、許せないんです!」
ゆらゆら。
(;><)「僕は何のために探偵をやってるかわからなくなってきたんです……」
ゆらゆら。
(;><)「悩みは尽きないんです……」
- 154 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 17:07:37 ID:o4l4GYmw0
ワカンナイデスの乗っているパンダのすぐ隣のベンチに、
重そうな荷物を持ったおばあさんが、しんどそうに腰かけた。
「なにを悩んどるんじゃ?」
(><)「……色々なんです」
「ほほほほ。わかいのにたいへんじゃの。」
(><)「……」
「あたしゃ、この年になるとね。まわりに人がいないさみしさとさ、ね。
かたいものが噛みづらいことが悩みかねえ、ほほほほほ。」
笑いながら、おばあさんは重そうな荷物を持って、公園の出口の石階段のほうに歩いていった。
- 155 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 17:08:01 ID:o4l4GYmw0
取り残されたワカンナイデスの目の前には、
夕暮れのオレンジの中、無邪気に遊ぶ子供たち。
彼らには帰る場所があり、帰ったら迎えてくれる家族と、暖かい食事が待っているのだろう。
好きなことを飽きるまでして、家に帰ったら家族と一緒にぐっすりと眠る。
ワカンナイデスは、そんなことを考えながら、妙な寂しさが胸にこみ上げてきた。
(><)「いいなーお前ら、なんです……」
ワカンナイデスはずっと昔、高校に進学せずにミュージシャンを目指す意向を告げたとき、
親に勘当され、それ以来会う時と言えば親戚がらみで集まるときに顔を合わせるくらい。
まともに連絡さえも取っていなかった。
そんなことを思い出しながら、ワカンナイデスは空を見上げた。
- 156 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 17:08:22 ID:o4l4GYmw0
(><)「綺麗な夕焼けなんです……」
今度はワカンナイデスの記憶は、幼少期に遡っていた。
小さいころ、両親とキャッチボールをしに出かけ、
両手を父親と母親に繋いで、体を宙に浮かしながら
ピョンピョンと跳ねて帰った、あの日の夕方を思い出していた。
(><)「あの時の夕焼けも、丁度こんな綺麗なオレンジ色だったんです……」
そしてその家族との縁さえ捨てて、やってきた大都市東京。
音楽の夢もいつしか諦め、生活の為にバイトを転々とする無気力な日々を繰り返していた。
彼に出会うまでは。
- 157 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 17:09:18 ID:o4l4GYmw0
(><)「そういえば……」
ゆらゆら。
(><)「この公園、ドクオさんに初めて会った公園なんです」
ゆらゆら。
(><)「あのカタツムリの滑り台の穴から出てきて……」
グー。
ワカンナイデスの腹が鳴った。
(><)「腹減ったんです。なんか食ってくかなんです」
- 158 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 17:09:51 ID:o4l4GYmw0
*
(;^ω^)「いくらなんでも買いすぎだお……」
ξ゚听)ξ「いいのいいの。今度ボーナス入るし」
黄昏時の帰り道を歩く二人。
ブーンはツンの買った服の大量の袋を両手に抱えながら、
鼻を通り抜けた心地よい初秋の香りに気づいた。
( ^ω^)「……でもなんだかんだで今日は楽しかったお」
ξ゚听)ξ「ね、ブーン。また何処か行こうね」
( ^ω^)「……また買い物に付き合わされるのはごめんだお。でもおkだお」
ξ゚听)ξ「ちっばれたか……次はあんたの好きなとこ行かせてあげるわよ」
- 159 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 17:10:24 ID:o4l4GYmw0
そんな会話を交わしながら、夕焼けに向かって歩を進めていく二人。
( ^ω^)「ツン、ちょっとトイレ行きたくなってきたお……
ちょっとそこの公園のトイレ行ってくるお!ここで待っててくれお!」
ξ゚听)ξ「あ、ちょっとブーン!」
ξ゚听)ξ「行っちゃった……」
- 160 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 17:10:44 ID:o4l4GYmw0
ツンは電信柱に張り付けてあった張り紙に気が付いた。
「ひったくり注意」
ξ゚听)ξ「……・こんなか弱いレディーを一人にするつもり!?」
というわけのわからないことをほざくゴリラが一匹。
そして、何が楽しいのか不思議な笑みを浮かべながら、
ツンのいる道を行く男が一人。
( ´∀`)「……もうすぐだモナー」
- 161 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 18:31:21 ID:o4l4GYmw0
一方、ブーンは。
( ^ω^)「ふう。危なかったお。膀胱が爆発するところだったお」
トイレから出て、公園のもう一方の入り口の階段の方を見ると、おばあさんが
重そうな荷物を抱えて上がっている。
伊達に我がままツンの日常的な相手をしていないブーン。
こういうとき彼はかなりのジェントルマンである。
( ^ω^)「大丈夫ですかお」
みすぼらしい格好で、いかにも辛そうに階段を上っていた老婆は、
青年の優しさに、嬉しそうの笑顔を浮かべ、そのしわくちゃの顔が綻んだ。
「ありがとねえ」
- 162 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 18:31:42 ID:o4l4GYmw0
年のせいか、妙にしわがれた低い声でおばあさんは言った。
「……お兄さん、こんな所でひとりかい?」
( ^ω^)「いえ、彼女が待ってるんですお。あ、ツンをずっと放置したままだお!
それじゃ気をつけて帰ってくださいお!」
そう言ってブーンはツンのもとへ駈け出した。
- 163 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 18:32:24 ID:o4l4GYmw0
*
夕飯を食おうと決めたワカンナイデス。
歩き出したその前には、美しい女性の後ろ姿が。
(><)「捨てる神あらば拾う神ありなんです!あれはきっと可愛いんです!」
(><)「いや、待てよ、なんです……さっきは後姿で痛い目を見たんです」
(><)「このワカンナイデス様は二度は同じ失敗を繰り返さないんです!
前から確認してみるんです!」
- 164 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 18:32:50 ID:o4l4GYmw0
人類の希望を乗せて宇宙へ飛び出したロケットの如き速さで、ワカンナイデスは走り出した。
(><)「Hey Hey綺麗なお嬢ちゃん。これから僕と一緒にディナーでも食べない?
そして、最後のデザートの君をこの僕に調理させてくれないかな?」
ξ#゚听)ξ「あ?」
(;><)「……Oh、これはどこかで見たことのある光景」
(;^ω^)「ツン……それにワカンナイさん。こんなとこで何してるんだお?」
- 165 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 18:33:54 ID:o4l4GYmw0
その時だった。
後ろから帽子を被った背の高い男が、
凄い勢いでツンの持つ鞄を引っ張り、懐に抱え込み走り出した。
( ‘∀‘) 「いただき!」
ξ#゚听)ξ「ちょっと!!返しなさい!!!!」
(;^ω^)「あっ!」
(;><)「……ひったくり!」
- 166 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 18:34:35 ID:o4l4GYmw0
男の逃げていく坂道の先には、先程ブーンの助けたおばあさんが。
「……」
おばあさんは、この男が悪い奴だということが分かっていないのだろうか。
向かいくる男の顔を、興味深そうに見据えていた。
「……お兄さん、そんなに走ってどこ行くんだい?」
(;^ω^)「お婆さん!あぶないお!」
( ‘∀‘) 「どけ、ババア!」
- 167 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 18:35:08 ID:o4l4GYmw0
先程のひったくりが、老婆に掴みかかろうとしたその瞬間。
「せいや!」
(;‘∀‘) 「ぐあ!」
老婆はそのひ弱そうな体からは信じられぬ力で、
男の手を掴み、体を持ち上げ、背負い投げで床にはり倒した。
ξ;゚听)ξ(;^ω^)(;><)「……うそーん!!!!!!!!!!!!!」
- 168 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 18:35:36 ID:o4l4GYmw0
するとおばあちゃんから男の声が。
「モナー警部、お願いします!」
( ´∀`)「よいしょっと……ひったくり犯現行犯逮捕だモナ」
謎の男が、急に電信柱の陰から現れ、ひったくりの男に手錠をかけた。
そして、老婆は、勝ち誇った顔で、倒れている男を覗き込んだ。
- 169 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 18:35:58 ID:o4l4GYmw0
(;‘∀‘) 「……くそ!てめえ何者だ!?ババア!」
すると、おばあさんの顔がはがれ、カツラと纏っていたみすぼらしい服が取れると、
この場にいる者たちにとって見慣れた、ドクオの顔が現れた。
('A`)「よ」
ξ;゚听)ξ「……あんた何してんの……」
(;^ω^)「……ドクオだお……」
(;><)「……また変装なんです……」
- 170 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 18:36:32 ID:o4l4GYmw0
( ´∀`)「お疲れだモナ。今回も助かったモナ」
手錠をかけ、拘束されたひったくりの上に座って、
先程まで老婆だった探偵に話しかけた。
('∀`)「……いえいえ警部。今日は久々にやりがいある任務だったし、
しっかりとギャラは頂きますから、気にしないで下さい」
( ´∀`)「こういうところは相変わらずだモナ」
そういって、警部と呼ばれた男はドクオに封筒を渡した。
- 171 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 18:37:04 ID:o4l4GYmw0
(;‘∀‘) 「てめえ!俺の上に座って雑談すんじゃねえ!」
(;><)「ドクオさん、そこの彼は誰なんです?っていうか何してるんです?」
ξ;゚听)ξ「……状況が飲み込めないわ。教えなさい」
ツンは男にひったくられた自分のバッグを無理やり取り返した後、
不思議そうな顔を浮かべて聞いた。
('A`)「彼はモナー警部。俺が以前いたとこの上司だ。ちょっとした知り合いさ」
(;^ω^)「そういえば、この人、朝ひったくりがどうとかとか言って、
僕らに話しかけてきた人だお……」
- 172 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 18:37:32 ID:o4l4GYmw0
( ´∀`)「そうだモナ。今回、この辺りで連続するひったくり事件の犯人を
捕まえるために、元毒田刑事の力を借りてたんだモナ。
今までの犯行現場の傾向と、この近辺の地理から、犯人の次の予想犯行現場の
ロケーティングをしてもらって、見事大当たりというわけだモナ」
('A`)「というわけだ。老婆の格好で、貴重そうな重いバッグを持って
わざと相手のターゲットにさせ、捕える計画だったんだ。
若干シナリオが変わったが、結果オーライだな」
(;><)「……ええええ!っていうかドクオさんって元刑事だったんです!???」
('A`)「昔は色々あったんだよ」
( ´∀`)「今日は助かったモナ。また困った事件があったら、訪ねてもいいかモナ?」
('A`)「そうですね……。事件じゃなくても今度飲みにでも行きましょう」
( ´∀`)「……乗ったモナ」
- 173 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 18:37:54 ID:o4l4GYmw0
('∀`)「勿論モナーさんの奢りで」
( ´∀`)「そうきたかモナ」
('∀`)「まあ久々なんですからいいじゃないですか」
( ´∀`)「しょうがないモナ……。とにかくこいつを連れて行くモナ。
今日は本当に助かったモナ」
(;‘∀‘) 「離せ……。くそー」
そう言ってモナーは、ひったくりを無理やり引き連れて、
近くに停めてあった車に乗り込み、去っていった。
- 174 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 18:38:16 ID:o4l4GYmw0
(;><)「……」
黄昏は過ぎ去り、やがて街には夜の帳が降りようとしていた。
まだ少し明るい夜空には、微かに見え始めた星々が煌めいていた。
(;><)「……疲れたんです。休日だっていうのに」
ワカンナイデスは、夜空を見上げながら、
今日の休日が何の意味があったのだろうかと、再び問い直していた。
ξ゚听)ξ「あ、そういえば」
( ^ω^)「?」
('A`)「ん?」
- 175 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 18:38:40 ID:o4l4GYmw0
ξ゚听)ξ「……高級フレンチを奢る約束だったわね」
(;'A`)「……ん?なんのことかね?」
( ^ω^)「……ツンが悪魔のような顔をしてるお……」
ξ゚ー゚)ξ「ふふふふふふふふ」
(;'A`)「……さ、さ、財布を忘れちゃったなー。
困ったなー。これじゃまるでサザエさんじゃないかー」
ξ゚听)ξ「さっき貰ってたでしょ、お金」
(;'A`)「……し、仕方ない」
ξ゚ー゚)ξ「ファミレスで我慢してあげるわよ。さ、お腹がすいたわ。行きましょ」
- 176 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 18:39:10 ID:o4l4GYmw0
*
四人は近くのファミレスで、夕食を共にしていた。
何気ない休みの日の、仲間たちで食べる夕食。
そんなものにワカンナイデスは些細な幸せを感じていた。
(><)「mog mog。美味いんです」
( ^ω^)「休日の夕食は最高だお」
ξ゚听)ξ「正直、本当は高いものより、身近で安いものの方がおいしいのよね」
テーブルのスパゲティを口に運びながらツンが言った。
(><)スリスリ「さっすがドクオさんなんですー。夕飯を奢ってくれるとは。
さすが超最強天才変態名探偵と呼ばれるだけのことはあるんですー」
(;^ω^)「媚売りまくってるお……」
- 177 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 18:39:45 ID:o4l4GYmw0
('A`)「お前は奢んないぞワカンナイデス。俺が約束したのはそこのカップルだけだ。
しかもお前、どんだけ注文してんだ」
(;><)「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああ!!
ドクオさんの金だと思って手加減なしで、大量に注文してしまったんですー!!
何で注文中に止めてくれなかったんです!!!!!!!!ひどいんです!!」
('A`)「……いや、面白そうだったから」
(;><)「出たドSーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
('A`)「しかも、なんだその無駄な大量のつまみ系、絶対食わないだろ。
俺の財布の中身を減らそうという明確な悪意を感じるわ。その注文に」
(;><)「……レシートとって欲しいんです」
( ^ω^)「はい、だお」
(;><)「一桁、二桁、三桁、四桁、五桁・・・・・・
ぴぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
- 178 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 18:40:11 ID:o4l4GYmw0
三十分後。
四人は楽しい食事を終え、別れの時を迎えようとしていた。
(><)「……財布があった……むしろなければ良かった……」
( ^ω^)「ばいぶーだお!」
ξ゚听)ξ「今日はご馳走様」
('A`)「じゃーな」
(><)「おさらばなんです!」
('A`)「ワカンナイデス、明日遅れんなよ!それと約束通り掃除だからな」
(><)「ちっ覚えてたか……了解なんです……」
- 179 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 18:40:34 ID:o4l4GYmw0
ξ゚听)ξ「また事務所に遊びに行ってもいいかしら?」
( ^ω^)「そうだお。また遊びに行きたいお、ドクオ」
('A`)「おう、いいよ。でも邪魔すんなよ」
(><)「来るなら土産を持ってくるんです!」
ξ゚听)ξ( ^ω^)(><)('A`)「そいじゃー」
ドクオ、ツンとブーン、ワカンナイデス。
それぞれ別の道に歩き出した。
今日が終われば、明日はまた仕事。
それでも、それぞれは今日という休日を堪能した満足感を感じながら、帰路についた。
一人の男を除いて。
- 180 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 18:41:23 ID:o4l4GYmw0
(><)「……今日は一体何のために有給を貰ったんです……」
(><)「ナンパは成功しない、街中を駆け回って疲れて、財布は随分軽くなったんです」
ワカンナイデスが見上げた夜空には、少し前までのものとは違い、
暗闇とコントラストされて煌めく星々が、本当に綺麗に映っていた。
(><)「そういえば小さいころ、お袋が教えてくれたんです……」
(><)「夕焼けの綺麗な日は、綺麗な星が出るって……」
(><)「東京に来てから、こんなに綺麗に星が見えなかったんです……」
(><)「そういえば、みんなで夕食を食べたのも久しぶりだったんです……」
- 181 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 18:41:48 ID:o4l4GYmw0
ワカンナイデスは、ボロアパートで共に夕食を食べるものも居らず、
いつも寂しく一人で済ませていた。
それすら慣れてしまっていた彼は、疑問や孤独を感じることなどなかった。
久々に蘇った共に食べる夕食の美味しさ。
地味だけれども、それでもなんだか暖かい喜びだった。
(><)「……今日は最悪だったけど」
(><)「……こんな日も悪くないんです」
そう言って、他の皆とは違う満足感を感じながら、
珍しく美しい都会の夜空の下、ワカンナイデスは家路を辿った。
- 182 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 18:42:31 ID:o4l4GYmw0
*
翌朝。
(;><)「ド、ドクオさん何してるんです??」
('A`)「何って、見りゃわかるだろ。掃除だよ掃除」
(;><)「そんなBANANA。もう結構片付いてるんです……。
僕にやらせるつもりなんじゃなかったんです……」
('A`)「ってかぶつぶつ言ってないで手伝ってくれ。
ついでにそれとこの紙のリストに載ってる書類を探してほしいんだ」
(;><)「これはなんなんです!?」
- 183 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 18:42:57 ID:o4l4GYmw0
('A`)「モララティの今まで手に入れた犯罪の証拠が載ってる。
起訴には不十分だが、とりあえず持ってると有利なことにかわりない。
うっかり何処か置いちゃったんだよ」
(;><)「何でそんなものを失くすんです!?」
('A`)「いやいや悪い悪い」
(;><)「……」
沈黙の後、ドクオは宙を見据えながら言った。
('A`)「……でも」
(><)「?」
- 184 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 18:43:33 ID:o4l4GYmw0
('A`)「……俺はいつか必ずモララティ教授を、いや、
大悪党モララーを絞首台に送ってみせる……。必ずだ」
(><)「……」
('A`)「……さ!ぼっとしてないでそっちから始めてくれ!
こうしている間にもあいつは力をつけてるんだから」
(><)「……了解なんです!」
- 185 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 18:43:57 ID:o4l4GYmw0
ワカンナイデスはこの瞬間一つのことに気づいた。
(><)「……」
自分がここで探偵助手をやっているのは、
何よりこのドクオを慕っていて、感謝していて、尊敬しているからなんだ、と。
そう、何よりワカンナイデスはこの男が好きなのだ。
ワカンナイデスは、昨日の最悪のメモリーや疲労などすっかり忘れて、
この汚い事務所の片づけに取り組み始めた。
- 186 名前:x ◆3C8zs.ICS6 投稿日:2011/07/24(日) 18:44:17 ID:o4l4GYmw0
FIN.
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