- 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 21:30:51.13 ID:ILE8r9v/i
- 第二話
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 21:32:24.41 ID:ILE8r9v/i
( ^ω^)「し、失礼しますお」
意外にも質素な作りの部屋には、狐塚の他に秘書らしき女性もいた。
爪'ー`)y‐ 「おー、来たな」
从 ゚∀从(おい、こいつ本当に偉いのかよ?うさんくせぇぞ)
(;-_-)(馬鹿黙ってろ)
爪'ー`)y‐ 「おーい。そこのチャラいの、丸聞こえだぞ」
(;^ω^)「すっ、すいませんお!あとで厳しく・・・」
爪'ー`)y‐ 「あー、いいからいいから。じゃあ本題に映るぞー」
爪'ー`)y‐ 「コホン」
(;^ω^)(;-_-)从 ゚∀从?
爪'ー`)y‐ 「僕と契約して魔法少年になってよ」
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 21:34:12.59 ID:ILE8r9v/i
- (;^ω^)「はぁ?」
('、`*川「狐塚さん真面目にやってください」
爪'ー`)y‐ 「なんだよー、軽い冗談じゃねぇかよー」
('、`*川「皆さん困惑してますから」
('、`*川「申し遅れました。私狐塚の秘書を務めています伊藤です」
(;^ω^)「どうも」
('、`*川「今回内藤小隊に来て貰ったのは・・・」
爪'ー`)y‐ 「俺が話すからペニサスは下がってろー」
('、`*川「失礼しました」
从 ゚∀从(こいつ本当に偉いんだな)
(;-_-)(頼むから黙ってくれ)
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 21:36:10.32 ID:ILE8r9v/i
- 爪'ー`)y‐ 「近々ヒロユキの奴らがでっかい空母連れてこの辺に来るらしいんだよね」
(;^ω^)「マジですかお」
爪'ー`)y‐ 「お前のせいで目つけられたんだぞー」
狐塚はそこで一息つくと煙草に火をつけ、内藤らにも勧めて来る。
内藤はそれを無言で首を振り遠慮すると、狐塚は話を続けた。
爪'ー`)y‐ 「制空戦したいけど観測が人員不足なわけ」
(;^ω^)「僕たちってことですかお?」
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 21:38:26.29 ID:ILE8r9v/i
- 爪'ー`)y‐ 「察し早いねー」
(;^ω^)「ちょ、ちょっと待ってくださいお。僕は観測官の資格持ってないし知識もありませんお!」
从 ゚∀从(観測機ってあれか?着弾の遠近を報告するやつ?)
(-_-)(そうだよ。敵艦に超至近距離だから誰もやりたがらないんじゃない?)
(;^ω^)「だいたい僕以外に適任が・・・」
爪'ー`)y‐ 「ばかちん。お前がやるんじゃねーよ」
爪'ー`)y‐ 「ペニサス連れて来て」
('、`*川「はい」
伊藤は一礼すると、そそくさと部屋を出て行った。
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 21:40:36.30 ID:ILE8r9v/i
- ('、`*川「どうぞこちらへ」
伊藤が先導し、部屋に入る。
爪'ー`)y‐ 「こいつらが観測機やるからお前らその直掩な」
狐塚が指し示した先にいた内、片方は内藤もよく知る男だった。
(゚、゚トソン「都村トソンです。お見知りおきを」
( ・∀・)+「どもー、藻浦モララーです」
(;^ω^)「モララー、やっぱりお前かお」
从 ゚∀从(え?知り合い?)
( ・∀・)「やっぱりってなんだ。頭ぶち抜くぞ」
(゚、゚;トソン「えっ?あの?」
( ^ω^)「お前の弾が狙ったところに当たった試しがあるかお?」
( ・∀・)「零距離で斉射してやろうか」
(;-_-)(知り合いみたいだな)
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 21:42:20.90 ID:ILE8r9v/i
- 爪'ー`)y‐ 「お前らここ上官室だぞ」
延々と続き、終わりそうに無い言い争いを狐塚が制する。
(;-_-)(内藤さん、知り合いですか)
( ^ω^)(後で説明するお)
( ^ω^)「でもどうして司令官直々に?」
爪'ー`)y‐ 「いやさぁ、観測機もその直掩も下手すりゃっつーか死ぬじゃん普通。しかも任意だから断る人多いわけ」
( ^ω^)「・・・」
予想以上に悪どいやり方に思わず苦笑した。
狐塚の言っている事はつまり、司令官直々にお願いする事で操縦士に断るという選択肢を無くさせるのが目的なのだ。
爪'ー`)y‐ 「こうでもしないとやってらんないのよ。網羅と都村は優秀なコンビだし絶対死なせたくないわけ」
爪'ー`)y‐ 「で、どうする?」
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 21:44:17.73 ID:ILE8r9v/i
- どうするもこうするもない。
やるしかないだろう。
憎まれ口しか叩かないとはいえ、モララーは旧友だ。
自分に出来るのなら死なせたくないというのが本意だ。
( ^ω^)「ちょっとだけ待ってくださいお」
爪'ー`)y‐ 「おー待つ待つ」
自分だけなら構わない。
だがヒッキーとハインの二人が了承するかどうかは別だ。
内藤としては万が一にでも若い芽を摘みたくない、そう思っていた。
( ^ω^)「お前ら、観測機の直掩ってのは本当に危険だお」
そこまで言ったところで、ハインが言葉を遮る。
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 21:45:56.66 ID:ILE8r9v/i
- 从 ゚∀从「内藤さん、俺らも行きますよ。な?ヒッキー?」
(-_-)「当たり前です。確かに怖いですけど」
( ^ω^)「・・・命の保証は出来んお」
从 ゚∀从「そんなん今までだって変わんないっすよ!俺は内藤さんが行くならとこでもついてきます」
(゚、゚トソン(うわぁ、熱い)
(-_-)「高岡声でかい。でも僕も同意です」
( ^ω^)「おっお。お前ら泣かせてくれるじゃねぇかお」
爪'ー`)y‐ 「きまったなー。ったく、人の部屋で青春しやがって」
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 21:48:13.42 ID:ILE8r9v/i
- ('、`*川「では、『兪鳥』の方へ伝えて来ます」
(゚、゚トソン「内藤編隊長、お噂はかねがね。よろしくお願いします」
( ・∀・)「別に無理しなくても俺一人で全部よけれるけどな」
( ^ω^)「お前じゃなくて都村さんの援護だから勘違いすんなお」
爪'ー`)y‐ 「だぁーっ、うるせぇうるせぇ!部屋出てやれ!」
(;-_-)「すっ、すいません!」
( ・∀・)「高岡君に樋木君だっけ?君らもこんな奴に付かないで俺んとここいよ」
从# ゚∀从「あぁん?」
(;-_-)「高岡!!ほら内藤さんも行きましょう!」
( ^ω^)「おっお。モララー、ビビって逃げ出すなお」
( ・∀・)「お前じゃないんだから」
(゚、゚トソン(前途多難ですね・・・)
(;-_-)(前途多難だ・・・)
協力など到底していけそうにない面子に二人は頭を抱えた。
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 21:50:05.58 ID:ILE8r9v/i
- ***********
警報が鳴った。
('A`)「マンドクセ」
一言呟いて身体を起こす。
( ゚д゚ )「いつまで寝ている」
('A`)「・・・」
(# ゚д゚ )「チッ。ルーキー殿はお目覚めも遅くて結構ですからな」
ルーキーと呼ばれた男、ドクオ=シノーツは同僚の嫌味を受け流すと戦闘服を着込む。
(# ゚д゚ )「出撃なんだぞ!はやくしろ!」
確か昨日もこちらから出撃したはずだ。
ってことはこれで三日連続空戦が繰り広げられたことになる。
('A`)「物騒な奴らだ」
帝国のお偉方曰く、このへんは神の地らしい。
それを大義名分に帝国は、近づいて来た国家に片っ端から喧嘩を売っている。
戦争は貴族のショーという考えだ。
心底腐っていると思う。
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 21:52:07.12 ID:ILE8r9v/i
- ('A`)「腐ってるよ」
それは自分に対しての気持ちでもあった。
空を飛ぶために敵を堕とす。
やっていることは貴族と大差ない。
しかしドクオは他の生き方を知らなかった。
生きるためには戦空機に乗るしかないのだ。
('A`)「行こう・・・」
幸いと言うべきなのか、ドクオには操縦に関して天賦の才があった。
永く生きていればそれだけ長く空を飛べる。
その事だけをモチベーションに今まで飛んできた。
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 21:54:29.26 ID:ILE8r9v/i
- ('A`)「撃ちたくねぇよ・・・」
つい先日の初陣で撃った機銃の感覚がまだ腕に残っている。
撃ち落とした操縦士の憎しみに歪んだ顔もまた脳裏に焼き付いて離れない。
(;'A`)「クソッ・・・」
ドクオは臆病だった。
それはもうどうしようもないほどに。
空戦の時はなるべく目立たないように雲に隠れて飛んでいる。
しかし戦場ではそんな戦空機は絶好の的でしかない。
無論ドクオも死にたくはない。
その度に驚異的パフォーマンスで翻弄し敵を屠ってきた。
そして気づけば稀代のルーキーとして担ぎ上げられていた。
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 21:56:25.90 ID:ILE8r9v/i
- 戦いたくない
でも飛びたい
そんな葛藤を繰り広げては、意思の弱いドクオは言われるがままに戦ってきた。
(´・_ゝ・`)「おい野郎ども空戦だ」
今作戦の司令官でありドクオの隊の編隊長でもあるデミタス=フォレストヒルが檄を飛ばす。
(´・_ゝ・`)「今から空母に乗って野蛮人共の海域へ行く!」
(´#・_ゝ・`)「言うことは一つ!野蛮人を一匹でも多く叩き落とせ!!」
上官盛岡の言葉に歓声があがる。
ここにいるのは空戦好きばかりで反りが合わない。
(;'A`)「張り切りすぎだろ・・・」
ドクオは操縦席に乗り込みそそくさと機体の点検を始めた。
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 21:58:11.47 ID:ILE8r9v/i
- *****
限りなく空が続いている。
(*'A`)「いい天気だ」
ただ残念なことや周りには数十機の戦空機が同じように飛び、目下には数メートルもある主砲を称えた弩級空母「アフィーカス」。
(;'A`)「うぅ・・・。こんな大規模な空戦とか・・・今度こそ死ぬ」
( ゚д゚ )「黙っていろ。もうすぐ戦域に入る」
('A`)「わ、分かった」
ドクオと同部屋の同僚、ミルナ=エステルガーが注意を促す。
先ほどと違い、その口調には嫌味が無い。
空の上では敵わないと分かっているからだ。
( ゚д゚ )「霧が濃いな・・・。下は大丈夫だろうか」
(;'A`)「う、うん。相手も同じ条件だし、敵は迎え撃つわけだから迂闊に動けないし大丈夫だと思うよ」
( ゚д゚ )「そうか」
(´・_ゝ・`)「うるせぇぞ!帝国があんな野蛮人共に負けるわけねぇだろ」
その台詞にドクオは危機感を感じた。
上流階級の兵はいつも自国の力を過信している。
いや、というより敵国を舐め切っているのだ。
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:01:04.31 ID:ILE8r9v/i
- ( ゚д゚ )「チッ・・・」
ミルナは無能な上官に聞こえないように舌打ちをする。
(;'A`)(・・・デミタスには期待できないな)
ドクオはすぐ隣を飛ぶミルナに手信号で単独行動する旨を伝える。
(;'A`)「頼むからこの前のやつは来ないでくれよ・・・」
ドクオは先日撃ち堕とした凄腕の操縦士を思い出す。
初めて出会う自分に匹敵する実力を持った操縦士だ。
相対した瞬間にドクオが感じたのは恐怖。
あの時は勝つことができたが次はどうなるか分からない。
(;'A`)(今回も目立たないようにやろう)
できれば二度と出会いたくない、そんな相手だった。
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:03:47.94 ID:ILE8r9v/i
- **********
( ・∀・)「おいおい、こんなに霧って濃いのかい?」
海戦では遠くて見えない範囲の着弾確認、報告をする必要がある。
その場合観測機が戦艦に肉薄することになる。
その任務を課せられたのがモララーであり、直掩つまり護衛をするのが内藤小隊であった。
(゚、゚トソン「いえ、ここは特に霧の強い地域だそうです」
( ^ω^)「帰るなら今のうちだお」
現在、複座観測機「矢追」一機、単座戦空機「新速」三機は無線で繋がれている。
从 ゚∀从「ビビってんのか?あぁん?」
( ・∀・)+「ハハハ、そんなはずないだろう。君たち雑魚の心配をしてるんじゃないか」
从# ゚∀从「てんめぇ!また内藤さんをバカにしやがって!」
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:06:20.60 ID:ILE8r9v/i
- またもハインの怒声を遮り、伝声管から声が聞こえる。
爪'ー`)y‐ 「あーあー、聞こえるか?」
( ^ω^)「はっ!聞こえますお」
(゚、゚トソン「問題ありません」
本部からの通信は観測官であるトソンと編隊長である内藤にだけ届いている。
爪'ー`)y‐ 「おう。おっけいだ」
('、`*川「私伊藤が本艦の管制官を務めます。何か質問はありますか?」
(゚、゚トソン「敵の規模を」
('、`*川「敵艦名は空母『アフィーカス』。前部についている主砲の他にも左右に連装砲四基、単装砲八基が標準装備としてありますね。それから魚雷が八門ありますがこれに関してはこちらでどうにか対処しますので構いません」
( ^ω^)「戦空機数は?」
('、`*川「機体数はこちらも完全には把握しかねますが空母の規模からしてこちらと同等はあっても超えることはないでしょう」
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:09:09.15 ID:ILE8r9v/i
- ('、`*川「他にございますか?」
(゚、゚トソン「大丈夫です」
( ^ω^)「大丈夫ですお」
('、`*川「では、ご武運を」
爪'ー`)y‐ 「おいお前ら。代わりいねぇんだから死んだら極刑な」
(;^ω^)「死亡フラグ立てないでくださいお・・・」
爪'ー`)y‐ 「ハッハッハ!そんだけ突っ込めりゃ余裕だな」
そこまで聞いたところで内藤は通信を隊へと切り替える。
( ^ω^)「そろそろ戦域に入るお」
(;-_-)「あー大丈夫かな」
从 ゚∀从「弱気になんなよ!俺たちは都村さんを守ればいいだけだろ」
( ^ω^)「おっお。そうだお。だからいつも通りリラックスだお」
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:13:08.20 ID:ILE8r9v/i
- ( ^ω^)「布陣は前にモララー後ろが僕。ハインと樋木がウィングだお」
(;-_-)「観測機が前・・・ですか?」
( ^ω^)「邪魔になるからおね」
( ・∀・)「そんなに心配しなくても俺には当たらないよ」
( ^ω^)「悔しいけどあいつの操縦は信頼できるお。だから言うことは一つだけ」
从 ゚∀从(;-_-)
( ^ω^)「生き残ることを最優先にするお」
从 ゚∀从(;-_-)「イエッサー」
観測機及び直掩部隊は濃霧の中を飛翔する
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:16:35.72 ID:ILE8r9v/i
ーーーーー
ーーーー
ーーー
相変わらず霧が深い。
モララー達は現在VIPが誇る弩級空母「兪鳥」の上空を旋回していた。
( ・∀・)「さーて、そろそろ敵さんのお出ましの時間だ」
( ^ω^)「こっからは言い争いは無しだお」
(゚、゚トソン(-_-)(ほっ)
( ・∀・)「トソン準備はいいかい?」
(゚、゚トソン「大丈夫ですモララー君」
( ^ω^)「こっちも問題ないお」
( ・∀・)「じゃあ一足先に行きますか」
網羅観測隊は戦空機群を抜け、敵艦隊より先に捕捉するべく飛んだ。
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:20:03.22 ID:ILE8r9v/i
- (;・∀・)「くっそー。霧濃すぎるだろ」
(-_-)「そのおかげで敵もあんまり来ないから楽ですね」
从 ゚∀从「つまんないっす」
(゚、゚トソン「まだ敵艦を発見してもいないのですから油断なさらず」
彼らには相変わらず緊張感が無い。
( ^ω^)(このまま何事もなくってわけにはいかないおね)
そうだ。
これは大規模な制空戦なのだ。
何も起こらないはずが無い。
ただでさえ観測と直掩という危険な任務、一瞬の気の緩みも許されない。
( ^ω^)「気を抜きすぎだお。死にたくなかったら集中しろお」
(;-_-)「す、すいません」
从 ゚∀从「失礼しましたっ!」
内藤は一つ頷くと、霧の向こうに目を凝らした。
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:23:15.46 ID:ILE8r9v/i
- ( ・∀・)「お前ら来たぞ!『シベリア』6機!多分そんくらい!」
从 ゚∀从「いい加減なこと言ってんじゃ・・・」
(♯^ω^)「ハイン!」
从; ゚∀从「う、うす」
無論こんな濃霧の中だ。
内藤の慧眼を持ってしても機体数までは把握することは不可能だろう。
それでも不確かな情報を内藤が信じるのはひとえにモララーへの信頼だった。
(♯^ω^)「お前ら!死にたくなかったら僕とモララーに逆らうんじゃねえお!質問もなし!」
(;-_-)从; ゚∀从(゚、゚;トソン
叫ぶ。
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:27:46.13 ID:ILE8r9v/i
- ( ・∀・)「高岡、二時方向に機銃」
从 ゚∀从「何も見えねぇぞ!」
ハインが反論したその時、モララーが言った正にその方向から機銃の嵐が吹き荒れる。
从# ゚∀从「のわぁっ!」
高岡はすぐさま機体を翻す。
( ・∀・)「俺ならまだしも上官の言うことも聞けないのか?二流だな」
( ^ω^)「言う事聞かないからだお」
モララー機とハイン機の距離は約50メートル。
その距離で、しかもハイン寄りの空域の機体をこの濃霧の中モララーは見つけだした。
いきなり信じろと言う方が無理な話だ。
从# ゚∀从「くそっ!邪魔だ!」
ハインは敵機の後ろを取ろうと奮闘し、雲に呑まれて行く。
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:30:17.42 ID:ILE8r9v/i
- ( ^ω^)「よし、樋木はハインを追って協力して敵を堕とすお。モララー機を見失っちゃだめだお」
(;-_-)「はいっ。でも護衛は」
( ^ω^)「あんまり多くても目立つし僕だけで充分だお」
(;-_-)「はっ!」
樋木はハインが飛んだ方向へと向かう。
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:33:32.63 ID:ILE8r9v/i
- ( ・∀・)「おいおい本当にお前だけで大丈夫か?俺の機銃には期待してくれるなよ」
( ^ω^)「エースなめんな・・・っおっ!」
言うが早いか内藤はブーストをかけると、機体を傾け雲の中に突っ込んで行く。
厚い雲だった。
霧の濃さで視界不良に拍車がかかる。
( ^ω^)「見つけたお」
内藤は言うが早いか雲を突き破り俊敏な動きで急旋回、側面に潜り込むと機銃を放つ。
一撃で機関部を撃ち抜かれた敵機はその場で爆砕し、塵となる。
内藤そのまま大回りにモララー機の周りを旋回し、哨戒を続けた。
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:36:09.34 ID:ILE8r9v/i
- ーーーーー
ーーーー
ーー
(゚、゚トソン「モララー君!まだ見つかりませんか?」
( ・∀・)「今探してるっ!」
モララーは必死に下方へ目を凝らす。
大分高度は落としたがまだ見えて来ない。
モララーは伝声管を握ると、内藤へと繋ぐ。
( ・∀・)「大分霧が濃い。常に無線を付けといてくれ。一応だ」
了解と一言声がしたのを確認すると、無線をスピーカーに切り替える。
(゚、゚トソン「早くしないとこちらの空母が危険です」
( ・∀・)
分かってはいる。
分かってはいるのだがそれが難しい。
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:39:13.29 ID:ILE8r9v/i
- (;・∀・)「さっさとでて来いよバチンカスヤロー共」
その時、ふと見下ろした先に真っ黒な塊を見つけた。
( ・∀・)+
( ・∀・)「敵艦発見!内藤カモン!」
トソンは本艦隊へ通信を繋ぐ。
(゚、゚;トソン「敵影発見。兪鳥から水平距離約17キロ、進路280度、風速10m!」
あちらの声は聞こえない。
戦空機も観測機も機動性が一番重要だから受信に関してはあまり優秀ではないのだ。
( ^ω^)「おっお。さすがモララーだお」
( ・∀・)「トソン。歯食いしばれよぉ?」
モララー機が先行し敵艦隊へと飛ぶ。
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:42:02.22 ID:ILE8r9v/i
- モララーは雲を探した。
いくら霧が深いとは言え単騎で戦艦へと肉薄するのは自殺行為だ。
轟音が鳴り響く。
兪鳥からの砲撃だ。
主砲から繰り出された弾丸はアフィーカスには遠く及ばず海へと突き刺さる。
(゚、゚;トソン「モララー君!もっと近づいてください!」
トソンは電信を送り続ける。
弾着の情報は音声通信ではなくツー・トン電信を使用する。
爆音で音声が聞き取れなかった聞き取れないということもあるからだ。
(;・∀・)「無茶言うなっ」
叫ぶと同時にモララーは操縦桿を倒す。先程まで新速が居た場所を弾丸が駆けていく。
(;・∀・)「内藤っ!どこ行きやがった」
(゚、゚;トソン「進路変更20度!弾着未だありません!」
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:44:57.37 ID:ILE8r9v/i
(;^ω^)「ちょっと今援護できそうにないお」
モララーは雲に逃げ込みつつ振り返る。
内藤は三機のシベリアに追尾されていた。
(;^ω^)「こいつらまとめて堕とすから少し堪えろお!」
(;・∀・)「死ぬなよ!」
モララーは高度を下げ、遠目からアフィーカスを見る。
(;・∀・)「やべぇな」
(゚、゚;トソン「まずいです!」
トソンは伝声管を掴み取り叫ぶ。
(゚、゚;トソン「敵主砲来ます!」
凄まじい爆音と共に黒煙が舞う。
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:51:05.41 ID:ILE8r9v/i
- (;・∀・)「おいおい当たんなよ〜?」
(゚、゚;トソン「早く夾叉しなければいけません。もっと近づいてください」
遠距離砲火は確立論である。
海戦は敵艦をいかに早く「散布界」と呼ばれる射程域に入れられるかが鍵となる。敵艦を散布界に入れたまま砲撃を続ければいつか直撃するというわけだ。
弾着は当たったかどうかとは別に敵に砲弾が届いたことを意味し、夾叉とは弾着範囲内に目標があることを示す。
(;・∀・)「分かった!」
モララーは歯を食いしばり対空砲火を潜り抜けて行く。
下から矢のように飛びすさる対空砲火。
行く手を遮るように放たれる機銃。
その二つをモララーはほぼ完璧に近い形で縫うように回避する。
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:54:19.53 ID:ILE8r9v/i
- 上空からプロペラ音がする。
敵艦隊直掩機が二機急降下してくる。
(;・∀・)「ちっくしょ!トソンこれ以上はきつい!」
複座である分機体は重く、スピードも出ない。
また装甲も新速やシベリアに比べると些か心許ない。
この状況下、単騎で飛び回っているモララーの疲労は計り知れない。
(゚、゚;トソン「この距離を保って逃げ回ってください!」
トソンは祈るように電信を続ける。
ツーの信号は近い、トンの信号は遠い、ツートンが夾叉。
電信を握りしめ離さない。
(;・∀・)「ヤバイ!ちょっと反撃すんぞ!」
(゚、゚;トソン「分かりました!なるべく移動は避けてください!」
機首を持ち上げ機銃で迎撃する。
しかし銃弾はあらぬ方向へと飛んで行った。
(゚、゚;トソン「モララー君!もっと近づかなきゃ!」
- 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:57:22.68 ID:ILE8r9v/i
- (;・∀・)「やっぱ当たらねぇか」
網羅モララー。
彼は内藤の学生時代からの旧友だった。
操縦技術は内藤も舌を巻くほどであり内藤のライバルでもあった。
ただ唯一にして最大の弱点がある。
それは射撃が致命的に下手な事であった。
(゚、゚;トソン「後ろ、ピッタリ付かれてます!」
矢追は複座観測機。
もともとのスペックが違いすぎる。
(;・∀・)「分かってる!」
空を縦横無尽に駆け回り、銃弾を回避する。
対空砲火を避けながら敵機に反撃を加えるのは並大抵のことでは無い。
- 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 23:00:00.46 ID:ILE8r9v/i
- (゚、゚;トソン「モララー君!そろそろ観測を!」
兪鳥から放たれる斉射は未だ着弾していない。
モララーは操縦桿を壊れるほどに握りしめ、敵の銃撃をすんでのところで躱す。
集中を切らしたら、その瞬間矢追は蜂の巣になる。
(;・∀・)「無理無理!だってこいつら・・・」
爆音がモララーの言葉を遮り、代わりにスピーカーから声が響く。
从# ゚∀从「遅れたっ!護衛に入る!」
(;-_-)「僕は内藤さんの掩護に行きます!」
差し伸べられた救いの手にホッと胸を撫で下ろす。
(;・∀・)「おっせーぞ!了解!」
トソンは伝声管を握る。
(゚、゚;トソン「高岡さん、ナイスタイミングです!」
- 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 23:01:11.05 ID:ILE8r9v/i
- 先程まで矢追を追尾していた敵機はハインとヒッキーの銃撃により爆砕していた。
(;・∀・)(このチャンスを生かす!)
モララーは咆哮を上げアフィーカスへと突進していった。
*****
- 53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 23:03:45.47 ID:ILE8r9v/i
- (;^ω^)「くっ・・・」
(;^ω^)(偉そうなこと言っておいて結構きついおね)
執拗にシベリア三機は攻めて来る。
ジグザグに飛び回り撹乱しようとするが隊は恐るべきチームワークで、決して崩れなかった。
(;^ω^)(矢追だとちときつかったかもしれないお)
内藤はこの小隊がモララーではなく自分を狙ったことに少なからず安堵した。
(;^ω^)(とりあえず・・・こいつらを撒くお)
(;^ω^)「ハイン!さっさと堕としてモララーを頼むお!」
从# ゚∀从「イエッサー」
- 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 23:06:25.88 ID:ILE8r9v/i
- 空が爆ぜ、空気が爆砕する。
(;^ω^)(しっかしどうするかお・・・)
新速とシベリア。
スピードで勝るのはこちらだが三対一ではさすがにきつい。
(;^ω^)(このままじゃジリ貧だおね)
右に左に機体を振り、敵機に後ろをつかせない。
(;-_-)「内藤さん!援護します!」
スピーカーから救いの声が聞こえる。
勝機が見えた。
(;^ω^)「助かったお!」
二対三なら負ける気はしない。
(;^ω^)「僕が合図したら編隊長機を狙ってライフル撃つお!その後は僕がやる!」
(;-_-)「了解!!」
ヒッキーは空を猛スピードで駆け上がる。
- 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 23:09:27.46 ID:ILE8r9v/i
- (;^ω^)(まだこいつらはヒッキーに気づいてない・・・。次の斉射がチャンスだお)
内藤は背後に意識を集中する。
敵が引鉄を引くその瞬間に避けなければ一度に仕留めることは出来ない。
一瞬でも気を抜けば海の藻屑と化すこの状況で、なぜか内藤は笑みを浮かべた。
今までに味わったことのない感情、感覚に戸惑いを覚えた。
その時
背筋にゾクリと悪寒が走る。
(;^ω^)(来るッ!)
- 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 23:12:07.13 ID:ILE8r9v/i
- (;^ω^)「今だおっ!」
叫ぶと同時に内藤は操縦桿を持ち上げ機体を垂直に傾ける。
ヒッキー機より放たれた銃弾は空を駆け、と同時に編隊長機は爆砕する。
(;^ω^)「だおおおおっ!!」
内藤の機体は風を受け、その場で一瞬動きを止めた。
(;-_-)「なっ!?」
内藤を追尾していた二機はそのまま垂直に駆け上がる新速の真下を通過する。
内藤は一瞬の間もなく機体を反転し、後ろに着くと一機を機銃で屠る。
(;-_-)「す、すごい・・・」
- 61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 23:15:13.73 ID:ILE8r9v/i
- (;^ω^)「樋木!モララーのとこへ!」
(;-_-)「はっ、はい!」
残った一機を見やると、すでに離れたところにいる。
態勢を立て直して一騎打ちと言ったところだろうが、こちらには相手している暇はない。
( ^ω^)(さすがに全部は無理だったおね)
( ^ω^)(もったいないけど仕方ないお)
新速には固定機銃の他にもう一つの武器、ライフルがある。
新速の腹部に付いておりらおもに大型の爆雷機などを撃ち落とす際に用いられる。
内藤らがこれまで使ってこなかった理由は弾数が非常に少なく限られているからというのが一つ。
もう一つは機銃と同じく固定型であるため、素早く動く戦空機相手にはまず当たらないからだ。
- 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 23:18:23.24 ID:ILE8r9v/i
- そんな理由などものともせず内藤は機体を旋回させる。
そして内藤はひと呼吸おくと、何もない空間へライフルを放つ。
X軸Y軸だけでなくZ軸すらも考慮にいれたその予測射撃は真っ直ぐにシベリアへと突き刺さる。
( ^ω^)「ないすしょっと!だお」
内藤は伝声管を掴む。
( ^ω^)「今から向かうお!」
从 ゚∀从(;-_-)「了解、」
敵空母からはかなり離れてしまっている。
霧の奥に薄っすらと影が見える程度だ。
爆風を受け内藤は加速する。
- 64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 23:21:18.16 ID:ILE8r9v/i
- *****
(´・_ゝ・`)「徐々に砲弾が近づいてるな・・・」
こちらの弾丸はまだ検討ハズレの所を狙っている。
観測機は一体何をしているのか。
( ゚д゚ )「敵観測機及び直掩部隊に非常に優秀な者がいるようです」
(´・_ゝ・`)「ふん。野蛮人にもできるやつはいるようだな」
( ゚д゚ )(クズめ・・・)
(´・_ゝ・`)「シノーツを呼び戻せ。俺達がやるぞ」
デミタスは残酷な笑みを浮かべた。
第二話終わり
- 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 23:23:41.99 ID:ILE8r9v/i
- 新速
単座戦空機
兵装・・・固定機銃。対空ライフル
矢追
複座観測機
兵装・・・固定機銃。後部機銃
シベリア
単座戦空機
兵装・・・固定機銃
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