- 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/02/12(日) 19:42:56.08 ID:SrGWynLI0
- 第五話
- 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/02/12(日) 19:43:47.04 ID:SrGWynLI0
- 何機ものシベリアが襲い掛かってくる。
自軍の負けが濃厚なものになりつつあるのだ、一矢報いんと最後の猛攻を仕掛けているに違いない。
从#゚∀从「止まって見えるぞオラァ!!」
迫り来る二機のシベリアの隙間を縫うようにして飛ぶ。
一機を真っ向から機銃で一刀両断にし、もう一機はヒッキーが側面から挟撃する。
(;-_-)「叫ぶときは無線切ってくれ」
从 ゚∀从「かっかっか。いいじゃねぇか!気合だよ気合!」
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/02/12(日) 19:45:16.99 ID:SrGWynLI0
- ハインとヒッキーのコンビネーションは目を見張るものがあった。
まるで意識が通じ合っているかのように互いが互いを補完しあっている。
凡百の戦空士では10秒と相手をしていられないだろう。
( メ∀・)「数は多いが敵じゃないな」
从 ゚∀从「でもまた霧濃くなってきたっすよ」
(-_-)「モララーさんの目も見えてない状況ですし意外と危険かもしれませんね」
開戦直後までずっといがみ合っていたハインとモララーが普通に会話をしていた。
モララーの実力は認めざるを得ないということだろうか。
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/02/12(日) 19:48:07.08 ID:SrGWynLI0
- 不幸中の幸いか、シベリアの攻撃の手は止みつつあった。
皆が燃料の残っているうちに撤退していく。
アフィーカスの敗北がほとんど決まったからと見ていい。
被害もさほどあるわけではなく快勝と言える。
ただ、この一方的とも言える戦場で内藤だけが納得していなかった。
( ^ω^)「あっさりすぎるんだお」
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/02/12(日) 19:50:33.18 ID:SrGWynLI0
- あまりにもとんとん拍子に行き過ぎているのだ。
勿論敵戦空士が手を抜いていただとかそういう具体的な何かがあったわけではない。
それでも、背後で大きな何かが動き出していると思わずにはいられなかった。
そして嫌な予感とは得てして当たるものだ。
( ^ω^)(まぁモララーだし大丈夫だろうお)
( ^ω^)「僕は先に帰るお。二人はモラの護衛しっかりしろお」
(-_-)「どうしたんです?」
( ^ω^)「まぁ・・・勘ってやつだお」
从 ゚∀从「・・・わかりましたっ」
(;^ω^)「えらい素直じゃねぇかお」
(*-_-)「モララーさんに言われたことが堪えたんですよ」
从#゚∀从「うるっせぇ余計なこと言うんじゃねぇ!!」
(*^ω^)「おっお、いいことじゃねぇかお」
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/02/12(日) 19:53:50.58 ID:SrGWynLI0
从 ゚∀从「あぁもうそんなんじゃないっす!!」
( メ∀・)「はっはっは。アドバイスは聞くもんだぜ」
从#゚∀从「てめぇは黙ってろ!!」
部下二人が技術的にも精神的にも成長している。
此度の直掩は大変危険な任務ではあったが、受けた甲斐があったというものだ。
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/02/12(日) 19:55:24.86 ID:SrGWynLI0
- やがて新速は兪鳥上空へとたどり着いた。
甲板には次々と戦空機が着艦し、中には喜び合う姿も見て取れた。
全砲斉射こそ止んでいないが皆が此度の勝利を確信していた。
(‘、`*川「ご苦労様です。おかげさまで兪鳥はほとんど損傷も無く空戦部隊も大きな被害は見られませんでした」
( ^ω^)「そちらこそ」
(‘、`*川「矢追のほうはどちらに?」
( ^ω^)「すぐ来ると思いますお」
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/02/12(日) 19:58:08.07 ID:SrGWynLI0
- 爪'ー`)y‐「お前らすごいな!絶対死んだと思ってたわ」
('、`*川「ちょっと・・・!狐塚さん押さないでください」
爪'ー`)y‐「あぁん?硬いこと言うな。内藤、帰ったら宴な!」
( ^ω^)「いや、まだ油断は・・・」
一瞬警告を促そうとして、やめる。
なんの根拠も無い自分の勘だけで乗員数百名を動かすわけにはいかない。
もしなにかあるのならば自分が早く発見すればいいだけのこと。
狐塚の言葉を受け流し、接続を切る。
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/02/12(日) 20:00:33.83 ID:SrGWynLI0
- ふと、後ろを振り返った。
自分の小隊はすでに遥か後方で影も見えない。
( ^ω^)(二人が来るまで待つかお・・・?)
本来なら小隊で行動するのがベストだが、彼らの機体は万全とは言えない。
二人とも新兵ながら激戦の中を潜り抜けてきたのだ。
致命傷こそ無いものの胴体や尾翼など所々に風穴が開いている。
燃料も残り多くは無いだろうし自分に付き合わせることもないだろう。
( ^ω^)(まぁ、いいか)
( ^ω^)「モララーの治療はなるべく早くよろしくお」
内藤はもう一度だけ無線を管制に繋ぐとそれだけ言い残し兪鳥の後方へと向かった。
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/02/12(日) 20:02:52.18 ID:SrGWynLI0
- ―――――
――――
―――
一時的に晴れてた霧は再び濃さを増し、内藤の視界を塞いでいた。
勝利は目前なのに事態がどんどんと悪いほうへ進んでいる気がして深くため息をついた。
このまま何も起こらなければいいのだが。
( ^ω^)(見えねぇお・・・)
内藤は現在兪鳥のすぐ後ろを旋回していた。
もし何か来るならば必ず背後を狙ってくるであろうからだ。
確信があるわけではないが備えあれば憂いなしというもの。
戦争は臆病なものが生き残るのだ。
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/02/12(日) 20:04:48.38 ID:SrGWynLI0
念のため、矢追に無線をつなぐ。
しかしすでに着艦したのか返事は返ってこない。
( ^ω^)「なーにやってんだおモララー。こんなときこそあいつの視力が必要なのに」
あまたの戦空士をして千里眼と言わしめるモララーの索敵能力は戦場において必要不可欠なものといっても過言ではない。
彼は内藤ですら到底見つけられないような距離の敵も見通してしまう。
それが羨ましくもあり、唯一尊敬するところでもあった。
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/02/12(日) 20:06:14.87 ID:SrGWynLI0
- ( ^ω^)「肝心なときに使えないやつだお」
悔しさも込めて憎まれ口を叩く。
やはりいくら努力しようが適わないものがあると悔しいものだ。
残念ながら内藤にはいまだ霧の拭われない水平線上ではどう目を凝らしても艦影など見つけられるはずもない。
危険ではあるが単機で哨戒に望むしかなさそうだ。
内藤は無線を再度管制室の方へ繋いだ。
( ^ω^)「丹柴は艦載してますかお?」
(‘、`*川「えぇ、一応ありますが」
( ^ω^)「いつでも飛べるようにしてくださいお」
(‘、`*川「それはどういう・・・?」
( ^ω^)「まぁ一応ですお。あとは網羅に任せていただければ」
(‘、`*川「了解しました」
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/02/12(日) 20:11:28.68 ID:SrGWynLI0
- 兪鳥の後方約5キロ地点――――――
内藤は無線が繋がる範囲を出ないように哨戒を続けていた。
今のところ艦影は見えず、戦空機が雲に隠れている様子もない。
深呼吸をして、操縦桿を握りなおす。
( ^ω^)「うーん。勘が外れたかお?」
風は凪ぎ鳥が飛んでいて、現状では何かが来る気配すらしない。
やはり杞憂だったのだろうか、そう思い直す。
疲れた体に鞭打って兪鳥戻ろうとしたその時だった。
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/02/12(日) 20:16:43.99 ID:SrGWynLI0
- (;^ω^)「ッ!!!」
またもや背中に悪寒が走る。
鋭利な刃物でチクリと刺されたような間隔が突き抜けていった。
内藤はとっさに振り返りこれ以上ないほど目を凝らす。
(;^ω^)「マジかお・・・」
視線の先、水平線の彼方。
霧の向こう側には小型の軍艦の艦影らしきものが見えた。
そしてその上空には大型戦空機らしき機影が二つ。
大きさからして駆逐艦と爆雷機といったところか。
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/02/12(日) 20:20:27.51 ID:SrGWynLI0
- ( ´ω`)(なんで嫌な予感はあたるかねぇ・・・)
(;^ω^)「ていうかあれがほんとに敵艦なら、挟み撃ちとか洒落になんねぇお」
内藤はもう一度目を凝らす。
遠すぎるし濃霧もあいまってよく見えない。
もしかしたらあれがただの島や貿易船だということもありうる。
それに全砲斉射をしている今うかつに報告は出来ない。
必要なのは確実な情報だ。
どちらにしろ近づかなければならないだろう。
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/02/12(日) 20:25:43.43 ID:SrGWynLI0
(;^ω^)「モラ!ハイン!樋木!いたら応答しろお!!」
「・・・」
(;^ω^)「くそっ!!」
内藤はスロットルを限界まで引き絞ると、まっすぐに海面ギリギリを飛んだ。
次第に影が濃くなってくる。
先ほどまで周りを飛んでいた海鳥は忽然と姿を消していた。
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/02/12(日) 20:28:46.40 ID:SrGWynLI0
- ワークテイカーは駆逐艦の中でも比較的大きな部類に属する。
駆逐艦とは軽装甲であるが速度に長ける。
おもにヒット&アウェイな戦法を得意とするのだが
(;^ω^)「・・・空母を囮にするかお・・・」
こんな使い方はいまだかつて聞いたことが無い。
よもや駆逐艦が本隊とは思いもしなかった。
正直言って予想だにしなかった展開だ。
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/02/12(日) 20:32:37.40 ID:SrGWynLI0
- 空母同士が砲撃を打ち合っている間に霧に乗じて駆逐艦で奇襲。
散布界から脱出しようとしている最中に爆撃機で沈没を狙う。
これがヒロユキ軍の狙いだったのだ。
たかがこれだけのために船員や戦闘員数百名の命を賭けている。
正気とは思えない作戦だが、最も効果的ともいえる。
しかし、彼らには唯だ一つ誤算があった。
それはこちらの観測が完璧だったこと。
そのおかげで挟撃は失敗し、なんとかまだこちらにも勝機は残されている。
だがそれでも不意打ちであることには変わりない。
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/02/12(日) 20:35:56.04 ID:SrGWynLI0
(;^ω^)(ジリ貧続きはつらいお)
おそらくワークテイカーは確実に当てられる距離までは砲撃してこないだろう。
霧に乗じて観測が必要ないくらい接近してくるに違いない。
奇襲が目的なのだから当然といえば当然なのだが。
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/02/12(日) 20:37:56.89 ID:SrGWynLI0
突如、爆撃機が機速を上げて向かってくる。
内藤は機器を察知し、無線を引っ掴み大声を張り上げる。
(;^ω^)「六時方向から戦艦および爆撃機二機接近!!空母は囮だお!!!」
(;^ω^)「それからモララーに丹柴の準備を!!」
無線を投げつけ、迫り来る爆撃機を見やる。
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/02/12(日) 20:41:07.51 ID:SrGWynLI0
ヒロユキ帝国式爆撃機マジレス。
爆撃機とは対水上艦攻撃に特化した戦空機だ。
本来は海面ギリギリを飛び目的艦に肉薄せねばならないため、撃墜される可能性は高い。
速度もあまり速くはないため、二機程度では対空砲の格好の餌食だ。
しかしその反面「空の要塞」との異名を持つのも雷撃機である。
単座戦空機よりもかなり大きめで装甲も硬いため、こと空戦ならば墜落はほぼありえない。
絶体絶命ともいえる状況だ。
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/02/12(日) 20:44:42.48 ID:SrGWynLI0
- マジレスとの距離は数キロまで近づいている。
スピードは圧倒的にこちらが上だが今更逃げることはかなわない。
覚悟を決めるしか道は残されていない。
内藤はひとまず射線上から抜けようと進行方向と垂直に方針を取る。
高度を上げ、マジレスの上を取る。
(;^ω^)「やるなら操縦席だお!!」
撃墜、最低でも撃破か撤退を狙うならチャンスは一度きり。
たかだか単座機一機だと思って油断している今しかない。
マジレスが機銃を撃つ瞬間を狙うのだ。
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/02/12(日) 20:46:12.68 ID:SrGWynLI0
- 新速の向きを180度反転し、逆さに保つ。
下部から迫るマジレスを見下ろす形で大きく旋回する。
装甲も硬く火力も高い敵相手にどう立ち回るか、そればかりを考える。
こちらは一発喰らえばアウトだ、うかつに攻めるのはまずい。
しかしモタモタすればワークテイカーが兪鳥へと迫る。
絶好のチャンスを待って逃げ続けることしか出来ないことは内藤に焦りを募らせた。
(;^ω^)(わざと隙見せてみるか)
危険ではあるが、駆逐艦が目前に迫っている以上やらねばならない。
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/02/12(日) 20:48:18.79 ID:SrGWynLI0
- 内藤は意を決し、少しだけ速度を緩めた。
数瞬だけ並行するマジレスの直線上に入り、正射を誘う。
刹那――――――
湿った空気を切り裂いて二つの金属塊が放たれる。
(;^ω^)「対空ミサイル!?」
内藤の考えは外れていた。
例え相手がたかが戦空機でも落とせるならば対空兵器を使う。
付け入る隙も微塵の油断も無かった。
一瞬でさえも隙を見せてはいけなかったのだ。
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/02/12(日) 20:50:36.71 ID:SrGWynLI0
- (;^ω^)「追尾式!?」
追尾式とは熱を感知し、その名の通り当たるまで追尾し続ける兵器だ。
本来爆雷に使われる対艦ミサイルは直射式である。
追尾式ともなれば製作費用も高くなるからだ。
とうぜんマジレスが積んでいる空対空ミサイルもその限りだと思ったのだが。
(;^ω^)「ヒロユキってばお金持ちすぎるお!」
内藤は倒した操縦桿を元に戻し、機体をまっすぐミサイルへと向ける。
向かい合う三つの金属の塊は磁石のように惹かれあう。
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/02/12(日) 20:51:41.28 ID:SrGWynLI0
- 綺麗に一列に並んだミサイルはわき目も振らず新速めがけて飛ぶ。
もはや回避行動を取る暇は無い。
(;^ω^)(落ち着くお)
直撃必至の状況で内藤はただ冷静に前を見据えていた。
当たれば即死は免れない。
それでも避けはしない。
あと100メートル
50メートル
( ^ω^)「来いっ!!!」
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/02/12(日) 20:52:26.33 ID:SrGWynLI0
自然と笑みがこぼれる。
そうだ、この感覚だ。
絶対的な強敵に見えたときに感じる興奮。
どんな困難でも自分を奮い立たせてくれる、負けたくないという感情。
あの時負けたから、打ち落とされたから芽生えた感情だ。
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/02/12(日) 20:53:39.50 ID:SrGWynLI0
二つのミサイルが直撃する寸前――――――
(#゜ω゜)「だおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
新速は機体を90度 ロ ー ル さ せ た
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/02/12(日) 20:54:39.02 ID:SrGWynLI0
(;゜ω゜)「ふうっ・・・ふうっ・・・」
壮絶なスピードで左右をミサイルが通過していく。
空気の圧力が新速を襲う。
必死で操縦桿を握り舵を取る。
少しでも気が緩めば翼がかすってしまったかもしれない。
驚異的な集中力が針の穴をさすような挙動を成させた。
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/02/12(日) 20:55:15.78 ID:SrGWynLI0
興奮冷めやらぬ中内藤は真っ直ぐにマジレスへと向かう。
今ここで止めなければ今まで何のために戦ってきたというのか。
遠くで凛とシーガルの鳴く声が聞こえた。
エースは――――――
孤軍奮闘を強いられる。
- 38 名前:気付かなかったてへぺろ 投稿日:2012/02/12(日) 20:56:19.90 ID:SrGWynLI0
- ******
( ゚д゚ )「すまんな。まさか観測相手に負けるとは・・・」
かろうじて機体は致命傷を逃れ、着水することが出来た。
一瞬だけ後部機銃の発射が遅れたためなんとか生き残れたのだった。
('A`)「ともかく生きてて良かったです」
( ゚д゚ )「悪いが飛べそうに無い。乗せてくれ」
ドクオは首肯すると、エンジンをふかす。
ミルナも念のためとして取り付けられている補助席に腰を下ろす。
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/02/12(日) 20:56:48.71 ID:SrGWynLI0
- アフィーカスは徐々に沈んでいた。
必死の抵抗で大砲を撃つも、全く当たらない。
('A`)「アフィーカスの乗員は・・・?」
( ゚д゚ )「・・・仕方あるまい」
( ゚д゚ )「観測が優秀すぎたんだ」
('A`)「でも・・・僕らが落とせてればこの作戦は成功していた。違いますか?」
( ゚д゚ )「そうだ。だから私たちはこの海戦を忘れてはならない」
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/02/12(日) 20:57:43.17 ID:SrGWynLI0
- 悲しみや怒りよりも悔しさがミルナの心には溢れていた。
ドクオや先の観測官そして敵のエース。
彼らは圧倒的な実力を持ち、空に愛されている。
適うわけがない、そう思っていた。
それでも、心のどこかで自分ならやれるんじゃないか。
そんな選民意識を抱いていたのだ。
( ゚д゚ )(私もまだまだ青二才ということか)
今までドクオには嫉妬はしても羨望などしたことはなかった。
負けたことよりも、自分の中にある醜い感情に今まで気付けなかったことが悔しかった。
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/02/12(日) 20:58:10.69 ID:SrGWynLI0
- ( ゚д゚ )「シノーツよ」
( ゚д゚ )「私はお前には適わないと思っていた。いや、思っているつもりっだったのかな」
('A`)「・・・」
( ゚д゚ )「でもな、心のどこかでもしかしたらやれるんじゃないか、そう思っていたんだ」
('A`)「そんなことないです。ミルナさんは強い」
( ゚д゚ )「ふっ・・・。嫌味か?」
(;'A`)「そ、そんなんじゃなくて・・・。俺はミルナさんの冷静さが羨ましい」
('A`)「俺は、いつも判断ミスばかりするし焦るし・・・」
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/02/12(日) 20:58:27.30 ID:SrGWynLI0
( ゚д゚ )「そんなのは経験を積めばいいんだ」
( ゚д゚ )「だが、好意は素直に受け取ろう」
('A`)「・・・」
( ゚д゚ )「シノーツよ。お前たちは空に愛されているな」
( ‐д‐)「それだけが羨ましい」
ミルナは天を仰ぎ、空に思いの丈をぶつけた。
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/02/12(日) 20:59:11.64 ID:SrGWynLI0
- ―――――――
ほとんどの船員がボートで離脱している。
死人が出てないといいのだが、そんな心配は戦場では不要だ。
('A`)「囮とはいえ沈むのを見るのは嫌ですね」
( ゚д゚ )「風防をあけてもかまわないか?」
誰ともなく言ったドクオの呟きを受け流す。
しかし、たとえ思い入れがなくとも船が沈むのを見るのは辛いものだ。
( ゚д゚ )「最後の瞬間まで見届けよう」
('A`)「分かりました」
シベリアはその場で大きく旋回を始めた。
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