( ^ω^)は空に想いを馳せるようです

56 名前: ◆GHVxryllpI 投稿日:2012/03/08(木) 23:52:18 ID:fRM3EhTE0
第七話

57 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/03/08(木) 23:53:00 ID:fRM3EhTE0


複座戦空機『丹柴』
重厚な装甲と高い攻撃力を持つVIP国屈指の高火力戦空機だ。
その実機動性は悪く、シベリアなどの小回りが利く戦空機に対しては相性が悪い。


対爆雷機用に作られた戦空機である。

そして丹柴が誇るVIP国式戦空機搭載機関砲『アヴェンジャー』
VIP国軍の戦空機に搭載された機関砲の中で最大、最重量。
そして最強の攻撃力を保持する。

58 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/03/08(木) 23:53:50 ID:fRM3EhTE0

从#゚∀从「オラァァァァァ!!」

新速のそれよりもかなり大きい機銃が唸りを上げる。

反動で照準がずれないようにしっかりと固定せねばならない。
新人が自分で尾翼に穴を開けてしまうことも多々あるのだ。

( メ∀・)「むやみやたらに撃つんじゃねぇぞ。機関部のおんなじとこ狙え」

从#゚∀从「わーってるよ!!」

59 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/03/08(木) 23:54:45 ID:fRM3EhTE0
( メ∀・)「その割にはまだ煙すら出てねぇぞ?」

从#゚∀从「グッ・・・。も少し近づいてくれ・・・」

的確な指摘にハインは何もいえなくなる。
なまじ実力があるだけに本当に厭味なやつだと思う。


ハイン自身なぜモララーの後についてきたのか理解していなかった。

ただ、自分の中に驕りがあったように思うのだ。
今まで内藤に師事してきて小隊として大きな評価を受けてきた。
でもそれはあくまで小隊としてだ。

60 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/03/08(木) 23:55:28 ID:fRM3EhTE0

从 -∀从(オレ自身には何の価値もねぇ)

虎の威を借りていたというわけではないが自分の手柄でないのもまた事実。
自分を戒める意味合いもあったのかもしれない。

再びマジレスへ向かう丹柴は縫うように飛行する。
機関砲の嵐をいとも容易く掻い潜るその姿に瞠目した。
一瞬自分の任務を忘れてしまうほど華麗な舞だった。

改めて、自分との差を実感する。

61 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/03/08(木) 23:57:04 ID:fRM3EhTE0

(#メ∀・)「ぼさっとしてんじゃねぇぞ!時間ねぇんだ!」

从#゚∀从「・・・ッ!」

从#-∀从「わりぃ」


言われるままに機銃を撃ち、穴を穿つ。

一瞬反論しようとも思ったが、モララーの言っていることは正しい。
ここで反論しては、稚児の駄々にも等しい行為だ。

62 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/03/08(木) 23:58:02 ID:fRM3EhTE0

座席越しに、モララーの背中を見る。
顔の右半分は血が固まり、やはり肩で息をしている。
旋回やロールの時にかかるGは負傷した体には重くのしかかるのだろう。
そんなハンディキャップを背負いながらモララーは空を翔る。


美しくも雄雄しい姿だ。
自信を根こそぎ持っていかれてしまう。



マジレスの後部が炎を上げて燃え始める。
速度こそ落ちてはいないが墜落は必至。
追い討ちをかけるようにして撃ち続ける。

63 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/03/08(木) 23:59:24 ID:fRM3EhTE0

从 ゚∀从「あとちょいだ!」

( メ∀・)「よし、ここは任せて内藤の援護いくぞ」

从 ゚∀从「了解・・・っておい・・・?」

( メ∀・)「あ?文句あんのか?」

从#゚∀从「そんなんじゃねぇ!ただ、あっち燃えてないスか?」

(;メ∀・)「はぁ?」

モララーは訝しげに間の抜けた声を上げた。
機体を反転せんと旋回を始める。

64 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/03/09(金) 00:00:04 ID:Mr3K2zE60

(;メ∀・)「おいおい・・・マジかよ・・・」

从;゚∀从「内藤さんッスかね・・・?」

( メ∀・)「単座で軍艦とタイマン張って勝つとか正気じゃ・・・」

(;メ∀・)「・・・急ぐぞ!」

从 ゚∀从「あ?何でっスか?もう内藤さんが潰してるじゃないスか」

(;メ∀・)「その内藤は今どこにいんだよ!?」

从;゚∀从「嘘だろ・・・?」

燃え盛る海にはデブリが漂い紅く染まる空には何者も漂うことすらしていなかった。

65 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/03/09(金) 00:00:44 ID:Mr3K2zE60
―――――
――――
―――

駆逐艦からは炎が上がり、原型を留めていない。
緩やかに浸水していく甲板から船員たちが海へと飛び込んでいく。

(;メ∀・)「マジで内藤がやったみたいだな」

从;゚∀从「新速にそんな兵装はねぇぞ・・・」

(;メ∀・)「多分・・・」



――特攻だ

口には出さずに呟く。

66 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/03/09(金) 00:01:59 ID:Mr3K2zE60



それしか有り得ない。


しかしモララーもハインもその考えを口に出せずにいた。
頭の中ではこんな馬鹿なことをするわけがないと思っているのに、なぜか否定できない。


从 ゚∀从「背面で旋回してくれ」


モララーは無言で首肯すると背面行動に移った。

エルロンを巧みに使い180度回転する。

67 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/03/09(金) 00:02:44 ID:Mr3K2zE60

(;メ∀・)「あ、コレ無理!ダメ!」

从 ゚∀从「なんだよきもちわりいな・・・」

(;メ∀・)「うるせぇ!血が溢れるんだよ!」

从;゚∀从「うおっそれ大丈夫か!?」

(;メ∀・)「いったん戻すぞ?」

从 ゚∀从「あぁわかった・・・ちょっとまてストップ」

(;メ∀・)「なんだよ?はやくしろ」

68 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/03/09(金) 00:03:41 ID:Mr3K2zE60
从 ゚∀从「・・・・内藤さんだ」

从*゚∀从「あそこ!内藤さんだ!」



(#)^ω;;)ノシ



モララーはすぐさま機体を元に戻し、内藤の元へと飛んだ。

从*゚∀从「無茶しすぎっすよ内藤さん!」

(#)^ω;;)「モラがおっせぇからだお」

69 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/03/09(金) 00:04:21 ID:Mr3K2zE60

( メ∀・)(こいつやっぱ・・・)

(#)^ω;;)「・・・モララー?」

( メ∀・)「ん?あ、あぁ悪かった。とりあえず戻るぞ」

(#)^ω;;)「お互い満身創痍ってやつだおね」



ゆったりと空を飛ぶ丹柴。
穏やかになった空には再びシーガルが帰ってきている。

戦いの終わりを告げるかのように彼らは大きく一声泣いた。

70 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/03/09(金) 00:05:04 ID:Mr3K2zE60
*****

操縦席に座り、目の前に並ぶ計器を一つ一つ点検する。
整備士が既に点検しているため無駄なことではある。
しかしやることもなく手持ち無沙汰なドクオは度々格納庫に顔を見せるのだった。


( `ハ´)「その翼お前がやられたアルか?」

(‘A`)「うんそうだよ」

(;`ハ´)「マジかヨ。珍しいこともあるアルね」

71 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/03/09(金) 00:05:45 ID:Mr3K2zE60

(‘A`)「・・・そんなことないさ」

少し俯きながらドクオは答えた。
いままで二度対峙した、かの戦空士を思い出す。

勝負は一勝一敗、いずれもお互い無傷であった。
えらく好戦的な戦空士で、次出会ったら必ず一騎打ちになるだろう。
不安に大きく嘆息する。

( `ハ´)「まぁ修理は任せるネ。バッチリなおしてやるヨ」

(‘∀`)「頼りにしてるよ」

( `ハ´)(顔のパーツ福笑いアルねこいつ)

('A`)「じゃあ、俺はそろそろ行くよ」

( `ハ´)「ん。ツァイツェン」

72 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/03/09(金) 00:06:27 ID:Mr3K2zE60



喫茶店バーボンハウス―――



(´・ω・`)「この水はサービスだからまず飲んで落ち着いてほしい」

(‘A`)「マスター。その文句聞き飽きたよ」

(´・ω・`)「うるせぇマニュアルなんだよぶち殺すぞ」

眉毛の垂れたなんとも言えず気の抜けた顔の店主が出迎える。
いつものだね?、そうドクオに確認すると訳知り顔でこちらを見る。

73 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/09(金) 00:07:40 ID:Mr3K2zE60

(´・ω・`)「なんだかこっぴどくやられたみたいね」

(´・ω・`)「空母と駆逐艦がダメになったんだっけ?」

(;'A`)「マスター、一応軍事機密なんだけど」

(´・ω・`)「なーに言ってんの。バレバレだよ」


敗戦の知らせは本来民間には通達されない。
ただでさえ戦争ばかりやっていて、反抗勢力も多い国だから
政治や軍に対する不信感を煽らないためらしい。

ドクオ自身は単なる上層部の見栄じゃないかと思っている。

74 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/03/09(金) 00:08:25 ID:Mr3K2zE60
ショボンはドクオの前にコーヒーを差し出し、自分も隣に座る。


(´・ω・`)「ミルナさんと何かあった?」

(;'A`)「いや・・・特には。ただこの前の海戦からちょっと感じが違うんだ」

(´・ω・`)「ふーん。君や敵さんの事やたら褒めてたからさ」

(;'A`)「えっ?」


ドクオは思わず間の抜けた声を上げた。
今までは憎まれこそすれど賞賛などされたことは一度もなかったのだ。

ミルナほどの戦空士に褒められるのは純粋に嬉しかった。

75 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/03/09(金) 00:09:33 ID:Mr3K2zE60


(´・ω・`)「酒入るとお喋りなんだよあの人。あ、勿論機密とかは漏らさないよ?」

(´・ω・`)「今までは愚痴ばっかりだったのにね」

( ;゚д゚ )「マスター!守秘義務ってものはないのか」
 _
( ゚∀゚)「けけけ。相変わらずお喋りだなぁショボン」 


扉を大きく開け、二人の男が入ってくる。
ミルナ=エステルガー本人と、ジョルジュ=ユグノー。

76 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/03/09(金) 00:11:15 ID:Mr3K2zE60

ジョルジュはドクオの師であり、教官を務めている。

若い戦空士の育成が彼の仕事であるが、その操縦技術は目を見張るものがある。
ドクオですら彼には適わないと自負している。
なぜ戦場に出ないのか理解に苦しむ男だった。


(´・ω・`)「やぁ、ジョルジュ久しぶりだね。それにミルナさんも」

(´・ω・`)「この水はサービスだからまず飲んでおt・・」
 
(;'A`)「ジョルジュ教官、どうしたんですか?というかミルナさんと知り合いで?」

(#´・ω・`)「・・・ぶち殺すぞ」

77 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/03/09(金) 00:12:30 ID:Mr3K2zE60
( ゚д゚ )「いや、知り合ったばかりだ」
  _
( ゚∀゚)「お前らにちょっと話を聞きたくてな」


言うと、ジョルジュはカウンターに座った。
ミルナもそれに倣い、腰掛ける。


( ゚д゚ )「それで、聞きたいこととは?」
  _
( -∀-)「お前ら、この前落とされたらしいな。そのことを聞きたい」
  _
( ゚∀゚)「あっちのエース相手にして帰ってきたのはお前らくらいなんだ」
  _
( ゚∀゚)「エステルガーに関しては観測相手に落とされたんだろう?敵戦空士のことを詳しく話してくれ」

( -д-)「・・・えぇ。まさか観測に落とされるとは欠片も思っちゃいませんでしたよ」

ミルナは目を伏せると、ポツリポツリと語り始めた。

78 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/03/09(金) 00:13:20 ID:Mr3K2zE60
――――
――
  _
(*゚∀゚)「そうか・・・そうか・・・」


そう呟くジョルジュの顔はどこか嬉しそうだった。
強い相手に対する興奮、ということだろうか?

ドクオにその感情は理解できないし理解したくない。


('A`)「―――ってわけです」
  _
(*゚∀゚)「ブーンにモララーだ」

( ゚д゚ )「ユグノー殿?」

79 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/03/09(金) 00:14:06 ID:Mr3K2zE60


 _
( ゚∀゚)「ん?あぁ、なんでもない。ありがとな」

( ゚д゚ )「いえ、自分も改めて見直すことが出来ました」


そう言うと、ミルナは席を立った。
ショボンに軽く会釈すると扉へと向かう。


(´・ω・`)「僕には理解できないね」


黙っていたショボンが唐突に口を開いた。
少し、憮然とした表情で話し始める。

80 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/03/09(金) 00:14:48 ID:Mr3K2zE60

(´・ω・`)「生きるか死ぬかの戦争に悔しいもクソみそもないだろ」

(´・ω・`)「そうだろう?ドクオ」

(‘A`)「・・・うん。俺は・・・ただ単に怖い」

( ゚д゚ )「ハァ?」

(‘A`)「だって死ぬってことは二度と飛べなくなるってことですよ」
  _
( ゚∀゚)「ほう・・・」

81 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/03/09(金) 00:15:52 ID:Mr3K2zE60


('A`)「うまく言えないけど・・・せっかく手に入れた翼を失うのは嫌なんです。死ぬこと以上にそれが怖い」

( ゚д゚ )「何を言っている。俺たちの本懐は戦うことだ」

( ゚д゚)、「甘い考えは捨てろ」


あっさりと切り捨てられる。
もちろんそれが当たり前だ。

82 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/03/09(金) 00:16:36 ID:Mr3K2zE60

戦空士は飛ぶために戦わない。





―――――――戦うために飛ぶのだ。

83 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/03/09(金) 00:17:21 ID:Mr3K2zE60
  _
( ゚∀゚)「けけけ。いいじゃねぇか!」

('A`)「っ!」

( ゚д゚ )「ユグノー殿!」
  _
( ゚∀゚)「新人によくあることじゃねぇか。どうせ甘っちょろい考えのやつはさっさと死んでくんだ」
  _
( ゚∀゚)「ほっとけほっとけ」

84 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/03/09(金) 00:18:25 ID:Mr3K2zE60

( -A-)「教官・・・」

(#゚д゚ )「ふん。シノーツ、やはり私はお前が嫌いだ」


俯き目を伏せたドクオにミルナは吐き捨てる。
先の海戦でどこか打ち解けられたと思っていただけに、すこし悲しかった。


見かねたジョルジュが手を振り大仰に叫んでみせる。

  _
( ゚∀゚)「おらお前ら!さっさと宿舎戻りやがれ!」

85 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/03/09(金) 00:19:33 ID:Mr3K2zE60
( ゚д゚ )「では・・・」
  _
( ゚∀゚)「今日はありがとな!」

('A`)「・・・」
  _
( ゚∀゚)「俺は今からショボンと大事な話があるんだ」

('A`)「そういうことなら」


そういうと、ドクオも歩き出す。

ジョルジュには物悲しい背中に負うものがひどく重圧に見えた。

86 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/09(金) 00:20:18 ID:Mr3K2zE60

二人が出て行くのを見送ったショボンがさびしそうに語りかける。

(´・ω・`)「刹那的だねぇ軍人って・・・」
  _
( ゚∀゚)「そうだな。そうでもなきゃやってられねぇよ」


そうかい、そう言いながらショボンは自分のカップにコーヒーを入れなおす。


(´・ω・`)「さっき言ってた、ブーンにモララーだっけ?それは君の・・・?」
  _
( ゚∀゚)「あぁ、懐かしいや。やっぱりって感じだけどな」
  _
( ゚∀゚)「ドクオのやつ、ブーンと同じこと言いやがる」

(´・ω・`)「そう」

87 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/03/09(金) 00:21:00 ID:Mr3K2zE60



(´・ω・`)「ドクオは入れないのかい?」
  _
( ゚∀゚)「聞いてたろ?あいつは戦うことに抵抗がある。そして誰よりも空が好きなんだ」

(´・ω・`)(それは君も同じだろうに・・・)
  _
( -∀-)「そんなやつは誘えないさ」


かつての友に似る教え子には自由であってほしい。
そんな願いだった。

88 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/09(金) 00:21:45 ID:Mr3K2zE60
第七話終わり


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