( ^ω^)達の中だるみな一年のようです

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 15:12:11.26 ID:q6XuIg3o0
第一話

三月初頭の試験期間は終わりを告げ、やってくるのはおそらくすべての学生が待ち望んだ長期休暇、春休みである。
ここ学園都市ニュー速では春休みなどの長期休暇の際、それぞれの理由で実家に帰らない気の抜けた学園生たちがふらふらと街をぶらついている。
観光地としても機能しているこの都市は観光客の多いこのシーズンでは毅然とした態度で過ごすことを指導されているのだが、それを守る生徒など雀の涙ほどだ。
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( ゚∀゚)「ひまだなー。スケボーでもしてくっかな」

( ^ω^)「だめだお。それだと僕のすることがないお。そしたら僕は暇をこじらせて死んでしまうお」
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( ゚∀゚)「え?お前の都合で決まるの?」

( ^ω^)「薄情な奴だお……目の前に死にかけたバンビがいるんだお……」
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( ゚∀゚)「いや、居ねえけど。ここいちおう首都圏な」

( ;ω;)「ブーンのようなバンビは死んでしまうんだお……」
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( ゚∀゚)「そうか?じゃあ珍しいから眺めててやるよ。ほら、今すぐ死ね」

先の試験をパスしたブーンとジョルジュである。彼らは実家が遠いので帰省するのも億劫で、大した用事もなく、バイトは禁止されているので何もすることがないのだ。
この二人は春休みが始まって四日になるがずっとこんな調子であり、学園都市で最も広い、それでいて美しいとされる公園、ニュー速国立記念公園でうだうだしている。
たまに見かけるカップルにふにゃふにゃした視線を送りながら、ジョルジュが死にそうな顔をしていた。
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( ゚∀゚)「あー!いっそ試験落ちればよかったんじゃねーか?あれじゃあ俺の力が正しく評価されたとは思えねー!追試はキツイらしいしな、腕が鳴るぜ!」

( ^ω^)「めんどくせーお……」

などと抜かしても受かった事実は変わらない。むしろ評価は悪くはなかったのである。
ブーンは暇な癖に話すのがいやなのか自分の靴紐を抜きとりあやとりにしていた。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 15:15:19.93 ID:q6XuIg3o0
ξ゚听)ξ「まったく、あなたたちはいつもそうやってだらけて」

突然浴びた少女の声。ツンだ。今日は私服で登場した。
放送終了時のTVようなデザインのTシャツに気持ち悪い目玉模様のパーカーをはおり、
虹色の縞模様が腰から裾まで入ったジーンズという他人の振りをしたくなるような個性的格好ではあるが、寒くないのだろうか。
すかさず口を開くのはジョルジュ。
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( ゚∀゚)「おまえは――ああ、図書館に引き籠る用事があるもんな」

ξ゚听)ξ「違うわ、バイトしてるのよ。というかブーン、今携帯持ってないでしょう?連絡がつかなかったわよ」

( ^ω^)「ああ、別にいらないかなーって部屋に置いたままだお。充電忘れちゃってたし」
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( ゚∀゚)「バイトだと?おいおい見つかったら即退学だぞ?無謀な奴だなーおい」

そう。彼らがなぜバイトをしないのかといえばこの理由だ。彼らの学園は何故か一般的な労働をさせたがらない。
学園側としての理由は勉学に支障が出るから、というものだが、それにしても即退学にする理由にはなりえないと皆考えるのだ。
しかし、実際のところ学園都市内は学割やらなんやらがえらく多いので金欠で困ることはほとんど無く、結局皆考えるのを放棄することになる。

ξ゚听)ξ「わかってる。だからニュー速外のコンビニでやってるの。意外と誰も来ないからばれないわ」
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( ゚∀゚)「バレたらその店潰されるぞ……っていうかお前どう見てもガキなのによくつかってもらえるな」

ξ゚听)ξ「死ね」
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( ゚∀゚)「え、そんな……」

( ^ω^)「まあまあ。今日はバイトないのかお?」

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 15:17:57.68 ID:q6XuIg3o0
ξ゚听)ξ「ないわ。それで暇なのよ、だからせっかく暇なんだしどうせ暇なあなたたちで暇つぶしに来たの。いいでしょ?暇人」

( ^ω^)「いや酷すぎるお」
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( ゚∀゚)「よしいい度胸だ。ツン、脱ぐんだ」

ξ゚听)ξ「うっさい、あんたは帰っていいわ。さようなら」

優雅に手を振るツン。

( ^ω^)「あー、で、なにするお」

ξ゚听)ξ「ボウリングにしましょう。前回のあなたとの雪辱をはらしてやるわ」

ツンは口調は若干食ってかかるような言い方であるが、どことなく楽しげに提案する。

( ^ω^)「いいお。じゃあすぐ行くお、今行くお」

ξ゚听)ξ「ええ」

二人は上がるテンションを表には出さずに並び、近くのボウリング場に向かった。
  _
( ゚∀゚)「……おれもいくもん!」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 15:21:00.02 ID:q6XuIg3o0
で、時刻は夕方。
春先ではまだまだ寒い時刻である。
ひたすら集中して4ゲームを投げ切った彼らは疲れ切った様子だ。

ξ゚听)ξ「けっきょくまけた」

(* ^ω^)「やっぱりツンは詰めが甘いおwwwwwブヒィwwwwwwwwww」

ξ*゚听)ξ「やっぱりってなによー!」
  _
( ゚∀゚)「疲れたなー。良い時間だし飯でも行くか!」

(* ^ω^)「ごめんお。今のは失言だおー」

ξ*゚听)ξ「もうブーンったら!」

などとカップルじみた会話をキャッチボール。
ジョルジュは今日のラスト2ゲームでパーフェクトを二回連続で出したのにもかかわらずこの扱いである。
そもそも彼らの視点ではジョルジュを呼んでいないので、
「たまたま同じ場所に遊びに来ていた知り合い」程度の扱いになってしまうのは仕方のないことなのだ。

( ^ω^)「それじゃあまただお」

ξ゚听)ξ「ええ、また」

手を振りあう二人。

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 15:24:18.44 ID:q6XuIg3o0
( ゚∀゚)「おいおい完っ全にスルーかよ!」

( ^ω^)「いいじゃないかお。可愛いとこあるお」
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( ゚∀゚)「それはおまえにだけだ!骨だけ溶けて死にやがれ!」

( ^ω^)「確かに骨抜きにされそうだお。
      つーかジョルジュがボウリングでパーフェクトなんていつもどうりだお。球技だけは天賦の才をもってるから地味にうぜえお」
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( ゚∀゚)「まあな!もっと褒めろ!崇めろ!ひれ伏せ!」

( ^ω^)「いや無駄にでかいジョルジュにひれ伏すのは簡便だお。あれだし。近接戦闘術は素人だし」
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(#゚∀゚)「おうてめえやる気か?」

その後もくだけた会話を続け、ようやく寮の前に到達した。と、ブーンはふと思い出す。
前回の試験の際に火薬の量が足りなくなってしまったことだ。あのまま教官と実際に戦っていれば危なかっただろう。
ブーンの使う火薬は絶対に誘爆しないが、叩き潰すと火花が出る妙なもので、あまり量を作ることができず、一度演習があると必ず補充しなければならないのだ。
ここのところ気を抜きすぎてすっかり忘れていたらしい。まだ施設は開いている時間帯であるため、ブーンは頭にあるうちに行くことにした。

( ^ω^)「ごめんちょっと技術局行くお」
  _
( ゚∀゚)「ん?あー火薬か?わかった、じゃーな」

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 15:27:07.30 ID:q6XuIg3o0
ニュー速圏内西の端、繁華街からはかなり離れる位置で、道はしっかり舗装されているが今の時間にはあまり人の通らない寂しげな場所。
そんな所にわざわざやってくるのは、もちろんブーンが傷心したわけではない。
彼の目的地、ニュー速技術開発局があるのだ。
この施設はおもに、能力がある条件でしか発動しない者や一般的な武装だけでは効率が悪い者が利用する。といっても大半の生徒はここにお世話になっている。
ブーンもその一人で、特殊加工された制服や靴などもここで受け取った。
彼は爆炎を纏い戦うので普通の服ではどうしても大変なことになってしまうのだ。

入り口で学生証を提示し、さっさと中へ入る。内装はとてもシンプルで、どこにでもあるような研究所の様相。
同じような理由で来ているのであろう、ちらちら学園生が見受けられる。

\(^o^)/

先日試験で散々破壊したオワタ戦闘兵MK2のいらつく顔もブーンの視界にちらちら入ってきた。
相も変わらず味気ない所でうんざりしながら、彼の興味をひかれるものもやはり無いようなので二階の隅の部屋へ直行する。

ハハ ロ -ロ)ハ「あら、今来たの?」

ごちゃごちゃとしたなんだかよくわからないものが雑に長机に置かれ、この部屋の主の性格を示しているようだ。
もともと広い部屋がここの研究者には割り当てられているのだが整理をする気がないらしく、入り口から一直線で奥に続くスペースしか足の踏み場が無い。
ここの研究所の性質上これはかなり危険なのではないか。そしてその奥にいる女性がコーヒーを片手に振り返る。
栗色をしたぼさぼさの長い髪になぜか鮮やかなオレンジ縁の眼鏡。いつ見ても似合っていない。

( ^ω^)「どうもハローさん。火薬の補充お願いしますお」

ブーンはこの女性が苦手なので、用件だけさらりと伝えた。しかし彼女は怪訝な顔で見つめ、

ハハ ロ -ロ)ハ「いやです。態度が冷たい子には上げません」

言った。また始まった、と思うブーン。覚悟を決める。

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 15:31:04.38 ID:q6XuIg3o0
ハハ ロ -ロ)ハ「あたしは君のためにがんばってるじゃ〜ん。なんか労いの言葉は〜?」

( ^ω^)「毎度の事ながらそちらの手を煩わせてしまい、申し訳ありません。本当に感謝しています。有難う御座います」

ハハ ロ -ロ)ハ「気持ち込めすぎ」

( ^ω^)「Thank you」

ハハ ロ -ロ)ハ「発音良すぎ」

(* ^ω^)「いつもありがとだお。ねーちゃん」

ハハ*ロ -ロ)ハ「ほうほう!それで?」

(* ^ω^)「僕、ねーちゃんのおかげで頑張れるお!」

ハハ*ロ -ロ)ハ「そーだよー、あたしのおかげなんだよー」

うんうん、とどや顔をする。なかなか憎たらしい表情だ。いつもこのような気持ちの悪いやり取りをしなければ火薬を受け取ることができない。
もちろんハローはそれに関して迷惑だと思っていない。死ねばいいのに、とブーンは毎回同じやりとりに同じ感想を持つ。

( ^ω^)「火薬」

ハハ ロ -ロ)ハ「はいよー」

いつもの量の火薬を渡されながら、ブーンは前回の試験のことを話した。

ハハ ロ -ロ)ハ「そっか。やっぱりまだ改良が必要かなー。いや、効率のいい生産が優先?」

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 15:33:48.65 ID:q6XuIg3o0
( ^ω^)「まあなんにしても頼むお」

ハハ ロ -ロ)ハ「おっけー。愛しのおねーちゃんに任せてー!」

意気込みは半分だけ聞き取ったのだが、残った半分のそれはどこへ行くのだろう、三歩進む時間だけ考え込んだブーン。
施設を出るともう日は完全に落ち、聞こえるのは彼自身の足音くらい。
明日はまた退屈するかもしれないだろう、なんて考えながらその静けさに身を委ねつつ、のんびりと予定を立てる。

―――時間も多分にあるし映画鑑賞でもしようか。そういえば見たい映画があったんだ。

ゆったりとした風に乗せられ決まりつつある予定に、すこしだけわくわくしながらふらふら進んでいく彼。
と、気づけば後ろから駆ける足音。アクティブなやつもいるもんだ、と内心考えてはいるがもちろん行動では示さない。
さっきまでと同じように歩き、スルーする気でいたのだが。

「ねーねーちょっといいかな?あなたニュー速の学園生でしょ?」

足音が背後でピタリと止まり、馴れ馴れしいような軽妙さを持った声がかかる。
ブーンは私服だったので断定的な聞き方はしていないが、彼ほどの年齢でここを通るのは学園生しかいないだろう。
なので形而上の質問だ。が、そんなことはどうでもいい。今何故この時、彼に声をかけたのか。
モテ期だろうか、とそんな少しばかりのバカな期待をしながら、できるだけさわやかにゆっくり振り返りつつ、

( ^ω^)「そうだけど、何か用かn―」

「実験台ね!」

相手の姿を確認しきる前に純粋な青少年の動きは止まる。
全身に電流が走ったのだ。突然のことに一瞬体がうまく働かない、そして朦朧とする意識。
その場に崩れ落ちそうな身体であるが、先に掛けられた声は若かった。
こいつも学園生のはずだ、最低でも顔ぐらいは覚えてやろう、

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 15:37:00.69 ID:q6XuIg3o0
ブーンは自分で考えうる最善の行動のために、ぐぐ、と顔をあげる。と、

ミセ*゚ー゚)リ

そこにはかわいらしい少女がいた。くりくりとした眼に始まる小さな顔はさながら小動物。
白に近い金色の髪は肩に届かないほどに切られているようだが、全体的に逆立ち広がっているように見え、その顔に似合わず攻撃的な印象を受ける。
そこで疑問を持つ。彼女はかなり目立つ容姿のはずだ、一瞬でも噂にならないはずがない。しかしながらブーンは、この少女を知らないのだ。

ミセ*゚ー゚)リ「ははっ!これいい!うりゃっと!」

笑う彼女は突然発光した。そして胸部と腹部の間ほどに衝撃。

殴られたのか。しかしこれは明らかに一般的な思春期の少女の力ではない。

拳は胃にダイレクトに入っていた。内臓が上にずれ込み、一気に全て口から出てしまいそうな感覚に陥る。
学園では肉弾戦を主体とし、ある程度打撃に関しては小慣れているはずのブーンなのだが、これは明らかに異常な一撃である。
教官の正拳突きにも劣らないかもしれない。頭の片隅の冷静な部分はそう言っていた。
そしてそれらの思考はあまりに刹那的に過ぎ去り、今度こそ彼は完全に意識をもっていかれた。

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 15:40:20.23 ID:q6XuIg3o0
―――ナチュラルに浮かれていたらしく全力で一撃を入れてしまった。
相手は自分から数メートルほど離れた位置で大の字に倒れ気絶してしまっている。
ロマンティック浮かれモードの熱から冷めてしまった今、後悔の念が止まらない。

ミセ*゚ー゚)リ「どうしよ……わたしまた……い、いやあ、でも短時間の運動でこれだけできるんだなー。
      さすがニュー速の開発!データ送っただけでこれだけのものが用意できるなんて感無量ですな!……はぁ」

現実逃避もうまくいかない。どうすればいい。
できれば穏便に、できればなかったことに。
残念ながらそれが無理なことは目の前に倒れた少年が示している。

ミセ*゚ー゚)リ「んー……男子寮に引っ張って――ああ場所わかんないなぁ、もう……あ、この人のケータイになんかあるかも」

服をまさぐってみる。ないじゃないか。
いまどきの人間はみんな持ってるものじゃないのか?
警戒心の無さといい、まさかこいつはけっこう駄目な奴なのではないだろうか。

ミセ#゚―゚)リ「あーもーいい!いーや!どーにでもなっちゃえばいいよ!!!」

我ながら無責任だがしょうがないのだ、
そう、全部自分が悪い。恨まれてもそれはそれ。慣れてるから大丈夫。と自分に言い訳をしつつ引きずる。
とりあえず繁華街に放置すればなんとかなるだろう。そうだ。うん。治安いいみたいだし。
気絶者をずるずると引っ張ってくるのはなかなかの運動だ。いっそ本当に繁華街に放置してしまおう。
わたしは決心しました。自分が原因だけど、まためんどうなことにしちゃったなあ……。

少年を引きずる少女の背中には、陰鬱としたオーラが目に見えるほどまとわりついていた。

第一話「暇人に走る電撃」・おわり

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