- 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 17:11:41.77 ID:a9pas8Vd0
僕が能力の発現を確認したのは11歳の頃。時期を考えれば妥当だと言えるだろう。
人間が『知識の奔流』によって特殊な能力を得る場合、その年齢は10歳前後だと言われているのだ。
そしてそれを意識的にコントロールできるように出来るようになるには専門的な研究や検証、そして安全を考慮出来る環境での訓練が必要である。
だから僕はニュー速に行くことにしたんだ。
あんなことには、二度となって欲しくなかったから。
第十五話「帰省と昔話」
- 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 17:15:45.67 ID:a9pas8Vd0
夏季休業の丁度ど真ん中に、ジョルジュの実家の方でちょっとした集まりが毎年なされる。
僕とジョルジュは少し遠い親戚同士であり、なおかつ仲の良い幼馴染という関係でもあるので、当然ながら一緒に帰省することになる。
_
( ゚∀゚)「やっぱもっと近い学園都市にすりゃーよかったなー。帰省なんてかったりー」
うだるような暑さの中シャツの襟を掴み、素肌に空気を送り込むジョルジュ。
真夏日である今日、雲ひとつない空に見えるのは阿呆のように照り続ける太陽。
彼が汗だくであるのも頷ける。僕が汗だくであるのも頷ける。
( ^ω^)「でも一番水準が高いのはここだお。また実家の壁に感謝の言葉を擦りつけなきゃいけないお」
総合的に見れば、職員、設備、立地など、どれもが高い水準を誇るニュー速。環境だけなら完璧といえる。
国で最初に作られた学園都市であるので、首都「ちゃんねる」にも程近く、それらは当然といえば当然だ。
しかしながら、現校長であり市長でもある荒巻が、なかなかその『中身』の充実に力を入れていない。
それでも排出される生徒はVIPの中でも高い階級、地位を得る者も多く、荒巻は無能であるわけでもないのだが。
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 17:19:39.85 ID:a9pas8Vd0
- _
( ゚∀゚)「まーそうなんだけどな。カーチャンさんに感謝しろよ!」
( ^ω^)「お前が言うなお……ボンボンが」
会話もそれほど弾まず、帰ったらどうするか、なんて話をしながら待っていた電車に乗り込む。
ちらりと周りを見れば親子連れや老人夫婦などが皆ニコニコと笑っており、夏の思い出作りに励もうというところだろう。
_
( ゚∀゚)「はーっ、ここから何時間だっけ?」
( ^ω^)「二時間だお」
_
( ゚∀゚)「……寝る!」
( ^ω^)「勝手にすればいいお」
ジョルジュは冷房の聞いた車両内でようやく落ち着いたと思うとシートを一気に後ろに倒す。
空いている車両であったので、面倒事にはならなかった。
_
( -∀-)「……」
なんと、もう眠ってしまったようだ。
僕は端末を開き、ホログラムディスプレイを展開した。
メッセージが届いている。どうやらミセリからのようだ。
『いつ戻ってくるのー?教えてくれたらみんなでお出迎えしてあげるよ!それでそこから遊びに行こ!』
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 17:23:41.74 ID:a9pas8Vd0
- ( ^ω^)「……」
いつも一方的な彼女のメッセージ。
その文字列は帰省の堅苦しい気持ちを少しだけ軽くしてくれた。
ここで僕は少しだけゆるんだ表情に気付いた、けど、わざわざ真顔に戻すこともない。
返信には軽く冗談も書きつつ、聞かれたことは素直に答え、送る。
すぐに彼女から返信が届き、それからいくつか言葉をやり取りした。
( ^ω^)「くぁ……」
三十分ほど電波を交わし、体を伸ばす。少し目が疲れた。
軽く目をつぶり、こめかみをマッサージする。
そこでふと横を向くと灰と青の景色が高速で流れていた。
この乗り物の時速はどれくらいだっただろうか。
( ^ω^)「すいませんおー」
ちんたら移動する車両販売のカートを止める。
売物にはそれほど種類は無いが、文句を言うつもりなどはない。
真っ先に目に入った鮭のおにぎりと麦茶を買い、小銭を渡す。
( ^ω^)「………」
一息ついて、端末でのネットサーフィンを始めることにした。
世間では取り立てて騒ぐような大事件は起きていないようで、特に目を引くような記事はなさそうだった。
( ^ω^)「お……」
そして乗り込んで一時間が経過。僕はトイレに立つことにした。
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 17:27:42.87 ID:a9pas8Vd0
- 小さい方を放出。あまり量は出なかった。
汗に尿が混じる、というのは俗説であるらしいが、あれだけ汗を流したのだから尿にも少しくらい影響しているのは間違いないだろう。
(;^ω^)「……うっわぁ」
手を洗い鏡を見てみると、普段より暗い顔の自分と目が合った。
心の奥底では自分はあまり帰りたくないようであった。
僕はそんなことを考えてしまった頭を切り替えるよう、顔を何度か洗った。
_
( ゚∀゚)「トイレか?」
( ^ω^)「だお」
席に戻るとジョルジュが目を覚ましていた。
僕が席を立つ時足が引っ掛かったからであろう。
こいつは少しでかいのだから僕のせいではない。断じて。
_
( ゚∀゚)「もう三十分で着くってアナウンスがあったぜ」
( ^ω^)「あれ?勘違いしてたお」
_
( ゚∀゚)「早くなるに越したことはないな」
( ^ω^)「確かにそうだお」
僕はジョルジュにミセリからメッセージが来ていたことを話しながら、目的地への到着を待った。
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 17:31:53.76 ID:a9pas8Vd0
- _
( ゚∀゚)「こっちもあっちーなぁ畜生っ!」
(;^ω^)「暑い言うなお……」
到着した駅から出るとまたも熱線が降り注いだ。
丁度正午となるところで、感じる日差しは僕の肌をじりじりと焼く。
ニュー速に比べればそれほど都会とは言えない街並みでも、歩く人の服装はあちらと同じように軽い。
( ^ω^)「それじゃ、夕方行くお」
_
( ゚∀゚)「ああ。後でな」
親戚揃っての集まりは夕方から、僕とジョルジュはそれぞれの家で待機することに。
その場で別れ、僕は少ない日陰を追いながら歩き出した。
(;´ω`)「あちぃお………」
先程ジョルジュに注意したのだがやはり口からこぼれてしまう。
やはり暑いものは暑い。仕方がないのだ。
そんな中僕は、スーパーの前で見知った姿を見つけた。
( ^ω^)「お……」
ノリ, ^ー^)li「ブーンくん?」
目が合ったのは小柄な青い目の少女。
ジャンヌだ。
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 17:36:01.79 ID:a9pas8Vd0
- ノリ, ^ー^)li「帰って来てたんだ」
彼女は僕の友達と仲の良かった女の子。
僕自身は直接の関わりは薄いが、彼女は人懐っこいタイプなので話すことに問題は無い。
少し胸が大きくなった気がする、しかしぶたれそうなので極力見ないようにした。
( ^ω^)「今日、ってかさっき来たお」
ノリ, ^ー^)li「てことはこれからお家の集まり?」
( ^ω^)「だお」
ノリ, ^ー^)li「じゃあジョルジュさんも来てるんだね。元気?」
( ^ω^)「元気だお。あいつの元気じゃないところなんて見たことないお」
言い終わって、僕は言葉を間違えてしまったことに気付いた。
ノリ, ^ー^)li「……そうだよねー。あの人はずーっと元気で羨ましい」
(;^ω^)「ジャンヌ、あn」
ノリ, ^ー^)li「じゃあね。ジョルジュさんに、よろしく」
弁明しようとした僕の言葉は、いつかのように切られた。
彼女は僕の言葉など聞いても意味が無いのだと思っているのだ。
身を翻し歩き出した彼女は、心なしか早足であるようだった。
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 17:40:00.01 ID:a9pas8Vd0
- ( ^ω^)「ただいまだお」
J( 'ー`)し「お帰り、ブーン。夕方にはお父さんも帰るからそれまでには支度してね」
母の出迎えは少々慌ただしいものであった。
再会を懐かしむ間があってもそんな気は起こらないので、僕としてはどちらでもいいのだが。
適当に返事をし、さっさと自室に移動すると投げるように荷物を置いた。
帰ってくるといつも掃除はしていてくれているので、埃っぽい感じはしない。
置いてあるのはベッドと本棚とタンスのみで、生活感もしない。
去年と同じ、殺風景な部屋だ。
( ^ω^)「……」
どさり、とベッドに倒れ込む。
洗いたてのシーツの臭い。
母はわざわざ時期を合わせて洗ってくれたのだろう。
心では感謝するが、言葉ではしない。
どうしても、気恥ずかしいから。
( ^ω^)「ふぅぅぅ……」
心地よい感触に少しずつ身を任せてゆくと、まどろんでしまう。
J( 'ー`)し「じゃあかあちゃんは長岡さんとこ行くから!」
遠くから声がする。
僕はそれを理解しないまま、母に返す予定だった言葉を放り投げた。
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 17:44:04.55 ID:a9pas8Vd0
- ( ´W`)「起きろブーン、もう行くぞ」
( ^ω^)「お……」
父に起こされた。
彼はもう支度が終わっているようで、ラフな格好に着替えている。
僕もベットから跳び起き、汗臭いTシャツを脱ぎ捨て、適当なものに着替えた。
( ´W`)「また、逞しくなったな」
( ^ω^)「そりゃ僕はVIPになるから。当然だお」
( ´W`)「そうだな。がんばれよ」
( ^ω^)「頑張ってるおー」
玄関を出て父の乗用車に乗り込む。
助手席に乗り込んだ途端、シートからタバコの臭いが噴き出して鼻をついた。
( ^ω^)「お……去年タバコやめたんじゃなかったのかお?」
( ´W`)「ああ、最近また吸い始めた。どうにも、な」
( ^ω^)「ふーん、そうかお」
父がアクセルを踏む。そういう設計なのだ、もちろん発進する車。
それ以降は特別話すことも見つからず、ただただ僕はモーター音とともに揺られていた。
ハンドルを握る父の手は、少し細くなっているようだった。
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 17:48:03.33 ID:a9pas8Vd0
- ( ´W`)「どこ駐めていいんだったかな?」
( ^ω^)「来客用の……あっちだお」
長岡家は相当でかい。ジョルジュの爺さんが一代で多くの資産を築いたのだ。
僕は小学生の頃、この家の子のジョルジュ長岡と仲良くなった。彼と又従兄弟であったことを知ったのはその少し後。
僕の家と彼の家はもともとそれほど交流は無かったのだが、そんな僕らをきっかけに、本来近い親戚だけでの集まりに呼ばれることになったのだ。
<_プー゚)フ「内藤さん久しぶり。ブーンも元気そうだな」
車から降りるとジョルジュの父親が出迎えてくれた。
息子と変わらず表情豊かである。
父と僕は軽く会釈をして、彼に連れられるようにでかい家に入る。
_
( ゚∀゚)「おす、ブーン」
宴会場につくと、もうそれなりに人が集まっていた。
父はいつの間にかどこかに行ってしまい、僕は話しかけられたジョルジュの横に座りこむ。
( ´ω`)「ふいー、なんか毎年人増えてるお」
_
( ゚∀゚)「親父は人と飲むのが好きだからな。来年には親戚以外にも人来るんじゃねーかな?」
( ^ω^)「流石にこの時期は来ないと思うお」
やはり僕はこの環境には慣れない。
顔見知りのおっさん達や近い年代の子供もいるようだがあまり関わる気にならないのだ。
もしジョルジュがいなければ、僕は隅っこでボーっと座っていただろう。
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 17:52:05.61 ID:a9pas8Vd0
- 二十分ほどだらけているとジョルジュの父が立って前に出て来た。
周りを見渡せば、御膳の前はすべて埋まっているのが確認できた。
<_プー゚)フ「それではみなさんお揃いのようなので!グラスを持ちましょうか!」
彼のグラスには黄金色の液体が揺れる。
周りもそれに倣い、それぞれにやけ面で彼と同じようにグラスを持ち上げた。
<_プー゚)フ「持ちましたね?では、せーのっ!乾杯っ!」
号令をかけた彼は持っていたグラスを一瞬で空にすると、自分の膳の前に座る。
そしてくだけた様子で隣の男性と話しながらおかずをつつき始めた。
_
( ゚∀゚)「おっさん共が騒ぎ始めた」
( ^ω^)「なんも楽しくないお」
僕とジョルジュは文句を垂れながら、これが美味い、これは合わない、などと話していた。
ジョルジュの父が完全に酔っぱらう前に僕は帰りたかったが、常識的に考えてそういうわけにもいかない。
父の方を見ると、誰だか知らないおっさんと大笑いしながら酒を酌み交わしている。
僕の母、というより女手は、昼間に御膳作りを行った後、宴会が始まってからのつまみ作りと、泥酔したおっさん方の介抱に忙しいようだ。
( ^ω^)「おにゃのこは大変だお」
_
( ゚∀゚)「おにゃのこではねーな。あっちに比べれば」
(* ^ω^)「ドゥフフ……クーに比べれば?」
_
( ゚∀゚)「まーたそれかよ……もう否定するのも面倒だが、今のは客観的にもクーに限った話じゃねーぞ」
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 17:56:07.83 ID:a9pas8Vd0
- こんな所で出てくるものには碌な話がない。
周りに酔っ払いしかいない上、僕とジョルジュも少し酒が入ってきたことも関係する。
さらに言えば、下世話なものほど尽きることのない話題は無い。僕もジョルジュも、どちらかといえば下世話な人間であるのだから。
(* ^ω^)「いやいやいやいや!!だったらつーは――」
_
(;゚∀゚)「うおあ!!」
<_フ;д;)フ「ジョルジュゥゥゥ!」
僕らがそんな下世話な話に花を咲かせていたところ、べろんべろんのおっさんがジョルジュに突撃してきた。
周りのおっさんどもは既にダウンし、それぞれの妻や娘に水を飲まされていたり寝かされていたりと様々だ。
僕らはそれだけの時間あんなくだらない会話をしていたんだ、と考えると、自己嫌悪に陥りそうになった。
そしてジョルジュの父がこちらに来てしまったということは、毎年恒例の僕の聞きたくない話がされるというわけだ。
_
(#゚∀゚)「んだよ親父!いま今後の学園生活にかかわる大事な話をしてたんだぞ!」
してねえ、と言いたかったが、僕の口は積極的に動かない。
自分の都合の良いように流れる為には黙っていた方がいいと思ったのだ。
<_フ;ー;)フ「そうか?でもなぁ、俺の悲しみをわかってくれるのはお前らしかいないんだよぉぉぉ!!」
それでも話し出す彼。その悲しみは僕にはわからない。
<_フ;Д;)フ「ヘリカルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」
わかるはずもないのだ。
なぜなら彼が叫ぶ名前を持った少女を、僕が殺したのだから。
――まったくこんな所では本当に、碌な話が出ない。
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 18:00:08.06 ID:a9pas8Vd0
- ヘリカルと出会ったのはジョルジュと仲良くなってからそれほど経ってないくらいの夏。
僕がジョルジュの家に遊びに行った時のことだ。
(*^ω^)「うおおおお!!でっけー家だおー!!」
_
(*゚∀゚)「すげーだろ!!じーちゃんがたてた家なんだぜ!!」
向かい合う家はかなりのでかさで、僕のハートを刺激した。
その家の中へ駆けていくジョルジュを追いかけ、僕はそのわくわくに飛びこんでいった。
_
( ゚∀゚)「ただいまー!」
( ^ω^)「お邪魔しますおー!」
( ‘∀‘)「おかえり、ジョルジュ。そちらは?」
(*^ω^)「僕は内藤ホライゾンですお!ブーンと呼んでくださいお!」
( ‘∀‘)「内藤さん?そう。よろしくね、ブーン君」
_
( ゚∀゚)「ブーン、俺の部屋はこっちだ!」
(*^ω^)「待ってくれおー!」
当時の僕の行動は今に比べてなかなかアクティブなものだった。
今ではどうしても少し距離を置いて探るようにしてしまう。
年を重ねてしまった以上、そうなるのも当然だとは思っているが。
*(#‘‘)* 「あにぃ!!うるせーんだよこんちくしょうが!!」
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 18:04:04.40 ID:a9pas8Vd0
- ジョルジュに叫んだ少女。
何事かと振り返った僕の目に映ったのは、髪の両サイドを結った小さな女の子だった。
_
( ゚∀゚)「おうヘリカル!遊んでやるからこいよ!」
*(*‘‘)* 「うん!!」
怒っていたのか構って欲しかったのか、ヘリカルはジョルジュに従いついてきた。
僕はそんなヘリカルを見て、すごくかわいらしいと思った。
(*^ω^)「広いお!高いおー!」
ジョルジュの部屋は子供部屋とは思えない広さを持ち、叫んだ声が軽く反響した。
*(‘‘)* 「「あにぃ、こいつナニモン?」
_
( ゚∀゚)「こいつはブーン。友達だぜ!」
(*^ω^)「よろしくだお!ブーンだお!」
右手を差し出した僕。
対して彼女は左手を出した。
( ^ω^)「お?握手だお!」
*(‘‘)* 「ほらあくしゅ!」
見事に彼女はひねくれもので、カチンときた僕は右手を引くことはなかった。
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 18:08:12.06 ID:a9pas8Vd0
- それからというもの、ジョルジュと遊ぶ時にはヘリカルも一緒になって遊んだ。
ジョルジュの家族が遊びに出かける時、僕も一緒に連れてってもらうこともあった。
両親はそのたび申し訳なさそうに僕を預けるのだが、ジョルジュの親は少しも嫌な顔をせず、息子のように接してくれた。
_
( ゚∀゚)「魚釣れた!」ピチピチ
(*^ω^)「ジョルジュすごいお!」
*(‘‘)* 「あにぃうぜぇー!」
_
( ゚∀゚)「虫採れた!」ブブブブ
(*^ω^)「ジョルジュすごいお!」
*(‘‘)* 「あにぃうぜぇー!」
_
( ゚∀゚)「反対側まで行けた!」ポツーン
(*^ω^)「ジョルジュすごいお!」
*(;‘‘)* 「あにぃ、どうやって帰ってくるの?」
この当時、ジョルジュはなんでもできるタイプの人間で、僕はなにかと叫んでばっかのアホなヤツだった。
ヘリカルは決して運動能力は低くないのだが、ジョルジュ相手には敵わなかった。
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 18:12:11.58 ID:a9pas8Vd0
- 夏が過ぎても僕らはずっと遊んでいた。
気がつけば僕は遊んでいる間のほとんどの時間、ヘリカルを見ていた。
*(‘‘)* 「なに?豚野郎」
( ^ω^)「なんでもないお!」
目が合うと毎回こんな感じだった。
そのころ僕は少々丸かったのだ。少々酷いが。
_
( ゚∀゚)「次は山だな!もみじ狩りだっけ?行こうぜ!」
( ^ω^)「なにするかわかんないけど行くお!」
*(‘‘)* 「あにぃ置いてかないでよー!」
_
( ゚∀゚)「かまくら!」
( ^ω^)「雪集めてたら冬が終わったお!」
*(‘‘)* 「あんたがもたつくからしもやけなった!」
_
( ゚∀゚)「花見!」
( ^ω^)「僕とジョルジュのお父さんがぶったおれたお!」
*(*‘‘)* 「あにぃとブーンが止めないからぁー!」
こんな感じに一年が過ぎ、また夏がやってきた。
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 18:16:18.11 ID:a9pas8Vd0
- ( ^ω^)「ちゃんねるに行くのかお?」
_
( ゚∀゚)「じーちゃんの会社見せてくれるんだって!ブーンもいこーぜ!」
*(‘‘)* 「いくお!」
ジョルジュの祖父は、ここ4、50年で急激に数を増やした、知識の奔流の影響を受けた人間を主に対象とした武装の研究、開発をする企業の会長だ。
彼の人望はもちろん、もともと持っていた多方面の知識や技術が手伝って、優秀な人材が集まった。
そこでさまざまな方向へのパイプもじわじわと伸びてゆき、起業して40年ほどで世界トップレベルの兵器会社に昇りつめた。
_
( ゚∀゚)「楽しみだなー」
ジョルジュがこの時パッとしない町で公立の小学校に通っているのは、
ジョルジュの祖父や父親がそうであったように、小さいころはこの町でのびのび育ってほしいからだという。
僕はそんな話も酔ったジョルジュの父親に聞かされていた。
( ^ω^)「いつ行くんだお?」
_
( ゚∀゚)「来週だってよ!準備しとけよ!」
( ^ω^)「わかったお!」ブッ
*(‘‘)* 「うわブーンくさい!」
(*^ω^)「返事と同時に屁が出たお!」
首都に行くなんていままでで一度もなかったので、僕は物凄く期待していた。
でも、本当は行かなければよかったのかもしれない。
だらだらとつまらない数日を我慢していれば、少しは違う結果になったはずなのだ。
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 18:20:26.86 ID:a9pas8Vd0
- (*^ω^)「すっげーお!」
そしてやってきた首都ちゃんねる。
国の中枢であるこの街は、圧倒的な人の波とアスファルトの内包する熱で、物凄く暑い。
見上げれば天を突きそうなほどのビル群が空を埋め尽くし、頭がくらりとした。
_
( ゚∀゚)「じーちゃんの会社に行くのは明日だってよ!今日はネズミーランドだ!」
(*^ω^)「やったお!」
ネズミーランドとはネズミの国。
世界的に有名なドブネズミのテーマパークだ。
_
( ゚∀゚)「うわあ!熊野布さんが目の前に!」
( ^ω^)「触れないお!なんぞこれ!」
*(‘‘)* 「そりゃぁ立体映像だm――うわ!びっくりした!」
_
( ゚∀゚)「オナルドきめえ……」
(*^ω^)「きんもー☆」
*(;‘‘)* 「今の!ブーンのがきもい!」
入るアトラクションはどれもこれも絵本のような世界観を現実にうまく具現化し、楽しかった。
それ以外の、例えば単なる通路でも、子供心をくすぐる遊びがいろんな場所になされており、ちょくちょく足を止めることも多かった。
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 18:24:46.19 ID:a9pas8Vd0
- (;^ω^)「あれ……?」
*(‘‘)* 「ブーン、どうしたの?」
アホみたいに楽しむ途中、ヘリカルと壁に描かれた小人を探していた僕は、ジョルジュとその両親とはぐれてしまった。
止まらない人混みの中、小さな僕たちは大人の列に飲まれ、ヘリカルともはぐれてしまいそうになった。
(;^ω^)「手!」
*(‘‘)* 「うん!」
一言で状況が理解できたのだろう。
ヘリカルはすぐに僕の服の裾を掴んで、一緒に空いてるところまで走った。
*(;‘‘)* 「どうしよう……」
(;^ω^)「うーん……」
園内の適当な場所に腰をおろして唸る僕ら。
ただ唸っていてもどうしようもないのはわかっていたが、そこでは本当になにも思いつかなかったのだ。
*(‘‘)* 「あっ!」
( ^ω^)「なんだお?」
*(‘‘)* 「迷子センター!」
迷子という事実を僕は認めたくなかったのだが、もっとも無難な案であることは間違いなかった。
ヘリカルは立ち上がると、座ったままの僕の目の前に歩いてくる。
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 18:28:59.29 ID:a9pas8Vd0
- *(‘‘)* 「手!」
すると、手、と言ってきたヘリカル。
何故か高圧的な視線を僕に送っている。
( ^ω^)「え?」
*(;‘‘)* 「ブーンとも迷子になったらやだ……」
( ^ω^)「わかったお!」
一応年上の僕は、泣きそうな声で捻りだした彼女の言葉を真正面から受け止めた。
そして気付いたのだが、この時初めて僕は彼女と手と手を繋いだのだ。
*(‘‘)* 「どこかな?」
(;^ω^)「係員の人がいないお……お客さんばっかりだお……」
僕は心臓がドキドキしていた。
迷子になった恐怖ではなく、ヘリカルと手を繋いで歩いていることに。
涙目でキョロキョロする彼女を早く安心させてあげたい。
が、その反面ずっと手を繋いでいたい、などとも考えてしまう。
*(#‘‘)* 「ちゃんと探してよ!この豚野郎!」
(;^ω^)「ごめんお……」
彼女をチラチラ見ていたことに気付いたのだろうか。
僕はそこで我にかえり、真面目に迷子センターを探す。
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 18:32:59.73 ID:a9pas8Vd0
- そこでふと気付いた。
適当なアトラクションの係員に直接聞けば一発ではないか。
それをヘリカルに言ってみると、僕を無理矢理引っ張りながら近くのアトラクションに入った。
川モブ)「大変!私が連れていきます!」
事情を僕が説明すると、すぐに受付のお姉さんが僕らを連れていってくれることになった。
お姉さんははぐれないように僕とヘリカルの間に立って手を握ろうとしたのだが、ヘリカルは僕の手を離さなかった。
*(‘‘)* 「あにぃ達に会うまでぜったいはなすな!」
僕は返事ができなかった。
ジョルジュ達に再会しても、僕はこの汗ばんだ手を離したくはなかったのだ。
<_プД゚)フ「はっ!!!!!」
( ‘∀‘)「あっ!二人とも、大丈夫だった?」
_
( ゚∀゚)「あーよかった……心配したぜ……」
お姉さんと迷子センターに向かっていると、丁度ジョルジュ達と遭遇した。
どうやら彼らもそこに行くところだったようだ。
*(;;)* 「おとーさぁん!!」
僕の手を離し、父に駆けていくヘリカル。
泣きながら大きな声で叫ぶ彼女の不安は限界に来ていたようだ。
僕は少しばかり罪悪感をおぼえた。本当ならもうほんの少し、早く動けたはずなんだ。
彼女に切り離された手は、汗のせいだろう、妙に冷たかった。
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 18:37:02.59 ID:a9pas8Vd0
- _
( ゚∀゚)「いやー焦った!無事でよかったぜ!」
園内で買った蛇のような体の牛を振り回しながら言うジョルジュ。
今はホテルのバイキングにいることを彼は理解していないに違いない。
( ^ω^)「怖くて死ぬかと思ったお!」
_
( ゚∀゚)「ばーか!そんな明るく死ぬ奴はいねーよ!」
*(‘‘)* 「ブーンはあんまり頼りにならなかったー!」
(*^ω^)「泣きそうだったヘリカルに言われたくないおー」
*(‘‘)* 「うううううう!!!」
<_プー゚)フ「ははは!結局ヘリカルは泣いちゃったしな!」
酷い親父である。
( ‘∀‘)「あなたこそ半泣きで探してたじゃない」
<_プー゚)フ「返す言葉もないな!はははは!無事で何よりだよ!」
豪快な親父である。
実際、ジョルジュがこの人の息子であることは物凄く納得できる。
おっさん連中の話によれば、彼もなかなか多彩な面を持ち合わせているという。
_
( ゚∀゚)「明日はじーちゃんとこだな!」
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 18:41:07.12 ID:a9pas8Vd0
- そしてその翌日。
ジョルジュの祖父の会社にお邪魔することになった。
( ^ω^)「ここにはいるのかお……」
僕が見上げたビル、長岡ミリタリーカンパニー。
軍事会社、とあっさりひとくくりにしてしまっているような名前。実際それだけ多方面に手を伸ばしているのだ。
周りに比べればひときわ大きなビルはてっぺんの方が三角形にせり出しており、大展望台が設置されている。僕らの主な目的はそこだ。
確か僕がこの歳の頃、『知識』を持った者達の世界的なテロ活動は停滞していて、この会社では技術の発展にシフトしていたところだったと思う。
_
( ゚∀゚)「さ、いこーぜ!」
ジョルジュに急かされ、小股でついていった。
中ではすれ違う大人の全てがジョルジュの父親に深々と頭を下げていく。
僕はこの時初めて、この人は相当偉い人なんだ、と思い知った。
忙しそうな様子は微塵もなく、普通の父親だと思っていたのだが、彼は長岡の御曹司に当たるのだ、本当はそんなことは無かったのだろう。
歩くなか頭を下げない者もいくらかいたのだが、その時点ではもう僕は気にも留めなかった。
(*^ω^)「すっげーお!変な機械がいっぱいあるお!」
_
( ゚∀゚)「何に使うんだこれ!」
*(‘‘)* 「あんまりうるさくすんなー!」
<_プー゚)フ「ははは!みんなには話を通してあるから気にするな!」
豪快に笑う彼に、作業服の会社員も貼り付けたものではない柔和な笑顔で頷く。
そんな調子で僕らは視覚的に楽しめる部屋を回っていった。
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 18:45:33.60 ID:a9pas8Vd0
- _
( ゚∀゚)「たっけー!!」
そして展望台にやってきた。
このちゃんねるでもひときわ高いこの展望台から覗く街は、僕が最初に思った印象とは大きく違っていた。
とても精巧なミニチュアが立ち並び、よく見ると中の人が動いていたりして、とても完成度の高いジオラマを眺めているようだった。
*(*‘‘)* 「ブーン!見たい!」
(*^ω^)「すっごいお!」
ヘリカルに代わると、僕がさっきしていたように街を見る。その間口が開きっぱなしだったのだが、僕もおそらくそうだったのだろう。
ジョルジュは望遠鏡を見た後でも窓の外をへばりつきながら見つめていて、ジョルジュの父は警備員らしき人となにやら怖い顔で話していた。
ちなみにこの時ジョルジュの母は、ちゃんねるの友達とお茶しに行ったそうだ。
<_プー゚)フ「それじゃ、みんな見たか?帰るぞー!」
警備員と話を終えたのか、ジョルジュの父が早足でこちらに近づいてきた。
_
( ゚∀゚)「もう帰るの?じーちゃんに会ってないぜ?」
*(‘‘)* 「おじいちゃんに会いたい!」
<_プー゚)フ「いや、帰るぞ」
彼が子供達の意見を無視することなど滅多になく、
ジョルジュ達もその違和感を察したのかぶーぶー言いながらも足はしっかりついていった。当然僕もそれに倣う。
エレベーターに乗り込み、一階のボタンを押す。そしてゆっくりと下がっていくエレベーター。
爆発音が響いたのは、その途中のことだった。
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 18:49:33.20 ID:a9pas8Vd0
- (;^ω^)「お!」
_
(;゚∀゚)「うあ!」
*(;‘‘)* 「きゃあ!」
僕らが入っていた箱は大きく揺れた。
そしてがくん、と足に負担がかかる。急停止したようで、なんだか胃のあたりが気持ち悪くなった。
ジョルジュの父は咄嗟に僕らを覆うようにしゃがみ込んだ。僕達はどうすることもできず、ただ震えていた。
<_プー゚)フ「どうして今なんだ……」
呟くと同時にジョルジュの父親は立ち上がり、鉛色に変色した両手をエレベーターの扉の隙間に突き刺した。
驚く僕らを尻目に鉄の扉は開いていく。丁度少し上に、もう一枚の扉が見えた。
<_プー゚)フ「ごめんな、こんなことになるなんて」
彼は僕達に謝りつつ、もう一枚の扉もこじ開けた。
外の通路は少し煙が漂っていて、悲鳴を上げ、逃げ惑う社員は皆不安そうな顔だ。
<_プー゚)フ「スプリンクラーもやられているのか……お前ら、体を小さくしてついて来い」
妙に落ち着いた声に僕達はついていく。
その声は少なくとも僕の不安感をギリギリで押し留めてくれた。
_
( ゚∀゚)「なんだよ、これ……」
先を走るジョルジュが急に止まった。僕は口を開けたままの彼の横につく。
彼の行動に納得できる理由は、階段の踊り場に転がっていた。
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 18:53:39.73 ID:a9pas8Vd0
- <_プー゚)フ「見るな、急ぐぞ」
語気が少し荒れていた。
当然だろう。彼らは先程まで笑顔で頭を下げていた社員達だ。
*(;‘‘)* 「うう…………」
ヘリカルは泣くのを我慢して、父の手を握り早足で歩く。
ジョルジュはずっとキョロキョロしていたが、遅れるようなことはなかった。
確か僕はこの時、早鐘を打つ心臓の音を聞かないように周りの音に集中していた。
(;^ω^)「はぁ、はぁ」
20階ほどを駆け降り、ようやく一階にたどり着いたのだが、そこはほとんどが炎上していた。
爪'ー`)y‐「あれ?お前……」
その中に佇む男はその火に動じず、突っ立ったままタバコを吸っていた。
<_フ;゚ー゚)フ「フォックスか……」
ジョルジュの父はそのタバコの男を知っているようだった。
爪'ー`)y‐「今は五日間のサマァバケィションって話だったよな?息子さんはよぉ」
<_プー゚)フ「野暮用でな。そんなことはどうでもいい、どういうつもりだ」
爪'ー`)y‐「ひろゆきは頭の固いじいさんとこの本社を潰す、ってとこらしいな。まあ、意図はわかるだろ?」
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 18:57:43.31 ID:a9pas8Vd0
- 僕は何の話をしているのかわからなかったが、助けに来た人間ではないということはわかった。
それよりもとにかく安全に逃げ出したかった。ひたすらに熱くて、息が詰まりそうだった。
爪'ー`)y‐「にしても……お前は殺す予定は無かったんだが、こうなったら殺すしかないよな?そうだろ?」
<_プー゚)フ「どうして、今なんだ」
爪'ー`)y‐「さっぱりわからん。まあ、ここが世界に与える影響を考えればいつでもいいとは思うな」
飄々とした態度の彼はさも当たり前のような顔をして言う。
あれだけの死者を出して、当たり前のようにタバコを吸う。
<_プー゚)フ「ジョルジュ、二人を連れて逃げろ」
_
( ゚∀゚)「親父?」
呟く父にジョルジュは疑問で返した。
<_プー゚)フ「お前は俺に似ている。だからなんとか逃げ切れるはずだ」
言葉の意味を理解したのかジョルジュははっとした顔をした。
そして彼は右手を見つめ、開いたり閉じたりしている。
_
( ゚∀゚)「……知ってたのか?」
<_プー゚)フ「知っていたが、お前には俺のあとを継いで欲しくてな」
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 19:01:40.19 ID:a9pas8Vd0
- _
( ゚∀゚)「俺だってそのつもりだった。だから黙ってたんだ」
<_プー゚)フ「でもそうは言っていられない。俺があいつを抑えるから二人を連れて走れ。たかが炎なら大丈夫だ」
_
( ゚∀゚)「……親父、死ぬのか?」
<_プー゚)フ「それはわからん。願ってくれ」
爪'ー`)y‐「おう、話は終わりか?どうするよ」
いつの間にか新しいタバコを吸っていたフォックス。
何故この男にはこれほど余裕があるのか僕には理解できなかった。
<_プー゚)フ「お前を捕まえてはく製にしてやるよ」
爪'ー`)y‐「出来るわけないだろ?俺は『知識管理部』の削除人、狐火のフォックス様だぜ?」
『知識管理部』と聞いた僕はどんな顔をしていただろう。
この発言は、世界的にテロ活動をしている団体の、おそらく上の立場であろう男が目の前にいるということを示していた。
<_プー゚)フ「それでもやるさ。その様子じゃ、親父も殺されたのだろう」
爪'ー`)y‐「ああ、ミルナは本当に使えるぜ。まだ若いが、あいつはいいもんを持ってる」
<_プー゚)フ「ミルナ、か。覚えておこう。おまえと並べてやる」
爪'ー`)「だからよ……出来るわけねえだろ」
ジョルジュの父は、そのテロリストに向かって歩いていった。
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 19:05:54.46 ID:a9pas8Vd0
- _
( ゚∀゚)「逃げるぞ!」
ジョルジュが僕とヘリカルに叫んだ。
彼の体は普段とは違う色をしていた。もう僕は何が何だか分からなくなってきていた。
(;^ω^)「ジョルジュ、それ」
_
( ゚∀゚)「いいから!!走るんだ!」
固い掌に腕を掴まれ、僕とヘリカルは炎に向かって連れて行かれる。
と、その前にジョルジュが炎の中を走って消化器を取り出し、僕らは火に触れることなく走ることができた。
爪'ー`)「おい!ガキ!」
(;^ω^)「ひっ!」
途中、僕は声に驚き、走る速度を落としてしまう。
爪'ー`)「そこは崩れるぞ!」
彼がどういう意図で言ったのかはその時わからなかったが、確かに天井は崩れ出した。
*(;‘‘)* 「ブーン!」
瓦礫が落ちて来た。その瞬間、間違いなく僕は死んでいた。
( ^ω^)「!!」
ヘリカルが僕を突き飛ばさなければ。
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 19:10:03.91 ID:a9pas8Vd0
- ( ^ω^)「……」
一瞬、炎のぱちぱちとした音しか聞こえなかった。
僕の目の前には瓦礫の山が落ちてきていたのに。
( ゚д゚ )「フォックス!時間が無い!撤収だ!」
瓦礫とともに落下してきた軽装の集団は、叫んだ者を筆頭にすぐさま出口へ向かっていった。
(;^ω^)「ヘリカル!!」
*(;‘‘)* 「あ、ブーン、生きてる……よかった……」
_
(;゚∀゚)「くっそ……!」
ヘリカルはうつぶせに倒れ、落ちて来た瓦礫に下半身を挟まれていた。
駆け寄ってきたジョルジュが自分の腕を突っ込み、てこのようにして瓦礫をどかそうとするが、長さが足りていない。
爪'ー`)「ちっ……時間か……」
フォックスはジョルジュの父を既に気絶させており、こちらに向かってきていた。
_
(#゚∀゚)「うああ!」
ジョルジュが瓦礫から腕を抜き、彼に殴りかかるが当たるはずもない。彼はそのまま、蹴飛ばされた。
爪'ー`)「ん?そうか……ならお前も焼いてもなかなか死なないだろうな。時間の無駄だ」
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 19:14:14.91 ID:a9pas8Vd0
- 爪'ー`)「お?どっちもまだ生きてんのか?よかったぜ、削除人としてもう少し殺したかったんだ」
(;^ω^)「来るなお!来るなおー!」
*(;‘‘)* 「ブーン、逃げてよ………」
(#^ω^)「いやだお!絶対やだお!」
*(‘‘)* 「逃げて……!」
(#^ω^)「やだお!」
*(#;;)* 「逃げろったら!!この豚野郎!!」
振り絞った声のヘリカル。
そんな声を僕はどうしても放ってはおけなかった。
僕はヘリカルの前に立ち、必死に、来るな、と叫ぶ。
目の前の男は、そんな僕の声など聞いてはいなかった。
爪'ー`)「ほら、死ねよクソガキ」
僕の胸に軽く手を当てるフォックス。
彼の顔は、冷たい目を中心に形作られていた。
_
(;゚∀゚)「ブーン!!」
僕に対して叫ぶジョルジュの声が聞こえた。
その瞬間、僕の体が炎に包まれた。
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 19:18:26.37 ID:a9pas8Vd0
爪;'ー`)「!!!」
そこで大爆発が起きた。その爆発に僕は吹き飛び、背中から壁に叩きつけられた。
それでも意識が飛ぶことより、ヘリカルが気にかかった。
爪;'ー`)「……今のは……?」
同様に吹き飛んだフォックス。
うつぶせに倒れ、右腕と両足があらぬ方向に曲がっていた。
_
( ゚∀゚)「…………!!」
( ω )「………」
僕は彼を見た後、気がかりの方に視線を向けた。
しかし、その瓦礫の山、そして下敷きになっていたはずの少女の姿は、どこにもなかった。
- 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 19:22:31.85 ID:a9pas8Vd0
- ( ω )「……………」
フロアを全て見渡した。
それでも、瓦礫の欠片、燃える壁面、這いつくばるフォックスしか見当たらない。
ヘリカルがいない。
僕は血だらけの体で立ち上がり、無理矢理頭を動かした。
腕と足、背中や腹にも鋭い痛みが走った。
それでも関係がなかった。
ヘリカルがいなかったのだ。
<_プーメ)フ「ブーン、ここを出るぞ。ジョルジュはもう出ていった」
爆発の衝撃で意識を取り戻したのか、ジョルジュの父親が僕の肩を掴む。
落ち着いた声だった。
( ω )「へリ……か、っは!ゴホっ!」
声を出そうにも出ず、かわりに血を吐いた。
「すまん」
僕はボロボロの体をジョルジュの父に背負われることになり、ビルから抜け出した。
- 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 19:26:34.83 ID:a9pas8Vd0
- その後、僕は四日間意識を失った。
両足が折れていたフォックスは逃げられずに捕まったらしい。
本社は完全に潰され、生き残っている者もほとんどが重傷だったそうだ。
ある程度情報を伝えてくれたジョルジュは僕が入院するベッドの横に、黙って座った。
硬化の知識を持った彼には大きな外傷はなかった。
_
( ゚∀゚)「そうだブーン、お前も知識を持ってたみたいだ」
( ^ω^)「………」
この時僕は話すことができなかった。
ほぼ全身に怪我を負い、話すだけで激痛が走ったのだ。
_
( ゚∀゚)「お前の体から引火性の強い液体が分泌されるらしい。それは火に触れると爆発するんだと」
( ^ω^)「…………!!」
合点がいった。
あのとき爆発が起き、なぜフォックスが負傷したのか。
僕のせいだったのだ。
つまり、ヘリカルがいなくなったのも僕のせいだ。
急に頭が重くなった。
僕が、彼女を殺したのだ。
- 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 19:30:40.54 ID:a9pas8Vd0
- _
( ゚∀゚)「誘爆の知識、ってところか?俺も医者に知識があることがばれちまった。小学校卒業したら学園都市行きだな」
ジョルジュの言葉はあまり入ってこなかった。
僕のせいで人が死んだ。
僕のせいでジョルジュの妹が死んだ。
僕のせいで大切な友達が死んだ。
僕のせいで、僕の初恋の人を、失った。
( ;ω;)「…………」
涙がでた。
これに火をつければ目くらいなら吹き飛ばせるかもしれないと思った。
彼女を殺した知識を使い、僕も死にたくなったのだ。
_
( ∀ )「泣くな」
ジョルジュは何故こんなにも冷静でいられるのだろう。
( ;ω;)「…………」
涙はとめどなくあふれる。
僕には少しも、それを耐えることなんてできなかった。
- 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 19:35:10.10 ID:a9pas8Vd0
- _
( ∀ )「泣くな!!」
ジョルジュは叫んだ。
涙を拭けない僕は、彼の顔の方を見ても表情がわからなかった。
_
( ∀ )「お前は悪くねえんだよ!!」
彼はもう一度叫んだ。
僕が悪いに決まっている。
そんな言葉なんて、意味が無い。
_
( ∀ )「全部!!あの知識管理部が悪いんだよ!!」
それでも爆発が起きたのは事実だ。
ヘリカルの目前で爆発が起こったのは僕のせいだなのだ。
_
( ∀ )「……おいてめえ!!これ以上泣いてみろ!!そうしたら俺は!!おまえを殺してやる!!」
それでも、涙は止まらないのだ。
これは僕の意志でもあるし、もう簡単に止まることは無い。
_
( ∀ )「………!!――っの野郎!!」
座っていた椅子を倒しながら立ち上がるジョルジュ。そして、顔を三発殴られた。殴るジョルジュの顔は、泣いていた。
彼が叫んでいたことは筒抜けであったようで、すぐに看護士が止めに入ってきた。
そして、5分ほど一人で部屋に残された。
走る全身の激痛は、僕を殺してはくれなかった。
- 53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 19:39:09.48 ID:a9pas8Vd0
- J( 'ー`)し「ブーン!!」
その夜、父と母がやってきた。
意識がない時に何度か来ていたそうで、二人は僕と目を合わすと同時に泣きだした。
J( ;-;)し「本当に、こんなことになるなんて………」
( ´W`)「小学校を卒業したら、家から一番近い学園都市シベリアに行くことになるそうだ。やはり国は対応が早いな」
父は涙を拭きながら、いつも通りの対応をしてくれた。
( ω )「…………」
僕にはその『いつも通り』が、心を喰い破りそうなほどに辛かった。
( ´W`)「希望があればちょっとお金出すだけでどこにでも行けるそうだぞ。行きたいところはあるか?」
そんなものは無かった。
学園都市に行くことになるなんて思ってもみなかったのだから。
目をつぶり、ほんの少しだけ顔を横に回す。父は頷いてくれた。
( ´W`)「そうか。…………ブーン、大変だったな」
父は軽く、本当に、羽毛のように軽く、僕の頭に手を乗せた。
これもまた、『いつも通り』のしぐさだった。
( ;ω;)「…………」
なぜか僕は、また涙を流した。
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 19:43:34.41 ID:a9pas8Vd0
それから半年。
リハビリも順調で大きな後遺症も残らず、僕は退院した。
殴られて以来ジョルジュとは顔を合わさなかったが、彼の両親とは何度か話す機会があった。
ジョルジュはずっと塞ぎこみ、学校にも行かなくなったらしい。
学校に行っても会わせる顔がなかった僕は、少し安心したような気分になった。
そして再開した学校生活は、なにも面白くない、退屈なものだった。
- 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 19:47:46.92 ID:a9pas8Vd0
- 小学六年の夏がやってきた。
もう来て欲しくなかった、夏という季節。
その半ば、長岡家で親戚の集まりがあるというので、僕は無理やり連れて行かれた。
「………」
おっさん達は飲み始める。
しかし長岡にとってこの日がどういった日か全員がわかっていたので、誰も喋ろうとしなかった。
この日は、長岡家のトップと、その孫の命日なのだ。
「………」
箸が食器に当たる音、ビールがグラスに注がれる音しかしない。
「………」
長岡ミリタリーカンパニーは本社の崩壊により一度は崩れかかったものの、
すぐさま跡を継いだジョルジュの父自身の横の繋がりよってなんとか会社自体は持ちこたえた。
これから断たれてしまった関係を修復していけば、さらなる発展が望めるそうだ。
<_プー゚)フ「みなさんもっと笑いましょう!!」
そんなジョルジュの父がおもむろに立ち上がった。
<_プー゚)フ「今日は私の大事な人の命日です!」
そんなことは、誰もがわかっている。
<_プー゚)フ「そんな日に!みなさんが何故沈む理由があるんですか!」
- 57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 19:51:44.03 ID:a9pas8Vd0
- 全員が彼を怪訝な顔で見つめた、
この言葉は、お前らには関係ない、と言っているようなものだ。
僕もあまり良い気分はしなかった。
<_プー゚)フ「私は彼らを失ったからこそ、新たな、大きな一歩を、踏み出す必要があると思うのです」
<_フ ー )フ「大事なものを失ったからこそ、それを受け止める強さを……」
そこで、彼はグラスに涙を零した。
<_プ―゚)フ「……俺一人では駄目なんだ!!」
<_プー゚)フ「俺はあの悲しみからまだ完全には立ち直れていない。……きっとこれからも引きずっていくだろう」
<_フ ー )フ「脆いんだよ、俺は」
<_プー゚)フ「支えて欲しいんだ、俺や、親父やヘリカルが好きだった馬鹿騒ぎで。
……だから今日を、この日を、俺と、俺の大切な人のための、宴の日にしてほしい!」
そんな身勝手ともとれる彼の言葉。
それでも、
「まかせろ、新会長!!」「お前のためにはやらねーからな!前会長とお前の娘さんの為だ!!」「しょうがねえなぁ!」
「これから毎年やってやるよ!!」「よっしゃ!どんどん酒もってくるわ!!」「エクストー!!」
帰ってくる言葉は、確かに彼を支えるものだった。
- 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 19:55:44.31 ID:a9pas8Vd0
- そしてようやく長岡家特有の馬鹿騒ぎを始めたおっさん達。
泣きながら歌ったり騒いだりするおっさん達を僕は見ていられず、縁側に座ってボーっとした。
どこかに気を移しておかないと、また泣いてしまいそうだったのだ。
_
( ゚∀゚)「おう、ブーン」
( ^ω^)「ジョルジュ……」
久々に会った彼はかなり背が伸びていたようだった。
少し厳しい顔で僕を見降ろしている。
_
( ゚∀゚)「久しぶりだな」
( ^ω^)「なんで学校、来なかったんだお」
_
( ゚∀゚)「色々考えてたんだ」
( ^ω^)「なんだお?」
_
( ゚∀゚)「これから学園都市に行ったらどうするか、ヘリカルをこれからの俺の中でどう捉えていくか、とか」
( ^ω^)「ずいぶん小学生っぽくないこと言うお」
_
( ゚∀゚)「お前も少し、変わったみたいだな」
( ^ω^)「……ジョルジュには悪いけど、やっぱりあれは僕のせいだってことにしたお」
_
( ゚∀゚)「てめえ……」
- 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 19:59:54.13 ID:a9pas8Vd0
- 睨むように見つめてくる彼だが、僕は怯むつもりは無い。もう、決めたんだ。
( ^ω^)「それを背負って、僕はVIPになるお。あんなことはもう起こって欲しくないから、僕は……強くなってやるんだお」
_
( ゚∀゚)「………」
( ^ω^)「だからちょっと最近鍛え始めたんだお」
_
( ゚∀゚)「それでもなぁ……」
( ^ω^)「……?」
_
( ∀ )「お前のせいでも、お前は悪くねえんだからな………覚えておけ、豚野郎」
「………」
僕は返す言葉が見つからなかった。
いや、返す必要がなかったのかもしれない。
これ以上はもう、二人ともわかってしまうから。
_
( ゚∀゚)「………なあブーン、せっかく行くならニュー速にしねーか?」
( ^ω^)「ニュー速?どうしてだお?」
_
( ゚∀゚)「一番すげえとこみたいだから」
( ^ω^)「……行くお」
- 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 20:03:59.11 ID:a9pas8Vd0
- ( ´ω`)「はぁ……おじさんの酒癖は何年経っても変わんないお」
散々叫んでぶっ倒れたジョルジュの父を支えながら、ジョルジュと寝床へ連れていった。
_
( ゚∀゚)「もう完全に騒ぎたいだけだしなこのアホ親父は」
( ^ω^)「いや、そうでもないお」
_
( ゚∀゚)「……さあな。それよりブーン、お前あっちでなんかあったろ」
( ^ω^)「え?なんでだお?」
_
( ゚∀゚)「ツンとヘリカルを重ねて見てるってわざわざ俺に言うとは思わなかったぜ」
( ^ω^)「……………ああ、それかお。別に重ねて見てるわけじゃないお」
_
( ゚∀゚)「じゃあなんだ?」
( ^ω^)+「ダメな僕への、戒め?」
_
( -∀-)「うん、おまえ何言ってんの?飲み過ぎたの?」
( ´ω`)「ひでえお……」
それから僕は母を捕まえて、家のカギを受け取って帰ることにした。
- 61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 20:08:03.96 ID:a9pas8Vd0
- 夜風が酒でほんのりあったかくなった体を冷ましていく。
とても気持ちがよかった。
( ^ω^)「あー」
軽くふらふらする程度が一番丁度いい。
( ^ω^)「……」
しかし酒は危ない。
危うくジョルジュに本音をぶちまけるところだった。
そういうことに関してはあまり人には言いたくない。
(* ^ω^)「ひゃあああい!!」
僕は揺れているのだ。こっ恥ずかしいことこの上ない。
既にヘリカルのことは吹っ切れている。ようやく、と言ってもいいが。
中等部一年の頃、ジョルジュと本気で喧嘩した時と、
ロマネスクに24時間土下座説教させられた時、あれをきっかけに徐々に僕は変わっていった。
でもそれから何度か人に特別な感情を持ちそうになることが怖くて、自分に言い訳をした時に使いやすい材料がヘリカルだった。
ただ、それだけ。
我ながら不謹慎であるとは思う。初恋の人を自己保全のために使うなんて。
それに吹っ切れたとはいっても、泣いたジョルジュの父の顔を見ると僕も泣きだしたくなるのは変わらない。
( ω )「………」
事実家についた僕は、リビングで朝まで泣いた。
- 62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 20:12:13.09 ID:a9pas8Vd0
- J( 'ー`)し「もう帰っちゃうのかい?」
翌日ソファで泣き疲れて寝た僕は母に起こされた。
母は僕の涙の跡について聞いてくることはない。
これは恒例にしたくないが、この行動も三回目だ。
( ^ω^)「帰るお。みんな元気そうでよかったお」
J( 'ー`)し「あんたもしっかりね」
( ^ω^)「僕はかなり頑張ってる方だお」
J( 'ー`)し「そうかい」
( ^ω^)「だお。それじゃまた来年帰るお」
J( 'ー`)し「年末くらい帰ってくればいいのに」
( ^ω^)「ジョルジュも帰らないし、今年も友達と過ごすお」
J( 'ー`)し「そう………いってらっしゃい、ホライゾン」
緩まった靴紐を縛りなおす。
紐はなかなか僕がしっくりくるように結べず、何度も何度もやりなおした。
( ^ω^)「……それじゃ、行って来るお」
それから、玄関をあける。
夏が終わるのを拒むように、今日も太陽は照っていた。
- 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 20:16:25.80 ID:a9pas8Vd0
- _
( ゚∀゚)「おせーぞ、豚野郎」
( ^ω^)「お?豚野郎なんてどこにもいないお」
駅には既にジョルジュがいた。
微妙に荷物が増えているのもいつも通りだ。
_
( ゚∀゚)「……ははっ、確かにいねーな!」
( ^ω^)「そうだお」
_
( ゚∀゚)「いやーこっちは一泊二日でも長いもんだな。感覚的に」
(* ^ω^)「だお。なんか久しぶりに帰る気がするお。早く帰りたいお!」
ニュー速に帰る。
それだけで、僕の気持ちは昂るのだから。
- 64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 20:20:23.13 ID:a9pas8Vd0
- ミセ*゚ー゚)リ「あ、出て来た!」
川 ゚ -゚)「全く、なぜ一時間も早く来てしまったんだ………」
ξ゚听)ξ「だってミセリがはしゃぐんだもん!」
ミセ*゚ー゚)リ「ツンもクーもノリノリだったくせに!」
( ・∀・)「アポなしで殴りこみに来られた俺の気持ちはだれも考えてくれない……」
(`・ω・´)「ふははは!イケメンは死ね!」
('A`)「死ねッ!死ねェッ!」
( ・∀・)「……寝てる間におまえらの脳ぶっ壊すんだからな!」
ノハ*゚听)「モララー死ねー!」
(;・∀・)「えぇ……?ヒートまで?」
_
( ゚∀゚)「帰ってきたぜえええええええええ!!!!!!!!!!!」
川 ゚ -゚)「おいやかましいぞジョルジュ。それからもっと早く帰ってこい、ばかめ」
( ;∀;)「おかえりいいいいいいいいい!!!!!俺寂しかったああああああああ!!!!!!!!」
('A`)「あー声でけえ……喉に穴あけるぞてめえ……」
( ^ω^)「まずコインロッカー探すおー」
- 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 20:24:17.01 ID:a9pas8Vd0
- ミセ*゚ー゚)リ「ぶんぶんもじょる君もおかえりー!コインロッカーあっちだよー!」
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(*゚∀゚)「おう。ったく、たかが一泊二日じゃねーかぁ……」
(* ^ω^)「僕は嬉しいお!それにジョルジュ!にやけ顔で言う台詞じゃねーお!」
ノハ*゚听)「私は暇だから来た!」
川 ゚ -゚)「私も暇だった」
ミセ*゚ワ゚)リ「クーはうそつきですよ!だぁぁぁい好きな読書を途中でほっぽり出しましたよ!」
(`・ω・´)「まあ実際、来てる全員がそうだろうね」
ξ゚听)ξ「ブーン!」
( ^ω^)「なんだお?ツン」
ξ*゚听)ξ「おかえ――从*>∀从「せんぱいおかえりなさあああああい!!」
(;^ω^)「うおっ!!」
この騒がしい連中と居るのはどうしても心地がいい。
彼らと学園に居る時くらいなら、僕はあの頃の馬鹿な豚野郎に戻ってもいいと思っている。
第十五話「帰省と昔話」・終わり
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