( ^ω^)達の中だるみな一年のようです

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 16:24:11.66 ID:q6XuIg3o0
春休みが始まってから三週間が過ぎた。件の交換留学生たちとの交流も順調な頃、ブーンは一人、部屋にこもり映画鑑賞を楽しんでいた。
昨日の深夜から降り出した雨は今日まで続き、昼になっても飲み過ぎた奴のゲロのように降るその勢いは止むことを知らない。
モララーら三人は始業も近いためだろう、学園のほうで呼び出しがかかったらしく、雨の中朝から出かけてしまっていた。
こんな日だ、これは映画を見るしかない、とブーンは以前から見るタイミングを逃し続けた作品の処理にかかっていたのだ。
  _
(;゚∀゚)「おい聞いてくれよ!きのう俺が廃墟行ったの知ってるだろ?」

そんな楽しい趣味の時間に、騒がしくドアを開けながら長身の男が声を掛けてきた。
ブーンはリラックス状態を阻害されたためあからさまに不快な表情を見せつけ、わざとらしく溜息を吐きながら映像を一時停止した。

( ^ω^)「ああ……ギコ達とサバゲー行ったってやつかお?」
  _
( ゚∀゚)「そーそれ。そんでさ、まじびびった事件があったわけよ」

( ^ω^)「なんだお。面倒だから早く言えお」

ブーンはさっさと自分の世界に帰りたかったのだろう。睨みつけながら急かす。
  _
( ゚∀゚)「いやいや、ここ引っ張りどころじゃねーか?」

( ^ω^)「知るか」
  _
( ゚∀゚)「いやーホントさー。このご時世にありえねえもん見たんだ」

(# ^ω^)「だから早く言えお」
  _
( ゚∀゚)「おう。幽霊見た。マジに」

第三話「鉄と幽霊」

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 16:27:18.41 ID:q6XuIg3o0
先ほどより雨が強くなったのか、部屋の中にまで響きそうな雨音。
ブーンは一瞬、先ほど自分が止めた映像のように停止するが、何事もなかったように無言でヘッドホンを着け、映画の続きを再生した。
画面の中の中年男性は涙を流し、今は亡き娘の手紙を握りしめている。クライマックスであった。
  _
( ゚∀゚)「おい聞け、我が親友ブーン」

( ^ω^)「……」

彼は集中モードに突入してしまったらしい。画面を見つめる目が潤いを帯びている。こうなったら終わるまで話を聞かない。
強制的に止めたときは烈火のごとく、それこそ文字そのままに怒ったことがあるのだ。
仕方ないのでジョルジュは適当な漫画を本棚から引き出し、ベットを占領、漫画を開いた。

……

( ^ω^)「いやあ良かったお。ジョルジュも観ればよかったお」
  _
( ゚∀゚)「で、俺の話聞く気になったか?あれは――」

( ^ω^)「同じセントジョーンズ監督の作品で、これまた良い評判のものがあるお。次これ観るお!」

ブーンは華麗にスルーし、女性の裸体がパッケージの映画を取り出した。なんとも扇情的である。
  _
( ゚∀゚)「あれ?それエロいやつじゃね?俺も見ていい?」

( ^ω^)「エロスの中に見え隠れする人の醜さ、美しさが作中の登場人物の立ち回りの印象で
      人によって感じ方が全然違うらしいお。異性と観ると一層面白いお」
  _
( ゚∀゚)「なんかしらんが見ようぜ!」

(* ^ω^)「いいけどしゃべったら殺すお!」

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 16:30:34.46 ID:q6XuIg3o0
――スタッフロール。

  _
(;゚∀゚)「なんかよくわかんなかった……」

( ^ω^)「僕にも理解できなかったお……」

喜々として再生された映像はひたすらヒステリックを起こす若い女性の生活から始まり、
その後は彼女のストーカーである中年男性とのねちっこい濡れ場が三回、それから青年と少女の恋が描かれ、濡れ場。
そこからはごちゃごちゃしたそれまでのフラッシュバックのような映像の使い回しが続けられ、
ラストシーンは冒頭に出てきたかもしれないが本編とは全然関係ないカップルが全裸で車に乗りこみ湖に飛ぶという入水自殺だった。
酷い出来だった。適当に撮った映像を適当な編集屋が適当に処理したのではないかと感じるほど。無論この場合の「適当」は「いい加減」という意味で。

( ^ω^)「あああ。なんかがっかりだお。がっかりついでにジョルジュの話も聞いてやるお」
  _
( ゚∀゚)「おう……昨日廃墟にサバゲーしに行ったんだ。んで俺ちょっと忘れ物して、一人で奥に入ったんだよ。あ、陣地にしてたとこな。
     そしたらそこに銀色の髪した女が立っててさ……こっち振り返りそうで怖くて俺ビビって逃げ出しちゃったわけよ。で、荷物とれなかったから大変なんだ。助けろ」

( ^ω^)「ええ……淡々と話し過ぎだお。それで終わりかお。つーかそれ別に幽霊じゃなくないかお?」
  _
( ゚∀゚)「あれには俺の財布やらが入っててよー、普通に困ってるんだ。でもこえーから行けない」

( ^ω^)「話聞けお。それになんだおその口ぶり。もしかして行ってこいとでも?先に言っとくけど断るお」
  _
( ゚∀゚)「ついてきて欲しい」

( ^ω^)「クソが」

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 17:04:08.96 ID:q6XuIg3o0
雨上がりの夕日はなかなか美しいものだ。廃墟となってしまっているこの地区は学園都市では危険区域とされ、人通りが無い。
高い建造物などもここには立てられることがないため、空を見るだけならば実はこの付近はなかなかいい場所だったりする。
そんなことに感慨を覚えることも無く、区域の内外を隔離するための鉄条網を音を立て乗り越え、ブーンとジョルジュは侵入した。

( ^ω^)「日が完全に落ちたらマジであぶねーお」
  _
( ゚∀゚)「俺は走って逃げるだけだ!余裕!」

( ^ω^)「聞いてねえお」
  _
( ゚∀゚)「まあマジでやばかったらフォローすっからよ、よろしく頼むぜブーン」

(;^ω^)「帰りてえお……」

この場所が危険区域とされる理由は、野良犬、野良猫が多数出没するためである。
この辺の動物たちはブーンたちのような特殊な人間のように、何らかの力を持っているケースが非常に多い。
四十年程前、ここが廃墟になったのはその動物たちが暴れたのが原因だ。
そしてここに動物たちが集まるようになってしまったので、逆にそれを利用し区域一帯を完全に隔離することに決定したのだ。
以来、ここには人が寄らなくなってしまう。たまに来るとすれば、それはジョルジュのようなそこそこの指導を受けた学園生程度である。
なにをしても注意されることはないので、昼間はそのような阿呆のたまり場になってしまっていることが多いのだ。
しかし闇夜で動物に襲われた場合阿呆でも危険な程でシャレにならないため、普通夜にはだれも来ない。ブーンがいやいやな理由がそこにある。
  _
(;゚∀゚)「この辺だ……って何もねえ!ま、まさか幽霊がもってったのか……!」

( ^ω^)「んなわけねーお。大方犬かなんかが持ってったんだお」
  _
( ゚∀゚)「厄介だな。どーしたもんか……」

( ^ω^)「帰るお。実家に助けを求めればいいお。金ならドバドバ出て来るお」

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 17:07:12.55 ID:q6XuIg3o0
( ゚∀゚)「仕方ねえか……あんま気が進まねーが……」

(;^ω^)「……ぬお!」

突然、とん、と二人の目の前に着地した大きめの猫。その口には彼らの見覚えのあるグレー主体のシンプルなデザインがなされたバッグである。
ごろごろ、とその猫が全身に生える茶色の毛を揺らし、ジョルジュを見つめている。
  _
( ゚∀゚)「ブーン」

( ^ω^)「おk」

じりじりとにじり寄る二人。猫の両サイドへゆっくりと移動する。彼らは、自身の手のぎりぎり届かないところまでうまく距離を詰め、猫に隙が生まれるのを待つ。

数秒。猫が顔を洗い始めた。なんと無防備な猫か。これは間違いなく隙。そして――

「「っ!!」」

跳躍。まるで来るのがわかっていたかのように、いや、事実猫は分かっていたのだ。おちょくるような素振りにジョルジュは苛立つ。どう捕まえるべきか。

( ^ω^)「ジョルジュ!」

逃げる猫を追いかけ始めるブーンにジョルジュも続くと、ブーンは素早くジョルジュに通常より一回り小さい癇癪玉を数個渡す。

( ^ω^)「これは壁に強く投げつければ火花が出るお。うまくすればこっち側に誘導できるかも」
  _
( ゚∀゚)「助かるぜ!とりあえず追跡だな!」

逃げる猫からは一瞬も目を離さずにやりとりをするブーン。
彼のそういった冷静さは班内でよく頼りにされることが多い。
これは普段の生活ではあまり見せない部分だ。

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 17:10:21.30 ID:q6XuIg3o0
  _
(#゚∀゚)「うおおお、逃がすかよ!」

猫は逃げに逃げるが、20分ほどの追跡でようやくブーンたちは猫の逃げる先に袋小路を確認。
壁を介して上に逃げる可能性を加味して、癇癪玉を手に構える。

ΛΛ「ぎにゃあ!」

予測通り猫は壁に爪を掛けた。
その瞬間に壁から火花が発生し、驚いた猫は後ろに跳躍、着地点には腕を硬化させたジョルジュが滑り込む。
  _
( ゚∀゚)「っしゃあつかまえたぜ!!って引っ掻くな!よこせこら!」

猫は頭をぶんぶん振り、ジョルジュの腕を引っ掻き回す。
その根性はなかなかのもので、バッグを離そうとしない。
  _
( ;∀;)「うわああ!俺のロンTがボソボソに!」

それでも数分ほどにゃーにゃーにゃーにゃーやっていると、ようやく猫は観念したのかバッグを離し、さっさとこの場を離れていった。
  _
( ゚∀゚)「よーし。ブーン、助かったぜ」

( ^ω^)「ねこかわいいお。ちょっとかわいそうだったお」
  _
( ゚∀゚)「憎たらしいわ」

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 17:13:25.41 ID:q6XuIg3o0
( ^ω^)「お、ジョルジュ!」
  _
( ゚∀゚)「あらまあ」

ブーンらが居た袋小路の出口にいたのは大型犬であった。それにしても頭の数が多い。左から一つ、二つ、三つだ。

( ^ω^)「多分あの猫はこいつの接近を危惧して逃げたんだお。……それにしてもまさかケルベロスがいるなんて」
  _
( ゚∀゚)「ケルベロスなんて品種はいねー、ただの異形犬だ。とりあえず逃げようぜ?俺がひきつけるからパッと離れろよ」

と、話している間にジョルジュが体を硬化させていた。
カンカン、と金属の乾いた音を響かせ、異形の注意を引く。

ΛΛΛΛΛΛ「「「ばうわう!」」」

すると一斉にジョルジュの頭や肩を狙い大型犬が跳びついた。
その重さにたまらず彼は転倒してしまい、乗られ、ひたすら噛みつかれる。
その隙にブーンは彼らの横をすり抜け、
  _
(#゚∀゚)「ええい鬱陶しい!」

確認をしたジョルジュが犬を殴り飛ばし、怯んだ隙に一気にダッシュで逃げ遂せた。
  _
(;゚∀゚)「ああ、ひっでえなこれ」

ジョルジュが腕を持ち上げ、猫や犬に引っ掻かれボロボロになった袖を見る。
肩のほうもだいぶ悲惨な状態なのをブーンは知っているが、わざわざ口には出さない。

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 17:16:35.31 ID:q6XuIg3o0
( ^ω^)「バッグの中身は無事かお?」
  _
( ゚∀゚)「大丈夫だ。いやあホントに助かったぜブーン。幽霊もいなくて安心した」

( ^ω^)「そういえば幽霊見てないお。また行くかお?」

金網を揺らす。と、ブーンは奥に人影を見つけた。

( ^ω^)「ん?」
  _
( ゚∀゚)「いかねーよ。ん?どうしたブーン」

( ^ω^)「……あれは!」
  _
(*゚∀゚)「うおぅ……」

卅 ゚ -゚)

ブーンが指さす先、女性がいる。
ジョルジュは彼女に見覚えがあった。
あの美しい銀の髪。
今回彼女はこちらを見て、小さく笑みをたたえている。
彼女の銀髪は闇夜でも目立つ程の煌びやかさだ。
美しい、とジョルジュは思う最中、どこか見覚えのあるものだとも感じた。

( ^ω^)「んー……帰るお」
  _
(*゚∀゚)「ああ……」

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 17:19:46.18 ID:q6XuIg3o0
帰路では特に言葉を交わさなかった。
ブーンは何か考えた様子で、ジョルジュはいまだ先ほどの女性の顔を思い出しての間抜けな顔で。
  _
(*゚∀゚)「はぁ……美人だったなあ……」

( ^ω^)「だお。つーかジョルジュなんだお。一目ぼれでもしたのかお?」
  _
(*゚∀゚)「たぶん近い感情だな。もう一度会いたいくらいだぜ」

( ^ω^)「ふーん……そうかお」

やがて二人は寮に到着した。

( ・∀・)「おう、ブーンにジョルジュ。どこ行ってたんだ?追い剥ぎにでも遭ったのか?」

ロビーではモララーがギコ班の二人と話していたようだ。
驚いた顔でブーンたちに駆けよってきたモララーは、もうそれなりにブーンらの友人たちとも仲良くなっている。
面子を見るにギコがサバゲーにでも誘っていたところだろう。

( ^ω^)「ちょっとジョルジュの付き合いでこいつの忘れ物を取りに行ってたんだお」

(,,゚Д゚) 「おいおいジョルジュ、昨日取りに行ったんじゃないのかよ?」

と割り込むのはギコだ。彼は相変わらず腰にいろんな装飾品をジャラジャラつけていて、動くたびに何やら音がする。
寮でくらいはずせばいいのだが、基本的に彼ははずす習慣がない。
  _
(*゚∀゚)「昨日は幽霊にビビっちまってな……美しい幽霊に……」

(,,゚Д゚) 「幽霊?危険区域で見たのか?どんなのだ?」

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 17:22:48.59 ID:q6XuIg3o0
  _
(*゚∀゚)「キレーな銀髪でさあ。あ、おっぱいでかかったかも……で、すげー美人なんだ……」

呆けた返答をするジョルジュに、モララーはハッとした顔をする。

( ・∀・)「それって多分――」

(;^ω^)「!……ジョルジュがアホになってるから部屋に送るお!そのあとモララー、僕の部屋に来てほしいお!」

( ・∀・)「え?まあいいけど」

(;^ω^)「それじゃあとで!ほら行くお!」

と捲し立てるようにブーンは言うとジョルジュを連れてった。
  _
(*゚∀゚)「可愛かったなあ……きれいだったなあ……」

( ^ω^)「たしかにそうだったお。またあえるといいお」
  _
(*゚∀゚)「だよなあ……」

( ^ω^)「さあ、部屋着いたお。あの人の姿を覚えてるうちにパッと寝て夢にでも見ればいいお!それじゃ!」

ブーンはなにやらニヤニヤしたままジョルジュを部屋に放りこみ、ロビーにモララーを迎えに行ったようだ。
  _
(*゚∀゚)「……寝るか」

ジョルジュは日課のオナニーもせずにベットに潜り込み、そのまま夢の中へと旅立っていく。

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 17:25:50.38 ID:q6XuIg3o0
「ジョルジュ……」

誰かが彼を呼んでいる。柔らかな発声で、安らぎを与えてくれるような女性の声だ。

「おきて……ジョルジュ……」

誰なのだろう。夢見心地、というか夢であろう。
しかしながら聞き覚えのある声にジョルジュはなかなか相手を特定できないでいる。
それがもどかしく、彼の興味を引いた。

「ジョルジュ……」

彼女が近付いてきた気配がする。ジョルジュは目をゆっくり半分ほど開けると、その先に彼女の豊満な胸があることを確認した。
手を伸ばせば触れる。
どうせ夢なのだ。触ってしまえ、おっぱい。
そして彼はそのロマンにあふれたマシュマロを、掴む。

卅#゚ -゚) 「っ貴様……!寝起きですら!」

怒りの籠ったような声と同時、脳天にチョップを喰らった。
あまり痛くはないが、夢にチョップを喰らったことはジョルジュの意識を一気に覚醒させる要因となった。
彼の目の前に立っていたのはなんと、昨日何度もその愚かな頭の中に想い続けた彼女。
  _
(*゚∀゚)「ぉぉう!あなたは!ここであったが百年目!結婚してください!一目ぼれしました!一目見てあなたを好きになってしまいました!」

口を開くや否や、今にも押し倒しそうな勢いでジョルジュが告白し出す。彼女は困り顔を見せた。

卅;゚ -゚) 「うお!なんだ落ち着けジョルジュ!これは私の能力なんだ!」

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 17:28:52.77 ID:q6XuIg3o0
  _
(*゚∀゚)「あなたを好きになってしまうことが?
     いいえちがいます!僕は僕の意志であなたを見ているんです!
     いや、これからもずっと見ていたい! あなたの側であなたのあの笑みを!
     今の僕では駄目だと言うなら自分を磨きます!人生を賭けてでも!それほどにあなたが好きだ!好きなんだ!」

卅 ゚ -゚) 「……違う。こういうことだ」

彼女はドアを指す。と、そこにはクーが居た。
その後ろの廊下にブーンたちも居り、彼らは笑いを堪えつつ俯いている。
  _
(;゚∀゚)「なん……だと……?いや、え?どういうこと?」

未だに理解が及ばないジョルジュの前にクーと銀髪が並び立つと、
  _
(;゚∀゚)「同じ顔……?まさか……!」

ジョルジュはようやく理解したようで、銀髪はクーと手を繋ぐと彼女の体にするりとめり込んでゆく。
次の瞬間には銀髪はそこにはおらず、申し訳なさそうにジョルジュを見るクーの姿がある。
  _
(;゚∀゚)「うわぁ……ぉぉぉぉぉ……」

川 ゚ -゚) 「ジョルジュ、すまない」
  _
(;゚∀゚)「いや、いいんだ。あれか、要するに俺は銀髪萌えだったのか……うわあ……」

妙なところで落ち込むジョルジュ。それに対しクーは、

川 ゚ -゚) 「……うむ。なら染めようか?銀に」

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 17:32:17.02 ID:q6XuIg3o0
  _
( ゚∀゚)「へ?」

川 ゚ ー゚) 「さっきのお前の言葉に私は少しばかり揺れてしまったようだ。
  どうしてもと言うなら、やらないこともないぞ。それにわたしのデコイと見分けがつかなくなれば戦略的にも使えるだろうしな」

その瞬間後ろの腐れギャラリー共が部屋に入ってきた。女性陣は焦燥した顔で、男性陣は思い思いの顔で。

ミセ;゚ー゚)リ「待ってクー、落ち着いて!あなた告白されるの初めてじゃないでしょ!なに心揺れちゃってんの!」

ξ;゚听)ξ「そうよクー、それにあなたあれよ、胸触られたのよ!」

( ・∀・)「まあ俺は止めないけど、黒髪が減るのは寂しいな」

(* ^ω^)「ジョルジュ、お前の一世一代の告白ムービー撮ったおwwwフヒヒwwwwwwwwww熱くてきもいおwwwこれ結婚式に流すおwwwwwwwwwwww」

川 ゚ -゚) 「……もう、ちょっとみんな静かにしてくれ。私はジョルジュに聞いている。ジョルジュ、どうして欲しい?私に、どうあって欲しい?」

先程から異様に大胆な発言を繰り返すクーに、
ブーンはさらにニヤニヤしカメラを構え、
モララーはクーを見るや驚き、
ミセリはなんだかよくわからないポーズ、
ツンは真っ赤になっている。
  _
( ゚∀゚)「いや、いまのままでいーよ」

と、冷静な言葉をジョルジュは吐きだした。内心大変なことになっている裏返しである。

川 ゚ -゚) 「いいのか……そうか、わかったよ。……そうだな、ならついでだ、今日のお前の言葉も忘れよう」

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 18:00:11.86 ID:q6XuIg3o0
( ゚∀゚)「んー。それがいいな。そうしてくれ。でもあの言葉はさ、嘘じゃないぜ?」

川 ゚ -゚) 「ああ、わかってるさ……」

そのままクーはそそくさとジョルジュの部屋を出た。ミセリとツンも彼女の様子に唖然としながら続いていく。

(* ^ω^)「いいもん見れたお!」

ブーンはいまだに笑っていた。それがどういった種類の笑いなのかいまいち判断のつかない顔で。
  _
( ゚∀゚)「告白なんて人生で初めてだっつーの。くそ。けっこう恥ずかしいなこれ。お前ら今日が俺の命日でも納得してくれ」

(* ・∀・)「いや、お前は長生きしないとな。ぶっ!」

モララーは徐々に声が上ずっていき、ついに噴き出した。

(* ^ω^)「単なるドッキリのつもりだったけど結果オーライだおwwwwwwwwwwいろんな意味でwwwwwwwwwww」
  _
( ゚∀゚)「つかブーン、いつのまにあれがクーだって気付いてやがったんだ?」

( ^ω^)「普通に幽霊の顔見た時クーかと思ったんだお。そのあと昨日のロビーのモララーで確信したお」
  _
( ゚∀゚)「鋭いな。ぶっちゃけるが俺はクーの顔しっかり見たことなかったからなー、美人だからビビっててさ」

(* ・∀・)「これからはお前が一番しっかり見るんじゃないの?まるまる二年の付き合いだがクーのあんな顔初めて見たぜ。あの鉄仮面がな、くくく」

クーの表情にあまり変化は見られなかったブーンとジョルジュは首を傾げる。
二人は『鉄仮面』という単語についても疑問符が生まれた。そこでモララーは楽しそうに続ける。

(* ・∀・)「ラウンジは激しい奴が多いんだな、きっと。中等部二年目の頭くらいからクーはアホみたいに告白されてたぞ?全員玉砕したらしいけどな、無表情で」

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 18:03:30.89 ID:q6XuIg3o0
(* ^ω^)「パねえwwwwwwwww」
  _
( ゚∀゚)「へー。ってかおまえら帰れよ。いつまで居んの?」

(* ・∀・)「くくく、もう少し笑ってからだな」

( ^ω^)「だおだおwwwwwwwwwwwwwwww」

で、それからひとしきり笑った彼ら。

( ・∀・)「んじゃまージョルジュ。着替えたら俺の部屋な。ヤケ酒しようぜー」
  _
( ゚∀゚)「朝からかよ。つーかお前は自棄になってねーだろ。まあいくけどな」

( ^ω^)「ムービーはしっかり焼いておくお!安心するおwwwwwwwwwwwwwwドゥフwwwwww」

そして部屋に一人、ジョルジュが残った。ため息を何度もついて、ベッドに力なく倒れ込む。
  _
(;゚∀゚)「はあぁ……」

―――なんというか、あの感覚が恋というものなのだろうか、自分がここまで自制できなくなってしまうとは。恋は盲目。本当によく言ったものだ。
しかし自分はあの笑顔に惚れてしまったのか。だとしたら、これから彼女と顔を合わせるのが妙に気恥ずかしく感じてしまうだろう。

ボーっとしながら考えこむジョルジュはふと、去り際のブーンの一言を思い出しテキパキと動き出した。

ジョルジュの後にモララーの部屋にやってきた来たブーンは何があったのか涙目で、誰かに固い物で殴られたのか左頬が少し青くなっていた。
そんな彼の異常について質問する者は、誰もいなかった。

第三話「鉄と幽霊」・おわり


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