- 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 16:35:05.23 ID:y3LYUWpu0
- 第六話「土下座と触手」
ブーンにとって長くも短くもあった春休みは、結果的にはとても有意義で、これから始まる新学期への期待感は増す一方である。
その新学期の足掛かりとなる始業式もついに翌日と迫り、実家に帰省していた寮生たちも続々と帰ってきていた。
( ^ω^)「今日は朝から騒がしかったお」
( ・∀・)「全くだな。俺は知らない奴らばかりで肩身が狭くて狭くて」
( ^ω^)「はしゃぎまわってた癖に何を言ってるお。正直邪魔だったお」
モララーは初対面となるメンツに片っ端から話しかけ、事あるごとにブーンに報告をしに来た。
ブーンはといえば、帰ってきた寮生の荷物やお土産を漁り、物乞いのようにそれらをせびっていた。
彼はモララーが報告に来るたび、その時せびっている相手に彼を紹介しなければならず、本来の目的から話がよく逸れてしまっていたのだ。
( ・∀・)「いやあ楽しそうな奴多いなー。ドクオとか面白かったぜー」
( ^ω^)「あいつにはあんまり絡まないほうが良いお。河童だし」
( ・∀・)「カッパて」
( ^ω^)「つーか早くジョルジュ帰って来いお。なにやってんだお」
( ・∀・)「奴は今ハーレムだぜ。ミセリ達に友達を紹介に行ってるんだと」
( ^ω^)「チッ、じゃあギコとシャキンでも呼んでなんかするお」
( ・∀・)「おいおい、一人くらい新しい人呼ぼうぜ」
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 16:40:59.64 ID:y3LYUWpu0
- ( ^ω^)「じゃあ河童でいいお」
( ・∀・)「お、俺の期待の星じゃねえか」
( ^ω^)「その星はすぐに砕け散るお」
ブーンは携帯端末からメッセージを送り、その間モララーと対戦型シューティングゲームで茶を濁した。
いつも最終的には互いに弾幕を何十にも張り、きわどい判定との戦いが続いてしまいなかなか決着がつかないのだが。
(#'A`)「オラァブーン!俺に何の用だ!」
( ^ω^)「うっせーお河童、ドア壊れたら弁償だお」
前髪が鼻までかかるほど髪の長い男が勢いよく部屋に乱入してきた。
モララーは目を見開くとコントローラを取り落とし、彼の自機が爆散した。
彼は一体何に激怒しているのか、ブーンに敵意をむき出しにする。
(#'A`)「てめえ春休みでツンちゃんに手ぇ出してねえだろうな!」
( ^ω^)「出してねーお。ツンは相変わらずだお」
(*'A`)「相変わらず可愛いだと?当たり前だ!今日はちょこっと女子寮行って見て来たぜぇ……
ああ……ちっちゃくて華奢でふわふわの髪、ぬふふ。あ、でも知らない娘たちといたな、まあ一番ツンちゃんが可愛かったけど」
ニヤニヤしながら呟き、顔を真っ赤にする。
モララーは先程からぴたりと固まったままだ。
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 16:46:04.67 ID:y3LYUWpu0
- ( ^ω^)「あーツンとのボウリングは楽しかったおー」
(#'A`)「貴様ァ!なぜ俺を呼ばないッ!なぜ俺を呼んで途中で気を遣って帰らないッ!」
( ^ω^)「お前を呼ぶ義理は無いお。それにツンはお前のこと嫌いだお」
(*'A`)「嫌いじゃねえ!苦手って言ってたんだよ!可愛いなあ!」
( ^ω^)「まあどうでもいいお。ドクオもなんかやるかお?」
('A`)「ああ。バーチャル世界でバラバラにしてやるよ。お、モララーじゃないか」
一段落ついたようでようやくモララーに気づいたドクオ。
先程とは打って変わって紳士的な声を出すのだが、顔と一致せず気持ちの悪い違和感を感じさせた。
( ・∀・)「おうドクオ!ツンちゃんのこと好きなんだな!気持ちはわかるぞ!」
('A`)「なんだ?モララーも知っているのか?あの可憐な花を」
( ・∀・)「ツンちゃんはブーンの班だろ?だから何度か一緒に遊んd――」
モララーの声は文字にするならばバシュ、というような妙な音に遮られる。
ドクオはモララーを瞬時に押し倒し、彼の耳のあたりに爪を突きつけていた。
突然のことから我に返ったモララーは、自分の耳にかかっていた髪が宙に散っていることに気付いた。
(; ・∀・)「は……?な……?」
( ^ω^)待てお河童。モララーは僕やみんなと一緒に遊んだだけだお。こいつはアホなイケメンだけど悪い奴じゃないお」
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 16:51:40.39 ID:y3LYUWpu0
- ('A`)「そうか?」
( ^ω^)「だからそれやめるお。モララーも驚いてるお」
ドクオは落ち着いたブーンの声に冷静になったのかすぐにモララーから離れ、適当な場所に腰を下ろした。
('A`)「悪い。取り乱した。てっきりツンちゃんが春休みの開放感からイケメンの毒牙にかかったのかと思ったぜぇ……」
(;・∀・)「いや……滅茶苦茶驚いたが別にいいよ」
( ^ω^)「全く危ない奴だお。このハゲ」
('A`)「うるせえ。悪かったよ」
それからブーンがなんとなく若禿げ予備軍を蹴ろうとした時、呼んでいた二人がやってきた。
きりっとした眉毛の男は黒いDVDのケースを持っている。
(`・ω・´) 「ブーン来たぞ。ってドクオじゃないか」
(,,゚Д゚) 「久しぶりだな、河童」
('A`)「おうシャキンにギコか。シャキン、彼女できたか?」
(`・ω・´) 「出来てない。どうせドクオも変わらないだろう」
('A`)「俺はツンちゃん一筋」
(`・ω・´) 「わかるかドクオ。おまえはな、ロリコンだ」
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 16:56:14.04 ID:y3LYUWpu0
- (;'A`)「グッ!!違うッ!!」
前のめりになって倒れ込むドクオ。そんな彼を二人は無視。
(`・ω・´) 「ブーン。ショボンからDVD渡しておけと」
( ^ω^)「あ、前貸したやつかお。直接渡しに来ればいいのに」
(`・ω・´) 「学園に呼び出されたようだ」
( ^ω^)「なんでだお?」
(`・ω・´)「中等部一年のオリエンテーションに出るらしい。あいつは確かにパフォーマンスには向いているな」
今年は中等部に上がる際の始業式の直後に、本格的な能力使用の解禁のためのオリエンテーションが行われるという。
ブーンたちの代やその一つ下の代にも行われなかったそれは、今年度からは催されることになったらしい。
ミセリの事件があったのをニュー速側が知っていたら開くとは思えないので、
他の学園とまっとうな連絡や情報交換をしていないことが浮き彫りにされたような感がある。
(,,゚Д゚) 「意外だな。ショボンはそういうのやらないタイプだと思ってたが」
( ^ω^)「僕の方が向いてるお」
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 17:01:31.18 ID:y3LYUWpu0
- ( ・∀・)「ブーンは死人が出るだろ?やめとけ」
(`・ω・´) 「モララーは『歌がすごくうまい人』だな。モテるぞ?」
(,,゚Д゚) 「ならシャキンは『何の役にも立たないちょっと人に敏感な眉毛』だな。モテるぞ?」
ギコが放った言葉によってドクオのように崩れ落ちた眉毛。
彼の能力は役に立たないわけではない。あまり使えないだけなのだ。
(;`・ω・´) 「言うじゃないかギコ……お前は『バカップルの片割れ』だろう」
(,,゚Д゚) 「なんの関係も無い悪口じゃねえか……」
ブーンはなんかめんどくさくなってきたので話題を変えることにする。
明日の始業式について。正確には始業式が終わった後。そう、オリエンテーションについてだ。
彼らはショボンのようなオファーはもちろん受けていないが、こんな催しがある以上、乱入しないわけにはいかないのだ。
ブーン達は一年生を楽しませるつもりは毛頭ない。自分達が楽しむために乱入を企てる。彼ら流のサプライズである。
( ・∀・)「マジでやんのかよ。俺は賛成できねえぞ」
( ^ω^)「だいじょぶだお。能力を駆使してドクオをみんなでフルボッコにするだけだお。いいパフォーマンスになるお」
( ・∀・)「じゃあ大丈夫か。ドクオは強いからな」
先の行動を思い出し、モララーは皮肉をこめてドクオに言う。しかしドクオは意に介さず。
('A`)「別にかまわねえけど、オリエンテーションを指導する先公はどうする?変な奴が担当だったら潰されるぞ」
( ^ω^)「そのときはその先生とやりあえばいいお」
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 17:06:57.72 ID:y3LYUWpu0
- (,,゚Д゚) 「いや普通に停学だろ……なんで教師に喧嘩売らなきゃならねえんだ……」
(`・ω・´) 「提案すればいいんじゃないか?せっかくだし戦いましょう、とか」
( ・∀・)「まともな教師ならスルーだと思うぞ。こっちがどんな校風かしらないけど」
( ^ω^)「こっちは直接申し込みを受けた組み手は原則断らない方向だお。あら、これいけるかも」
(,,゚Д゚) 「相手によっちゃ地獄だぜ?」
ブーン達が束になってかかったとしても勝てると確信できる相手はほとんどいないのだが、その中でも絶対に勝てないであろう教師が数人いるのだ。
彼らはブーンやジョルジュのような一般的な能力者と少し事情が違い、次元が違うとも言っていい。さらに能力のみならず経験が違う。
そういった教師は、生徒たちがやがて関わることになる現場で圧倒的な活躍をしている。
(`・ω・´) 「少なくとも渡辺教頭、クックル教官、生活指導のロマネスクは勝ち目がない」
(;゚Д゚) 「その名前だけ聞くとなんだか嫌になって来るな」
( ^ω^)「まあ楽しければいいお。それでいいかお?」
( ・∀・)「じゃー俺は混乱する一年の沈静化役で」
(`・ω・´) 「僕もそうしよう」
(,,゚Д゚) 「戦わないとモテないぞ?」
(`・ω・´) 「落ち着いた上級生ってかっこいいだろ」
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 17:12:11.88 ID:y3LYUWpu0
- ( ^ω^)「まあ沈静化は任せるお。もてたいなら眉毛は全部剃っておけばいいお」
(`・ω・´) 「酷いな」
('A`)「話は済んだか?ツンちゃんの写真で抜きたくなってきたんだが」
( ^ω^)「……」
( ・∀・)「……俺はもう少しドクオに好意的な印象を持っていたが、本当に間違いだったみたいだな」
気持ちの悪い空気に変わりきるが、それを全く気にしない様子でドクオは部屋から出て行った。
残されたブーン達は明日の段取りを適当に決め、そのまま端末の通信麻雀で適当に時間を潰した。
( ゚∀゚)「おかえり俺ー」
( ^ω^)「遅いお。もう大体段取り決まったお」
( ゚∀゚)「いやな、ヒートとシューをクー達に紹介してたんだが、疲れるわほんと」
(`・ω・´) 「ジョルジュはなんでモテるんだ。特別顔もよくないだろ」
( ・∀・)「なにげに多趣味だからかなー」
( ゚∀゚)「眉毛全部剃れ。別にもててねーよ」
(`・ω・´) 「お前に言われ……なっ、眉毛が一切無い……。くっ、余裕なやつめ」
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 17:17:20.68 ID:y3LYUWpu0
- (,,゚Д゚) 「ジョルジュはクーちゃんに懐かれてんだろ?しぃから聞いたぞ」
_
( ゚∀゚)「いや、よくわかんねー。そうだ、明日のオリエンテーションにヒートも出るんだってよ。ちょっとは役に立つかも」
(`・ω・´) 「ショボンも出るが、多分協力は仰がない」
_
( ゚∀゚)「あれ?おまえらドクオをフルボッコにするんじゃねーの?適当にヒートとかが紹介する感じで、って考えてたぜ」
( ^ω^)「明日は先生と戦うお。この学園のルールを印象づける意味も持たせられるから言い訳ができるお」
_
( ゚∀゚)「あ、なるほど。でも教師が相手になんのか……へらへらしてらんねーな」
(,,゚Д゚) 「そこまで気負うもんでもないだろ?遊びだ遊び。うん、そうだといい」
(`・ω・´) 「活躍したらモテるだろ」
(,,゚Д゚) 「お前さっきからそればっかりだな。お前に活躍の場は無い」
( ^ω^)「まーそろそろいい時間だし今日は解散するお。明日は楽しむお」
( ・∀・)「くくく、みんなどうなるか期待してるよ」
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 17:22:33.96 ID:y3LYUWpu0
- 翌日ブーン達が集まったのは、以前ブーンとギコ達が組み合わせた学園第二運動場。
先日の戦いの名残は一切なくなっている。
ちなみにここの広場は抉れていようが焦げていようがいつも一日経てば舗装が終わっているのだ。
これはシャキン曰く学園の七不思議のひとつに数えられるという。
今は早い時間で、今日は始業式。
本当ならここに来る人間は誰もいない。
彼らは隣の屋内競技場で行われる式をサボり、寮から直接ここに来たのである。
これから打ち合わせと準備があるのだ。
そこで、昨日のメンバーには居なかった少女が長い刀と赤い髪を振り乱しながら吠えていた。
ノパ听)「みんな本気でやる気なのか!馬鹿だな!ちなみに今日一年を連れてくるのは新任の先生だぞ!ペ二サスって人だ!」
全く知らない相手が来るとは予想外だった。
しかもそれではこの学園のルールを盾に教師を襲うことができないのではないか、そう感じる者が大半であった。
ノパ听)「先生は真面目な人だったから、たぶんここのルールも理解してるはずだ!きっと大丈夫だぞ!」
皆、たぶんとかきっとを一言の中にまとめて使ってしまうくらいの信頼性であることはよく理解できた。
運が悪ければ黙殺される。
相手がどんなタイプかはっきりしないため、どう動くべきか見当がつかない。
そうならばやはり、ドクオをぼこぼこにする案が出てしまうのだが。
- 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 17:27:40.53 ID:y3LYUWpu0
- ノパ听)’「なに、ドクオをぼこぼこにする!?それはドクオの親友として聞き捨てならないぞ!」
ヒートは自分の仕事であるオリエンテーションの準備をしながら、相談する野郎共に叫ぶ。
なにやら大きな木をひきずってまとめている。一体何をするのだろうか。
そういえばショボンはどこなのだろう。ヒートと一緒に居るべきではないのか。
ノパ听)「ショボンはペ二サス先生と一緒に一年生を連れて来るんだ!私は年下が苦手だから助かるぞ!」
そこでふと気付いた者がいた。ヒートとショボンはドクオ班のメンバーである。
なぜリーダーのドクオを差し置いて彼らが代表なのだろうか。
二人はブーン達の学年でトップクラスの実力を持つのだが、ドクオもそれに後れを取っているわけではないのだ。
ノパ听)「ドクオには華がないからダメだそうだ!だからショボンも仕方なく引き受けたんだ!」
そのまま少女ははっとした顔を見せ、すぐさまなにも聞きたくないかのように首に掛けていたシルバーのヘッドホンをつけた。
重い現実がドクオにのしかかる。彼はこの瞬間、学園から容姿を否定されたのだ。
低い声で唸るドクオ。何ということだろう。ここは仮にも教育機関ではなかったのか。嘆かわしい。
現実に打ちのめされた彼は悲しい目をしていた。その場にいた全員は彼への同情を禁じ得ない。
涙目の彼に対し、全員で肩を組んで慰め合った。モララーとギコは蹴られた。
そして彼は言う、
(#;A;)「俺は学園に喧嘩を売る。手始めにペ二サスを討つ!」
ペ二サス先生にとってはあまりに迷惑極まりない発言である。
しかし、しょうがないのだ。先生には運がなかったとしよう。
- 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 17:33:20.26 ID:y3LYUWpu0
- ( ^ω^)「じゃあ決定だお。段取りは昨日の通り」
(`・ω・´) 「よし、僕はトラップの準備だな。殺傷性のないやつ。すごく痛いけど。お前らは巻き込まれるなよ」
_
( ゚∀゚)「ギコとブーンと俺で適当に組み合わせて先生達を偶然発見か。よし、棒読みで絡もう!」
( ・∀・)「俺が実況か!マイクと運べるスピーカーは用意済みだぜ!でも実況ってなんだ?」
(,,゚Д゚) 「一年がパニックになるようならモララーが歌で沈静化……できるのか?」
('A`)「行き当たりばったりになりそうだが、それもいい。これは戦争だ」
( ^ω^)「違うおハゲ。つーかドクオの入るとこ忘れてたお。適当なタイミングで乱入するお」
('A`)「任せろ。ピンチにズバッとくるぜ。漫画みたいに」
(,,゚Д゚) 「ピンチになるかはそのペ二サス次第だな。どんなもんか」
( ^ω^)「楽しみだお。でも勝てそうでもみんなやり過ぎは駄目だお」
_
( ゚∀゚)「ああ、そりゃそうだ。相手もさすがに本気では来ねーだろうし」
('A`)「俺は本気を引き出して叩き潰すつもりだ」
それぞれ準備を始める。実際に戦う者は固まって、ストレッチや体を温めるため軽い打ち合いをした。
シャキンはいろいろ歩きまわりトラップを設置する。場所の目印はつぶれた空き缶だ。
イケメンなモララーはヒートと談笑中である。滅しろ。
- 53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 17:38:43.67 ID:y3LYUWpu0
- そして、
ノパ听)「そろそろこっちに来るな、人がいっぱい来た!」
( ・∀・)「俺は少し離れていよう」
( ^ω^)「僕らは適当に始めるかお」
_
( ゚∀゚)「だな」
やってくる一年生の集団。皆きょろきょろとして落ちつきがない。これから自分達の力を行使するのを楽しみにしているようだ。
そんな中先頭に立っていた若い女性が大声で生徒たちに語りかけていた。私服だがあれが新任教師であろう。
('、`*川「これからあなた達は自分達の能力を使って自己紹介をしますよー!
でもその前に、皆さんの先輩方があなた達のような能力を使って、お手本を見せます!ショボンくんとヒートさん、お願いします!拍手!」
彼女と拍手に促され、ショボンとヒートが前に出る。
(´・ω・`)「どうも、三年の眉毛我ショボンです。
これから僕たちが自己紹介も兼ねたパフォーマンスをします。ちなみにどんな知識を持っているかは秘密です」
ノハ*゚听)「私は三年の素直ヒート!ショボンとは同じ班です!私は抑制の知識を持っています!このショボンみたいに秘密にはしません!」
ちらちらと笑い声がした。
(´・ω・`)「それではさっそく始めます。あそこに積まれた木々をご覧ください」
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[出来る限りやります] 投稿日:2009/10/04(日) 17:44:13.49 ID:y3LYUWpu0
- ショボンが指をさすと、一年生たちはそれにならう。そこには先程ヒートが引き摺っていた太い木の山がある。
そして、それは宙に浮きだした。おお、と集団から声が挙がる。
大木の山が突然宙に浮くなど、トリックでもあまり見られない光景だろう。
そこに向かってヒートは歩き出した。
(´・ω・`)「これから彼女にあの全ての木々が襲いかかります。みなさんは安心して見ていてください」
ショボンは当たり前のように言うが、なかなか無茶なことを言う。自由落下させるだけでも、木々はかなり危険な位置に来ていたのだ。
そして、それらはショボンの言った通りに動き出す。
悲鳴が上がった。当然だろう。一人の少女に向かって巨大な質量をもって飛びかかるものを眺めているのだ。本来ならただでは済まない。
ノハ#゚听)「ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……!!」
大木の落下点に佇む少女は自分を鼓舞するように声を吐き出し、腰にかかる刀を素早く抜刀した。
彼女は自身の上空全てを支配する木々と対峙し、人間の速度の限界を優に超えた動きを見せる。
(´・ω・`)「快調みたいだね」
回転するように手に持つ長刀を振り回し、さながらミキサーを彷彿させる速度で刀と踊るヒート。
それを見た観衆は、先程の悲鳴とは打って変わった歓声を上げる。きゃあきゃあ言っているその声色は黄色いものだ。
ノパ听)「ふあっ!!」
ぴたり。
全てを切り崩した彼女はその速度を急停止させた。そしてその勢いで起こった風は、降りかかる木くずを吹き飛ばす。
その中から姿を見せた少女は低い姿勢で刀を構え、小さく笑っている。
そして沸き起こる歓声。何事も無く終了し、ショボンもうっすらにこりと笑う。
- 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 17:49:11.06 ID:y3LYUWpu0
- (´・ω・`)「僕たちのパフォーマンスはこれで終わりだよ。それじゃ、ペ二サス先生の指示に従って続きを始めてください」
さらに増える歓声と拍手を浴びせられ、照れくさそうににこにこするヒート。対照的に、目をつぶり頭をふらふらさせるショボン。
二人は役目を果たし、運動場の隅へと下がっていった。
('、`*川「ありがとう二人とも。素晴らしいです。それでは――」
_
( ゚∀゚)「あれー?こんなところでいったいなにしてるんですかー?」
ペ二サスが仕切りを再開したのだが、妙な声が紛れ込んだ。
実はペ二サスは先程ちらりと確認したのだがスルーした少年たちである。
('、`*川「一年生のオリエンテーションですが。何の用です?」
( ゜ω゜)「なんとびっくり、そんなことやってるんですかあ!」
('、`*川「なんですか、白々しい」
イライラした様子を見せる彼女。まばたきが妙に増えている。
_
( ゚∀゚)「じゃあ僕たちと戦いましょうよ。こちらもパフォーマンスということで」
('、`*川「ダメです。いまはそういう時ではありません。今度にしてください」
ここまでの流れは当然だ。ここらで彼らはギャラリーを味方につけなければならない。
- 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 18:00:11.80 ID:y3LYUWpu0
- (,,゚Д゚) 「ニュー速のルールは知っているでしょう?ならば教師として受けるべきではないですか?」
('、`*川「知っています。ですが今はそんな場合ではないのです」
_
( ゚∀゚)「理由が抽象的ですね。一年生もそういうの見たくない?」
笑いながらジョルジュが投げかけると、
見たい、先生の実力はー、などとおおむね好意的だ。ヒートのあれが効いている。あとひと押しだろうか。
(,,゚Д゚) 「だそうですよ、先生。受けますか?受けませんか?」
挑発的にギコは言った。一年生はアホな顔でペ二サスコールとかやり始める始末だ。
ペ二サスは無言で周囲を見渡し、
('、`*川「――わかりました」
きゃー、とか、がんばってー、とか言っている一年生。呑気なものである。
_
( ゚∀゚)「こちらは四人です。一人は戦闘要員ではありませんが」
('、`*川「いいでしょう、かかってきなさい。わたしの新任一日目の仕事を失敗させるわけにはいかないので」
左手を伸ばし指をさすペ二サス。あからさまなほどに目の色が変わった。この目を戦闘を受け入れた合図と受け取る。
そこで一年生たちのもとへモララーが駆けてくる。
( ・∀・)「さあさあ一年生。俺らはこれから先生と戦うわけだ。危険だからあんまり近付くなよ?そのかわり実況はまかせろ!俺の美声で戦いの渦を演出するぜ!」
わあ、と黄色い声。そんな妙な盛り上がりを尻目に、まず出て来たギコとジョルジュがペ二サスを睨みつける。
- 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 18:05:23.63 ID:y3LYUWpu0
- (,,゚Д゚) 「じゃあギコ、いくぞ!」
_
( ゚∀゚)「ああ!」
前に出た。ギコは二本の槍を出す。彼はとりあえずそこそこ得意な武器を使って様子見をすることにした。
アホのジョルジュは突っ込んでいた。
_
(#゚∀゚)「うおおお!」
('、`*川「なんですかそれは……」
彼女は左の掌でジョルジュの拳を止めると、呆れたような声を出した。
大振りで要領を得ないとはいえ、ジョルジュの拳はそれほど簡単に止まるものではないのだが。
_
(;゚∀゚)「うお!なんだこりゃ!」
ジョルジュの拳の先端にはなにやら白いうねうねしたものが纏わりつく。
うねうねはジョルジュの拳を包むように動き、そのまま腕を絡め取るように這い回った。
('、`*川「ダメですね。特別に落第点をあげたいくらいです」
彼女はジョルジュを絡め取ったうねうねを、それが生えた左手ごと大きく上に振る。それについていくうねうねとともに、ジョルジュも軽々と投げ出された。
_
(;゚∀゚)「高い!!怖い!!」
(,,゚Д゚) 「ありゃ触手か!?ジョルジュ!!」
- 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 18:11:15.27 ID:y3LYUWpu0
- ギコが駆け出し、ペ二サスから生えたうねうねを切断すべく槍を振る。
うねうねは簡単に切れ、接近したギコはそのままペ二サスの肩ほどに槍で殴りかかるのだが、
('、`*川「あなた、女性だからと気を使わなくていいのですよ」
(,,゚Д゚) 「あ?」
ギコの行動の意図は当然理解されていた。
ギコは彼女に気を使い、頭を狙わず、刃も使わない、槍であることを生かさない形振りであった。
単なる組み手や、状況によってはそういう行動もとらないことはない。しかし彼女はギコの槍に迷いがあることを見抜いていた。
ならば手加減はしない、ギコは内心呟く。
('、`*川「それではわたしに勝てません」
彼女は右手の甲で槍を止め、そこから生じた触手のようなもので槍を絡め取る。
ギコは左の槍を捨てることを選び、右の槍で彼女を突きながら、左手は腰に持っていった。
_
( ゚∀゚)「あぶねえ……」
ジョルジュは高所から着地する。とりあえずうねうねは彼女の皮膚から出現するものだと見切りをつけた。
そして彼の前方では金属音。
彼女の右手に奪われた槍は、ギコが突き出した槍を薙ぎ払うべく、その手の甲の上で回転した。
槍は両方とも弾かれるが、次には左手の大剣がペ二サスの胴体を両断しようと迫っている。
('、`*川「さすがは、といったところですか……!」
- 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 18:16:23.11 ID:y3LYUWpu0
- ペ二サスは垂直に飛び、大剣の面部分を踏み台に後方宙返り。空中で上着を脱ぎ捨てた。中はノースリーブのシャツだ。
ギコは彼女の自由落下に合わせて右手の槍を投げつけ、すかさず大剣を構える。
('、`*川「借ります」
ペ二サスは投げられた槍を掴みとり、着地と同時にギコと競る。
大剣は槍相手だとかなりやり辛い。攻めの一手ならどうということはないが、一度打ち合ってしまった。
(;゚Д゚) 「ちっ、マズイな」
舌打ちをしつつギコはそこから数度、上下に繰り出される突きを防いだ。
しかしこのままでは回転数で劣る大剣では押し切られてしまう。
_
( ゚∀゚)「割り込むぜ!」
後ろからギコの前に飛び出したジョルジュ。
彼は意気込み虚しくすぐさまペ二サスの槍に刺されてしまった。
正確には槍を腹で受け、しっかり掴んでいるのだが。
('、`*川「邪魔ですよ」
掴まれた槍に執着することも無く、ペ二サスは槍に跳び乗り、ジョルジュの顔を踏むように蹴る。
_
( ゚∀゚)「がっ!」
彼女のスタンプに堪えきれずジョルジュは転倒し、そのままペ二サスの足場にされてしまう。
- 61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 18:21:32.90 ID:y3LYUWpu0
- そこで、ギコが棒を持ちながら接近。彼女の足を薙ぐように振った。
(,,゚Д゚) 「らっ!」
_
( ∀ )「ほぶ!」
ペ二サスは小さく跳び、難なく回避。またもジョルジュは踏まれる。
振った棒の遠心力はそのままギコの回転の為のエネルギーに変え、再度振る。これを繰り返した。
('、`*川「……器用ですね。隙が無い」
称賛しつつペ二サスはギコの棒の先端と右爪先に、腕から伸ばした細い触手をさりげなく絡めた。
そしてギコが回転しながら振る棒を、止めることなくつらつらと避けていく。
(;゚Д゚) 「くそ!」
触手は回転するギコに次第に絡まり、回転の速度は落ちてゆく。ギコがそれを止める頃は、すなわち彼が動けなくなった頃だ。
かなりの量の触手が絡まっており、腕一本動かすことができない。ペ二サスはそんなギコを思いきりよく蹴り倒した。
('、`*川「さて、まず一人」
起き上がるジョルジュを見ながらペ二サスは声をあげる。
しかし、幸先よく流れを掴んだ彼女は、それ故に左側面から迫る足に寸前まで気付くことができなかった。
- 62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 18:27:19.06 ID:y3LYUWpu0
- ('、`;川「!!」
左肩に衝撃。直前で気付き触手の盾を作ったが、跳び蹴りの勢いは当然逃がせない。
よろけた彼女の肩が爆発し、肩の触手がはじけ飛んだ。それでも自身の肩が軽い火傷で済んでいると判断する。
幸い、それほど威力のある爆発ではないことがこれではっきりした。触手を増やせば単なる打撃タイプの相手だろう。ペ二サスは乱入者をそう値踏みした。
( ^ω^)「ギコがいると出にくくて困ったお!こっからきっちり参加するお!」
('、`#川「全く面倒な!」
ペ二サスは両手を突き出し、掌からそれぞれ細い触手を何本も束ねた、丸太のような太さのものをブーンに伸ばす。
(;^ω^)「はやっ!」
なすすべなくブーンは上半身を絡め取られる。
しかし焦った顔も一瞬で、その場を両足で跳び、体を右に捩じりながら絡まる触手の伸びた先に足を伸ばした。
それらを巻きつけるように挟みこみ、左踵と右爪先で触手を刺すように蹴る。
( ^ω^)「わっしょい!」
間も無く触手は爆発し飛び散った。巻きついた触手は拘束力を失い、振り払うとブーンは自由になる。
すかさず地を蹴り、小爆発を伴う疾駆をもって先の触手以上の速さで距離を詰めた。
('、`#川「接近戦は不得手ですよ」
ちぎれた太い触手はそのまま、迫るブーンを叩き潰すように腕を振り下ろす。
ブーンはそれが触れる前に懐に潜り込み、ボディーブローを叩きこんだ。
('、`;川「くっ!」
- 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 18:32:45.41 ID:y3LYUWpu0
- 触手が拳、それに伴う爆破を防ぐ。表面の衣服は吹き飛び、若々しくセクシーなへそ周りとうねうねが露わになった。
(* ^ω^)「エロス!」
('、`#川「このっ……!」
小さな怒声に構わずブーンは彼女の肩を掴み、左ひざを腹に入れた。それによって起こる爆風により、彼女が少しだけ地から離れる。
そこで体を小さく曲げ、ばねのように右足を直上に突きあげる。
それに触れた彼女は押し出されるように地から離れていき、発生する爆破の衝撃でなお上へ舞い上がる。
( ^ω^)「うおおっ!」
ブーンは追撃を止めない。
右足を突きあげた勢いで体勢が崩れるのだがそれを左手で支え、曲げた片手で逆立ちのような体勢になると、
腕を伸ばしつつ掌を起爆しその体勢のまま上に跳びあがる。
ペ二サスの腹を左足の底で踏み、爆破。反動でブーンは地面へ、ペ二サスは落下をしなかった。
続けて右手のみで地面にふん張る。先程から連続で片手で体を支えているが、本来この行動はただのアホだ。しかし、こうしなけれな次に繋がらない。
(# ^ω^)「だっ!」
そこで先程のように天地をひっくり返したまま、またも爆破とともに跳びあがり、今度はオーバーヘッドキックの要領で右足の甲を彼女の肩にぶち当てた。
('、`;川「くぁっ!!」
燃えながら凄まじい速度で彼女は地面に激突。勢いが落ち着かないまま転がるその先にはジョルジュがいる。
彼はサッカーのフリーキックのような体勢だ。左膝に両手を乗せ、ニヤニヤと構えている。
- 64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 18:38:26.87 ID:y3LYUWpu0
- ( ゚∀゚)「わりーな先生!」
見計らうように歩数をあわせ、接近する肌色に全力で足を振り切る。
ちなみに彼はサッカーボールを蹴らせたら超一流であり、足を硬化させることなくグラウンドの端から端にボールを跨がせることができる。
そして現在彼の足は、硬化の証である鈍い鉄の色を示していた。
( 、 川「ぁっ……!」
吐き出すような悲鳴。脇腹にジョルジュの足が見事に命中し、ぐちゃり、といった気持ちの悪い音を立てて短い距離をまた転がされる彼女。
転がりながら放置され潰れた空き缶の上を通り過ぎた。
(`・ω・´) 「うまく入ったね」
遠くでしゃっきり眉毛が呟き、手元のスイッチをぷっしゅ。
すると黒い大きな皿が地面からせり出し、彼女の周囲360度に60センチほどの灰色のニードルが展開した。
ばしん、という金属が弾けるような音が連続で鳴り、皿の中心に向かい勢いよく発射され、彼女の体を穿つ。
_
(;゚∀゚)「やりすぎ……?」
今の一撃でなぜだか凄く申し訳ない気持ちになったジョルジュ。
しかし、
( 、 #川「さすがに……キレますよ」
彼女は難なく立ち上がった。触手がボロボロと体の表面から落ち、刺さるニードルとともにべちゃりべちゃり音をたてた。
上半身の衣服は完全に燃え落ち、肌色が露わになる。しかし大事な部分は手に覆われるように触手でカバーされていた。
('、`#川「あなた達、死にますか?」
目を伏せながら呟く。ぐじゅり、ぐじゅり、と豚の死体を掻きまわすような音とともに。
- 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 18:43:38.34 ID:y3LYUWpu0
- _
( ゚∀゚)「おいブーン、やべえぞ」
( ^ω^)「わかってるお」
ジョルジュとブーンは並び立ち、目の色の豹変する先生を見つめる。火薬を詰めながら、ブーンは相手を観察。
露わになっている上半身の至る所から触手が長くしゅるしゅる生え出し、それぞれ何かを探すようにうねうねと蠢いていた。
('、`#川「覚悟はいいですか?この『アネモネ』ペ二サスが本気を出します!」
増えた触手はその全てが先端を尖らせ、圧倒的な数で面のように迫り二人を突きにかかる。
_
( ゚∀゚)「ブーン!俺の後ろ!」
ジョルジュが硬化させた体で前に立ちブーンをかばう。長身の彼ならば体を曲げればなんとかその陰に隠れることが可能である。
連続する撃音。ががが、と工事現場の地均しのようだ。ジョルジュの背が音とともに揺れるのが背後から目に見えて分かる、それほどの衝撃。
_
(;゚∀゚)「くそ、重てえな」
多重に打ち出される触手の突きだが、その中に緩やかに這い寄るものも紛れていることをジョルジュは気付けなかった。
そこで、立ちふさがるジョルジュの足元の異変にブーンが気付く。
(;^ω^)「ジョルジュ!」
_
( ゚∀゚)「おう?」
がくん、とジョルジュが崩れた、と思った次の瞬間にはペ二サスの方に引き寄せられる。
('、` 川「捕まえた」
- 66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 18:48:57.82 ID:y3LYUWpu0
- 地面を削るように彼は引っ張られ、持ち上げられ、叩きつけられる。
これが瞬時に何セットも続き、身動きが取れないと理解したジョルジュは抵抗の意志も見せなくなった。
_
( ∀ )「畜生……」
悔しそうな声を吐く。
その間、つい先ほどまでジョルジュが防いでいた触手はブーンをひたすらに突き、彼の意識を飛ばすぎりぎりまでもっていった。
(; ω )「くっ……そ」
いい具合だと判断したのか触手は突くのを止め、ふらふらのブーンを拘束した。
遠くに倒れていたギコも触手を用いて彼女のもとへ転がし、ペ二サスの目の前には三人が並ぶ。
('、`*川「戦闘要員は捕縛。これで終わりよ!降参しなさい!」
ペ二サスが勝鬨をあげる。そしてほんの一瞬、彼ら三人から目を背け、見せつけるように周囲の芝生を見渡した。
何かが噴き出すような音が聞こえたのはその時。
('A`)「面白いことやってるじゃねえか。俺も混ぜろよ、先公」
ブサメンが腕を組み、カッコつけて立っていたのだ。
- 68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 19:00:57.41 ID:y3LYUWpu0
- ブサメンに噴き出したのはギャラリーの一年生だけではない。
( ・∀・)「くくく、あいつ微妙にタイミング遅いな」
モララーも噴き出した。
('、`*川「一人で来る気?いいでしょう、かかってきなさい!」
('A`)「一人?ああ、やつらを捕縛してる糸は斬らせてもらった」
先程ペ二サスが目を離した隙にドクオは三人を解放していたようだ。彼らはくらりと立ち上がり、
(,,゚Д゚) 「っしゃあ、四人で行くぜ」
_
( ゚∀゚)「やっぱ俺は盾役ってとこかねえ……」
( ^ω^)「ドクオとギコ、前線は任せるお。そしたら僕の必殺奥義が火を吹くお」
自分勝手に話し始めている。
ペ二サスは一つ大きなため息をかまし、並び立つ四人を、仕方ない、とばかりに眺めながら笑い掛ける。
('、`*川「いいでしょう。今度こそ終わらせますよ。時間が押しているので」
両腕を横に伸ばす。連なるように触手が波を打ち、彼女の腕へ。それらはスプーンのような形を成し、どんどん大きくなる。
('、`*川「せいぜい足掻いてください」
彼ら四人の視界が暗転した。ここまで一瞬の出来事である。
- 69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 19:06:15.45 ID:y3LYUWpu0
- (;^ω^)「なんだおこれ!被せられたのかお!狭いお!」
(,,゚Д゚) 「マズイな、おそらく触手に飲まれるぞ」
_
( ゚∀゚)「首めっちゃ痛いんだけど」
('A`)「お前ら伏せてろ」
暗闇の中冷静なドクオの声が聞こえる。
有無を言わせぬトーンで放たれた声に反論する者はおらず、彼の言う通りそれぞれ体勢を低くする。
('、`*川「……」
ようやく終わる、ペ二サスはそう思っていた。
―――わけのわからない男子生徒達に声を掛けられ、不覚にもこんなことに乗せられてしまった。
実際の生徒に対しての仕事は今日が始めてだったのに、さっそく予定通りに動けなくなるなんて。
教師失格。なんとなくその四字が浮かんだ、ああ、肩を落としてしまいそう。
だがしかし、これで本来の仕事に戻れる。そしてなんとか持ち直すのだ。
ここからさっさと絡め取って、注意して、ええと……。
そんな思考の中、一年生がどよめき立つのが聞こえた。
ああ、今まで聞こえていなかったなあ、でもなんでどよめき立ったんだろう。
しかし、のんびりゆっくり考えている暇は既に彼女にはない。
('、`*川「え?」
- 71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 19:11:50.60 ID:y3LYUWpu0
- 手の先の触手の蓋から透明なレーザーのようなものが二本噴出している。
一体誰があのような能力を持っていたのか。先の三人には該当しないはず。
ならばあのブサメン。彼は私の糸を『斬った』と言った。だがそのような武器は持っていなかった筈。
どうやった。彼の能力か。しかし素手で私の糸を斬る?レーザーを出すのか?
……【シンシュ】に近い能力?完全に盲点だ。
【シンシュ】の生徒の資料にしか目を通さなかったのが悪かった。
どう見てもあれは異形タイプでもないし。不明な能力は危険だ。攻勢には出られないだろう。
( ^ω^)「カパッと!」
彼らを包んでいた触手の上半分が爆炎に吹き飛ばされ、中から四人の男子生徒が跳び出す。
(,,゚Д゚) 「流石河童だ」
_
( ゚∀゚)「後は任せろ!」
('A`)「どいてろ、俺の台詞だ」
ペ二サスは思考を中断し、背中や肩の触手を迫る彼らに伸ばす。
彼女が注視するのはドクオだ。
彼はどのように触手をさばくのか。
- 72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 19:17:11.70 ID:y3LYUWpu0
- ('A`)「こんなもんで止まるか」
腕を振りながら接近してくる。爪からなにか噴出し、それが触手を難なく裂いてゆくのだ。
振った腕、あとに飛び散るのは――
('、`*川「水か!!」
('A`)「おせえな」
彼が小さく振る腕。その腕の、爪の先に水滴。彼は体液を圧縮し高速で噴出する能力といったところか。
ようやく理解した。しかし彼自身かなり素早いようで、他の三人を差し置いてもう目の前にいる。
特性が解った以上これは相当マズイ。急いで対処をしなければ。
('A`)「喰r――ぇあっ!」
首に水流がかする。ひやりとした。今の目は完全に人を殺す目だったのではないか。
実戦を体感した私でも一瞬恐怖するほどだ。だが視線程度に止まるわけにはいかない。
胸から発射した触手で何とか彼を突き飛ばした。胸が見えてしまうが一瞬だ。この際気にしない。
そんな彼女の右側からギコが迫っていた。巨大なブーメランを用いつつ、両刃の剣を振り回しゴリ押しで迫る。
左からはブーン。先程飛び出す時にギコに曲刀を借り、その足を生かして最小限の触手のみを斬り進んでくる。
('、`*川「苦しいかな」
彼らを拘束するため固めていた両手の触手がようやく自由になるが、長さを戻しきる前に二人が来てしまう。
しかし負けるわけにはいかない。教師のメンツを守るのだ。
- 73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 19:22:42.56 ID:y3LYUWpu0
- (,,゚Д゚) 「届くぜ!!」
( ^ω^)「お!!」
もう三度触手の壁は破られた。ブサメンもすぐ復帰してくるはずだ。ならばやむを得ない。
ブーンの蹴りを脛で受け、さらに来る爆破も受ける彼女。触手の防御もそこそこに行い、これによって下半身も露出する。
そこて左下半身全ての触手を飛ばしてブーンの追打を防ぎ、そのまま全身を絡め取った。
( ´ω`)「まじかおー」
(,#゚Д゚) 「ブーン!くそ!あと一歩で!」
ギコは右腕、右肩の触手で何とか牽制し、決定打を受ける可能性がある距離には踏み込ませない。
('A`)「ジョルジュ、行け!」
そこでドクオが再度正面突破をしてきた。ペ二サスは左腕の触手で囲むが、やはり即座に斬りはらわれる。
彼が切り開いた道からジョルジュが跳び込んだ。このままいけば彼の拳は完全にペ二サスの顔面に命中する。
ドクオとギコが勝利を確信した隙、全力で体の余った部分の触手を走らせ、二人を捕縛した。
(,,゚Д゚) 「これも今更だぜ!」
('A`)「おい頼むぞ」
_
( ゚∀゚)「ああ!詰みだ!」
そして残ったのは、もうペ二サスの目前、顔面に全力の拳を叩きつけに迫るジョルジュ。
- 74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 19:28:03.25 ID:y3LYUWpu0
- 状況的に触手を出して間に合う位置は一か所。だがここを使えば完全に女を捨てることになるのだが、
_
(;゚∀゚)「うおあ!マジかよ!」
ξ§`*川「ふびばべん、ばべぶばべいばいばあばっばぼべ(すいません、負けるわけにはいかなかったので)」
潰れるよりはマシだったのだろう、彼女はそれを厭わなかった。
( ・∀・)「――こりゃあ、負けだな」
(`・ω・´) 「だね。僕のトラップは一度しか発動してないし、残念だ」
呟くモララーに木陰から歩いてきたシャキンが賛同した。二人で触手の山を眺めながらぼーっと立ちつくす。
ふん縛りにされた四人がペ二サスに引っ張られて、一年生に手を振っていた。
その一年生はというと、男子は彼女のあられもない姿に興奮し、女子は純粋に、四人を制圧した彼女を賛美するような声で盛り上がる。
( ・∀・)「あいつら回収して帰るか」
(`・ω・´) 「それがいい。全くふがいないな」
モララー達はふてくされる三人と笑う一人を、ペ二サスに頭を下げながら回収する。
('π`*川「あなた達、時間があればいつでも相手してあげるわよ!」
なんて言っている彼女は、戦闘前も最中も全然見せなかった爽やかな笑顔を持っていて、それが彼女の本質であることを感じさせた。
それからペ二サスは何事も無かったかのように一年生達に説明を始める。衣服は着ないのだろうか、そして触手を口に戻さないのだろうか。
- 76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 19:33:34.32 ID:y3LYUWpu0
- ('A`)「俺一人なら勝てた」
(,,゚Д゚) 「馬鹿言え」
_
( ゚∀゚)「ああ、無理だろ。一人だとさすがに水切れるぞ」
( ^ω^)「とにかく面白かったお!」
(,,゚Д゚) 「それにしてもだ、やっぱ教師陣は新米でも強いな。いけないこともなさそうだが」
(`・ω・´) 「僕のトラップを最大限利用したら簡単に勝てたよ」
( ・∀・)「まあまあみんな帰ろうぜ。疲れたろ」
ノパ听)「ドクオ!ジョルジュ!見てたぞ!相変わらずジョルジュは駄目だな!」
やんややんやと反省会を始めた彼らは運動場から出ようとするのだが、
「おい」
ふらふら歩くブーンが肩を掴まれた。
( ゜ω゜)そ「なんです―――おおおおぅ!!!!」
絶叫にも似た返事をする。
何事か、と他の仲間たちもその方向を見るのだが、彼らの動きはぴたりと止まってしまった。
( ФωФ)「貴様ら、オリエンテーションを妨害するとはどういう了見であるか?」
- 77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 19:39:04.90 ID:y3LYUWpu0
生活指導、『土下座のロマネスク』。
彼の逆鱗に触れたものはいかなる者も圧倒的な力によって叩き潰される。
風貌はどこにでもいるダンディな中年であるが、目には現役時代に斬り裂かれたであろう傷跡。これが原因で一線を遠ざかったという。
以前ブーンは彼の逆鱗に触れた。一年生の時だ。彼の情報を全く知らなかったブーンは、初めての演習の際彼に、というか教師を対象として殴りかかった。
そこで瞬時に潰され、土下座。そのまま24時間の説教を経て、ブーンは彼に初めて殴りかかった生徒として目をつけられたのだが、
(;゜ω゜)「これは妨害ではありませんお!学園のルールに則って申し込んだ組み合いですお!」
( ФωФ)「内藤。今度はルールに則って、なんて適当な理由で教師に反発するようなことをしているのであるか?」
(;゜ω゜)「違いますお!ちょっとしたサプライズですお!」
( ФωФ)「サプライズ。そうか」
(* ^ω^)「そうですお!みんな悪いことしてないですお!」
( ФωФ)「ヒート、こちらへ来い」
ノハ;゚听)「あ、はい!」
ひょこひょことロマネスクのもとへ。
( ФωФ)「では男子諸君。吾輩からのサプライズだ。嬉々として受け取るがよい」
二ヤリ。
しまった。ブーンは思ったのだが、嫌な笑みがちらりと見えた瞬間、ヒートを除く6人が吸い込まれるように地に伏した。
頭を上げることは叶わず、凄まじい圧力により潰される彼らはまるで、ロマネスクに土下座で許しを乞うかわいそうな男子達。
- 78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 19:44:19.94 ID:y3LYUWpu0
- (;。A。)「うあああああああ」
′
(;'A`)「……死ぬぅ」
(,#゚Д゚) 「ぐぐぐぐぐぐぐ」
(ω゚´) 「つぶれる……」
( 。ω。)「あばばば」
(; ・∀)「なんだぁ……これぇ……なんで俺までええぇぇぇぇ」
(#ФωФ)「ペ二サス先生が遅いと思って見に来たら貴様らがまたわけのわからないことを!!一年生の予定が大幅にずれたであろう!!」
_
(;゚)「でも一年生も楽しんで――ばあッ!!」
(Д゚) 「下手に喋んn――うぐぁ!!」
彼ら周辺の芝生がほんの少し円形に沈んでいたのだが、ジョルジュの発言によりその円の深みは増すこととなった。
ノハ;゚听)「先生!時間そんなにずれてないですよ!それに本当に一年生に文句をいう子はいませんでした!」
( ФωФ)「ヒート。お前はこいつらを庇わなくてもいい。常識的に考えてこのタイミングに仕掛ける奴が悪いのだ。あとは私情である」
なんとも理不尽。その理不尽にすら屈服させられる情けない生徒A〜Fなのだが。
。З「私情て!!ああ!!」
それから彼らの強制屈服作業は一時間に及んだ。ヒートは途中で帰った。
- 79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 19:49:30.79 ID:y3LYUWpu0
- ( ;ω;)「災難だったお」
_
(;゚∀゚)「ああ……久しぶりに喰らったぞあれ……体が軋むわ」
寮に帰るとそれぞれ真っ白な顔で無言のまま自室に帰っていった。
ブーンはジョルジュと相変わらずぐだぐだしている。
( ^ω^)「うん、でもミセリ達も呼べばよかったお」
_
( ゚∀゚)「女の子にあれはきついだろ。胸なくなるか垂れ下がるぞ」
( ^ω^)「いやそうじゃなくて、もっとみんなで騒げばよかったお!」
_
( ゚∀゚)「一年あんだぜ?いくらでも機会はあるさ」
( ^ω^)「だお!今度はさらに大勢でやるお!」
_
( ゚∀゚)「おう!やってやるぜ!」
- 81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 20:00:12.18 ID:y3LYUWpu0
- ξ゚听)ξ「あれ?私に通信許可要請きてる……ブーンかしら」
振動する端末を手に取るツン。
ξ*゚听)ξ「……あ!久しぶり!……そっか!今年から中等部だもんね!」
相手の声を聞いた途端に笑顔になる。
ξ*゚听)ξ「……うん……えぇ?……うわぁそんなことあったんだ!……あはは、みんな馬鹿ねぇ……うん。
あ、多分知ってる……え?……その人に会わせて欲しい、って……いいけど……わかった。それじゃ明日ねー」
通信を切る。
ξ゚听)ξ「あー、いやー、でも、ちょっとやだなぁ……とられちゃうかもなぁ……」
悶々とした気持ちを胸に、ツンはシャワーを浴びに行った。
第六話「土下座と触手」・終わり
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