( ・∀・)と白蛇のようです

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/31(日) 20:33:16.18 ID:TjgdaolgP
[白蛇・前]

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/31(日) 20:34:23.18 ID:TjgdaolgP

 テストの採点などの仕事が重なり、すっかり遅くなってしまったので、空はとっぷりと暗くなっている。

 田舎特有のキラキラと輝く星は、薄曇りのせいで今日は見られない。

 舗装されていなければその予定もない田圃道を二人で歩いていた。

( ・∀・)「あ、」

 僕は小さな声を上げた。足元をひょろ長い白蛇が通ったからだ。

 白蛇はにゅるにゅると素早い動きで、すぐさま暗い向こう側へ消えてしまう。

 目立つ色だと言うのに、まさしく、ふっと消えてしまった。

(*゚ー゚)「どうしたの?」

 と、隣を歩く椎名先生が言う。同僚の先生で、暗くなったからこうして送っているのだった。

( ・∀・)「いえ、足元を蛇が」

 僕が言うと、椎名先生はすかさず聞き返してくる。


10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/31(日) 20:35:52.50 ID:TjgdaolgP
(*゚ー゚)「それは、白い蛇だった?」

 元々愛嬌のある楕円形の目がくりくりと驚いたように丸くなった。

 鬼気迫る物はないけれど、世間話よりは少し真剣な面持ちだった。

( ・∀・)「はあ、白い蛇でした。細いけれど、ひょろ長い」

(*゚ー゚)「白い蛇はよくないね。知らなかったの?」

 知らなかったの、などと言われても、田舎には僕の知らない因縁話が多すぎる。

( ・∀・)「何かよくないことがあるのですか?」

(*゚ー゚)「アオダイショウなら、問題ないんだけどね」

 それは僕にとってさらに不思議な話だ。白蛇とは元来青大将が白く変化したものに過ぎず、同じものなのでは無かったろうか。

 田舎は、難しい。僕のようにこちらに赴任して三ヶ月の人間では量ることすら容易では無い。


11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/31(日) 20:37:49.75 ID:TjgdaolgP

 その後も白蛇に関する話の、確信めいたものは聞けずに、三叉路に差し掛かった。

(*゚ー゚)「じゃ、私はここで」

 椎名先生は三叉路を左手に折れようとする。それ以上は、僕は送ることはできない。

 本来ならば椎名先生は、僕の家の近くに住んでいるのだが、時折こういった夜中には、彼女の家とは別方向に足を向けてしまう。

 その家は、用務員の擬古さんが住んでいる。夜目を忍んで、彼女は擬古さんの家へと帰るのだ。

 何故忍ぶのか、何故それ以上僕が送れないのか、というと、擬古さんはれっきとした既婚者であり、その奥さんは椎名先生では無いからだ。

 これは酒の席で、校長がいやらしい笑いと共に言ったことであるが、

 二十も半ばを過ぎ、まして、椎名先生のように白くて可愛らしい人ともなれば、縁談の話もひっきりなしと言うが、

 それらをすべて断っているのも、その不倫が原因であるらしい。

 擬古さんの正妻は度々夜に家を空けると言う話で、その日を狙って、椎名先生は忍ぶらしい。

( ・∀・)「ええ、それではまた、休み明けの月曜日に」


13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/31(日) 20:39:20.71 ID:TjgdaolgP

 僕は何も知らないふりをして、椎名先生を見送る。

 暗いあぜ道にゆっくり椎名先生が溶けていくように見える。

 都会のように街灯はないが、暴漢なども滅多に現れないから、僕はさしてその姿を心配していない。

 ただ、彼女の不貞が、いずれ厄介なことになりはしないだろうか、ということだけは少し心配した。

 ○

 僕の家は、他の家々と同じく、田んぼの真ん中に建っている。

 一階建てで、居間と台所が一つになった部屋と、寝室の六畳間、それと風呂とトイレと言う構造になっている。

 こちらに赴任してくる際、家を貸してくれると言う話を聞いた時には、老夫婦の家に下宿という形を想像していたのだけれど、

 来てみれば、一人で一軒家に住んでくれと言うことだったので、驚き半分、気苦労がなくて良かったと思ったものだ。

 おまけに家賃は学校が持ってくれると言うから、随分豪気な話。

 大学を出て、いきなり田舎の小学校に勤めることになって、少しばかり気の重い心地もしたが、意外に親切で太っ腹な人が多く、

 僕はこの三ヶ月、そこそこに快適に過ごしてきたのだが。


15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/31(日) 20:42:00.06 ID:TjgdaolgP

('、`*川「お帰り。モララー君」

 20半ばくらいの知らない女性が、玄関の上がり框に立って僕を迎えたので、ひどく驚いた。

 次いで、女性の声が、あまりにも当たり前だったのが、僕をさらに混乱させた。

('、`*川「ごめん、ご飯まだできてないんだ。とりあえず手を洗って」

( ・∀・)「誰ですか、あなた」

('、`*川「ペニサスだよ。忘れたの?」

 腰に手を当てて、憮然として、その女性、ペニサスさんは言った。

 忘れたも何も、僕はペニサスさんのことを知らない。

 狭い田舎村だ。住人の顔はひと月ぐらいでみんな見てしまったし、僕は人の顔を忘れる性質では無い。

 ならば以前住んでいた町の人かと言えば、そうでもないはずだ。やはり、彼女の顔にもペニサスと言う名前にも、まるで覚えがない。

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/31(日) 20:44:39.82 ID:TjgdaolgP

('、`*川「ほら、早く」

 と、ペニサスさんは僕の手を取った。その時の、異様にひやりとしたペニサスさんの手。

 人間の温度とは思われなかった。おまけに、人間よりは心地よく柔らかい感触がした。

 直感的に、先ほど跨いだ白蛇だと思った。

('、`*川「今日はモララー君の好きな、筍の煮物も作ったからね」

 それは事実、僕の好きな食べ物ではあった。けれど、蛇がなぜ、僕の好物を知っているのだろうと思いながら、

 僕はぐぐっとペニサスさんに引かれて、居間へと連れていかれる。

 卓袱台には、裏返されたご飯茶碗が二つ。上座に僕のものが、下座に客用のものが置かれていた。

 炊事場にはぐつぐつと昆布の煮える甘い匂いの湯気が立っている。

 グリルからも、魚の焼けるじうじうと柔らかな音が聞こえる。

('、`*川「もうちょっとだから、うがい、ちゃんとしなさいよ」

 母親のような口調で、ペニサスさんは言った。


18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/31(日) 20:46:41.28 ID:TjgdaolgP

 どうしたものかと思いながら、手洗いとうがいを済ませると、卓袱台には立派な夕餉が準備されていた。

 たし巻き卵に塩鮭。ほうれん草のおひたしに、宣言通りの、筍と昆布の煮物もあった。

 ペニサスさんは客用のお茶碗の前に座り、僕を待っていた。

('、`*川「煮物、あんまり味が染みてないかも」

 そう言いながら僕が座るのを待ち、ご飯をよそおうとして、

('、`*川「ああ、先にビールにしようか。冷やしてあるんだ」

 僕の返事も待たずに、いそいそと冷蔵庫に向かい瓶ビールとグラスを二つ持ってきた。

 言われるままにビールを注がれ、ペニサスさんは手酌をし、彼女だけが、美味しそうにそれを飲んだ。

( ・∀・)「……」

 買った覚えのないビールは不気味だったが、あんまり美味しそうだったので、僕も一息に喉を鳴らして飲んだ。

 グラスが汗をかくほど冷えたビールは、頭にしんと沁み込んで、すぐさまもう一杯飲みたいと思った。


19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/31(日) 20:48:24.03 ID:TjgdaolgP

('、`*川「お仕事お疲れ様、まだ冷やしてあるから、どんどん飲んでいいよ」

 自分でも手酌でグラスを空けながら、ペニサスさんは言った。

 ついでに出し巻き卵にも箸を伸ばし、塩鮭をほぐしてぱくりとやった。

('、`*川「美味しいよ。モララー君も食べなさい」

 僕も出し巻き卵を一切れ皿に取り、半分に割ってみた。

 じわり、と出汁が染みて、つい口に運んでしまった。濃い味付けで、それをビールで流し込むと妙に心地が良かった。

 昆布がとろとろになっている筍の煮物は、言ったとおりあまり味が染みていなかったけれど、

 小さい頃母方の祖父母の家で食べたような、懐かしい味がした。

('、`*川「帰り、結構遅いんだね」


21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/31(日) 20:50:20.61 ID:TjgdaolgP

( ・∀・)「今日は、色々仕事が重なって」

('、`*川「いろいろ?」

( ・∀・)「テストの採点とか、色々」

 僕は答えるつもりはなかったのだけど、美味しい食事とビールで気がゆるんだようだった。

( ・∀・)「あなたは、何なんですか?」

('、`*川「蛇よ」

 と、ペニサスさんはあっさりと白状した。彼女も、ビールで頭がゆるんだのだろうか。

('、`*川「さっき、跨がれた白蛇。ここら辺の言い伝え、知らないの?」

 ペニサスさんは言ったが、僕は知らない。椎名先生が教えてくれれば、問題はなかったのに。

('、`*川「ここら辺の白蛇はね。跨がれたら相手にとり憑かなきゃいけないの」

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/31(日) 20:52:44.72 ID:TjgdaolgP

( ・∀・)「はあ、そうですか」

 あまりに突飛な話に、僕はむしろ冷静にそれを聞いた。

( ・∀・)「え、僕、死ぬんですか?」

('、`*川「いずれは死ぬでしょうよ。そうでないと私も帰れないし」

( ・∀・)「帰るって、どこにですか?」

('、`*川「どこって、向こう側」

( ・∀・)「向こう側ってどこですか」

('、`*川「向こう側は向こう側。例えば、モララー君が瞬きをする間に現れる世界、だよ」

 漠然とした答えで、僕にはよく分からなかった。

 昔読んだ古い小説の中にそんな文句があったような気がするが、思い出せなかった。

( ・∀・)「で、僕は殺されるんですか?」


26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/31(日) 20:54:35.19 ID:TjgdaolgP

('、`*川「ま、しばらく、ここで厄介になるよ」

 殺すとも殺さないともつかない言葉を、ペニサスさんは返した。

 そして手酌でまた一杯グラスに注いで、その半分ほどで、瓶は空になった。

('、`*川「無くなっちゃった。モララー君はまだビール飲む? それとも、ご飯にする?」

 ○

 その後、辛い塩鮭でご飯をもそもそ食べて、満腹になったら眠くなってしまった。

 不気味なものが僕の家に入り込んでいると言うのに、体はいたって平生と変わらない。

 僕が大口を開けて欠伸をすると、それをペニサスさんが面白そうに眺めていた。

( ・∀・)「なんですか?」

('、`*川「眠そうだなあ、と思って」

( ・∀・)「眠いですよ」

 欠伸で滲んだ涙をぬぐって、僕は一つ思い出したことを聞いた。

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/31(日) 20:56:25.87 ID:TjgdaolgP

( ・∀・)「最初、ペニサスさんは『覚えてないの?』って言いましたけど、あれ、何だったんですか?」

('、`*川「白い蛇を跨いだのを覚えてないかって。ここら辺の人はみんな知ってるから」

 事もなげに言って、熱いお茶を啜った。

( ・∀・)「僕は知りませんでしたよ」

('、`*川「知らないうちは、余所ものってことだよ」

 ペニサスさんは立ち上がると、わたしももう寝る、と言って、

 人とも蛇ともつかない曖昧な生き物になって、洋服箪笥と本棚の隙間にもぐりこんでしまった。

 隙間にいる女と言う怪談話があったけれど、それとは異なり、どこか滑稽で愛らしい生き物のようにも思えた。

 ペニサスさんはぴたりと隙間に入り込んで、まったく身動きを取らなくなった。

 仕方がないので、僕も寝室に布団を敷いて寝た。

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/31(日) 20:58:27.98 ID:TjgdaolgP

 その晩、おかしなことがあった。寝ているはずなのに、僕に意識があったのだ。

 僕は熟睡している。変なことが起こって、頭も体も疲れきっていて、寝息すらも億劫なくらい。

 足もとの布団が幽かに捲れ、そこから何かが入ってくる。

 人間のものとは思われない、けれど蛇でもない、低温で、ひどく心地の良い柔らかさの何かが、するすると入り込んでくるのだ。

 それは僕の体の上を這いまわった。布団の熱と僕の体温がそれに移って、感触だけが残る。

 するすると執拗にそれは這い回る。時折、男性器に柔らかいものが触れて、脳天まで突き刺さるような射精感がこみ上げた。

 けれど、射精するには至らなかった。それは、じらすように射精の寸前で男性器から離れていくのだ。

 首筋から胸、下腹部、指先から足先、それは敏感な部分を撫で続けた。

 けれど、けして布団から出ようとはしなかった。姿を現そうとはしなかった。

 どの道、熟睡している僕にはそれがどんな形をしているどんなモノなのかはいつまでたっても知れないのだけど。

 布団の中で、それはいつまでも僕の官能を刺激し続けて、しかし、射精の解放感はなくて、僕はいつまでも意識だけをもだえさせていた。


30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/31(日) 20:59:31.98 ID:TjgdaolgP

 明け方になって、ようやくそれが出て行った。

 何だったのだろうか。こんな事が毎晩続くようでは、非常に困る。

( ・∀・)「うう……」

 7時ごろに起きだした僕は、未だ熱の冷めない体を如何にすべきか少し悩んだが、出勤まで間もなかったから、

 いきり立ったものを放って学校に行く羽目になった。

 ペニサスさんは昨晩と変わらず、洋服箪笥と本棚の隙間に納まっていた。

 これも、放っておくことにした。昨晩のことを、なんて聞けばいいか分からなかったのだ。

 ○

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/31(日) 21:01:45.59 ID:TjgdaolgP

 学校に着くと、すでに椎名先生が居て、昨日採点を終えたテスト用紙の整理をしていた。

(*゚ー゚)「おはよう」

 ニコリと、白くて可愛らしい顔を向けてくる。

 白蛇のペニサスさんは、どちらかと言えば美しい人を指す白さよりは、存在が希薄な白さなのに対して、
 
 椎名先生はまさしく美しい人の白肌であり、僕は常になくドキドキして、口の中でごにょごにょと挨拶をした。

(*゚ー゚)「どうしたの? 元気ないね」

 こういう日は、みっちり肉の詰まった姿態にも困るものだ。

 昨晩は用務員の擬古さんとどういう夜を過ごしたのだろうと、下世話な疑問も頭をかすめる。

 それらをなんとか振り切って、僕は言う。

( ・∀・)「白蛇が出ました。椎名先生と同じ年くらいの、女の人でした」

(*゚ー゚)「ああ、やっぱり白蛇だったのね」

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/31(日) 21:03:40.98 ID:TjgdaolgP


 何でも無いことのように椎名先生は言って、

(*゚ー゚)「そのうち、向こうの方からいなくなるから、平気よ」

( ・∀・)「僕が死ぬまで帰れないって言ってましたけど」

(*゚ー゚)「でも、気が付いたらいなくなってるから」

( ・∀・)「本当に?」

(*゚ー゚)「たまに、本当に帰り路が分からなくなる蛇もいるみたいだけど」

 と、椎名先生は一つ、何かよくないことを思い出してしまったと言いたげなため息をついて、

(*゚ー゚)「無視していれば、出ていくから、絶対に」

 そしてテスト用紙の整理を再開したので、僕も手伝った。

 この小学校は全学年合わせて三クラスしかなく、僕と椎名先生は二人で年中クラスを見ているのだけれど、五教科の一斉テストともなれば、

 その数はなかなかのもので、出席番号順に揃っているか見直すだけで、少し骨が折れる作業である。


34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/31(日) 21:05:53.02 ID:TjgdaolgP

 名前を確認しながら一枚一枚テストをめくっていると、職員室の扉が開いて、僕を呼ぶ男の声が。

(,,゚Д゚)「先生、ちょっと」

 用務員の擬古さんだった。職員室では話しにくい様子で、僕を喫煙室へと連れ出す。

 こんな田舎でも嫌煙風潮は著しく、学校でもおいそれと煙草一本吸う事も出来ないのだ。

(,,゚Д゚)「朝っぱらからすいません」

( ・∀・)「いえいえ」

 擬古さんは四十がらみのがっしりとした人だが、どこか物腰の丁寧なところがある。

 子どもたちからも慕われており、ちょくちょく昼休みにサッカーに混じっているのを見かける。

(,,゚Д゚)「先生、煙草吸いましたっけ?」

 擬古さんはポケットから煙草を取り出そうとして言った。

( ・∀・)「はい。だから吸ってもらって大丈夫ですよ」


36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/31(日) 21:08:09.81 ID:TjgdaolgP

 擬古さんは非喫煙者の前では吸わない性質らしい。

 僕も付き合いでピースをポケットから取り出した。

 こっちに来る前はキャビンを吸っていたのだけど、こちらの煙草屋には、

 マイルドセブン、セブンスター、ピースの三種しか置いていないので、仕方なくピースを吸う羽目になっているのだった。

 擬古さんもポケットからマイルドセブンを取り出して、それに火をつけた。

(,,゚Д゚)「椎名先生から、白蛇に憑かれたって聞いたんですが」

 昨日の今日で、もうその話を聞いたと言う事は、昨晩会っていたという証拠に他ならないのだけど、

 僕はそれに気付かないふりをして答えた。

( ・∀・)「そうです。ちょっと、困ってます」


37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/31(日) 21:10:34.65 ID:TjgdaolgP

(,,゚Д゚)「そりゃ、困るでしょう。何せ、あいつらは勝手に居付くから」

( ・∀・)「帰ったら、ご飯を作って待っていました」

(,,゚Д゚)「それがあいつらの手なんですよ。人間に取り入ろうって、好物まで拵えて」

 流石に、地元の人間は詳しいな、と僕は感心した。

( ・∀・)「そこまでして、何がしたいんでしょうか?

(,,゚Д゚)「奴らにとっちゃ人間はたまの御馳走なんですよ。何でも食う、いぎたない奴らですが」

( ・∀・)「ということは、憑かれたら食べられちゃうんですか?」

(,,゚Д゚)「いや、命のような、何か大事なものを人間から吸うのが目的みたいです」

( ・∀・)「ああ、なるほど」

 昨晩のあれは、大事なものを吸うための準備みたいなものだったのだろう、と僕は思った。

(,,゚Д゚)「だからね、一つアドバイスしますが、先生、奴らと情を交わしちゃ、いけませんよ。

    一度情を交わしたら、奴ら取り憑いたまんま、離れようとしませんから」

 もう多分、手遅れであろうことは黙っていた。

 ○

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/31(日) 21:12:55.99 ID:TjgdaolgP

 その晩、僕は校長に一杯誘われて、家には帰りたくなかったから、それにつきあった。

 村にいくつかある赤ちょうちんの店で、校長の行きつけの一軒に入った。

从'ー'从「いらっしゃいませ〜」

 店主は30を少し過ぎたくらいの夫婦で、常ならば旦那が料理を作り、奥さんが接客をしているのだが、

 今日は奥さんの姿しか見えなかった。

从'ー'从「うちの人倒れちゃいまして〜。お料理、簡単なものしか作れませんがよろしいですか?」

(´・ω・`)「いいよ。なんなら、柿ピーだけでもいいから。とりあえずいつもの冷や二つね」

 校長はカウンターの真ん中に陣取ると、駆け付けの一杯を飲み干した。

(´・ω・`)「ほら、君も飲みたまえよ」

( ・∀・)「いただきます」

 僕もちびりと酒を口に含む。校長の言う『いつもの』が何なのかは知らないが、随分良い日本酒だった。


39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/31(日) 21:14:27.89 ID:TjgdaolgP

 校長は昔、市の議員をしていた人で、その天下り先として小学校に赴任したのだが、

 来てみればひどい田舎で、天下ったことを後悔していたらしい。

 そのため、以前からここに住む人よりは、僕のように外から来た人間と飲みたがる。

 けれど、田舎の話は僕よりはずっと知っていて、白蛇の話に関しても、例外では無かった。

(´・ω・`)「白蛇ね。擬古君の奥さんもそうだよ」

( ・∀・)「奥さん? 結婚しちゃったんですか?」

(´・ω・`)「そう。擬古君の歳周りの女の人がいなかったみたいで、擬古君も悩んでたらしいから。

     田舎だからねえ。外から嫁さんをもらうのも難しくて、居付いた白蛇とくっ付いたらしい。

     でも、ここら辺じゃ珍しくもない話みたいだよ。白蛇は人間が欲しい。人間は女が欲しい。

     ほら、白蛇はみんな女だろう? 変な関係が、昔っから続いてるみたいで」

 みんな女だろう? と言われても、今初めて知ったのだけど、特に追求しないことにする。それよりも、

( ・∀・)「子どもって、生まれるんですか?」

 その方が気になった。


41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/31(日) 21:16:31.87 ID:TjgdaolgP

(´・ω・`)「生まれるみたいだよ? 腹から出てくるのか、卵なのかは知らないけどね。

     ただ、擬古君のところはいないみたいだねえ。だから、椎名君みたいな若い子と平気で浮気をする。

     いや、違うかな。蛇よりも人間の方が良かったって事かな。ねえ、君はどう思う?」

 その問いには答えられなかった。僕が黙っていると、

(´・ω・`)「近々、二人は駆け落ちするかもしれないね。いや、実はね、二人別々に、それとなく辞めるかもしれないって相談を受けたんだ。

     止めるべきかなあ。どうしようかなあ」

 くいくいと杯を開けて、すっかりぐでんぐでんになってしまった校長は、体を前後に揺さぶりながらそんなことを言った。

( ・∀・)「残された蛇はどうするんでしょうね?」

 僕の問いは酔っ払った校長には届かなかったらしい。

 その後三十分もたたないうちに校長は机に突っ伏してしまったので、僕は店の人に後を任せて、先に出ることにした。

 こういう酔いつぶれた人のために、奥に布団を敷いてくれるのは、ここら辺特有の親切だな、と思いながら。


42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/31(日) 21:18:08.42 ID:TjgdaolgP

 家に帰ると、やはりペニサスさんが待っていて、僕を出迎えてくれた。

('、`*川「ご飯、冷めちゃった」

 頼んでもいないのに残念そうな顔をされても困る。

 僕はそう思ったけれど、せっかく作ってくれたのを無碍にするのも悪く感じて、おかずだけ食べることにした。

 豚肉の生姜焼きにポテトサラダ、きんぴらごぼうに、昨日の筍の煮物。

('、`*川「今日のは、味が染みてて美味しいよ」

 不気味な生き物だが、作る料理は美味しい。僕は二日目にして、この目の前の存在に慣れていた。

 それは別段良いこととは思わなかったけど、悪いこととも思わなかった。

[白蛇・前]終わり


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