( ・∀・)と白蛇のようです

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/31(日) 21:19:03.12 ID:TjgdaolgP
[水魔]

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/31(日) 21:20:34.35 ID:TjgdaolgP
 ペニサスさんが我が家に憑いてしばらくが経った。

 ペニサスさんはこの家を気に入ったらしく、随分気安くあれこれと家事をするようになっていた。

('、`*川「シャツにアイロンかけておいたからね」

('、`*川「今日は天気がいいから布団干すよ。いつまでもだらだら寝てちゃ駄目だよ」

('、`*川「きゅうりを漬けてみたんだ。味どう?」

 椎名先生は、白蛇とはいずれ勝手に出ていく存在だと言っていたが、今のところその気配はなく、むしろ奥さんのような存在になってしまっている。

 かといって、僕が困っているかと言うと、あれこれしてくれるのだから、まあいいかと言う気分になっている。

 時折、夜に寝床に忍び込んで悪戯をしていくのには閉口するが、それを除けば、僕はペニサスさんと言う存在を歓迎していた。


46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/31(日) 21:21:35.09 ID:TjgdaolgP

 もし僕に意中の相手などが居れば、困ったことになっただろうなとは思う。

 けれど、僕には都会に残してきた思い人はいないし、この村には僕と同じような歳周りの女性は椎名先生しかいない。

 そして椎名先生には擬古さんと言う思い人、不倫の相手がいるから、

 つまり、哀しいけれど、ペニサスさんのことで遠慮しなければならないような人物はいないのだった。

(´・ω・`)「そのまま娶っちゃどうだい?」

 なんて、笑いながら校長は言うけれど、僕にはそのつもりはない。

 夜眠るときに洋服箪笥と本棚の間に入り込む彼女なんかを見ていると、やはり人間と白蛇は違うものなのだと思ってしまう。

 その姿は、それはそれでまあ、愛らしいと言えなくはないけれど。

 ともかく僕は、いずれペニサスさんが出ていくまで、何となく日々を過ごすつもりなのだ。


47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/31(日) 21:22:47.28 ID:TjgdaolgP

 ある日のこと、僕は散歩をして、日差しの気持ちいい休日の朝を謳歌していた。

 建物も何もなく、田んぼと畑、あるいは小川があるばかりの田舎だけど、そういった自然の中を歩くのは、それだけで楽しいものだ。

 僕は小川に沿って歩いている。浅く透き通った水が流れ、足元は砂利がいっぱいで、歩いているとごつごつ音が鳴った。

 何か魚でもいないかなと目を凝らして見ても、特にそう言う生き物はいなかった。

 たまにアメンボがすいすい水面を滑るだけ。でも、アメンボの不規則な動きと言うのは、それはそれで興味深い。

('、`*川「モララー君、早く来ないと置いていくよー」

 アメンボに気を取られていると、ペニサスさんがじれったそうに言った。

 僕が小川の方に散歩に出ると言ったら、じゃあ私もついていく、ということで、二人して歩いていたのだった。

( ・∀・)「今行きますよ」

 言いながら、ペニサスさんの少し後ろをのんびりと歩き始める。

 デート、のようなものなのだろうか。よく分からないけど、悪い気分じゃなかった。


54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/31(日) 21:31:22.25 ID:TjgdaolgP
 上流に昇っていくにつれて、緑が多くなる。弱い風でも、葉っぱがさやさやとなって、どこか不思議な処に迷い込んだような気すらした。

('、`*川「空気が濃いね。気持ちいい」

( ・∀・)「濃い? 変なことを言いますね」

('、`*川「何かおかしい? 濃いって、言わない?」

( ・∀・)「いえ、別におかしくはないですけど。でも確かに気持ちがいい」

 ここに来たのは初めてだった。もうこちらに来て三ヶ月以上になるが、居住エリア以外は、意外と足を向けていないところが多かった。

 こういった『自然』みたいなものも、ここら辺の良いところなのだから、もっと親しまなければならないな、と思った。

( ・∀・)「ここら辺で休憩にしませんか?」

 疲れたわけでは無いけれど、ここで腰を落ち着けて、川の流れを眺めたいと思ったのだ。


57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/31(日) 21:34:06.71 ID:TjgdaolgP

('、`*川「そう? じゃあ、私はちょっと森の方へ入って見るから、モララー君はここにいてね」

 ペニサスさんはそう言って、緑の濃い方へとすたすた歩いていく。

 元々はあちら側のモノだから、居心地がいいのだろう。足取りは、どことなく弾んでいた。

( ・∀・)「さてさて」

 お尻の下に細かな石を感じながら、腰を下ろした。ちょっと痛いけど、我慢できないほどでは無い。

 小川はゆっくりと下流に向かって流れている。

 小石を投げ入れてみると、ぽちゃんと言う音とともに、波紋が広がる。

「痛っ」

 何か、声が聞こえた気がした。


58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/31(日) 21:35:09.79 ID:TjgdaolgP

 小川は変わらずにゆっくりと流れている。人影も見えない。

 ならば先ほどのは幻聴かと思い、小川を覗きこんでみても、やはり透き通った水があるだけ。

 鏡のように、はっきりと僕の姿が映る。

( ・∀・)「あ、剃刀負けしてる」

 僕は鼻の下に手を当てながら、つるつると撫でてみた。

 ちょこんと、ニキビのようなものができている。シェービングジェルが少なかったせいだろうか。

( ・∀・)「ふふふ」


60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/31(日) 21:36:45.27 ID:TjgdaolgP

 なんだか面白い。何故だか笑いがこみあげてきた。

 炎と流水は見ていて飽きないと言うが、普段ならばつまらない自分の顔も、流水に映せば、何となく愉快なものの様な気がしてくる。

( ・∀・)「ふふふふふふ、あははっ」
 
 自分の顔を見ているだけなのに笑いは止まらない。体のどこかがおかしくなったように。

 ああ、凄く愉快だ。珍しい陶器でも見ているような心地だ。よく分からないけど、面白い。

( ・∀・)「あは」

 目の前のものがよく分からないけど、酷く滑稽で、酷く滑稽で。真面目腐った顔をしているのがまた愉快でしかたない。

( ・∀・)「あははっ、ははっ、あははははははははは」

 目の前のものは面白い。目の前のものは面白い。

 これは一体何なのだ。僕は何を見ているんだ。とにかく愉快で不愉快で笑わずにはいられない。

 取りだしてみようと何度も手を伸ばしてみるが、水をかくだけでひどくもどかしい。


62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/31(日) 21:38:02.03 ID:TjgdaolgP

( ・∀・)「ふふあはははふふああああああはっははははははああはは」

 手に取ってみたい。目の前の意味の分からないものをこの手に取りたい。

 これは何だ。これは何だ。不思議で素敵でゴミみたいなものに違いない。

 初めて見る物だ。きっと貴重なものだ。そこら中に並べてあるものの中でも最低のものに違いない。

 欲しい。欲しい。ザブザブ水をかきながら、一心に手に取ろうとするけど出来なくて、とても悔しくて。

 ああ、ならばいっそこちらから迎えに行こう。このよく分からないものを迎えに行こう。

 僕は身を乗り出して、そちら側へと行こうとして、











('、`*川「ここら辺、急に深くなるから危ないよ」

 と、何かに首根っこを掴まれて、それを阻まれてしまった。


64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/31(日) 21:39:05.49 ID:TjgdaolgP

(;・∀・)「離して、離して」

('、`*川「駄々っ子みたいな事言わないの。しゃんとしなさい」

 ぺちんと頬をはたかれて、僕は一瞬キョトンとなって、ようやく我に帰った。

(;・∀・)「僕、何してました?」

('、`*川「モララ―君、呼ばれてたみたいね」

 と、ペニサスさんは言う。

('、`*川「水は時々、生きてる人間を呼ぶから、気をつけなきゃ駄目だよ」

 魔が差すって、よく言うでしょ?

 ペニサスさんは何でも無いことのように言った。


65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/31(日) 21:40:14.63 ID:TjgdaolgP

(;・∀・)「初めてですよ。こんなこと」

('、`*川「空気が濃いと水も濃くなる。たまにあるのよ。水が綺麗な証拠」

 都会ではお目にかかれない怪異とでも言いたいのだろうか。

 そんなもの、ありがたくもなんともないのだが。

('、`*川「まあ、こういうところで食べるお弁当も乙なものよ。そろそろお昼だし」

 そう言いながら、家から作って持ってきた小振りな弁当箱をいくつか取り出す。

('、`*川「いっぱい作ったからどんどん食べてね」

 此方は大変な思いをしたと言うのに、と思ったのだけど、実際目の前に出されると、つい箸が伸びてしまった。

( ・∀・)「……」

('、`*川「どう?」

( ・∀・)「美味しいです」

 悔しいことに、怪異なる存在のペニサスさんの料理は美味しい。

 まあ、五分五分か、と僕は思った。

[水魔]終わり


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