( ^ω^)あしたの空のようです

10 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/01/06(水) 00:46:37.02 ID:zTFpxWXH0









          Part1 青春,









     
12 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/01/06(水) 00:51:01.83 ID:zTFpxWXH0
         (2000年当時のそのころ)


ノストラダムスの恐怖の大予言も2000年問題も拍子ぬけに去った、
ミレニアムにうかれ、新世紀の到来を待ちわびている年だった。

雪印乳業の集団食中毒事件、西鉄バスジャック事件など陰惨な出来事も起き、
とくに後者の事件や豊川市の事件に代表されるような、相次ぐ17歳の犯行はマスコミがこぞって騒ぎたてた。

ただし、当然そんなハイティーンばかりのはずもなく、一般的な
しごくまともな若者は、たとえば厚底靴やパラパラ、邦楽の歌姫たちに熱中したり、
放課後はマツモトキヨシ、あるいは普及しつつあるインターネットに没頭するなど
大人とはまるで異なった世界を築いたものの、ある程度の常識は持ち合わせていた。

ある程度の常識は。


そしてその日――7月9日、日曜のVIP市の繁華街は御機嫌な太陽にふさわしい人入りだった。
老若男女入り乱れた大衆の中に、その少年は紛れていた。


( ^ω^)〜〜♪


その少年――内藤ホライゾンは中学二年生で、あどけない雰囲気を残しているが、
心は毬のように弾んでいる。この日の晴れ模様のように、澄み切った気分だった。

                      
14 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/01/06(水) 00:56:06.87 ID:zTFpxWXH0
内藤は待ち合わせ場所で有名な「忠犬ビーグル」像の前で立ち止まると、
せわしない風にあたりをキョロキョロと見まわしたが、そのうち、表情に曇りがみえ、

(;^ω^)「痛い、痛い痛い……」

急にもがくような動作と声を出すと、


(;^ω^)「痛いおォ―――!」

いきなり、叫びだした。


周りの人間は突然の出来事に驚きを隠さなかった。
訝しげな表情をする者、小馬鹿にした笑いをみせる者、本当に緊急事態なのかと
心配そうな素振りをしたり、実際に声をかけようとする者、、、

(;^ω^)「まだ痛むおー……後遺症が…後遺症がー……」


 その中から、するりと人ごみから現れた少女が内藤に近寄った。

(*;゚ー゚)「ブ、ブーン!?」
( ^ω^)「お、しぃ。やっと来たかお」

内藤の愛称で呼びかけると、少女はすまなそうな顔をして内藤の右脚をさすった。

15 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/01/06(水) 01:00:09.05 ID:zTFpxWXH0
(*;゚ー゚)「遅れたのはほんとゴメンなさい、だからお願い、やめて……」

( ^ω^)「わかってるおわかってるおw」

周囲の人間は、何が何だか分からずに茫然としていたが、
そのうちカップルがのろけていただけなのだと考え、興味をなくしていった。
とんだ迷惑な奴らだ、と不快に感じた人間も少なくない。

(*;゚ー゚)「後遺症とか……なかったじゃない…!」
( ^ω^)「だから分かったって言ってるお。さっさと行くお、しぃ」

ぴしゃりとブーンは言いのけると、少女――しぃの手を引いて歩きだした。
慌ててしぃも動き出し、二人の足は映画館へ向けられた。

傍から見れば、おおよそ不釣り合いなカップルにうつるだろう。
同世代でクラスメイト同士だが、ブーンはどちらかというとモテる方ではない。
笑顔の似合う好青年ではあるけれど、セックスアピールはないに等しかった。

対してしぃは、学校でも有数の美少女だった。
黒目がちなあどけない目つきに、さらりとクセのないセミロング、
ぽってりした唇に柔らかそうな身体と、男子生徒の憧れの的であった。

16 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/01/06(水) 01:05:31.41 ID:zTFpxWXH0
そんな二人ではあるが、まだ学校の人間には関係を公にしていない。
ブーンも親友の手前、言いだせないでいるし、しぃは絶対に自分から話はしないだろう。

こんなふうに、ひと気の多いところで手を繋いだりすれば、いずれ発覚されるに違いないが、
さいわいなところ、まだ同級生たちに目撃されてはいなかった。

正午を軽くすぎた時刻、二人はVIPシアターに足を踏み入れた。

『 Talk About Old Times For A Moment 』という恋愛映画を鑑賞する予定だ。
今作は、恋愛モノとしてはかなり有名な作品で、いまでは古典として扱われている趣もある。
新しい俳優を使ってのリメイクなのだが、思いのほか客数は伸びているらしい。

( ^ω^)「これ内容知ってるお…」

ブーンは買ったばかりのポップコーンに、さっそく手をつけながらぼやいた。

(*゚ー゚)「うん、でも私これ好きなんだぁ」

ふたりは講堂に入っていった。売店ですこしモタついたためか、
すでに暗くなってい、そそくさと席についた。

ブーンはぼんやりとコマーシャルを眺めながら、隣のしぃのことを思った。

18 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/01/06(水) 01:09:14.03 ID:zTFpxWXH0
才色兼備の言葉そのままに生きている
、学園の天使のまゆ山しぃが、いま自分の隣で座っている。
いまでこそ慣れたものだが、当初は舞い上がっていてどうしようもなかった。

あのキッカケさえなければ、手を繋ぐことはおろか、会話だってろくに出来やしなかっただろう。
そう考えると、しぃの兄に感謝の念さえ湧いてきそうだった。
昔は憎しみさえ抱いていたものだが。

( ^ω^)「お、始まったかお」
(*゚ー゚)「………」

ブーンはポップコーンを頬張り、コカ・コーラで流し込みながら鑑賞し続けた。
話の流れは大体知っているはずなのに、興奮してしまうのは、名作だからだという他ない。
しぃは更に顕著で、息を呑んだり口に手を当てたりと、反応がやけに大きかった。


初めて観るわけでもないのに。ブーンはやれやれと思いながら、内心好感を持っていた。
これは演技ではないんだろうな――

物語はクライマックスを迎え、病院のシーンに入った。
しぃは目に涙をためている。

( ^ω^)「(おっおっ……そろそろラストかお)」

空になったポップコーンの容器を弄ぶ。映画に集中できないのは、なにより空腹だからだ。
これを観終わったら、どこに行こうか……ブーンはそんなことばかり考えていた。

19 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/01/06(水) 01:13:39.20 ID:zTFpxWXH0
・・
・・・

( ^ω^)「いい映画だったお」

(*゚ー゚)「そうだったねぇ」

二人は映画館を出、急な日差しに顔をしかめながら表に出た。
十四時を過ぎ、人ごみもピークに達しようとしていた。

( ^ω^)「やっぱ名作ってのは色褪せないもんだお」
(*゚ー゚)「私もそれ考えてたんだ」
( ^ω^)「いやぁ、いい作品だったお」

しぃの提案により、二人が向かったのは、地元では有名な喫茶店チェーン「コメダ」だった。
カフェテラス型の珍しい店舗で、繁華街に充分なじんでいる。
太陽光を避けたかったため、ブーンは店内の席に坐りこんだ。

注文し終えると、ブーンは喋るでもなくぼうっと周りに目をやった。
うだるような夏の、それも昼過ぎとなれば、やはり客数は多い。
いかにも部活動終わりなユニフォーム姿の学生もいれば、若者のカップルもいる。
女性の派手なメイクや服装は、しぃのそれとは対照的だった。

( ^ω^)「しぃは何もしなくてもいいからなぁ」
(*゚ー゚)「えっ? あ、わたし? 何が?」
( ^ω^)「いんや。何でもないお」  

20 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/01/06(水) 01:17:40.28 ID:zTFpxWXH0
セットが運ばれてきた。
飲み物は無難にアイスコーヒーを二つ。
スナックはカツサンドで、食後にはシロノワールを頼んでおいた。

(*゚ー゚)「おおきいねカツサンド」
( ^ω^)「これくらい全然だお」
(*゚ー゚)「そんなにお腹すいてたんだ」

ブーンとしぃは、食事をしながら他愛のない雑談をした。
学校のこと、テレビのこと、CDのこと、最近買った物のこと。
女性とすらすら会話できるようになったのも、しぃのお陰だと、ブーンは常々思っている。

食後のシロノワールも運ばれ、話のネタもだいぶ尽きたころ、しぃは決心したように、

(*゚ー゚)「あ、あのさっ…」
( ^ω^)「お?」

口元のソフトクリームをぬぐいながら、ブーンはきょとんとした顔で聞いている。

(*゚ー゚)「……兄さんのこと、って、まだ許されないことなのかな? ブーンにとって……」
( ^ω^)「………」
(*゚ー゚)「もちろん、たしかに酷いこととは思うけど…」

( ^ω^)「今はとくに、怒ってなんかないお」

21 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/01/06(水) 01:22:18.11 ID:zTFpxWXH0
(*゚ー゚)「ほんと!?」

しぃの顔が、パっと希望に充ち溢れた。しかし、とブーンは言葉を続ける。

( ^ω^)「でも、告発しようと思えばいくらでもできるんだお」
(*゚ー゚)「………」

それはつまり、しぃが逃げようとすればいくらでも告発してやるぞ、という脅しだった。
実権は僕にある。しぃの家庭を、会社を混乱させるトリガーは僕が握っているぞ。

 そしてしぃ、お前は僕から一生逃げられないんだ。
しぃにはそんなふうにも聞こえた。

黙りこくるしぃを見て、慌ててブーンは陽気な調子になって、

( ^ω^)「もちろんそんなことは全然しないと思うお! 気にしなくていいお」
(* ー )「……うん」

しぃは会計のときまで、顔をあげることはなかった。

・・
・・・
・・・・

      
22 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/01/06(水) 01:28:01.45 ID:zTFpxWXH0
それからは、買い物をしたいとブーンがいってショッピングモールに入ったが、
しぃの態度がすぐれないので、早々に解散することになった。
帰り際に、しぃが何度も謝ってくるのが、ブーンにとっては苦痛だった。

( ^ω^)「家まで送るお」
(*゚ー゚)「あ、御父さんが車出してくれるからいいよ」
( ^ω^)「そうかお……」
(*゚ー゚)「ほんとにゴメンなさい……」

ブーンは一人で帰路についた。鮮やかな夕焼けがアスファルトを染めあげている。
正面にのびる、自分の長い長い影を見つめながら、ブーンは毒づいた。

( ^ω^)「なんで謝るんだお……」

ブーンは謝ってなんかほしくなかった。謝罪も誠意もいらない。
自分がしぃに求めているのは、謝罪や魂胆からはかけ離れたところにある。

ただ、恋人になってほしい、愛を注いでほしいだけなのに。

23 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/01/06(水) 01:31:52.38 ID:zTFpxWXH0
父の車に乗り、しぃは自宅に着いた。
その間、二人の間に言葉は交わされなかった。
ただし、父――シャキンはブーンとしぃの仲を認めていないわけではない。
見方を変えれば、望んですらある。上手くやっているか、とか言いたいのは山々だ。

(*゚ー゚)「………」

(`・ω・´)「………」

そんな言葉をかけられないのは、罪悪感あるいは、
娘の感情を逆なでしたくないという一心があるからだ。


玄関を開けるなり、しぃはさっさと自分の部屋へ上がっていってしまった。
ただいまの一言もない。シャキンはリビングへ向かい、胸ポケットから煙草をまさぐった。

(´・ω・`)「あ、父さんお帰り」
(`・ω・´)y~「ただいま」

長男のショボンが先にリビングに居た。肩肘をついてテレビを見ている。
父の喫煙する姿を見、ショボンも自分の煙草に火をつけた。
紫煙がたちまち部屋中にこもった。

           
24 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/01/06(水) 01:35:50.46 ID:zTFpxWXH0
(´・ω・`)y~「しぃはうまくやってるらしいね」
(`・ω・´)y~「ん? らしいな」
(´・ω・`)y~「このまんま、内藤は黙ってくれてたらありがたいんだけど」
(`・ω・´)y~「そうだな……」

(´・ω・`)y~「ま、しぃでイイ思いをしてんだから、そろそろ感謝でもしてんじゃないかな」

ショボンは陽気に笑うと、煙草を灰皿に押しつけ、二本目を吸いだした。

(´・ω・`)y~「まゆ山家ってば、なんて素晴らしい方々なんだ、とかさ」
(`・ω・´)y~「ショボン、コトの発端はお前だってことを忘れるなよ」
(´・ω・`)y~「………」

(`・ω・´)y~「私だってお前のために、色々手を回してるんだ。あまり……」
(#´・ω・`)y~「うるっさいなァア!!?」

いきなり、ショボンは怒号を発した。

(#´・ω・`)y~「ンなこと、ずっと前から考えてるっつーの!!」
(`・ω・´)y~「………」
(#´・ω・`)y~「お前バラすぞ!? 母さんに愛人の名前と住所をさァ!?!」

そこまで言って息を整えると、ショボンは穏やかな調子になって、

(´・ω・`)y~「…僕がストレスに弱いの、知ってるでしょ」
(`・ω・´)y~「あ、ああ」

25 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/01/06(水) 01:41:06.96 ID:zTFpxWXH0
(´・ω・`)y~「まあ、後でしぃに聞いてみるさ。内藤の態度とかをさ」
(`・ω・´)「頼む」

シャキンは吸いがらを灰皿に捨て、立ち上がった。

(`・ω・´)「ま、もう三か月経った。大丈夫だろうが」

(´・ω・`)「そう願うばかりだねー」


・・・ ・・・・

そのリビングのちょうど真上の、しぃの自室にて。
しぃはベッドに突っ伏して、過去のこと、今日のこと、今後のことを考えていた。

(* ー )「……いつまで続くんだろう」

べつにブーンのことは嫌いなわけではない。優しいし、無理強いなどはしてこない。
しかし、今後……いずれは必ず身体を求めてくるだろうし、皆にカップルと持て囃される時がくる。
それがしぃにとって、今もっとも恐れていることだった。

イヤだった。自分の意思でなく、他人に操られるがままに自分の純愛が奪われるだなんて。
それにこんな関係、いつまで続くのだろう。まさか、結婚させられるまで? 死ぬまで?

(*;ー;)「そんなのやだよぅ…」

26 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/01/06(水) 01:48:02.30 ID:zTFpxWXH0
兄、ショボンのことが心底憎らしかった。何もかもの元凶だ。
父が慰謝料としてか、依頼料としてか、ともあれ大量の金をしぃに握らせたが、
そんなもの、しぃにとってはどうでもよかった。
自由が欲しい。まっとうに生きてみたい。

暗がりの部屋のなか、涙をぬぐった。
すると突然、扉が開いて兄のショボンがぬっと現れた。煙草の臭いをまとわせている。

(´・ω・`)「内藤の様子はどうだ?」

いつもの確認だった。

(* ー )「……普通」
(´・ω・`)「そうか」

ショボンはそのまま立ち去ろうとしたが、
電気もつかない部屋でしぃが涙目になっているのに興味を持ったらしい。

そのまま立ち尽くして、

(´・ω・`)「なァ……しぃ。お前だってイヤなのは分かってるさ。でもしょうがないだろ?」
(* ー )「………」

この男とは必要最低限の会話しかしたくない。

(´・ω・`)「だから父さんが金渡してくれたじゃないか。どれくらい貰ったんだ? ン?
      100万円か? いや、愛する娘のためだ。外車買えるくらいは渡したろうさ」
           
27 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/01/06(水) 01:55:46.08 ID:zTFpxWXH0
(´・ω・`)「これは″仕事″なんだって。お前だってVIPモーターズを火の車にしたくないだろ?
      えェ? まゆ山家が混乱しちゃってもいいのかお前?」
(* ー )「………」
(´・ω・`)「チッ」

ショボンは舌打ちすると、そのまま乱暴に扉を閉めて出ていった。
後に残されたのは、さめざめと泣く少女ひとりだけだった。……


7月10日。月曜日。
ブーンは朝食もしっかり摂ると、ゆっくりと家を出た。
今日は珍しく遅刻しそうにない。夏の朝の空気を充分に堪能しながら、ブーンは登校した。

('A`)「お、ブーンじゃねえか」
( ^ω^)「ドクオ、おはようだお」
('A`)「おっはー。しかしこんな時間に会うとはなぁ」

親友のドクオと合流した。野暮ったい前髪が特徴的の、気だるそうな雰囲気が特徴的だ。
活発的ではないが、しかしなかなか喧嘩っ早いところもある男だった。

( ^ω^)「今日は珍しく早起きしたんだお」
('A`)「ふぅん。俺はFF9のやり過ぎでまだねみーぜ」

ドクオは「ふぁ〜あ」と、これ見よがしにあくびをした。
       
28 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/01/06(水) 02:00:47.44 ID:zTFpxWXH0
('A`)「どんくらい行ったよ?」
( ^ω^)「ぼくはまだDISC2だお。ソウル・ゲージってのを倒したばっかだお」
('A`)「ソウル・ケージな。ハイハイ、あのフェニ尾で一撃死する奴ね」
(;^ω^)「えっマジかお!? ぼくは普通に叩きまくったお」
('A`)「やれやれな奴だなぁ。それにまだDISC2とは、笑わせる」
(;^ω^)「あんま時間がなくって」
('A`)「時間が無ぇだぁ? この土日はぶっ続けでやるのが嗜みじゃんかよ」

最近発売されたゲームの話題で盛り上がっているうち、二人は学校に着いた。
同じクラスに在籍しているため、話が途切れることはない。
教室に入っても、ブーンとドクオはぶっ続けでFF談義にふけっていた。

('A`)「俺はもう隠しボスまで行ったぜ」
( ^ω^)「マジかお! さすがそこまで言うだけあるお」
('A`)「オズマっつーんだが、なかなか強くってよぉ。とくに行動がはy(ry」
(;^ω^)「タンマタンマタンマタンマ!! ネタバレすんなお!」
('∀`)「おめーが進んでねーのがいけねーんだろー!」

(,,゚Д゚)「おや、ブーン殿はまだ全クリしていないとw」

横合いから口を挟んできたのは、友達のギコだ。
慇懃無礼な喋りが特徴的な、学校でも有数のオタクである。

('∀`)「おいおい聞いてくれよ。こいつペプシマンすら知らねーんだぜ?」
(,,゚Д゚)「wwww それは少し……w 程度が低いのでは……ブーン殿……?w」
(;^ω^)「あうあう」
          
29 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/01/06(水) 02:05:06.53 ID:zTFpxWXH0
その後もブーンは名誉を挽回しようと頑張るも、二人に軽くあしらわれてしまった。
ドクオとギコがゲームの話に夢中になっている中、ブーンはぼんやりとしぃの方を見ていた。
しぃはブーン達のことなどまったく見ておらず、女友達とはしゃいでいた。

('A`)「オズマは通常攻撃が届かねーからな。闇も吸収するし苦労するわー」
(,,゚Д゚)「おや? 精霊イベントをやっておられない……?」
('A`)「精霊……イベント……?」
(,,゚Д゚)「まさかそんなことを知らずにブーン殿を馬鹿にしていたのですかwドクオ殿?w」
(;'A`)「う、うるせー! 知ってらぁそんなもん! なぁブーン!」

( ^ω^)「………え?」
('A`)「ん? なにお前しぃのこと凝視してんだよ?」
(,,゚Д゚)「まさか……″好き″って奴ですかな?」
(;^ω^)「ちょw待ってくれおwww」
('A`)「やめとけやめとけ。なんか誰かと付き合ってるっつー噂あるしな」
(,,゚Д゚)「トホホwwww吾輩も狙っておったのですがwwww」
('∀`)「てめーにチャンスなんかぜってー来ねーっつーの!」
(;^ω^)「………」

騒ぐ二人を見ながら、ブーンは内心、笑いがこみ上げてきてどうしようもなかった。
いっそドクオ達に話してやろうか。FF9が出来なかったのは、しぃとデートしていたからだって。
どういう反応をするのかも興味があった。

たかだかゲームのことで張り合っている自分たちに、虚しくなるのでは?

( ^ω^)「(いやいや……しぃには話すなってキツく言われてるし……)」

30 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/01/06(水) 02:09:38.50 ID:zTFpxWXH0
昼放課中。

('A`)「お前さっきからしぃのコト見過ぎだってw」

(;^ω^)「え?」

('A`)「なんだ、そこまで惚れてんのか?」

(;^ω^)「えーっと、まあ……その……」

ドクオにはどう説明すればいいのか分からなかった。
妙なところで勘が鋭いし、嘘はたちまちばれてしまうだろう。

('A`)「……まっ、応援はしないけど、な」

(;^ω^)「……それは分かってるお」

('A`)「お互い叶わぬ恋愛っつーわけだ」

ドクオがしぃに好意を抱いているのは、元々ブーンは知っていた。
そのため、反応は予想できたものの、罪悪感が生まれてしまう。

(;^ω^)「うん」

頷くことしか、ブーンには出来なかった。

31 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/01/06(水) 02:19:29.14 ID:zTFpxWXH0
授業も終わり、下校中。
ドクオとギコ、それにオタク仲間のイヨウがマニアックな会話をしているなか、
ブーンだけはしぃのこと、そもそもの発端のことを考えていた。

(=゚ω゚)「やっぱりキョロちゃんのOPはハロプロには任せられないょぅ」
('A`)「ばっかてめー、ハレーションサマーの名曲ぶりナメんなよ?」
(,,゚Д゚)「ぬしらなに児童アニメについて本気になっているでござるか?w」
('A`)「あん?」

( ^ω^)「………」

そもそもの発端――――

・・ ・・・

2000年、3月31日。
その日はドクオたちと映画を観る約束だった。
映画のタイトルは『 Loss Of Memory 』という、古典小説の初の映像化作品だった。
しかし、ブーンはただ一人、その映画を鑑賞できなかったのだ。

( ^ω^)「!?」

人通りの少ない道を歩いているとき、
後ろから急な速度で近付いてきた車に跳ね飛ばされたのだった。

              
32 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/01/06(水) 02:28:58.38 ID:zTFpxWXH0
(;^ω^)「う、うぅ……」

宙に舞いあげられ、そのままアスファルトの地面に叩きつけられた。
右脚が異常に痛んだ上、身体中が血まみれだった。
加害者は、一旦は停車したものの、結局ブーンを助けることなく、そのまま逃げてしまった。

つまり、ひき逃げに遭ったのだ。


(; ω )「おっ……おっ……痛いお……」

人通りが少ないので、目撃者など居るはずもなく、助けにきてくれる人もなかなか来なかった。
増していく激痛の中、ブーンは気を失いかけていた、そのとき、


 (*゚ー゚)「……内…藤くん? だ、大丈夫?」

クラスメイトのまゆ山しぃが通りかかったのだ。
ブーンにはそのとき、しぃが天使のように思えてならなかった。

(; ω )「ひ、ひき逃げだお……助けてくれお……」
(*;゚ー゚)「ひき逃げ!? 待ってね、救急車と警察呼ぶから」

ブーンは安堵した。これでこの孤独から解消された、と。
だが、ことがややこしくなったのはこれからだった。

33 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/01/06(水) 02:39:24.16 ID:zTFpxWXH0
パトカーよりも救急車よりも先に現れた車両は、加害者のプジョーだった。
ブーンは憎しみの目で、そしてしぃは驚きの目でそのプジョーから降りる人物を凝視した。
よれた服装に傷だらけの顔の、落ち着かない男を。


(;´・ω・`)「あっあっ……あっ……」
(; ω )「こいつだお! こいつがひき逃げしたんだお!」

(*;゚ー゚)「兄さん……が、やったの……?」

(;^ω^)「えっ!?」

ブーンは驚愕した。無理もない。天使と悪魔に意外な血のつながりがあったのだ。
おどろいている間に、後部座席から恰幅のよい中年の男性が現れた。

(`・ω・´)「しぃ! どうしてお前がここに!?」
(*;゚ー゚)「父さん……。あ、あたし……内藤君を見つけて……」
(;`・ω・´)「まさか通報したのか!? 警察に″ひき逃げがあった″って」
(*;゚ー゚)「え、ええ……」

(;´・ω・`)「〜〜〜!!!」

(;`・ω・´)「ぐっ……! なんてことを……!」
(;^ω^)「???」

展開が読めなく、ブーンは痛みも忘れて状況を整理しようとしていた。

35 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/01/06(水) 02:43:36.69 ID:zTFpxWXH0
場が迷走する中、救急車とパトカーのサイレンが鳴り響いた。

(;´・ω・`)「うぁああああ!!?!」

加害者はそのサイレンを聞くや否や、車に飛び乗って別の道から逃げだした。

(#`・ω・´)「あのバカ息子が!!」

親父が怒りをあらわにすると、急にブーンを見下した。

(;`・ω・´)「悪いが君には、今回のことを黙って頂きたい」
(;^ω^)「――は? 何言ってんだお」
(*;゚ー゚)「そうよ父さん! もうどうしようもないわ!」

(#`・ω・´)「うるさいッ!!!」

権力者は恫喝した。中学生二人を震え上がらせると、いきなり猫撫で声になって、

(;`・ω・´)「内藤君と言ったね? 君にはたっぷり謝罪をする。慰謝料をたんまりな。
        だから警察には黙っていてほしい。具体的には、プジョーがはねたのでなく、
        ″白のセダンがはねた″とでも警察には言ってほしい」
(*;゚ー゚)「何言ってんのよ父さん……!」
(#`・ω・´)「タイヤ会社の息子がひき逃げして許されると思うのか!?」

(;^ω^)「あうあう……」

サイレンは着実に現場に近づいてきた。決断する時間はあと少ししかない。

36 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/01/06(水) 02:47:22.57 ID:zTFpxWXH0
(;^ω^)「………」

(#`・ω・´)「さあ! 分かってくれ内藤君! 君が真実を告げれば、
        君を助けて″くれた″しぃが路頭に迷うことになるんだぞ!?」
(*;゚ー゚)「………!」

(;^ω^)「そんな……」

真実を告げれば、天使は不幸に見舞われてしまう。

(;`・ω・´)「私はこの場から去らねばな。……では内藤君。″頼んだ″よ?」
(;^ω^)「……う、うぅ」

(*;゚ー゚)「そんな……こんなことって……」

しぃは地面にへたり込んだ。ブーンの意識はふたたび薄れはじめる。

救急隊が駆け付けた頃には、ブーンは暗闇の中に落とされていった。……


・・
・・・

             
37 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/01/06(水) 02:49:38.76 ID:zTFpxWXH0
(,,;゚Д゚)「ゴルァゴルァゴルァ! すまんでござるよドクオ殿ぉ!」
('A`)「ったく……。キョロちゃん見くびんなよ」
(=゚ω゚)「まったく二人ともバカだょぅ」

(;^ω^)「何やってんだお」

それから、ブーンは公安委員会を騙すことにした。
ありもしない車両を加害者に仕立て上げ、まゆ山家を護ることにしたのだった。

('A`)「あんなアニメそうそうねーぜ? 児童アニメが社会風刺だなんてよ」
(=゚ω゚)「あと音楽もすばらしぃょぅ。リコーダーが癒されるょぅ」
('A`)「まったくだな。ギコもエヴァばっか見てねーでキョロちゃんを見ろよ」
(,,゚Д゚)「エ、えヴァは至高のアニメだからこれしか見ないでござるw」

( ^ω^)「お、じゃあぼくはこれで」

('A`)「おう。明日までには全クリしとけよー」
(;^ω^)「ちょwwwww無茶ぶりすんなおwww」
(,,゚Д゚)「いやいやいや。むしろブーン殿なら出来ないはずがないでござるよ」
(=゚ω゚)「また明日だょぅ」


ブーンは手を振りながら、マンションのエントランスに入っていった。

38 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/01/06(水) 02:53:26.09 ID:zTFpxWXH0
( ^ω^)「ただいまー」
J( 'ー`)し「おかえりなさい」

ブーンは自室に入って、プレイステーションを起動すると、やりかけのFF9を楽しみだした。
DISC3に入った辺りで休憩にと、操作を止めてベッドに寝転がった。

( ^ω^)「ふぅ……」

今日はどうやら警察から電話はかかって来ないらしい。
真犯人追及のために日夜頑張っている警察からの電話は、罪悪感が募って苦しかった。

ひき逃げ事件は処理が面倒だった。
怪我は脚の骨折以外に大したところはなく、その骨折も単純骨折らしく完治もはやかった。
その後の実況見分、事情聴取はボロを出さないかと冷や冷やしたが、なんとか押しとおせた。

まゆ山家からは、慰謝料治療費として多額の金銭を受け取ったものの、
親には言うことも出来ず、ほとんど手付かずで残っている。

そして、、、しぃが宛がわれたのだ。

          
39 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/01/06(水) 02:58:45.90 ID:zTFpxWXH0
はじめはどうしていいか分からなかった。
誰かに他言しないかどうかと監視しているのかとも思ったが、しぃの様子からそうでもないらしい。

しぃは″捧げられた″のだ。同級生で、尚且つ通報者というのが理由らしい。
こんな美少女を……。夢のような展開だが、戸惑いは隠せない、しかしすぐに、

( ^ω^)「これってエロゲ的展開じゃね?」

と開き直り、食事や遊びに連れ回しはじめたのだった。


加害者のまゆ山ショボンとは、あの事故以来、いちども会っていない。
ショボンは19歳の大学生で、免許は取ったばかりだった。
あんな奴は免許はく奪になればいいと思っているが、まゆ山家の交渉に乗った以上、
ブーンにそんなことを言う権利はない。

たしかに、大会社トヨタの下請け企業の一人息子が
ひき逃げを起したともなれば、事業は停滞せざるを得ないだろう。
こんな裏工作をした以上、後戻りも許されない。隠蔽し続けるのみだ。

まだ、あのショボンが逃げることなく
自分から警察と救急車を呼べば、何とかなっていたのではないだろうか。
未成年だし、免停は逃れないだろうが懲役などは食らわなかったのでは。
       
40 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/01/06(水) 03:01:01.98 ID:zTFpxWXH0
( ^ω^)「………」

ブーンは時折、しぃを解放しなければと考えている。
しぃは何も悪くないのだ。自分を助けようと通報をしてくれた、労わってくれた。
しかし、結果は隠蔽劇の被害者なのだ。

天使のような少女を救ってやりたいと思うが、反面
天使を自分だけのものにしたいという欲求もあった。

いつかはこの関係も絶たなければならないのだろう。
けれどブーンはずるずると引き延ばしていた。きっとこれからもそうだ。

( ^ω^)「………」

自分のことを嫌いになるのに、そう時間はかからなかった。

・・ ・・・

しぃがその事故現場に遭遇したのは、まったくの偶然だった。
その日、2000年の3月31日は、しぃの熱中していたダンスグループの解散日で、
どこかへ行くアテもなかったが、しかし街中を闊歩せずにはいられない。
そんな道中でたまたま、血まみれで倒れている同級生を発見したにすぎなかった。

41 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/01/06(水) 03:06:39.80 ID:zTFpxWXH0
(*゚ー゚)「……内…藤くん? だ、大丈夫?」

あまり会話をしたことのない男子だったが、とうぜん見過ごすわけにもいかない。
ひき逃げの被害に遭ったと聞いたときは、一緒に憤慨し、力強い口調で通報したのだった。

しぃにとって、最悪の展開になったのは、兄のプジョーが突然やってきてからだ。


(;´・ω・`)「あっあっ……あっ……」
(; ω )「こいつだお! こいつがひき逃げしたんだお!」

(*;゚ー゚)「兄さん……が、やったの……?」

(;^ω^)「えっ!?」

信じられない。兄が同級生を跳ね飛ばしたのか。
しぃは今後のことを想像した。おそらく兄は免停になるだろう。
だがそんな罰は当然、甘んじて受けねばならない。それが報いなのだから。

兄は錯乱状態だった。昔から、兄は急なストレスに弱く、混乱をたびたび起こしていた。
喧嘩帰りのような身なりで、目の焦点は合っていない。

さらに、後部座席からは父のシャキンが焦った顔で飛び出してきた。

43 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/01/06(水) 03:11:53.89 ID:zTFpxWXH0
(`・ω・´)「しぃ! どうしてお前がここに!?」
(*;゚ー゚)「父さん……。あ、あたし……内藤君を見つけて……」
(;`・ω・´)「まさか通報したのか!? 警察に″ひき逃げがあった″って」
(*;゚ー゚)「え、ええ……」

(;´・ω・`)「〜〜〜!!!」

兄は声にならない叫びをあげ、逃走してしまった。
サイレンが着実に近づいてくる、とつぜんの修羅場。

そして父は、しぃが予想したとおりに「口封じ」をしてきた。



自分の娘を捧げて。



・・
・・・
・・・・



           
44 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/01/06(水) 03:16:46.43 ID:zTFpxWXH0
  

(*゚ー゚)「……あのとき、私は……」

見過ごせばよかったのだろうか――? それが、最善の選択だったのか?
とぼとぼと帰路を歩きながら、過去を反芻する。

いや、そんなことは倫理的にも出来やしない。自分が発見し、通報したことは間違ってないはず。

じゃあ、そもそも発見しなければ……? 別の人が通報していれば……?

そうしたら、きっと兄は捕まっていただろう。ひき逃げ犯として罰を受けていたに違いない。
家庭も混乱し、VIPモーターズは信用を失ってしまったはずだ。
父が兄に犯罪だけは犯すなと、いつもいつも口を酸っぱく告げていたのを思い出す。

じゃあこうなったのは、最善だったとでもいうのか?
違う。そもそもひき逃げなんか起こした兄がいけないのだ。
そもそも、家がタイヤ会社でさえなければ……。

(*゚ー゚)「………」

虚しさが胸のうちを去来する。
善悪の指針というのは、どうしてこうも相対的なのだろう。
なぜ兄は今も悠々とプジョーを転がしているんだ。
どうして私ばっかりにすべてを押しつけてくるんだ、どうして。

45 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/01/06(水) 03:20:48.01 ID:zTFpxWXH0
(*゚ー゚)「……こんな家庭に生まれたくなかったな……」

下す結論は、毎回そこに行き着いた。
ため息をつきながら、しぃは屋敷の門を開けた。……


・・ ・・・

ショボンはそのとき、別段いそいでいたわけでもなかった。
漫画喫茶にでも行こうと、愛車を気分よく転がしていただけだった。
その道はもともと人通りも少ないし、狭い道を高スピードで走るスリルを得るのには
ぴったりな場所だった。

そしてその日、2000年3月31日の正午前は、内藤という少年がのんびりと歩いていたのだ。

(´・ω・`)「――うわ!?」

気づいたときには、目の前の少年は宙を舞っていた。
ボンネットから伝わる衝撃は、縁石に乗り上げたときのそれとは比にならない。
ショボンは一拍置いてから、自分が事故を起こしたのだと悟った。


(;´・ω・`)「………」

少年は呻いているが、立ち上がる様子はなかった。
しかしショボンの脳裏にあったのは、処分という二文字だけだった。
刑事処分、民事処分、行政処分。刑事処分、民事処分、行政処分。
                            
46 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/01/06(水) 03:28:48.26 ID:zTFpxWXH0


(;´・ω・`)「過失……相殺……」

そんなものが存在しないことなど、口にした瞬間でわかっていた。
そしてまた脳裏に浮かぶ、刑事処分、民事処分、行政処分の文字。

(;´・ω・`)「………」

刑事処分、民事処分、行政処分。刑事処分、民事処分、行政処分。
民事処分、刑事処分、行政処分。民事処分、行政処分、刑事処分。
刑事……

(;´・ω・`)「うわぁああァァアッ!?!」

ショボンはたやすくアクセルを踏んだ。
安易な逃げ道に入り込み、責任から遠ざかろうとしたのだった。



(`・ω・´)「……それで、どうしてお前しかここに居ないんだ」

まゆ山邸のリビングに、二人の男が青ざめた顔をして喋りあっていた。

(;´・ω・`)「………え」
(#`・ω・´)「お前は被害者を放置して帰ってきたのかァ!?」

シャキンは息子を躊躇なく殴り飛ばし、倒れたあともさらに蹴りつけた。

47 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/01/06(水) 03:31:46.83 ID:zTFpxWXH0

(;´・ω・`)「ぅああ……うぁアア……!」
(#`・ω・´)「通報されたらどうすんだぁ!! うちは終わりだぞ……このバカ野郎が!」
(´;ω;`)「ぅうう……! ぅううぅ……! ぁあうう……!」

さんざん暴力をふるったのちに、シャキンはショボンの首根っこを攫んで家を飛び出した。

(;`・ω・´)「誰かに通報される前に抱えるぞ。何としても隠蔽するんだ!」
(´;ω;`)「痛いよォ……なんで殴るんだよォ……!」

泣きながらショボンは必死に現場へと急行した。
往来のすべての人間が、自分を馬鹿にしているような気分に陥る。
ショボンはこのとき、自分の責任など無関係に憤りを募らせていた。

(´ ω `)「ここ……」
(;`・ω・´)「おい! 隣の看病してるのは……しぃじゃないのか!?」
(;´・ω・`)「えっ……?」

しぃもこちらに気づいたらしく、その顔は驚きを隠せていない。


そのままプジョーは、救急車より一足早く、現場に到達したのだった。……

  
               
48 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/01/06(水) 03:35:29.68 ID:zTFpxWXH0
(´・ω・`)「おい、しぃ。ただいまも言えないのかよ」

ショボンは帰宅したばかりの妹をとがめた。
最近は自分と顔を合わせようともせず、言葉さえろくにかわさない。
事情はもちろん、ショボンも充分に理解している。
けれども自分をないがしろにする不届き者は許せない。ましてや自分より立場の低いものが。

(*゚ー゚)「………」

(´・ω・`)「た・だ・い・ま・を・言・え」

(*゚ー゚)「……ただいま」
(´・ω・`)「いい加減にしろって。その態度」

ショボンは煙草に火をつけると、見下げるような眼つきになって、

(´・ω・`)y~「お前の心情なんか理解してるって。どうして理不尽なのー、とかさ。
      でもさ、社会勉強ってことで妥協しとけよな。妥協をさァ」

(* ー )「………」

(* ー )「なんでこんなのが、楽してるだか……」ボソリ

(´・ω・`)y~「は?」

     
49 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/01/06(水) 03:38:03.06 ID:zTFpxWXH0
(´・ω・`)y~「なんでこんなのが、楽にしてるんだ……だって? はは、しょうがないだろ」

ショボンは笑い飛ばすと、俯き加減の妹に説教するような口ぶりになった。

(´・ω・`)y~「まッ人生なんてどう転ぶか分からんからね。それに良い行動をすれば
       良い結果が返ってくるはず……そんなわけないだろ? そういうもんなんだよ」
(* ー )「………」

(´・ω・`)y~「そういうこった。俺だって感謝してないわけないんだから、我慢してくれよ」
(* ー )「もういい」

しぃは吐き捨てるように呟くと、階段をさっと上がっていってしまった。

(´・ω・`)y~「チッ……」

舌打ちを送ると、ショボンは灰皿に煙草を押しつけた。……








                  (Part1 終)


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