( ^ω^)あしたの空のようです

11 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/03/10(水) 03:18:14.40 ID:SNNJXNqW0


                    






            パート4   Confution,









      
12 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/03/10(水) 03:19:35.40 ID:SNNJXNqW0
八年ぶりの再会がラウンジの喫茶店でというのは、はたして何の因果なのであろう。

空振りに終わったラウンジの地でしぃが働いているのは、なんとなく非現実的にさえ感じた。
とはいえ、勤め先が喫茶店というのは予想通りではあった。
あの当時から、しぃは将来の夢に喫茶店のウェイトレスを挙げていたのだから。

だが、そんな雑念は、目を合わせた瞬間に、たちまち四散していった。
ある程度は予想ついていたのだが、やはりしぃは変わってしまった。
当時にはなかった眼力に、ブーンは圧されていた。

(*゚ー゚)「……久し振り」
(;^ω^)「あ、う……久し振り……だお」

嬉しさよりも畏怖の念がこみ上げてくる。
同時に、八年来の申し訳なさもぶり返してきた。
この対面している女性の輝かしい時代を、翻弄し続けたのは紛れもない自分自身なのだ。

謝らなくては。とっさにそう判断すると、いきなり立ち上がって頭を下げた。

(;^ω^)「迷惑かけてごめんだったお! ずっと、謝りたかったんだお!!」

(*゚ー゚)「えっ」

しぃは大きな目をさらにおおきく見開いてから、

(*゚ー゚)「ああ……うん」               

13 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/03/10(水) 03:22:23.34 ID:SNNJXNqW0
しぃはブーンに坐りなおすよう促すと、自分も隣の席に腰かけて、

(*゚ー゚)「聞いてたから……」

( ^ω^)「あ、ぼくの話を……」

(*゚ー゚)「うん」

間近で見るしぃは、確かにけばけばしいが、昔の面影もちらほらとは残っていた。
しかし、言動の端々からは苦労の影が窺えるし、暗い響きも耳にまとわって離れない。

(;^ω^)「そ、そうかお……」

(*゚ー゚)「八年前のことを、さ」

その言葉で、ふと目の前の女性の印象が、さらに変わったような気がしてきた。
八年、その歳月で彼女はこうまで変貌を遂げたのだ。
不謹慎ながらも、その歩みに興味さえ湧いてきてしまう。

          
14 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/03/10(水) 03:27:40.58 ID:SNNJXNqW0
しぃとブーンは、そこから黙りこくってしまった。
ブーンはどうすればいいのか判断できなかったが、さりとてなにかを言う気にもなれない。

吸いさした煙草をしばらく、ぼうっと眺めていたのだが、そのとき、
しぃが突然口を開いて、過去話を切りだしていった。

ブーンは慌てて姿勢を正すと、煙草の火を
消して煙も払ったが、しかし、しぃの方が喫煙をし始めた。
勤務中なのにいいのだろうか、とブーンはふと思ったけれども、
さびれた喫茶店ではとくに気にやむことでもないことなのであろうか。

そういえば、昔つとめたことのある飲食店では、客数が0になれば喫煙のし放題だった。

(*゚ー゚)「今度は私のする番、だね……」

何を? と言いさしたが、すぐに過去話のことだと感づいた。

自分のだらだらした独白に対応し、しぃ本人から切り出すということは、
多少は僕のことを認めてくれたり、あるいは許してくれたりしているのだろうか。
そんな雑念がぐるぐると渦巻いていったが、しぃの淡々とした口調に
聞き入っているうちに、そんな考えはどこかへと吹っ飛んでいってしまった。

真剣に、彼女の昔話を聞いていった。切り出しは、家出した、まさにその場面からだった。……
                        
15 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/03/10(水) 03:28:54.10 ID:SNNJXNqW0









          2000年、ミレニアムの晩夏頃のこと。







           
16 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/03/10(水) 03:31:12.44 ID:SNNJXNqW0

ラウンジの旅行パンフレットを適当に燃やし、これ見よがしに自室の
ゴミ箱に放っておいたのは、なにより追跡を欺くためであった。

間を置けば、そんな罠はたちまち看破されるに違いないが、
しかし目くらましとして使うには丁度よい。父親がマンマと引っかかるとも思えないが、
といって他に推理材料などないのだから、結局はそのパンフレットに頼るだろう。

念のためにアルバムから写真をすべて抜き取って焼却処分した。
当主のシャキンは写真嫌いなので、まゆ山家自体のアルバムというものは存在しない。
人探しの主力となる写真類は、とりあえず実家からは消え去った。

友人が警察に何かしらの写真の提供でもしない限りは、だが。

……友達。彼女らには簡単な説明をメールに送るべきだろうか。
物わかりのいい、一番の友達のミセリには事情だけを語っておいた。
ほとぼりが冷めたら再会しよう。だから、それまでは何も動かないでほしい、と。

準備が整うと、前もって手に入れておいた金銭とバッグを手に、しぃは夏の夜を抜け出した。

17 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/03/10(水) 03:32:34.87 ID:SNNJXNqW0

電車を乗り継いで、日の沈む頃に、しぃは他県の繁華街の雑踏へ入りこんだ。

ネオンのきらめくその街では、
家出少女など珍しい存在ではないので、すぐに自分の立場は確立できた。
週末のバーガーショップには水商売の輩……いわゆる「女衒」が
よく偵察をしに来てい、たまたま彼らの目についただけの話なのだが。

例の、父から受け取っていた金銭のことは伏せて、
彼らの脅迫めいた面接を受けると、翌日にはドレスを着させられていた。

(*゚ー゚)「私みたいな境遇のコって沢山いるんですか?」

( ・∀・)y-~「けっこー居るよォ。このご時世、家出なんか珍しくないさ」

面接官の一人だった、スカウトの男が受け答えをしてくれた。

(*゚ー゚)「へえ……」

( ・∀・)y-~「で。そういう娘を救済し、かつお客様を満足させるシステムなのさ」

( ・∀・)「しぃちゃん……だっけね。中学生はちょっと珍しいけど、ま、なんとかなるさ」

勤め先のキャバレーは、「コンフュージョン」という名であった。

18 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/03/10(水) 03:34:25.46 ID:SNNJXNqW0
はじめての男は、このモララーだった。マスターの公認で、色気を出させるためとも言っていた。
いずれ対応しなくてはならない「お客様」相手との練習を兼ねて、なのだが、
しぃは彼に少なからず惹かれてはいた。
学生では明らかに出せないアウトローの空気に、心を駆り立てられた。

性体験は女性を変化させる、とはよく聞く話だけれども、しぃにその実感はあまりなかった。

たしかに自分は明らかに昔とは違うが、
それはおそらく、新体験だった水商売が、ようやく板についてきたからだろう。

だいたいの客層は実父のシャキンに似たような輩なので、喜ばせ方や、あしらいなどは
生まれたときから身についている。そんな一面も、売上に貢献したのだった。


(*゚∀゚)「ラビィはホント、サマになってきたよなー」
(*゚ー゚)「そんなことないよー、最近指名ぜんぜんないもん」

源氏名は兎、ラビットから拝借して「ラビィ」にした。
本名と響きが多少似ているのは、反応しやすいためにと先輩がアドバイスしてくれたためだ。
兎。逃亡を繰り返す兎。ぜったいに狼には掴まってやんないという意思を込めていた。

19 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/03/10(水) 03:36:01.34 ID:SNNJXNqW0
( ・∀・)「スゲぇ伸びじゃん、しぃ。お前、お水の才能あるよ」

モララーは事後によく、しぃの仕事ぶりを褒めていた。

(*゚ー゚)「えへへ、モララーに育てられてホントよかった」

( ・∀・)「ああ……俺も鼻が高いよ、しぃ、お前は俺の宝モンさ」

・・ ・・・

「コンフュージョン」の人気ホステスとして
メキメキ頭角を現すとまではいかないが、上位には食い込みもしだしてきた頃だった。
季節は冬で、本来なら修学旅行の計画に胸ときめかせているはずの頃だった。
ドクオとブーンの絶縁に、ようやくクラスメイトが慣れてきた頃だった。

しぃは、モララーたちの独立につれての、引き抜きにあった。

正確にいえば、モララー達が慕っている副店長、
その派閥が独立して別店舗に行くことになるのだが、それ自体は別にやましいことではない。

モララー直々からその話を聞かされたときは、歓喜したものだった。

          
20 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/03/10(水) 03:38:16.62 ID:SNNJXNqW0
(*゚ー゚)「ホントにぃ!?」

( ・∀・)「ああ、いずれ店長からも話が出るだろうけど、オトジャさんが
      まじで店作るんだよ。当然、引き抜きするからには保証金だって弾むさ」

二つ返事でOKを出すと、しぃはさっそくその新店舗で働きはじめた。
祝いの花束の、強烈な香りの中での接客は自分を上等なオンナにしてくれた。

しかし、そこでの幸せはそう長くは続かなかった。
一年もたたぬ頃に、突風のような事件が新店舗「リグレット」を巻きこもうとしたのだった。

発端はモララーの、雀荘でのイカサマであった。
店側とグルで「通し」や「ガン牌」を扱って、小銭を稼いでいたのだが、
サマが発覚したときの相手が、不運にも別系列の暴力団の構成員であった。

店に構成員がいずれ襲撃してくるであろう。
イカサマ事件の発生からほとんど経たない内だったが、しぃはこの店から逃げるべきだと直感した。

上客のマスコミ関係者に、店を移る手立てがほしいことを仄めかし、新天地の受け入れを待った。

(*゚ー゚)「ニダーさん……あたし、この店を出たいんだけど……」

<丶`∀´>「どうしたニカ?」
                    
21 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/03/10(水) 03:40:38.00 ID:SNNJXNqW0
事情を包み隠さずに話した。
別系列の暴力団が襲撃にくるかも知れない。
その際、捕まったとしたら、きっと酷い状況が訪れるに違いない、とも。


<丶`∀´>「わかったニダ。そういうことなら、ウリは顔が広いからなんとかなるニダ」

(*゚ー゚)「ほんと!? ニダーさん」

<丶`∀´>「ヤクザじゃない顔なじみがキャバやってるニダ。そこに言えば、なんとかしてやるニダ」

(*゚ー゚)「ありがとうございますぅ。 ふふ、ちゃんとその店に来てくださいね?」


<丶`∀´>「当然ニダ」


部屋から必要な荷物だけまとめて、
相変わらず証拠だけは隠滅し、しぃは同居人のモララーの元から姿を消した。

しぃの予感は当たった。ニダーの紹介した新たなキャバレー「ムーンライト」に採用された
その当日に、「リグレット」は構成員からの躊躇ない暴力を受けたのだった。

          
22 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/03/10(水) 03:42:23.41 ID:SNNJXNqW0
しかし、しぃはその余波も食らうことなく、穏便に水商売を続けられた。
気がかりといえば、同居人のモララーの安否くらいなものだが、
発端であるイカサマの実行人である以上、上からの制裁も食らったのだろう。

風の噂によれば、「リグレット」は閉鎖を余儀なくされ、
大本の「コンフュージョン」の支配人は土下座を何度も繰り返したという。

モララーはどうしたのだろう。
闇社会の、さらなる闇へ葬られたのか。それとも……。

鉄火場でイカサマをしたモララーは、罰を受けて当然だろう。
だからしぃは逃げる際に、妙な情けなどかけなかった。
好意は持っていたが、ともに地獄に引き摺りこまれるのは勘弁だった。
純愛を信じて彼の元に留まっていたら、いまごろどうなっていたことか。


(*゚ー゚)「モララー……そういうのはよくないんじゃないの?」

しぃは雀荘でのインチキをたびたび咎めていたが、彼は気にする様子もなく、

( ・∀・)「大丈夫だって。大体お前のそのクーカイ、そのイカサマで買えたもんだぜ」
(*゚ー゚)「………」

( ・∀・)「フン、ちょっとしたバイトさ。スカウトだけじゃ、スーツは着こなせないしよ」

23 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/03/10(水) 03:43:47.68 ID:SNNJXNqW0
(*゚ー゚)「バカな人……」

そうは言ってみるものの、人を物のように切り捨てた事実は、たしかに胸に響いた。
家出の比ではなかった。
いってみれば、あんなもの、厄介者が勝手に飛び出しただけなのだ。
私の失踪で誰かが悲しむとしても、それは感情の問題だ。

しかし、今回のは違う。確実な犠牲者が、たしかに居るのだから……。

いや、切り捨てたんじゃない。……わたしは悪くない。悪くないんだ。

・・ ・・・

从 ゚∀从「ん? どうしたしぃ? なんか思い出したん?」

嬢たちの、昔の男についてのトークを聞かされるたびに、様々な思念がふつふつと浮かびあがってくる。
しぃは目を見開いて、「んー?」と声に出すと、

(*゚ー゚)「えー、なんでもないよぉ?」

从 ゚∀从「隠すなって。お前だって、ストーカーの一匹くらいやられたろー」

(*゚ー゚)「んー、まだないなぁー」

     
24 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/03/10(水) 03:45:47.56 ID:SNNJXNqW0
危険な橋を幾つも渡りながら築き上げた地位なだけあってか、そこでの仕事は楽しむことができた。
アルコールにも段々慣れてきたし、いつの間にか未成年だと疑われることも少なくなった。
新天地でも貢いでくれる上客は確保でき、ニダーが来ないことにも腹を立てない。

それから三年ほど経った頃であろうか。
もう十八歳にもなり、法的にも風俗業に働く年齢を迎えた。

高校生活を送れなかったという悲観もとうに捨て去って、外見も完璧に飾りつけられる。
ただしそれでも、心のどこかではグローリーホールめいた穴がぽっかり空いていて、
どれだけブランド物を着こなしても、どれだけ上等な酒を開けさせても、なぜだか虚無感が押し寄せてくる。

人や物を置き去って、見限って、それでようやく手に入れた栄光だというのに。
その栄光に、捨てたモノやヒトが絡みついてきて離れない。
未練なのだろうか。
目覚めが悪くなるほどではないにしろ、時折、罪悪に殺されかける夢を見てしまう。

そんなある日のことだった。
証券会社の社長と店外デートをし、
たんまりアクセサリーを貰ってから、
家に帰ろうと大都市の交差点をぼんやり歩いているとき、

向こうからやってくる男の顔が、見覚えのあるものだと気がついた。


それは擦り切れたような容姿に成り下がった、モララーであった。

25 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/03/10(水) 03:47:11.93 ID:SNNJXNqW0
(*゚ー゚)「あ……」
( ・∀゜)「・・・・・・」
(*;゚ー゚)「う……」

斜陽が完全に沈みかけるその間際に、スクランブル交差点で彼らは遭遇したのだった。
モララーの左目の眼球は突出し、不気味な容貌になってい、通行人も避けるように往来していた。



( ・∀゜)「あはは、馴染みある顔がそこに居るナア。やっと運命の人に会えましたヨ」

彼が生きていて、それも日の浴びる権利を剥奪されていないことに驚いたが、
すぐに、その口調に滲む狂気性に震えてしまった。

(*;゚ー゚)「モララー……」

( ・∀゜)「覚えててくれたの? 俺を捨てた人間なのに、覚えててくれてるんだね」

(*;゚ー゚)「………」

( ・∀゜)「俺は、覚えてたよ。お前がいなくて、絶望した。そのあとは、地獄行きサ」

26 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/03/10(水) 03:48:05.01 ID:SNNJXNqW0


( ・∀゜)「ずっとずっと、覚えてた。忘れるもんかってな。あの女は忘れてやらないさ」

( ・∀゜)「とんでもない借金背負わされて、密航船にぶち込まれ、それでもかえってきまシタ」

( ・∀゜)「しぃって女を、どうしても刺し殺したくってね」

( ・∀゜)「なぜなら、おれを裏切ったからだね」


(*;゚ー゚)「(裏切った……何言ってるの……? あなたのヘマに巻き込まれたくなかっただけ……)」

横断信号が明滅をしだした。じきに自動車が走るというのに、モララーには動じる気配がない。

しぃは、周りの好奇な視線にも耐えかねて、モララーを避けるように交差点を渡り歩いた。
モララーの目線はねばっこく、しぃの後姿を捕えていく。



( ・∀゜)「ォおおおーい! しぃサァアン!!?」

喧噪も無視して、モララーはそのとき去りゆくしぃに大声を張り上げた。

( ・∀゜)「今はナイフがないから刺し殺せませんけどねェッ!!」

27 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/03/10(水) 03:49:24.24 ID:SNNJXNqW0


( ・∀゜)「地位も権力も取り戻したらァっもっかい君の元に戻ってくるからな!?」

(*;゚ー゚)「………!」

しぃはもう脇目もふらず、全力でモララーの声から逃れようとした。
ヒールを履いていてとても走りづらい。何度もこけそうになりながら、それでも逃げ続けた。


( ・∀゜)「なっつかしィなあ! 初めてしぃと夜を迎えたあの日のことがぁ!」

( ・∀゜)「やったあと、震えながら煙草吸ってたねえ! ウブで可愛かったよゥ!」

( ・∀゜)「あれは演技だったのォオ!? 涙も演技なのかなぁァ」

( ・∀゜)「酷い女だねぇえ生粋の悪女だよホント。まゆ山しぃサア――ン……」


声はどこまでも飛んできて、高笑いはいつまでも耳にこびりついた。
生まれてはじめての、命の危機感というものを感じた。
怖い、助けて。この町からも、逃げなくっちゃ。

 だれか 助けて ……


          
28 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/03/10(水) 03:50:28.34 ID:SNNJXNqW0
しぃはすぐに円満退社という形で、「ムーンライト」から抜け出すと、
やはり上客の口利きによって、新天地での水商売に従事しだした。

しかしいくら逃げおおせても、安息の地など見つからなかった。
夜逃げをし、軽い荷物を小脇に抱えては、どこかのキャバレーにへばりつく。
そんな生活をいくら続ければいいのだろう。ああ、喫茶店にでもいって、
何らかの休息がほしい。あの、時の止まったような感覚が、わたし
には必要なのだ。いつも夜明けの太陽を見上げては涙がこみ上げてくる。
いつ瓦解するか分からない生活から、もう
抜けだしたい。ゆったりした時がほしい。

・・ ・・
・・ ・・・
・・ ・・・・
・・ ・・・・・




           
29 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/03/10(水) 03:51:38.48 ID:SNNJXNqW0


二十歳を過ぎた。もう、法律は自分を裁けない。正式な成人となった。
色んな地を転々としながら、モララーの幻影や、過去のしがらみを拭い去ろうとしたが、
それもかなわず、時折だれかに追われているような寒気が襲ってくる。

しかし、ついにしぃは再会してしまった。
その捨てた過去のしがらみに、幼少時代からの知り合いと思わぬところで再会してしまった。

ペニサスであった。彼女もまた、お水の世界に生きていた。容貌は多少は
派手目になったけれど、姐御肌的な性格は変わっていない。



彼女との再会が、しぃの運命をふたたび揺り動かしたのだった。……




                        (Confution 終)


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