( ^ω^)あしたの空のようです

4 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/06/04(金) 00:01:23 ID:eohI1jZ.0

                    






            パート5   Love U Passion,

6 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/06/04(金) 00:06:51 ID:eohI1jZ.0

伊藤ペニサスとふたたび出会ったのは、
しぃが新成人となり、ペニサスの年が25に達した、2006年の春分のころであった。
ラウンジから程遠くない地のキャバレーが、再会の場所になった。

顔を合わせたその夜に、しぃは早速ペニサスに呼び出しをくらった。
店で会ったときは、まるで亡霊に遭遇したような顔をしていたペニサスが、
夜には毅然とした表情をしてい、しぃは殴られるかもと身を屈めた。

実際、ペニサスはそんな衝動に駆られたらしい。しかし、苦渋の顔をすると、
大きく息をついて、しぃと目を合わせると、

('、`*川「……こんなとこで、会うなんてね」

哀しげにつぶやいてみせた。しぃも静かに頷く。

(*゚ー゚)「……ですね」

しぃとしても、なぜこんなところで会うんだ、という強い疑問があった。
ペニサスもそれを感じたのか、なかなか口火を切ろうとしない。

7 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/06/04(金) 00:08:47 ID:eohI1jZ.0
深夜のハンバーガーショップの二階は、さいわいひと気もないので、
ディープな会話をしても、聞かれる心配はなさそうだった。

('、`*川「………」

ペニサスはどう切り出せばいいのかに迷っていた。
目の前で座っている、小がらの美少女の所在はどこだ、と迷走したこともある。
やっと会えたことは嬉しいし、運命さえ感じたけれども、怒りを覚えていないといえば嘘になる。

といって、説教する気にはならないし、罵倒やびんたなど以ての外なのは、
やはり一番にくる感情がネガティヴなものでないからだろう。


('、`*川「……会えてよかったよ、しぃ」

(*゚ー゚)「うん……私も」

しぃはそう言うと、小さな肩をふるわして、感極まったように、

(*;ー;)「
会えてよかった……お姉ちゃん……!」

と、泣きじゃくってしまったのだった。

9 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/06/04(金) 00:10:40 ID:eohI1jZ.0

('、`*川「よしよし……、アンタ、化粧覚えても変わってないわねぇ」

ペニサスは、号泣するしぃを抱くと、赤子をあやすように彼女の背中をさすった。
頼んでおいたホットのコーヒーはすでに冷めてしまったが、二人は気にも留めない。

じきに夜が明ける。
最愛の娘とバーガーショップの朝帰りも悪くはないな、とペニサスはぼんやり考えた。


・・
・・・
・・・・



    


.

11 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/06/04(金) 00:12:51 ID:eohI1jZ.0
それから二人は、よき同僚として同じキャバレーで働きだした。
女性としてのタイプが違うだけに、客の好みは別れていたので、御互いの領域を侵食せずにすんだ。
だが、ペニサスは出勤してしぃと顔を合わせるたびに、これでいいのかと葛藤させられた。

ペニサスは悩みに悩んだ。現状維持についてもそうだが、
しぃと顔合わせが出来たという事実を、弟に告げるべきか。

弟のドクオは自分以上に、しぃの捜索に力を入れていた。
今では高校を中退してホストクラブに入っているが、
そんな彼なら現在のしぃを認めて、ひとりの女性として接してくれるかも知れない。

('、`*川「ねぇ、ドクオが会いたいって言ってるんだけど」

しかし、自分一人の判断でそんなことを決められやしない。帰りの道で彼女は尋ねた。

(*゚ー゚)「ドクオ君? 懐かしいなぁ……いま何やってんの?」

('、`*川「ホスト」

(*゚ー゚)「あららw」


('、`*川「あららってねぇ……w あたしらも同類じゃない」

(*゚ー゚)「そうだねー、ええー……ドクオ君がホストかぁ。意外だなァ」

12 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/06/04(金) 00:15:15 ID:eohI1jZ.0

意外なことに、しぃは特に抵抗なくドクオとの再会を望んでいた。
過去のしがらみから逃げ続けた女だし、断れるだろうと考えていたのに
たやすく了承されたのは、ペニサスも驚くしかなかった。

自分と同じ境遇に陥ったドクオに興味を持ったのだろうか。
それとも、自分の提案をむげに断るわけにもいかないと考えたからなのか。
ペニサスはいろいろ考えたが、確認は取れたのだ、のちのち知ればいい。
そう割り切ると、ドクオの携帯にTELをし、洗いざらいを話した。

電話に出たドクオは、ひとしきり驚いた後に、すぐに向かうとだけ告げた。

そうして、その二日後にドクオはそのキャバレーへやってきた。
一見なのにしぃを指名すると、ネクタイを締めたあとに、


('A`)「しぃ、お前を迎えにきた」


と、開口一番に告げたのだった。……

13 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/06/04(金) 00:16:57 ID:eohI1jZ.0
.








・・ ・・
・・ ・・・
・・ ・・・・
・・ ・・・・・





     
.

14 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/06/04(金) 00:18:15 ID:eohI1jZ.0
迎えにきた。そう言いきったドクオを、
しぃはすぐに受け入れると、たちまち彼と同棲をし始めた。
すでにドクオは勤め先を辞めてい、
彼自身も、その先についてはある程度、考えていたらしかった。


('A`)「お前が居なくなってから、ずっとこんな日を待っていた……」


(*゚ー゚)「………」

('A`)「いつか会えることを、そして先に告白してやるんだって……」

(*゚ー゚)「先に、て?」

('A`)「いやァ、こっちの話」

ドクオは鼻をさすりながら、それでも誇らしげな顔をしてみせた。長い髪をかきあげ、


('A`)「会えてよかったよ、しぃ。そして愛を受け入れてくれてありがとう」

16 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/06/04(金) 00:21:23 ID:eohI1jZ.0
(*゚ー゚)「私も……こんな、私を探してくれてありがとう……」

('A`)「なにが"こんな"もんか」

(*゚ー゚)「でも、わたし……この世界に生きてから、嫌われたり、敵を作ったりさ」

('A`)「敵、だと?」

ドクオは訝しげな目をすると、まじまじとしぃの顔を覗きこんだ。

('A`)「お前を叩く奴でも居るの?」

(*゚ー゚)「今は居ないけど………」


('A`)「……この世界で生き抜いてきたんだ、それくらいはあるんだろう、が……安心しろ」

ドクオはしぃの肩をゆすった。つづけて、

('A`)「これからは俺が全力で守ってやるから。
   腐ったおじんもゴミヤクザもイヤな先輩も、ライバルの嬢も……全部寄せつけねぇ」


('A`)「お前を悲しませる奴は絶対にシメてやるから」

17 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/06/04(金) 00:24:50 ID:eohI1jZ.0
ドクオとしぃの同棲生活は、それは永く続いた。
普段は気性の荒いドクオだが、しぃの前ではそんな気配も出さず、
彼女の作った手作り料理にはいつも感嘆していたし、煙草の銘柄もしぃのそれに合わせた。

アパート「シベリー」の二階の角部屋、1LDKのそこは二人だけの愛の巣だった。
しぃの収入ならもっといい物件も選べただろうが、ドクオが頑として、自分で家賃を
払うといって聞かなかったため、その程度に留まっていたのだった。
しかし、しぃはその住処を非常に気に入っていた。ドクオが居るから。

ドクオはその後、近くの裏雀荘に勤め、日によってはかなりの稼ぎを叩きだした。
ヤクザも介入できない、80年代から残る老舗のマンション麻雀だったが、
オーナーにはすっかり認められ、打ち子として見事な成績を収めていた。

一方でしぃも、より男を手懐ける手腕を磨いていって、
たちまちナンバーワン・ホステスに上り詰めたが、オトコだけは絶対に変えなかった。
自分を受け入れてくれる。自分の過去を知っている。自分を守ってくれる、
そんなドクオと暮していれば、どんな企業の社長だろうが男前だろうが色褪せてしまう。

収入が増えても、裏社会のランクがあがっても、二人はアパートを離れなかった。
御互いが、お互いの匂いのついた部屋を気に入っていた。

18 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/06/04(金) 00:28:17 ID:eohI1jZ.0
で、仲が深まると同時に、お互いの過去の埋め合わせも行われてきた。
しぃが失踪してから、あのときから二人は何をしていたのか、すこしずつ、語り合った。……

二人の共通の話題、人物としてよく話題にのぼったのが、ブーンであった。
内藤ホライゾンについて。
どちらとも深く関わっている、同年代の男であった。

初期の頃は、お互いに語ろうともしなかった。
ドクオの方はいまだ怒りが残っているのか、切り出さないし、
しぃも、どう語ればいいのかわからない存在だったからだ。
しかしそれでも、少しずつ、彼の話題について避けなくなった。
そろそろと過去のことを喋るうち、ドクオは真実に近づいていった。

中学二年当時、なにが起こったのか。
どんなきっかけでブーンとしぃが、不思議な関係になったのかを知りはじめた。

19 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/06/04(金) 00:30:05 ID:eohI1jZ.0
ショボンの起こした事故がすべての発端。
示談として、まゆ山家がしぃをブーンに差し出したこと。
そしてしぃが、そんな実家に嫌気をさして一人、裏社会に飛び込んだことを。


('A`)「………」

(*゚ー゚)「………」

('A`)「……お前の、家出ってよぉ」

(*゚ー゚)「え?」

('A`)「……原因はなんだ? どっちだ? ブーンと、まゆ山家。どっちが、原因だ?」



(*゚ー゚)「………」

しぃはすこし、躊躇ってから、自分の家の内情、悲惨さを語ることにした。
シャキンにしろショボンにしろ、自分の保身しか考えていない、
血も涙もない男ばかりと言いのけた。

ドクオはその話を黙って聞いていたが、
額にしわを寄せ、明らかに苛立った様子で煙草を吸っていた。
話の最後の方になると、もう表情に怒りが溢れだした。

20 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/06/04(金) 00:31:51 ID:eohI1jZ.0


('A`)「……しぃ」

(*゚ー゚)「えっ?」

('A`)「俺は約束を守る男だ」

そういって立ち上がると、
背広に腕を通して玄関の方へ向かった。
ドクオはそこで立ちどまって、しぃに「来い」と促した。

(;*゚ー゚)「え、ちょ……ちょっと、どこに行くつもりなの?」

('A`)「ブッ殺しに行く」

(;*゚ー゚)「え……それは、、、」

('A`)「お前んとこの家族だよ。お前を悲しませた連中なんだろ」

(*゚ー゚)「………」

口ごもるしぃに、ドクオはやさしく声をかけた。

('A`)「一緒にブチ壊そうぜ。過去と決別すンだ」


・・ ・・
・・ ・・・
・・ ・・・・

21 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/06/04(金) 00:34:46 ID:eohI1jZ.0
ドクオの行動は素早かった。
ペニサスにも連絡を取り、そこからも事情をきくと、ますます怒りを募らせた。

白のバンをすばやくレンタルし、ドクオとしぃはそこに乗り込むと、故郷へと向かっていった。
道のりは遠くない。おおよそ五時間ほどで到着するだろう。
その間、しぃは運転席のドクオのことをずっと考えていた。

彼の表情からは、真意がまるで読み取れない。仏頂面でフロントガラスの向こうを見つめている。
まさか策略や野心が隠されているのか、全然分からないでいた。

そして、これから行くのが、まゆ山家なのか。
いまいち現実感というのが湧かなかった。しぃの心中には
たしかに憤りは残されていたけれども、もう、あそこは過去の産物に過ぎないものなのだから。

兄や父は今頃なにしているんだろう。
ぼんやり考えてみたが、あまり成功している姿は思い浮かばない。
とくに兄は、社会不適合者に違いないのだから、大学を卒業できたかさえ疑わしい。

国道から高速道路へ入り、単調な一本道とわずかなカーブに揺れていた。
空は今にも降り出しそうな曇り具合で、先行きの不安を感じさせる。

うとうとしているうち、ドクオに優しく起こされた。
どうやらサービスエリアに入ったらしく、小雨の中、白塗りのマーケットが眼前に見えた。

23 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/06/04(金) 00:36:59 ID:eohI1jZ.0
建物内で軽く食事を取ると、喫煙スペースの中でしぃは一服した。
トイレから帰ってきたドクオが、二本の缶コーヒー片手にやってきて、

('A`)「無糖でよかったよな?」

(*゚ー゚)y-~「ウン、ありがと」

('A`)「ふふ……」

小さく笑うと、ドクオも隣に座り込んで煙草を取り出した。

(*゚ー゚)y-~「どうしたの?」
 
('A`)y-~「しぃは嬉しくないのか? ウサ晴らしできるじゃねえか、ようやくよぉ」

(*゚ー゚)y-~「うーん………」

('A`)y-~「悩むことなんかないって」

ドクオはニカっと笑ってみせると、さわやかなふうになって、

('A`)「悪は成敗されるもんだからな、カタルシスってやつだ」

(*゚ー゚)y-~「………」

(*゚ー゚)「そだね」

・・ ・・
・・ ・・・

24 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/06/04(金) 00:39:15 ID:eohI1jZ.0
だが、震えて、怯えた

・・ ・・・
・・ ・・・・
・・ ・・・・・


(#'A`)「なんとか言ったらどうなんだこのやろぉ!!」

恫喝が部屋中に響き渡った。
イスが放り投げられ、コレクション・キャビネットに勢いよくぶつかっていった。
高価な腕時計たちは頼りなく宙を舞うと、床に落ちていった。派手な音が弾けた。

(#'A`)「ええッ!? まゆ山さんよぉお!? おい!」

ドクオはどなり散らすと、壁を容赦なく蹴った。
土足のまま押しかけてきたので、その白い壁には靴底の跡がくっきりと残っている。
蹴りの衝撃で、絵画が落下して床に叩きつけられた。ガラスの割れる音が残響した。

(#'A`)「あんたよぉ……しぃを贄にして、無事ですまされると思うなよ!」

もう、部屋はすでに荒れ果てていた。目立つ家具はほとんど、機能を失っている。
背中を丸めて怯える中年男の背中に唾を吐きかけるドクオを見て、しぃはそのとき戦慄した。

25 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/06/04(金) 00:41:09 ID:eohI1jZ.0
その中年男というのは無論、
まゆ山シャキンであり、階上のショボンも同様に震えきっているに違いない。

(*;゚ー゚)「………」

どうやら母親はこの家にはもう、居ないらしい。たまたま外出しているのか、別居か離婚か。
しぃには後者にしか思えなかった。玄関前にたったときから、この家には崩壊の匂いが漂っていた。
辺りを見渡すうち、クリスタルの灰皿がオーディオに叩きつけられ、ひどい音がした。
灰や吸いがらが宙を舞って、思わずむせた。部屋の空気がたちまち透明度を失った。

(#'A`)「だんまり決め込んでんじゃねえよ……謝れよ、しぃに土下座しろよ……」


(` ω ´;)「あ、、いや、、、すみません……」
(#'A`)「土下座しろっつってんだろ亀野郎! ナメてんのかッ!」

亀の体勢をとって打撃を防いでいるシャキンに、ドクオは
異常なまでに蹴りを加えた。
シャキンの、そのポロシャツを剥いでみれば、手酷いアザが無尽についているに違いない。

その、実父の痛ましい姿をおもって、しぃは顔をしかめた。

26 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/06/04(金) 00:45:28 ID:eohI1jZ.0
いったん暴力を止めると、ドクオは怒りを顔いっぱいに現したまま
二階へとあがっていった。どす、どす、と遠慮しない足音が上へ向かっていく。


すぐさまに、「開けろ! 開けろ!」という怒鳴り声とともに、
一心不乱に扉を乱打する音がきこえてきた。兄は部屋の中で、なにをしているだろう。
突然あらわれた暴力に、ただ震えているだけなのか。

しぃにとって、現状は愉快なはずだった。家族を憎んでいたのは事実だし、
いつか復讐してやりたいという思いも、心の片隅にあったには違いない。

だが、同時に罪悪感めいたものがよぎってくる。
彼らに謝りたいとは思わない。ただ、もうやめても、終わってもいいのではないか。……


(*;゚ー゚)「……ああ、そうっか」

自分は悪人にはなれないんだろうな。
どんだけブってても、現実に晒せばすぐにメッキは、はがれる。
自分はただの卑怯者なんだろうな。
嫌なものには逃げたい、自分からは何もしたくない、でも憎いものは憎い、
といって制裁を加えるのはイヤ、といって制裁に怯えるその人間を見るのもいや。

27 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/06/04(金) 00:48:38 ID:eohI1jZ.0

ただ、安全で居たいだけの保身主義。
自分さえ良ければ他はなんでもいいという、いまの日本に蔓延している小市民的思想。
父のような……そう、そうなのだ。

自分はこの父親にそっくりなんだ。

しぃはふっと、目の前の哀れな父親を見やった。
彼は動こうともせず、響くような痛みに呻いているだけだった。
そうして彼は、動こうとしないだろう、息子に暴力が迫ろうとしても。
よしんば身体が傷ついていなかったとしても、自分の身を呈して
ドクオに飛びかかるなんてことは、万が一にもしないであろう。

そう思い立った瞬間、しぃは二階へ弾けるように向かっていった。
昔馴染みの階段をすばやく駆け昇ると、そこにはもう、
ドクオに引きずりだされているショボンの泣きざまが見えていた。


(*;゚ー゚)「ドクオ!」

('A`)「ン? どうした?」

さ、と笑顔になったが、ショボンの首を攫む手はゆるめない。
むしろ力を込めているのか、兄の顔がどんどん青ざめていく。

28 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/06/04(金) 00:50:50 ID:eohI1jZ.0
ドクオは器用に、あまった片手で煙草とライターとを取り出し、
火をつけてニコチンを摂取しだした。悠長な顔で紫煙をショボンに吹きかける。

涙を流しているショボンが、さらに顔をしかめた。
煙草の煙は異様に目にしみるのだ。

(´;ω;`)「うっうっ……ぅああ」

(*;゚ー゚)「そ、、、その……」

('A`)y-~「どうしたよ? お前も殴りたいンか?」

にこやかにドクオが問いかけてくる。しぃは生唾を飲みこんだ。

(*;゚ー゚)「もう……」

('A`)y-~「ン?」

ニカッとドクオが笑みを強調した、その輝いた瞳の奥が、妙に仄暗かった。
兄が涙をとめどなく流しながら、懇願するような眼をしぃにやっている。


(*;゚ー゚)「もう……やめよ?」


いきなり、沈黙が訪れた。

29 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/06/04(金) 00:55:16 ID:eohI1jZ.0
笑みが凍りついたドクオは、煙草の火をショボンの首筋に押し当てた。

(´;ω;`)「ぎゃぁッ……!」

ショボンが泣き叫んで、床に転げ落ちていった。
芋虫のようにのたうち回っているその姿を、冷酷に見下しながら、

('A`)「やめるって、何をだ」

(*;゚ー゚)「そういうことよ」

('A`)「そういうこと?」

ドクオは
おうむ返しにいうと、いきなりショボンを足蹴にした。
壁に激突したショボンは、もう顔をあげようとはせず、
震えながら父と同じように身を固くしだした。

('A`)「こういうことか」

(*;゚ー゚)「そう……。もう、やめて?」

('A`)「………」


('A`)「それは、こいつらに同情してるからか?」

30 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/06/04(金) 00:58:37 ID:eohI1jZ.0
(*;゚ー゚)「ちがう」

('A`)「そうなん?」

ドクオは目を細めて言いかえすと、

('A`)「じゃあなんで?」

(*;゚ー゚)「……それは、、、」

そこから言葉に詰まって、わけを言いだせずにいた。
頭のなかでは思考が充分にかたまっている。

でも、感情的な衝動がいまにも溢れ出しそうで、抑えるのに精一杯だった。
涙腺がゆるやかに湿っていった。ドクオの顔がみるみる嫌悪に充ちていく。
ちがう、ちがう、そうじゃない、、、


('A`)「なに泣いてんだよ、おい……、なんでだよ」

31 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日:2010/06/04(金) 01:04:28 ID:eohI1jZ.0
(* ;ー;)「………」

('A`#)「なに泣いてんだよこの野郎ッ!!」

雷鳴のような叫び声をあげると、ドクオは力を持て余すように地団駄をふんだ。


('A`#)「なんでだよっ……なんでだよ!」


わけがわからぬと唸るドクオを、涙ごしにしぃは見つめていた。


(* ;ー;)「ごめんなさい……でも、でも……」

('A`#)「なにがだよ、なにに謝ってんだよ、おい……? ふざけんな……!」


廊下でもつれながら、ふたりは感じ取っていた。
これで終わりだろうと。もう、これで関係は御終いだろうと。

いかにも、この出来事で関係が崩壊しはじめたのであった。……




                      (Part5 終)


戻る 次へ

inserted by FC2 system