- 22 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/01(火) 21:01:11 ID:j7edjYawO
そこは深く暗く、鬱蒼とした森の奥の奥。
ぞろりと天を睨む様に聳える、蔦を這わせた灰色の塔。
周囲には森があるだけ。
聞こえるのは夜の鳥の声に木々のざわめき。
緑と土の匂いが溢れるそこに住むのは、二人。
一人は長身細身の、暗い顔をした魔導師。
もう一人は、非常に美しく整った顔立ちの従者。
【塔のようです】
【二話 ご主人様、お客様です。】
そこはいつも、陰鬱とした空間に存在する。
- 23 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/01(火) 21:02:12 ID:j7edjYawO
川 ゚ -゚)「ご主人様」
('A`)「んー」
川 ゚ -゚)「ポストに城から手助けしろって通知がジャンジャンバリバリ届いてます」
('A`)「全部送り返しておいて」
川 ゚ -゚)「そんなに城行きたくないんですか」
('A`)「どうせ戦争のアレだろ、やだよめんどくさい」
川 ゚ -゚)「でもこれ、代金が割りと凄い値段ですよ」
('A`)「どれくらい?」
川 ゚ -゚)「ゼロがひーふーみー……ゼロ六つ」
('A`)「八つでならやるって言っといて、そしたらもう来ないだろ」
川 ゚ -゚)「魔王軍からは美人さん100人だとか」
('A`)「いらない、維持費大変そうだし」
- 24 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/01(火) 21:04:06 ID:j7edjYawO
川 ゚ -゚)「あ、さっきの古い手紙でした。今朝届いたのも」
('A`)「しつこいなー」
川 ゚ -゚)「ゼロ八つらしいですよ」
('A`)
川 ゚ -゚)
('A`)「ゼロ五つで良いから二度と送るなって言っといて」
川 ゚ -゚)「仕事するんですか?」
('A`)「しないとうるさいからなあ、中級術式でも一緒に送っといて」
川 ゚ -゚)「はーい」
('A`)「やだなーこう言う仕事、フライパン直す方が良いや」
川 ゚ -゚)「あ、市場からフライパン直したお代来てますよ」
('A`)「おお、肉だ」
川 ゚ -゚)「久々の肉ですね、塩漬けにして干しておきましょうか」
- 25 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/01(火) 21:06:19 ID:j7edjYawO
('A`)「やーだーなー、仕事やーだーなーあ」
川 ゚ -゚)「そんな流行最先端のニートみたいな事言わないで下さいよ」
('A`)「だって変な因縁出来るんだよ、めんどくさい」
川 ゚ -゚)「そうですけど、そろそろ貯蓄も乏しいですし」
('A`)「あー、そういや食材も無いなあ」
川 ゚ -゚)「ま、そろそろ諦めて一仕事してください、カボチャも無くなったし」
('A`)「お隣さんから今度は大量の芋が届いたよ」
川 ゚ -゚)「また失敗したんですか、何でお隣さんはホクホクしたものを使いたがるんでしょうか」
('A`)「美味しそうだからじゃないかな、今度はサツマイモ無双だな」
川 ゚ -゚)「次はジャガイモですかね」
('A`)「長期保存がかろうじて出来るのが救いだなあ」
川 ゚ -゚)「スイートポテト作ってくださいよ」
('A`)「また甘い主食だなあ」
- 26 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/01(火) 21:08:30 ID:j7edjYawO
川 ゚ -゚)「ん?」
('A`)「どうした?」
川 ゚ -゚)「なんか人影が……気のせいでしょうか」
('A`)「城の人じゃない? お引き取り願っといて、俺は術式書くから」
川 ゚ -゚)「はーい」
川 ゚ -゚)
川 ゚ -゚)「サツマイモご飯か……何があるかな……」
川 ゚ -゚)「カボチャよりご飯にしづらいなあ、たまにはしょっぱいのが良いなあ」
川 ゚ -゚)「作るのご主人様だけど」
川 ゚ -゚)「さ、手紙の返事書かなきゃ」
川 ゚ -゚)「嫌々だけど手助けしてあげるんだからね! 別にあんたのためじゃ無いんだから! と」
川 ゚ -゚)「城でご主人様のイメージがツンデレになあれ」
- 27 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/01(火) 21:10:11 ID:j7edjYawO
( ・∀・)コソリ
( ・∀・)「ここが魔導師ドクオの搭、か……」
( ・∀・)「魔王様に手を貸さないとは、愚かな男だ……この四天王の一人、モララーが裁いて」
川 ゚ -゚)「あ、いらっしゃいませ」
(;・∀・)「見つかった!?」
川 ゚ -゚)「人んちの前でそんな派手な格好してバレないと思ったんですか」
(;・∀・)「クッ、これでも地味な格好を選んできたのに! そんなにフリンジがいけなかったのか!」
川 ゚ -゚)「そんなナイトフィーバーな格好が地味とか普段どんな服装なんですか」
( ・∀・)「羽根とかマントとか」
川 ゚ -゚)「厨二乙、ところで何のご用ですか?」
( ・∀・)「ハッ、そうだ魔導師ドクオの寝首を」
川 ゚ -゚)「ご主人様、お客様ですよー」
(;・∀・)「聞けよ!!」
川 ゚ -゚)「寝込み襲いに来たらしいですよー」
(;・∀・)「違う! いや違わない!? でも違う!!」
- 28 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/01(火) 21:12:09 ID:j7edjYawO
川 ゚ -゚)「どうぞ、入って下さい間男様」
(;・∀・)「モララーだよ!! その言葉の用途は間違ってる!!」
('A`)「お客様?」
川 ゚ -゚)「はい、間男☆厨二乙☆モララー様です」
(;・∀・)「不名誉! どこまでも不名誉!!」
('A`)「じゃあお掛けしてもらって、すぐ終わらせるから」
川 ゚ -゚)「はーい」
(;・∀・)「うわーもうこの流れるままに流されて行くテンションうざーい!!」
川 ゚ -゚)「お客様、ご主人様はお仕事中ですのでお静かに」
( ・∀・)「あ、すみません」
川 ゚ -゚)「お茶をお持ちしますので、かけてお待ちください」
( ・∀・)「あ、はい、ありがとうございます」
- 29 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/01(火) 21:14:14 ID:j7edjYawO
( ・∀・)(結構綺麗にしてるんだなあ、もっと散らかってると思ってた)
( ・∀・)(あ、クッションふかふか)
( ・∀・)(へー、刺繍もしてある、凝ってるなあ、どこで買ったんだろこれ)
( ・∀・)
(#・∀・)「違う! 違う!! 俺は魔王軍四天王白銀のモララー!!
手を貸さない魔導師ドクオを魔王様の敵と見なし排除しに来たの!!」
川 ゚ -゚)「お客様、お静かに」
( ・∀・)「あ、ごめんなさい」
川 ゚ -゚)「どうぞ、お茶とクッキーです」
( ・∀・)「可愛いねこのクッキー、おばけの形だ」
川 ゚ -゚)「ハロウィンの残り物で申し訳ございません」
( ・∀・)「いえ、ああこれ美味しい、お茶凄い味だけど」
川 ゚ -゚)「申し訳ございません、お茶はちょっと」
- 30 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/01(火) 21:16:09 ID:j7edjYawO
('A`)「はーつかれた、向こう一ヶ月は仕事したくない」
川 ゚ -゚)「お疲れ様ですご主人様」
('A`)「お待たせしてすみません、魔導師のドクオです」
( ・∀・)「あ、いえ、急に来てすみません、モララーです」
('A`)「あー……クーお茶いれるなよ、すみません取り換えますから」
( ・∀・)「あ、重ね重ねすみません」
('A`)「クー、勝手にお客様にお茶いれない、不味いんだから」
川 ゚ -゚)「お茶をお出しした行為だけは誉めていただきたい」
('A`)「よしよし良い子良い子、だからもうお客様にはいれないようにね」
川 ゚ -゚)「はーい」
( ・∀・)(メイドにお茶いれるなって、一体……)
- 31 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/01(火) 21:18:42 ID:j7edjYawO
('A`)「どうぞ、お茶です」
( ・∀・)「ありがとうございま……うっめ、何だこのお茶うっめぇ」
('A`)「ありがとうございます」
( ・∀・)「こちらのクッキーはメイドさんが?」
('A`)「俺です」
( ・∀・)「だと思いました、凄く美味しいです」
川 ゚ -゚)イラッ☆
('A`)「いやお恥ずかしい、こう言ったものを作るのが好きで」
( ・∀・)「いえいえ素晴らしいです、あ、このクッションどこで買ったんですか?」
('A`)「あ、俺が作りました」
( ・∀・)「何者ですか」
('A`)「魔導師です」
- 32 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/01(火) 21:20:15 ID:j7edjYawO
( ・∀・)「こう、魔法でぱぱっと?」
('A`)「いえ、普通に作ります」
( ・∀・)「……凄いですね」
('A`)「いえそんな、趣味ですので」
川 ゚ -゚)「そのくせご主人様ご自身は無頓着ですよね」
('A`)「そう?」
川 ゚ -゚)「そんな古い毛布纏わないで下さいよ」
( ・∀・)「ローブじゃないんですかそれ」
川 ゚ -゚)「あと使い古したタオル首に巻かないで下さい、ブローチで止めても無駄です」
( ・∀・)「あ、それタオルなんだ……」
川 ゚ -゚)「僕を見習って下さいよご主人様、この美しい出で立ちを」
('A`)「メイドがよれた格好じゃ駄目だろ」
川 ゚ -゚)「魔導師なら良いんですか」
('A`)「着たまま寝れる」
川 ゚ -゚)「わあ便利とでも言うと思いましたかクソが」
- 35 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/01(火) 21:22:14 ID:j7edjYawO
( ・∀・)「…………ドクオさん、そんなに困窮してるんですか?」
('A`)「いや貧乏だからこの格好なわけでは」
川 ゚ -゚)「明日食う分もギリギリです」
( ・∀・)「……てっきり、腕の良い魔導師だから稼いでいらっしゃるのかと……」
('A`)「舞い込む仕事はみんなきな臭くて」
( ・∀・)「あまり、そういったお仕事は……?」
('A`)「はい、俺の仕事のせいで誰かが死んだりとか嫌じゃないですか」
( ・∀・)「……」
('A`)「嫌ですよああいった仕事は、俺の背中はそんなに沢山の命を背負うほど広くない
俺のせいで誰かが傷付いたり、死んだり、そんな仕事で食う飯は不味いですよ」
川 ゚ -゚)「僕の料理よりですか?」
('A`)「クーの料理が美味しいと感じるよ、血の味がする飯なんか食いたくない」
( ・∀・)「だから……魔王軍からも、連合軍からも呼ばれて……拒否するんですか?」
('A`)「はい、自分が殺すより、見ない方がまだマシです」
( ・∀・)「なる、ほど……そう、か…………だから……」
- 36 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/01(火) 21:24:33 ID:j7edjYawO
('A`)「だから、モララーさんのご主人にも言っておいて下さい、俺は誰も傷付けないと」
( ・∀・)「ぇ……あ、……」
('A`)「力のある魔族の方なんですね、普通にしていても力を感じます」
( ・∀・)「…………」
('A`)「俺は誰が何をしようと、文句は言いません、それが仕事でそれこそが正義でしょうから」
( ・∀・)「……はい」
('A`)「俺は、あくまでも一般人の立場を通したいだけです」
川 ゚ -゚)「連合軍に送る術式書いてましたよね」
('A`)「ああアレね、発動すると杉花粉が充満する術式」
川 ゚ -゚)「ご主人様は鬼畜ですか」
('A`)「誰の心も痛まない良い魔法だ」
川 ゚ -゚)「鉄仮面乙」
- 38 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/01(火) 21:26:16 ID:j7edjYawO
( ・∀・)「……わかりました、魔王様に言っておきます」
('A`)「めんどくさがりの甘ちゃんだって伝えて下さい」
川 ゚ -゚)「あとツンデレだと」
('A`)「なにそれこわい」
( ・∀・)「俺は、そんな風に考えた事がありませんでした……ただ、仕事をするだけで」
('A`)「それが普通ですよ、自分の仕事に疑問を持ったら、その瞬間から輪から弾き出されます」
( ・∀・)「……です、ね……不安因子、です」
('A`)「モララーさんは、モララーさんの仕事を全うして下さい、俺が口を挟む事じゃない」
( ・∀・)「……ありがとうございます」
('A`)「いえ、これ持っていって下さい、包みます」
( ・∀・)「ああ、ありがとうございます」
('A`)「あとクッション、欲しければ作りますから」
( ・∀・)「重ね重ねありがとうございます」
- 39 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/01(火) 21:28:15 ID:j7edjYawO
川 ゚ -゚)「帰られましたね」
('A`)「うん」
川 ゚ -゚)「クッキーがっさり持って」
('A`)「また焼くよ」
川 ゚ -゚)「……ご主人様は、変な方ですね」
('A`)「自覚はしてるよ」
川 ゚ -゚)「本来なら、富豪なのに……わざわざこんな所に僕と住んで」
('A`)「気に入ってるんだ、この生活が」
川 ゚ -゚)「……変なご主人様に使える僕も、変ですね」
('A`)「そうだな」
川 ゚ -゚)「否定しろよ」
('A`)「やだよ」
川 ゚ -゚)「クソド貧乏童貞王が」
('A`)「主人になんつう言いぐさだろうか」
- 40 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/01(火) 21:30:05 ID:j7edjYawO
川 ゚ -゚)「知りませんよ、それよりお腹が空きました」
('A`)「そろそろ晩飯作るか」
川 ゚ -゚)「サツマイモがどうなるか期待してます」
('A`)「クーは何作るんだ」
川 ゚ -゚)「やきいも」
('A`)「口の水分持ってかれる晩飯だな」
川 ゚ -゚)「食物繊維のカタマリ、健康的です」
('A`)「よし、じゃあ飯作ろう」
川 ゚ -゚)「はい」
('A`)「近々また良いもん食えるな」
川 ゚ -゚)「期待してます」
【二話 おわり】
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