搭のようです

69 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/03(木) 21:00:49 ID:zLmX/B86O

 そこは深く暗く、鬱蒼とした森の奥の奥。

 ぞろりと天を睨む様に聳える、蔦を這わせた灰色の塔。

 周囲には森があるだけ。
 聞こえるのは夜の鳥の声に木々のざわめき。

 緑と土の匂いが溢れるそこに住むのは、二人。


 一人は長身細身の、暗い顔をした魔導師。
 もう一人は、非常に美しく整った顔立ちの従者。



       【塔のようです】
   【四話 ご主人様、何か届いた。】



 そこはいつも、陰鬱とした空間に存在する。

70 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/03(木) 21:02:15 ID:zLmX/B86O

川 ゚ -゚)「ご主人様、今日の平均株価はいつも通りです」

('A`)「今まで一度も気にした事は無いけど」

川 ゚ -゚)「いや、新聞が来てたのでつい」

('A`)「契約してないけど」

川 ゚ -゚)「この間あんまりにも必死に契約してくれと淫獣の様に言うので」

('A`)「したのか?」

川 ゚ -゚)「いえ、取り敢えず一ヶ月投函して様子を見てから決めると」

('A`)「とんでもないよなお前」

川 ゚ -゚)「毎日こんな森の奥までご苦労様ですよ」

('A`)「本当にとんでもないよなお前」

川 ゚ -゚)「あ、小包届いてますよ」

('A`)「誰から?」

川 ゚ -゚)「城からですね、先日の術式で戦況がひっくり返ったからそのお礼らしいです」

('A`)「ふーん」

71 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/03(木) 21:04:45 ID:zLmX/B86O

川 ゚ -゚)「何度も城に勲章貰いに来いって通知をうんことだけ書いて送り返してましたからね」

('A`)「何してるのお前は」

川 ゚ -゚)「口座に500kも振り込まれてますよ、これで色々回せますね」

('A`)「ネトゲみたいに言うな」

川 ゚ -゚)「ところでこれ、勲章なんですかね」

('A`)「開けてみたら?」

川 ゚ -゚)「わーい」バリバリ

川 ゚ -゚)

('A`)「何だった?」

川 ゚ -゚)「金の杯と勲章です」

('A`)「文鎮壊れたからちょうど良いな」

川 ゚ -゚)「これ何CC入るんですかね」

('A`)「重い計量カップだな」

72 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/03(木) 21:06:18 ID:zLmX/B86O

( ;∀;)「ドクオさーん……へきしっ」

('A`)「あ、モララーさん」

川 ゚ -゚)「お久しぶりです間男様、どうなさいましたか」

( ;∀;)「ぇっくしゅ……こないだ、術式送ったでしょ……」

('A`)「ああ、魔王軍にも送りましたね」

( ;∀;)「あれ、ぶぇくしっ……連合国と同時に発動させたみた……いっきし……いで」

('A`)「……」

( ;∀;)「俺、ちょうどその間に居たんです……えっきしゅん!」

('A`)「……花粉症、ですか……」

( ;∀;)「それだけ、っくしゅ……なら、まだしも……」

('A`)「あ」

( ;∀;)「主に下半身が凄い事に……ぶぇきしっ……なったんですけど……っくしゅん!」

川 ゚ -゚)「取り敢えず花粉症の方を治して差し上げましょうよ」

('A`)「うん、そうだな」

( ;∀;)「いや、それより……へぶしっ……下半身……」

73 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/03(木) 21:08:22 ID:zLmX/B86O



( ・∀・)「あー……つらかった……」

('A`)「いやあ、まさか両方食らう猛者が居るとは」

( ・∀・)「いや、本当に……腕良いですねドクオさん……」

川 ゚ -゚)「間男様、下半身どうなったんですか」

(;・∀・)「モララーです! ……ちょっと、言いづらい事に……」

川 ゚ -゚)「見せて下さい」

(;・∀・)「嫌だよ!? 何でさも当然みたいな顔で言ってるの!?」

川 ゚ -゚)「気になるじゃありませんか、と言うかどれ送ったんですかご主人様」

('A`)「なんと奇遇なやおい穴」

川 ゚ -゚)「混ぜたよこの人」

(;・∀・)「もうひどい有り様ですよ戦場……」

74 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/03(木) 21:10:12 ID:zLmX/B86O

('A`)「いやあすみません、まさかマジで両方食らうとは」

(;・∀・)「あの……これ、治せます?」

('A`)

(;・∀・)

('A`)「クー、昨日焼いたスコーン持ってきて」

川 ゚ -゚)「はい」

(;・∀・)「な、治せない!? 治せないの!? 俺ずっとこの下半身なの!?」

('A`)「ちょっと出してください」

(;・∀・)「あのメイドにしてこの主人あり!?」

('A`)「いや、状態確認しないと治しようがないので」

(;・∀・)「う……分かりました……」

('A`)「人払いもしましたし、どうぞ」

75 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/03(木) 21:13:02 ID:zLmX/B86O

(;・∀・)「じゃ、じゃあ失礼して……」

(;・∀・)ボロンッ

('A`)

(;・∀・)

('A`)

(;・∀・)「ドクオさん……?」

('A`)「ハッ…………いや、うん……あの……」

(;・∀・)「は、はい……」

('A`)「すげぇなコレ……」

(;・∀・)「張本人! こうした張本人!!」

川 ゚ -゚)「ご主人様、もう無かっ」

川 ゚ -゚)

川 ゚ -゚)「失礼しました」

(;・∀・)「待って! 何か待って!! いや待たないで!! もう行って!! もうやだ!!」

76 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/03(木) 21:15:12 ID:zLmX/B86O

(;・∀・)「……ドクオさぁん……」

('A`)「あ、ああ……はい……すみません、衝撃映像で……」

(;・∀・)「一応こうしたのドクオさんですから……」

('A`)「ええと、治せますけど」

(;・∀・)「本当ですか!?」

('A`)「ただ、あの、ちょっと……」

(;・∀・)「えっ……何か、問題が……?」

('A`)「調合した薬を、患部に塗り込むんですけど……」

(;・∀・)「うわあああああああああ!!?」

('A`)「薬はお渡ししますから……ご自分で、あの……うん……」

(;・∀・)「もうやだ! もうやだ!! 何だこの悲惨な図!!」

('A`)「あの……頑張って、やおい穴に塗り込んでください……」

( ;∀;)「ほわぁあああああああああッ!!!!」

川 ゚ -゚)(ひでぇ会話だなあ……)

77 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/03(木) 21:16:20 ID:zLmX/B86O



川 ゚ -゚)「……ご主人様、スコーン無かったからカリッとサクッと美味しいスコーン持ってきました」

('A`)「ああ、うん、ありがとう」

川 ゚ -゚)「……モララー様は?」

('A`)「…………トイレ」

川 ゚ -゚)「ああ……薬、調合したんですか」

('A`)「作りおきを混ぜるだけでいけたから……うん……」

川 ゚ -゚)

('A`)

川 ゚ -゚)「やり過ぎましたかね」

('A`)「せめて一つにすべきだったかな……」

川 ゚ -゚)「ですね……」

78 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/03(木) 21:18:10 ID:zLmX/B86O

('A`)「あ」

川 ゚ -゚)「どうしました」

('A`)「あの薬、消すところ以外に塗ると大変な事になるんだけど」

川 ゚ -゚)

('A`)

川 ゚ -゚)「伝えて来ま」

( ;∀;)「ドクオさあああああああああん!!!!」

川 ゚ -゚)「すと言いたかったが遅かったみたいですね」

('A`)「ごめん、モララーさんごめん、本当にごめん」

( ;∀;)「どうするんですかコレ!! マネキンみたいになりましたよ!!?」

('A`)「生やす術探すから……ごめん……」

( ;∀;)「うわあああああん!! もうやだこの下半身!!」

川 ゚ -゚)(どうなったのか気になるけどさすがに言いづらいな……)

79 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/03(木) 21:21:24 ID:zLmX/B86O

川 ゚ -゚)「落ち着かれましたか」

( ・∀・)「はい……すみません……」

川 ゚ -゚)「どんな感じですか」

( ・∀・)「下半身の喪失感がハンパないです」

川 ゚ -゚)「申し訳ございません、ご主人様って勉強できるタイプのアホで」

( ・∀・)「アホって……ただちょっとうっかりしただけじゃ……」

川 ゚ -゚)「ただのうっかりさんは毛布纏って彷徨きません」

( ・∀・)「あ、うん……まあ……でもドクオさん、魔法学院とか出てないんですか?」

川 ゚ -゚)「無学歴ですよ、僕もですけど」

( ・∀・)「ああうん、俺もだけど……学校に行くにはかなりかかるからなあ」

川 ゚ -゚)「良いとこのボンボンですけどね」

( ・∀・)「ソリテール家ですよね、超名門の魔導師家系の」

川 ゚ -゚)「今じゃご主人様しか居ませんけどね」

( ・∀・)「……ドクオさんも、色々あったんでしょうね」

80 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/03(木) 21:22:37 ID:zLmX/B86O

川 ゚ -゚)「生まれて32年、ただただ本読んでたらしいです」

( ・∀・)「なのに眼鏡してないんですね」

川 ゚ -゚)「こまめにホイミしてるみたいです」

( ・∀・)「ホイミってただの癒し魔法だったような」

川 ゚ -゚)「ま、ご主人様は趣味であれだけの力を付けていらっしゃいますから」

( ・∀・)「趣味で大魔導師とか」

川 ゚ -゚)「死ぬほどめんどくさがりやですけどね」

( ・∀・)「それはわかります」

川 ゚ -゚)「めんどくさがりで勉強しか生き甲斐のないド貧乏オナ禁童貞王です」

(;・∀・)「ご主人に対してその言いぐさはどうなんだろう……」

川 ゚ -゚)「良いんですよ、僕は事実のみを口にしていますから」

(;・∀・)「良くない、きっと色々良くない!」

81 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/03(木) 21:24:33 ID:zLmX/B86O

川 ゚ -゚)「じゃあモララー様はご主人様をどう良い感じに表現しますか」

( ・∀・)「えっ」

川 ゚ -゚)「良い感じに」

(;・∀・)

川 ゚ -゚)

(;・∀・)「……勤勉で、邪な欲求に左右されない……無欲な、魔導師……?」

川 ゚ -゚)「そんなに頑張って表現なさらなくても」

(;・∀・)「いや、あの……うん……ごめん……」

川 ゚ -゚)「ほら、僕が言った通りでしょう? ガリ勉ド貧乏オナ禁童貞王なんですよ」

(;・∀・)「ひ、否定しづらくなってきた……」

('A`)

(・∀・;)「ドクオさん!?」

('A`)「分かってる……自分の事は、自分が一番分かってる……から……」

(・∀・;)「すみません! すみません! 本当すみません!! ごめんなさい!!」

82 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/03(木) 21:26:11 ID:zLmX/B86O

('A`)「……これ、薬作りましたから……生やしたい場所とかにのみ適量塗って下さい……」

(;・∀・)「本当ごめんなさい……ありがとうございます……」

('A`)「うん…………うん……」

(;・∀・)「……あ、あの……お手洗い借ります……」

('A`)「どうぞ……」

川 ゚ -゚)「ご主人様しょげないで下さいよ、鬱陶しい」

('A`)「うるせえ……」

川 ゚ -゚)「じゃあガリ勉ド貧乏オナ禁童貞王じゃないと否定してみてください」

('A`)「あのね、人間は本当の事を言われると傷付く事もあるの」

川 ゚ -゚)「ごめんなさい」

('A`)「謝るな、余計に傷付く」

川 ゚ -゚)「本当にごめんなさい」

('A`)「やめろ、もう心を抉るな、それ以上俺を傷付けるな」

83 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/03(木) 21:28:26 ID:zLmX/B86O

川 ゚ -゚)「元からこれ以上ないくらいに歪みきってるじゃないですか」

('A`)「いや傷付けるなとは言ったけど歪みについて口にした記憶はない」

川 ゚ -゚)「顔が」

('A`)「泣きたい」

川 ゚ -゚)「あと性根も」

('A`)「お前が言うな」

川 ゚ -゚)「ガリ勉ド貧乏オナ禁童貞王ご主人様、夕飯はどうしましょう」

('A`)「今日はお隣さんから里芋が大量に届いてるから煮物にしようかクソガキ」

川 ゚ -゚)

('A`)

川 ゚ -゚)「喧嘩なら70%オフで買いますよ」

('A`)「そんなところでやりくり上手な出来るメイド感を出すな」

84 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/03(木) 21:31:15 ID:zLmX/B86O

川 ゚ -゚)「うふふ、僕ってば最高なメイドですよね」

('A`)

川 ゚ -゚)「ご主人様、何ですかその顔」

('A`)「地顔です」

川 ゚ -゚)「ああ、地盤から歪んでるからそうなられたんですね」

('A`)「無言に対して辛辣かつえげつない言葉を浴びせるとは」

川 ゚ -゚)「否定なさいますか」

('A`)「いいえ」

川 ゚ -゚)「ご主人様」

('A`)「うん」

川 ゚ -゚)「なんとなくムカつくから殴らせて下さい」

('A`)「なんとなくで殴られてなるものか」

川 ゚ -゚)「じゃあいつ頃お死にになるご予定ですか」

('A`)「そんなに主人の死を願うな」

85 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/03(木) 21:32:43 ID:zLmX/B86O

( ・∀・)「はー……治った……良かった……」

('A`)「あ、大丈夫でしたか」

( ・∀・)「はい、ありがとうございました」

('A`)「いえ、元はと言えば俺のせいですから」

川 ゚ -゚)「タマ無し様もご夕飯いかがですか」

(;・∀・)「もうあります! あ、じゃあご好意に甘えて……」

('A`)「里芋と鶏肉でも煮物にしますか、クーは?」

川 ゚ -゚)「焼き芋です」

('A`)「そんなに焼き芋に固執するなよ、里芋だって言ってるのに」

( ・∀・)「あ、僕も手伝います」

('A`)「じゃ、作りますか」

川 ゚ -゚)「はーい」



【四話 おわり】


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