- 3 名前: ◆GXksSIPk/I 投稿日:2009/11/12(木) 18:35:38.27 ID:V8GFzXaHO
満月は、人を狂わせる。
闇にポッカリと浮かぶ丸い光は、見る人を狂気へと誘う。
(・∀ ・)TRAVELERSのようです
第2話 戦うラスト・サムライ 後編
ほら、夜の太陽が狂気を見つめている。
- 4 名前: ◆GXksSIPk/I 投稿日:2009/11/12(木) 18:37:07.53 ID:V8GFzXaHO
(・∀ ・;)「あ、にじゃ、が、ふたり……?」
開いた口が塞がらないとは、こういう事を云うのだろうか。
またんきは、只口をポカンと開けていることしか出来ない。
顔も、背丈も、格好も、声も、何もかも。
まるで兄者を鏡で映したよう。
唯一違うのは、鼻の形だろうか。
兄者と違って、男の鼻はすっと通っている。
禍々しい殺気を放つ、兄者に瓜二つのその男は、夜空の月を背にただ微笑んでいた。
- 5 名前: ◆GXksSIPk/I 投稿日:2009/11/12(木) 18:39:56.65 ID:V8GFzXaHO
(´<_` )「随分探したんだよ、またんきクン。
モララーに肉親が居たなんてほんの一月前に知ったし、モララーも居場所教えてくんなかったし」
(・∀ ・;)「な、何の話だ!
アンタ、何者なんだ!?
アニキと何の関係があるってんだ!」
やれやれ、といった風に男は溜め息をつき、肩を竦める。
またんきは、男の動き一つ一つに警戒心を剥き出しにしながらも、目の前の存在に畏怖していた。
(´<_` )「あのな、別に取って食おうって訳じゃないんだからさ。
そんな警戒心剥き出しにされても困るんだけどなー」
- 6 名前: ◆GXksSIPk/I 投稿日:2009/11/12(木) 18:41:04.93 ID:V8GFzXaHO
男の纏っていたオーラが、普通の人間のそれになる。
その瞬間、またんきの体の震えも止まり、鳥肌もおさまった。
張り詰めていた緊張感を、飄々とした態度で台無しにしてしまう男。
男が、更に兄者に近くなった気がする、とまたんきは無意識にそう思った。
静寂の中、ドンドン、ピーピーという音楽が、窓の外から聞こえてくる。
おかしいな、今日はお祭りなんて無かった筈なのに。
(´<_,` )「気になるかい?」
- 7 名前: ◆GXksSIPk/I 投稿日:2009/11/12(木) 18:42:15.76 ID:V8GFzXaHO
またんきの視線に気づいたのか、男はククッと籠った笑いを見せた。
(・∀ ・;)「き、気になんかなるかよ!
俺ァ祭りにゃ興味ねーよ!」
(´<_,` )「フーン…ククッ…」
(・∀ ・;)「(…何だ、コイツ)」
(´<_,` )「いやーすまん、つい」
クククッと喉を鳴らす男。
やっぱり不審者だ。
ドンドン、ピーピャラ、ドコドン、プーピー。
音はどんどん大きくなる。
この建物の近くを通っているのだろう。
- 8 名前: ◆GXksSIPk/I 投稿日:2009/11/12(木) 18:44:17.89 ID:V8GFzXaHO
篭ったような、何かを一心に祈るような低い声は、またんきに更なる不安感を与える。
とても、耳障りに思えた。
(´<_` )「本題に戻ろうか、またんきクン」
男の纏う空気が、再び殺気と人ならざる何かに変わる。
(´<_` )「今回は、君には何もしないよ。
顔を見に来ただけだしね」
声は笑ったままだが、月の逆光で男の表情は見えない。
ひた隠された狂気に、またんきは再び恐怖する。
コツ、と男がまたんきに歩み寄った。
- 9 名前: ◆GXksSIPk/I 投稿日:2009/11/12(木) 18:45:22.36 ID:V8GFzXaHO
(・∀ ・;)「!」
慌てて足を引きずって後退する。
コツ、コツと男が近寄れば、その度に後退。
ふと、またんき右手が兄者の腰に触れる。
そして、腰にあった何かを瞬時に握り、一気にそれを引き抜いた。
(・∀ ・;)「ち、近寄るなッ!」
ピタッ、と男の足が止まる。
ナイフにしては余りにも長く、剣と云われれば余りにも形状が違いすぎる得物の切っ先が、男の鼻先に向けられていた。
(・∀ ・;)「こっ、これ以上近寄ってみろ!
お前のその鼻、削ぎ落としてやる!」
- 10 名前: ◆GXksSIPk/I 投稿日:2009/11/12(木) 18:46:36.24 ID:V8GFzXaHO
(´<_` )「…………」
男は少し驚いたような顔をし、またんきの瞳をじっと見つめる。
(´<_` )「…弱ったな……」
切っ先が自分に向けられているにも関わらず、男は呑気にうーん、と唸り、頭をボリボリとかく。
(´<_` )「だからさ、俺は本当に何も………」
男が何かを言いかけた、刹那。
一瞬、何が起こったか、またんきには理解出来なかった。
まず、男の驚いた顔。
一秒後、男の左肩が瞬時に消えた。
三秒後、男の苦悶の表情と、耳を塞ぎたくなるような悲鳴が響き渡る。
そして、またんきが自分の右手から凶器が消えたのに気づいたのは、男が悲鳴を上げた二秒後だった。
- 11 名前: ◆GXksSIPk/I 投稿日:2009/11/12(木) 18:47:50.37 ID:V8GFzXaHO
(・∀ ・;)「な……………………」
まるで噴水のように、男の左肩から血が噴き出す。
またんきの右頬を擦って落ちてきた男の左腕が、ビクンビクンと蠢いている。
(;´_ゝ`)「…………………」
またんきの後ろで、肩で息をし、大量の汗をかく兄者。
その手には、またんきが先程まで握っていた得物が、しっかと握られていた。
( <_ ;)「……っき、貴様、ッ………!」
( ´_ゝ`)「俺の相棒を先に没収しなかったお前のミスだな、弟者。…いや、"左者"よ。
切れ味最高の『村雨』の味だどうだ、ん?」
- 12 名前: ◆GXksSIPk/I 投稿日:2009/11/12(木) 18:49:11.47 ID:V8GFzXaHO
( <_ ;)「こ…の…死に損ないめっ…!」
( ´_ゝ`)「お互い様だ、化け物め」
幽鬼のようにフラフラと立ちすくむ男、左者。
兄者は侮蔑と憤りの視線を左者に投げかけ、唾を吐く。
lw;´‐ _‐ノv「またんきっ!」
(・∀ ・;)「シュー!?」
いつの間にかシューも回復しており、またんきの手を引く。
そのまま窓際まで走り、
lw;´‐ _‐ノv「下、見ちゃ駄目だよ!」
(・∀ ・;)「え?」
ガラスをぶち破って、飛び降りた。
- 13 名前: ◆GXksSIPk/I 投稿日:2009/11/12(木) 18:51:02.45 ID:V8GFzXaHO
またんきの悲鳴をバックに、兄者は左者へと向き直る。
記憶の中の弟によく似せられた目の前の男は、身体中を己の血で染めながらも、兄者を見据えている。
尤も、その目には恐怖が映し出されてはいるが。
( ´_ゝ`)「さて、聞こえているんだろう?弟者」
(´<_`#)「気安く主の名を呼ぶなッ!」
片腕を斬られて尚、左者は声を張り上げる。
だが、兄者は左者の声など聞こえていないといった風だ。
- 14 名前: ◆GXksSIPk/I 投稿日:2009/11/12(木) 18:51:42.37 ID:V8GFzXaHO
( ´_ゝ`)「聞こえているんだろう、お前の悪趣味さはよおうく分かっているさ。
ズイブンとまあ進歩しちまってなあ、オイ。
こんな事して、あの人が喜ぶとでも思ったか、ん?」
(゜<_゜#)「黙れ黙れ黙れ!主の敵風情が!」
( _ゝ )「主、か。己自身の顔の奴にそう呼ばれるって、どんな気分なんだろうなあ、弟者よ。
人の命を弄ぶのは楽しいか?
神様ごっこが、そんなに楽しいのか?」
(゜<_゜#)「黙れええええええええええええええええええええ!!」
- 15 名前: ◆GXksSIPk/I 投稿日:2009/11/12(木) 18:54:06.41 ID:V8GFzXaHO
ギラリ、と光る名も無い刀を振りかざし、左者が猛スピードで兄者に迫る。
だが、腕一本無くした手負いに、勝つ術など、無い。
ズブリ。
(゜<_゜ii)「ガッ…ゴフッ……!!」
左者の手から、刀が滑り落ちた。
ぼたり、ぼたりと血が滴り落ちる。
口から、ごぼりと血が溢れでる。
(゜<_゜ii)「あ……ガッ…………」
左者は、己の目が見ているものが信じられないとばかりに、目を見開く。
兄者の村雨は、左者の心臓を、真っ直ぐ的確に貫いていた。
- 16 名前: ◆GXksSIPk/I 投稿日:2009/11/12(木) 18:56:01.82 ID:V8GFzXaHO
刀を上向きにして刺した為、必然的に兄者に寄り掛かるようにして崩れ落ちる左者。
( _ゝ )「ごめんな……ごめんなあ………」
既に物言わぬ"人形"に、兄者は謝罪の言葉を掛ける。
嗚呼、弟が憎らしい。
(;∀ ;)「………」
lw´‐ _‐ノv「(…結構、多いなあ)」
先程の飛び降りが堪えたのか、またんきは声もなく泣いていた。
lw´‐ _‐ノv「(弱ったなあ)」
ひたすら身を隠しながら、シューは人知れず舌打ちする。
松明を持って町を練り歩くそれらは、聞き取り辛い言葉で会話をし合い、ぴょこぴょこと―それは決して可愛らしいものではなく、寧ろ吐き気を催すような気持ちの悪い―跳ねるように去っていく。
- 17 名前: ◆GXksSIPk/I 投稿日:2009/11/12(木) 19:00:46.09 ID:V8GFzXaHO
ふうーー…、と深く溜め息をつき、またんきは座り込む。
シューは相変わらず様子を窺っている。
(・∀ ・;)「…な、何なんだ、あのバケモノ達…」
lw´‐ _‐ノv「…多分、ここの住人達だ」
(・∀ ・;)「えええ!?」
lw´‐ _‐ノv「兄者から聞いた事がある。人間の時はなんともないんだけど、ああいう魚面になると、深海の神様の元へお仕えしに行くんだって」
笛を鳴らし、太鼓を叩き、歌のようなものを歌う魚面達。
またんきは長年見慣れていた筈の町の人達だった生き物達を、不思議な気持ちで見ているしかなかった。
- 18 名前: ◆GXksSIPk/I 投稿日:2009/11/12(木) 19:02:46.41 ID:V8GFzXaHO
何処かの古城。
本が所狭しと並べられた黴臭い図書館の中で、一人の男が本を読んでいる。
うず高く積まれた本の山ら一冊一冊読んでいっては、羊紙皮に何処の国か分からぬ言葉の羅列を書き込んでいく。
右者は学がないので、男が何を読んでいるのか、何を書いているのかは分からない。元より、興味も無い。
それよりも、外に出ていったきり未だに戻ってこない相棒を、右足をユサユサと揺すりながら待ち続けていた。
- 19 名前: ◆GXksSIPk/I 投稿日:2009/11/12(木) 19:03:40.78 ID:V8GFzXaHO
ビシィッ!
「!?」
その時、男の左腕から、突如として大量の血が溢れ出てくる。
右者は一瞬呆けたが、慌てて男へと近寄る。
(;´_>`)「お、弟者様!ち、血が!」
(´<_` )「…大丈夫だよ、右者」
弟者、と呼ばれたその男は、血塗れのその左腕を平気そうにブラブラと動かす。
折れた。
( ´_>`)「……左者は、死んだのか…」
弟者の折れた左腕を見て、心なしか寂しそうに、右者が呟く。
弟者はクスリと笑うと、右者の頭をポンポンと撫でた。
- 20 名前: ◆GXksSIPk/I 投稿日:2009/11/12(木) 19:04:50.93 ID:V8GFzXaHO
(´<_` )「また、創り治してやるから。な?」
途端、パアッ、と明るい表情になる右者。
そんな右者に包帯を持ってくるように命じると、弟者は窓の開けて月を見上げる。
嗚呼、とても綺麗な月だ。
(´<_` )「…神様ごっこ、ね。
兄者らしいっちゃ、兄者らしいな」
喉の奧でククッと笑うと、右者の声で窓を閉めた。
男の呟きを聞いた月は、何を思うのだろう。
厭に眩しく、夜を照らし続けていた。
- 21 名前: ◆GXksSIPk/I 投稿日:2009/11/12(木) 19:05:41.87 ID:V8GFzXaHO
(・∀ ・)TRAVELERSのようです
2話後編 終.
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