ミセ*゚ー゚)リ旅人と('A`)奴隷のようです

3 名前: ◆x8fzY.jwcY 投稿日:2009/09/17(木) 21:09:02.92 ID:ulYPMBgUO




第3話 少女と遺跡





4 名前: ◆x8fzY.jwcY 投稿日:2009/09/17(木) 21:12:01.82 ID:ulYPMBgUO
遺跡の薄暗く足音と話し声だけが響く通路をドクオが魔法で作り出した光球で照らしながら歩く。
その後ろをミセリ、シィ、ギコの順に列んで歩いていた。

ドクオとギコが警戒しながら黙々と歩くなか、ミセリとシィは会話に花を咲かせていた。

(*゚ー゚)「ギコってば今はこんなだけど昔は泣き虫ギコって言われてたんだよ」

ミセ*゚ー゚)リ「想像できないですね」

ミセリは気付いていなかったが、ギコが余計な事を言うなと小声でシィに囁いていた。

ミセ*゚ー゚)リ「そういえば、シィさんがさっき使ったのって術ですよね?」

(*゚ー゚)「そうだよー」

ミセ;゚ー゚)リ「あのー術と魔法って何が違うんですか?」

ミセリは術と魔法の違いが分からず申し訳なさそうな顔をしながら尋ねた。


5 名前: ◆x8fzY.jwcY 投稿日:2009/09/17(木) 21:15:47.59 ID:ulYPMBgUO
(*゚ー゚)「えーとね。精霊にお願いして協力してもらうのが術で、クオリティを魔法陣で変化させるのが魔法かな? ごめんね。うまく言えないや」

シィの説明を聞いても理解できず首を傾げていたが何かを閃いたのかポンッと手を叩き口を開いた。

ミセ*゚ー゚)リ「ドクオ説明よろしく」

('A`)「説明ばっかしてる気がするんだが……マンドクセ」

ミセ*゚ー゚)リ「いいから教えてよー。命令だぞー」

面倒だとばかりに早足で歩き始めたドクオだったがミセリの『命令』という言葉を聞いた瞬間、首輪が一瞬だけ光り突然立ち止まると口を開いた。


7 名前: ◆x8fzY.jwcY 投稿日:2009/09/17(木) 21:18:21.10 ID:ulYPMBgUO
('A`)「術っては精霊の力でクオリティを変化させて奇跡に似たような事を起こすものだ。
    伝説では【創世神】が【創世王】に『原律』っていう力を授け、八精霊の力を借りることで『原律』を使い易くしたのが術の始まりだと言われている」

精霊というのは【創世神】が自らの力の一部から作り出した自然現象を操作し世界のバランスを保っている存在のことだ。
普通の精霊は形を持たないが精霊の代表である火精、水精、地精、風精、木精、雷精、光精、そして魔精……

この八精霊と呼ばれる八体は姿形を持ち人間を助け世界を支えていた。
三十年前、魔精が暴走するまでは。


8 名前: ◆x8fzY.jwcY 投稿日:2009/09/17(木) 21:20:56.52 ID:ulYPMBgUO
('A`)「魔法はクオリティで魔法陣を作り、その魔法陣を現象に変化させる。
    昔の人間が原律を再現しようとしたのが魔法の始まりだ」

ミセ;゚ー゚)リ「奇跡や現象ってそんな大袈裟な……」

(*゚ー゚)「そうでもないよ? 何百年も昔には死んだ人を生き返らせたり、
     戦争で荒れ果てた土地を一瞬で元の緑豊か土地に戻した術者が居たらしいし」

('A`)「一昔前には天災級の魔法を使えた奴が居たらしいしな」

ミセ*゚ー゚)リ「そうなんだ……それにしてもドクオは物知りだね」

('A`)「……お前はもう少し物を知った方がいいと思うんだ」

ミセ*゚д゚)リ「失礼な! 基本的なことは知ってるやい!」

('A`)「じゃあ、物もクオリティを持ってることは知ってるよな?」

ミセ;゚ー゚)リ「えっ? クオリティって生物だけが持つ力じゃないの?」

(;'A`)「あのなぁ……」

(;,゚Д゚)「……」

(;゚ー゚)「……」

がっくりとうなだれたドクオに同情的な視線が集まった。


10 名前: ◆x8fzY.jwcY 投稿日:2009/09/17(木) 21:23:58.43 ID:ulYPMBgUO



('A`)「……ずいぶんと広いな」

通路を抜けると一行は広い部屋にたどり着いていた。
だが部屋に今入ってきた場所以外に出口はなく行き止まりのようだった。

ミセ*゚ー゚)リ「道ないね……他に道があったとか?」

(,,゚Д゚)「それはないな。注意して歩いてたが完全な一本道だった」

(*゚ー゚)「じゃあこの部屋に仕掛けがあるのかも?」

ミセ*゚ー゚)リ「ドクオは床も調べてねー」

シィの言葉をきっかけにドクオ以外の三人は荷物の中から松明を取り出しそれぞれ壁まで歩き調べ始めた。


14 名前: ◆x8fzY.jwcY[>>9 マジっすか すみません] 投稿日:2009/09/17(木) 21:30:48.78 ID:ulYPMBgUO
('A`)「……人の気配が全くないな」

ドクオはこの遺跡に入った時から気になっていることがあった。

('A`)(モンスターすら出ないのはなんでだ?)

この手の遺跡は通路や部屋、特にここのように広い部屋はモンスターの巣になっていることが多い。
だがここに来るまでモンスターと一匹も遭遇していない。

('A`)(可能性として考えられるのは調査隊が殲滅したか、それとも……)

('A`)「こりゃ厄介なことになるかもしれないな……」

困ったように頭を掻きながら入口の周辺と床を仕掛けがないか調べ始めた。

('A`)(あれ? 俺だけ調べる範囲広くね?)


15 名前: ◆x8fzY.jwcY 投稿日:2009/09/17(木) 21:37:12.02 ID:ulYPMBgUO


(,,゚Д゚)「なんもねーぞゴルァ」

30分ほど右側の壁を調べていたが何も見つからずギコは座り込んでいた。
腕を組み考え込んでいたようだが何かを閃いたのか突然立ち上がった。

(,,゚Д゚)「壁を壊してみるか」

そう言うと背中の大剣を抜き振り上げる。

(,,゚Д゚)「剛断爪!!」

クオリティにより強化された腕力と大剣を壁にたたき付ける。

(;,゚Д゚)「か、かてぇ……」

鈍い音が響いただけで壁には傷一つ付くことはなかった。

(,,゚Д゚)「ただの石じゃないな」

そう呟くと再び仕掛けがないか調べようとした時

カサカサカサカサ

(,,゚Д゚)「なんだ?」

何かが動く音が聞こえ、目を向けると


17 名前: ◆x8fzY.jwcY 投稿日:2009/09/17(木) 21:38:50.29 ID:ulYPMBgUO
(;,゚Д゚)「うおっ!?」

('A`) カサカサカサカサ

ドクオが床を這っていた。

(;,゚Д゚)「な、何をしてるんだ?」

('A`)「何って、床を調べてるんだよ」

(;,゚Д゚)(わざわざ床に張り付く必要はあるのか?)
(;,゚Д゚)「が、かんばれよ」

('A`)「ああ」

('A`) カサカサカサカサ

ドクオは黒いアレを彷彿とさせる動きとスピードで床を這っていった。

(;,゚Д゚)「……」

ギコはそれを呆然と見送るのだった。

18 名前: ◆x8fzY.jwcY 投稿日:2009/09/17(木) 21:41:50.93 ID:ulYPMBgUO


(*゚ー゚)「うーん、こっち側はハズレかな……?」

左側の壁を触りながら何も無かったことに落胆する。
その時、反対側の壁の方から何かをたたき付けたような鈍い音が聞こえた。

(*゚ー゚)「やっぱり壁を壊そうとしたんだ……」

幼い頃から一緒に居るためかギコの行動パターンを熟知してるらしく呆れたように笑いながら呟く。

(*゚ー゚)(ここはハズレみたいだし、ミセリちゃんが余計な事しないように見張りに……手伝いにでも行こうかな)

四人の中で一番経験が少ないミセリが心配になりミセリが調べている壁の方へ歩きだした。

20 名前: ◆x8fzY.jwcY 投稿日:2009/09/17(木) 21:46:25.71 ID:ulYPMBgUO


ミセ;゚ー゚)リ「……」

ミセリは壁の一点を見つめ悩んでいた。

ミセ;゚ー゚)リ「あ、怪しい……あからさまってレベルじゃないよこれは」

ミセリが見ているその箇所だけ丸く出っ張ったボタンのような物が二つある。

ミセ;゚ー゚)リ「どう見ても罠だけど、押したくなる」

ミセリの指がボタンに触れるか触れないかのところで止まった。

ミセ;゚ー゚)リσ「押したいけど……押したら怒られそうな気がする」

ミセ*>ー<)リσ「でも両方とも押しちゃえ!」

21 名前: ◆x8fzY.jwcY 投稿日:2009/09/17(木) 21:48:18.23 ID:ulYPMBgUO
力強く二つボタンを同時に押した。

するとガコンという音が前と後ろから聞こえ、目の前の壁が開き階段が現れた。

ミセ*゚ー゚)リ「やった!」

<ウワァァアァアアァァァァ……

ミセ*゚ー゚)リ「あ……」

続いてドクオの悲鳴が聞こえた。

ミセ;゚ー゚)リ「ボク知らなーい」

一度だけ悲鳴が聞こえた方へ視線を向けそそくさとその場を離れていった。


23 名前: ◆x8fzY.jwcY投稿日:2009/09/17(木) 21:53:55.15 ID:ulYPMBgUO


(;'A`)「まったく酷い目にあった」

五分後、落とし穴はそのまま下の階に通じていたらしくミセリが見つけた階段を上がりドクオは戻ってきた。

(;,゚Д゚)「大丈夫か?」

('A`)「大丈夫だ。まぁ、落ちたのは無駄じゃなかったな。下に部屋があった。ついでにこれもな」

その手には所々赤黒い染みがついたバッグを持っている。

(;゚ー゚)「これって、まさか」

('A`)「多分調査隊のだろうな。下にはあと三個あったんだが、これが一番キレイだった」

(,,゚Д゚)「生存者は……」

('A`)「絶望的だな」

その言葉にシィは表情を曇らせ、ギコは顔をしかめた。


24 名前: ◆x8fzY.jwcY 投稿日:2009/09/17(木) 22:00:42.57 ID:ulYPMBgUO
('A`)「で、どうする? このまま進むのか? 俺としてはこのまま帰ることをお勧めする」

ミセ;゚ー゚)リ「……え!?」

(#,゚Д゚)「どういう意味だゴルァ」

(#゚ー゚)「生存者がいるかもしれないのに見捨てる気なの!?」

ドクオの言葉にミセリは戸惑い、ギコとシィは怒りをあらわにドクオに食ってかかる。

('A`)「多分だが、この遺跡には角獣がいる」

(;,゚Д゚)「な……!?」

(;゚ー゚)「角獣!?」

角獣とは百年以上生き進化した角を持つモンスターの総称だ。
角獣は百年ごとに進化を繰り返し、最大三本まで角を増やす。つまり角の数が角獣の強さを表しているのだ。

その強さはモンスターの比ではなく、三本角の角獣は一夜にして一国を滅ぼすと言われている。

伝説には角獣がさらに進化した冠獣と呼ばれる存在も登場しているが、実在するか確認はされていない。


27 名前: ◆x8fzY.jwcY 投稿日:2009/09/17(木) 22:13:42.73 ID:ulYPMBgUO
(,,゚Д゚)「だが、何故そう思う? 実際に見た訳ではないだろ」

('A`)「この遺跡に入ってから俺たちはモンスターと遭遇したか?」

(,,゚Д゚)「遭遇してないな。だが、それがどうした?」

('A`)「角獣は遺跡に住み着くことが多いんだが、そんな遺跡にはモンスターがいないらしい」

(#,゚Д゚)「それだけでは角獣がいるかは分からん。それに貴様は、この遺跡を調べに来たんじゃないのか?」

ギコは淡々と話すドクオを睨みつけながら怒声を浴びせる。

('A`)「だからこそだ。王に報告すれば討伐隊ぐらいだすだろ? 討伐されてから調査すればいい」

(#,゚Д゚)「貴様……!」

ギコがつかみ掛かろうと手を伸ばそうとした時

('A`)「だが」

今まで、淡々と話していたドクオが一際大きな声をだした。

28 名前: ◆x8fzY.jwcY 投稿日:2009/09/17(木) 22:19:57.64 ID:ulYPMBgUO
('A`)「だが、討伐隊がすぐに出されるとは限らない。それに一本角が相手なら、俺たちでも勝てる可能性は十分にある」

(,,゚Д゚)「……」

(*゚ー゚)「……」

二人は驚いた顔でドクオを見ていた。

ミセ*゚ー゚)リ(どーせボクは戦力外ですよー)

ドクオが魔法で作った光球を部屋の入口に向ける。

('A`)「もう一度聞くぞ? 戻るのか。それとも……」

ギコとシィの顔を見て
まるで二人に語りかけるように光球を階段に向けた。

('A`)「進むのか」


30 名前: ◆x8fzY.jwcY 投稿日:2009/09/17(木) 22:23:32.90 ID:ulYPMBgUO
(,,゚Д゚)「進むに決まってる。角獣など倒してしまえばいい」

(*゚ー゚)「進むよ。生存者がいるなら助けなきゃ」

ミセ*゚ー゚)リ「ボクも行くよ」

('A`)「それじゃ行くか……っと、その前にミセリ」

ミセ*゚ー゚)リ「なに?」

ドクオが進もうとした時、ふと思い出したようにミセリを呼び止めた。

(#'∀`)「ちょっとそこ座れ」

ミセ;゚ー゚)リ「あははは……やっぱりばれてるよねー」

その後ドクオの説教は三十分も続き、ギコとシィがドクオを宥めやっと先に進んだのだった。

ダメ*;ー;)リ「無事だったんだから、あんなに怒んなくてもいいじゃん……」


31 名前: ◆x8fzY.jwcY 投稿日:2009/09/17(木) 22:27:05.14 ID:ulYPMBgUO


下の階の様子は上と同じでやはりモンスターはいない。だが、大きな違いがある。
壁や床のいたる所に、刃物で切ったような跡があるのだ。ギコが傷一つ付けられなかった壁にだ。

ミセ;゚ー゚)リ「うわぁ……」

ミセリの視線の先には調査隊のバッグがある。
切り裂かれ中身が散乱してる物もあれば、本来白いはずのバッグが赤一色になってる物もある。

(,,゚Д゚)「……」

(*゚ー゚)「……」

('A`)「とりあえず調べるぞ。もしかしたら生き残りがいるかもしれないしな」

その光景に顔をしかめた二人はドクオの言葉に頷き歩きだした。

ミセ*゚ー゚)リ(あれ……? 今なにか光ったような?)

(*゚ー゚)「ミセリちゃん早く来ないと置いてっちゃうよ」

ミセ;゚д゚)リ「ちょっ! 置いてかないでーー!」

この時、妖しく光る二つの目がじっと見つめていた。


33 名前: ◆x8fzY.jwcY 投稿日:2009/09/17(木) 22:29:59.09 ID:ulYPMBgUO


下の階は上の階とは違い大小いくつもの部屋があり、一行はそれを一つ一つ地道に調べていった。

(,,゚Д゚)「この部屋で最後だな……」

(*゚ー゚)「角獣もいないみたいだね」

ミセ*゚ー゚)リ「壁が崩れてる部分があったけど、瓦礫で塞がれて通れないみたいだよ。あれ? ドクオどうかしたの?」

壁や床を調べていたミセリが戻るとドクオが難しい顔をして考え込んでいた。

('A`)「あぁ、調査隊の死体が見つからないのが不思議でな」


34 名前: ◆x8fzY.jwcY 投稿日:2009/09/17(木) 22:34:56.01 ID:ulYPMBgUO
ミセ*゚ー゚)リ「角獣が食べちゃったんじゃない?」

('A`)「そうだったら調査隊の身につけてた物ぐらい残るはずなんだが……」

(*゚ー゚)「そう言われてみると妙ね」

そう、この階は全て調べた。だが見つかった物は、最初の部屋で見つけた調査隊のバッグだけなのだ。

('A`)「とりあえず一度上に戻って休憩しよう」

さすがに疲れていたのだろうドクオの提案に全員一致で賛成だった。

ミセ*゚ー゚)リ「ボクもうお腹ペコペコだよ」

そう言ってミセリが部屋から出ようとしたとき、明確な敵意を持った何かが天井から落ちてきた。


35 名前: ◆x8fzY.jwcY 投稿日:2009/09/17(木) 22:38:48.73 ID:ulYPMBgUO
(;'A`)「ミセリ!!」

近くに居たドクオが咄嗟にミセリを引っ張り後ろに投げる。

ミセ#゚д゚)リ「いきなりなにすん……」

思わず抗議の声をあげたミセリが見たものは、先程まで自分がいた場所に存在する一匹のトカゲだった。


暗闇の中で目が妖しく光り


剣のような二本の尻尾を持ち


爪も研ぎ澄まされた刃のように鋭い



そして、額から伸びた一本の角




この刃を持ったトカゲこそが、この遺跡に住む角獣だった。

36 名前: ◆x8fzY.jwcY 投稿日:2009/09/17(木) 22:41:34.94 ID:ulYPMBgUO


奴隷は少女に知識を与え

少女達は可能性にすがり生存者を探し続ける

遺跡の中で少女は角持つ獣に出会った




旅騎士冒険譚
第T章『砂と踊りの国』


第3話 少女と遺跡



戻る 次へ

inserted by FC2 system