- 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 20:29:53.19 ID:aYKYCL6eO
それは、あまりにも突然の出来事だった。
階段を二階まで登ったところで、俺の耳に入ってきたのは破砕音。
落ちていく夕陽の中、天井の白熱灯はまだ点っていない。
廊下には、等間隔に窓から射し込む陽光と、柱が作る影が落ちていた。
また、破砕音が聞こえた。
何かが割れた音。
正確に言えば、誰かが何かを割っている音だ。
破砕音のペースが上がり、こちらへ近付いてくるのが解る。
と、思ったら破砕音が止んだ。
多分、俺の存在に気が付いたのだろう。
静寂を取り戻した廊下に響いたのは、ローファーがリノリウムの床を叩く音。
規則的な足音は慌てた様子もなく、ゆっくりこちらへ向かって来る。
陽光が射し込む位置に足音が入ると、その足音の主が女子生徒だと解った。
プリーツスカートから伸びる美脚が、陽光に照らさて艶めかしさを増している。
右手に握って引き摺る金属バットが、陽光で輝きを増している。
(;゚Д゚)「ん……バット……?」
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 20:34:03.86 ID:aYKYCL6eO
- 成程、と呟き、理解した。
どうやらコイツは、このバットで教室の窓硝子を叩き割っていたらしい。
(,,-Д゚)「まだ夜じゃないぞ……それにアレは外から叩き割ったんじゃないのか?」
まだ二十メートルほどの距離がある、DQNな美脚の女子に向かって問うた。
「そうだった……だがしかし、後者は頷けないな」
素直に驚いた。
レスポンスが成り立ったことに。
「あの時代は今と比べて防犯面に疎かったようだし、
私はどうあってもこの持論を曲げないよ」
(;゚Д゚)「曲げられるのはこっち、か……?」
少し距離が詰まると、ようやく顔を窺えた。
驚いたことに、その顔は見知ったものだった。
川 ゚ -゚)「――何故、映らなかった?」
唐突にきた質問に、頭を悩ます。
監視カメラでも設置していたのだろうか。
川 ゚ -゚)「ここには誰も来ないはずだ。
だって、見たのだから……未来を……」
彼女のことはよく知らないが、どうやら厨二病かメンヘラの類らしい。
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 20:39:26.26 ID:aYKYCL6eO
彼女がバットを振るう。
破砕音と共に砕けた硝子が、彼女の頬に一筋の傷を入れた。
川 ゚ - )「答えろ……!」
(;゚Д゚)「未来が変わったんじゃないか?」
川; - )「あり得ない……だがあり得た……。
偶然、偶々、人の未来じゃないし、そう」
彼女が言っていることは、高次元過ぎて俺には理解出来ない。
彼女との距離は、いよいよ残り十メートル。
そろそろ逃げないと、明日の朝刊を飾るような出来事に発展し兼ねない。
いや、行方不明と扱われて暫く経ってから、というパターンもある。
川 ゚ -゚)「まあいい……もういいんだ……。
そうだ、どうせ誰も来ないのだから殺してみようか」
ほら、やっぱり。
瞬時に踵を回して、走り出す。
当然のことながら、彼女も走り出す。
か、と床に触れては浮いてを繰り返すバットが恐怖を煽る。
これが、彼女――『沙尾・空流』との邂逅だった。
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 20:40:27.98 ID:aYKYCL6eO
川 ゚ -゚)異能見聞録のようです
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 20:43:31.43 ID:aYKYCL6eO
彼女との邂逅の翌日。
職業学生、正確には生徒であるの俺は、普段通りに気怠い身体を引き摺って登校していた。
校門を通り抜けた俺の腋に鞄が挟まれていないのは、昨日の出来事が原因だ。
昨日、選択授業を終えて後は帰宅するだけとなった俺を呼び止めたのクラスメイトである都村。
そして、気付いた時には俺は兎と追い駆けっこを繰り広げていた。
飼育小屋から放たれた兎達は、自由を謳歌するが如く、駆け回る。
それを追って息を切らした俺も駆け回る。
五匹全ての兎を捕まえた頃には、陽は沈みかけていた。
報酬として都村から渡されたのは、茶色の瓶。
貼り付けられたラベルなど見ずとも解る、これはオロナミンCだ。
元気溌剌ぅ〜、と軽口を叩く都村を殴ってやりくなったが、出来るはずがない。
労働に見合わない代物に、俺は項垂れるしかなかった。
都村と別れ、帰宅しようとした時、気付く。
鞄を教室に置きっ放しだった、ということに。
特に重要なものが入っているわけではないが、中には弁当箱もあった。
持ち帰らなければ、妹にどやされること間違いなしだ。
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 20:47:05.62 ID:aYKYCL6eO
結局、妹にどやされることになったのは、言うまでもない。
帰ってから何度となく謝るも、本日妹から弁当を渡されることはなかった。
代わりの弁当箱はあるだろうに、まったく女というものは解らない。
(,,゚Д゚)「あった……」
三階の最奥にある教室に着き、自分の机にかけられた鞄に視線を当てた。
(゚、゚トソン「おはようございます、猫島君」
(,,゚Д゚)「やぁ、都村」
(゚、゚トソン「鞄……忘れたんですね」
(;-Д゚)「忘れたんじゃなくて、忘れざるを得なかったんだ」
(゚、゚トソン「そんなことより、猫島君はもう聞きましたか?」
(,,゚Д゚)「何をだ?」
(゚、゚トソン「二階にある教室の窓がいくつか割られていた、という話です」
(,,-Д-)「……知っているよ……」
(゚、゚トソン「聞いた、じゃなく、知っている?」
(,,-Д゚)「ああ、犯人は未来が見える、とかいう厨二病の方だ……」
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 20:53:08.41 ID:aYKYCL6eO
(゚、゚トソン「それって……」
(;-Д゚)「そうそう出会って堪るか」
俺の机は教室の窓際、そして丁度真ん中という絶好の居眠りポジションにある。
そこから後ろに二つ机を置いた三つ目、前から数えればは六つ目に当たる机に、頬杖をついた人物がいた。
川 ゚ -゚)「…………」
そう、昨日バットを手に俺を襲った沙尾・空流だ。
窓から入る風が、彼女の長い髪を棚引かせている。
(゚、゚トソン「沙尾さんがどうかしました?」
(,,゚Д゚)「いや、相変わらずあそこだけ異空間だなぁ、と……」
彼女の周りには、人の姿がない。
授業が始まれば別だが、休憩時間などなると、あそこには彼女しか存在しなくなるのだ。
(゚、゚トソン「なんたって『謎さん』ですからね」
(,,-Д゚)「『謎さん』……ね」
それは彼女の渾名。
ミステリアスな雰囲気と、ミステリアスな彼女の背景。
まったく知られていない、つまりは『謎』。
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 20:57:16.48 ID:aYKYCL6eO
-
この渾名は俺が沙尾と同じクラスなった時には既に存在していた。
クラスメイトがこそこそと彼女を『謎さん』と呼び、談笑していたのを覚えている。
(゚、゚トソン「あの美貌で成績優秀……だけど、彼女と交友関係を持つ者は皆無。
ただそれだけの話なのに『謎さん』だなんて」
(,,-Д゚)「いや、本人が知られないようにしてるんだから仕方ない」
(゚、゚トソン「……沙尾さんが『謎さん』なら、差し詰め猫島君は『謎君』ですね」
(;-Д-)「どうしてそうなる……?
俺はどこにでもいる、至って普通の高校生だ」
(゚、゚トソン「はい、見た目は対人関係が苦手な非リアです」
(;゚Д゚)「苦手じゃねーよ! ただ友達が少ないだけで決め付けんな!」
(゚、゚トソン「自分で言いますか」
(;゚Д゚)「言うね! ああ、言ってやるさ!」
黒板の上にあるスピーカーから、SHRの開始を告げるチャイムが降り注いだ。
教室内の喧騒が一段階増したような気がする。
都村は、どうぞご勝手に、と一言残して席に着いた。
俺も急いで自分の席に着く。
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 21:01:54.78 ID:aYKYCL6eO
着席後、息を吐いて、俺は何を思ったか、そっと身体を後ろへ向けてみた。
隣席同士会話を交わす、クラスメイト達を擦り抜け、目が合う。
川 ゚ -゚)「…………」
(;゚Д゚)「…………」
能面な顔の沙尾は、興味なさげに視線を外し、窓の外へと投げた。
どうしてかは解らないが、妙に沙尾が気になる。
別に恋心を抱いたわけではない。
窓硝子を割ったついでに、自分を殺そうとした人物に対して、そんな感情を抱く奴がいたら尊敬する。
やはり昨日の出来事があまりにも衝撃的だったからだろうか。
都村と同じ真面目の部類に入るであろう沙尾が、窓硝子を叩き割っていたのだ。
人は見かけによらない、という言葉にこれほどまでに納得がいったことはない。
(,,-Д゚)(話すべきじゃないよな……)
教師に昨日のことを話せば、沙尾は退学になるだろう。
その暁には『謎さん』という渾名から『狂戦士』という渾名に変わることになる。
そして、『狂戦士』は告げ口をした俺のところへ御礼参りにやって来る。
――やめておこう。
担任教師が教室に入ってきたこともあり、このことはそう結論付けた。
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 21:06:43.50 ID:aYKYCL6eO
微睡みの中、女性教諭の声だけが耳に届く。
その声は柔らかく、一定のリズムで言葉が発せられているように感じた。
必死に授業を行っているところ悪いが、俺にとって授業内容は子守歌にしかなっていない。
目覚まし代わりのチャイムが鳴り響く。
一斉に立ち上がるクラスメイト達に遅れて、俺も立ち上がり、礼。
次の瞬間、何人かのクラスメイトが疾風の如く教室を出ていった。
Σ(;-Д゚)「……あ! しまった!」
時計を見ると、短針は十二、長針は五の辺り。
要するに現在、御昼休憩時間、俗にいう昼休みだ。
(; Д )「チクショ……ウ……」
俺は力無く机に突っ伏した。
教室を飛び出したクラスメイトが向かったのは、食堂だ。
食券制の食堂には、菓子やパンなどを置いた売店も入っている。
(; Д゚)「時既に遅し……」
(゚、゚トソン「どうしました、猫島君?」
(;-Д゚)「ああ、都村……ちょっと油断した……」
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 21:10:59.49 ID:aYKYCL6eO
可愛らしい兎の模様が入った巾着を手に持つ都村は首を傾げる。
きっとその中には、さぞ彩り豊かな弁当が入っているのだろう。
(゚、゚トソン「……? 御弁当食べないんですか?」
(;-Д゚)「くっ、やめろ……鎮まれ……俺の腹よ……」
(゚、゚トソン「……忘れたんですか」
(;゚Д゚)「違う! 作ってもらえなかったんだ!」
(゚、゚トソン「こんな時なんて言えば……そう、情けない」
(; Д )「かっ……」
(゚、゚トソン「御金は?」
(;゚Д゚)「あるよ」
(゚、゚トソン「なら売店でパンでも買ったらどうですか?」
(;-Д-)「今から行ってもカツサンドは完売しているだろうし……」
と、言ったものの俺は成長期の真っ只中だ。
空腹でまともに眠れない、いや、授業を受けられなくなってしまう。
何か菓子パンでも、と思い立ち、重い腰を上げる。
いってらっしゃい、と俺に言った都村は、自分を待つ女子生徒の席へ向かった。
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 21:17:08.32 ID:aYKYCL6eO
- 教室を出た俺は欠伸を一つ。
高校に入ってからは改善されたはずだったが、ここ最近は夜型の傾向にある。
(,,-Д゚)「良くないな……」
廊下を行き交う人達の会話、教室から漏れる笑い声。
それらが徐々に俺の眠気を吹き飛ばしていく。
また、大口を開けて、欠伸を一つ
「お前、そこの階段から転げ落ちるぞ」
ぼそっ、と耳に届いた物騒な予言。
欠伸をしていた俺は、反射的に目を開け、振り返る。
俺の後方で、一番近い位置を歩いていたのは、沙尾・空流だった。
(;゚Д゚)「なんなんだ……」
多分教室に戻るのであろう沙尾の手には、野菜生活の紫が握られている。
何をしたいのだろう、彼女は。
いやいや、と俺は頭を左右に振って思考をやめる。
よく関わらない方がいい類の者と関わってしまうが、別の意味で彼女は関わらない方がいい類の人間だ。
そんなことを思いながら、階段を一段降りた時、背に衝撃を受けた。
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 21:21:20.31 ID:aYKYCL6eO
視界が一転、二転、三転、と縦に回る。
女子生徒のものであろう短い悲鳴が耳を劈く。
(;-Д-)「いっ……てぇ……」
突然のことに混乱する頭は、まず痛みを訴えるこを選択したようだ。
次に、状況を理解しようと周りを見る。
何事か、と立ち止まる男子生徒。
驚きから口元に手を添え、心配そうに俺を見下ろす女子生徒。
そうか、ここは階段の踊場だ。
大丈夫か、と問う男子生徒が差し出す手を握り、立ち上がる。
その男子生徒が必死に謝り始めたことから、コイツが俺の背にぶつかった奴だと解った。
――お前、そこの階段から転げ落ちるぞ。
意図せず再生された沙尾・空流の言葉。
気付けば、引き止める男子生徒の声を背に、階段を駆け登っていた。
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 21:25:00.55 ID:aYKYCL6eO
教室、沙尾の席に、彼女の姿は無かった。
と、なれば教室を出てすぐのところにある非常階段しかないだろう。
開け放つ。
頬を撫でる冷たい風が、秋の訪れを感じさせる。
_,、_
川 ゚ -゚)「……うるさい」
いきなり怒気を含んだ言葉で迎えられた。
いや、確かに乱暴に扉を開け放ったのは悪かったと思うが、それは急いでいて。
川 ゚ -゚)「そんなこと訊いていない」
ヤバイ、心が折れそうだ。
川 ゚ -゚)「それで、私になんの用が?」
(;-Д゚)「……お前は預言者か?」
川 ゚ -゚)「……ぷっ、ふふ……」
(;゚Д゚)「真顔で笑うなよ!」
_,、_
川 ゚ -゚)「あぁ、解らなかったか? 馬鹿にしたのだが」
(;゚Д゚)「それは解るわ!」
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 21:29:21.87 ID:aYKYCL6eO
(,,-Д゚)「はぁ……擦れ違い様、俺に言っただろ?」
_,、_
川 ゚ -゚)「然り気無く隣に座らないでくれないか?」
(;-Д-)「……『お前、そこの階段から転げ落ちるぞ』って……」
言葉が返ってこない。
沙尾は空を仰いで、流れる雲を目で追っている。
川 ゚ -゚)「――猫島君に話しても、なんの意味もない」
無表情、無機質。
そんな表情は、俺にはとても悲しそうで、苦しそうに感じとれた。
厨二病、と一言で片付けられるようなものではない『諦念』が彼女には在った。
川 ゚ -゚)「私の好きな花は彼岸花だ、真っ赤な」
(;゚Д゚)「……は?」
川 ゚ -゚)「覚えていたらでいい」
また、わけの解らないことを言い出しやがる。
誕生日が近いのか知らないが、ただのクラスメイト俺に言うか、普通。
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 21:36:51.25 ID:aYKYCL6eO
川 ゚ -゚)「さようなら」
一方的に別れの挨拶を済ませ、沙尾は立ち上がる。
プリーツスカートを軽く払うと、階段を一段一段降りていく。
(,,-Д゚)「なぁ――」
彼女は、立ち止まらない、振り返らない。
仕方ない。
器物破損になるが、彼女の信用を得るには、こうするのが一番早いのだ。
中に着るワイシャツのボタンを外してから、袖を捲る。
――そして、打突。
垂直に下ろした拳は、鉄製の階段を貫いた。
(,,-Д゚)「よう」
丁度真下にいるであろう沙尾。
その彼女に向かって、拳を開き、ひらひらと手を振った。
川;゚ -゚)「……それは、どんなトリックだ?」
戻ってきた彼女の表情は、果たして驚愕。
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 21:42:15.28 ID:aYKYCL6eO
(,,゚Д゚)「――沙尾に話しても、なんの意味もない」
川;゚ -゚)「…………」
(,,-Д゚)「……どうする?」
俺が腕を抜くのと同時に、沙尾が無言を解く。
川;゚ -゚)「悔しいが……私の負けだ……」
俺の目の前にきた沙尾が、飲みかけの野菜生活を渡してきた。
(;゚Д゚)(……飲めと?)
隣に腰掛け、足元にある俺が開けた穴を爪先で突く。
川 ゚ -゚)「…………」
(,,-Д゚)「話してみろよ」
川 ゚ -゚)「『未来が見ることが出来る』――と、言ったら信じるか?」
(,,-Д-)「ああ、俺はそういった類の話は信じられるよ」
川;゚ -゚)「これは、超能力なのか?」
(,,゚Д゚)「俺は『異能』って教えられたな――」
俺は、クーから渡された野菜生活にそっと口を付けた。
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 21:49:33.32 ID:aYKYCL6eO
俺は沙尾に『異能』について知る限りのことを説明をしてやった。
『異能』。
何かを契機にして人に宿る超異常能力。
大概の者は『異能』を制御出来きずに死んでしまうらしい。
死には二種類あって、力に喰われて変死を遂げるか、暴走しているところを殺されるか。
たとえ制御出来たとしても、一度宿った『異能』は取り除くことは不可能。
一生その能力と付き合っていかなければならない。
と、これだけ説明したところで、昼休みの終了を告げるチャイムが鳴ってしまった。
続きは放課後ということになり、俺は先に教室へ戻るように促された。
多分、男と肩を並べて歩くのが嫌なのだろう、多感な年頃という奴だ。
休み時間に済ましておいた方がいいんじゃないか。
ふとそう思って何度か沙尾に話しかけてみたが、徹底的に無視された。
ひどい、こんな扱いがあって堪るか。
周りからの視線が、
(゚、゚トソン「…………」
特に都村からの視線が痛い。
ほら、笑えよ、笑うがいいさ、都村。
こうして俺は、改めて自分のコミュ力の無さを実感させられたのであった。
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 21:53:48.92 ID:aYKYCL6eO
そんなこんなで放課後。
雑談、部活動、帰宅などクラスメイト達の動きは様々なものである。
俺はというと沙尾の席がある後方に身体を向けて、
(,,゚Д゚)「すn――」
川# - )「…………」
だ、という机に両手をついて立てた音が、俺の声を遮った。
教室内がざわめき立つ。
(;゚Д゚)「ど、どど、どうしたんだ……?」
川#゚ -゚)「人前で馴れ馴れしくするな――!!」
沈黙。
そして、またざわめき立つ。
(;゚Д゚)「あ、ああ……なんかよく解らないけど、悪ぃ……」
川#゚ -゚)「だから……!」
また沙尾が机を叩いた。
横にかけた鞄を取り、俺の前までやって来る。
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 21:57:35.76 ID:aYKYCL6eO
(;゚Д゚)「ナ、ナンデショウ……?」
川#゚ -゚)「行くぞ!」
俺の手を取り、沙尾は歩き出した。
女子に手を引かれて、なんて状況に胸が高鳴ることはなく、感じるのは好奇の視線。
(;゚Д゚)「あのさ……」
川#゚ -゚)「なんだ? 空気が読めない猫島君」
教室を出ても、廊下で屯する連中や、行き交う人から好奇の視線が当てられる。
(;-Д゚)「いやぁ……この状況、誤解されないか……ってね?」
川#゚ -゚)「…………」
(;-Д゚)「…………」
川;゚ -゚)「…………」
(;-Д-)「むしろああしないで、普通にしていれば……」
川;゚ -゚)「どちらにしろ、私達を見る目に変わりはなかった」
(;゚Д゚)「大分変わるわ!」
沙尾は、ぱっと俺の手を離した。
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 22:02:14.16 ID:aYKYCL6eO
沙尾はあの優等生の都村を差し置いて、学年トップの成績を一年時から維持している。
だが、彼女は頭が良いように見えて、実は結構馬鹿なようだ。
その近付き難い雰囲気さえ取っ払えば、簡単に友人が出来るだろう。
川;゚ -゚)「余計な御世話だ……猫島君にだけは言われたくない……」
(;-Д-)「そう言われると泣ける……」
俺達は、並んで階段を下りている。
相変わらず好奇の視線を受けているが、沙尾は必死に気にしないようにしているみたいだ。
川 ゚ -゚)「誰が自意識過剰だ」
(;-Д゚)「言ってねーよ……それより、お前の異能のことを話してくれ」
川 ゚ -゚)「…………」
(,,-Д゚)「……?」
川 ; -;)ブワァッ
(;゚Д゚)「ちょっ、えぇぇぇええええええええええ!?」
突如として涙を流し始めた沙尾。
慌てふためく俺の手は何故か、ジャグラーも吃驚なパントマイムを行っている。
配慮が足りなかったか、俺はどうするべきだ。
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 22:06:29.75 ID:aYKYCL6eO
そうだ、こんな時は一発芸。 泣いているのなら、笑わせてしまえばいい。
俺はパントマイムを行う手を人差し指だけ残して握り、鼻へ――
川。゚ -゚)「人差し指で鼻の頭を押して、『ほら、外国人』と言って似非外国人を演じる。
余った左手は私の肩に置いて、優しく揺する」
(;゚Д゚)「……へ?」
俺の渾身の一発芸を、まさかのネタバレ。
しかもその後の一挙一動まで当てやがった。
_,、_
川。゚ -゚)「つまらない」
おまけにつまらない、とktkr。
なんだこれ、恥ずかしい、罰ゲームか、そうなのか。
誰か教えてくれ、頼む。
(|||-Д゚)「…………」
川。゚ -゚)「こういうことだ……解っただろう……?」
(|||゚Д゚)「な……なんという精神攻撃! 最強と言わざるを得ない異能だっ!」
川;゚ -゚)「違う、多分理解出来てない……」
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 22:14:26.30 ID:aYKYCL6eO
取り乱していた俺が落ち着いた頃には、一階に到着していた。
現在、部室棟とラバーグラウンドの間にある道を通って正門へ向っている。
(,,゚Д゚)「つまり、涙を流した時に対象者の未来が見える、ってわけか」
川 ゚ -゚)「正確に言えば、涙を流した時見ている『対象』の未来が見える、だな」
(,,-Д゚)「成程……人に限らず、か……。
昨日あんなこと出来たのは、校舎二階の未来を見たから……」
川 ゚ -゚)「ああ、七時になるまで誰も来ない……はずだった……」
(,,-Д-)「が、俺がやって来た……」
川 ゚ -゚)「もしかして、異能というのは異能を持つ者には効かないのか?
それなら納得がいくのだが……」
(,,゚Д゚)「いや、それはないと思う。
現に俺は異能による攻撃を何度か喰らったことがある」
川;゚ -゚)「……喰らった? 見かけはひょろひょろなのに、存外武闘派なんだな」
(;゚Д゚)「いや、見かけ通りだよ……で、あんなことをした理由は?」
川 ゚ -゚)「……今日が私の命日になるから、少し自暴自棄になってな」
(;゚Д゚)「……は?」
さらっと放たれた言葉で、俺の頭のキャパシティーは限界を超え、思考が停止した。
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 22:18:25.89 ID:aYKYCL6eO
俺が問わなかったからか、沙尾はそれ以上のことを話そうとしなかった。
そこを左へ少し行ったら正門だ。
沙尾の話が本当ならば、彼女とは今日を以て二度と会うことはなくなる。
彼女の帰る方向がどちらだったか考えていると、声がかけられた。
川 ゚ -゚)「奢ろう」
沙尾の身体が校門ではなく、右の食堂へ向く。
(;゚Д゚)「……?」
川 ゚ー゚)「話を聞いてもらった、御礼だ」
この微笑みから、俺は理解した。
沙尾は諦めている、受け入れている。
いや、諦めるしか、受け入れるしかなかったのだ
川 ゚ー゚)「何がいい? 野菜生活か?」
(,, Д )「……奢ってもらう貸しがない」
_,、_
川 ゚ー゚)「だからな……そうだ、昨日猫島君を殺そうとしただろう? 贖罪させてくれ」
(,, Д )「そんなこと慣れっこだから、気にしていない」
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 22:22:47.25 ID:aYKYCL6eO
呆れた、といった感じに沙尾は浅く肩を竦める。
川;゚ -゚)「ずいぶん強情なんだな、猫島君は」
(,,-Д゚)「前払いだ」
_,、_
川;゚ -゚)「……?」
(,,゚Д゚)「俺がお前を助ける、それならいいだろ?」
沙尾は今日まで死を恐れていた。
彼女がこうなったのは、生への執着を無くすためなのだろう。
沙尾が手が、口元に持っていかれる。
川 ; -;)「はい……御願いします……」
(,,゚Д゚)「ああ、任せておけ」
根拠はないが、必ず終わらせてやると野菜生活に誓う。
また労働に見合わない報酬で、面倒事を引き受けてしまった。
しかし、明日から照れた沙尾が積極的に誰かと関わろうとする姿が拝める。
それは十分労働に見合った報酬になるではないか。
涙の向こうに映る未来は、ぼやけたものなのだ。
必ず、なんとかしてみせるさ。
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 23:21:26.92 ID:aYKYCL6eO
それから少し経って、俺達の姿は食堂に在った。
テーブルを置いて対面する形で、俺は野菜生活の紫を飲みながら沙尾の話を聞く。
沙尾は中学三年生の時、自分に異能が宿っているのを気付いたらしい。
昔っから泣き虫だった彼女は、ある日いつものように涙すると、頭に膨大な量の情報が流れ込んできた。
頭が割れるような激痛に、更に涙しながら、彼女はぼんやりと理解したそうだ。
それは、目の前にいる母の未来、一生。
パチンコ中毒者の父から暴行を受ける母の姿。
泣く泣く、なけなしの金を渡す母の姿。
それが何度も、まるでループするかのように繰り返される。
終には母へのドメスティックバイオレンスは苛烈を極め、元在った借金は膨れ上がり、母は自殺する。
沙尾は、病院で目を醒ました時、それらは悪い夢だと割り切った。
だが全て、彼女が見た通りに実現してしまったのだ。
そして、母の葬儀が執り行われる前日、沙尾は見てしまう。
涙の向こう映る自分の未来を。
今後の不安から、沙尾は洗面台の鏡に向かい、涙したらしい。
自分の未来は、この異能を隠しながらも上手く使い、孤独ながらも一人幸せに暮らす姿。
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 23:26:50.30 ID:aYKYCL6eO
だが、それも長くは続かなかった。
高校二年生の秋、そこで未来はぷつりと終わってしまうのだ。
沙尾は、未来を変えようと決意する。
一度目の未来の最期は、下校中途中に車に轢かれる、というものだった。
ならばその日は学校を休んでしまえばいい、家から出なければいい。
そう思い、まだ遠いその日を気にかけながら、彼女は毎日を過ごした。
だが、これで本当に変わるのだろうか。
気になった沙尾は、もう一度自分の未来を見てみた。
一度未来を見たせいでなのか、その内容多少変わっていたものの、大筋はそのまま。
そして、高校二年生の秋、一度目では最期になっていた日。
また、未来はそこでぷつりと終わった。
今度は家に強盗が入り、暴行の末殺される、という最期。
それからも、沙尾はなんとか未来を変えようとした。
最期の日の様々な行動パターンを想定し、未来を見る。
だが何度繰り返そうとも、待っているのは死だった。
最終的に、彼女は諦めた。
未来は変えられないのだ。
それからは、苦悩し続けながら執行日を待つ死刑囚のように、生ていくしかなかった。
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 23:31:54.30 ID:aYKYCL6eO
話し終えた沙尾に、俺は野菜生活を渡した。
躊躇いながらも口を付けるところに、親近感を覚える。
(,,゚Д゚)「……なぁ、沙尾」
_,、_
川 ゚ -゚)「これを返した、ということはそういうことになるのか?」
(,,-Д゚)「違う……俺が約束を一度だって破ったことがあったか?」
川 ゚ -゚)「ああ、無いな。 なんたってこれが初めての約束なのだから」
(,,-Д-)「俺の一度は言ってみたかった台詞だ」
川 ゚ -゚)「訊いていない」
沙尾の冷ややかな視線など、気にしなければどうということはない。
(,,゚Д゚)「まぁ、なんだ、沙尾」
川 ゚ -゚)「なんだ?」
(,,゚Д゚)「未来は変えられる」
川 ゚ -゚)「……そう思わなければ、意味がないからな」
(,,-Д゚)「いや、お前の話を聞いて思ったんだ」
川 ゚ -゚)「解らないな。 顔を青ざめさせるならまだしも」
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 23:37:15.69 ID:aYKYCL6eO
(,,-Д-)「お前の未来は見る度に、内容が変わっているんだよな? 大筋以外は、多少変化がある」
_,、_
川 ゚ -゚)「ああ、それで?」
(,,゚Д゚)「未来は変わっているじゃないか……それに、今まで見た未来に俺が出てきたことはあったか?」
川 ゚ -゚)「……だが死という未来は固定されている」
(,,-Д゚)「いや、それも変えられるはずだ……変えてみせるさ……」
川 ゚ -゚)「猫島君、私は全てを話した。
恥部も、何もかも、全て」
(,,-Д゚)「……ん? ああ、そうだな」
川 ゚ -゚)「対価に猫島君も、自分のこと包み隠さず話してくれ」
(;-Д゚)「……俺はどこにでもいる至って普通の高校生だ。
家族構成は父と母、俺と妹の四人家族で、
5LDKのマンションの四階に住んでいる」
川 ゚ -゚)「……あくまでも隠すつもりか」
(;-Д-)「隠してなんかいない」
川 ゚ -゚)「まぁ、今はそれでいいだろう。
明日生きていたら調べよう、ホクロの位置から性癖まで」
(;゚Д゚)「やめい!」
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 23:45:04.74 ID:aYKYCL6eO
野菜生活の中身が空になったのか、ず、という音がパックの中で響く。
それを渡してきた沙尾は、記念に取っておけ、とでも言いたいのだろうか。
(;゚Д゚)「それで、最後に見た未来での死因と時間は?」
川 ; -;)ジワッ
胸ポケットから取り出した小さな手鏡を見て、沙尾は涙し始める。
女の子が泣き顔って本当にいいものですね。
嘘です、やはり女の子は笑顔が一番だろう。
(,,-Д゚)(俺に出会い、そして全てを話したから未来が変わっているだろうと思って、か……)
川 ; -;)「時間は変わらない……五時頃……」
(,,゚Д゚)「後、大体一時間っとところか……場所と状況は?」
川。゚ -゚)「ラバーグラウンド、私は一人歩いている……そこに……」
沙尾が、上を指差した。
人差し指だけを立てた手は、目にも留まらぬ速さで振り下ろされる。
まさかとは思うが、ジャンボジェットでも降ってくるのだろうか。
川。゚ -゚)「ヘリが」
(;゚Д゚)「ヘリ……ヘリコプター!?」
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 23:51:37.88 ID:aYKYCL6eO
大きさは比べようがないが、俺の予想は大体当たっていた。
これは一体どうしたものか。
そこに行かなければいい、という話ではない。
そうすれば、また別の死が待っているのだ。
見た未来の通り行動して、死を回避する方法。
それを見付けなければならない。
(,,-Д゚)「なぁ……」
川 ゚ -゚)「なんだ?」
(;-Д-)「いや……なんでもない……」
その死は対処出来ないから別の死を、と言おうとした。
だがそれはあまりにも情けなく、信用を失い兼ねない。
それに、そんなことをして無限ループに囚われ、時間が来てしまう可能性もある。
沙尾の腰にロープでも括り付けて、墜ちてきた瞬間思いっきり引く、なんてどうだろうか。
川 ゚ -゚)「それだと多分失敗に終わって死ぬか、未来が変わって別の死を迎えるか」
(;゚Д゚)「だよな……」
一体どうすればいいんだ。
俺の異能は役に立たないだろうし、俺の数少ない友人達の異能も役に立たないだろう。
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/04(日) 23:57:54.24 ID:aYKYCL6eO
(,,-Д-)「あの人なら……」
_,、_
川 ゚ -゚)「あの人、とは?」
(,,゚Д゚)「いや、いない人を頼りにしようなんて馬鹿げているな」
川 ゚ -゚)「……女か」
(;゚Д゚)「ああ……いや、なんで……?」
川 ゚ -゚)「別に」
(;-Д゚)「そ、そうか……あ、日村先輩に協力を仰ぐか……?」
_,、_
川 ゚ -゚)「日村、というのはあのハーフの生徒会長か?」
(,,-Д゚)「ああ、その日村先輩も異能者だ」
川 ゚ -゚)「また女か……」
(;゚Д゚)「な、何か問題が……?」
川 ゚ -゚)「然して」
然して、ってことは多少問題があるのか。
何が言いたいんだ、この内から黒いものを溢れさす沙尾は。
これだから女は解らない、というかそれ以前に恐いのだが。
- 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/05(月) 00:03:05.07 ID:zl4rUqMVO
(,,-Д-)「考えてみれば、日村先輩の異能も間に合わないか、巻き込まれて……」
川 ゚ -゚)「一ついいか?」
(,,-Д-)「ちょっと待っててくれ……」
川 ゚ -゚)「『俺がお前を助ける』」
(,,-Д-)「…………」
川 ゚ -゚)「猫島君は確かにそう言った」
(,,-Д゚)「…………」
川 ゚ -゚)「…………」
(;-Д゚)「はは……」
川 ゚ -゚)「ふふ……」
それは脅しですか、沙尾さん。
俺一人でどうにかしろと言うのか、この鬼畜め。
確かに言った。
それに男に二言はない、という。
だがこの場合、それは――
- 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/05(月) 00:07:57.12 ID:zl4rUqMVO
川 ゚ -゚)「猫島君、信じてるからな」
(; Д )「ハイ……」
実はもう、沙尾はこの世に未練はないんじゃないだろうか。
死んでも構わないから、俺にこんな無茶を言って遊んでいるのかもしれない。
いや、一人孤独に死ぬのが嫌で、そこにホイホイついて来たのが俺で、道連れにしてしまおう、と。
(;゚Д゚)(……あり得る)
いやいや、あの諦念と涙がある。
しかし沙尾は自由に涙することが出来るみたいだった。
(; Д゚)「ぐぉぉ……」
_,、_
川 ゚ -゚)「人間不信になったみたいな顔してどうした?」
誰のせいだよ、馬鹿。
こんなことで頭を悩ませている場合ではない。
時間は刻一刻と迫っているのだ。
未来は確定している。
死で確定している未来を覆すには、その死の直前で沙尾を助ける他ない。
仮にそれが成功したとして、次なる死が待ち構えている可能性だってある。
それから暫く、俺は頭を抱え込んで悩み続けた。
- 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/05(月) 00:14:37.85 ID:zl4rUqMVO
(,,-Д-)「沙尾」
川#゚ -゚)「…………」
(;-Д゚)「ん……な、何を怒っているんだ……?」
川#゚ -゚)「私を無視するなんていい度胸しているな、猫島君」
(;゚Д゚)「あ……」
_,、_
川#゚ -゚)「確かに、私も意地が悪かったが、五度も無視するとは――」
すっかりいじけてしまった沙尾はぶつくさ言い続ける。
こんなの家の妹と変わらないじゃないか。
やっぱり、いや、素よりそのつもりだが、助けてやらないと。
(,,゚Д゚)「沙尾! 聞いてくれ!」
川;゚ -゚)「なっ……急に大声を出すな……」
(,,-Д゚)「お前には見た未来の通りに動いてもらう。
ヘリが墜ちて来たら、俺が飛び込んでお前を助ける」
川 ゚ -゚)「……猫島君、もしかしてアホ?」
(;゚Д゚)「うるせー! これ以外思い付かなかったんだよ!」
川*゚ー゚)「ぷ、ふふっ……ちゃんと助けてくれよ?」
- 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/05(月) 00:18:54.93 ID:zl4rUqMVO
(,,-Д゚)「ああ、任せろ……次に、お願いがある……」
川 ゚ー゚)「なんだ?」
(,,-Д-)「俺一人だと沙尾を助けてやれないかもしれない。
カッコ悪いけど、もしもがあるから」
川 ゚ー゚)「ああ、構わないよ」
(,,-Д゚)「悪ぃ! あんな異能見たら吃驚するかもしれないけどさ」
川 ゚ -゚)「猫島君」
俺はスラックス・ズボンから携帯電話を取り出す。
(,,゚Д゚)「ん?」
川*゚ -゚)「ア、アドレス交換とやらをしてみたいのだが……」
(;゚Д゚)「このタイミングで!?」
沙尾が横にある椅子に置いた鞄を開け、携帯を取りだそうとしている。
これには、露骨に苦笑を浮かべせざるを得ない。
川;゚ -゚)「……どうやら机の中に忘れてきてしまったようだ」
(;゚Д゚)「そうか……明日にするか……?」
川;゚ -゚)「いや、家電も兼ねているから取ってくる」
- 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/05(月) 00:26:16.91 ID:zl4rUqMVO
沙尾が、駆け足で食堂から出ていく。
食堂の時計の短針はまだ四、長針は八の位置にある。
俺は目を瞑ったまま、慣れた手付きで携帯を弄り、耳に当ててコール音を聞く。
(;゚Д゚)「あ、日村先輩……いや、だから俺です!
え、兎を逃がした犯人……お前カァーッ!!」
左手でテーブルを叩いて立ち上がった。
音声だけのやり取りだが、このオーバーリアクションは向こう側にも伝わっただろう。
日村の笑い声を聞きながら、座り直そうとした時、俺は固まった。
「ったく! 最近毎日のようにイタズラして!」
と、食堂全体から窺える位置にかけられていた時計を、売店のおばさんが外していたのだ。
携帯からは日村の呼びかけの言葉が聞こえる。
(;゚Д゚)「あのッ! その時計……!」
「あ、この時計ね、イタズラされてて……何分進んでたかしら、これ?」
俺はおばさんが腕時計を見るより早く、携帯で時間を確認し、駆け出す。
現在の時刻は、五時二分だ。
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/05(月) 00:30:19.79 ID:zl4rUqMVO
観音開きの扉を開け放ち、食堂を出た。
ラバーグラウンドを突っ切る沙尾の姿が目に入る。
多分、非常階段から教室に向かうつもりなのだろう。
(;゚Д゚)「クソッ……沙尾――!!」
叫び、全速力で駆ける。
気付いていないのか、沙尾。
ヘリの飛行音が、近付いて来ているのを。
川 ゚ -゚)「……?」
声に、沙尾が振り返った。
(;-Д゚)「こっちに来ぉおおおおおおッ、ぉおおいッ!」
走りながら叫ぶのがこんなに辛いなんて、初めて知った。
胸が内から裂けてしまいそうだ。
川;゚ -゚)「――!!」
どうやら気付いたようだ。
早く、早く、こっちへ。
- 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/05(月) 00:35:04.66 ID:zl4rUqMVO
しかし、沙尾は足を動かそうとはしなかった。
動きがあったのは首と口元、そして目。
川 ;ー;)
何をやっているだ、何を見ているんだ。
やめろ、首を横に振るうな。 微笑むな、そんな悲しそうに。
ふざけるな、諦めるなよ。
約束しただろ、俺を嘘吐きにするつもりか。
(; Д )「クッソォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ――!!」
悲鳴を上げる身体を前に倒しす。
少しでも、少しでも速く。
すぐ後ろから爆音が轟いているのだ。
もっと速く動け、動いてくれ、俺の脚よ。
ヘリに追い抜かれる前に、沙尾のところへ。
川 ; -;)「来るな――ッ!!」
嫌だね。
絶対に助けてやる、絶対にだ。
一つ、お前に頼みたいことが出来てしまったからな。
そのチートクラスの異能で、見てもらいたいものがある。
- 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/05(月) 00:40:21.82 ID:zl4rUqMVO
(; Д )「沙尾ッ!」
手を伸ばす。
後一歩、後一歩だ。
川 ; -;)「どうして……!」
間に合った。
足を止め、抱き寄せる。
(;-Д゚)「俺、実は耳が悪いんだ」
川 ; -;)「悪いのは頭の方だ!」
胸を拳でぽかぽか叩く沙尾。 こんな状況で萌え殺すつもりか。
墜ちて来るヘリの方へ顔を向ける。
その最中、一瞬視界に入り込んだ。
部室棟と前で、左手を腰に当てて堂々と立つ、金髪の女子生徒の姿が。
(;-Д゚)「沙尾、もしもそのまま落ちそうだと思ったら、受け身を取るんだぞ?」
川 ; -;)「え……?」
腰を回転させ、沙尾を宙に思いっきり放る。
胸や尻に無駄な脂肪を付けているくせして、意外と軽かった。
川;゚ -゚)「何を――!?」
- 57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/05(月) 00:45:12.55 ID:zl4rUqMVO
沙尾のずっと後方の位置に立つ金髪の女子生徒――日村が、肘を引いていた。
後は、自分の身の心配だけだ。
もう、ヘリは目の前まで迫っている。
(; Д )「良かった……」
沙尾の声が聞こえたような気がした。
だが聞こえるのは、ヘリが立てる爆音だけ。
(; Д゚)「どうする……」
異能を使うべき状況だ。
しかし、異能を使ってしまえばヘリの搭乗者を殺してしまうかもしれない。
いや、この墜ち方ではどちらにしろ搭乗者は死ぬ。
(,, Д )(なら俺は――)
指先に力を入れて、右手を突き上げた。
指先一つ一つに灯った、眩い光が膨れ上がる。
次の瞬間、光は辺り一面に広がった。
そして俺は、機体が身を押し潰す前に、機体へ向かって跳んだ――
- 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/05(月) 00:49:50.39 ID:zl4rUqMVO
炎上するヘリを背に、部室棟の前で沙尾は膝をついて俯いていた。
川。 - )「…………」
沙尾の涙はもう涸れているのだろう。
ただただ絶望するしかない、といった感じだ。
泣き腫らして目は、瞬き一つしていない。
(,,-Д゚)「――未来は変わったろ?」
川;゚ -゚)「……っ!?」
顔を上げた沙尾は、俺を見て目を見張った。
(,,゚Д゚)「な?」
川 ; -;)「あ……ああ……っ!」
Σ(; Д )「ぐへぇ……」
俺にタックルをかました沙尾。
いや、違ったみたいだ。
なんと俺に抱き付いて来やがった。。
川 ; -;)「大馬鹿者! 私は猫島君が死んでいたらどうしようかと……」
(,*゚Д゚)「あ、いや……まぁ、一人なら助かる自信があったわけで……ちょ、ちょっとアレで厳しかったけど……」
- 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/05(月) 00:55:02.27 ID:zl4rUqMVO
両手をどうしたらいいのか解らず、沙尾の背で上下左右に彷徨わせる。
いや、手だけではない。
視線も、顔も、どこに向ければいいのか解らない。
(;゚Д゚)「あ……」
顔を上を向け、目に入ったのは植木鉢。
重力に従って真っ直ぐ俺へ、いや、沙尾へ向かって落ちてきている。
沙尾を庇うように、反射的に抱き締めた。
――破砕音。
(;-Д゚)「ぐっ……アレ?」
川 ; -;)「……?」
音は来たのに、衝撃が来ない。
代わりにぱらぱらと、何かが降ってきた。
(;-Д゚)「土……破片……?」
腕を解いて、校舎の方を見る。
成程、助かけられたか。
明日にでも、感謝の印としてオロナミンCを奢ってやろう。
- 61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/05(月) 01:01:28.57 ID:zl4rUqMVO
直にサイレンが近付いてきた。
炎上するヘリに群がる野次馬も、数を増してきている。
川。゚ -゚)「そういえば猫島君」
(,,゚Д゚)「なんだ、沙尾?」
川。゚ -゚)「生徒会長に助けられた時、『ギコは俺のだから手ぇ出すんじゃねえぞ』と言われたのだが」
(;-Д-)「いや、日村先輩のものになった覚えはない」
川。゚ -゚)「そうか、それを聞いて安心した。
ところで、射殺されそうなほど痛い視線を二つ感じているのだが」
(;゚Д゚)「安……し、視線? まだ死が!?」
川 ゚ -゚)「……いつか殺されるぞ、猫島君」
またわけの解らないことを。
とりあえず死は去った、と思っていいようだ。
良かったな、沙尾。
これで死は無くなったわけだから、誰かとの別れを恐れることもなくなった。
後、これからは自分の未来は見ないようにしろよ。
未来が解ってしまうと、その未来に囚われてしまうのだから。
- 62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/05(月) 01:02:35.36 ID:zl4rUqMVO
『涙ノ向コウニ映るル未来』
- 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/05(月) 01:05:19.74 ID:zl4rUqMVO
翌週、月曜日。
連休明けで普段以上に気怠い身体を引き摺って俺は登校していた。
美府学園は私立ということで土曜にも授業がある。
だが、あの墜落事故のせいで土曜の朝に休校とのお達しが来た。
いや、なんか本当に申し訳ございません。
心苦しく感じるが、妹からの罵声を無視して、この二連休思う存分惰眠を貪らせていただいた。
もちろん、連休中テレビでは墜落事故のニュースで持ちきりだった。
『奇跡と謎のオンパレード』と達筆で書かれた文字が右下にあったのが印象的だった。
嫌になるほど見たニュースの情報をまとめるとこうだ。
我が美府学園から生徒・教員共に負傷者・死者は奇跡的に出ていない。
搭乗者のパイロットとカメラマンはヘリから投げ出され、奇跡的に助かった。
墜落の寸前爆発的に謎の発光したヘリと、機体の底と天井に空いた謎の穴。
別にオンパレードではないと思う、過剰表現だ。
(,,-Д゚)「……ん?」
校門を通り抜けたところで、太腿に振動を感じた。
ポケットに入れていた携帯を取り出して開く、メールだ。
- 64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/05(月) 01:10:20.38 ID:zl4rUqMVO
09/28 沙尾空流
無題
『おはよう、猫島君。』
(;゚Д゚)「それだけかよ!」
連休中、何度か沙尾とメールのやり取りをした。
メール慣れしていないのか、コイツのメールには感情の起伏が感じ取れない。
実に淡泊で簡素な文章だ。
正直返事に困る。
俺はそっと携帯を閉じて、ポケットへ戻した。
(,,-Д-)「返事はいいだろ……もうすぐ会うわけだし……」
「よう、ギコ」
声がかけられた。
瞼を上げると、緑色の瞳とぴょんぴょんと跳ねる金髪が映る。
(,,゚Д゚)「あ、日村先輩……おh」
从#゚∀从「オイ、何か言うことないかギコ?」
なんのことですか、何を怒っていらっしゃるのですか。
- 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/05(月) 01:14:48.69 ID:zl4rUqMVO
从#゚∀从「俺はよ、おはよう! 助けたくもない、おはよう!
女を助けて、おはよう! それで礼の一つで終わりか、おはよう!」
日村は別に、挨拶をせずにはいられない、というような異常体質ではない。
月曜の朝は毎回校門に立って、登校して来た生徒へ挨拶をするのだ。
これも生徒会活動の一環らしい。
(;゚Д゚)「で、では、改めてお礼を述べます」
从#゚∀从「礼は要ねぇ、生徒会に入れ!」
(;゚Д゚)「お断r」
从#゚∀从「後な、日村先輩って呼ぶなっつってんだろ!
ハイン(ハァト)って呼べっつってんだろ!」
(;-Д゚)「……失礼します……」
从#゚∀从「あ、コラ、待て、おはよう! 昨日の女との、おはよう!
あー、ウゼェ、みんな一遍にお・は・よ・う!!」
生徒会メンバーに取り押さえられるハインを背に、そそくさと教室へ向かう。
その中に見知った顔――都村の姿もあった。
周りからの視線が、特に都村からの蔑むような刺さる視線が痛い。
(;-Д゚)(こんなことで……? 俺、何かしたか?)
- 66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/05(月) 01:21:31.27 ID:zl4rUqMVO
教室に着いた俺は、クラスメイトからの挨拶に、適当に反応しながら自分の席へと向かう。
……これは一体どういうことだ。
普段教室に入って来ても、こんな大勢に挨拶応はされないのだが。
クラス一の人気者にでもなった気分だ。
それに何故全員がニヤニヤしている、気持ち悪い。
(;-Д゚)「あ、沙尾、おh」
川#゚ -゚)「…………」
またなのか、お前もなのか。
何を怒っていらっしゃるんですか、沙尾さん。
_,、_
川#゚ -゚)「何故メールを返さないッ!」
(;゚Д゚)「それだけかよ!」
ひゅ、と口笛が吹かれる。
きゃ、と黄色い声が上がる。
「おめでとぅー!」
「ベストカップルだぜ!」
「おっ、おっ!」
「ふざけんな、死ね!」
成程、と呟き、事を理解した俺は思いっきり苦笑を浮かべてやった。
- 67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/05(月) 01:25:37.66 ID:zl4rUqMVO
昼休み前の休憩時間。
俺と沙尾の姿は、食堂に在った。
食堂内の売店前には、昼休み前に昼食を確保しておこうと考えた生徒達で犇めきあっている。
ちなみに俺は、妹の作ってくれた弁当を持ってきているから安心だ。
妹は『カピカピで洗うの大変だった、死ね』と言って弁当箱を渡してきた。
これはいいツンデレだ。
川 ゚ -゚)「猫島君、それは私は絵文字を不用意に使ってはならない、と聞いたからだ。
それによって相手に要らぬ感情を抱かせてしまう、と」
(;-Д゚)「誰に聞いた?」
川 ゚ -゚)「テレビでお笑い芸人が言っていたのだ。
まぁ、猫島君には特別に使ってやってもいいのだが、絵文字とは存外恥ずかしいもので」
(;-Д-)「…………」
俺が期待していた、『照れた沙尾が積極的に誰かと関わろうとする姿』は拝めていない。
むしろ『キレた沙尾が積極的に人を遠ざける姿』を拝ませられたのだ。
休憩時間、俺と沙尾が話しているところにやって来た女子に対して『消えろ』と言い放ちやがった。
川 ゚ -゚)「それで猫島君、どうして食堂へ?」
(,,-Д゚)「ああ……」
- 68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/05(月) 01:31:38.70 ID:zl4rUqMVO
沙尾が飲みかけの野菜生活の紫を渡してきた。
受け取り、一口飲んで、
(,,゚Д゚)「アレの未来を見てくれないか?」
川 ゚ -゚)「……?」
俺の指差す先には、食堂全体から窺える位置にかけられた時計がある。
(,,-Д゚)「最近、あの時計の時間を弄るアホがいるみたいなんだ」
川 ゚ー゚)「……成程、それはアレだな」
沙尾が、ぐっと拳を握って俺の方へ向ける。
(,,-Д゚)「ああ、一発殴ってやらないと」
川 ゚ -゚)「それにしても猫島君はサディストだな、女に対して泣けだなんて」
(;゚Д゚)「俺はノーマルだ!」
沙尾が目に涙を浮かべる。
これがこの異能の一番良い使い方ではないだろうか。
瞬きをして涙を止めた沙尾の口から犯人の名が告げれ、俺は愕然とする。
それは、某ハーフで金髪の生徒会長の名であった。
戻る 次へ