- 43 名前: ◆fTC5cA5YBU 投稿日:2012/03/04(日) 23:00:55 ID:QduWdHww0
( ФωФ)優勝請負人のようです 第一話【青天の霹靂】 後編
- 44 名前: ◆fTC5cA5YBU 投稿日:2012/03/04(日) 23:03:12 ID:QduWdHww0
( ФωФ)「どうかしたのか?」
ζ(゚ー゚*ζ「お買い物行ってきてちょうだい」
帰宅したばかりだが都合がよかった。
今は考えることを止めたい。
この現実から目を背けたかった。
( ФωФ)「ああ、わかった」
ζ(゚ー゚*ζ「必要な物はこの紙に書いてあるから。それじゃお願いね」
それに加えて断りでもしたら何をされるかわからない。
ζ(^ー^*ζ「・・・・・・何か言った?」
(;ФωФ)「いいえ何も」
- 45 名前: ◆fTC5cA5YBU 投稿日:2012/03/04(日) 23:05:09 ID:QduWdHww0
( ФωФ)「・・・・・・」
デパートへ向けて車を走らせる。
普段なら楽しく視聴しているはずのラジオが鬱陶しく感じられる。
ラジオパーソナリティの男がやたらハイテンションだ。
(;ФωФ)「こっちの気も知らないでなぁ・・・・・・」
―――――――― 「そういえばプロ野球の・・・・・・」
(# ФωФ)つプチッ
(# ФωФ)
「・・・・・・察しろや」
今は野球関係のワードを
を一切見聞きしたくない。
考えたくもない状態だった。
- 46 名前: ◆fTC5cA5YBU 投稿日:2012/03/04(日) 23:06:56 ID:QduWdHww0
(;ФωФ)「はぁ・・・・・・」
だがしかし、そうはいかないようだ。
頭の中では様々な考えが交差している。
(年齢を考えると、もう潮時なのではないだろうか・・・・・・)
(自分はまだ燃え尽きてはいない・・・・・・ )
(家族はどうするのか)
(;ФωФ)「・・・・・・あ」
結局クビになったことを妻に隠したままにしてしまっていた。
( ФωФ)(帰ったら・・・・・・話すか)
- 47 名前: ◆fTC5cA5YBU 投稿日:2012/03/04(日) 23:08:53 ID:QduWdHww0
――――― デパート
( ФωФ)(必要なものは・・・・・・どれどれ)
(;ФωФ)(うわぁびっしり・・・・・・早めに済ませて帰りてえ・・・・・・)
( ФωФ)(おや?)
(*゚ー゚)「・・・・・・」
視線の先にはヴィッパ―ズのユニフォームを着た子供がいた。
背中には「SUGIURA」、背番号は9。
自分のレプリカユニフォームだ。ああいったファンを見ると本当に嬉しく思う。
( ФωФ)(俺がヴィッパ―ズ辞めても着続けてくれるかな・・・・・・)
そうであってくれたら嬉しい。
( ФωФ)(隣にいる二人は・・・・・・友達かな?)
- 48 名前: ◆fTC5cA5YBU 投稿日:2012/03/04(日) 23:10:53 ID:QduWdHww0
(=゚д゚)「お前杉浦のユニフォーム着てんのかよwwwだせえwww」
<゚Д゚=>「普通高岡とか流石だろwww」
(;*゚ー゚)「・・・・・・」
―――
(# ФωФ)「・・・・・・」
近くに本人がいるとも知らず、全く失礼千万なガキどもである。
蹴り倒してやろうかと思ったが、そんな暇はなかった。
(;ФωФ)(・・・・・・いかんいかん早く用事を済まさないと)
- 49 名前: ◆fTC5cA5YBU 投稿日:2012/03/04(日) 23:12:30 ID:QduWdHww0
必要なものは買い揃え、後は車で家に帰るのみとなった。
時刻は5時半を回り、すっかり日が暮れており、若干ではあるが、肌寒さも感じる。
( ФωФ)(早く帰ろう・・・・・・)
>あ、あの! 杉浦選手!
( ФωФ)「・・・・・・ん?」
どこからか自分を呼ぶ声が聞こえる。
(*゚ー゚)「ヴィッパ―ズの・・・・・・!杉浦選手ですよね!?」
先ほど見掛けた子供だった。
- 50 名前: ◆fTC5cA5YBU 投稿日:2012/03/04(日) 23:14:59 ID:QduWdHww0
(;*゚ー゚)「こ、今シーズンはお疲れ様でした!ぼ、僕、杉浦選手の大ファンなんです!!」
とても緊張している様子だ。
そういえば子供のころに勇気を出して当時憧れていた選手に話しかけたことがあった。
あの時の自分もこんな感じだったのだろうか。
( ФωФ)「ありがとう。・・・・・・ちょっと後ろを向いてくれるかな」
(;*゚ー゚)「は、はい!」
そういうとポケットからマジックペンを取り出す。
いつでもこの様な事があってもいいように、普段から持ち歩いている。
( ФωФ)(このあたりかな・・・・・・)
背番号9の横にサインを書き記す。
ファンサービスは絶対に欠かさないのが自分のポリシーだ。
- 51 名前: ◆fTC5cA5YBU 投稿日:2012/03/04(日) 23:16:47 ID:QduWdHww0
(*゚ー゚)「あ・・・・・・ありがとうございます!」
( ФωФ)「・・・・・・俺、ヴィッパ―ズ首になったんだ」
(;*゚ー゚)「・・・・・・え?」
本来なら報道されていない事を外部に漏らしてはならない。
しかし、自分の事を応援してくれているこの子には伝えておきたかった。
( ФωФ)「今まで応援してくれて・・・・・・ありがとうな」
(;*゚ー゚)「野球は・・・・・・続けるんですか?」
(;ФωФ)「・・・・・・そ、それは・・・・・・」
何故か返答できない。
自分の中に、現役を続けたいという考えがあるというのに。
- 52 名前: ◆fTC5cA5YBU 投稿日:2012/03/04(日) 23:18:18 ID:QduWdHww0
(*゚ー゚)「ぼ、僕は、他の球団に行っても杉浦さんを応援します!」
( ФωФ)「・・・・・・ありがとう。急いでるから帰らせてもらうよ」
そういって車に乗り込む。
(*゚ー゚)「はい!サインありがとうございましたー!!」
( ФωФ)ノ「・・・・・・」
そっと右手を掲げながら。
- 53 名前: ◆fTC5cA5YBU 投稿日:2012/03/04(日) 23:20:08 ID:QduWdHww0
( ω )「・・・・・・」
ハンドルを握る手に自然と力が入る。
自分の体が熱くなるのがはっきりとわかった。
こんなロートルを、あんなに小さな子供が応援してくれている。
( ФωФ)「・・・・・・全力を尽くそう」
自分に残された時間は多くない。
だが、1人でもああいうファンがいる限り燃え尽きるまで現役に拘ろう。
そう強く誓った。
- 54 名前: ◆fTC5cA5YBU 投稿日:2012/03/04(日) 23:21:47 ID:QduWdHww0
―――― 30分後
( ФωФ)「・・・・・・着いた。・・・・・・あれ?」
自宅の玄関に誰かが立っていた。
よく見ると、それは妻だった。
家の正面に一旦車を停め、窓を開けて呼びかける。
( ФωФ)「どうかしたのか?そんなところで」
ζ(゚ー゚*ζ「・・・・・・リビングで待ってるから」
そう言うと妻は直ぐに家に入って行った。
その声は、優しい笑顔とは不釣り合いなものだった。
機嫌が悪いという事が一発でわかる。
(;ФωФ)「ああ・・・・・・わかった」
何かやましい事をしただろうか?
全く見当が付かない。
- 55 名前: ◆fTC5cA5YBU 投稿日:2012/03/04(日) 23:23:05 ID:QduWdHww0
(;ФωФ)「・・・・・・」
形容しがたい空気がリビングに流れる。
無機質に時計の音だけが室内に響く。
ζ(゚ー゚*ζ「・・・・・・」
妻は変わらず笑みを浮かべている。
しつこい様だが、本当に俺には何も思い当たる事が無い。
(;ФωФ)(浮気もしてないし・・・・・・本当に何だ?)
ζ(゚ー゚*ζ「あなた」
(;ФωФ)「は・・・・・・はい!?」
思わず声が裏返る。
- 56 名前: ◆fTC5cA5YBU 投稿日:2012/03/04(日) 23:24:36 ID:QduWdHww0
ζ(゚ー゚*ζ「・・・・・・これを見て」
そういって妻が差し出したのは携帯電話。
アドレス帳に女性は妻と母親しか登録していないはず・・・・・・。
(;ФωФ)「あ・・・・・・」
画面に映し出されていたのは球団の公式ツイッターだった。
そこには俺達4人に戦力外を通告した事を告げる内容が呟かれていた。
(;ФωФ)(いくらなんでも早過ぎだろ・・・・・・)
ζ(゚ー゚*ζ「本当の事なの?」
(; ω )「・・・・・・」
無言で頷く。
- 57 名前: ◆fTC5cA5YBU 投稿日:2012/03/04(日) 23:25:48 ID:QduWdHww0
ζ(゚、゚*ζ「全く・・・・・・。こういう大事なことは、すぐに言うものでしょうが」
(; ω )「隠そうとして・・・・・・済まなかった」
深々と頭を下げる。
ζ(゚ー゚*ζ「いいから頭を挙げなさい。それで、今後はどうするの?」
( ФωФ)「現役を・・・・・・続けるつもりだ」
ζ(゚ー゚*ζ「そう・・・・・・・なら頑張ってね。じゃ晩御飯作るから」
妻はそう言うと椅子から立ち、台所へ向かった。
- 58 名前: ◆fTC5cA5YBU 投稿日:2012/03/04(日) 23:26:40 ID:QduWdHww0
(;ФωФ)「ちょ・・・・・・ちょっと待ってくれ!」
ζ(゚、゚*ζ「何よ?気が変わったの?」
(;ФωФ)「違う違う。いくらなんでも軽すぎないか?」
ζ(゚ー゚*ζ「私は旦那の仕事には口出ししない主義だから」
(;ФωФ)(えぇ・・・・・・)
何とも言えない形だが、これで今後の方針は決まった。
果たして自分を必要としてくれるチームはあるだろうか。
【続く】
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