- 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/20(日) 22:24:47.89 ID:C+krosWh0
ピンポーンピンポーン
( ><)「!はーい」
ピンポンピンポン
( ><)「はいはい、今行くんですー」
ピンポンピンポンピンポンピピピピピピピ
(;><)「い、今出るからちょっと待ってなんです!」
ピピピピピピピバキッ!ドカッ!
(;><)「部屋のドアが――――――!!」
( ・∀・)ノ「やぁ元気かいビロード!お兄さんと一緒に遊びに行こうぜ!」
( ><)(ドア壊された…)
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/20(日) 22:27:35.62 ID:C+krosWh0
相変わらず皺一つないスーツをビシッと格好よく着こなして、にこやかに玄関へと立つお兄さんに僕は内心あうあうだった。
ていうか何してくれてるんだこの人…。
(;><)
僕の部屋のドアが…、しかもこの人謝ろうともしないんです。
げんなりとしながら横に置かれた壊れたドアへと視線を向ける。
( ><)「ドア…」
( ・∀・)「ハインちゃんに言えば直してもらえるから心配すんなよ」
( ><)「その前に壊さないで下さいなんです…」
( ・∀・)「嫌だよ」
(;><)「な、なんで!?」
( ・∀・)「楽しいから、壊すの」
無邪気(?)な笑顔で告げるこの人を見て、僕は心底、色んな意味で駄目な人だと思った。
いつかドクオさんが言っていた性格悪いという言葉が蘇ってくる。
この人は性格が悪いというよりも基本Sなんじゃなかろうか。
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/20(日) 22:29:05.64 ID:C+krosWh0
(;><)「ハァ………もういいんです」
僕は説得するとか、物を壊してはいけないとか、そういう当たり前のことを説くのを全て諦め
大人しくモララーさんの話を聞くことにした。
きっとこの人は僕の話なんて聞かない、そんな気がするからだ。
( ><)「ところで、なんか用なんですか?」
( ・∀・)「さっき言っただろう。お兄さんと遊びに行こう」
( ><)「誘ってくれてありがとうございますなんです。でも僕大学の課題が」
( ・∀・)「さぁ行くぜ!!」
(;><)「ってあらー!?」
喋り終える前に気がつけば腕を引っ張られ僕は部屋の外に放り出されていた。
この人、人の話本当に聞いてないんです!
いや聞かない人だとは思ってましたけどね!
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/20(日) 22:31:44.36 ID:C+krosWh0
あっという間にアパートの外へ連れ出されると、下の方ではハインさんが洗濯をしている最中だった。
今日は良い天気だから、洗濯物もすぐに乾くだろう、…僕も洗濯したかったなぁ。
洗濯機が今にも壊れそうな音を立てているのは、置いておくとして。
从 ゚∀从「よー、お前らどっか出かけるのかー?」
そんな洗濯機を回しながら、ハインさんがにこやかに問いかけてきた。
(;><)「いや、違…!」
( ・∀・)「遊びに行くのさー、ハインちゃんも行くかい?」
从 ゚∀从「いんや、お姉さんはやることがあるから遠慮しとくよ、つーかなモララー、
お前いくらアタシが直すからってドア壊しすぎだ、いい加減にしろよ」
( ・∀・)「善処するさー、ところでドクオは今日バイトだっけ?」
(;><)「人の話を…」
从 ゚∀从「さーな、今日は暇じゃねーの?」
(;><)「あの、僕も今日は課題とか色々溜まって」
( ・∀・)「まあ暇じゃなくても連れてくからいいんだけどね、じゃあクーさんは?」
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/20(日) 22:33:15.80 ID:C+krosWh0
从 ゚∀从「あー、珍しく出かけたよ。食材の買出しだってさ」
(;><)「ちょ…」
( ・∀・)「そりゃ残念、でも最近は作る量も考え始めたからね」
从 ゚∀从「いいことだぜ、まったく」
(;><)「僕の話を聞けぇえええええええ!!」
二人の間で目一杯叫んだけれど、それすらもスルーされた。
なんだこれ…
世間話>>>>>>>>>僕の話なんですか?泣いていいんです?僕の立場ってゼロなんです!?
目頭がツンと熱くなってきた。
大体なんでいきなり出かけようなんて言い出したんだろう。
( ・∀・)「最近ビロードが落ち込み気味だったから元気付けようと思ってね。
まぁもう回復したみたいだけど、たまにはいいだろ?」
(;><)「エスパーですかあんたは!?」
しかし答えられた内容が内容だけに断りづらくなってしまったんです…。
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/20(日) 22:35:55.66 ID:C+krosWh0
自分では気づかれないようにしていたつもりだったけど、モララーさんにはしっかりバレていたようだ。
もしかしたら心配をかけたんだろうか…、なんだか申し訳ない気分になってくる。
( ><)「あ、ありがとうございます…?」
( ・∀・)「…そこでお礼を言っちゃうのが君のいいところだよねぇ」
まあいいけど、とどこか肩透かしを食らったような様相で、モララーさんはかぶりを振った。
それから彼は僕手を引っ張りながら下に降り、そのまま102号室の扉を大きく叩きはじめる。
がんがんがんがんがんがん
( ・∀・)「ドックオー、遊びに行くから出て来いよー」
無遠慮に叩くその姿に、僕は恐る恐る問いかけた。
(;><)「あの、ドクオさんに選択権は…」
( ・∀・)「ないよ」
ないんだ…。
まぁ僕にもなかったけど。
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/20(日) 22:37:53.95 ID:C+krosWh0
しかし扉は沈黙を保ったままで、何の反応も示さないので、もしかしたら
ドクオさんは出かけているのかもしれない。
( ><)「いないんですかね?」
( ・∀・)「んー」
しばらく叩き続けても出てこない。
モララーさんはちょっと考えるような素振りを見せたけど、扉を叩く手は止めなかった。
ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンがががががg
(;><)「あの」
「うるせー!」
(;><)「!」
( ・∀・)「あ、やっぱりいた」
扉は相変わらず閉まったままだけれど、その扉の奥からはドクオさんの声が響いてきた。
その声にはかなりの苛立ちが含まれていたけれど。
「ガンガンガンガン、少年ですかアンタは!うるせーんですよ!俺は出かけませんからね!」
(;><)「ドクオさん…」
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/20(日) 22:38:59.76 ID:C+krosWh0
「ビロードもそんなダメな大人に付き合ってねーでとっとと逃げろ!」
( ・∀・)「酷い言い草だなおい」
「俺は学習したんです、アンタ相手に扉をあけるとロクなことがないとね」
( ・∀・)「……………ほう」
( ><)「……………………ドクオさん、でもそれは」
( ・∀・)「ビロードちょっとどいて」
僕が言葉を続ける前に、モララーさんが僕を押しのけ扉に足をつけた。
綺麗に磨かれたその靴にはモララーさんの顔が映っている。
そうして思い切り足を振りかぶり…
「わかったらとっとと帰ってください、俺はこれから俺の嫁と二人きりの時間を満喫するn」
( ・∀・)「よいしょー!」
思い切り蹴り飛ばした。
(; A )「うばぁああああああああああああ!!」
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/20(日) 22:40:55.08 ID:C+krosWh0
さっき僕の部屋の扉が壊された時よりも数段大きい音を立てて、扉が吹っ飛んでいく。
というより吹っ飛ばされた。
同時に扉の後ろにいたらしいドクオさんも吹っ飛んだ。
(;><)「あわわわわわわわ…」
ゴロゴロと派手な音を立てて転がっていくドクオさんと扉。
モララーさんは特に何も感じてないようで、尊大な態度で転がり果てたドクオさんに言い放つ。
( ・∀・)「ぐだぐだ言ってんじゃねーぞ、僕がついて来いって言ったらついて来るんだよこのマヌケ」
( A )「アンタはいつか地獄に落ちろ…」
(;><)「大丈夫ですか?」
( A )「鍵だけじゃだめだ…今度はもっと丈夫な扉に…」
床に突っ伏しながらぶつぶつと呟くドクオさんに、僕の声は届いていないようだった。
( ・∀・)「わかったらさっさと着替えろ!そんなジャージ姿じゃ一緒に歩くこっちが恥ずかしいだろ」
(#'A`)「だったら俺を誘うな!構わないでくれませんかね!?」
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/20(日) 22:42:50.22 ID:C+krosWh0
( ・∀・)「パシリがいないと楽しくないだろう、僕が」
(#'A`)「死ね!!」
( ・∀・)⊃「なんだとコラ」
<'A`)「いてててててててててて」
(;><)「モララーさん!もうその辺に…」
( ・∀・)⊃「なんだよビロードもドクオ派か?いじめるよ」
<;><)「いたたたたたたたたったた」
ダメだこの人大人なのに子供っぽすぎる!
モララーさんにつねられていると、ずっと見ていたらしいハインさんが呆れたような
声をあげた。
从;゚∀从「いいからお前らさっさと出かけろよ」
…うん、見てないで止めて欲しかったんです。
ウザそうな顔のハインさんんに追い立てられ、結局僕達はモララーさんと一緒に
出かけることになってしまった。
ああ、課題が…
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/20(日) 22:44:45.96 ID:C+krosWh0
( ><)「ところで、どこに出かけるんです?」
ジャージから薄手のTシャツとジーンズというあまり代わり映えのない格好に着替えたドクオさんと、
大してオシャレでもない僕、そして一人だけスーツのモララーさん。
傍から見たら僕らは一体どんな関係に見えるんだろう。
昼間というだけあって、太陽が高い位置で僕らの頭を照りつけていて酷く暑い。
アスファルトに篭る熱が反射してきて、少し汗が流れた。
もうちょっと涼しい格好してくればよかったんです。
( ・∀・)「んー、色々考えたんだけどね」
モララーさんがポケットから何かチケットを取り出して僕らに見せつけた。
どうでもいいけど、この人こんなスーツで暑くないんだろうか。
( ・∀・)「遊園地のチケットがあるから、一緒に行こうと思って」
(*><)「!」
('A`)「男三人でかよ…寒すぎる…」
( ・∀・)つ白「じゃあ女の子誘う?」
('A`)「それも怖い…」
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/20(日) 22:46:41.22 ID:C+krosWh0
ドクオさんは冷めた表情だったけど、僕は内心浮かれてた。
だって…遊園地ですよ!
僕の住んでいた故郷は本当に田舎で、コンビニですら1時間はかけないと行けない所だったんです。
田んぼや畑はあったけどアトラクションなんて一つもなかったし、
ましてや遊園地だなんて…、3歳くらいのころ行ったっきり。
あの時は迷子になってお兄ちゃんにすごい怒られたっけ、うふふふふふ…
(;'A`)「おい、ビロード?」
(*><)「ジェットコースター…スプラッシュマウンテン…メリーゴーランド…観覧車…コーヒーカップ…」
それでも諦めきれず前にミルナくんと行こうと思ったけど、ミルナくんは待ち合わせ場所にこないし、
これは正直もう一人で行くしかないと思ってたのに…!
(*><)「モララーさん!ありがとなんです!」
( ・∀・)「いやぁなんのなんの、ビロードは賛成みたいだね」
('A`)「…なんか企んでません?」
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/20(日) 22:48:58.92 ID:C+krosWh0
( ・∀・)「まさか、僕は常に皆の幸せを祈っているよ」
('A`)「嘘つけ」
( ・∀・)「まぁね」
(*><)「何を話しているんですか!?いいからさっさと行くんです!僕らの夢の国へ!」
手を大きく振って二人を促すと、ドクオさんは胡散臭そうに、モララーさんは楽しそうについてきた。
('A`)「俺はあんまり期待しない方がいいと思うけどね…」
( ・∀・)「いやいや、楽しいよ。僕はね」
後ろでヒソヒソと展開される二人の会話が、僕の耳に届くことはなかった。
遊園地!遊園地!楽しみなんです!!
(*><)
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/20(日) 22:52:07.61 ID:C+krosWh0
*
しかしそうして辿り付いた夢の国は、僕の想像をはるかに越えて寂れていた。
( ・∀・)「やー着いたねー」
( ><)「…………」
('A`)「……………はぁ」
電車に揺られて30分、都心からちょっと離れたその場所には割とすぐついたけれども
佇む遊園地は昼間なのに何故か翳っている。
カラスとか飛んでる。
人もまばらで、というよりほとんどいなくて、楽しそうな子供の声というよりも
必死で働くスタッフの声の方が目立っていた。
( ><)「モララーさん…ここは…」
( ・∀・)「いやあ、近くに大きい遊園地があるからここもめっきり寂れててねえ。
でも大丈夫、チケットあるから」
ホラ、といって見せるチケットは確かにこの遊園地のフリーパスのようだった。
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/20(日) 22:54:24.63 ID:C+krosWh0
- 隣にいたドクオさんのあからさまなため息が聞こえてくる。
('A`)「こんなことだろうと思いましたよ…、人ごみ嫌いのアンタが遊園地行くだなんて…」
( ・∀・)「お前だって人ごみ嫌いなくせに」
(;><)「ちなみに…近くの大きい遊園地に行くっていう選択肢は…」
( ・∀・)「ないよ」
ないんだ…。
いや、なんとなくわかってたんです…。
( ・∀・)「それにアレだよ、近くの大きい遊園地はなんか中の人が沢山いるって話だから」
(;><)「そんな裏事情は聞きたくなかったんです!」
僕の夢を壊さないで下さい!
もうそこの遊園地に行きづらくなったでしょうに!
( ・∀・)「まぁ楽しもうよ」
(;'A`)「入る前から楽しくないんスけど…」
ドクオさんの言葉はあえて否定せず、僕たちは園内へと足を踏み入れた。
なんだろう…普通遊園地ってもっとこう…wktkするもんだと思ってたのに…
どうしてこんなにもやるせない気持ちでいっぱいなんだろう…
心なし園内に流れる音楽も沈んで聞こえた。
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/20(日) 22:58:14.55 ID:C+krosWh0
( ・∀・)「あ、ちなみにここのジェットコースター昔事故あったから乗れないよ」
(;><)「!!」
聞きたく無かったんですそんな事実!
さらに重くなる足取りに僕もドクオさん同様ため息をついた
*
( ・∀・)「まずはどこに行こうかー、………………というほどアトラクションはないけどね」
(;><)「いきなりやる気なくなるようなこと言わないで下さい」
('A`)「何より俺は男三人で来ている事が一番虚しい」
( ・∀・)「クーさんがいればよかったのにねえ」
('A`)「あの人が遊園地来たら回りがパニックになるだろ」
(;><)「…………」
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/20(日) 23:02:55.99 ID:C+krosWh0
はしゃぎまわる子供の声も、普通はいるであろうマスコットキャラも、お土産を売るお店も
フードショップも雑誌で見た遊園地よりはるかに少ないけど、それでも此処は
僕が憧れた遊園地。
だったらもう色々諦めて楽しむことにするんです。
それにモララーさんだって僕が元気なかったのを励ますためにつれてきてくれたんだし!
あんまりがっかりしてたら失礼なんです!
('A`)「だいたいなんで遊園地なんですか…」
( ・∀・)「え?暇つぶし」
( ><)「……………」
よおしやっぱりまずはメリーゴーランドですよね!
僕は深く考えることはせず、二人に提案した。
(#><)「くっちゃべってないでさっさとメリーゴーランド行くんです!」
(;'A`)「え?あ…おお…なんで怒ってるの?」
( ・∀・)「しかし子供っぽいの選んだね」
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/20(日) 23:07:34.23 ID:C+krosWh0
大人な僕はモララーさんに反論するようなことはせず、受付で貰った園内マップをその場に広げた。
えーと、現在地がここだから…っていうかここ本当にアトラクション少なすぎなんです。
なんで数えるくらいしかアトラクションがないんですか。
マップに突っ込みつつもメリーゴーランドの方へとサクサク足を進める。
( ・∀・)「一応この遊園地にもマスコットキャラはいるんだぜ、ゲンナリくんって言ってね…」
('A`)「聞いてるこっちがげんなりしますね」
( ><)「あ、メリーゴーランド発見!」
指差したその先にはキラキラと輝くメリーゴーランド!よかった!アトラクションの
数は少ないけどアトラクション事態は普通っぽいんです!
( ・∀・)「それはどうかなー」
( ><)「横で不吉なこと言わないで下さい!」
嫌そうに進まないドクオさんとニヤニヤ笑うモララーさんを引っ張って、僕は
メリーゴーランドへとかけていった。
メリーゴーランドは動いていなかった。
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/20(日) 23:13:42.78 ID:C+krosWh0
( ><)「…なんで止まってるんですか?」
横でモララーさんが楽しそうに手を叩く。
うるっせえんです、こっちは楽しくないんです!
( ・∀・)「うん、良く聞いてくれた、これはロシアン・メリーゴーランドといってね
この遊園地の目玉の一つだ。
好きな馬に乗るがいいよ、当たりだとその馬が爆発する」
(;'A`)「ハズレだろそれ!」
(;><)「ていうかどうしてそんなものを目玉の一つにするのか、そっちの方が意味わかんないんです!」
( ・∀・)「斬新でいいと思うんだけどなあ」
斬新すぎてついてこれないんです!
ここに来て僕は漸く人が少ない理由がわかった。
大体近くに大きい遊園地があるってだけでここまで人が少なくなるわけがないんです
( ・∀・)「さーぁ好きなのに乗りなさい、フリーパスあるから乗り放題だよ」
( ><)「…ちなみに、ハズレだった場合どうなるんです?」
( ・∀・)「え?別に止まったまんまだけど?」
( ><)「じゃあもうそれメリーゴーランドじゃないじゃないですか!」
メリーの名が聞いて呆れるわ!
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/20(日) 23:23:19.62 ID:C+krosWh0
- 僕はメリーゴーランドという名だったらしいアトラクションを早々に諦め、再びマップを広げた。
隣でモララーさんがブーブー言ってるけど無視なんです。
大体なんで爆発するんですか。
( ・∀・)「ドキドキするのにい」
('A`)「ドキドキすればいいってもんでもないでしょうが」
ドクオさんの言う通りだ。
大体メリーゴーランドはもっとこう、和やかな気持ちになるアトラクションなはずなのに
いきなり爆発するとか言われたからこんな言い知れぬ不安を覚えるんです。
だったらもう最初からちょっと派手系アトラクションを選べばいいんですよ。
( ><)「あ、ここ空中ブランコあるんですね、僕これ好きなんですよ!」
('A`)「俺は嫌な予感しかしないわけだが、行ってみる?」
( ・∀・)「ナイスチョイス!」
モララーさんが腹を抱えて笑っているのが気になったけど、ここで止まっていても仕方がない
僕達は今度は空中ブランコ目指して歩き出した。
その途中妙な人形がこっちを見ているのに気がつく。
∩∩ ∩∩
ヾ[´ι`] ヾゲン`)ナリ
( ><)「…あの見てるとこっちがげんなりする人形なんですか?」
( ・∀・)「ああ、ゲンナリくんとゲンナリちゃんだね、キーホルダーも売ってるけど買う?」
- 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/20(日) 23:28:35.62 ID:C+krosWh0
( ><)「いりません」
大体どっちがくんでどっちがちゃんですか。
手を振られても反応に困ります。
*
空中ブランコにたどり着くと、予想以上にブランコの位置が高かった。
( ><)「高い!!」
驚きのあまり普通に叫んでしまったけど、これ本当に高すぎるんです!
案内板に地上400m上って…怖すぎなんです!
( ・∀・)「この空中ブランコはね、この遊園地の目玉の一つ、超高層ブランコ
まぁただ位置が高いだけなんだけど」
('A`)「俺高所恐怖症なんで…遠慮します」
( ・∀・)+「じゃあ乗ろうか!」
(;'A`)「なんで顔が輝いてるんですか!乗らねーっつってんでしょうが!なぁビロード!」
( ><)+「いえ…乗りましょう!」
(;'A`)「えええええええ!?お前だけはまともだと信じていた俺はどうすりゃいいんだ!?」
- 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/20(日) 23:36:20.87 ID:C+krosWh0
- 驚くくドクオさんを尻目に、僕は目を鋭くして言った。
( ><)「たとえ此処が変なアトラクションしかなくても、遊園地なんです!
遊園地に来て何も乗らずに逃げ帰るんじゃ僕の名が廃ります!」
(;'A`)「落ち着けよビロード!お前は遊園地のなんなんだ!?」
( ・∀・)「おお、いい感じにこの遊園地に毒されてきたね」
(;'A`)「帰る!俺帰るー!」
暴れるドクオさんの首根っこ掴んでモララーさんと僕は歩き出し、受付のおじさんにチケットを見せ
席に座った。
ゲン`)ナリ「はい、じゃあ生きて帰ってきてね」
(;'A`)「おい!このおっさん不穏なこと言ってますよ!?」
( ><)「男は自分の言ったことを覆したりしない…んです!」
(;'A`)「かっこいいこと言ってるけど俺は乗りたくねえよ!」
( ・∀・)ノシ「じゃあいってらっしゃーい」
(;'A`)「そんであんたは何で乗らないんだ!?」
いつの間にか席を降りていたモララーさんに対して隣でわめくドクオさんだったが
それも空中ブランコが動き始めると静か…いや、喋ることもままならなくなった。
- 53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/20(日) 23:40:21.74 ID:C+krosWh0
(;><)「うわあああああああああああああああああああ!!!」
(;'A`)「アびゃあああああああああああああああああああ!!」
―――――――――
―――――
――
( ・∀・)「いやあ楽しかったね、君たちの顔」
('A`)「アンタは本当に地獄に落ちろ…」
(;><)「僕は一体何を…」
乗り終えた空中ブランコは壮絶すぎて語ることも出来なかった。
まさかあそこでゲンナリくんが登場するだなんて…。
- 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/20(日) 23:45:48.90 ID:C+krosWh0
園内の音楽がドナドナに変わり始めたところで、再びモララーさんが提案する。
( ・∀・)「ところでこの空中ブランコには裏メニューの浮く宇宙ブランコというものがあってだね」
('A`)「うるせえ氏ね!」
( ・∀・)つ「なんだとこの野郎」
<'A`)「いててててて!大体なんでアンタのらねーんだよ!乗れよ!」
( ・∀・)つ「僕は人が乗っているのを見て楽しむんだよ」
<'A`)「知るか!もう帰るぞビロード!」
( ><)「え、あ…」
( ・∀・)「何言ってんの、まだ乗ってないアトラクションが5つはあるんだよ?」
('A`)「意外とすくねえな!ていうか全体的に少なすぎんだろうが!」
その突っ込みは僕がさっき心の中でした。
しかしせっかくだから遊園地は見て回りたいというのも本心だ。
( ><)「ちなみに…他にはどんなアトラクションがあるんです?」
(;'A`)「おいおい食いつくなよ!」
- 57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/20(日) 23:47:52.27 ID:C+krosWh0
( ・∀・)「よく聞いてくれた。他にもあるよ、ワクワクアトラクション!
死のお化け屋敷にコーヒーっぽいカップ、閲覧車にビックリハウス!」
(;'A`)「それワクワクすんのはアンタだけでしょ!」
( ><)+「…乗りましょう!」
(;'A`)「ビロードォオオオ!!」
ドクオさんの声はなんだか乗らなくてはいけないという頭の中のゲンナリくんによってかき消された。
- 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/20(日) 23:49:07.46 ID:C+krosWh0
*
( ・∀・)「いやあ、楽しいねー!」
('A`)「俺はそうでもないです…」
(;><)「………………」
一通りのアトラクションを命がけで遊んだ後、僕達は近くのベンチで休息をとることにした。
途中買ったポップコーンをほお張りながら、今日一日のことに酷く感動する。
まさか遊園地に来て生きていることに感動する日がくるだなんて、思わなかったんです…。
( ・∀・)「じゃあ喉渇いたしちょっとジュース買ってきてよ」
モララーさんが近くのお店を指差してドクオさんに話しかけた。
('A`)「何がじゃあなのか俺にはサッパリわかんないんスけど、嫌ですよ。絶対嫌」
( ・∀・)「何のために君を連れてきたと思っているんだ?」
('A`)「パシリかよ!ていうか別に来たくなかったッスよ」
(;><)「あの、ジュースなら僕が買ってくるんです!」
再び剣呑な空気を帯びてきた二人の間に入る。
- 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/20(日) 23:50:20.22 ID:C+krosWh0
- この二人はこれがデフォだとしても、今の疲れた僕にとっては突っ込むのもままならないんです。
だったら無駄な争いの前に僕が行った方が早い。
しかしモララーさんがそれによしとしなかった。
( ・∀・)「ああ、いいのいいの、今日はビロードを励ますために連れて来たんだからね」
('A`)(絶対励まされないだろ…これ…)
( ><)(励まされはしないけど…)
('A`)「…まあ、いいや、今日だけだぞ。俺が買ってきてやる」
しかし、予想外にドクオさんは立ち上がった。
( ><)「え、いいんですか?」
('A`)「おう、金は払えよ」
( ・∀・)「せこい男だな」
('A`)「うっせぇ!」
悪態をつきつつも、近くのフードショップへと歩いていった。
どうしたんだろう?突然…
- 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/20(日) 23:51:49.89 ID:C+krosWh0
ドクオさんがいなくなってから、僕はモララーさんと二人でベンチに腰掛けていたが、
どちらも口を開こうとはしなかった。
持っていたポップコーンを齧る音だけがその場に響く。
なんだか気まずいんです…
考えてみれば今まではいつもドクオさんやハインさんやクーさんと一緒で、
モララーさんと二人で話す機会なんて滅多に無かったんです。
こう言っちゃなんだけど、モララーさんて何を考えているかわからない節があるし…どうすればいいんだろう。
(;><)「あのー…」
( ・∀・)「ちょっと話したいことがあったからね、ドクオには席を外してもらった」
( ><)「え?」
( ・∀・)「そろそろ君もあのアパートのことを知っておくべきだから、本当言うとね
この遊園地につれてきたのはそっちを話したかったからなんだ」
( ><)「……………。」
唐突に話し出したモララーさんに、僕はなんと言えばいいのかわからなかった。
その割には楽しそうに見えたんですけど。
- 61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/20(日) 23:52:46.33 ID:C+krosWh0
(;><)「一体何の話なんです?」
( ・∀・)「ビロード、君ハインちゃんの能力、見たんだよね?」
(;><)「!?」
最初は、軽く世間話でもしようかと思ったのに、モララーさんの口から漏れたのは思いもよらない一言だった。
………能、力…?
まるで少年漫画にでも出てきそうな単語が会話にまぎれて、一瞬反応を取ることができなかった。
( ・∀・)「見たんだろ?だから今まで気まずかったんでしょ?」
(;><)「なんで…」
( ・∀・)「あのアパートに住む奴はねー、皆そうなんだよ」
空になったポップコーンの箱をゴミ箱に投げるモララーさん。
相変わらず僕の反応は大して眼中にないようで、ただ淡々と話していく。
( ><)「皆…?」
( ・∀・)「ハインちゃんはねえ、未来がほんの少しだけ視えるんだ」
- 64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/20(日) 23:55:31.83 ID:C+krosWh0
( ・∀・)「でも、その未来は絶対に変わらないらしい」
( ・∀・)「変えれない未来が視えるのなんて、ハインちゃんには苦痛以外の何者でもないんだよ」
( ><)「……………」
未来が、視えるなんて、まさかそんな漫画じゃあるまいし。
そう思ったのに、僕は否定することが出来なかった。
( ・∀・)「例えば自分の近しい人が酷い怪我をする未来が視えたとしよう、
しかしその原因を取り除いても、結局その人は別の方法で怪我をするんだ」
僕には、何も言えない。
口を挟むことが出来ない。
だって、あの時ハインさんの表情は…
( ・∀・)「こうなるってわかってるのに、変えられないなんて苦しいだろう?
信じてもらおうと回りに言っても奇異の目で見られる」
- 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/20(日) 23:56:18.00 ID:C+krosWh0
( ・∀・)「ビロード」
(;><)ビク 「はい…?」
( ・∀・)「あのアパートはね、そんな望まない能力を持つやつの…
吹き溜まり、だ」
(;><)「……………!」
何故か、心臓がどくりと音を立てた。
この人は何を言っているんだろう。
あのアパートに住む人たちは皆良い人たちばっかりだ、そんな変な能力持つようにはまるで見えない。
第一そんな漫画みたいなこと現実にあるわけない!
だけど、僕にはすぐにそれを否定することはできなかった。
だってクーさんは、自分の望まない”幽霊を寄せ付ける”という能力を持っているから。
それを知っているから。
それに、ハインさんのアレもやっぱり偶然なんかには思えないわけで。
- 67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/20(日) 23:57:01.54 ID:C+krosWh0
(;><)「吹き溜まり…って、そんな言い方はないんです」
( ・∀・)「そうだね、言い方が悪かった。けど事実だ
あのアパートにはそういう奴が集まるのさ、というより、そんな奴らしか住めないんだ」
( ・∀・)「僕も、ハインちゃんも、クーさんも、ドクオも、あと…君がまだ会ってない201号室の奴もね」
( ><)「……………」
( ><)「モララーさんも…」
( ・∀・)「ん?」
( ><)「モララーさんも、自分の望まない能力が、あるんですか…?」
その言葉に、モララーさんは答えなかった。
ただいつものようににやにやと笑うだけで、僕の頭を撫でてくるだけだった。
( ・∀・)「君はいいねえ、素直で、可愛い」
( ><)「可愛いは褒め言葉じゃないんです」
( ・∀・)「そうだね、でも素直だ、それはいいことさ、僕にとってはね」
( ><)「…………?」
- 69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/20(日) 23:58:57.70 ID:C+krosWh0
( ・∀・)「世の中嘘つきだらけだから」
( ><)「モララーさん…?」
笑っているのに、何故かいつものように楽しみは感じられない笑みだった。
頭を撫でる手を引っ込めると、まばらにいる人たちをぼんやりと眺めている、その目がどこか虚ろで。
( ・∀・)「素直であることは、ある種の才能だよ」
( ><)「僕だって嘘くらい吐くんです」
( ・∀・)「そうだね」
( ><)「モララーさんは、あのアパートのこと嫌いなんです?」
( ・∀・)「好きだよ、大好き。じゃなきゃ長い間あそこにいないよ」
( ><)「…ハインさんは、長い間あそこにいたらいけないって言ってました」
夕暮れの中でハインさんが言ったあの言葉にはどんな意味があるのだろう?
しかしそう言うと、モララーさんはちょっとだけ悲しそうな顔をしたので、僕は少しだけ動揺する。
なんだろう、僕はまた言ってはいけないことを言ってしまったんだろうか?
( ・∀・)「…そうかい、ハインちゃんはそう思うんだね。
…まぁその通りなんだろうけど」
- 71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/21(月) 00:00:40.62 ID:dywvskVf0
( ><)「僕、あのアパート好きです」
( ・∀・)「うん、僕も」
( ><)「住んでる人も、好きです。201号室の人にはまだ会ったことないけど…」
( ・∀・)「僕もだよ。ドクオもね、アレは素直だから、割と気に入ってるんだ。
クーさんもハインちゃんも可愛いしね」
よしよし、と再び頭を撫でながらモララーさんが言う。
( ><)「だから…………」
('A`)「おーい」
そこまで言いかけたところで、ドクオさんが戻ってきた。
手には缶ジュースを三つ抱えている。
( ・∀・)「おっとKYが戻ってきてしまったようだ」
( ><)「…………」
( ・∀・)「まぁいい、この話はここまでだ。あとは再び遊園地を楽しもうじゃないか」
モララーさんが立ち上がり、さっきまであった不可思議な空気は消え去った。
(;><)「楽しむかどうかは別として、この遊園地怖すぎるんです」
( ・∀・)「そこが気に入ってるのに…」
- 73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/21(月) 00:02:38.44 ID:dywvskVf0
やっぱりダメだこの人。
ドクオさんが近付いてきて胡散臭げにモララーさんを見る。その視線は今回ばかりは同感だった。
('A`)「また何話してるんですか」
( ・∀・)「君のKYっぷりについてね」
('A`)「何ですとこの野郎、青汁買ってこなかった俺に礼言えよ」
( ><)「普通遊園地に青汁は売ってないんじゃ…」
('A`)「売ってたよ、はいビロード」
そういって僕が手渡されたのはおでん缶だった。
( ><)「………え、なんでおでん缶なんです?」
('A`)「え?だってお前を励ます会なんだろ?一番高いの買ったら必然的にそうなったんだよ」
そんな心遣いはいらなかったんです…。
ちなみにそう言うドクオさんがちゃっかり持っていたのはお茶だった。
僕もそういう無難なものが欲しかったんです。
( ・∀・)「ドクオ、僕のは?」
('A`)つ[]「はい加糖コーヒー」
- 76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/21(月) 00:05:57.01 ID:dywvskVf0
( ・∀・)「僕は無糖派なんだけど」
('A`)「知ってます」
嫌がらせです、とだけ続けてコーヒーをモララーさんへと押し付けた。
こう言っちゃなんだけど子供っぽいんです…。
パンパカパッパップ―――♪
(;><)「!」
その時、近くで大きなファンファーレが響いた。
どうやらこの遊園地にもパレード的なものがあるらしく、まばらにいた人たちが同じ方向に集まっていく。
ドクオさんの頬を引っ張りつつもモララーさんが立ち上がり、妙な人形達がいるパレードの方向を示した。
「僕らも行こうか」( ・∀・)つ<'A`)「いてててててててて」
( ><)「はいなんです」
- 77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/21(月) 00:06:33.31 ID:0Q4KtgoN0
立ち上がるとモララーさんはいつものように笑顔で、ドクオさんもいつも通りだった。
だけど、僕の中でちょっとした疑問が残る。
あのアパートに住む人たちは望まない能力を持っている?
だったら、ドクオさんとモララーさん…
そして、僕は?
もやもやとした気持ちを抱えながら、僕は二人についていった。
第六話、終わり
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