- 1 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/03(土) 19:23:25.04 ID:3n1hqDTP0
彼は戦争犬。
幼き頃から銃を握り、戦いを戦い尽くし殺戮の限りを尽くしてきたロクデナシだ。
だが彼の取り巻く環境ではそれが普通であったのだ。
兵士という概念すらしらない、少年であった頃から彼は戦っていた。
そう聞かされた。
そして兵士となった今、彼は"獲物"を探している。
その獲物を狩る為ならばためらいは持たない。
獰猛で、凶暴な恐ろしい獣だ。
獲物を見つけ出す為、奴らの喉元に食らいつく為、
戦争犬の牙は敵を食らい続ける。
例え、その戦いで全てを敵に回すことになったとしても。
- 3 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/03(土) 19:26:47.52 ID:3n1hqDTP0
川 ゚ -゚) 少女は戦争犬と駆け抜けるようです
第二話 戦争犬の戦い
- 4 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/03(土) 19:29:47.54 ID:3n1hqDTP0
******
銃声が響く。
パーソク軍の基地の置かれた砂漠に木霊していく。
基地はニューソクの部隊に包囲され、兵士達はパーソクの部隊を攻撃していた。
パーソクの兵士達が銃弾に倒れていき、蹂躙されていく。
真っ先に基地内へ乗り込んだ部隊があった。
その部隊の先頭を男が進む。男は黒い眼帯を左目にしており、
デザート迷彩を施された野戦服を着こみ、アサルトライフルM16A1を構えていた。
男が曲がり角に突き当たると、兵士達が飛び出してきた。
その動きに合わせて男はM16のストックを振るい兵士の頭を殴りつけた。
疾走していた兵士は衝撃を食らいそのまま転倒していき、
男はそれを掴んで盾にして更にやってくるパーソクの兵士達へ発砲した。
銃声が響き合った。
一拍遅れてニューソクの兵士達があらわれ、
男を援護する為に射撃を開始した。
盾にされた兵士は弾雨を浴びてズタズタに肉を引き裂かれてしまい、
男が放った弾丸はパーソクの兵士達の額を正確に撃ち抜いた。
兵士は息絶えてしまい、男はそれを確認するまでも無く放り投げた。
- 6 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/03(土) 19:35:38.75 ID:3n1hqDTP0
- 投げつけられた死体は兵士達へ激突してなぎ倒していき、
男はそれに気を取られた一瞬の隙をついて兵士へ接近。
猟犬の如く俊敏な動き。
M16で男は敵の銃を叩き落とし、ストックで側頭部を殴りつける。
兵士は倒れ、男は残る兵士へと格闘戦を仕掛けていく。
ストックで殴り、足をかけて転倒させ、撃つ。
全ての兵士を倒した男はしゃがみ込み、銃を構えた。
ニューソク軍の仲間達がそれに続くと、男は進撃を再開した。
男を含めたニューソクの部隊は司令室へと突入する。
そして、室内の兵士達を射殺していき、無力化した。
(‘_L’) 「貴様……! "ウォードッグ"か!?」
指揮官らしき兵士が撃ち抜かれて倒れると、叫びを上げた。
('A●) 「よく知っているな」
男は、"ウォードッグ隊"を率いる部隊長は応える。
(‘_L’) 「命知らずの隻眼の戦争犬、鬱田タケシ。貴様の悪名はニーソクにもパーソクにも知られている。
蛮族ニューソクの尖兵だとな! 侵略者共め!!」
- 7 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/03(土) 19:38:47.03 ID:3n1hqDTP0
('A●) 「随分嫌われているようで」
そう言うと部隊長鬱田タケシは銃を指揮官へ構えた。
(‘_L’) 「鬼畜ニューソク兵共が。私達の領土に土足で踏み入り、奪ってゆくなど許さんぞ!!」
('A●) 「うるせぇ、黙れ。お前が叫ぶのは罵声じゃねぇだろ? 命乞いだ。
黙って俺の手柄になれ負け犬め」
(‘_L’) 「パーソクの地は汚させん!」
指揮官はすかさずハンドガンを抜く。
照星はタケシの額を定めており、引き金は抜くと同時にひかれていた。
だが、
(;‘_L’) 「クッ……」
指揮官の手は撃ち抜かれ、ハンドガンはあらぬ方向を向いて弾丸を発射してしまう。
そのまま胴も撃たれ、再び指揮官は地面に伏していく。
('A●) 「おい、殺すなよ」
(゚、゚トソン 「少佐、ご無事ですか?」
司令室を制圧した兵士達の一人、女性兵士トソンが司令官を撃ったのだった。
彼女の構える銃口からは硝煙が漂っており、その弾丸は胴を穿っていた。
- 10 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/03(土) 19:54:09.84 ID:3n1hqDTP0
('A●) 「心配はいらねーよ」
そう言って進むタケシの銃からも硝煙が昇っており、それは手を撃ち抜いていたのだった。
タケシは司令官の傷口に蹴りを食らわせて告げる。
(;‘_L’) 「ぐおぉぉぉぉ!」
('A●) 「とっとと兵士達に銃を捨てて投降しろと伝えろ。無駄な死人を出すつもりはない」
司令室に備えてあるマイクを兵士がタケシによこし、それを司令官へ向ける。
彼は上半身を起こして手を伸ばし、それを掴もうとする。
が、
(#‘_L’) 「それは出来ん相談だなぁ!!」
その手はマイクを掴むのではなくタケシの銃を構える手を押さえ、
片手は懐から手榴弾を抜き出してピンを引き抜いた。
司令官はそのままタケシを押さえつけて自爆を敢行する。
- 11 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/03(土) 19:56:41.36 ID:3n1hqDTP0
咄嗟の出来事であり、兵士達の反応は遅れ、気付いた時には司令官はタケシの懐に踏み込んでいた。
一瞬であった。
タケシは司令官の両手を即座に抜いたナイフで切り落とし、
銃を捨てることで自由になった片手で落ちた手榴弾を拾う。
それをそのまま司令官の懐に押し込むと蹴り飛ばし、一拍の間をおいて爆発が起きた。
蹴りと共に身を落として伏せたタケシの身に、肉片と血が降りかかる。
(;'A;●) 「クソが」
悪態を吐いて顔に飛び散った血を拭うと、彼は命令を発する。
('A●) 「通信兵、敵へ投降を促せ。司令官は戦死した。応じない場合は一人残らず排除しろ。
ABチームは俺に続き基地内の敵を殲滅。
CDEチームは包囲の幅を狭め進撃。FGチームは逃走する敵を殲滅しろ」
無線機をしまい、彼は血にまみれたナイフを納める。
- 12 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/03(土) 19:59:14.14 ID:3n1hqDTP0
(゚、゚;トソン 「少佐―――ッ!?」
('A●) 「無事か……ってか? 肝心なとこで油断すんな、危うく死にかけた」
(゚、゚;トソン 「申し訳ございません……」
('A●) 「戦場をよく見渡せ。敵の動きに目を配り味方の位置に気をかけろ。
互いの死角をカバーしあえば防げない危険は最小限除ける」
(゚、゚トソン 「はい……それが、あの"最強"の教えでしたね」
('A●) 「そうだ。もっとも、そう上手くはいかないがな。
それに、お前に心配されるほど俺は弱くも無い」
そう言いながらリロードを行い、マガジンを薬室に叩きこむと、
('A●) 「行くぞ、敵はまだ残っているんだ。気を抜くなよ」
タケシは銃を構えて進んで行く。
(゚、゚トソン 「了解」
それに副官であるトソンは率いられていった。
- 15 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/03(土) 20:01:53.62 ID:3n1hqDTP0
******
司令官フィレンクトの戦死から約一時間後。
戦闘は沈静化し、基地の内外には多くの死体が転がっていた。
俺は兵士達がそれを集めていくのを尻目に、基地から離れていく。
エクストとトソン、そして荒巻のじいちゃんがそれに引き付いていた。
('A●) 「捕虜は?」
(゚、゚トソン 「7名です。うち5名が重傷を負っており、残る2名は現在拘束しています」
('A●) 「撤退した部隊は確認できるか?」
(゚、゚トソン 「いえ、今のところは。殲滅したものと思われます」
淀みなくテキパキと応えるトソンの声は、聞いていて気持ちのいいものであった。
まるで透き通るような声音は機械のように素早い返答と合わさり、
こいつは指揮官向きの人間だな、と思わされる。
- 16 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/03(土) 20:05:20.83 ID:3n1hqDTP0
<_プー゚)フ「けっきょくは皆殺しにしたようなもんか。まっ、こっから先は都市圏だ。
奴ら、ここで進軍をどうしても阻みたかったって気持ちがあったんだろうな」
気楽そうな声でそういうエクストを尻目に、俺はタバコをくわえる。
('A●)━ 「?」 と(゚、゚トソン
無言でライターを差し出し、俺はそれにタバコを近づけるとトソンは火を付けた。
……気の回る女だ。
吸い、タバコの先端が燃え上がっていくと俺は顔を離していき、煙を楽しんだ。
肺に籠った煙がここちよく、口の中を辛みと仄かな甘みが満たしていった。
('A●)y━~~ 「サンキュー」
(゚、゚トソン 「いえ」
('A●)y━~~ 「負けは認めるべきだ。あの指揮官は無能だ。奴の身勝手な爆死で大勢死んだ。
無駄な抗戦のせいでこちらも被害が増えた」
<_プー゚)フ「そうは言っても、微々たるものさ。たしかに死人はでたがよ、戦争なんだ。
それにここを落としたのは間違いなく俺達の功績。あんた、また評価があがるぜ?」
('A●)y━~~ 「でなきゃ困る。俺達の目的がそうでなければいつまでたっても果たされなくなる。
でなきゃ、俺達の戦いの意味がなくなっちまう」
- 17 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/03(土) 20:10:47.29 ID:3n1hqDTP0
煙を吐き出し、そう言うと荒巻のじいちゃんが口を開いた。
/ ,' 3 「自分の目的の為に死んでいく兵士達を、哀れんでいるのかの?」
('A●)y━~~ 「まぁ、ちょっとはな」
/ ,' 3 「ハインリッヒであればもっと上手くやるとな?」
('A●)y━~~ 「そこまで引きずってはいない。俺は、出来ることをやるだけだ」
周囲を見渡し、誰もいないことを確認すると、俺は切りだす。
('A●)y━~~ 「じゃあ今回得た情報を整理しようか」
(゚、゚トソン 「えぇ、お願いします。何があったか私にも教えてください」
('A●)y━~~ 「あぁ。0900、俺達は一個分隊を率いて新型AAの実験場を襲撃した―――」
- 18 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/03(土) 20:14:15.60 ID:3n1hqDTP0
******
( )「国家総合案内所を知っているか?」
倒れた兵士、プギャー少尉に俺はそう尋ねた。
熱砂の上で横たわり助けを乞うていたが、聞くなら今しかなかった。
元からこの男を助ける気などなかったんだ。
情報さえ吐けばそれでいい。何より生かしていては後始末が面倒だ。
だから殺す気だった。
そして核心へと俺は迫ったのだが……。
(メ;Д) 「な、なに……? "鮫島"だと? 貴様、一体何者……」
返って来た答えは更に謎を深めさせた。
(メ;Д) 「ぐぅ……ぐぞがっ……」
おまけに、詳しく聞きだす前にプギャー少尉はくたばった。
だが、その死に方には不審な点があった。
死ぬ前、奴は左胸と傷口を押さえていた。
傷口を押さえるのはわかる。
しかし、左胸を押さえる理由が俺にはわからなかった。
- 20 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/03(土) 20:20:31.96 ID:3n1hqDTP0
( )「……」
死体を観察し、思考するがわかるはずもない。
しかし、この苦しみ方には見覚えがあった。
過去に戦場で、狭心症の発作を起こした兵士に似ているように思えたのだ。
得られた情報は多くはなかったが、貴重な物であり次に繋がるものだったので、大きな収穫と言える。
ウプスレッド研究所……セントジョーンズ博士……そして、
( )「素直クール」
呟き、振り返ると、
川 ゚ -゚) 「?」
その先にはそいつがいた。
( )「久しぶりだな、クー」
身を伏せていたそいつに手を差し出し、名を呼びかける。
だが手を取ろうとはせず、瞳から警戒の色が窺えた。
川 ゚ -゚) 「お前は、一体……?」
仕方なしに覆面を脱ぎ取ると、警戒から驚きにクーはその表情を変えていった。
- 22 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/03(土) 20:25:38.70 ID:3n1hqDTP0
('A●) 「そう警戒すんなよ、俺だって。ドクオだよ」
川 ゚ -゚) 「ドクオ……?」
(;'∀●) 「あれ、忘れちまった?」
川 ゚ -゚) 「いや、違う。……大きくなったな」
('A●)「7年前だったか? 最後に会ったのは?」
川 ゚ -゚) 「正確には6年と8ヶ月ぶりだ。最後、見送りに来てくれたからな、お前は」
('A●) 「随分と記憶力がいいことで。見たとこ無事なようだが怪我は無いか?」
川 ゚ -゚) 「あぁ、問題ない。それよりも何故ここに?」
('A●) 「俺は"俺の戦い"を戦っている。それ以外に今話せることはない。
クー、気をつけろ。"奴ら"の目は、耳は、どこで向けられているか分からない」
川 ゚ -゚) 「……わかっているさ」
('A●) 「だったらどうしてこの仕事を引き受けた?
純粋水爆の開発にお前が携わってると聞いたぞ。
そしてあれはなんだ? 自分の能力を誇示すれば奴らはお前の正体に気付くぞ?」
('A●) 「いや、もう手遅れだ。この仕事はお前を試し、お前を誘き出す為のエサにしかすぎない。
俺よりも頭がいいんだ、それくらいわかったはずだ。どうしてなんだ?」
- 25 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/03(土) 20:30:19.61 ID:3n1hqDTP0
川 ゚ -゚) 「……」
何故黙りこくる?
そこでどうして言葉に詰まってしまうんだ?
答えを聞きたい気もしたが、長くこの場に居座るのはクーにとって、
俺にとっても芳しくないことは明らかだ。
時間が無い。
だというのに、
(#'A●) 「動くな!」
気配を感じ、発砲した。
(;-_-) 「ひっ!?」
こちらに背を向けて大型AAの方へこそこそと向かった男の目前で、砂が幾数散った。
銃を構えたままその男まで近づいていき、銃口を突きつけてやる。
('A●) 「良いか? お前達に危害を加えるつもりはねぇ。
ただ、お前達が怪しい身振り、行動などを取れば、約束は出来ないぞ?」
引き金に指をかけ、そのまま銃身で男の額を押すと、恐怖のせいかその場に倒れ込んだ。
- 27 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/03(土) 20:35:54.01 ID:3n1hqDTP0
(;-_-) 「う、撃たないでくれ……」
('A●) 「だったらそこでじっとしてんだな」
('A●) 「各位に告ぐ! 撤退だ。急げよ」
部下達が動きを作っているのを視界の端に送りながら、
俺は踵をかえしてクーのもとへ向かう。
川 ゚ -゚) 「ドクオ」
('A●) 「違う、鬱田タケシだ。そしてお前は俺を見なかった。俺は、お前を知らない」
部下達が俺の後に続き、そのままクーの傍を横切っていこうとする。
その一瞬、俺は左手に持っていた紙をクーの手に持たせて、言う。
('A●) 「……今は時間が無い。また会おう」
振り返ることはしなかった。それはアイツも同じだと思う。
再会は嬉しかった。10年前に運命を共にした唯一の戦友に再会し、嬉しくないわけがない。
ただ、あまり言葉を交わし過ぎれば思い出に浸ってしまう恐れがあった。
懐かしかった。そして、アイツは綺麗に成長していた。それだけを知られれば充分だ。
- 28 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/03(土) 20:39:13.87 ID:3n1hqDTP0
後は……。
('A●) 「エクスト、ディ、報告を」
<_プー゚)フ「はいよ、尋問したところアンタの予想通り、高岡ドクオを探す為に素直クールを呼び寄せたようだ。
奴らのボスはウプスレッド研究所のセントジョーンズ博士。"総合案内所"については、わからん。
その代わり"鮫島"って単語を返してきた。その後、死亡した」
<_プー゚)フ「いちおう言っとくが、手出しはしてないぜ?」
('A●) 「そうか……ディ、お前は?」
(#゚;;-゚) 「私もエクストと同じです。奴らの目的は高岡を探すことのようでした。
"最強"高岡ハインリッヒの弟子、ドクオ。
彼と"総合案内所"に一体どのような関係があるのかは知らなかったようです」
(#゚;;-゚) 「あの部隊は素直クールについての情報と、高岡ドクオの10年前の情報以外知らされてはいなかったようです。
総合案内所について、何かをしっているような素振りでしたが"鮫島"と聞き返してきただけでした。
尋問を続行しようと思ったのですが、その後死亡してしまいました」
('A●) 「致命傷は避けたはずだろ?」
- 29 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/03(土) 20:43:51.25 ID:3n1hqDTP0
(#゚;;-゚) 「えぇ、ですが……」
<_プー゚)フ「死に方が少しおかしかった気がしたな」
('A●) 「お前も思ったか?」
<_プー゚)フ「あぁ、失血死にしてはおかしい。左胸を押さえていた。
そこは負傷していないはずだったんだ。
あいつら、病気もちか?」
('A●) 「それは知らん。ドッグタグは回収したか?」
(#゚;;-゚) 「回収しました。こちらです」
('A●) 「これの認識番号から兵士達のデータを調べよう。奴らの証言の確証をとる。
とりあえず、ここから敵基地へ奇襲を行う。その後トソン達が合流する手筈だ。
部隊の数が減ってんのをそろそろ不審に思い始める奴らもいるはずだ」
(#゚;;-゚) 「了解」
<_プー゚)フ「了解」
('A●) 「よし……お前ら――――」
('A●) 「勝つぞ!!」
- 31 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/03(土) 20:48:05.17 ID:3n1hqDTP0
******
('A●)ー3 「フー……」
煙を吹かす。
フィルターまで吸いきったタバコをそのまま捨てた。
('A●) 「俺達が新たに得た情報は三つ。一つは鮫島。二つ目は奴らが素直クールの存在に気付いたということ。
そして最後に、ウプスレッド研究所のセントジョーンズ博士が案内人である可能性」
('A●) 「こいつは次に繋がる情報だ。ドッグタグを手に入れた。
認証番号から兵士の情報を探ってくれ、トソン」
(゚、゚トソン 「了解です」
('A●) 「健康状態についても調べておいてくれ。尋問を受けた者達は不審死を遂げた」
(゚、゚トソン 「えぇ、了解です」
/ ,' 3 「ということは、次の情報源となるのはウプスレッド研究所かの?」
('A●) 「奴らの認証番号を調べて、奴らの吐いた情報が偽物ではないか確かめてからそれは決める。
所属を偽っていたとしたら、情報が正しいかも信頼できん」
/ ,' 3 「じゃが、結局は潜入するんじゃろう?」
- 32 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/03(土) 20:50:42.66 ID:3n1hqDTP0
('A●) 「……そうなるかもな」
<_プー゚)フ「せっかく得た情報だしな。動かないのは勿体ねぇぜ」
(゚、゚トソン 「ですが、不用意に動けば総合案内所に怪しまれます。
今回だって、裏付けも出来ていないのに動いたのですよ?
結果的には成功しましたが……」
/ ,' 3 「仕方あるまい。今回は何と言っても―――」
(-A●) 「とにかく帰投するぞ。モララー大佐の命令は果たした。
ラッキーだったな、今回は。実験場が近くて。トソン」
(゚、゚トソン 「はい?」
(-A●) 「フサギコと連絡をとれ。アイツに任せたい仕事がある」
(゚、゚トソン 「それは一体どのような仕事ですか?」
('A●) 「……素直クールの身辺警護だ」
- 33 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/03(土) 20:54:02.98 ID:3n1hqDTP0
******
事情を上司に説明して報告書を書きあげた私は、
家路につこうとしていた。
从'ー'从 「……クーにゃん、大丈夫なの?」
川 ゚ -゚) 「何がだ?」
从'ー'从 「何って、襲撃を受けたんだよ? 怖くなかったの?」
川 ゚ -゚) 「あぁ、私は問題ない」
从'ー'从 「クーにゃんは強いねぇ……多いわけじゃないけど、
何人かPTSDになっちゃったっていうのに」
川 ゚ -゚) 「……お前は大丈夫か?」
从'ー'从 「うん、誰も怪我はしてないわけだしね。
でも目の前で人が殺されるのはやっぱり強烈だったね……」
川 ゚ -゚) 「だろうな」
- 35 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/03(土) 20:57:12.76 ID:3n1hqDTP0
从'ー'从 「ねぇ、あの人たちは何だったのかな?
どうして私達には手を出さなかったのかな?」
川 ゚ -゚) 「私にもわからん、それは。パーソクの部隊というのが妥当な線だが」
从'ー'从 「そうだよね。今日はもう帰って良いって言われたし、一緒に行こう?」
川 ゚ -゚) 「……」
そう言われ、ポケットにしまい込んだ"手紙"のことを思い断ろうかと思ったが、
川 ゚ -゚) 「あぁ、行こう」
从'ー'从 「うん!」
十年前の自分の気持ちを思いだして、
渡辺が今どんな気持ちなのか考えると、断るというのは気が引けた。
渡辺が先に更衣室を出ていくのを見送ると、私はポケットの手紙を取り出してみた。
川 ゚ -゚) 「……短いな」
「自分の正体を隠せ。今回のことには口を閉ざせ。連絡先を記す、フリーメールだ。
ここに連絡しろ。詳細は近いうちに話す。それ以降は非常時以外は連絡をよこさないでくれ。」
手紙には連絡先とそれだけの言葉が記されているだけであった。
確認した私は、帰宅するために会社を出ていく。
ドクオへ、かつての戦友へ連絡する為に。
- 36 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/03(土) 21:00:00.82 ID:3n1hqDTP0
- ******
基地に帰投した頃には既に夕暮れになっていた。
夕日が基地内に差し込み、廊下はオレンジ色の光が満ちていた。
トソンを脇に従え、俺は個室へ向かう。
その扉をノックすると「入りたまえ」と声がかえり、
俺達二人は入室した。
( ・∀・) 「そろそろ帰ってくる頃だと思ったよ、ドクオ少佐」
目前に置かれた机にはモララー大佐が座り、俺達を出迎えた。
31歳と若くして昇進に昇進を重ねて、大佐という階級にまで上り詰めたエリート中のエリートだ。
その働きは目覚ましく、戦場では俺も何度か助けられた。
落ち着き払った雰囲気とは裏腹に、大佐の瞳の奥からはエネルギーに満ち足りた輝きが覗ける。
('A●) 「デブリーフィングを行います、大佐」
( ・∀・) 「よろしい、続けたまえ」
('A●) 「17日、我々ウォードッグ隊はパーソクとの戦闘を行うソーサク基地の部隊へ援護へ向かいました。
1426に戦闘を開始し、本日0800に部隊を二分して敵基地を奇襲。
1247に敵指揮官を排除しましたが、残存部隊が激く抵抗したため、殲滅。
損害は死傷者が89名、自分の部隊の者は12名が死亡し20名が重傷を負い治療中です」
- 39 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/03(土) 21:06:53.55 ID:3n1hqDTP0
('A●) 「以上です」
( ・∀・) 「御苦労。補充の人員を手配しておく」
('A●) 「よろしくお願いします」
( ・∀・) 「今回の君達の働きで、パーソク進行への足がかりが出来た。
見事な活躍だドクオ君。流石は"戦争犬"と呼ばれるだけはあるね」
('A●) 「いえ、皮肉として呼ばれているだけです。その名前は」
( ・∀・) 「まぁまぁ、その名が轟いてることは変わりない。
十年前の三ヶ国大戦で本格的に我々へ攻撃を開始したパーソクとニューソクも、
君には恐れをなしている。高岡ハインリッヒの再来のようである、と」
('A●) 「カラマロスDNで壊滅した部隊"GJ"と、私の部隊ウォードッグ隊は、
GJのように遊撃を行う部隊です。ですが、私は"最強"のようにはなれません」
( ・∀・) 「そこまでは求めんよ。しかし、私は君には頑張ってもらいたいと思っている。
ニューソクは10年前とは違い、これまでにないほど大きくなっている。
もはやニーソクもパーソクも我々には敵うまい」
( ・∀・) 「パーソク領の統一まで、後一歩だ。君には準備が整い次第ニーソクのノトリ谷へ向かって貰うつもりだ。
あそこは天然の要塞だ。現地軍も苦戦を強いられている。しかし、ニーソク側は守りに徹している。
攻め込まず、上層部はパーソク攻略まで待つつもりだ。なに、もうすぐだ」
- 40 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/03(土) 21:09:27.31 ID:3n1hqDTP0
( ・∀・) 「その時には、君に先陣を切ってもらう。補充要員をみっちり鍛えてやってくれ」
('A●) 「了解」
( ・∀・) 「覚悟を決めておくのだ。それと、ウォードッグ隊に"装甲服"が支給されることになった。
役に立つことだろう。こちらも扱いこなせるようにしておいてくれ」
('A●) 「量産化の目処がたったのですか?」
( ・∀・) 「いや、それは君達の働き次第で決まる。君達の部隊に実験的に支給し、
その性能の有用性が示されれば全部隊に配備されることだろう」
('A●) 「そうですか……了解」
( ・∀・) 「楽しみかい?」
('A●) 「えぇ、まぁ……」
( ・∀・) 「それはよかった……では、私からの報告はこれまでだ。もう行っていいよ」
('A●) 「それでは、失礼します」
踵を返し、俺とトソンは退出しようとした。
- 42 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/03(土) 21:13:14.98 ID:3n1hqDTP0
が、その時……。
( ・∀・) 「ところでドクオ君、ダーウィン社と我が軍が協働で実験を行っていたのだが、知っていたかね?
君達の戦闘区域の近く、スカイプ砂漠で行っていたのだが……」
('A●) 「はい、実験の内容については存じませんが、そういった実験があることは」
( ・∀・) 「そうかね。では、我が軍の部隊が正体不明の部隊に襲撃され、壊滅したという報告は聞いているかね?」
('A●) 「いえ、存じません」
自分でやった癖に、とトソンは白々しく思ったかもしれない。
だが俺は、冷静に感情を込め内容に応えた。
( ・∀・) 「そうか……その部隊は警備部隊と研究員は殺害したが、
ダーウィン社の社員には一切危害を加えなかったそうだ。
私はこの点から、内部事情を知る者かと睨んでいる。パーソクの部隊が一番濃厚な線ではあるが」
('A●) 「スパイがいる、と?」
- 44 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/03(土) 21:16:33.76 ID:3n1hqDTP0
( ・∀・) 「パーソク軍のスパイが我が軍の中に潜んでいる。可能性としてはこれが一番高いだろうね」
('A●) 「自分もその可能性が高いものだと思います。だとしても、ダーウィン社の社員を殺害しない理由がわかりません。
自分なら目撃者を0にするため、ダーウィン社の社員も皆殺しにします。
そして実験のデータも全て破棄します。もしくはデータを奪います」
( ・∀・) 「ふふふ、君はこういう話の時はイキイキとした顔をするね」
モララー大佐は口の端を緩めて言う。
( ・∀・) 「引きとめてすまなかった。詳しいことがわかれば報告しよう」
('A●) 「ではこれで失礼します」
無表情でそう言って退出すると、俺は自室へ向かった。
トソンは予め言いつけておいたドッグタグのデータを調べるため別れていった。
傍を通り過ぎていく彼女に、こう囁いた。
(゚、゚トソン ('A●) 「……見つかるなよ」
- 46 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/03(土) 21:23:52.04 ID:3n1hqDTP0
******
('A●)y━〜〜 「……」
(゚、゚トソン 「失礼します」
自室で報告書を書き終わり机についてて一服していると、トソンが入室してきた。
その手には書類が持たれており、それが調査の結果であることは目に見えていた。
タバコを灰皿で揉み消して捨てる。
(゚、゚トソン 「少佐、ドッグタグの情報の称号が完了しました。
尋問で得た情報は正しいようです。全員、ウプスレッドの警備部隊でした」
('A●)つ■ 「おぉ、お疲れ。コーヒーでも飲むか? 缶コーヒーでよければ」
(゚、゚トソン 「えぇ、頂きます」
缶コーヒーを手に取り、トソンは俺の設置した折りたたみイスに座った。
(゚、゚トソン 「それで、どうします? 調査を行いますか?」
('A●) 「あぁ、勿論だ。決行は今夜2300」
(゚、゚トソン 「早いですね」
('A●) 「下手に時間を置けば情報が破棄されるかもしれん。
一刻も早く調査しなければならない」
- 47 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/03(土) 21:25:53.28 ID:3n1hqDTP0
(゚、゚トソン 「それもそうですが……研究所側は応じるでしょうか?」
('A●) 「無理だ。潜入する」
(゚、゚トソン 「要員は誰を?」
('A●) 「俺が単独でやる」
(゚、゚トソン 「お一人でですか? 少々危険すぎるのでは? 私もお供します」
('A●) 「良いんだ、発見されなければいい。お前達を俺の私事に無理に付き合わせるのも悪い。
今日の疲れを癒せ。明日の訓練は厳しく行くぞ?」
(゚、゚トソン 「エクストや荒巻さんにもお話しした方が……」
('A●) 「いや、いい。それに単独でやったほうがやりやすいこともある」
(゚、゚トソン 「……焦っているのですか?」
('A●) 「焦ってなんかいねぇよ。ただ、急がなきゃいけないんだ」
(゚、゚トソン 「モララー大佐は、貴方を疑っているかもしれません」
('A●) 「そうだ、だからこそ俺が一人で行く。派手に動けば感付かれる」
(゚、゚トソン 「貴方が単独で動いたことが大佐に知れたら、疑われてしまいます。
どうしてもお一人でいかれるのですか?」
- 49 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/03(土) 21:30:49.04 ID:3n1hqDTP0
('A●) 「あぁ……」
(゚、゚トソン 「分かりました、どうかお気をつけて。
そしてどうかお体をご自愛してください」
('A●) 「ありがとな」
単独潜入を行うのは初めてじゃない。
警備は厳重だろうが、なんとかならないことはないだろう。
しかし、トソンはとても心配そうな顔で俺を見てくる。
(゚、゚トソン 「あの、一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」
('A●) 「なんだ?」
(゚、゚トソン 「少佐は先程、大佐に自分ならダーウィン社の社員も殺害すると仰っていましたね?」
('A●) 「それがどうした?」
(゚、゚トソン 「では、何故そうしなかったのですか?
ダーウィン社の社員から情報が漏れるかもしれません」
('A●) 「奴らは関係ない。だから危害をくわえなかった。それだけだ」
(゚、゚トソン 「ダーウィン社員の中に、案内所の情報を持った者がいるとはお思いにはならなかったのですか?」
- 51 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/03(土) 21:35:02.19 ID:3n1hqDTP0
('A●) 「あぁ、思わなかったな」
(゚、゚トソン 「私はそうは思いませんでした。ダーウィン社の素直クール、彼女の功績は怪しいものがあります。
軍がたかが一企業に、核に匹敵する兵器の開発の協力を依頼しますか?
そして今回の新型AAの開発。それを成し遂げた彼女は危険です」
(゚、゚トソン 「彼女は、案内所の一員なんじゃありませんか?」
('A●) 「あの女は関係ない。あの女は警備隊に尋問されていた。
奴も、案内所に狙われているんだ。
疑うのではなく、保護するべきなんだあいつは」
(゚、゚トソン 「少佐、はっきり申し上げておきます。彼女は貴方の重荷になることでしょう。
貴方は案内所に弱点を晒しながら奴らと戦っているのと同じです。変に肩入れするのは危険です」
('A●) 「だろうな……だが、やるしかない。これは、俺の方針だ。信念だ。こいつは変えられん」
(゚、゚トソン 「国家総合案内所を壊滅させる……。
その意思に、変わりは無いのですか?」
('A●) 「勿論だ。そこは、信じてくれよ」
(゚、゚トソン 「わかりました……。では、お気をつけください。ご無事を祈っています」
- 52 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/03(土) 21:37:31.22 ID:3n1hqDTP0
(-∀●)y━ 「ハッハッハ、ありがとうな」
そう笑いながらもう一本タバコを取り出すと、
('A●)y━ 「?」
と(゚、゚トソン
トソンはライターを差し出してきた。それで火をつけて、煙を吐き出す。
(-A●)y━〜〜 「サンキュー」
(゚、゚トソン 「それでは、失礼します」
俺はトソンが部屋を出ていくのを見送った。
そして、
('A●)y━〜〜 (いいケツしてんなおい)
トソンの尻を眺めながらタバコを吹かした。
- 54 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/03(土) 21:39:41.78 ID:3n1hqDTP0
******
2300
夜の闇の中、俺は軍服に身を包んだまま街中にいた。
目の前にはウプスレッド研究所がある。
警備兵の巡回ルートを把握した俺は、一人になった警備兵の背後にとりつき、
「ぐっ!?」
左手で口を押さえ、胸に高電圧スタンガンを撃ちこんでやった。
2万Vの電圧を受けた兵士は、一瞬で気絶してしまった。
(;'A●) 「……死んでないよなこれ?」
トソンが色々と装備を用意してくれたのだが、
こんなスタンガンまで用意してくれるとは……。
俺はそのまま、もう一人の兵士を沈黙させる。
そして研究所内に潜入していった。
二棟あり、俺が入りこんだのがA棟。もう片方がB棟だ。
B棟は主に格納庫として扱われているので、
情報などを集めるのならば研究室などが集中しているA棟に潜入した。
- 58 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/03(土) 21:43:30.32 ID:3n1hqDTP0
3階建てであり、1階はオフィス、2階からが研究室となっているようであった。
同じ軍の軍服なので怪しまれることはなかったが、
研究室に入りこむとなれば別だ。
研究所内に入り込んだはいいが、既に不審な目で見られている気がしてたまらない。
しかし、施設に潜入するさいはいつも感じていることなので、
気にするべきではないのだが不安が消えることは無い。
下手な行動でもしないかぎり、この格好ならばれるはずはない。
だが、ここから先に進むのなら情報と研究者の白衣が必要だ。
('A●) (……いつもの手を使うか)
そう思い、俺はトイレへ向かった。
すると、既に用をたしている研究者がいた。
('A●) 「すいません、セントジョーンズ博士の研究室はどこでしたっけ?」
「あぁ? なんだ忘れたの?」
(;'∀●) 「いやぁ〜すいません。ド忘れしちまって」
「それなら3階の西側にあるよ。階段のすぐそば」
俺は便器に近づいていき、用を足そうとする。
- 60 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/03(土) 21:46:43.35 ID:3n1hqDTP0
('A●) 「すいませーん。ありがとうございますー」
研究者の口を押さえ、胸元にスタンガンを押しつけてやった。
すると電流に身体をビクつかせ、気絶していく。
そのまま個室へ連れ込んで服を脱がし、俺は白衣へと着替えた。
内側からカギをかけて、両手両足をガムテープで縛り、
最後に口へ張り付けると壁を登り個室から出ていく。
用は済んだ。
トイレを出て階段を登っていき、セントジョーンズ博士の研究室へと俺は向かった。
研究所を歩いていると多くの研究者達にであったが、皆俺に一瞥をくれることもなく通り過ぎていく。
俺完全にこの場に溶け込んでいるようだ。
そして研究室の前に辿りつきノックをするも反応はなく、留守のようであった。
扉はしまっており、引いてもビクともしなかった。
('A●) 「それじゃ、こいつを使うかね」
周囲に誰もいないのを確認してから、俺はピッキングの道具を取りだした。
ピックにテンション。手間をかけるわけにもいかず、急いで解錠にとりかかり、
10秒ほどでそれは終了した。
すぐさま室内に入り込み、パソコンを探した。
部屋の中には書棚とベッド、そして机……その上にパソコンは置かれていた。
- 64 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/03(土) 21:50:52.94 ID:3n1hqDTP0
電源は入ったままだ。
好都合だ。そのままパソコン内を探っていくが、
案内所に関連するらしきファイルは見当たらなかった。
メールフォルダを開く。
案内所から宛てられたメールは無い。
こちらから送信したようなものも無かった。
研究所内の職員、知人からのもの、ダーウィン社とのメールしか見当たらない。
('A●) (読んですぐに削除したのか? それとも……外れか?)
情報は期待できず、俺はドキュメントファイルを開いた。
仕事のものか……。
理解できない難解な計算式。そして何を作りあげるのか想像もつかないような設計図。
それらを次々に開いていくと、不思議と目に留まるものがあった。
それは――――。
('A●) (10年前の、あの部隊がきていた装甲服か?)
見覚えのある装甲服だ。
今はもう使われていないが、数年前までは現役であったものである。
カラマロスDNで交戦した案内所の部隊が使っていた、装甲服だ。
- 66 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/03(土) 21:53:33.03 ID:3n1hqDTP0
('A●) (当時まだ試作段階だった物だ。ハインから聞いていなければ、装甲服なんて物俺は知らなかった。
一部の者にしかその存在を知らされていなかったこいつは、ここで作られたのか?)
そして、案内所の部隊へと回された。
案内所との繋がりが、これで見えてきた。
ポケットからUSBを取り出し、コピーしていく。
('A●) 「!?」
その作業を行いながら更にファイルを開いていこうとするが、そこで俺は足音に気付いた。
こちらに近づいてこようとする者の音だ。
すぐさま俺はドアのすぐ横で息を殺して身を隠した。
壁に張り付き、ナイフとハンドガンを左右の手に構えて足音の主を待つ。
ドアノブが回り、扉が開かれていく。
そして、白衣を着た男が部屋へと入ってきた。
( )「あれ、カギ開けてたか?」
次の瞬間、俺は男の背中へと襲いかかっていった。
左手で男の左手の袖を掴み、右手で襟首を掴んで右足で左足を払う。
すると足を取られた男は重心を失い、そのまま身体を地面に押さえつけてやる。
同時に左手を背中に押し当て、膝に重心をかけて圧し掛かっていく。
背後を取った俺は男の後頭部に銃を押しつけて言った。
- 69 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/03(土) 21:57:58.17 ID:3n1hqDTP0
(#'A●) 「セントジョーンズ博士か? 答えろ!!」
(’e’;) 「誰だ貴様は!? 一体何の……」
('A●) 「無駄口は聞かないほうがいい。
頭に脳を観察するための穴を作られたくはないだろう?」
後頭部にハンドガンのグリップを叩き込み、俺は言う。
('A●) 「もう一度聞こう。お前はセントジョーンズ博士か?」
(’e’;) 「あ、あぁそうだが……」
('A●) 「では質問だ。スカイプ砂漠でのダーウィン社との合同実験で、
素直クールを拉致するよう命じたのはお前だな?」
(’e’) 「わ、私は……」
(#'A●) 「黙れ! 質問にだけ答えろ!!」
(’e’;) 「あ、あぁ。その通りだ」
(#'A●) 「その目的は!?」
(’e’;) 「彼女の技術と知識を私の研究に……」
(’e’;) 「つっ!?」
聞くに堪えない。俺はセントジョーンズにもう一度グリップを叩き込んでやった。
- 70 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/03(土) 22:00:12.52 ID:3n1hqDTP0
('A●) 「嘘はいけないなぁ博士。目的はなんだ? 次に嘘をつけば指を一本ずつ切り落としていく」
(’e’;) 「も、目的は……高岡ドクオの所在を確かめる為」
('A●) 「高岡と素直に一体なんの関係が?」
(’e’;) 「高岡ドクオと素直クールは、10年前に共にカラマロスDNを脱出している。それだけだ」
('A●) 「では高岡の所在を知り、どうするつもりだ?」
(’e’;) 「捕縛する……」
('A●) 「お前に、何のメリットがある?」
(’e’) 「私は……」
('A●) 「言いにくいのなら当ててやろうか? お前は、命令されたんだ」
('A●) 「国家総合案内所にな」
(’e’;) 「貴様、何故"鮫島"の名を……ッ!?」
('A●) 「どうやら当たりのようだな。残念だが、こちらの質問が先だ。
セントジョーンズ博士、鮫島とはなんだ? 国家総合案内所との関係は?」
(’e’;) 「鮫島とは国家の規範であり、国家をあるべき姿へと案内していく為の組織。
鮫島は、国家を真に憂う者達の集まり……真の愛国者たちの集いだ。
彼らの行いは、決断は全て、ニューソクの為に行われている」
- 72 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/03(土) 22:02:14.66 ID:3n1hqDTP0
('A●) 「良い答えだ。だが、100点とは言えないな。鮫島とはなんだと聞いている」
(’e’;) 「何を言っている? 鮫島は鮫島だ!!」
('A●) (……錯乱しているのか? まぁいい)
('A●) 「では質問を変えようか博士。国家総合案内所の構成員の数は? そして主な構成員は?」
(’e’;) 「主要な構成員は知らない……数は計り知れないほどだ。この国の全ての兵士が、国民が。
知らず知らずのうちに彼らに関与し、導かれている。
私も同じだ。私は仕事を直接依頼され、そして今の地位についたのだ」
(’e’) 「私はほんの少し、奴らとの位置が近かっただけにすぎない」
('A●) 「馬鹿な……奴らの拠点もしらないのか?」
(’e’) 「知らん」
('A●) 「博士。俺は武器の手入れは欠かさないんだ。今日だってナイフを研ぎ、磨いてきた。
よく切れるぞ? その切れ味を知りたいか?」
ナイフの刃先を喉元に押し当て、薄く切りつけていくと―――。
(’e’;) 「ほ、本当だ! 本当に知らないんだ!!
奴らは他機関との情報交換の一切を行わない」
(’e’;) 「何を期待してここに潜り込んだのかは知らんが、ここにはそんな情報はないぞ。
奴らは場所を調べても出てきやしない。奴らの事を知るには、人伝に聞きだすしかない」
- 75 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/03(土) 22:07:10.56 ID:3n1hqDTP0
- ('A●) 「構成員を調べろ、ということか?」
(’e’;) 「そうだ……私は、知らん。私も個人的に気になって調べた事があるが、見つからなかったのだ」
('A●) 「そうか……それじゃあ、最後の質問だ。これが終われば、解放しよう」
(’e’) 「あぁ……早くしてくれ。このことは、決して他言しないと誓う」
('A●) 「じゃあこれが最後だ。お前は、"チャネラー"を知っているか?」
(’e’;) 「なに? 貴様"鮫島"まで知って……」
('A●) 「!?」
そこまで言いかけると、セントジョーンズは突如として左胸を押さえて苦しみ出した。
叫びを上げようとしたので、俺は咄嗟に口を押さえた。
(゚ e゚;) 「―――――――っ!?」
だが激しく身悶えし、とてつもない力で抵抗してくるセントジョーンズは俺を振り払おうとする。
(;'A●) 「……クソッタレ!」
- 78 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/03(土) 22:09:14.26 ID:3n1hqDTP0
セントジョーンズは苦しみ続けていたが、やがて身動きをしなくなった。
あの時、警備部隊の兵士達を尋問した時と同じだった。
(;'A●) 「……チッ!」
ここに長居するのは危険だ。騒ぎに気付かれたかもしれない。
そしてなにより、人を殺してしまった。
死体は進入の痕跡を残してしまう。
誰にも見つからずに処分するのは不可能だと言っていいだろう。
だから俺はコピーの終わったUSBをすぐさま抜き取り、
その場から誰にも見つからないように離脱して、
トイレで軍服を回収して研究所を素早く脱出した。
それから数分後、研究所が慌ただしくなるのは容易に予測できることであった。
俺は、手に入れた情報に更に謎を深めたまま、基地へと帰還していく。
……鮫島とは、一体なんだ?
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