川 ゚ -゚) 少女は戦争犬と駆け抜けるようです

2 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/10(土) 21:10:23.86 ID:cn/6phB60

家族。

それは人間のコミュニティにおいて最も古いものだろう。

生物である以上家族というコミュニティは必ず築かれる。

こんな私にも、あの戦争犬にも必ず受け入れてくれる"場所"はあるのだ。
戦争とはかけはなれた世界に住む、私の家族。

彼女らから平穏な世界を覗き、私は守る存在を再認識する。

彼にも、そんな存在がいればどれほどいいことだろうか……。


私は、私の家族を護る為にも"私の闘争"を続けていく。


3 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/10(土) 21:13:26.60 ID:cn/6phB60



   川 ゚ -゚) 少女は戦争犬と駆け抜けるようです




        第3話 少女の休息




5 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/10(土) 21:15:56.16 ID:cn/6phB60

******

川 ゚ -゚) 「今回の新型AAファットボーイの開発プロジェクトは、
      スタッフの尽力もあり、見事成功を収めました」

プロジェクターに映し出されるファットボーイのデータの横に立ち、
私はダーウィン社の重役達へプレゼンを行っていた。

川 ゚ -゚) 「クライアントである軍の望んだスペックを満たし、
      その通りの性能を開発したファットボーイは発揮して、
      以前開発された純粋水爆を積んだ弾道ミサイルの発射を成功」

川 ゚ -゚) 「その際に記録したデータは、お手元の資料にある通りです」

川 ゚ -゚) 「脚部への負担が大きく、パーツの摩耗が予想以上に著しかったのですが、
      それは今後行われていく各パーツの軽量化によってクリアされていく問題でしょう。
      クライアントがすぐに使用を行うというのであれば、武装を減らせばパーツへの負荷は軽減されます」

川 ゚ -゚) 「クライアントは大した問題ではないと仰っていました。ですので、我々の今回の業務は完遂したといえます」

川 ゚ -゚) 「ですが、先日実験を行ったところ、我々のチームは軍の部隊と共に謎の武装勢力に攻撃を受けました。
      部隊は壊滅し、ウプスレッド研究所の研究員達も多数亡くなってしまい、
      この実験に参加した我が社の社員に怪我人は出なかったのですが、
      PTSDに掛かってしまった者が多数出てしまいました」

川 ゚ -゚) 「これは業務に支障をきたすレベルであり、今も彼らは苦しんでおります。
      そこで、私の研究開発チームに補充の人員を充てていただきたく思います」

6 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/10(土) 21:18:57.38 ID:cn/6phB60

川 ゚ -゚) 「このままでは現在開発中の新型装甲服の進行が大幅に遅れてしまいます。
      また、対装甲服用の武装、機械剣の開発もままなりません」

川 ゚ -゚) 「補充の人員を、どうかよろしくお願いいたします。
      これで、私のプレゼンを終了します。ご清聴感謝します」

爪'ー`) 「素直君、ご苦労だった。君のチームが上げた成果は素晴らしいものだ。
     我々と軍とのパイプは、これでより一層深くなることだろう。
     報酬は一般企業のそれとは比べようもない。何より我々は国の信頼を得ることが出来た」

フォックス課長がいの一番に口を開いた。
落ち着いた印象を与える、緩んだ頬が笑みのように見えるのが特徴的であった。

爪'ー`) 「補充の人員は人事部長と相談し、必ず用意しよう」

だが、と付け加えて課長は続けていく。

爪'ー`) 「今回実験に参加した君のチームのメンバーには、三週間の休暇を与えよう。
     もちろん、君を含めてね。今回の事件のショックを、今までの疲労と共に癒してくれ」

川 ゚ -゚) 「ありがとうございます。ですが、私はご遠慮させていただきます」

爪'ー`) 「ん? 何故だね?」

川 ゚ -゚) 「せっかくなのですが、私は主任の立場についています。
      私がいなくては仕事が回りませんし、私が部下達へ労働への姿勢を示さなければなりません。
      これしきのことで――――」

7 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/10(土) 21:23:00.50 ID:cn/6phB60

爪'ー`) 「いや、上に立つからこそ休む時は休まねばならん。
     無理がたたり身体を壊してからでは遅いのだぞ?」

川 ゚ -゚) 「しかし、私は―――」

働きたい。

そう言おうと思っていた。

だが、その言葉は遮られてしまう。

爪'ー`) 「良いから休んでおきなさい。休息をとり身体を充分に休めることも業務だ。
     仕事のことは気にしなくていい。あれから一週間、君は副主任の分も働いてくれただろう。
     もう休みたまえ。彼はだいぶ回復したそうだ。明日から出勤できる」

爪'ー`) 「彼と変わり、一週間ずつ交代で三週間きっちり休暇をとりなさい。これは業務命令だ」

爪'ー`) 「私からは以上だ」

川 ゚ -゚) 「了解……ありがとうございます」

それからは特に質問なども無く、私のプレゼンは終了した。
他の部門のプレゼンが始まったが、興味は無く一切頭に入ってこなかった。

三週間も一体なにをすればいいんだろうか。

無駄な休暇を一体どう消費しようか会議が終わるまで考えていた。

9 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/10(土) 21:26:57.24 ID:cn/6phB60

******

从'ー'从 「あっ、クーにゃん! お疲れ様〜」

荷物を取りにオフィスへ戻ると、渡辺がそう言って出迎えた。

川 ゚ -゚) 「あぁ、お疲れ。まだ残っていたのか?」

从'ー'从 「うん。クーにゃんを待ってたんだ〜」

川 ゚ -゚) 「もう退勤の時間は過ぎていたじゃないか。
      わざわざ会議が終わるまで待っていてくれたのか?」

从'ー'从 「そうだよ〜。タイムカードなら切ってきたから大丈夫だよ」

川 ゚ -゚) 「どうしてそこまでして待つ?」

とっくに、一時間前には退社時間だったはずなんだ。
私は会議があったので残ってはいたが、渡辺がわざわざ一時間も私を待っている理由は無い。

単純に疑問に思ったので聞いてみた。

从'ー'从 「どうしてって、クーにゃんと帰りたいからってだけだよ?」

川 ゚ -゚) 「あぁ、そうか……じゃあ帰るとするか」

11 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/10(土) 21:29:58.27 ID:cn/6phB60

あまりにも単純すぎる理由に、それ以上尋ねる気は消え失せてしまった。

タイムカードを切った私は、その足で渡辺と共に会社を出ていく。

外は暗くなってはいたが、まだこの時間は街が活気づいており、
街灯や電飾の光に照らされて明るい。

そして喧騒。

客引きや信号の音に車の排気音が響いていく。

その中を私と渡辺は二人で進んで行った。

从'ー'从 「クーにゃんはさぁ」

川 ゚ -゚) 「む?」

从'ー'从 「彼氏とか作らないの?」

川 ゚ -゚) 「あぁ」

从'ー'从 「えぇ〜、誰かイイ人はいないの?」

川 ゚ -゚) 「いや、興味無いんだ」

从'ー'从 「勿体ないな〜。クーにゃんならすごくいい人捕まえられそうなのに」

川 ゚ -゚) 「必要ないんだ、私には」

13 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/10(土) 21:35:04.03 ID:cn/6phB60

从'ー'从 「ふぅん。ホントに興味無いんだね」

川 ゚ -゚) 「あぁ」

从'ー'从 「じゃあさ、クーにゃんにすっごくイケメンでお金持ちな人が告白してきても断るの?
      もう、すっごいお金持ちで、働かなくても生活していける人ですっごくかっこいいの」

川 ゚ -゚) 「そうなるな。私は、むしろ働きたい」

从'ー'从 「……今の仕事が好きなの?」

川 ゚ -゚) 「好き、というか。この仕事が私の能力を活かすのに相応しいんだ」

从'ー'从 「そう。クーにゃん、すっごい活躍してるもんね」

从'ー'从 「軍の科学者の人たちだって、目をかけるくらい……」

渡辺はそう言うと、少し口ごもった。

そして、

从'ー'从 「……クーにゃんさぁ。あの時、軍の人達に銃を向けられてたけど、どうしたのあれ?」

本題へと切り込んできた。

恐らく、それを問いつめたくて渡辺は私のことを待っていたのだろう。

川 ゚ -゚) 「私にもわからん。ただ、付いてこいとだけ言われた。
      何の容疑があったのかもわからず抵抗したんだが、その結果銃を向けられてしまった」

15 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/10(土) 21:38:22.33 ID:cn/6phB60

从'ー'从 「自分にも覚えがないの?」

川 ゚ -゚) 「あぁ、思い当たる節が一切ない」

从'ー'从 「新型AAの開発に携わったのが、まずかったのかな?」

川 ゚ -゚) 「それはわからん。ただ、私に何かしらの疑いがあったのは事実だ」

从'ー'从 「それ以来、何か軍や警察から言われたことは無いの?」

川 ゚ -゚) 「無いな」

从'ー'从 「……良かった」

川 ゚ -゚) 「何がだ?」

从'ー'从 「クーにゃん、何か悪いことしているんじゃないかなって思って」

川 ゚ -゚) 「私は無実だ」

从'ー'从 「うん、クーにゃんのこと信じてたけど、ちょっと疑っちゃってたんだ私。ごめんね」

川 ゚ -゚) 「……」

从'ー'从 「私ね、クーにゃんが連れて行かれそうになったと時心配したの。
      でもあの部隊が出てきて、軍の人達を倒して……」

从'ー'从 「ちょっと、その時ほっとしたんだ。クーにゃんが連れていかれなくて。
      たくさんの人が死んじゃったのに。私達も殺されちゃうかもしれないのに」

16 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/10(土) 21:40:34.54 ID:cn/6phB60

从'ー'从 「クーにゃんは、あの人のこと知らなかったの?」

川 ゚ -゚) 「知らない奴だ。顔に覚えもなかった。ただ、向こうは私のことを知っていたようだがな」

从'ー'从 「……そう」

じゃあ、と付け加えて渡辺が続ける。

从'ー'从 「お休み中に遊ぼうよ!」

川 ゚ー゚) 「あぁ、そうしよう。連絡をくれ」

从^ー^从 「うん」

从^ー^从 ノシ「じゃあまたね! おやすみ!」

そう言って、笑みになった渡辺は自宅へと向かっていった。
ただ退屈だったと思っていた休暇だが、少しは楽しみが出来た。

何をしようかと考え、飲みを期待しながら私はアパートへと帰っていった。

20 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/10(土) 21:44:52.37 ID:cn/6phB60
******

川 ゚ -゚) 「ふぅ……」

シャワーを浴びた私は、下着姿のままでパソコンへ向かった。

立ちあげてあったそれからメールフォルダを開くと、
新着のメッセージが二件送られてきていた。

一件は家族からだ。

休みに帰ってこられないか、というもので、
連休が入ったのでもう少しで帰れそうだと返信した。

そしてもう一件は、登録されていないアドレスだった。

ドクオのアドレスだ。

先日渡された紙に、このアドレスが書かれていた為、
このアドレスへメールを送っていたのであった。

フリーメールのアドレスだ。
恐らく、足をつけないためにネットカフェなどを使ってそこから連絡をとるつもりなのだろう。
メールの内容は短く、要件だけが述べられていた。

「31日、13時に9'sカフェにて待つ。都合はいいか?
 緊急時以外は連絡をするな。お前は狙われている。
 だが、お前にはガードをつけるので安心してくれ。
 内容を確認したらメールは削除しろ。以上」

22 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/10(土) 21:49:25.51 ID:cn/6phB60
簡潔すぎる内容だった。

今までなにをしていたのか、今なにをしているのか、
何も記されてはいなかった。

だが、私を心配してくれているという気持ちが、その短い文からも伝わってくるようであった。

川 ゚ -゚) 「お前も、狙われているくせに……」

こんなに頻繁に動き回って、あいつは大丈夫なのだろうか?

あの時の部隊の兵士は、ドクオを探しているようであった。
下手に動けば、お前の正体に気付かれてしまうぞ?

不安だ。

せっかく再会できたというのに、もう二度と会えなくなってしまう気がした。

川 ゚ -゚) 「私が、心配しても始まらんか」

呟き、キーを叩いて返信を送る。

短く、要点だけを添えて。

そしてパソコンを閉じた私はベッドに横になり、ケータイを開いた。
メールが届いており、見てみると渡辺からだった。

从'ー'从 『31日は空いてるかな?』

悪いとは思ったが、空いていないと返信して私は眠りについた。

25 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/10(土) 21:54:01.94 ID:cn/6phB60
******

5月28日。

一週間の休暇を貰った私は実家に帰ることにした。

ウプスレッドより電車に乗ってシタラバに辿りつき、
駅から歩き続けて30分程が経過する。

ウプスレッドの街に比べれば寂れてはいるが、
シタラバの街は充分に発展しているように思えた。

かつて足を運んでいた通学路を通り、懐かしい学校などを傍目にしながら、
更に歩き続けると実家に辿りついた。

年季の入った白と茶を基調とした一戸建ての家だ。

インターフォンを押すと、10秒と待たずに扉が開かれた。

ノパ听) 「おぉ、クー。お帰り! 待っていたぞぉ!!」

勢いのある声を上げて扉を開いたのは、母だった。

川 ゚ -゚) 「ただいま、母さん。相変わらず元気なようで」

ノパ听) 「はっはっは、元気なだけが取り柄さ! まぁ上がれ上がれ」

川 ゚ -゚) 「あぁ」

26 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/10(土) 21:56:16.04 ID:cn/6phB60

玄関に上がり、居間へと進む。

lw´‐ _‐ノv 「あ、クー姉。お帰り」

川 ゚ -゚) 「ただいま、シュー」

lw´‐ _‐ノv 「久しぶり」

川 ゚ -゚) 「そうだな……最後にあったのはいつだったか」

lw´‐ _‐ノv 「去年のクリスマス」

川 ゚ -゚) 「……え? そうだったか?」

lw´‐ _‐ノv 「うん。覚えてないの?」

ノパ听) 「アンタ休暇になったからってフラっと帰ってきたんでしょうが。
     クリスマスに帰ってくる娘なんてちょっと心配になるじゃないの」

川 ゚ -゚) 「いや、いいんだ。家族で祝う派だから私は」

ノパ听) 「言い訳すんな。たまに帰ってきたかと思えば仕事の話ばかりしおってからに。
     浮いた話の一つでも持ってこい! 早く孫の顔見せろ!! 私に早く赤ちゃんを抱かせろ!」

川 ゚ -゚) 「残念だがそれはまだまだ先の話だよ、母さん」

29 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/10(土) 21:59:58.96 ID:cn/6phB60

ノパ听) 「ホンッとに早くしなさいよアンタ! 小学校の頃一緒だった田中さんの息子さんだって、
     お向かいのツーちゃんだって結婚してるんだぞ!!」

ノパ听) 「私の友達のギンさんなんて行き遅れちゃって未だに独身よ?
     もう若い頃からあの娘ったら働きまくって……悲惨なんだぞ?
     気付いたら来るからね? 気付いた時には遅いんだからね?
     そして焦った時にはもう遅いんだ。誰も貰ってくれないんだ」

川 ゚ -゚) 「私とその人が同じ末路を辿るとでも?」

ノパ听) 「そうだよアンタぁ! ギンさんったらもう諦めちゃって、孤独に生きてんだからね!!
     養子取るかなとかリアルな相談までされちゃって……私の娘にそんな寂しい生き方を―――」

川 ゚ -゚) 「母さんうるさい」

ノパ听) 「うるさいってなにさアンタ! 私はアンタを思って言ってやってんだから!!
     お父さんの同僚だった姉者さんだって」

ノハ´_ゝ`) 「流石にこの歳になるとデスクワーク辛くなってきます。目がかすむ。老眼かしら……結婚すれば良かった」

ノパ听) 「って言ってたぞ! お前も元気なのは今のうちだけ。若いうちに結婚! 早く嫁げ!!
     そして専業主婦に! 夫が働いてる間は家事をして暇なときは煎餅食いながらドラマ見る!
     そして楽しい主婦生活へー! 結婚しろ! 結婚! K・E・K・K・O・N! 孫ぉ! daugther!!」

lw´‐ _‐ノv 「さりげに孫娘欲しがってるよね母さん」

川 ゚ -゚) 「もう、ホントうっさい」

30 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/10(土) 22:02:08.21 ID:cn/6phB60

川 ゚ -゚) 「シュー、私の部屋はそのままなのか?」

lw´‐ _‐ノv 「うん。いじってない」

川 ゚ -゚) 「じゃあピースウォーカーでもやりにいこうか」

lw´‐ _‐ノv 「そだね」

ノパ听) 「待て! 話しを聞かんか!!」

うるさい母さんを放置して、私はシューと一緒に部屋に入った。

扉を閉めて、鍵をかける。

lw´‐ _‐ノv 「あ、ごめん。PSP売っちゃったんだった」

川 ゚ -゚) 「マジか……」

lw´‐ _‐ノv 「その代わりといってはなんだけど、押し入れにコシヒカリがあるんだけど……」

川 ゚ -゚) 「いや何をするつもりだよコシヒカリで」

lw´‐ 〜‐ノvつ ボリボリ「え?」

川 ゚ -゚) 「生米でいった……もういいわ。姉ちゃん一人で潜入してるわ」

そう言って私はベッドに横になった。
そしてPSPの電源を入れ、ピースウォーカーをプレイする。

31 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/10(土) 22:04:14.30 ID:cn/6phB60

部屋の中には本棚とテレビ、そしてベッドと机が置かれており、
私が学生の頃と変わっていなかった。

押し入れが米置き場に代わっていること以外は。

lw´‐〜‐ノv 「いや〜、良い冷暗所なんだよねここ」

川 ゚ -゚)П 「もう知らん」

川 ゚ -゚)П 「ところで、シュー。お前受験は成功したのか?」

lw´‐ _‐ノv 「うん、晴れて大学生だよ。シタラバ学院大学の農学部に受かった」

川 ゚ -゚)П 「おめでとう。何も用意してやれなかったが、何か入学祝を考えとくよ」

lw´‐ _‐ノv 「ふふ、期待せずに楽しみにしているよ」

川 ゚ -゚)П 「私は貯め込んでいるんだ。期待しておけ」

lw´‐ _‐ノv 「フフ……」

川 ゚ -゚)П 「学校は楽しいか?」

lw´‐ _‐ノv 「うん。好きなことやってるからね」

川 ゚ -゚)П 「あ、やっぱり米とか?」

lw´‐ _‐ノv 「それが目的で入ったんだ。楽しくて仕方ない」

33 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/10(土) 22:06:25.65 ID:cn/6phB60

川 ゚ -゚)П 「好きなことをやれるのはいいことだ。
       母さんはああいうがな、人間好きなことやれて楽しく生きられればそれでいいんだよ。
       要は満足度だ。他人がどうこう言おうが、自分が満足していればいい」

川 ゚ -゚)П 「名誉とか、地位とか。そんなもん犬にでも食わせればいい」

lw´‐ _‐ノv 「変わった表現するね、クー姉」

川 ゚ -゚)П 「姉ちゃん変わってるからな」

lw´‐ _‐ノv 「じゃあさ、クー姉は恋とかするの?」

川 ゚ -゚)П 「ノーコメント」

lw´‐ _‐ノv 「……」

川 ゚ -゚)П 「……」

lw´‐ _‐ノv 「……」

川 ゚ -゚)П 「……」

lw´‐ _‐ノv 「……」

川;゚ -゚)П 「……」

lw´‐ _‐ノv 「……」

35 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/10(土) 22:08:43.52 ID:cn/6phB60

川;゚ -゚)П 「いや、その……ちょっとくらいはするかな」

lw´‐ _‐ノv 「やっぱり? じゃあ、彼氏とかどうやって作ったの?」

川;゚ -゚)П 「……実は出来た事無い」

lw´‐ _‐ノv 「……やっぱり? なんか姉ちゃんの話し聞いてたら中学生みたいだもん」

川 ゚ -゚)П 「悪いか?」

lw´‐ _‐ノv 「別に」

川 ゚ -゚)П 「あぁ、お前まさか、気になる男でもいるのか?」

lw´‐ _‐ノv 「うん」

川 ゚ -゚)П 「どんな男だ?」

lw´‐ _‐ノv 「同じ学部の人で―――」

川;゚ -゚)П 「スネェェェェェェェク!!」

lw´;‐ _‐ノv 「え?」

川;゚ -゚)П 「あ、すまん。死んだ」

lw´‐ _‐ノv 「ふーん、あそう……」

川;゚ -゚) 「いや悪かった。装甲車が堅い上に機銃のダメージが……」

38 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/10(土) 22:13:21.21 ID:cn/6phB60

慌ててPSPをスリープにしてベッドに置く。

川;゚ -゚) 「それで、どんな人なんだその人は?」

lw´‐ _‐ノv 「えぇとね、同じ学部で―――」

その時、ゴンゴンというごついノックの音が聞こえた。

思わず振り返ると、


壁|<シュー! お前がPSPを売ったことは知ってるぞ。ここにお父さんのPSPがあるんだが……!!


(゚- ゚;川 「か、母さん……」

lw´‐ _‐ノv-3 「はぁ……」

川;゚ -゚) 「シュー、後でゆっくり聞くよ」


壁|<CO―OPIN!!


カギを開けると、母さんは自分のPSPと父さんのPSPを持って部屋に入ってきた……。

39 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/10(土) 22:15:37.06 ID:cn/6phB60

CM

******


(;'A●) 「くそ……敵の攻勢が激しい」

<_プー゚)フ「少佐、どうする? 敵さんやりやがるぜ」

(゚、゚トソン 「味方の損害も酷いものです。負傷者も多く、これ以上ここに留まれば危険です」

/ ,' 3 「この程度の逆境で何を弱気な。ハインリッヒと共にこの程度は何度も乗り越えてきたわい」

(;'A●) 「年寄りは思いで補正が強くいけねぇ……」

(゚、゚トソン 「少佐、ご指示を」

('A●) 「よし、撤退を命じろ。俺達ウォードッグ隊が敵を食い止める」

(゚、゚トソン 「了解」

<_プー゚)フ「よっしゃ、いっちょうやってやるか!!」

/ ,' 3 「ふっふ、腕がなるわい」

轟音がなり、バリケードが破られた。

基地内へと敵が殺到する。

41 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/10(土) 22:17:53.80 ID:cn/6phB60

     「いたぞ、ワードッグだ! 奴を倒せば三階級昇進も夢ではないぞ!!」

             「あれがワードッグか……隻眼の戦争犬!」
 
                   「奴は俺がやる!!」
 
              

                「「「「ベンセレーモスッ!!」」」」





(#'A●) 「いくぞお前達――――!」





          / ,' 3 П <_プー゚)フП「CO−OPIN!!」П('A● ) П(゚、゚トソン


44 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/10(土) 22:20:01.76 ID:cn/6phB60


                 「止めろ……なんとしてもこいつを止めろぉ!!」


    「ピースウォーカーの誕生で世界は静かになるだろう」


                               「核弾頭はアレに搭載された。ついに計画が実行に移る」


  「人間に出来ない判断と行動を成し遂げる。抑止力としての無人装置の総称」

 
                 「スネーク! ピースウォーカーが行く!!」
 

          「俺達は祖国を棄てた。それでも生きてる。それでも戦い続ける」



             PSP専用ソフト メタルギアソリッド ピースウォーカー

           
             ――――生きる理由は、他にいくらでもある――――

45 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/10(土) 22:22:17.22 ID:cn/6phB60


   「強い、強すぎる……」
 
   「とてつもないチームワークだ……戦争犬の名は伊達では無かったか」

   「なんというクリアタイムだ。ピースウォーカー改をまるでゴミのように……」

   「しかもSランクとは……くぅ!」



('A●)П 「次ぃ!!」



      (゚、゚トソン 「好評発売中」

47 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/10(土) 22:24:19.26 ID:cn/6phB60

以下、何事もなかったかのように再開

******

まぁ、色々とあって楽しく過ごし、夕食の時間になった。

テーブルに並べられたのはパスタであった。

湯気の立つ弾力のありそうな薄黄色の麺は、
真っ赤なミートソースにあえられている。

ノパ听) 「帰ってくるなら前々から言っておいてくれよ。
     なんも準備してないからこんなものしか作れなかったよ」

川 ゚ -゚) 「いやいや、充分だよ母さん。いただきます」

そう、充分だった。

何しろ暖かい料理を食べるのは、もう何ヶ月ぶりなのか思い出せないほどであったからだ。
特にここ最近は一日何も食べないこともあったので、
食欲がとてもそそられた。

lw´‐ _‐ノv 「まぁ、母さんずっと遊んでたわけだけどね」

ノパ听) 「ホントもうアンタ! 今度からは早めに連絡しなさいよ!!」

川 ゚ -゚) 「ちゃんとメールに返信したじゃないか」

ノパ听) 「帰ってきたの夜じゃないの。もっと早くよこしなさい」

49 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/10(土) 22:28:50.11 ID:cn/6phB60
川 ゚ -゚) 「私にも仕事があるんだ。それにケータイにメールをくれればよかったのに」

ノパ听) 「いやぁ、ネットでドラマ見てたらアンタのこと思い出してね! ついでにメール打ってたのさ」

川 ゚ -゚) 「母さんは暇なんだな」

ノパ听) 「忙しい家事の合間の一時よ。あんたに主婦の苦労はわからないさ!」

川 ゚ -゚) 「母さんにはキャリアウーマンの忙しさはわからないだろうさ」

ノパ听) 「……クー、アンタそんなに忙しいの? ちょっと痩せたろ」

川 ゚ -゚) 「あぁ、たしかに痩せたかもな。忙しいが、良いこともあったよ」

ノパ听) 「良いこと?」

川 ゚ -゚) 「ドクオと再会できたんだ」

ノパ听) 「ドクオ?……あんた、その人」

川 ゚ -゚) 「うん、そう。十年前のあの人だよ」

ノパー゚) 「そう、それはよかったじゃないか……」

川 ゚ -゚) 「あぁ、アイツも立派に成長していたよ。十年も経てばそうなるだろうが、元気そうでよかった」

ノパ听) 「いま、その人はなにをしているの?」

川 ゚ -゚) 「軍人だよ。たぶん」

51 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/10(土) 22:35:01.30 ID:cn/6phB60
ノパ听) 「たぶん?」

川 ゚ -゚) 「あまり話せなかったんだ。ちょっと話しただけで、すぐ別れてしまった」

ノパ听) 「せっかく会えたってのにどうして?」

川 ゚ -゚) 「お互い仕事でたまたま会っただけだったんだ。だから、時間が無かった」

ノパ听) 「そう……残念だったな」

川 ゚ -゚) 「でもな、また会う約束をしたんだ。連絡先も交換して……だから、残念じゃないよ」

ノパー゚) 「あら、それは良かった。じゃあ今から楽しみだな」

川 ゚ -゚) 「うん。聞きたいことがたくさんあるんだ。沢山話がしたい」

ノパー゚) 「あまり質問攻めしたらだめだからね? 自分のことも話しなさいよ。
     ドクオ君だって、あなたと会いたいと思ったから応じてくれたんだからね」

川 ゚ -゚) 「大丈夫だよ、母さん。聞いてもらいたいことだってあるんだから」

ノパ听) 「で? どんな風になってたの? 彼」

川 ゚ -゚) 「ドクオはな……なんだか、大人びていたよ。死んだ眼つきをしている癖に、鋭い光があって。
      背も高くなっていて、身体は鍛え抜かれているようだった」

ノパ听) 「軍人さんだもんねー。そりゃ鍛え抜かれてるわ」

lw´‐ _‐ノv 「ねぇ、その人ってカッコイイの?」

52 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/10(土) 22:37:30.42 ID:cn/6phB60

川 ゚ -゚) 「いや……普通かな」

lw´‐ _‐ノv 「なんだ」

川 ゚ -゚) 「だが、私は良い奴だと思うぞ」

ノパ听) 「まぁまぁ、人間顔じゃないさ。ドクオ君もあの戦争から立ち直って、必死に生きているのね。
     そして軍人さんになって戦う道を選んだ。立派な人じゃない」

川 ゚ー゚) 「あぁ、あいつはすごい奴なんだ。自分だって辛いくせに、苦しんでいる人がいたら助けにいく。
      そんな奴だから、10年前に私を守ってくれたんだ。今もあいつは私のことを心配してくれている」

川 ゚ー゚) 「本当に、すごい奴なんだ」

ノパー゚) 「そんな人だったら、立派な軍人さんになれるだろうね」

lw´‐ _‐ノv 「ねぇ、クー姉はその人のこと好きなの?」

川 ゚ -゚) 「わからん。子供の頃は好きだったんだが、今はわからん」

lw´‐ _‐ノv 「ふぅん。その人と10年前、どういう経緯で出会ったの?」

ノパ听) 「シュー」

lw´‐ _‐ノv 「あ、ごめん。私先にお風呂入ってくるね」

そう言うと食器をついでに片づけて、シューは浴室へ向かっていった。

56 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/10(土) 22:49:35.98 ID:cn/6phB60

ノパ听) 「ごめんね。10年前のことは話したくないだろうに」

川 ゚ -゚) 「いや、話しても良かったのに。ドクオのことは、大丈夫だよ」

ノパ听) 「辛くないの?」

川 ゚ -゚) 「うん、大丈夫」

ノパ听) 「辛かったら、話してね? 私はあなたのお母さん。だから、娘の面倒をみる義理がある」

川 ゚ -゚) 「大丈夫だって」

ノパ听) 「それならいいけど。姉さんが、いや。あなたのお母さんが亡くなってからは、
     私が代わりにあなたを幸せにするって決めたんだから。夫もあなたの幸せを願ってるし、シューだって」

川 ゚ -゚) 「だから遠慮はするな、だろ? 私は母さんやヒート叔母さんと同じように、素直に生きてるよ」

57 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/10(土) 22:53:11.21 ID:cn/6phB60

ノパー゚) 「ふふ、あなた成長するにつれて姉さんに似てくるわ。ホントに。
     生き方まで姉さんにそっくり。姉さんは仕事に生きる人だった。無理をしすぎる人だった。
     でも、あの人が現われて、支えてくれるようになって……」

ノパ听) 「思うがままにいきなさい。駆け抜けていきなさい。あなたと一緒に走ってくれる人は、必ず現れるから」

川 ゚ -゚) 「わかったよ、母さん」

ノパ听) 「がんばりなさい。でも、今日くらいはゆっくりしていきなさい」

川 ゚ -゚) 「うん……」

ノパ听) 「コーヒーでも飲む?」

川 ゚ -゚) 「あぁ、貰うよ」

それからはゆっくりとした時間が流れた。

母さんとシュールが風呂から上がるまでの間談笑して、
風呂に入ると私はすぐに眠った。

実家はやはり、落ち着いた。

今まで溜めこんでいた疲労が全て抜けていくようであった。

私が眠りに落ちるまで、そう時間は掛からなかった。

58 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/10(土) 22:55:27.09 ID:cn/6phB60

******

(;メ'A●) 「クー! しっかりしろ!!」

名を呼ばれて目を覚ますと、そこにはドクオがいた。

顔が近い。

どういうことかと思えば、私は彼の腕に抱かれていた。
更にわけがわからなくなってしまい、視線を落とすと胴から血が流れだしており、
ドクオの身体も血にまみれている。

私の血が付いてしまったようだ。

(;メ'A●) 「ちくしょう!」

もう片方の手で銃を撃つと、私に肩を貸して移動する。

ビルの陰から飛び出した兵士達へ、威嚇射撃をしながら歩くが、
私の足が遅いせいで一向に進まない。

足に力が入らない。

ドクオは銃を肩にかけると、腰のバックパックから手榴弾を取り出してピンを抜き放る。
一拍の間が空くと煙が噴出していき、ドクオは私を背に抱えて駆けだした。

60 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/10(土) 22:57:34.69 ID:cn/6phB60
(メ;'A●) 「――――――ッ!」

必死の形相で、荒い息を吐きながら走る彼の胴からは血が滴っていた。

そこに弾丸を受けて負傷したのだろう。

ドクオの顔を滝のような汗が流れていく。
恐らく、傷が痛むのだろう。

(メ;'A●) 「大丈夫か? しっかりしろ! 寝るな、寝るなよ馬鹿野郎!!」

……お前のほうこそ、大丈夫なのか?

川 -) 「やめろ……やめてくれ、お前も死んでしまうぞ」

(メ;'A●) 「あん? 聞こえねえよ馬鹿が」

聞こえている癖に、馬鹿め。

疾走の勢いをあげていく。

速く、速く。

風のように廃墟の中を走りぬけていく。

どうやらここは、カラマロスDNのようであった。
ただし、ここは復興された後のそれではない。

10年前、共に駆け抜けたカラマロスDNの風景そのものだった。

62 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/10(土) 23:00:25.25 ID:cn/6phB60

川 -) 「ッ!?」

そこで突如として身体が浮き上がった。

宙を舞い、ほんの数瞬無重力を味わった後に衝撃を食らう。

傷口が激しく痛んだ。

背後を振り向くと、ドクオが足を撃たれたようであった。

彼は撃たれた方向へ抜き出したリボルバーの銃口を向ける。
瞬く間に引き金を引くと、彼を撃った兵士達は続々と撃ち抜かれていった。

そして……。

(メ;'A●) 「クー! 後ろだ!!」

私へとリボルバーを投げ渡してきた。

手に取ると、即座に背後へ振り返り銃を向けていた兵士を撃つ。

銃声がなった。

兵士は頭に血の花を咲かせてその場で倒れていく。

銃口から硝煙が立ち上り、火薬のにおいが鼻をついた。

65 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/10(土) 23:03:19.69 ID:cn/6phB60

川 -) 「ドクオ……」

彼を見た。

(メ A●)

彼は倒れていた。

腹部からはだくだくと血が流れ出しており、
赤い水溜りが周辺に出来あがっていた。

這って近寄っていく。

川 -) 「なぁ、ドクオ……」

顔に手を当てた。血にまみれ、ぬるぬるしていた。

生温かい。

川 -) 「しっかり、しっかりしろ……」

身体にしがみつき、左胸に耳をあてる。

音はしなかった。

67 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/10(土) 23:06:17.23 ID:cn/6phB60

川 -) 「なぁ、嘘だろう……?」

胸に両手をあてて、心臓マッサージをした。
顎に手を当てて顔の位置を整えると、口づけを交わして息を吹き込む。

それを繰り返した。

しかし、胸に鼓動は戻ってこない。

もう一度繰り返した。何度も、何度も繰り返した。

何度胸を叩こうとも何度息を吹き込もうとも、
それでも、心臓は動かない。

蘇生できない。

気がつくと手を止めていた。気がつくと涙を流していた。

彼を抱きかかえて泣いた。泣き叫んだ。

68 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/10(土) 23:09:27.94 ID:cn/6phB60

ひとしきり泣いた後、不思議と目に留まるものがあった。

ドクオが投げてよこしたリボルバー。

コルトパイソンだ。

ハインさんが、彼の師匠が弟子に託した御守り。

川 ∀) 「は、はは……ははは……こんなこれを手放したから死んでしまった? そんな、馬鹿な話……」

あまりにもつまらなすぎて、笑ってしまった。

そして空を見上げた。赤い空だ。

遠くに立ち上る物はキノコ雲。焼き尽くされていく街。
灼熱と銃声が戦場を支配していく。

景色の全てが、10年前と同じだった。

10年前の、カラマロスDNでの戦いと同じだった。

70 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/10(土) 23:11:30.01 ID:cn/6phB60

******

川 ; -;) 「……はっ!?」

目が覚めた。

頬に冷たい感触を覚え、泣いているようだった。

さっきまで見ていたものは10年前のカラマロスDNの光景。
そして、これから起こりえるかもしれない未来だ。

恐ろしい体験と、恐ろしい未知がそこにあった。

怖い夢だ。

涙を拭う。

その手は震えていた。
身体も震え、竦んでしまっている。

全てを振り払うため、思考を止めて目をつむった。

一秒が一分に、一分が一時間にも思えるような、長い時間だった。

それでも眠ろうとした。

73 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/10(土) 23:13:36.60 ID:cn/6phB60

そして、

从 ∀从 『素直クールか……じゃあ、クーちゃんだな。アタシのことはハインって呼んでくれ』

10年前に見た、英雄達の姿が浮かんできた。
  _
(  ∀ ) 『しっかりしろよお嬢ちゃん! 君はついてるぜ。
      どこぞの馬の骨どもじゃなくて、俺達GJに救われたんだからな!!』

そう、それはあのGJの人達の姿だ。

(、*川 『泣かないの。いい? 女の子が泣いていいのは、初めての時と落としたい男の前でだけよ』

(  ω ) 『ここは食い止めるお! ドクオに任せて、君はこんなクソ溜めからはおさらばするんだお!!』

彼らのおかげで、私は命を繋いだ。
過酷な戦場で暖かく私を迎えてくれた兵士達。

( Aメメ)『クー、お前は俺が守る』

私の身体の震えは、いつしか止まっていた。

76 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/10(土) 23:16:18.30 ID:cn/6phB60

******

( ゚д゚ ) 「なに? お姉さんが帰ってきているって?」

講義を終えて、私は食堂で昼食をとっていた。

大学に入ってから出来た友達のミルナと一緒だった。
彼は冷静で、真面目で、それでいて気の良い人で、友達の中でも特に親しくしていた。

lw´‐ _‐ノv 「うん、昨日ずっとピースウォーカーやってた」

( ゚д゚ ) 「ほう、ゲームが好きなのか」

lw´‐ _‐ノv 「アクション好きだね。読書する以外は基本ゲームしてるね」

( ゚д゚ ) 「女性もゲームをするのか」

lw´‐ _‐ノv 「やるよーそりゃ」

( ゚д゚ ) 「俺の周りではゲーム好きがいなくてな。協力プレイとか対戦が出来なくて、残念だった。家族もやらないし」

lw´‐ _‐ノv 「じゃあ家でやる?」

ミルナを家に誘うのは少し気恥ずかしい気もしたが、
それ以上に彼ともっと一緒にいたいと思う気持ちもあり、
思い切って誘ってみた。

78 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/10(土) 23:19:11.66 ID:cn/6phB60

すると、

( ゚д゚ ) 「良いのか? 邪魔でなければ行きたいが」

思いの外すんなりと乗ってくれた。

邪魔なはずがない。それに、クー姉や母さんに紹介もしたかった。
彼をどう思うか聞いてもらいたい。

lw´‐ _‐ノv 「良いよ良いよ。来な来な」

ミルナは笑った。良かった、と言ってくれた。

そして最後の講義を終え、バスに乗って家に帰る。
空はもうオレンジ色に染まって夕方になっていた。

道中、ミルナといるのが心地よかった。

あっと言う間に家についてしまう。

lw´‐ _‐ノv 「ただいまー」

( ゚д゚ ) 「お邪魔します」

ノパ听) 「あー、シューお帰りー」

ノパ听) 「あら、友達つれてきたの?」

80 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/10(土) 23:21:20.85 ID:cn/6phB60

lw´‐ _‐ノv 「うん、ピースウォーカーやろうと思って」

( ゚д゚ ) 「すいません、お邪魔します」

ノパ听) 「良いのよ良いのよ。ゆっくりしていって」

リビングを見渡して、あることに気付いた。

lw´‐ _‐ノv 「あれ、クー姉は?」

ノパ听) 「もう帰っちゃったよ。なんでも用事があるそうで」

ノハ--)-3 「まったく忙しない子だよ」

呆れたように溜息を吐いた母さんの表情は、何故か満足げに見えた。

親馬鹿め。

lw´‐ _‐ノv 「もう帰っちゃったんだ。残念」

せっかく四人プレイしようと思っていたのに。

82 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/10(土) 23:23:34.15 ID:cn/6phB60

( ゚д゚ ) 「仕方ないが、残念だ」

ミルナの顔も、少し気落ちしたように見えた。

ノパ听) 「あ、ご飯作るけど食べてく?」

( ゚д゚ ) 「いえ、そこまでしていただくのは悪いですよ」

lw´‐ _‐ノv 「いいよいいよ、気にしなくて」

ノパ听) 「あんたが言わないの。せっかくだから食べてきなさい」

( ゚д゚ ) 「えぇ、それでは……いただきます」

ノパ听) 「じゃあ、ちゃっちゃと作り始めちゃうね」

そう言うとそそくさと母さんはキッチンへ向かっていった。

83 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/10(土) 23:25:35.23 ID:cn/6phB60

lw´‐ _‐ノv 「じゃ、私の部屋いくか」

( ゚д゚ ) 「あぁ、そうしよう……」

私の部屋へ向かっていく。

自分の部屋にミルナを入れるのは、少し緊張した。

( ゚д゚ ) 「―――――」

lw´‐ _‐ノv 「え、何か言った?」

何かを呟いた気がして、ミルナに振り返った。

( ゚д゚ ) 「いや、なんでもない」

lw´‐ _‐ノv 「変なの、気持ち悪い」

( ゚д゚ ) 「酷くないか? お前が聞き間違えただけだろう、シュー」

lw´‐ _‐ノv 「嘘だって」

おどけるようにそう言って、私達は部屋へ入って行った。


( ゚д゚ ) 「残念だよ、本当に」

85 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/10(土) 23:29:01.34 ID:cn/6phB60

******

雨が激しかった。

ずぶ濡れになった身体のまま、俺はネットカフェへ入っていく。

会員カードを提示して、個室へと入室。
そしてパソコンを立ち上げてフリーメールを開いた。

気持ちが逸った。

頼む、予定があってくれ。
一刻も早く、この情報を伝えたい。

新着のメールがあった。

開くと、そこには彼女の文章があった。

『その予定で大丈夫だ。心配しなくていい。お前こそ、気をつけろよ』

そしてメールを削除した。電源を消して早々に立ち去る。

('A●) 「明日、か……」

追手がいないか確認しながら、俺は自宅へと向かった。



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