川 ゚ -゚) 少女は戦争犬と駆け抜けるようです

2 名前: ◆K8iifs2jk6[sage] 投稿日:2011/09/16(金) 21:01:27.15 ID:vLhqnkkU0

戦争犬の話しをしよう。

彼は途方も無い数の戦場を超え、多くの仲間を得た。
国家総合案内所と、国家の闇と戦うための仲間を。

だが彼は自分の素性を明かす事は出来なかった。

奴らの手は、どこまで伸びているのか。

彼はそれを恐れた。

一度のミスが自分の全てを、少女の命すらも終わらせてしまう。

彼は一人では無い。

しかし、彼の孤独な戦いはまだ始まったばかりなのだ。

そうして戦争犬は、更に一歩核心へと近付いていく。

4 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/16(金) 21:03:52.48 ID:vLhqnkkU0



       川 ゚ -゚) 少女は戦争犬と駆け抜けるようです



              第4話 続・戦争犬の戦い

7 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/16(金) 21:06:32.64 ID:vLhqnkkU0

******

5月20日 2138―――9's cafeにて。

ミ,,゚Д゚彡 「で、わざわざこんなところに呼び出して、一体なんのようだ?」

フサは俺をつかまえてそう言った。

明らかに不審がっていて、訝しんでいるように思える。

('A●) 「まぁ、そう言うな。奢ってやるから、な?」

ミ,,゚Д゚彡 「……裏があるだろう?」

('A●) 「ないよ?」

きっぱりと言い、俺はテーブルの前に置かれたパフェとカフェオレを手で差し出す。

ミ,,゚Д゚彡 「お前、今では"隻眼の戦争犬"と呼ばれているらしいな。
       ウォードッグ隊という特殊部隊を率いている、戦争犬共のボスだって聞いているぞ」

厳しい声音を保ったまま、フサはスプーンでパフェをつつき始める。

('A●) 「あぁ、その通りだ。階級は少佐だ」

ミ,,^Д^彡 「はっは、あの狼少年が少佐かぁ。俺はとっくにのたれ死んでいるかと思ったんだけどよ」

('A●) 「まだ死ねねーよ。もっとも、何時死ぬかはわからないがな。もしかしたら、明日かもしれない」

8 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/16(金) 21:10:12.20 ID:vLhqnkkU0
ミ,,゚Д゚彡 「あぁ、俺達はそうだ。この血と肉と魂を国に捧げ、守りぬかねばならない。
       俺達はただ死ぬことは許されない。勝利し、生き残り、また戦い続けて守り続ける」

ミ,,゚Д゚彡 「だから倒れてはいけねーんだ。国がある限り」

('A●) 「国か……お前が言うかね。退役して戦争の犬に、傭兵になったお前が」

ミ,,゚Д゚彡 「そう言うな……色々あったろ?」

('A●) 「……今日呼んだのは、その色々についてだ」

フサはスプーンを止めた。

そしてカフェオレに手を伸ばして一口すする。

ミ,,゚Д゚彡 「聞こう」

('A●) 「助かる」

('A●) 「話しは聞いているな?」

ミ,,゚Д゚彡 「あぁ、トソンから大体はな。派手にやっているそうじゃないか」

('A●) 「派手に、そして正体は晒さずにな」

ミ,,゚Д゚彡 「上手くやったもんだよ、ホントに。しかし、証拠を残したのはまずかったな」

10 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/16(金) 21:13:23.36 ID:vLhqnkkU0

('A●) 「分かっている。"奴ら"に俺が来たことを知らせるようなもんだった。
     だが俺には出来ない。証拠を隠滅するわけには、いかなかったんだ」

ミ,,゚Д゚彡 「お前の気持ちはわかる。あの娘がいたんだろう?」

('A●) 「あぁ……俺には、それは出来ない。アイツは守らないといけない」

ミ,,゚Д゚彡 「だったら二人で逃げて、どっか人知れず暮らすとか、そんな手もあると思うんだがな」

('A●) 「アイツの意思に反するかもしれない。俺達は別々の道を歩み、戦い続けている。
     出来ればそのまま大人しくしてくれればよかったんだが……アイツはそのつもりはないらしい」

ミ,,゚Д゚彡 「奴らを倒す。あの娘もそのつもりなのか」

('A●) 「恐らく、な」

('A●) 「だから、無防備なアイツを護ってやらなきゃならない。誰かが!
     奴らはもうアイツの動きを掌握しているはずだ」

('A●) 「でも、俺は動くことは出来ない……」

ミ,,゚Д゚彡 「そこで、俺っていうわけか」

11 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/16(金) 21:15:28.71 ID:vLhqnkkU0

('A●) 「……フサ、俺はお前に、アイツを護ってやって欲しい」

ミ,,゚Д゚彡 「生憎だがよ、俺は警備員なんかじゃない。傭兵だ。仕事は選ばせてもらう」

('A●) 「駄目か?」

ミ,,゚Д゚彡 「すまないがな。だいたい、お前の身から出たサビじゃねーか今回のことは。
       お前に尻拭いを頼まれるなんて思ってもいなかったぜ」

('A●) 「報酬はいくらでも払おう」

ミ,,゚Д゚彡 「良いか! 俺達は傭兵だ。俺達は俺達の為に戦う。命を捨てる!
       今回のお前の依頼で命を捨てるなんて出来るわけがない」

('A●) 「フサ、俺達は10年前に奴らを知った。お前は奴らに縛られるのが嫌で、
     自らの意思で戦う傭兵になった。そうだろう?」

ミ,,゚Д゚彡 「あぁそうだ! よくわかっているはずだ、お前なら」

('A●) 「今回の依頼を受け、俺が奴らの脅威を除けば、また戦えるんだ。
     純粋に、自らの意思を捧げることが出来る。自らの愛国心のままに戦えるんだ」

12 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/16(金) 21:17:51.36 ID:vLhqnkkU0

ミ,,゚Д゚彡 「その保障は? ただの女の警護などをわざわざ傭兵が引き受けてやったというのに、
       お前が"その前に"くたばったら元も子もないぞ」

('A●) 「フサ、もう少しだ。もう少しなんだ。俺達は着々と奴らに近づいている」

('A●) 「だから頼む……報酬は、金と奴らの情報、そして"あるがままの世界"だ」

ミ,,゚Д゚彡 「……」

フサはそれから数瞬の間、黙りこくり俺の眼をじっと睨み続けた。

ミ,,゚Д゚彡 「じゃあひとまず、半年だけ引き受けてやろう。その間にお前の調査になにも進展がなければ、この話は無しだ」

ミ,,-Д-彡 「お前に、俺の望みを託してやる。"最強の兵士"ハインさんの弟子であるお前の可能性に免じて」

('ー●) 「……ありがとう。期待には答えるよ」

ミ,,゚Д゚彡 「だが、仕事において大事な話がある」

('A●) 「なんだ?」



ミ,,゚Д゚彡 「大人になったあの娘は、イケてるのか?」

15 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/16(金) 21:21:53.56 ID:vLhqnkkU0

******

5月19日 0143

ウプスレッド研究所に潜入したあの後、俺は基地へと帰還した。

誰にも見つからないように基地へ入り、
その後は堂々と自室まで向かっていく。

既に深夜だ。

起きている者は、警備を行っている者くらいだろう。

士官室へ続く通路を歩いていると、警備兵とすれ違った。
そいつは俺を認めるとその場で立ち止まり、敬礼をしてきた。

('A●)ゝ 「お疲れさん」

敬礼を返してそのまま脇を通り抜けていく。
警備兵は「お疲れ様です」と緊張したように返してくる。

兵士達の間でどんな噂が流れているかは知らないが、
軽んじられるよりはマシだろう。

今の少佐の地位につくまでに、俺は色々と無茶をやりすぎた。
冷酷だと蔑まれることもあった。恐れられることもあった。
部下を殺したようなものだと罵られることもあった。

16 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/16(金) 21:25:21.38 ID:vLhqnkkU0

だが、部下達だけは俺に何も言わずに付いてきてくれる。

何が起きようとも、成し遂げなければならないことがある。
そんな俺の姿に、他の者達が何を抱くかなどしらない。

('A●) 「ッ!」

自室まで後少しで辿りつくといった所で、人影を見た。
警戒し、腰のホルスターからハンドガンを何時でも抜けるようにしておく。

コルトパイソンの4インチモデルだ。

ハインリッヒから託された、信頼のおける俺の愛銃である。

歩みを慎重に進め、暗闇の中を見通していく。

すると、ドアの前に誰かが立っているようであった。

('A●) 「……?」

(-A●)-3 「……ふぅ」

('A●) 「どうしたんだ、トソン」

(゚、゚トソン 「少佐、お疲れ様です」

17 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/16(金) 21:28:00.83 ID:vLhqnkkU0

('A●) 「ずっと待っていたのか?」

(゚、゚トソン 「いえ、休んでいたらあなたが心配になりまして、
      もう戻られたのかと思いやってきました」

('A●) 「疲れているだろうに。早く寝ろ」

(゚、゚トソン 「すいません、では……」

トソンは自室へ向かおうとしたが、そこで俺に近寄り、抱きついてきた。
鍛えられた無駄の無い身体ではあるが、女性らしい確かな柔らかみがあった。
彼女は俺に顔を近づけ、耳元でささやく。

(゚、゚トソン (少佐、申し訳ありません。見られてしまったようです)

('A●) (違う、つけられていたんだ。お前が)

俺は、トソンの首と背に腕を回した。

深く抱きよせ、頭を撫ぜる。

(゚、゚トソン (何故私を?)

('A●) (大方、大佐が俺を疑っているんだろう。
     だから副官のお前がこんな夜遅くに出ていくのを不審に思った。
     女性兵舎からつけられてたんじゃないか?)

(゚、゚トソン (でしたら、ウプスレッド研究所に向かったことも露見してしまっているのでは?)

19 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/16(金) 21:31:09.56 ID:vLhqnkkU0

('A●) (いや、俺が出る時には誰もつけてはいなかった。部屋を出る時には気付いたからな。
    尾行を撒かせて貰った。その後は誰にもつけられていないはずだ)

(゚、゚トソン (そうだったのですか……申し訳ありません)

('A●) (気に病むな。だから、気にせず真っ直ぐ部屋に戻れ。尾行に気付いていないふりをしろ)

(゚、゚トソン (いえ、最も怪しまれない方法があります少佐)

そう言ったトソンは、俺の唇に自分のそれを重ねてきた。

Σ(;゚A●) (ッ!?)

そして離れていき、目で俺の部屋を指す。

一瞬の出来事であったが、永遠にも長く思えた時間だった。

そういうことですか……。
俺が部屋を開けると、トソンがその中に入っていく。
続いて俺も部屋に入って扉を閉めた。

(;'A●) 「お、おい……」

(゚、゚トソン 「申し訳ありません。ですが、第三者から見ればこれが一番不自然ではないでしょう」

ベッドの上に座り込んだトソンは、冷静な声音でそう言い放った。

(;'A●) 「たしかにそうだけど、お前なぁ……」

20 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/16(金) 21:34:22.89 ID:vLhqnkkU0

(゚、゚トソン 「すいません、演技とは言え不快な思いをさせてしまい」

(;'A●) 「いや……嫌じゃないけど、役得だったけどさぁ。お前が嫌だろ」

(゚、゚トソン 「私はどうとも。少佐、"最後"まで演じ切りますか? 聞かれているかもしれませんし」

トソンはそう言って、俺を見上げてきた。

「座ってください」とでも言うように自分の傍を、手で軽く叩く姿がどこか煽情的であり、
軍服の上から主張してくる膨らみと、まとめられた髪から晒されたうなじに、
そこから覗ける薄く日焼けしてはいるが綺麗な肌が、やけに色っぽく思えた。

思わず、固唾を呑んでしまった。

先程のキスとトソンのその色香に、正直に言えば俺は興奮していた。
心臓の鼓動が早くなってきたように感じる。

トソンの瞳が俺を射抜く。
潤った唇は閉ざされたままで、何も言わずに彼女は見つめているだけだ。

沈黙が重たかった。「座ってください」とその手に誘われるがまま、
自分の欲望に全てを委ねてしまいそうだった。

彼女のその涼しげな表情を自分の物にしてしまいたかった。

俺はトソンへと寄っていき……。


※ここから先を読むにはワッフルと書き込んでください。


26 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/16(金) 21:40:47.22 ID:vLhqnkkU0


******

椅子に座った。
そして彼女を見据える。

('A●) 「馬鹿、女の子がそんな簡単に身体を安売りするもんじゃないよ。
     それよりも、良い機会だ。俺が手に入れた情報について話そう」

(゚、゚トソン 「わかりました」

まぁ、かなり惜しい気もするんだが……。


('A●) 「ウプスレッド研究所のA棟に潜入してきた。そこで情報を入手し、
     俺はセントジョーンズ博士の部屋に進入した」

('A●) 「見たとこ、研究の資料しかなかったしパソコンを探ったんだが、
     パソコンの中にも案内所に繋がるようなデータは見つからなかった」

(゚、゚トソン 「では、収穫はなかったのですか?」

('A●) 「いや、一応あったぞ。研究ファイルの中に、装甲服の資料があったんだ。
     それにはこれまでに作られた装甲服のスペックや、開発方などが書かれていた」

(゚、゚トソン 「装甲服ですか。案内所とそれが、どう繋がるのでしょうか」

('A●) 「最新の物から、過去に現役であった物までが載せられていたんだ。
     その中には俺が10年前に見た案内所の部隊が使っている物もあった」

29 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/16(金) 21:43:32.24 ID:vLhqnkkU0

(゚、゚トソン 「10年前に、ですか。装甲服は近年開発されたばかりだとお聞きしましたが」

('A●) 「表ではな。装甲服は一部の部隊にしか採用されない。
     最近ちらほら使ってる部隊を見るようになったが、
     あれは、昔作っていた装甲服に改良を重ねて作られた物だ」

('A●) 「ようは俺の見た物は試作品で、今使われている物が本式だ。
    10年前に採用されていた装甲服は、実験的に支給されていたんだろう」

(゚、゚トソン 「モララー大佐が、私達に装甲服を支給するようになったのと同じようにですか」

('A●) 「あぁ、恐らくは」

(゚、゚トソン 「では、その試作品の装甲服を支給されていた部隊を特定すれば、
      案内所の手のかかった者達を特定出来るというわけですね。
      もしかしたら、構成員を見つけることも出来るかもしれません」

('A●) 「ウプスレッド研究所から流された装甲服の動きと、型式番号、
     そして10年前にカラマロスDNへ向かった部隊かどうかを探ればな」

('A●) 「だが、ナンバリングが施されているかもわからん。
     それにデータを消されている可能性もある」

(゚、゚トソン 「いちおう、調べさせていただきますよ」

('A●) 「頼む。そして、もう一つ分かったことがある」

31 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/16(金) 21:46:11.84 ID:vLhqnkkU0


(゚、゚トソン 「何でしょうか」

('A●) 「鮫島とは国家の規範であり、国家をあるべき姿に導く組織。
     国家を真に憂う愛国者の集まり。奴らの行いと決断は全てニューソクの為に下される」

(゚、゚トソン 「……案内所?」

('A●) 「あぁ、俺達の知る国家総合案内所の務めと被る。
     セントジョーンズ博士は鮫島についてそう吐いた。
     そこで俺は一つ仮説をたてた」

('A●) 「鮫島とは案内所の隠語であり、何らかの言論統制を案内所に関わった者達はされている」

(゚、゚トソン 「大胆な仮説をたてますね」

('A●) 「じゃあどう説明をつける? 尋問していく度に出てくるのは鮫島だ。チャネラーと聞いても、
     ボスについて聞きだそうとしても鮫島としか言わん」

(゚、゚トソン 「それはそうですが、それを行う為の方法はどうなるのですか。
      催眠術で無意識下で鮫島としか話せないようにしたというのですか」

('A●) 「わからん。だが、相手は十年前に装甲服を扱っていた。
     俺達が及びもしないようなテクノロジーが用いられても可笑しくはない。
     考えてもみろ、世界で最新の武器と装備を揃えているニューソクだぞ?」

('A●) 「一軍人にしか過ぎない俺達に、可能か不可能かなんて推し量れるわけがない」

(゚、゚トソン 「それにしても、オカルトじみた話です」

33 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/16(金) 21:49:51.27 ID:vLhqnkkU0

('A●) 「案内所事態がそう言う話に近いものがあるんだ。今更、言っても始まらん」

('A●) 「だがこの仮説を立てることで、俺達はまた一つ手掛かりを手に入れたことになる。
     ようは臭いと思った奴に案内所について探りをいれればいいんだ。
     そうすれば、向こうは勝手に鮫島とヒントを零してくれる」

(゚、゚トソン 「ですが、それは貴方が案内所を嗅ぎまわっていることを宣伝して回るようなものです。止めてください」

('A●) 「だがそうも言ってられなくなった。もう手掛かりは装甲服しかない。
     それに今回潜入して、資料などは破棄されている可能性が高いことが分かった。
     セントジョーンズも言っていた。場所を調べても何も出てきやしない。奴らのことを知るには人伝に聞きだすしかないと」

(゚、゚トソン 「そう、ですね」

('A●) 「奴らの手は広く伸びている。だとすれば、接触する機会が無いわけでもないだろう。
     俺が昇進すれば、向こうから勝手にやってくるかも知れん」

(゚、゚トソン 「それを待つことはできないのですか」

('A●) 「ただ待つことだけは出来ない。それに、急がなければ俺の存在がばれる方が早いかもしれない」

(-A●) 「まぁ、なんだ。やることはいつもと変わらねーよ。頼んだ」

(゚、゚トソン 「了解しました」

('A●) 「とりあえず、俺の話は終わりだ。ちっとゆっくりしていけ。疲れてるだろ?」

(゚、゚トソン 「それでは、お言葉に甘えさせていただきます。あまり、早く出過ぎても疑われてしまう為」

35 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/16(金) 21:52:14.28 ID:vLhqnkkU0

(゚、゚トソン 「まぁ、少佐が"お早い方"だと言うのであればもう充分でしょうが」

(;'A●) 「……うん、ゆっくりしてけ」

(゚ー゚トソン 「ふふ、横になってもいいですか?」

(;'A●) 「あぁ、楽にしてろ」

笑みを浮かべたトソンはベッドにそのまま横になり、薄掛けを被った。
俺はイスを回転させてトソンから身体を背け、タバコに火をつける。

('A●)y━~~=3 フーッ

煙を楽しみ、吐きだす。

虚空へ向けて昇ってゆく煙は部屋の中を漂った。
彼女に背を向けたまま一拍の間が過ぎていく。

静かな時間だった。沈黙しあい、ただ互いに身体を休めているだけだ。

(゚、゚トソン 「ねぇ、ドクオ君」

('A●)y━~~ 「あぁ?」

懐かしい呼び方で呼ばれ、俺はトソンの方を振り返った。

36 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/16(金) 21:54:20.87 ID:vLhqnkkU0

(゚、゚トソン 「私達は案内所を倒す為に戦っている。でも、倒した後はドクオ君は何をするの?」

そこには俺の副官などではなく、兵士でもないただの都村トソンがいた。
エクストや俺と同じく、戦争で家族を失った少女が、そこにいた。

('A●)y━~~ 「俺はたぶん、銃を捨てる」

(゚、゚トソン 「どうして?」

('A●)y━~~ 「目的も無く戦い続けるつもりはない。国を護るなんて曖昧な理由で戦う気もないしな。
        ただ、本当に銃を捨てられるかはわからん。俺にはそれ以外取り柄がないからな」

(゚、゚トソン 「ドクオ君なら、なんとかやっていける気もするけど」

('ー●)y━~~ 「いや、本当に他に取り柄が無いんだ。がむしゃらにやれば、なんとか生きていくことも出来るだろうが。
        それで自分が満足できるかもわからない。ハインが言ってたんだ」

('A●)y━~~ 「人を殺した時から私達は地獄に落ちた。天国なんか用意されていない。
       殺人の罪を背負い続ける限り永遠の闘争に縛られ続ける
       勝ち負けじゃない。生きている限り、私達は果てしない戦場を彷徨い続けるのだ」

('A●)y━~~ 「ってな」

('A●)y━~~ 「生か死か。生き続ける限り俺達兵士は戦場に囚われ続ける。
       唯一解放される手段は、死だけだ。そういうこったな」

(゚、゚トソン 「だから自分の手で銃を捨てる、ってこと? 解放される為に」

39 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/16(金) 21:56:51.08 ID:vLhqnkkU0

('A●)y━~~ 「そうだ、兵士として生きるのを辞める。だけど俺が人を殺してきたことには変わり無い」

(゚、゚トソン 「でも、ドクオ君は……」

('A●)y━~~ 「少年兵だった。ガキの頃から俺は人殺しだ。
       それしか生きる道は無かった。でも戦ったのは俺の意思だ」

(゚、゚トソン 「戦わなければ、死んでたでしょ?」

('A●)y━~~ 「たしかに死んでいた。俺は人を殺して生き延びている」

(゚、゚トソン 「じゃあ、それはドクオ君の罪なんかじゃないでしょ?」

('A●)y━~~ 「選ぼうとも選ばずとも俺は兵士だったんだ。ガキだったからなんて理由で許されるもんじゃない」

('A●)y━~~ 「だから俺は罪を背負うのを辞める。自分勝手に生き続けることにするんだ。
         兵士は戦い続けることで自分を正当化し続けるが、俺は責任を放棄する。本当の人で無しになる」

(゚、゚トソン 「そんなことないよ。ドクオ君は、確かに人道とかそういう問題で語れば悪い人だけど、
      絶対に貴方は悪い人なんかじゃない。だから、銃を捨てても私は責めたりしないよ」

('A●)y━~~ 「……ありがとう」

同じ国を護る兵士であるお前はそう思うだろう。
だが、あいつはどう思うか……。

そう考えたら、少し怖くなった。

41 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/16(金) 21:58:52.27 ID:vLhqnkkU0

人殺しなんて他人に受け入れられるものじゃない。いや、受け入れられるべきじゃない。
戦う事でしか自分を表現出来ない俺が、誰かを幸せにしてやれるはずがない。

(゚、゚トソン 「銃を捨てた後は、どうするの?」

('A●)y━~~ 「人に会いに行く。そして全てを報告する。それ以上は考えていない」

考えることが怖かった。

でも、俺が案内所の連中を倒したからには、アイツにデブリーフィングをしてやらないといけない。
「お前を狙う連中はもういなくなった。確かに、俺はお前を安全な場所へ送り届けた」
そう伝えてやらないと、10年前に課せられた高岡ドクオ最後のミッションは終わらない。

俺は、アイツを戦場から遠ざけてやる為に、未だ戦い続けている。

奴らが居る限り、この国に安全地帯などないのだ。

気付けばタバコが短くなっており、灰皿に押しつけて火を消した。

('A●) 「俺は10年前に課せられた最後の任務を果たす。それだけだ」

43 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/16(金) 22:01:12.37 ID:vLhqnkkU0


(゚、゚トソン 「そうなんだ……」

('A●) 「トソン、お前こそどうなんだ?」

(゚、゚トソン 「私?」

('A●) 「あぁ、お前は案内所を倒したらどうする?
     お前にこんなこと聞いたこと無かったな、そういえば」

(゚、゚トソン 「私は、多分軍に残る」

('A●) 「そして国の為に忠を尽くすと?」

(-、-トソン 「えぇ……出来れば、ドクオ少佐に残っていただき、お供をしたい気もするのですが」

('A●) 「銃を捨て切れなかった時は、な。でもお前の方が指揮官向きだ。
     いずれ俺の下では無く、もっと上を目指せるさ。俺なんかよりよっぽど立派な軍人になれるよ」

(-、-トソン 「ありがとう、ございます……光栄です……」

('A●)y━ 「かしこまんな、お前が思うほど俺は立派な指揮官だと思わない」

もう一本タバコを取り出し、トソンに背を向けて火をつけた。
煙を吸い、吐きだした。そのまま紫煙を燻らせて、もう一服する。

(-、-トソン 「ですが……私が、命を預けられるのは……あなた、だけ、です……」

44 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/16(金) 22:05:56.23 ID:vLhqnkkU0

('A●) 「そうか、嬉しいことを言ってくれるな」

背を向けたまま答える。徐々に、トソンの声は消えそうになっていた。
構わずにタバコを吸い続けた。

部下にこれほど慕われているのかと思うと、嬉しかった。

存外、銃を手に取り続けるのも悪いものではないかもしれない。
銃を棄てた自分の姿より、よっぽど想像しやすい自分の姿を思い浮かべていると、
吐息が聞こえてきた。

('A●)y━~~ 「?」

(-ー-トソン 「………」

振り返ると、トソンは寝息をたてているようだった。
話している内に眠くなってしまったのだろう。
何しろ、もう三時を回ってしまっていた。

疲れていなくとも、眠くもなる時間帯だろう。ただ……。

('A●)y━~~ 「俺、何処で寝たらいいの?」

トソンが寝返りを打ったことで、丁度入りこみやすいスペースがベッドに出来たが、
俺の中のモラルがブレーキをかけた。

安価>>48

1そのままイスで眠る 2ベッドに入る 3襲う

52 名前:◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/16(金) 22:10:08.76 ID:vLhqnkkU0
******

(#'A●) 「走れ! AAの邪魔になっているぞ!! 素早く!!」

朝になり、部隊の者達を集めて俺は野外戦を想定した訓練場で指導してやっていた。

訓練場は半径5kmほどの敷地を持っており、それぞれのコーナーに障害物が置かれている。
障害物の無い、開けた場所で今はAAとの連携訓練を行わせていた。

普段通り部下達は手際よくやってみせたが、それだけでは満足は出来ない。

俺の部隊に"装甲服"がやってきたからには、こいつのパワーアシストをフルに活用し、
今までの二倍三倍の働きをしてもらわなければならない。

俺自身も扱いこなせている自信はあまりないが、
普段より動きが鈍くなっている不器用者よりは上手く扱えている自信はあった。

(-A●) 「……はぁ」

恐らく、普段の自重の違いと加わる力の変化に戸惑っているのだろう。

(#'A●) 「エクスト、手を抜くな! 全力で走れ!! 先頭だろう!!」

中には上手くコツを掴み、サボり方を覚えた馬鹿もいるようだが。

濃緑色のボディを持ったAA"ザイル"が、一歩を踏み締める度に黒い装甲服を纏った兵士達が続く。
そして建築物のあるコーナーにさしかかった。

55 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/16(金) 22:12:39.51 ID:vLhqnkkU0

('A●) 「これより模擬戦を行う。今回は装甲服のならしも兼ねているので単純だ。
     ウォードッグチームとテロリストチームに分かれ、家屋に立て籠ったテロリストチームを全て無力化すればいい」

('A●) 「テロリスト役はその逆だ。ただし、ウォードッグチームは人質であるカラマロス人形にペイント弾を当てたり、
     破損させればそこで任務失敗。敗北だ。なお、今回はテロリストチームに俺がつく」

<_プー゚)フ「少佐、よろしいでしょうか!」

('A●) 「なんだ」

<_プー゚)フ「加減はしなくてもよろしいので?」

('∀●) 「あぁ、全力で来いお前ら。俺を射殺出来たらお前ら全員に酒を奢ってやる」

HAHAHAと笑い声が部下達から漏れ、数人目がギラつき始めた。
散々怒鳴られ、鬱憤がたまっている者もいるのだろう。

テロリスト役のチームが、俺に引き連れられて家屋の中へと入っていく。

二階建ての建物だ。

俺も含め全員で15名。向こうも人数は同じだ。

俺は一階に12名の部下を配置した。
二階には3名と人質のカラマロス人形のみだ。

二階には窓が少なく、大勢人数を配置したとしても行動しにくく、敵の進撃を食い止めにくい。
だから一階に大勢配置したのだが、一カ所に固まっていては狙われやすい。

57 名前:◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/16(金) 22:15:39.67 ID:vLhqnkkU0
そこで、俺はある指示を出した。

立て籠ると見せかけつつ、家屋の裏に5名の部下を配置したのだ。
残る7名には表側を守ってもらい、室内に籠ってもらう。

敵の指揮官はエクストだ。

恐らく籠城し火線を広げられない俺達の弱点を利用し、
表に集中砲火を仕掛けてこちらを牽制。
接近後、数名を裏手側に付かせて同時に突入してくるつもりだろう。

これを利用する。

正攻法で攻めても負ける気はしないが、自分の戦略眼を試してみたい気もした。

これが、綺麗な程に極まった。

エクスト達は訓練が開始されると、
正面へ一斉射撃を加えて牽制を仕掛け、一気に正面入り口へ突撃。
ここまでで向こうが6名、こちらは3名やられていた。

突入されればこちらの勝機は薄くなる。
これぐらいの犠牲ですんだのなら安い方だと、俺がエクストならそう計算する。
途中で部隊は二班に分かれ、裏側へと片割れが回っていった。

エクストはそれを確認すると、突入を合図する。

ここまでの様子を二階から見ていたのでしっかりと把握できていた。

59 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/16(金) 22:19:48.72 ID:vLhqnkkU0

(;><) 「ドクオさん、表口の守りを薄くして本当によかったんですか?
       このままじゃ踏み込まれちゃいますよ?」

首のあたりに赤いペイントをぶっかけられたビロードが言った。

('A●) 「黙れ、死体A。真っ先に死にやがって」

('A●) 「良いんだよ、これで。もっとも、お前らがもっと上手くやってくれれば、
     こちらの損害をもっと減らせたんだがな」

(;><) 「す、すいません!」

('A●) 「へっ、まぁいいさ。突入してから泡を食うのは奴らの方さ。良く見てろ、死体A」

(;><) 「はい!」

('A●) 「頼むぞ、ワカッテマス。俺の作戦が外れた時の、最後の要がお前と俺だ」

( <●><●>) 「了解です。そこの死体Aとの腕の違いを見せますよ」

突如、轟音が鳴った。

頭が痛くなるような甲高い音が二階まで届いてきた。
一階でスタングレネードが投げ込まれたんだろう。
目を潰す莫大な光と、三半規管を潰す爆音がもたらされるのだ。

逃げ遅れた者の中に、無事な者は一階に一人も立ってはいないだろう。

60 名前:◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/16(金) 22:22:07.17 ID:vLhqnkkU0
(#゚;;-゚) 「少佐、手筈通り後退しました。しかし、兄者と弟者がやられました」

('A●) 「そうか。敵の攻撃に備えろ。俺達は"囮"だ」

その言葉と同時に、床を蹴る慌ただしい音が聞こえてきた。
足音の位置からして階段へと向かっているのだろう。

どうやら、こちらへと攻め入ってくるらしい。

('A●) 「だが、遅かったな」

壁から飛び出し、スタングレネードを放ろうとしていた兵士の手を撃ち抜く。
自爆した、かのように思われたが爆音は離れたフロアから聞こえてきた。
間一髪で遠くへ投げ捨てたのだろう。

しかし、さっき言ったようにもう遅かった。

銃声が鳴る。

液体の弾ける音がそれに混ざっていた。

壁に隠れていたので姿は見えなかったが、恐らく裏に待ち伏せていた味方が敵を排除し、
正面から攻め上がってきていた敵に後ろから銃撃を浴びせたのだろう。

( <●><●>) 「終わりましたか……」

ワカッテマスはそう言って銃を構え、階段へと躍り出る。

63 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/16(金) 22:25:57.22 ID:vLhqnkkU0

その瞬間、

(メ<*><*>) 「ヒデブッ!!」

顔面にペイント弾をぶちまけられ、戦死した。

(#゚;;-゚) 「ちぃッ!」

応戦しようとディが身体を少し乗りだして階段下へ銃を向けて発砲する。
俺もそれに応じて発砲した。

だが、ただ一人残っただろうエクストが突撃し、こちらに凄まじい銃撃を加えてきた。

(#**;;-**) 「ブッ!!」

またしても顔面に命中し、ディが戦死してしまった。
咄嗟に身を引くと、空を裂いたペイント弾が激突して壁が赤く染まった。

<#プー゚)フ「ドクオォォォォォォォォォォォ!!」

鬼神の如き勢いで迫るエクストは、凄まじい早撃ちのセンスを誇っていた。
俺でも正々堂々と勝負すれば勝てるかは怪しい。

大人しく、俺は部屋の隅に引きさがる。

増援がやってくるまで持ちこたえれば奴に勝ち目はない。

66 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/16(金) 22:29:08.13 ID:vLhqnkkU0
どちらが早いかだ。

慌ただしい足音が、一つ、二つと増えていくが、
それでもエクストのほうが早かった。

部屋のど真ん中に立った奴は、俺へとハンドガンを向けた。
その銃口は確実に俺を捉えており、撃たれれば戦死は免れないだろう。

俺は咄嗟に銃を片手に持ち替えて、ある物を掴んだ。

と、同時に互いの銃声が響き渡っていく。

<_フー*)フ「くそ、相打ちか……ッ!」

片目を赤く染めたエクストが悪態を吐くが、

('A●) 「よく見ろ、エクスト。お前の負けだ。それも、完敗」

<_プー⊂)フ「あん?」

俺の体には一発もペイント弾なんて当たってはいなかった。
エクストはペンキを擦り、よく目を凝らして俺を見た。

撃たれたのは、

    〃∩ ∧_∧
   ⊂⌒(# *ω*)  
     `ヽ_っ⌒/⌒c     
        ⌒ ⌒
このカラマロス人形だった。

68 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/16(金) 22:31:21.72 ID:vLhqnkkU0
エクストと対峙した時、俺はとっさにこれを掴み盾にしたのだ。
銃口さえ見ていれば、弾道を予測することは容易かった。

<;プー゚)フ「はっ!? きったねぇ!! 汚ねぇよそれ!!」

('A●) 「汚くても俺の勝ちー。第一お前は弾も尽きてたみたいだし、俺倒しても残りの奴らどうすんだよ」

(*‘ω‘*) 「少佐、訓練は終わりかっぽ?」

('A●) 「あぁ終了だ。皆ご苦労だ。ここからは休憩だ」

<_プー゚)フ「なぁ待ってくれよ少佐。俺の負けだけどさ、アンタにもペンキ掛かってんだぜ?
       これ、銃弾が貫通したっつーことで、酒を奢るって話は有効だよな?」

('A●) 「お前は俺を撃てなかった。これはお前が撃った人質の返り血だ。はい論破」

<_プД゚)フ「えー」

('A●) 「とっとと休憩に入るぞ。それに、"鮫島"について話しておきたいこともある」

<_プー゚)フ「……了解」

不満を漏らすガキみたいな顔をしていたエクストは、
そう言った途端表情を変えてみせた。

俺は訓練に参加した部下達に訓練の終了を告げ、休憩終了後に再びここに集合し、
メンバーを入れ替えて俺が指導を行うことを伝えた。

今頃、市街戦用の訓練場では荒巻のじいちゃんが腕を振るっていることだろう。
エクストと共に、荒巻とトソンと打ち合わせた通り士官室へと向かった。

70 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/16(金) 22:34:09.70 ID:vLhqnkkU0
******

('A●)y━〜〜 「まぁ、今回集まって貰ったのはそういうことだ。
          "鮫島"って言葉を口にする奴を俺達は探す。
           装甲服を十年前に支給され、カラマロスDNでの作戦に参加した部隊もだ」

トソンと荒巻にエクストの集まった俺の部屋で、
タバコをふかしながら語る。

('A●)y━~~ 「そんで、トソン。洗いだせそうか?」

(゚、゚トソン 「えぇ、時間さえかければなんとかなりそうです。ただ、今日中には厳しいですね」

/ ,' 3 「しかし、そう簡単に見つかるのかのぉ。そのデータに載せられている型式番号が正しいとも限らんしのぉ。
     第一、記録が残されているのかも分からんぞ。どこにも所属していない部隊ということもあるかも知れんし」

('A●)y━~~ 「その可能性もある。だが、そん時はそん時よぉ。
         案内所について知っているか聞きだせば、向こうから勝手に鮫島と吐いてくれる」

<_プー゚)フ「だけどよぉ、それってのはつまりは俺達が案内所を探してますよってアピールしてんのと変わらねーだろ。
         向こうも馬鹿じゃねぇ。んなことしたら先に奴らの方が気がつくんじゃねーか?」

('A●)y━~~ 「だが他に情報がないのも確かだ。データが残されている可能性は、セントジョーンズの話じゃ低いしな」

(゚、゚トソン 「少佐、何か心当たりは無いのですか?」

('A●)y━~~ 「悪いが俺が奴らと接触したのは10年前に一度きりだ。
          あるとすればカラマロスDNに残されていそうなもんだが、
          核を落とされてあそこは一度廃墟になっちまった」

73 名前:◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/16(金) 22:36:24.85 ID:vLhqnkkU0

(゚、゚トソン 「三ヶ国大戦から10年が経ち、再建はされましたがその時のデータは残ってはいないでしょうね」

<_プー゚)フ「もう調べようがないってわけだな。少佐、それじゃあこういうのはどうだ?」

('A●)y━~~ 「なんだ?」

<_プー゚)フ「"チャネラー"の研究機関を探す。恐らくだが、
         チャネラーについては奴らぐらいしか知らない情報なんだろ?
         独占された情報ってことはつまり、その情報がある場所は奴らと繋がってるってわけだ」

('A●)y━~~ 「……それが見つからないからこうして苦労しているわけなんだがな」

<_プー゚)フ「……そうだな」

(゚、゚トソン 「では、鮫島の名を口にしたことのある者に心当たりがある方は?」

('A●)y━~~ 「俺はないな」

<_プー゚)フ「いちおう、独自に調べては見たんだけどよ。鮫島やチャネラーってのは、
         都市伝説の一種になっているらしい。あまりメジャーな話しじゃねーが、
         マニアの間では一時話題になったようだ」

(゚、゚トソン 「初めて聞きましたが……本当なのですか?」

<_プー゚)フ「あぁ。トソン、お前のやり方は真面目すぎていけねぇ。
        俗っぽいことにも結構情報は埋もれているもんだぜ?」

('A●)y━~~ 「その概要は?」

103 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/16(金) 23:09:41.56 ID:vLhqnkkU0

<_プー゚)フ「チャネラーについては、なんでも最近みつけられた"カコログ粒子"に汚染されて、
       身体が突然変異した人間っていう、超人って話だ」

('A●)y━~~ 「ミュータントか」

<_プー゚)フ「あぁ、話しによっちゃ身体能力や知力だけじゃなく、目からビームとか出したり変身できたりするんだが、
       最初に出た話しを誰かが面白おかしく変えていったんだろうな。
       現実味の無い、本当にただの超人の話しだったぜ」

(゚、゚トソン 「そして、鮫島については?」

<_プー゚)フ「鮫島は実際に起こってもいない事件をあたかもあったかのように語り、
       語ることは許されていないように振舞うっていう、ネット上のジョークだ。
       俺達の知っているそれとは、似ても似つかないな」

('A●)y━~~ 「……一応聞いておくが、国家総合案内所の話しは無いのか?」

<_プー゚)フ「残念だが、ないな」

('A●)y━~~ 「そうか……その話があれば、臭い奴に自然と話題を振ることもできたんだが」

<_プー゚)フ「案内所についてはなかったが、似通ったもんに愛国者とか管理者って組織はあったぜ」

('A●)y━~~ 「そうか……」

(゚、゚トソン 「やはり、我々だけでは無理があるのでしょうか」

75 名前:◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/16(金) 22:38:43.47 ID:vLhqnkkU0
('A●)y━~~ 「たしかに、俺達の専門外だ。
        "国防情報局"に信頼のおける奴がいれば、任せられるんだがな。
        そうすれば、お前達の負担も減らしてやることも出来る」

(゚、゚トソン 「少佐、お気遣いなさらず。私は好きでやっていますから」

<_プー゚)フ「第一、案内所の連中のほうが情報網は広いんだ。
         情報局は奴らの手中にあるって考えた方がいいんでないかい?」

('A●)y━~~ 「ぼやいても仕方がないか……」

/ ,' 3 「……ドクオ、わしの記憶違いでなければ、一応手掛かりはあるぞ」


('A●)y━~~ 「本当か?」

/ ,' 3 「あぁ……じゃが、何分年寄りの頭じゃ。正しいかはわからん。
     それに、お前達の気を悪くさせるかもしれん」

<_プー゚)フ「一体なんだってんだよ爺さん。藁にもすがる思いなんだ。話してくれよ」

(゚、゚トソン 「気を悪くさせる、というのはどういうことですか?」

/ ,' 3 「ふむ……これはのぉ、十年前の話なんじゃが」

/ ,' 3 「そこにおわすドクオ少佐がの、まだ12歳の少年だった頃じゃ」

('A●) 「正確には13歳だ」

78 名前:◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/16(金) 22:40:44.14 ID:vLhqnkkU0
/ ,' 3 「ふぉっふぉ、細かいことは言いっこ無しじゃよ」

/ ,' 3 「まぁともかく、あのカラマロスDNを脱出してきた当時の少佐殿は、
     近郊にあるチューボー基地へ避難してきたんじゃ。知っての通り、あそこには避難民が集まっておった。
     難民キャンプに溢れた者や、たまたまはぐれてしまったものが多数おったんじゃな」

/ ,' 3 「それから数日が経った頃、連合軍がチューボーに迫ってきた。 
     2、3回交戦したが、奴らすぐに撤退していってな。こちらの援軍が迫りつつあったんじゃが、
     やけに手際が良すぎての。不審に思ったワシはシラネーヨ司令と戦場で話したんじゃ」

/ ,' 3 「今を思えば、そんな所にヒントがあったとはのぉ……。司令はポツリと鮫島と呟いたんじゃ」

<;プー゚)フ「司令がか!?」

(゚、゚;トソン 「本当なのですか?」

/ ,' 3 「あぁ、何のことかはわからず聞き返したんじゃが、何でもないと何も語ってはくれんかった」

('A●)y━~~ 「爺ちゃん、聞き間違えじゃないんだな?」

/ ,' 3 「確かに、この耳で聞いたわい」

('A●)y━~~ 「トソン、確かシラネーヨ少将は退役していたな?」

(゚、゚;トソン 「えぇ、一昨年勤続30年を迎えられ退役されました。しかし……」

80 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/16(金) 22:44:00.80 ID:vLhqnkkU0
('A●)y━~~ 「トソン、俺はやるぞ? 30日と31日が連休だったな。
        その時に俺は少将の自宅へ向かう」

<_プー゚)フ「少佐、俺も行くぜ。俺もアンタと同じく休暇だ」

('A●) 「いや、俺一人で向かう。お前は身体を休ませていろ」

<_プー゚)フ「俺も付いて行く。少佐、俺も確かめたいんだ。この目で。
        少将は戦災孤児だった俺達を拾ってくれた、親父みたいなもんだ。あまり信じたくは無いんだ」

('A●) 「情をかけるならやめておけ。引き金は引けなければ意味がない」

<_プー゚)フ「案内所の一員だってんなら、俺は少将だって撃つさ。それにお前一人で大丈夫なのか?」

('A●) 「問題は無い」

<#プー゚)フ「流石はハインリッヒ高岡のお弟子さんだ。傲慢でいらっしゃる」

('A●)y━~~ 「勘違いしていないか? お前がいてくれれば心強い。
        でも、俺の私事なんかで命を不必要に危険に晒す必要はない」

/ ,' 3 「まぁまぁ、ドクオ。今回は潜入するわけじゃないのじゃぞ?
    もしかすると、待ち構えている敵部隊を相手取ることもあるかもしれん。
    あまり大勢を動かすわけにもいかんが、一人ではいくらなんでも心もたない」

82 名前:◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/16(金) 22:46:54.28 ID:vLhqnkkU0

/ ,' 3 「バディを組めば丁度いいと思わんかの?」

('A●)y━~~ 「……」

荒巻爺ちゃんの視線を感じた。

聞き入れろ、エクストを信じてやれ。
そう言わんとするかのような視線だ。

('A●)y━~~ 「エクスト、少将をいざとなれば撃てるか?」

<_プー゚)フ「あぁ、撃てる」

('A●)y━~~ 「お前は下手を打てば、軍務で名誉な戦死を遂げるわけでもなくただただ野垂れ死ぬ。
        その意味を理解した上で、覚悟は出来ているか?」

<_プー゚)フ「勿論だ」

迷いの無い返答だった。
エクストの眼は俺をしっかりと見据え、逸らされることはなかった。
こいつがいるのは確かに心強い……。

('A●)y━~~ 「エクスト、それなら俺とバディを組んでくれ。よろしく頼む」

<_プー゚)フ「了解だ」

('A●)y━~~ 「決まりだな。トソン、いつものごとく、俺の留守の間は任せたぞ」

(゚、゚トソン 「了解」

84 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/16(金) 22:48:59.35 ID:vLhqnkkU0
('A●)y━~~ 「爺ちゃんはちゃんとトソンのフォローしてやってくれよ」

/ ,' 3 「了解じゃ」

('A●)y━~~ 「作戦の決行は30日だ、エクスト。それじゃ解散。訓練に戻るぞ」

タバコをの火を消して、灰皿に捨てる。
エクストと爺ちゃんは出ていき、トソンもまた出ていこうとした。

俺もイスから立ち上がり、部屋を出ていく。

('A●) 「トソン、身体は大丈夫か?」

(゚、゚トソン 「えぇ、おかげさまで。昨晩はすみませんでした」

('A●) 「いいんだ。充分休めたようで良かったよ。今日は無理せず早めに休め」

(゚、゚トソン 「お心遣い感謝します」

('A●) 「それじゃ、行くぞ―――」

(゚、゚トソン 「はい!」

応えた部下と共に、俺は訓練場へと向かった。

85 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/16(金) 22:51:20.48 ID:vLhqnkkU0

(;'Д●)・∴ 「べっくしょい!!」

(゚、゚トソン 「少佐?」

('A●) 「すまん、風邪かもしれん」

(゚、゚トソン 「少佐が風邪とは珍しいですね。どうしたんですか?

('A●) 「あぁ、ちょっとな……」

(゚、゚トソン 「あまり無理をなさらないでくださいね。辛ければ医務室へ行ってください」

('A●) 「……どうも」

(゚、゚トソン 「では、お先に行かせてもらいます」

そう言ったトソンは俺より先に訓練場へと向かっていった。
俺の足取りは重かった。訓練の時は気にならかったのだが、
動かないとダルさと頭の重さが圧し掛かってくる。

('A●) (暑かったからって、床で全裸になって寝てたなんて言えねーよ)

生憎、目が覚めるのが俺の方が早かったから、気付かれていないようだったが……。

ともかく、俺は再び訓練場へと向かった。

89 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/16(金) 22:53:38.41 ID:vLhqnkkU0
******

5月30日 0957―――ドクオの住むアパートの駐車場。

車の後ろの荷物入れに俺は荷物を詰め込んだ。

そして閉めると、バタンという小気味のいい音が響く。
アパートの駐車場に停められたこのグレーのライトバンは俺の物だ。

趣味も特になく、金だけが貯まっていくので買ったものだ。

しかし買ったは良いが自宅に帰ることが少ないので、
あまり乗ることはなかった。

久しぶりに乗ることになり、朝九時から洗車をしていたのだが、
気付けば約束の時刻になってきたので、出発の準備をしていたところだった。

<_プー゚)フ「ドクオ、待たせたな」

使い古されたジーンズを履き、白地のシャツと黒いベストを着た、
エクストが俺の前に現れそう言う。

('A●) 「時間ピッタリか……出発するぞ」

<_プー゚)フ「了解だ」

('A●) 「その前に、自分の"持ち物"は持ってきたか?」

90 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/09/16(金) 22:55:55.20 ID:vLhqnkkU0

<_プー゚)フ「……あぁ」

そう言ったエクストは腰に差してシャツで隠したハンドガンを見せてきた。
コルト1911A1 軍で支給されている物と同じモデルである。

ただ一つ違う所を上げれば、グリップがエクストの手の形に削られたカスタマイズが施されていることだった。

('A●) 「頼むぞ、エクスト」

<_プー゚)フ「へいへい、任せておくれよドクオ少佐」

エクストは助手席に座り、俺は運転席に座って車を発車する。
目的地はかつての恩人であり、エクストとトソン達には親代わりでもあるシラネーヨ=シランの自宅だ。

真相を確かめる為、または、国家案内所の構成員を消す為に、俺達は進んで行く。

地獄へと進み続ける。

兵士である限り、俺達は果てしない戦場を彷徨い続けていく。


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