川 ゚ -゚) 少女は戦争犬と駆け抜けるようです

3 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/08(土) 21:04:29.28 ID:G+GdMXwd0



もう少し昔話をしよう。


後少しだけ続くんだ。


さっきの話の続きを話そう。

この先の話は、私とドクオのGJのみんなとの離別の物語であり、
戦争犬の負傷と、少女の負った心の傷の話と、約束の物語だ。


素直クールと高岡ドクオの戦争は、ここから始まった。


さあ話そう。


私とドクオと、GJのみんなとの別れを。

4 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/08(土) 21:07:37.96 ID:G+GdMXwd0



                川 ゚ -゚) 少女は戦争犬と駆け抜けるようです



           第七話 川 ゚-゚) 続・少女と戦争犬が駆け抜けていくようです(・A・)

5 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/08(土) 21:13:05.48 ID:G+GdMXwd0

******

目を覚ました。

瞼を閉じたまま覚醒した私は、同時に灼熱を伴う激痛を腹部に感じ、
あまりの痛みに眉をしかめて目を開けた。

川;´-`)「いたっ……」

('、`*川 「目を覚ましたのね!」

川;゚-゚)「……?」

すると、傍でイスに座っていた女性が私のことを覗きこんできた。
いきなりのことだったのでちょっと驚いたが、
よく見てるとその女性はタレ目がちな目をしており、
長いまつ毛が艶のあるように映った。

川;゚-゚)「ど、どなた?」

だが知らない女性だ。

疑問を投げるが、

('、`*川 「少佐ぁ! 例の娘が目を覚ましましたよぉ!!」

答えるよりも先に彼女は室内電話で誰かに報告した。
短くそう伝え女性はこちらを見てきて笑みを見せると、

6 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/08(土) 21:16:06.98 ID:G+GdMXwd0

('、`*川 「ごめんなさいね、説明が先よねぇ。私は伊藤ペニサスよん!
      あなたのお名前はお嬢ちゃん?」

川 ゚-゚)「私は……素直クールです」

ペニサスと名乗った女性を私は全く知らなかった。
安全ではあると思うのだが、心の底では不審がっているのか警戒してしまう。

('、`*川 「別に取って食べたりはしないわよぉ」

('、`*川 「まぁ可愛いとは思うけどねぇ〜」

川;゚-゚)「……」

何故か本能的に恐怖を感じ、私は布団を胸元まで持ってきて彼女との壁を作った。
気だるげな瞳の奥に獣が住んでいるような気がする。

('∀`*;川 「ジョークジョーク。そう怖がらないでね」

('∀`*;川 「あっ、そうそう。私はニューソクの軍人で、GJっていう部隊なの。
       ここはカラマロスDNの南部基地で、瓦礫に埋まってたあなたは私達に救助されて、
       この基地まで運ばれて来たってわけ。だからぁ、もうちょっとリラックスして?」

川 ゚-゚)「そうなのですか……ありがとうございました」

('、`*川 「偉いわねぇ。ちゃんとお礼が言えて。
      もうちょっと取り乱すかとも思ったんだけども」

川 ゚-゚)「いえ、そうでもありません……」

9 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/08(土) 21:22:46.21 ID:G+GdMXwd0

('、`*川 「うん。良い子良い子! ちょっと待っててね、私の上司が今来るから、
      あなたのこれからについて説明してくれるわ」

川 -)「これからですか……」

「これから」未来を匂わせる言葉に、私の脳裏から記憶が這い出してきた。
目に浮かんでくる情景は家でくつろぐお母さんとお父さん、そして私のものだ。
お父さんはテレビを見ていた。

「もうじきここは戦場になるかもしれないので、避難してください」
たしかそんなようなことをアナウンサーの人が言っていた気がする。

言葉を聞いたお父さんは今日中に荷物をまとめて、
ヒート叔母さんの所に行こうと私に言ってくれた。

お母さんが心配そうな目で私を見ていたが、お父さんが頭を撫でて慰めあげていた。


その瞬間だった。


頭が滅茶苦茶にかき混ぜられるような大きな音が鳴りだし、
家中が震えだして屋根が落ちて壁が吹き飛んでいったのは。
コンクリート片にお母さんの顔がえぐられ、ぐにゃりと歪んでゆく。
お父さんは爆風に吹き飛ばされながらも私を玄関へと連れ込もうとするが、
もう一度強く家が震えると屋根が落ちてきて視界が暗くなった。

強烈な痛みが全身を覆うと、頭がくらくらとしてきて……。

11 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/08(土) 21:25:03.11 ID:G+GdMXwd0

川 ;-;)「あぁぁぁっ! うああぁあぁあぁぁぁ!」

泣き声が止まらなかった。
ペニサスさん達は悪くは無いと言いたかった。

でも私には泣くことしかできなかった。
ペニサスさんの表情はわからず、ただ彼女にしがみ付いて泣くことしか出来なかった。

そんな私を彼女は少し強く抱きしめてくれた。
まるで、悲しみを全て受け止めてくれるかのように。

('、`*川 「思いきり泣いちゃって。今は、それが出来るから」

言われて、ずっと私は泣き続けた。
ひとしきり泣き、落ち着いた私はペニサスさんから離れていく。

('、`*川 「もういいの?」

川 ゚-゚)「……うん」

('、`*川 「そう、強い娘ね。あなた、いい女になるわよきっと。
      だからここで涙は置いていきなさい」

13 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/08(土) 21:27:27.33 ID:G+GdMXwd0

もう、と付け加えてペニサスさんは続ける。

('、`*川 「泣かないの。いい? 女の子が泣いていいのは、初めての時と落としたい男の前でだけよ」

川 ゚-゚)「……? わかりました」

初めての時、という意味が少しわからなかったが、
とりあえず頷いてみた。

すると、医務室の扉が半分開き、女性がこちらを覗いているのが見えた。

壁 |゚∀从 ジー

('、`*川 「?……あぁ、少佐。いらしてたんですか」

壁 |゚∀从 「入って良い?」

川;゚-゚)「……」

('、`*川 「えぇ、どうぞ」

从 ゚∀从 「いやー、なんか良い話ししてる感じで入り辛くてさー。悪いね」

('、`*川 「いえいえ、待ってましたよ」

从 ゚∀从 「そーかそ−か」

15 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/08(土) 21:30:11.57 ID:G+GdMXwd0

从 ゚∀从9m 「君、名前は? お嬢ちゃん君ね!」

川;゚-゚)「わ、私は素直クールです」

何故だろう、不思議な感覚を今味わっていた。
濃緑色の軍服に、胸には多くの勲章が煌びやかに飾り付けられたこの女性は、
恐らくは偉い人なのだろうがその若々しさと軽い雰囲気に、少し違和感を覚えたのだ。

……この人が、少佐? つまり偉い人?

从 ゚∀从 「私は高岡ハインリッヒ! 階級は少佐だ。気軽にハインって呼んでくれ」

川 ゚-゚)「あ、はい……ハインさん?」

从 ゚∀从 「よーしよーし。君は素直クールちゃんだったな?
        じゃあ、クーちゃんだな。歳は?」

川 ゚-゚)「15歳です」

从 ゚∀从 「15かぁー。アタシの息子は12なんだ」

川 ゚-゚)「息子さんがいるんですか?」

从 ゚∀从 「あぁ、血は繋がっていないがな。愛想はないが中々可愛げのあるやつでな、
       少年兵としてパーソクのゲリラに飼われていたところを、アタシが救ったってわけさ。
       今ではアタシの弟子で息子。アイツは強いぞ?」

川;゚-゚)「そ、そうなんですか」

17 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/08(土) 21:32:44.85 ID:G+GdMXwd0

从 ゚∀从 「あぁ、歳が近いことだし、仲良くしてやってくれ。
      ドクオって言うんだ。あだ名はドックンか子犬で良い」

川 ゚-゚)「……はい」

从 ゚∀从 「そんでな、今から5時間前、1620頃にアタシ等GJが君を救助した。
      そこのペニサスはその隊員で君を看病していた」

从 ゚∀从 「そしてこのアタシが部隊長、こいつらのボスだ。
      パーソクの爆撃を食い止められなかったことを、この場で軍を代表して謝罪させて貰う」

从 -∀从 「すまなかった」

川 ゚-゚)「いえ……貴女方は、悪くはありません……」

从 ゚∀从 「君は、アタシ達が責任を持って難民キャンプへ送る。
      これから行う会議でそれを決め……」

言いかけたがハインさんはそこで背後へ振りかえった。


从 ゚∀从 「あん?」

川;゚-゚)「――!?」

   _
  |゚∀゚)     (∵|
壁|^ω^)    (・A| 壁
  |´∀`)   (゚∀|

18 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/08(土) 21:35:41.26 ID:G+GdMXwd0

 「少佐! あの娘無事だったんですか!?」
  _
  |゚∀゚)      (∵|
壁|^ω^)    (・A| 壁
  |´∀`)    (゚∀|

ヒソヒソ(けっこう可愛くない?)
     ヒソヒソ (ドクオーお前と歳近いんじゃないか?)ヒソヒソ
(ふむ、歳の割に中々のおっぱい)ヒソヒソ 


从 ゚∀从 「見ての通りピンピンしてるだろ?」


  「うっひょぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
  _
  |゚∀゚)      (∵|
壁|^ω^)    (・A| 壁
  |´∀`)    (゚∀|

ヒソヒソ    (見ろよピンピンしてるぜ)ヒソヒソ
   (ドクオお前告っちゃえよ)(ふざけろ)ヒソヒソ    
(CかDか……成長すればGの壁を超えることも……)ヒソヒソ

20 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/08(土) 21:38:49.58 ID:G+GdMXwd0

从#゚∀从 「散れ!!」

 
  |三3   Σ三|
壁|三3   Σ三| 壁
  |三3   Σ三|


川;゚-゚)「わ、早い」

从 ゚∀从 「一応アタシの部下だからな、HAHAHA」

从 ゚∀从 「すまんね、驚かせちゃったかい?」

川;゚-゚)「い、いえ……」

从 ゚∀从 「まぁ、なんだ。こっちも人出が少ない。
      君の護衛は最小限の人員になるだろう」

从 ゚∀从 「安全地帯のはずだから、心配する必要はない。
       それにアタシの息子をつけるからなお安全だ」

川 ゚-゚)「はい……ありがとうございます」

从 ^∀从 「アイツをよろしく頼むぜ。何があっても信頼してやってくれ」

そう言ったハインさんは踵を返し、ペニサスさんに私を任せて医務室を出ていく。
彼女の背中は力強く、言葉には不思議な説得力があった。

22 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/08(土) 21:42:15.32 ID:G+GdMXwd0

******

ハインに散れと言われた僕達は会議室に集い、
それぞれ席について向かい合っていた。

僕たちよりも先に会議室に到着していたアサピーは姿勢よく座っており、
背筋はまっすぐと伸びていた。

傍に座っていた僕はそんなアサピーに話しかけていた。

(-@∀@) 「……」

(・A・) 「アサピー?」

(-@∀@) 「うん?」

(・A・) 「アサピーは救助した人を見なくてよかったの?」

(-@∀@) 「……ドクオ」

(・A・) 「ん?」

(-@∀@) 「私はあの少女が発見された時、見捨てろといった人間だ」

(・A・) 「うん」

24 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/08(土) 21:46:14.37 ID:G+GdMXwd0
(-@∀@) 「そんな人間がどんな顔をしてあの少女に会いに行けと言うんだ?」

(・A・) 「……」

(-@∀@) 「私には、あの少女に会わせる顔がないよ」

(・A・) 「そうかな?」

(-@∀@) 「そういうものだ」

(・A・) 「その場の判断ではアサピーも正しかった。でも結果的にみんな助かったのなら、
    それを祝ってあげればそれはそれでいいんじゃないかな?」

(-@∀@) 「……気持ちの問題さ」

アサピーが自虐じみた笑みを浮かべると、会議室の扉が開き、ハインが入ってきた。
彼女は部屋の前方に置かれたホワイトボードの前に立つと、口を開く。

从 ゚∀从 「さて、会議始めるぞ」

从 ゚∀从 「本日の1000頃、パーソク軍の空襲を受けカラマロスDNは大打撃を受けた。
       現在北部から迫るパーソク部隊は中央を制し、我々は押されており南支部の基地に撤退した。
       そこでアタシ等GJ部隊が援軍として現れ、中部へと偵察に訪れた」

从 ゚∀从 「そして1540、要救助者を発見し救助。敵増援の激しい攻撃を受けて撤退」

从 ゚∀从 「でだ、アタシ等はこれからどういう戦術を取るべきか。意見を求めたい。
       いちおう、司令達からはGJの作戦行動についてはアタシに一任されている」

彼女がそう言うと、モナーが挙手をして発言の許可を請う。

26 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/08(土) 21:50:37.22 ID:G+GdMXwd0

( ´∀`) 「現状の戦力じゃ、到底太刀打ちできそうにないモナー。
        だから、ここは徹底的に粘って戦い抜いて、
        他の基地からの援軍を待つべきだモナー」

从 ゚∀从 「フム……援軍か」

ハインが呟きながらホワイトボードに、
“じきゅうせん”と平仮名で書きこむ。

すると、アサピーが挙手をする。

(-@∀@) 「このままでは、いずれ、いや。今日中にでも包囲されてしまいます。
        そこで、私はここ、カラマロスDNから撤退することを提案いたします。
       敵の数が多すぎます。いくら精強なニューソク兵とは言え、あの数では三日も持ちますまい。
       援軍がパーソクと太刀打ちできる程に揃うまで、我々はもちませんよ」

从 ゚∀从 「フム……撤退ね…」

ハインは何かを思索しながら、
ホワイトボードに“けつまくってにげる”と平仮名で書き足していく。

(;-@∀@) 「あの……ハインリッヒ少佐? ケツまくってn从 ゚∀从 「他に何か案はないのか?」

ハインリッヒは有無も言わさずに他の案を求める。
すると、ジョルジュが挙手をした。
  _
( ゚∀゚) 「まともにやっても勝てない。
      だったら、いっそのこと散らばってゲリラ戦法を取るってのはどうよ?」

28 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/08(土) 21:55:08.33 ID:G+GdMXwd0

从 ゚∀从 「フム……ゲリラ戦か…」

ホワイトボードにまたしても平仮名で、
“げりら”と付け加えていく。

次に挙手をしたのはつーだ。
彼女は元気いっぱいに手を振り上げて、提案する。

(*゚∀゚) 「はい、はい、はい、はい! はーい!
     あたしは、ダンボールを被ってやり過ごすってのが良いと思いまーす」

次にドクオが挙手する。

(・A・) 「とりあえず、それはお前一人でやってればいいんじゃね?って思いまーす」

从 ゚∀从 「ほう……ダンボールか…」

ハインは感心したかのように、“スネーク”と片仮名でホワイトボードに書き足した。
その後、彼女は腕組みをしながら目を伏せて思考する。

从 ‐∀从 「………」
  _
( ^∀^) 「アサピーよぉ、お前、撤退って、逃げてどーすんだってーの。
       なんだなんだ? ビビっちまったのか?
       そういやお前は救助の時もブルっちまってたもんなー」

ジョルジュは憎らしさ満点の笑顔でアサピーを嘲るように言い放つ。

29 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/08(土) 21:57:24.52 ID:G+GdMXwd0

(-@∀@) 「お前こそ、ゲリラ戦とはいかにも馬鹿らしい発想だな。
       諦めの悪い、何時までも戦争を長引かせるタイプの戦争屋だ。ゲスが」

アサピーがそう吐き捨てると、
ジョルジュは自分の特徴的な眉を顰めてドスの効いた声で言う。
  _,
(#゚∀゚) 「あん? テメーなんつったコラ。誰が馬鹿だコラ。あ?」

それを傍目に、つーが口を開いた。

(*゚∀゚) 「ドクオー何が駄目なんだよー、ダンボールを大切にしない兵士は任務に生き残れないんだぞ?
     ダンボールに真心を込めろ、ダンボールに愛情を注げって世界を救った英雄が……」

(・A・) 「僕達とは違う世界の英雄だからねその人。
    プレイステーションとかで活躍する英雄だからねそれ」

(*゚∀゚) 「あぁ、そっか。ドラム缶なら良いんだな!?
     そうか〜、やっぱ現代戦に対応するには次世代機で活躍したドラム缶が……」

(・A・) 「スネークは現実にいないんだよ。第一、隠れるだけじゃ勝てないだろ……」

各々、勝手に雑談を始めていると、
ハインが唐突に「よしっ!!」と声を張り上げた。
今まで騒々しかった部屋の中が、その鶴の一声で静まり返る。

从 ゚∀从 「援軍を待つぞ。ここを守り切らないと、ニューソクにとって痛手になる。
       もしここが落ちたら、それを皮切りにして続々とパーソクの奴らが本土に上陸してくる」

31 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/08(土) 22:00:16.62 ID:G+GdMXwd0

从 ゚∀从 「それだけは防がなきゃならない。それにカラマロスDNは、
       歴史的に重要な街だ。それが落ちたとなれば、兵士達の士気にも関わるだろうしな」

そのハインの発言を聞いた者達は、
淀みなく「了解」と応え、作戦を受け入れた。

从 ゚∀从 「そしてドクオ、お前には要救助者を難民キャンプへと先導してもらう。
      すまないがお前一人でだ。南部に敵はいない、警戒する必要はあるが恐らくは安全だろう」

(・A・) 「……了解」

僕はその命令に違和感を覚え思わず眉を顰めてしまうが
しかし命令には応えねばならず、そう応えた。

从 ゚∀从 「そんじゃ、解散。巡回はカラマロスDNの兵士達がやってくれるそうだから、
      お前等はゆっくり休んどけよ」

ただし、と付け加え、

从 ゚∀从 「ドクオ。お前は残れ」

隊員達が席を立ちぞろぞろと部屋を出ていく。
しかし僕だけがその場に残り、ハインを見据える。

ハインは僕に話す事があるようだ。
僕からもハインに話す事はある。

34 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/08(土) 22:02:39.49 ID:G+GdMXwd0

从 ゚∀从 「そう厳しい顔をするな、ドクオ」

(・A・) 「そんな顔はしていない」

从 ゚∀从 「……今日は御苦労さんだ、ドクオ。
      今日一番の立派な戦果を上げたよお前は、ドクオ一等兵」

(・A・) 「ありがとうございます……」

从 ゚∀从 「お前、アタシに拾われた時のこと覚えてるよな?
       あん時のお前は、まるで野良犬みたいだったよ」

从 ゚∀从 「そいつをアタシの部隊に招いて、アタシの技術を全て叩き込んでやって。
       野良犬だったお前は、今じゃ戦争犬だ。戦いの中でしか生きる術を知らない」

从 ゚∀从 「いや、生きることは戦いの為の術でしかない。戦いの中にしか己を見出せず、
      己を戦いでしか表現できず、他人と戦いの中でしか手を取り合えない。ウォードッグだ」

ハインは僕を見つめる。

その瞳は僕を見ておらず、彼女はドクオという人間の心を、
今までの人生を見ているかのようだ。

36 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/08(土) 22:04:40.16 ID:G+GdMXwd0

(・A・) 「………」

僕はその瞳を美しいと思った。

淀みの無い光を放ち、真っ直ぐと物を見る瞳孔。
その奥底に鏡のように映る自分の姿。

女性の美しさ、そう言った物では無い。
高岡ハインリッヒ。その人の、人としての美しさの表れのように感じられる。

(・A・) 「ハイン……僕は何も後悔してないよ?」

(・A・) 「ハインに鍛えられて、モナー達と一緒に居るのが、すっごく楽しいんだ。
     僕はすっごく嬉しい。ここにいられて、ハイン達と一緒にいられて、すっごくね」

( A ) 「だけど……だけど!」

(#・A・) 「なんで僕だけここを離れなきゃならないんだ!?」

从 ゚∀从 「仕方ないだろ。人出が足りないんだ」

(#・A・) 「だからって、何で!? 僕だけ何で戦いに外されるんだ!?」

从 ゚∀从 「お前にしか任せられないんだ。あの娘と歳も近いし、戦闘能力も折り紙つき。
       これほどこの任務に適した人材はお前くらいの物だと思っている」

从 ゚∀从 「それにな、親しみやすいように名前もつけておいた。
       あの娘は素直クールだからクーちゃんだ。ちなみにお前はドックンな」

38 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/08(土) 22:07:11.30 ID:G+GdMXwd0

(#・A・) 「ざけんじゃねーぞ畜生がっ!!」

怒鳴りつけた僕の肩はわなわなと震えていった。
頬は熱く、眼つきが鋭くなっていくのが自分でもわかる。

从 ゚∀从 「おいおい、そんなに気にくわなかったか? ドックンが。
       仕方のない奴だぁ〜ね〜。じゃあ何時も通り子犬でどうだ?」

(#・A・) 「気にくわねーのはあだ名じゃねぇ! 任務の方だ!!
      アンタは僕にこう言ってるんだ! アタシ達を見捨てて逃げろってな!! 違うか!?」

从 ゚∀从 「あぁ、そうだとも。戦況は絶望的だ。
        お荷物を抱えて勝てるほど甘くはないんだよ」

(#・A・) 「僕が荷物だって言うのか!? アンタはさっき今日一番の戦果だって言ったろ!!」

从 ゚∀从 「そんなことは言ってない。ただ、民間人が紛れ込んでたらやりにくいのさ。
        あの子は人並み以上に落ち着いてて、冷静なようだが、
        所詮は民間人、戦火の只中で恐慌状態に陥ってもおかしくはない」

40 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/08(土) 22:09:43.55 ID:G+GdMXwd0

从 ゚∀从 「それによ、あの子、可愛いだろ? もしもの時、あの子を守り切れるとも限らないだろ?
       だからよぉ、お前にアタシは難民キャンプまでの護送を頼んでるってわけだ」

(#・A・) 「何で僕だけなんだ!? GJのみんなで行けばいいだろ!?」

从 ゚∀从 「あーもう、落ちつけよ。アタシらがここを離れたら、
       援軍に来た意味がなくなっちまうだろ。
        だから、手痛いけどよ。あんた一人に頼むのが最良なんだ」

从 ゚∀从 「人数が少ない方が敵に発見され難い。
       夜間迷彩服を着ていけ。クーは……黒いコートでも着せとけばいいか」

(#・A・) 「僕はッ!」

从#゚∀从 「いい加減聞き分けやがれクソガキ!!」

ハインは堪忍袋の緒が切れた、とでも言わんばかりに僕に怒鳴り散らす。
鋭い目が、よりいっそう研ぎ澄まされていく。

41 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/08(土) 22:09:43.55 ID:G+GdMXwd0

从#゚∀从 「いいか? お前はまだガキだ。まだまだガキなんだ。
        お前はまだ何も見ちゃいねー。何も知っちゃいねー。
        お前が知ってるほど世界は狭くはない!」

从#゚∀从 「だが、お前の世界は、お前の生きている人殺し共の世界はなぁ!
        とんでもなく狭っ苦しいもんなんだよ!!」

ハインが一際大きな声を上げると、彼女の表情は翳っていった。
燃え尽きたかのように、彼女の声がか細いものへと変わっていく。

从 ∀从 「人を殺した時から私達は地獄に落ちた。天国なんか用意されていない。
      殺人の罪を背負い続ける限り永遠の闘争に縛られ続ける
      勝ち負けじゃない。生きている限り、私達は果てしない戦場を彷徨い続けるのだ」

从 ∀从 「だからあの娘を守りぬけ。お前も死ぬな。
      死ぬな、死なせるな……生きて、生きて、生き抜いていけ。
      そしていずれ……広い世界を見渡すんだ」

从 ゚∀从 「アタシはお願いしてるんじゃねぇ、命令だ。お前に断ることはできない」

( A ) 「……了解」

僕は部屋を後にし、救助した少女のいる部屋へと向かって行った。


42 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/08(土) 22:17:08.98 ID:G+GdMXwd0

******

コンコン、と言った小気味の良い、
扉をノックする音が響いていき、その音は内部にまで聞こえていく。

すると、「だーれー?」と言った、
ペニサスの間延びした声が扉越しに聞こえ、

(・A・) 「高岡ドクオだよ」

と、フルネームで名乗ってみせた。
直後、カギを掛けられていた扉をペニサスが開けた。
彼女は僕をとても不思議そうな目で見まわす。

('、`*川 「ふーん、ドックンが女の子口説くようなタイプには見えなかったんだけどねー。
      このマセガキめ。鏡を見て出直して来なさい」

(・A・) 「そういうわけにもいかないんだ」

僕は部屋の中へと押し入っていくが、
ペニサスは止めようともせず侵入を許した。

部屋の中は個室になっているようで、
軍施設の物にしては割とキレイなベッドの傍にはパイプイスが置かれており、
部屋の隅に小さな机が置かれているだけだ。

43 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/08(土) 22:19:19.66 ID:G+GdMXwd0

川 ゚-゚) 「君は……」

ベッドの上には僕が救助した後に背中に背負い、
死に物狂いで戦場を駆け抜けて基地に帰還した時の、
背中に背負われた少女が腰を掛けていた。

(・A・) 「僕は高岡ドクオだ。君は?」

川 ゚-゚) 「私は素直クールだ。さっき、君のお母さんにクーってあだ名を付けられたよ。
     だから、クーで良い」

(・A・) 「僕のお母さん?」

川 ゚-゚) 「ん? あの白髪の、アシンメトリーの人じゃないのか?」

(;・A・) 「あしんめとりー?」

川 ゚-゚) 「あぁ、すまない。男の子だものな。ヘアー用語を知らないのも無理はないか。
     左右非対称のことで、つまり私は左目を隠した白髪の女性のことを言ったんだよ」

左目を隠した白髪の女性。
僕の身の回りでその特徴に当てはまる者は一人しかいない。

(・A・) 「高岡ドクオと、高岡の苗字を名乗らせてもらっているけど、
    ハインリッヒ少佐は僕のお母さんではないよ」

川 ゚-゚) 「え? だが、あの人はそうだと言っていたぞ」

44 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/08(土) 22:21:20.41 ID:G+GdMXwd0

(;・A・) 「うーん、母親って言ったら近いかもしれないけど、あの人は違うよ」

川 ゚-゚) 「じゃあ、何であの人は君のお母さんだって名乗ったんだ?」

(;・A・) 「分かんないけど少佐は僕の師匠だよ。これだけは言える」

川 ゚-゚) 「ほう、君の何の師匠だ(;・A・) 「ちょっと待った」

川 ゚-゚) 「何だと言うんだ。いきなり遮って」

(・A・) 「話があるんだ。黙って聞いてほしい」

川 ゚-゚) 「スマン、生理的に無理だ」

(#・A・) 「だから黙って聞いてって言ってるだろ!」

イラついてきしまったようで、語気に少々力が入ってしまう
もしかしたら、先ほどのハインとの会話が尾を引いているのかもしれない。

(・A・) 「これから、カラマロスDNを抜けて、
    難民キャンプのあるイミフまで君を護送する。ついて来て」

('、`*川 「ちょっと待ちなさい」

それまで静観していた、ペニサスがその場に割って入る。

45 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/08(土) 22:26:20.00 ID:G+GdMXwd0

('、`*川 「アンタ、武器も持たずにどうやって戦場を抜けようってわけ? 2人でお散歩でもしに行くつもり?」

(・A・) 「ハンドガンがある、サプレッサー付きのね。こころもとないけど、
    僕達のM16につけるサプレッサーは支給されていない。
    マズルフラッシュで姿を晒してミンチにされるよりはマシさ。
    それに、皆の弾薬を減らすわけにもいかない。僕の銃はここに置いてく」

扉をノックする音が聞こえ、ペニサスが誰かを確認すると扉を開く。
そこから入って来たのはハインであった。

从 ゚∀从 「クーちゃんの病室はここかな〜? ハインお姉さんがお見舞いに来ましたよ〜っと」

陽気な声を出して言う彼女の肩には、
サプレッサーが装着されたアサルトライフル、M16A1を肩に掛け、
手榴弾や弾薬が入っているであろうバックパックを腰に付けている。

(・A・) 「お見舞いにそんな物騒なもんいらないでしょうが……」

Σ从 ゚∀从 「おぉ、ドクオじゃーん。ちょうどいい所にいたな」

彼女はわざとらしく、
「何でここにいるの?」とでも言わんばかりに、驚いてみせる。

从 ゚∀从 「この肩にかけてる銃と、このバックパック。お前にやるよ。
       まっ、アタシのお古なんだけどな」

そう言いながら、彼女は僕の肩にM16A1を掛け、
腰にバックパックを巻き付けていく。

47 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/08(土) 22:29:11.42 ID:G+GdMXwd0

(;・A・) 「えぇ〜? 何その演技。てか、重い!」

从 ^∀从 「母親がガキにプレゼントを渡すのは当然のことだろ?
      なっ? だから“遠慮なく”貰っとけよ」

(・A・) 「了解……とっととここを出させて貰いますよ。クー、行こう」

从 ゚∀从 「待て、こいつも持ってけ。
      それと、夜間迷彩と黒いコートも用意してあるから、着替えていけ」

ハインが腰のベルトに差したハンドガンを抜いて銃身を掴み、渡してくる。

(・A・) 「ハンドガンならガバメントがある」

从 ゚∀从 「こいつは御守りみたいなもんだ、アタシはこいつで10年近く戦ってきた。
      取りあえず、お前に持ってて欲しいんだ。アタシの、最初で最後の弟子にな」

手渡されたそれはリボルバーであり、コルトパイソンの4インチモデルだ。
黒い銃身は強く自己を主張していた。

(・A・) 「……ありがとう」

とりあえず礼は言っておいたが、僕はこの銃の重さから、
ハインの意思の重みすらも感じ取れるようだった。

すると僕の瞳の奥からは熱を感じられ、ハインを見ることが出来ず、
目を逸らしてしまうことになった。

49 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/08(土) 22:31:14.75 ID:G+GdMXwd0

( A ) 「……」

从 ゚∀从 「ドクオ」

ハインは僕を抱きしめてきた。

その途端に彼女に救われ、拾われ、その技術を叩き込まれ、
僕に戦争の犬などではなく人らしい生き方を教えてくれた記憶が次々に蘇っていった。

从 ゚∀从 「ドクオ、お前はこの戦場を駆け抜けていけ。
      お前には数多くの試練が待ち受けているだろう。そう、全てが敵になるようなな。
      だがお前はその全てを打ち破り、人らしい生を打ち立てるとアタシは信じている」

从 ゚∀从 「求めろ、求めることを止めるな。お前が幸福であることを祈っているぞ」

(;A;) 「あぁ……あぁ、わかったよ」

从 ゚∀从 「馬鹿野郎……男が泣くな。生きて再会できるさ、だから信じろ」

ハインは更に僕を強く抱きしめた。
涙が、軍服に染みていくのが肌の感触から伝わってきた。

泣きやんだ僕はハインから離れ、彼女を見据えて敬礼を送る。

(・A・)ゝ 「高岡ドクオ一等兵。自分が必ず任務を遂行することを誓います」

55 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/08(土) 22:34:07.00 ID:G+GdMXwd0

(・A・) 「あぁ……」

僕はその言葉を聞き、扉を開いて基地を出ようとする。
そして去り際に言葉を残した。

(・A・) 「"母さん"を頼むぞ」

('、`*川 「えぇ……」

从 ゚∀从 「……」

クーと共に部屋を出た僕は基地の外へ向かっていった。

56 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/08(土) 22:36:09.19 ID:G+GdMXwd0

******

ドクオとクーが廊下を進んでいくと、警報が鳴り響いた。

(・A・) 「敵襲!?」

川;゚-゚) 「えっ!?」

クーの腕を引っ張ったドクオは基地を慌てて出たが、
塀の外から弾丸が行き交い、兵士達が敵と交戦しているのを視界の端に納める。

(・A・) 「走るぞ!!」

駆けだすが、南口から出ようとした彼らの前に待ち構えている者達があった。
ドクオは咄嗟に気付き、傍にあった輸送車両の陰に隠れようとするが……。

(・A・) 「!?」

背後から銃声が響き、待ち伏せていたが倒れていくのをドクオは見た。

(-@∀@) 「ドクオ! 走れ!!」

(・A・) 「アサピー!?」
  _
( ゚∀゚) 「エスコートしてやるぜぇ!!」

川;゚-゚) 「な、なんだ!? 何が起きてる!?」

58 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/08(土) 22:40:10.15 ID:G+GdMXwd0

( ^ω^) 「お嬢ちゃん、頭を下げるんだお!」

ドクオはクーの頭を咄嗟に低くさせ、ハインから授かったコルトパイソンを抜いて構える。
そして先を行くブーンとアサピーとジョルジュの後についていった。

(-@∀@) 「敵の包囲を突破するぞ」

言葉を発したアサピーはジョルジュ達と共に敵を攻撃していく。
  _
( ゚∀゚) 「しっかりしろよお嬢ちゃん! 君はついてるぜ。
      どこぞの馬の骨どもじゃなくて、俺達GJに救われたんだからな!!」

基地を離脱した一行は南部へ、難民キャンプへと向かう。
だがジョルジュ達はドクオとクーを残して留まると、敵を引き付けていった。

( ^ω^) 「ここは食い止めるお! ドクオに任せて、君はこんなクソ溜めからはおさらばするんだお!!」

ブーンが叫ぶと、それに押されるかのようにドクオはクーを引きつれて駆けだした。
敵の包囲を抜けた彼らを見届けると、アサピー、ジョルジュ、ブーンの三名は敵を殲滅する為、
ドクオ達の追撃の手を潰す為に危険を顧みず戦い続けていった。


少女と戦争犬は、GJの仲間達の手によって送り出されていき、戦火の只中を駆け抜けていく。

二人の行く末には深く、全てを飲み込んでしまいそうな闇が広がっていた。


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