- 2 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/14(金) 22:03:32.28 ID:GOyC2ktq0
昔話もこれで終わりだ。
私とドクオと、GJのみんなとの別れの話はしただろう。
さて次は、"奴ら"との遭遇の話、そして彼の左目の謎に迫ることになる。
素直クールと高岡ドクオの戦いの話だ。
そして私達と奴らの闘争の始まりだ。
得た物と失った物から彼の選択が今に至ったのか、これで理解出来るだろう。
さて、過去話も佳境に入った。
話しを始めよう。
少女と戦争犬が駆け抜けていく話だ。
- 4 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/14(金) 22:05:52.34 ID:GOyC2ktq0
川 ゚ -゚) 少女は戦争犬と駆け抜けるようです
第八話 川 ゚-゚)続・続・少女と戦争犬が駆け抜けていくようです(・A・)
- 5 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/14(金) 22:07:57.24 ID:GOyC2ktq0
******
夜間迷彩服を着こんだドクオと、
黒いトレンチコートを羽織ったクールは敵の包囲を抜けた。
ドクオはクールの腕を引いて疾走していたが、
ある程度距離を稼ぐと、彼女がついていけるほどの速度にまで落としていく。
空は真っ黒に染まりあがり三日月がカラマロスDNを照らしていた。
彼らは建築物の残骸転がる市街地を、敵に注意しながら進む。
幸いなことに基地を抜ける際に敵と遭遇して以来、
彼らは敵に発見されることはなかった。
川 ゚-゚) 「………」
敵に遭遇しないのは運がいいのか、
それともクールの目の前を歩く少年が、そういった道を選んで進んでいるからなのか、
非戦闘員であるクールにはわからないことであった。
難民キャンプへの進行は、着々と進んでいる。
そういうことだけを知っていれば、彼女には十分だ。
スーパーマーケットであったのだろう廃ビルを見つけ、そこを壁伝いに進んでいく。
多数の客の車を止められる、広大な駐車場には瓦礫が積っており、
何台か廃車になった車がクールの目に入った。
- 7 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/14(金) 22:10:44.21 ID:GOyC2ktq0
川 ゚-゚) 「あ……」
クールが見覚えのある光景を見て声を漏らす。
(・A・) 「どうかした?」
川 ゚-゚) 「いや、見覚えのある光景でね。
スーパーだっていうのは、見て分かるだろう?」
(;・A・) 「すーぱー? これが?」
川 ゚-゚) 「いや、見れば普通分かるだろう。とにかく、ここはスーパーだったんだ。
先週の日曜、私は家族と一緒にここに来たんだ。先週だぞ? 先週。
大きなところだったよ。でも、たったの一日で、一撃でこんな風に朽ち果ててしまうんだな……」
クールが先週の出来事を思い返すように遠い目をして、
自らの骨組を曝したスーパーマーケットの残骸を見つめる。
感慨深そうにしながらも彼女は目の前歩いていった。
自分よりも小さな背中から離れずに歩き続ける。
- 8 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/14(金) 22:12:59.63 ID:GOyC2ktq0
******
敵を探り警戒つつ闇夜に紛れて移動すること約一時間。
ドクオとクールは10キロほどの距離を進んでいた。
住宅の密集地帯であった場所に辿り着いたようだが、
隣接しあった家々は連鎖的な火災を起こし、
周辺を焼き尽くしているようであった。
未だに燃え続けている家もあり、
この周辺だけを空がほんのりと茜色に照らしている。
(・A・) (炎上している場所は、避けた方が無難だな。発見される)
内心にドクオが呟くと、隠れていた瓦礫の山の蔭から抜け出そうとする。
が、クールの様子がおかしい。踵を返して振り返ると、
川; - ) 「う………」
彼女は苦しげな表情に汗を浮かべて、
その場で膝をついてしまっていた。
(・A・) 「クー、どうしたの? 怪我が痛む?」
彼女は瓦礫の下敷きになっているところを救助された後、
応急処置を受けたが、そうそうすぐに良くなるものでも無い。
クールが歩いている時に少々苦しそうな顔をしているのを思い出し、
ドクオはしまった、と後悔する。
- 11 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/14(金) 22:15:27.74 ID:GOyC2ktq0
川;゚-゚) 「すまない……ペニサスさんに診てもらったが、
肋骨に罅が入っているみたいなんだ。歩く度に、痛むし、呼吸が苦しい」
(・A・) 「そうなんだ」
肋骨に罅が入っている。なんだ、それだけなんだとドクオは思うが、
民間人であり、今まで戦いを経験したことの無いはずであろう彼女にとっては、
辛いものであろうと考えを改める。
(・A・) 「じゃあ、また背負おうか?」
川;゚-゚) 「それじゃあ、君が無防備になるだろう?」
(;・A・) 「そりゃそうだけど、敵を上手くかわせばなんとかなるよ」
川;゚-゚) 「無理だ。私が耐えるよ」
- 12 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/14(金) 22:18:05.32 ID:GOyC2ktq0
川 ゚-゚) 「そうだ、こうすればいい」
クールは何かを思いついたかのように言い、
ドクオの手に自分の手を伸ばし、掴み取る。
川;゚-゚) 「私が辛そうにしていても、君が引っ張ってくれればいい。
何とか耐えてみせるから、気にしないでくれ」
Σ(;・A・) 「ん!? あ、あぁ。そうさせて貰うよ。限界になったら言ってね?」
狼狽したように応え、ドクオは彼女の手を引いて進んでいく。
燃え上がっている住宅から離れ、暗い場所をつたっていくかのように。
敵を警戒する緊張感。ドクオの中にはそれが常に存在していた。
だが、彼の胸の中には、その類とは別の緊張感が生まれつつあり、
ドクオは普段以上に神経を擦り減らすこととなる。
彼は、右手にはライフルの冷たい鉄の触感と、
左手には少女の柔肌の感触と、人肌の温もりを感じていた。
- 14 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/14(金) 22:20:08.23 ID:GOyC2ktq0
******
クーの手を引いてから更に歩き続けると、
四角く、屋根の残った廃屋を見つけた。
二階が崩れているだけで一階は損壊があまり見られず、
攻撃をそれほど受けていないようであった。
入口は二つあり、正面口が僕からは覗けた。
川;´-゚)
クーを見ると動悸が激しく額からは大量の汗を流していた。
自分の左手に重ねられた手は汗でビショビショだ。
(・A・) (クーはもう体力の限界か?)
カラマロスDN南部基地から既に15キロほどの距離を進んでおり、
周辺に敵の気配を感じ取れず、ここは安全だと判断できる。
このまま進み続けるのはクーには酷だろう。
これ以上傷が深くなっても困る。
ここら辺でいったん休憩をとっても良いだろう。
(・A・) 「クー、あそこで休もう。そろそろ限界だよ、君」
- 16 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/14(金) 22:22:25.27 ID:GOyC2ktq0
川;´-゚) 「いや、まだ大丈夫だよ。私はまだ行ける」
廃屋の正面入り口の扉は吹き飛んでおり、吹き抜けとなっていた。
進入は容易だったが、もしかしたらトラップが仕掛けられているかもしれない。
更に内部には敵が潜伏しているかもしれず、
僕は細心の注意を払いながら進入していった。
クーの手を引いて僕はゆっくりと侵入していき、奥へと進む。
この廃屋の構造は中心に部屋が4つあり、
それを取り囲むようにして廊下が設けられていた。
裏口付近には二階への階段があるが、
外から見たとおり崩れているようで瓦礫が飛び散っており、侵入は困難だ。
人の気配もしない上に、ここが廃屋となった後に人が訪れた形跡も無い。
とりあえず中央の裏口近くの部屋の中に入って行く。
広くも無く、狭くも無い正方形の室内には、
コンクリートの粉末を被ったベッドと、倒れた本棚がある。
僕はベッドに被った粉末を払うと、クールの手を引いてそこに寝かせた。
川;´-゚) 「すまない……」
苦しそうに彼女は呟く。
それを聞き流しながら懐中電灯と地図をバックパックより取り出し、位置を確認する。
- 17 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/14(金) 22:24:55.75 ID:GOyC2ktq0
(・A・) 「あやまることないよ。僕だって疲れてるんだ」
そう受け答えて僕は口を閉ざす。
恐らくは、呼吸するだけでも激痛が走り、彼女は苦しい思いをしているだろう。
言葉を発するだなんてもっての外だ。
ベッドに横たわった彼女の呼吸はゆっくりと静かになっていく。
仰向けになったことで息をしやすくなったのだろう。
僕はバックパックにしまってあるガーゼを取り出し、顔に流れる汗を拭いてやった。
怪我をした時の為にハインがしこんでおいた物だろう。
応急処置用の医療キットが僕の持つバックパックに入っていたのだ。
川;´-゚) 「ありがとう……」
(・A・) 「良いんだ。黙っててくれ。辛いだろう?」
川;´-゚) 「うん……」
クーがそう言ったのを聞き、僕はもう一度地図に目を移した。
イミフの難民キャンプまでの距離は後3キロほど。もう少しで見えてくるはずだ。
そしてその先にはチューボーがあり、チューボー基地に向かうよう僕は指示されている。
チューボーにはGJの分隊が予備兵力として控えており、それと合流せよとのことだ。
援軍として彼らと共に戻って来いと、そう言う意味なのだろう。
(・A・) (ハイン……僕は、必ず戻るよ)
- 19 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/14(金) 22:27:11.91 ID:GOyC2ktq0
ライトをクーの傍に置き、地図をしまった僕はM16を手に取った。
僕だけがこうして戦場から離れていくのが忍びなかったのだ。
だから銃を取り、廃屋から出て警備をしようと思った。
その場を離れていこうとした僕は視線を感じた。
川;´-゚) 「あ……」
(・A・) 「大丈夫だよ、外を見てくるだけだ」
川;´-゚) 「……」
(・A・) 「だから、安心して休んでて」
川;´-゚) 「……」
(・A・) 「大丈夫、大丈夫だから。僕は必ず戻ってくる」
川;´-゚) 「わかった……」
その言葉を聞いた僕は部屋から出ていこうとした。
(・A・)b 「待っててね」
クーを精一杯力づけるつもりの言葉を残して。
- 21 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/14(金) 22:29:54.99 ID:GOyC2ktq0
******
屋内を探索し、周辺を巡回した僕はクーのいる部屋に戻った。
外敵を警戒する必要はあるが、
いざという時彼女の傍にいないと護衛の役割を果たせない。
川;゚-゚) 「あ、ドックン……」
ドアを開いて室内に入ると、クーはまだ苦しそうに息をしていた。
(・A・) 「ドクオでいいよ」
川;゚-゚) 「わかった……」
(・A・) 「怪我の具合は?」
川;゚-゚) 「だいぶよくなったよ」
(・A・) 「ホントに? 無理はしなくていいよ?」
川;゚-゚) 「辛い……お腹痛い……」
(・A・) 「だろうね。もうちょっとだけ休もう。いつまでもここに留まるわけにはいかない。
僕に気を使う必要はないよ。こんな状況だけど、少し素直になっていいよ」
川;゚-゚) 「素直に……?」
(・A・) 「そうだ。無理して後でぶっ倒れたりしたら逆にこっちが困るしね」
- 23 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/14(金) 22:32:12.20 ID:GOyC2ktq0
川;゚-゚) 「ありがとう」
(・A・) 「まぁ、休ん―――」
言いかけたその時、地響きを伴い身を震わせる爆発音が轟き、
廃屋全体が揺らぎ咄嗟に僕はクーに覆いかぶさった。
そのまま抱き上げ、いつ倒壊するかもしれぬ廃屋から出ていく。
クーは不安げに僕を見つめてくるが、今は何か言葉をかけてやる余裕などない。
大きく揺れる地面をしっかりと踏みしめ、出口へ向けてまっしぐらに僕は走った。
出口が見えてくるとそこは光に包まれていた。
眩い、視界を覆い尽くさんが如く迸る光の塊。
その中心部には天を貫かんがばかりにドス黒いキノコ状の煙が立っていた。
あの方角は……。
(・A・) 「……」
外に出た僕はクーを傍にあった瓦礫に身を預けさせると、
ゆっくりとその方角へと向かっていた。
引き寄せられるかのように僕の足は動く。
あそこは、あそこには……。
- 25 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/14(金) 22:34:18.10 ID:GOyC2ktq0
(・A・) 「嘘だろ……」
ガックリと膝が折られていき、僕は地面に膝をついてしまう。
拳は強く握られ、身体の奥底から熱い何かがこみ上げてくる。
絶望が心を襲うが、衝動が僕を突き動かし、口は叫びを上げた。
(・A・) 「ハインッ!!」
途端に僕の足へ地面を蹴り、
ハインのいる、GJのみんなのいる基地へと駆けだした。
川;゚-゚) 「ドクオ!!」
(;・A・)三) 「ッ!?」
背後からクーの叫びが聞こえ、振りかえった僕は戸惑った。
このままハイン達のもとへと向かっていれば、
彼女をこの場に置き去りにしてしまう。
負傷し、苦しんでいる非力な一般人をこんなところで一人にすれば、
敵兵に出会った際に抵抗するまでも無く殺されてしまう事だろう。
それだけじゃない。"あらん限りの暴力"を振るわれるかもしれない。
何よりこんなとこで取り残されれば心細いに違いない。
- 26 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/14(金) 22:36:22.98 ID:GOyC2ktq0
(;・A・) 「クー、僕は……必ず……」
必ず戻る?
笑わせる。
(;・A・) 「……ッ!」
そんなものは嘘だ。嘘でしかない。
ハイン達は確実に死んだ。あの爆発で無事なはずがない。
無事であったとしても、爆心地近くにいた彼女らは放射能汚染に晒されてしまう。
助かる見込みは無いだろう。
何より、一刻も早く僕達もこの場を離れなければ、
被爆してしまうかもしれない。
(;・A・) 「……」
冷静に考えれば、クーを連れて脱出するべきだ。
しかし、ハイン達ならばまだ生き残っているかもしれない。
だとすればきっと助けを必要としているはずだ。
そう考えると僕の足は自然と基地の方に向いた。
- 28 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/14(金) 22:39:03.73 ID:GOyC2ktq0
川;゚-゚) 「ドクオ……」
クーを見た。
彼女の眼は恐怖に包みこまれているようで、怯えているように僕の目には映った。
痛みに身を震わせ、目に映る爆発に恐れを抱く少女の姿は、
核という絶対的な力の前に儚く消えてしまいそうだった。
でも僕には、僕には"こんな赤の他人"よりももっと大切な物が……。
川;゚-゚) 「お願い……置いてかないで……」
僕は歯を食いしばった。
彼女を投げ捨て、大切な人達の安否を確認する為に。
川;゚-゚) 「一人に、一人にしないで……」
( A ) 「……」
一人、か。
そういえば、クーの両親は……。
あの瓦礫の下に……。
- 29 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/14(金) 22:41:12.64 ID:GOyC2ktq0
( A ) 「……そうか」
声に出た言葉はあまりにも小さく、爆風に消えてしまいそうだった。
( A ) (こいつは……クーはもう……)
そして僕はある覚悟を決めた。
足は自然と向くべき方を向き、歩を進める。
僕は……。
川 ゚-゚)( ) 「ドクオ……」
僕はクーに抱きついていた。
少女にしがみつき、肩に顔を預けた。
僕の目からは涙が流れ彼女の黒コートを濡らしていく。
嗚咽が漏れそうになるが必死に抑え、そして声を振り絞る。
(;A;) 「ぼくば、ぼぐばおまえをまもるよ!
ぜっだいにっ、ぜだい、ぜっだいまもりぬいでやるんだっ!!」
互いに一人ぼっちになってしまった。
だからこそ、僕はクーを護りたかった。護ってあげたかった。
この戦場を抜ければお互い別の人生を歩むことになるだろう。
- 30 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/14(金) 22:43:27.05 ID:GOyC2ktq0
それでも、それでもこの戦場を抜ける間だけでも、僕の手で護りとおす。
今この瞬間に僕は誓った。
高岡ハインリッヒに誓った通り、高岡ドクオは素直クールをこの命に代えても護り抜く。
その意思は強く、絶対に貫いてやろうと思うが、
僕にとって失った物はあまりにも大きく、出来てしまった心の空白は涙を流し、
それが留まることは無かった。
川 ゚-゚)( ) 「ありがとう」
クーは泣き続ける僕を抱きしめて、そう言ってくれた。
その手の温もりは柔らかで、彼女の優しさが僕の心に沁み込んでくるようだった。
(;A;) 「うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ! あああああぁぁぁああぁぁぁぁぁっ!」
クーの優しさに触れた未熟で弱すぎる僕はそれに甘え、大声で泣き叫んでしまった。
- 32 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/14(金) 22:45:29.90 ID:GOyC2ktq0
******
ドクオは一頻り泣いた後、再びクールの手を引いて、
難民キャンプが設置されているイミフへと向かって歩きだした。
夜の黒い空が彼等の後方で茜色に染まっており、
ドクオはそれを気にしつつも進んでいく。
自分が手を引いている少女を守る為に。自分が生き延びる為に。
任務を達成する為に、ハインリッヒ達の意志を果たす為にだ。
15分ほど歩いた頃だろうか。
ドクオとクールが廃ビルが立ち並ぶ道を進んでいると、
不意にドクオが銃を構えた。
するとビルの蔭から声が上がる。
「待て、撃つな。俺達はお前を撃たない」
ビルの蔭から黒い装甲服を身に纏い、
強固なヘッドギアを被って肩にサブマシンガンを掛けた、
男女三人が両手を上げて出てきた。
(・A・) 「何が目的だ! お前達は味方か!?」
ドクオが三人に照準を合わせて、M16を突きつける。
距離は6メートルほど離れているがこの距離ならば、
ドクオはヘッドギアや装甲服など物ともせずに露出した顔を撃ち抜くことだろう。
- 34 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/14(金) 22:47:34.02 ID:GOyC2ktq0
黒い装甲服を着た男の内、目付きの鋭く意志の強そうな男が口を開く。
(,,゚Д゚) 「両手を上げてこうして降参の証をみせているというのに、
それでも銃口を突き付けてくるとは、余程の臆病者らしいな」
(・A・) 「要らないことは言うな。こちらの質問に答えろ」
(,,゚Д゚) 「やれやれ、勇ましいガキだな。お前のような奴が犬死にするんだ」
(・A・) 「次に無駄口を叩けば―――撃つ」
ドクオは今までの言葉よりも力を込めて、最後通告を行う。
(*:゚ー゚) 「ちょっと待ってよ! ギコ君、挑発しないで!! 私達は味方よ」
目付きの鋭い男を女はギコと呼んで慌てて諌め、
味方であると宣言した。
(・A・) 「証拠はあるのか?」
(,,゚Д゚) 「お前を殺していないのがその証拠だ」
ドクオの眼光が更に鋭くなっていく。
照準をギコと言う男の眉間に合わせ、
(・A・) 「なら、お前を殺したら僕が敵であるということになるな」
(,,゚Д゚) 「だろうな。俺もそろそろ、どちらかはっきりしたくなってきたところだ」
- 35 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/14(金) 22:50:03.84 ID:GOyC2ktq0
(*#゚ー゚) 「やめてよっ! 私達は……詳しくは言えないけど"国家総合案内所"っていう、
特務機関のエージェントよ。証拠は見せてあげられないけど、信じて貰える?」
(・A・) 「国家総合案内所……? 目的は何だ」
(`・ω・´) 「私達の目的は、逃げ遅れた避難民の救助だ。
周辺を捜索していたところ、君達を発見したというわけだ。
私達と共に来てくれないか?」
今まで沈黙していた、逆ハの字に眉が釣り上がった男が言う。
目的は避難民の救助というが、
ドクオはその言葉を聞いても警戒を解こうとしない。
(・A・) 「特務機関がどうしてコソコソと救助を行う!?
お前等ニーソク側の人間なんじゃないのか? 全く信用出来やしない」
(`・ω・´) 「………仕方ない、我々の組織については語れないが、
私達の目的については、全てを語ろう」
(,,゚Д゚) 「シャキン、面倒だ。そんな必要はない」
ギコは眉の釣り上がった男を、シャキンと呼ぶ。
(`・ω・´) 「この場で殺し合うよりは面倒では無い。しぃ、良いか?」
しぃ、と女が呼ばれ、頷きだけで返答した。
- 36 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/14(金) 22:52:12.38 ID:GOyC2ktq0
(`・ω・´) 「まず、"チャネラー"と呼ばれる存在から話そう。
チャネラーという人間がいるのだが、彼等は人間の遺伝情報によって制限された、
身体能力や知的能力を解放することが出来、
通常の人間よりも遥かに優れた潜在能力をもつ先天的な優性人種だ」
(`・ω・´) 「その、遺伝情報による制限を解除できる素質を秘めた子供を持つ家庭を、
一か所に集めたのがカラマロスDN。そこでニューソク軍はチャネラーの研究を行っていたのだ」
(`・ω・´) 「だが、情報が漏れてしまい、
カラマロスDNはニーソク軍による強襲を受けてしまった。
というのが、今回の戦いの火種だ」
(・A・) 「信じられないな。お前達が、じゃない。そのチャネラーの話が、だ」
(`・ω・´) 「普通はそう言うだろうな。だが、現にハインリッヒ高岡のような、
"最強の兵士"と呼ばれるようなチャネラーもいるのだ。
チャネラーについての情報は我々によって統制され、管理されている」
(;・A・) 「――――ッ!」
(`・ω・´) 「君の後ろにいるその少女は恐らくチャネラー候補だ。
私達にその娘を渡せとは言わない。私達に、付いて来てはくれないか?」
- 38 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/14(金) 22:55:54.40 ID:GOyC2ktq0
(・A・) 「…………」
ドクオはそこで安堵感を得る。
少なくとも、クールの命の安全保証はされたからだ。
恐らく、この者達が言っていることは真実であろうと。
ドクオが銃を降ろそうとする。
すると、彼の迷彩服の裾を掴む者がいた。
川;゚-゚) 「………」
クールだ。
彼女は不安そうな眼差しでドクオを見つめ、繋いだ手を更にきつく掴み、
エージェント達に聞きとられぬように小声で彼に言った。
川;゚-゚) 「ドクオ、あいつらきっと、君を殺すつもりだ」
(・A・) 「あぁ、どうにもキナ臭い。だが……」
川;゚-゚) 「二人で逃げよう、嫌な予感がするんだ……それに、怖い」
- 40 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/14(金) 22:59:19.86 ID:GOyC2ktq0
(・A・) 「……」
戦力が足りず、このまま二人で進むのは危険だ。
しかしエージェント達の話は信頼するには足りない。
ドクオはクールの言葉に否定も肯定もせずに、肩にアサルトライフルを掛けた。
そして自分の意思を貫くため、腰へと片手を伸ばし、
(・A・) 「無理だな。アンタ達を信頼できない。僕は僕の手で彼女を護りとおす」
器用に片手でピンを外したスモークグレネードを三人の目前に放る。
ドクオはクールの手を強く握ると、反対の手で彼女の体を屈めさせてその場から全力で逃げ出す。
白煙がドクオ達の背後から巻き起こり、ギコの放った弾丸がドクオの左肩を貫いた。
彼はクールを庇う様にして走り続ける。
総合案内所のエージェント達を撒く為に。
だが彼らは、ドクオとクールを追い続けた。
クールを抱えている以上逃げ切ることは出来ないと判断したドクオは、
先程休憩した廃屋に逃げ込み、彼らを迎え撃つ為の準備を始めていった。
- 42 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/14(金) 23:01:28.63 ID:GOyC2ktq0
- ******
廃屋に辿りついた二人は裏口近くにある部屋に入り、
バックパックから包帯を取り出して、ドクオが先程撃たれた左肩に巻きつけていく。
川;゚-゚) 「ドクオ、大丈夫か?」
(;・A・) 「あぁ、後で弾丸を摘出する必要があるが、なんとか動く」
包帯をきつく引き締めると、次にバックパックからピアノ線と手榴弾を取り出す。
弾薬をガバメントとM16に込めつつ、ドクオは口を開く。
(;・A・) 「あいつら、絶対追ってくるよ。でも、心配しなくて良い。
逃げる必要は無い。っていうより、逃げ切れないんだけどね」
(・A・) 「数の上では不利。だけど、僕が負けるはずも無い。
特務機関だか何だか知らないけど、あいつらに痛い目をみせてやろう、クー
"戦士"高岡ハインリッヒの弟子、高岡ドクオがお前を絶対に護る。
ハインに下された最後の任務を、僕は絶対に果たしてみせる」
川 ゚-゚) 「頼んだぞ……」
(・A・) 「任せておけ」
(・A・) 「クー、お前はここで隠れていてくれ。
恐らく、敵は裏口と正面口の二手からやってくるだろう」
川 ゚-゚) 「わかった」
そう言ったクールはベッドの下に隠れ、ドクオは裏口へと向かっていく。
- 44 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/14(金) 23:03:57.40 ID:GOyC2ktq0
******
廃屋の裏口で黒い装甲服を着た男、シャキンがある物を発見した。
(`・ω・´) 「む? これは……ピアノ線とグレネードのトラップか。
どうやら、歓迎されているようだな」
裏口の中に入った先、廊下へと続くドアに細長いピアノ線が伸びていたのだ。
これに足を引っ掛けると、固定されたグレネードのピンが抜け、
爆発すると言うブービートラップの一種だ。
特務機関"国家総合案内所"のエージェントに抜擢された彼には、
このようなトラップを見破ることぐらい容易いことだ。
ピアノ線を踏み越えて行き、その一歩を踏み込んだ、
更にその先に足を踏み入れて行きシャキンは溜息をついた。
やれやれ、といった顔で、
(`‐ω‐´) 「ピアノ線の陰にもう一つピアノ線を張り、死角になり見えない線を作り出すか。
戦力差をトラップで補おうとする考えだろうが、私達には効かんよ」
そう呟くが早いか、目の前の部屋からハンドガンを構える手が飛び出してきた。
銃身にはサプレッサーが装着されていて、銃口はシャキンでは無くその背後を狙っている。
- 45 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/14(金) 23:06:10.08 ID:GOyC2ktq0
(;`・ω・´) 「―――ッ!」
部屋の中に隠れ腕だけを覗かせたドクオは、記憶力だけを頼りに引き金を引き、
見えないにも関わらず壁に貼り付けられたグレネードを正確に撃ち抜いた。
衝撃波と爆炎がシャキンの身を呑みこみ、弾き飛ばす。
グレネード二つの爆発に身を焼かれたシャキンは絶命した。
ドクオも咄嗟に銃を引いたが、彼の手は熱に焼かれてしまっており、
腕にはグレネードの破片が突き刺さってしまっていた。
(;・A・) 「ちくしょう……っ!」
右腕の肉を貫いた破片を抜き捨てながらドクオはシャキンの死体に近寄る。
持っていたサブマシンガンを取り上げ、点検していく。
M3A1というこの潤滑油を注入する機械にも似た、
この工具風の銃に動作不良がないのを確認したドクオは部屋に戻る。
(・A・) 「クー、敵を一名排除した」
川;゚-゚) 「ドクオ、その腕大丈夫なのか?」
ベッドから這い出てきた彼女はドクオに近寄り、腕を心配そうに見つめる。
火傷を覆い、長掌筋を穿たれた右腕は小刻みに震えていたのだ。
(・A・) 「なに、まだ銃は撃てる。それよりもこいつを使ってくれ」
顔色一つ変えずに言った少年の差し出した左手には、M3が握られていた。
- 46 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/14(金) 23:13:04.32 ID:GOyC2ktq0
(・A・) 「使い方はわかるよね?」
川;゚-゚) 「いや、私は銃を握ったことがないんだ」
(・A・) 「じゃあ僕が教えるよ。この蓋を開けば、安全装置が外れて撃てるようになるんだ。
後は敵に向けて撃つだけだ。後、ここから薬莢が排莢されるから気をつけてね」
川;゚-゚) 「それはわかるが……」
(・A・) 「クー、やるしかないんだ。僕が必ずお前を護る。
でも、最後に自分を護れるのは自分だけだ。
相手は人間じゃない。こっちを殺そうとする獣だ。
これから撃つ物は果物か何かだとでも思えば良い」
(・A・) 「僕は初めて銃を握る時、そう教えられた」
川;゚-゚) 「わかった……」
クーが恐る恐る銃を手に取ると、ドクオは肩に掛けたM16を手にした。
ハインリッヒが使っていた、サプレッサーの備えられたそれを構えた彼は指示を出す。
(メ・A・) 「クーはこのまま部屋の中に隠れてて。僕は正面入口に向かう」
ドクオは四角い廃屋の中を逆時計回りに進み、曲がり角で隠れる。
バックパックから手鏡を取り出し、正面入口のほうを照らすと、
目付きの鋭いギコという男が鏡に映し出された。
- 47 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/14(金) 23:15:14.34 ID:GOyC2ktq0
ドクオは壁に背をぴったりと引っ付ける。
バックパックへと手を伸ばし、手鏡を収めてスタングレネードを取り出す。
ピンを抜き、左腕で掴んで、後ろに手首を返すようにギコへと放った。
(メ・A・) 「………」
スタングレネードがコロンという軽い金属音が響かせると、、
即座にM16を両腕で構え、スタングレネードが発光するのを待つ。
何時でも曲がり角から飛び出せるようにと身構えるが、その瞬間はいつになっても来ず、
自分の足もとに何かが転がって行く音がした。考えるよりも早く体が動き、地面に伏せて目と耳を塞いだ。
突如、轟音と閃光が廃屋の中に満ちていく。
音が痛みとなって耳から体中を駆け巡り、ドクオの三半規管を破壊した。
辛うじて目は開くが、平衡感覚は失われてしまっている。
彼の目前にはギコが立っていた。
M3グリースガンを構えこちらを狙っている。
(メ# A ) 「おおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
絶叫を上げて、定まらない照準で無理やり撃ちまくる。
肉を穿つ音が鳴り響き、ドクオの右肩と脇腹から血が撥ね散って行く。
構わずドクオが撃ち続けていくと奇跡的にギコのM3に銃弾が命中し、
破片を散りばめながら宙へと浮かび上がっていく。
が、ドクオはM16の反動に耐えられず前のめりに倒れて行ってしまった。
- 48 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/14(金) 23:17:43.24 ID:GOyC2ktq0
(,,#゚Д゚) 「面倒な奴だ!」
ギコは咆哮するとドクオへと獰猛な獣の如く疾走していき、
ナイフを構えて切り裂かんとする。
装甲服に内蔵されている人工筋肉が彼の身体能力を助長し、
凄まじい速さでドクオへと接近した。
ドクオは千鳥足のようにふらふらとしながら銃を捨て、
ナイフをホルスターから抜刀し、ギコが振るったナイフを受け止める。
(,,#゚Д゚) 「ああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ギコは受け止められたナイフの刃先をずらし、ドクオのナイフをいなす。
フラフラとした不安定な動きで、ドクオはバックステップをして距離を稼ぐ。
刃の構えを振るう物から突く物へと変え、ギコはそれを追撃。
息つく暇も無い、刺突の連撃。
ドクオは辛うじて受け切ってはいるが、
三半規管に支障をきたした状態では後何分も保つようには思えない。
左胸へとナイフの切っ先が迫り、ドクオはナイフの腹でそれを受ける。
だが、反撃に転じる程の余裕は無い。
ドクオはされるがままに追い詰められていく。
受け止められた刃を、そのまま腹への一閃にもっていかれ、
寸でのところでドクオは後ろに踏み込んで避けた。
- 50 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/14(金) 23:20:20.42 ID:GOyC2ktq0
不意に、背中に衝撃を感じる。
後方の壁にぶつかってしまったのだ。
もう後には引けない。
ギコは深く踏み込んでいき、ドクオの喉元へとナイフの切っ先を向けた。
ドクオは首を僅かに傾げて避け、ギコは空を裂く刃をそのまま横にして首を狩るように振るった。
肉を打つ音が響きわたるとギコのナイフは宙を舞う。
ドクオはギコの斬撃の軌道を読んで、ナイフを持つ手へと拳をぶちあてたのだ。
(,,゚Д゚) 「ギコハハハハハハ」
ギコは快活に笑い、壁際に追い詰められた少年へ肩から激突していき、
首を両腕で締め付ける。
(,,゚Д゚) 「さて、息が絶えるが速いか? それとも、首が折れるが早いかな?」
(; A ) 「ぐ……」
(,,゚Д゚) 「人工筋肉で強化されているんだ。折られないようにせいぜい気張ってみせろ」
みしみし、と骨が軋む音が響く。
ドクオは必死に首に押し付けられている右腕を両腕で引き離そうとするが、ビクともしない。
がむしゃらに腕に力を込めるが刃が立ちやしない。
ドクオの顔が真っ赤に染まり上がり、酸欠状態に陥っていく。
- 51 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/14(金) 23:22:31.48 ID:GOyC2ktq0
(,,゚Д゚) 「その程度か? お前の戦いはこの程度で終わるのか?」
終いと言わんばかりにドクオの首に掛けた力を増す。
すると肉を穿つ生々しい音が鳴り響き、ギコは首と顔に血の花を咲かせた。
力を失った右腕が放され、ドクオは自由の身となる。
(; A ) 「はぁ……はぁ……はぁ…はぁ」
空気が足りない身体が新しい酸素を求め、
肩を大きく上下させて息を吸いこんでいく。
ギコの血がこびり付いた顔を拭き、正面を見ると、
クールはM3A1を構えていた。
川 ゚-゚) 「………」
考えるよりも先に、ドクオの身体は動き出していた。
彼はクールまで近づいていくと彼女の頭に手を乗せ、
( A ) 「ありがとう」
と短く礼を言い彼女の頭を撫でる。
もう大丈夫だ、と言い聞かせ何度も何度も頭を撫でていく。
ドクオの脳裏に、自分が初めて銃を握った日の事が過ぎり、
あの日の自分にどうしても重ね合わせてしまうクールを落ち着かせようとする。
初めて人を殺めてしまった、言いようの無い罪悪感を消し去る為に。
そんな人らしい感情が消え失せてしまった戦争犬は、必死に少女を慰めた。
- 53 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/14(金) 23:24:47.28 ID:GOyC2ktq0
川 ゚-゚) 「ドクオ……」
クールは彼の名を呼ぶ。
川 ゚-゚) 「私は今、人を殺したんだな」
感情を窺わせない、無感動な顔でクールが呟く。
瞳は、何も写してはいない。
(・A・) 「うん……お前は人を殺した。でも……僕ほどは殺してないよ」
ドクオはクールを見据えて言い、その奥へと視線を送る。
そこには装甲服を着た女性。しぃが立っていた。
(*゚ー゚) 「みんな……死んだのね」
(・A・) 「あぁ、僕が殺したよ」
(*゚ー゚) 「ギコ君はそこの女の子が殺したんでしょう? 見ちゃったよ」
(・A・) 「今更一人減ったところで、一人増えたところで、
僕が人を殺した数は大して変わりないよ」
(*゚ー゚) 「そうね……君は……そうよね。臭いからして、全然違うもの。
私は、今回の作戦が嫌だったわ。必死に戦ってる人たちがいるのに、
私達はモルモットを拾い集めているんだもの。嫌になっちゃう気持ちも知れたもんでしょう?」
(*゚ー゚) 「私達の誘い、蹴って正解だったよ。その娘にとって、あなたにとっても」
- 55 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/14(金) 23:27:28.51 ID:GOyC2ktq0
(*゚ー゚) 「私達が用があるのはその娘だけ。君がその娘を引き渡してたら、
私達はあなたを即座に射殺したでしょうね」
(・A・) 「だろうな、秘密を持ってる割にはあんた達はペラペラと喋り過ぎていた」
(*゚ー゚) 「ふふふ、鋭いのね。ちっちゃい癖に」
(*゚ー゚) 「でも、どうかしらね。もしかしたら君にとっては、
これからは生き地獄になるでしょうね」
(*゚ー゚) 「君の身元、もう割れてるんだ。高岡ドクオ君。
ハインリッヒがこの娘を護送するように頼んだのよね?
賢い判断だわ。さすがは"戦士"、そして"戦争の狗"」
(・A・) 「お前にハインの何が分かる」
(*゚ー゚) 「君よりは、わかっているつもりだよ」
(*゚ー゚) 「これから君は追われ続けることになる。この国に張り巡らされた根は、
君を絡め取ろうと、絞め殺そうと躍起になるでしょうね。
ずっと、ずっと。死ぬまで君は終わることの無い戦いに巻き込まれることになる」
(*゚ー゚) 「国家総合案内所の老人共は、しつこいわよ?
そして組織は衰えることなく、どんどん力を吸収し肥え太っていく。この国と共に」
しぃはからかう様にドクオに疑問を投げかける。
何故かはわからないが、彼女からは敵意が感じられない。
- 56 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/14(金) 23:29:35.45 ID:GOyC2ktq0
(・A・) 「僕は多分、戦い続けていくだけだよ」
(*゚ー゚) 「そう、私達は任務で戦ってたけど……君は戦うのが任務なんだね」
(*゚ー゚) 「任務は任務。人殺しは人殺し。君は分かってないね。
ハインリッヒの知り合いってみんなそう。みんな、戦争の犬なんだよ」
(メ・A・) 「国家総合案内所に、僕の身元を伝えたのはアンタか」
(*゚ー゚) 「うん、そう。任務だからね。
でも、私がこれからやる殺しは任務とは何の関係も無い、
あたし個人の復讐でやる殺しなんだ。ギコ君もシャキンも殺されちゃったから……」
(* - ) 「死になさい、ウォードッグ」
しぃがM3A1を抜き銃口をクールへと向けて引き金を引く。
ドクオは憔悴しきった体に鞭を打ち、
咄嗟にクールの前に立ちはだかって盾となった。
彼は電流が駆け巡るかのような速さで銃を抜いてしぃに照準を合わせるが、
バランス感覚を失っている為に挙動が僅かに遅れてしまう。
渇いた銃声が鳴り響き弾丸が放たれ、
血の花びらが宙へと二つ散っていった。
- 3 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/15(土) 00:03:35.85 ID:RpvuJ93L0
(・A・) 「僕は多分、戦い続けていくだけだよ」
(*゚ー゚) 「そう、私達は任務で戦ってたけど……君は戦うのが任務なんだね」
(*゚ー゚) 「任務は任務。人殺しは人殺し。君は分かってないね。
ハインリッヒの知り合いってみんなそう。みんな、戦争の犬なんだよ」
(メ・A・) 「国家総合案内所に、僕の身元を伝えたのはアンタか」
(*゚ー゚) 「うん、そう。任務だからね。
でも、私がこれからやる殺しは任務とは何の関係も無い、
あたし個人の復讐でやる殺しなんだ。ギコ君もシャキンも殺されちゃったから……」
(* - ) 「死になさい、ウォードッグ」
しぃがM3A1を抜き銃口をクールへと向けて引き金を引く。
ドクオは憔悴しきった体に鞭を打ち、
咄嗟にクールの前に立ちはだかって盾となった。
彼は電流が駆け巡るかのような速さで銃を抜いてしぃに照準を合わせるが、
バランス感覚を失っている為に挙動が僅かに遅れてしまう。
渇いた銃声が鳴り響き弾丸が放たれ、
血の花びらが宙へと二つ散っていった。
- 5 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/15(土) 00:05:55.07 ID:RpvuJ93L0
弾丸を放った二人はほぼ同時に倒れる。
しぃは構えていたM3A1を着弾の衝撃で滑り落す。
彼女の頭は拉げてしまっており頭蓋ごと中身全てを吹き飛ばされ、
大量の血液が廃屋の壁を赤く汚した。
ドクオの顔は血で真っ赤に染まりあがり、
突き飛ばされたかのようにその場に倒れた。
彼の腕にはハインリッヒに託された御守りである、コルトパイソンが辛うじて握られている。
銃口からは白煙が立ち昇り、ドクオの血が地面に赤い水溜りを作った。
川;゚-゚) 「ドクオ、大丈――ッ」
ほんの一瞬の出来事だった。
呆気にとられたクールは反応が遅れてしまい、
ドクオを心配して声をかけるが彼の姿を見た彼女は息を飲んだ。
(;・Aメメ) 「なんとか……大丈夫だよ」
そう応える彼の左目からは、血が諾々と流れ出していた。
先程のしぃが放った弾丸は目ごと側頭部を抉っていったのだ。
距離感を掴むこともままならず、
左目を失った痛みを堪えながらフラフラと覚束ない足取りでクールへと近づく。
川;゚-゚) 「じっとしてろ、今手当てするからな」
- 9 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/15(土) 00:11:04.35 ID:RpvuJ93L0
打って変わり、彼は戦場をじっと見据えている。
弾丸と怒声の入り混じる地獄を、じっと。
少年の隻眼に鋭利な、彼の今までの人生を以って研ぎ澄まされてきた光が宿る。
この瞬間、あどけない少年は戦争犬へと変貌した。
戦争犬は少女を見やり肩に手を置く。
視線だけで大丈夫?と問い掛けると少女は頷きで返答を行う。
川 ゚-゚) 「私を守ってくれ、ウォードッグ。約束だ」
少女は戦争犬の手に自分の手を重ね、強く握った。
そして戦争犬は応えていく。
(・Aメメ) 「あぁ、約束だ」
(・Aメメ) 「クー、お前は俺が護る」
少女と隻眼の戦争犬は戦場を、無限大に続く戦火の只中を駆け抜けていった。
- 11 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/15(土) 00:16:19.70 ID:RpvuJ93L0
- おまけ
******
〜ウォードッグ隊の訓練中〜
(●A`) 「おら何やってんだ! ちんたら走るな!!」
(;><) 「は、はいなんです!!」
(;><) (あれ?今日の少佐なにかおかしいような……)
(●A`) 「ワカッテマス、お前は銃の反動を腕を曲げて吸収する癖がある。
もっと脇を閉めて撃ってみろ」
( <●><●>) 「了解です、ありがとうございます」
( <●><●>) (ん?……少佐、何かおかしいような……)
(●A`) 「ちんぽっぽ、水を飲んで来い。脱水症状が出ているぞ」
(*;‘ω‘*) 「申し訳ありませんっぽ……」
(*;‘ω‘*) (少佐……眼帯そこにつけてたかっぽ?)
( ><) 「あ、ちんぽっぽちゃん」
(*‘ω‘*) 「ぽ、ビロードかっぽ」
( ><) 「休憩はいったんです、いやー水が美味い」
- 14 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/15(土) 00:18:20.47 ID:RpvuJ93L0
(*‘ω‘*) 「そうだっぽ……」
( <●><●>) 「やあ皆さん、お揃いで。逢引きですか?」
(;><) 「ちちちちち違うんです! 水飲んでただけなんです!!」
( <●><●>) 「まぁ、冗談はさておき……」
(゚、゚トソン 「皆さんお気づきでしょうか?」
(;<●><●>) 「え?どこから生えたんですかあなた?」
(゚、゚トソン 「水があったのでそこからニョキっと」
( ><) (真顔で冗談いうトソンさん怖いんです……)
(*‘ω‘*) 「少尉、やっぱりあなたも気付いていたのですかっぽ?」
(゚、゚トソン 「えぇ、少佐の変化になら私はすぐにわかります。ですが……」
( <●><●>) 「ですが?」
(゚、゚トソン 「片目を失っておられるはずなのに、傷らしきものがみえません。
それにあれほど普段通りでいられたら、
もしかしたらこっちが間違えているんじゃないかとも思えてきます」
(;><) 「たしかに、え?もしかして眼帯右目に掛けてた?って錯覚に陥るんです」
(゚、゚トソン 「えぇ……しかし聞くのにもなんだか勇気がいりますし……」
- 16 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/15(土) 00:20:26.66 ID:RpvuJ93L0
(●A`) スタスタ
(*‘ω‘*)9m 「あっ!少佐が歩いてくるっぽ!!」
( <●><●>) 「少尉! チャンスですよ、早く!」
( ><) 「お願いするんです……っ!」
(゚、゚;トソン 「え、私が行くんですか!? ちょ、まっ……」
ドンッ!!
Σ(゚、゚;トソン 「うわっ……」
(●A`)(゚、゚;トソン 「おっと……大丈夫か?」
(゚、゚;トソン 「あ、はい。すいません!」
(なんで胸に飛び込む形になってしまったんですか!?
加減して欲しいんです! 映るんです!!)
三(●A`)スタスタ 「気をつけろよ」
(゚、゚;トソン 「あの、少佐! 待ってください!!」
(●A`) 「なんだ?」
(゚、゚;トソン 「その……あのぉ……」
- 17 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/15(土) 00:22:49.64 ID:RpvuJ93L0
(●A`) (なにこの娘モジモジしてんの……え、まさか告白パート!?
いやだ、アタシまだ心の準備が……)
(゚、゚;トソン 「が、がん、が、が……か、髪切りましたか!?」
(●A`) 「……いや」
(゚、゚;トソン 「そ、そうですか……見間違いですかねHAHAHA」
(゚、゚;トソン三 ピュー 「そ、それではっ!!」
(;'A●) 「何だったの?」
(*‘ω‘*) 「少尉……」
( ><) 「少尉……」
( <●><●>) 「少尉、あなたにはガッカリです」
(゚、゚;トソン 「だ、だって! いきなり突き飛ばすんだもん!!
しかもぶつかっちゃって……心の準備が出来なかったんだもん!!」
( <-><->)=3 「ふぅー……」
(*‘ω‘*) 「やれやれみたいな目で見るのはやめてやるっぽ」
( ><) 「そうなんです、少尉だって少尉なりにがんばったんです」
(゚、゚;トソン 「私悪くないもん! 次は絶対聞くもん!!」
- 20 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/15(土) 00:26:22.92 ID:RpvuJ93L0
(●A`)スタスタ
( <●><●>) 「そんなこんなの内に少佐が戻ってきましたが……」
( ><) 「少尉!」
(*‘ω‘*) 「少尉!!」
(゚、゚;トソン 「自分が行こうという考えはないのですね貴方達……」
(●A`)
(゚、゚;トソン 「よ、よし! いってきま―――」
<_プー゚)ノ おいーすドクオ!! (●A`)
(゚、゚;トソン 「え、エクスト君……」
(●A`) 「おぉ、エクスト。お疲れ」
- 21 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/15(土) 00:28:33.18 ID:RpvuJ93L0
<_プー゚)フ「ん……あれ? ドクオお前眼帯逆じゃね?」
(●A`) 「あ、逆だわそう言えば」
●\('A`)ヨイショ
('A●)\ポンッ 「サンキュー」
<_プー゚)フ「HAHAHA! 気をつけろよ〜」
( <●><●>) ( ><) (*‘ω‘*) (゚、゚トソン
(<●><●> ) (>< ) (*‘ω‘* ) (゚、゚ トソン
(<●><●>) (><) (*‘ω‘* ) ( ゚、゚ トソン
壁 |川;゚ -゚) 「えええぇぇぇぇぇぇぇぇ傷はっ!? 何で!?何で無傷なの!?」
※このおまけは本編とは一切関係がありません
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