- 257 名前: ◆hb8Q6YeeDk[sage] 投稿日:2012/06/10(日) 20:01:33 ID:FWqRUnWY0
ドクオは店に入ってきた者に挨拶をしたが、その者は棚に並んだ薬には目も暮れず、
真っ直ぐに店の奥へ進んでいった。
(;'A`)「お客さん?」
男は構わず廊下を進んでいく。
ある部屋で立ち止まると、障子を勢いよく開けた。
部屋の中にいた男が、酒をあおりながら薄く笑った。
( ´_ゝ`)「よく来たな」
着流しをはだけさせ、大きくあぐらをかいて座っていた兄者は、
目線だけで座ることを促した。
- 258 名前: ◆hb8Q6YeeDk[sage] 投稿日:2012/06/10(日) 20:03:53 ID:FWqRUnWY0
( ・∀・)「昼間から、酒か。人斬りに品性が無いというのは同じだな」
( ´_ゝ`)「まあ、否定はせんよ」
モララーは、兄者の正面ではなく、横に置かれた座布団の一つに腰を下ろした。
兄者とは対照的に、座っているときでも姿勢は崩さなかった。
( ・∀・)「座布団がもう一つあるが、誰か来るのか?」
( ´_ゝ`)「さあ? そいつに訊いてくれ」
兄者が顎で指したのは、障子戸の前でもじもじしているドクオだ。
- 259 名前: ◆hb8Q6YeeDk[sage] 投稿日:2012/06/10(日) 20:06:00 ID:FWqRUnWY0
(;'A`)「今日来るかはわかりませんよ。でも声はおかけしたんで」
( ´_ゝ`)「だそうだ」
( ・∀・)「強いのか?」
('A`)「た、たぶん」
軽くドクオを睨むモララーから逃げるように、お茶を出しますとだけ言って
ドクオは部屋から駆けていった。
( ´_ゝ`)「来ないかと思ってた。お坊ちゃんには厳しい相手だからな。五百両が惜しくなったか?」
- 260 名前: ◆hb8Q6YeeDk[sage] 投稿日:2012/06/10(日) 20:10:36 ID:FWqRUnWY0
( ・∀・)「約束だ」
( ´_ゝ`)「何?」
( ・∀・)「約束があるんだ。俺が夜猿を斬ると言った。だから斬る」
( ´_ゝ`)「ふうん」
兄者はモララーの発する、数日前とは異なる剣気に気がついていた。
何が変わったのかはわからないが、一種の覚悟は感じた。
( ´_ゝ`)「夜猿と会ったことはあるか?」
- 261 名前: ◆hb8Q6YeeDk[sage] 投稿日:2012/06/10(日) 20:13:45 ID:FWqRUnWY0
( ・∀・)「ある。剣を構えることすらできず、肩を斬られたが」
( ´_ゝ`)「よく逃げられたな」
モララー逃げられたのは、飴細工のおかげだ。
つーが救ってくれたのだと思うと、いっそう剣気が漲った。
( ・∀・)「俺一人では勝てん。それは、理解できた」
( ´_ゝ`)「俺たちならどうだ?」
( ・∀・)「無理だろうな」
( ´_ゝ`)「俺もそう思う。俺も、夜猿とは一度会った。
あれは人ではない。人を捨てた者だ。まともな太刀では体を素通りするだろうさ」
- 262 名前: ◆hb8Q6YeeDk[sage] 投稿日:2012/06/10(日) 20:17:26 ID:FWqRUnWY0
( ・∀・)「勝てる当てはあるのか?」
( ´_ゝ`)「ドクオが連れてくるもう一人の男次第だな」
兄者が酒を勧めてきたが、モララーは断った。
ちょうどそのとき、廊下を走る音が聞こえ、ドクオが顔を出した。
(;'A`)「来てくれましたよ。例の人」
すぐには返事をせずに、兄者はまた酒をあおる。
( ´_ゝ`)「下らん奴だったら、お前ごと斬り捨てるからな」
(;'A`)「そ、そんなあ。勘弁して下さいよ旦那」
- 263 名前: ◆hb8Q6YeeDk[sage] 投稿日:2012/06/10(日) 20:23:30 ID:FWqRUnWY0
ドクオは一度部屋から出て行き、例の男とを呼びに行った。
間もなく、廊下を歩く音が聞こえてきた。
兄者がとっくりを畳の上に置き、刀の柄に手をかける。
モララーは体の向きを変え、身を固くした。
部屋に届く剣気が、異様に冷たかった。
(`・ω・´)「失礼する」
入ってきた男を見て、意外に若い、と二人は思った。
確実に年下にもかかわらず、全ての動作が洗練されている風に感じた。
- 264 名前: ◆hb8Q6YeeDk[sage] 投稿日:2012/06/10(日) 20:26:13 ID:FWqRUnWY0
( ´_ゝ`)「座りなよ」
(`・ω・´)「ああ」
シャキンは一番近くの座布団に腰を下ろし、片膝を立てた形で座った。
身のこなしに一切の隙を感じなかった。
( ´_ゝ`)「兄者だ」
( ・∀・)「モララー」
(`・ω・´)「名は、シャキン」
- 265 名前: ◆hb8Q6YeeDk[sage] 投稿日:2012/06/10(日) 20:31:26 ID:FWqRUnWY0
部屋の外にいたドクオは、どうやら合格だったらしいと胸をなで下ろし、
いつもの商いへと戻っていった。
三人がそれぞれ向かい合って座ると、しばらく沈黙が続いた。
元々、相容れぬ性質を持った三人であった。
偶然同じ目的を持った彼らを、奇妙な縁が結んだだけだ。
( ´_ゝ`)「シャキンさんよお」
沈黙を破ったのは兄者だった。
( ´_ゝ`)「その若さで、今まで何人を斬ったんだい?
血の臭いを通り越して、獣かと思ったよ」
- 266 名前: ◆hb8Q6YeeDk[sage] 投稿日:2012/06/10(日) 20:35:26 ID:FWqRUnWY0
(`・ω・´)「お前には関係無いな」
( ´_ゝ`)「へえ。どうしてこう、みんな俺に冷たいのかね」
( ・∀・)「そんなことより、これで全員なのか?
三人集まったところで、どうにかなる相手とは思えん」
( ´_ゝ`)「ドクオ! 酒が切れたぞ!」
言葉を遮られたモララーが、兄者を睨み付けた。
大げさな動作で視線を払うと、口の端を持ち上げる独特な笑い方で兄者は笑った。
( ´_ゝ`)「策は一応、あるんだよ」
- 267 名前: ◆hb8Q6YeeDk[sage] 投稿日:2012/06/10(日) 20:39:01 ID:FWqRUnWY0
(`・ω・´)「策などいらん。奴の場所を突き止めさえすれば、俺が一人で奴を斬る」
( ´_ゝ`)「無理だな」
言った瞬間、おぞましい程の殺気がシャキンから放たれた。
いつでも抜刀できるようにモララーは柄を掴んだが、兄者は座ったまま涼しい顔をしていた。
( ´_ゝ`)「殺気も、剣気も、奴は呑み込む。あんたじゃ奴は斬れない。
俺たち三人が向かった所で、触ることすらできないだろう」
(`・ω・´)「他に仲間がいるのか?」
( ´_ゝ`)「仲間ではないが、人手はある」
- 268 名前: ◆hb8Q6YeeDk[sage] 投稿日:2012/06/10(日) 20:44:56 ID:FWqRUnWY0
どたどたと廊下を駆けてくるドクオの足音が聞こえた。
とっくりを乗せたお盆を持って、息を切らせて部屋に入ってきた。
(;'A`)「ちょっとは遠慮して下さいよお」
( ´_ゝ`)「いいから酒を渡せ」
お盆を奪い取ると、犬猫を払うみたいに帰れという仕草をする。
ぶつぶつと小言を愚痴りながら、ドクオが部屋から出て行った。
( ´_ゝ`)「有子部超急隊。これを奴にぶつける」
兄者のとっくりを傾ける手が止まらない。
他の二人は、ただ黙って腕を組んでいた。
十六輪「集結」 終わり
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